以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部材の寸法、部材間の大きさの比等は、必ずしも現実のものと同一とは限らず、また、同じ部材等を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比が異なって表される場合もある。また、本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。
なお、本明細書等において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値および上限値として含む範囲であることを意味する。また、本明細書等において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の相違に基づいて相互に区別されない。例えば、「板」は、「シート」、「フィルム」と一般に呼ばれ得るような部材をも含む概念である。
[荷電粒子線露光用マスク]
[第1の実施形態]
本発明の荷電粒子線露光用マスクの実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスクを示す平面図であり、図2(A)は図1に示される荷電粒子線露光用マスクのA−A線における断面図であり、図2(B)は、補強部の高さを導出する式を規定するための図であって、図2(A)に示される荷電粒子線露光用マスクの補強部周りを拡大し、当該補強部を誇張して描いた模式図である。図1及び図2(A)に示される通り、荷電粒子線露光用マスク1は平面視略矩形状であり、薄板部10、支持部12、及び補強部13を備える。なお、第1の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスク1は平面視略矩形状であるが、これに限定されるものではなく、例えば平面視略円形状であっても、五角形、六角形、八角形等の多角形状等であってもよい。荷電粒子線露光用マスク1を例えばステンシルマスクやアパーチャーとして用いる場合、これらをセットする治具やホルダなどの形状に合わせて、その形状が適宜設定され得る。
薄板部10は、第1面Bと当該第1面Bに対向する第2面Fとを有する(図2(A))。薄板部10の第1面B側には支持部12が設けられ、薄板部10はその第1面B側を支持部12により支持される。また、薄板部10の第1面B側には、当該第1面Bと、支持部12の内側面12iとに連続する補強部13が設けられ、薄板部10は補強部13により補強される。
図1に示される薄板部10は平面視略矩形状であり、破線で囲まれたパターン領域Pと、当該パターン領域Pの外側を取り囲む非パターン領域10bとを有する。パターン領域Pは、荷電粒子線が透過可能な複数の開口部11と、荷電粒子線が透過不可能な非透過部10aとにより構成されている。パターン領域Pは補強部13により補強される領域であり、非パターン領域10bは支持部12により支持される領域である。なお、薄板部10の形状は、荷電粒子線露光用マスク1の平面視形状に応じて適宜設定され得る。
開口部11は薄板部10を厚さ方向に貫通する貫通孔であり、開口部11は、荷電粒子線描画装置から発せられる荷電粒子線を成形して所定の矩形(図示例では正方形)に変える成形アパーチャーとして使用され得る。非透過部10aは平面視格子状であり、パターン領域Pのうち開口部11が形成されていない部分(非透過部10a)に当該開口部11を取り囲むように位置する。また、非透過部10aは非パターン領域10bに連続している。なお、図1では、パターン領域Pに12個の開口部11が3行×4列の碁盤の目状に配列されているが、この態様に限定されるものではなく、開口部11の開口形状、数、配置、寸法等は、荷電粒子線露光用マスク11の使用目的に応じて適宜設定され得る。
薄板部10の厚さは0.2μm〜30μmであり、好ましくは1μm〜10μmであり、さらに好ましくは1μm〜5μmである。また、薄板部10の材質は、荷電粒子線露光用マスク1の製造用基板としてSOI(Silicon On Insulator)基板を使用する場合、単結晶シリコン(Si)であるが、使用する基板に応じて適宜設定され得る。例えば、荷電粒子線露光用マスク1の製造用基板としては、SOI基板以外に、シリコン基板;窒化シリコン、炭化シリコン、酸化シリコン等のシリコン化合物基板;これらの基板材質を含む所望の材質の中から選択される材質からなる層を複数積層してなる積層体等が使用され得る。したがって、薄板部10の材質、厚さは、荷電粒子線露光用マスク1の製造用基板として使用される基板に対応して適宜設定され得る。例えば、薄板部10の材質が単結晶シリコンである場合、薄板部10の厚さは、例えば、1μm〜10μmとなり、薄板部12の材質が窒化シリコンである場合、薄板部10の厚さは、例えば、0.2μm〜2μmとなり、炭化シリコンである場合、薄板部10の厚さは、例えば、1μm〜30μmとなる。
支持部12は平面視枠形状であり、薄板部10の第1面B側における非パターン領域10bに設けられ、当該薄板部10(非パターン領域10b)を支持する。また、支持部12は、上支持部12hと下支持部12gとの積層構造を有してなる。荷電粒子線露光用マスク1の製造用基板としてSOI基板を使用する場合、上支持部12hの材質は酸化シリコン(SiO2、埋め込み酸化シリコン層;ボックス層ともいう)となり、下支持部12gの材質は単結晶シリコン(Si)となる。すなわち、支持部12は、酸化シリコンで構成される上支持部12hが、薄板部10の第1面Bにおける外周縁に固着されている。これにより、支持部12は薄板部10を支持している。
上述したように、荷電粒子線露光用マスク1の製造用基板としては、SOI基板以外に、シリコン基板;窒化シリコン、炭化シリコン、酸化シリコン等のシリコン化合物基板;これらの基板材質を含む所望の材質の中から選択される材質からなる層を複数積層してなる積層基板等が使用され得る。荷電粒子線露光用マスク1の製造用基板として上記積層基板が用いられる場合、当該積層基板は、例えば、薄板部10を構成するための層と、支持部12を構成する層とを有し、各層間においてエッチング選択性を有するものであればよい。すなわち、薄板部10が自立可能な薄膜(メンブレン)であって、開口部11を有する状態を維持可能である限りにおいて、支持部12は上記上支持部12hに相当する部材を有していなくてもよい。
第1の実施形態においては、支持部12の高さyは特に限定されるものではなく、支持部12の材質、枠形状の平面視の寸法等を考慮して設定することができる。支持部12の高さyは、例えば200μm〜2000μm、好ましくは300μm〜725μmの範囲で適宜設定され得る。
補強部13は、薄板部10の第1面Bにおける非透過部10aに連続し、それにより当該薄板部10(パターン領域P)は補強され得る。第1の実施形態において、補強部13は、パターン領域P内の隣り合う開口部11間に挟まれるように(あるいは各開口部11の周縁から離間した部位に)位置する平面視格子状(図1に点線で示す)であるが、この態様に限定されるものではない。パターン領域P内に形成される開口部11の数や配置構成に応じ、補強部13の形態は適宜設定され得る。
なお、図1及び図2(A)に示される荷電粒子線露光用マスク1においては、補強部13は、支持部12及び薄板部10(第1面B)に連続している。これにより、荷電粒子線露光用マスク1に応力等が作用しても、荷電粒子線露光用マスク1に歪みが生じることが抑制され、薄板部10の変形、開口部11の破損等を防止することができる。また、補強部13は、薄板部10に荷電粒子線が衝突して発生した熱を外部に逃がす放熱部材としての機能も果たす。
また、支持部12と同様に、補強部13は、上補強部13hと下補強部13gとの積層構造を有する。また、支持部12と同様、荷電粒子線露光用マスク1の製造用基板としてSOI基板を使用する場合、上補強部13hの材質は酸化シリコン(SiO2)となり、下補強部13gの材質は単結晶シリコン(Si)となる。なお、荷電粒子線露光用マスク11の製造用基板としてSOI基板以外の基板等を使用する場合、上補強部13hおよび下補強部13gの材質は、上述した支持部12と同様、上記製造用基板の種類に応じた材質となり得るし、補強部13の構成も、上記製造用基板の種類に応じた構成となり得る。例えば、補強部13は、上補強部13hを有していなくてもよい。
第1の実施形態においては、補強部13は、開口部11を透過する荷電粒子線を遮蔽しないように薄板部10の非透過部10aに連続しており、補強部13gの高さZ0は、下記式(1)〜(5)により表される。ここで、図2(B)に示される荷電粒子線露光用マスク1の補強部13gがテーパー状に形成され、薄板部10側に対向する上面13gtと側壁面13gsとのなす角度が、所期の90°より大きいθ1になっているものとする。なお、第1の実施形態における角度θ1は、90°よりわずかに大きい91°〜95°程度の大きさを想定しているが、開口部11を透過する荷電粒子線が遮蔽されない限りにおいて、これに限定されるものではない。なお、角度θ1と、これに対向する角度θ1’とが同一角でない場合、角度θ1と角度θ1’との平均角θAVGに基づいて幅S2を導出すればよい。図2(B)は、角度がついた状態を認識しやすいように補強部13gを誇張して描いたものであり、角度θ1が実際の角度を表したものでないことは言うまでもない。図2(B)において、非透過部10aの幅をS0とし、補強部13gに隣接する開口部11A及び開口部11Bの間に位置する補強部13gの幅をS1とし、薄板部10に最も近い側で、補強部13gの上面13gtの開口部11A側に位置する端部13gtA(または開口部11B側に位置する端部13gtB)と、補強部13gの底面13guの開口部11A側に位置する端部13guA(または開口部11B側に位置する端部13guB)との間の幅をS2とし、非透過部10aの開口部11A側の一端10aA(または開口部11B側の一端10aB)と、端部13guA(または端部13guB)との間の幅をS3とする。幅S2は、補強部13gにおいて、上記のテーパー角θ1がついた場合に生じ、このとき補強部13gの上面13gtの幅より底面13guの幅が大きいものとなる。また、補強部13gの最大幅は非透過部10の幅より小さいものとする。また、S4は補強部13gの上面13gtの幅を表し、この幅S4は、補強部13gの底面13guの幅S1から上記の幅S2の2倍を引くことで求められるが、第1の実施形態においては、0を超える値であればよい。
Z0=S2/tan(θ1−π/2) ・・・(1)
S2<S1/2 ・・・(2)
S1=S0−2S3 ・・・(3)
S3>0 ・・・(4)
90°<θ1<180° ・・・(5)
補強部13の高さZ0が式(1)〜(5)により表される高さに設定されることにより、開口部11を透過する荷電粒子線が、例えば変形した補強部13に遮蔽されることなく、露光対象物に照射されるため、所期のパターンを精度良く形成することができる。なお、補強部13の高さZ0は、薄板部10を補強し得る程度に十分な強度を補強部13が発揮し得る限りにおいて特に制限されず、例えば5μm〜300μm、好ましくは5μm〜150μm、より好ましくは5μm〜50μmに設定され得る。
なお、第1の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスク1において、薄板部12の外側面と支持部13の外側面とは、略面一に構成されているが、この態様に限定されるものではない。荷電粒子線路効用マスク1は、薄板部12の外側面が支持部13の外側面よりも内側へ入り込むことで形成される、薄板部12の外縁の一部をなす角部と支持部13の外縁の一部をなす角部とによる段状構造を有していてもよい。これにより、荷電粒子線露光用マスク11の搬送時等に外部から薄板部12に不要な力が印加されるのを抑制することができ、ハンドリングが容易になるとともに、多面付けされたチップを分割する際に薄板部12に不要な力が印加されるのを抑制することができる。
[第2の実施形態]
図3(A)は、図1に示される荷電粒子線露光用マスクを示す平面図を共通とし、図1に示される荷電粒子線露光用マスクのA−A線における断面視形状が図2と異なる、第2の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスク1を示す断面図であり、図3(B)は、第1補強部及び第2補強部の高さを導出する式を規定するための図であって、図3(A)に示される荷電粒子線露光用マスクの第1補強部及び第2補強部周りを拡大し、当該第1補強部及び当該第2補強部を誇張して描いた模式図である。第2の実施形態における荷電粒子線露光用マスク1は、補強部13の下補強部13gが第1補強部131gと第2補強部132gとを備える点において、第1の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスク1と異なる。したがって、第2の実施形態においては、第1の実施形態と略同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するとともに、主に第2補強部132gについて説明する。
図3に示される通り、第2補強部132gは断面視略矩形状であり、その第1端部132gtが第1補強部131gの底側の端部131gu(図示において下側の端部)に連続する。第1補強部131gは上補強部13hを介して薄板部10の第1面Bにおける非透過部10aに連続する。また、第2補強部132gの第1端部132gtに対向する第2端部132guと、支持部12の第2端部12uとが、実質的に同一面上に位置している。なお、支持部12の第2端部12uに対向する第1端部12tは、薄板部10の第1面Bに連続している。第2補強部132gの第2端部132guと、支持部12の第2端部12uとが同一面上に位置することにより、第2の実施形態における第1補強部131gの高さを低くしても、薄板部10は補強部13により十分に補強され得る。
また、本実施形態においては、第2補強部132gの幅S5が第1補強部131gの幅S1より小さいことが好ましく、上記式(1)〜(5)及び下記式(6)〜(13)により表される。ここで、図3(B)に示される荷電粒子線露光用マスク1の第1補強部131gがテーパー状に形成され、薄板部10側に対向する上面131gtと側壁面131gsとのなす角度が、所期の90°より大きいθ1になっているものとする。なお、第2の実施形態における角度θ1は、90°よりわずかに大きい91°〜95°程度の大きさを想定しているが、開口部11を透過する荷電粒子線が遮蔽されない限りにおいて、これに限定されるものではない。また、図3(B)に示される荷電粒子線露光用マスク1の第2補強部132gがテーパー状に形成され、第1端部132gtと側壁面132gsとのなす角度が、所期の90°より大きいθ2になっているものとする。なお、第2の実施形態における角度θ2は、90°よりわずかに大きい91°〜95°程度の大きさを想定しているが、開口部11を透過する荷電粒子線が遮蔽されない限りにおいて、これに限定されるものではない。図3(B)は、角度がついた状態を認識しやすいように第1補強部131g及び第2補強部132gを誇張して描いたものであり、角度θ1及びθ2が実際の角度を表したものでないことは言うまでもない。図3(B)において、非透過部10aの幅をS0とし、第2補強部132gに隣接する開口部11A及び開口部11Bの間に位置する第2補強部132gの幅をS5とし、開口部11A側に位置する第2端部132guの一端132guAと、開口部11A側に位置する第1端部132gtの一端132gtAとの間の幅をS6とし、第1補強部131gの上面131gtの幅をS4とし、第2補強部132gの第2端部132guの幅をS7とする。幅S6は、第2補強部132gにおいて、上記のテーパー角θ2がついた場合に生じ、このとき第2補強部132gの第1端部132gtの幅より第2端部132guの幅が大きいものとなる。また、第2補強部132gの第2端部132guの幅は、第1補強部131gの底面の幅より小さいものとする。第2の実施形態においては、開口部11を透過した荷電粒子線が第1補強部131g及び第2補強部132gに遮蔽されないようにする限りにおいて、角度θ1とθ2とが下記式(12)に表される条件を満たすのが好ましく、第1補強部131gの高さZ0とZ1とが下記式(13)に表される条件を満たすのが好ましい。
S5>2Z1・tan(θ2−π/2) ・・・(6)
S1>2Z0・tan(θ1−π/2) ・・・(7)
S1>S5 ・・・(8)
S4>0・・・(9)
S7>0 ・・・(10)
90°<θ2<180° ・・・(11)
θ1≧θ2 ・・・(12)
Z1≧Z0 ・・・(13)
第2補強部132gの幅S5を第1補強部131gの幅S1より小さくすることにより、好ましくは式(6)により表される幅に設定することにより、開口部11を透過した荷電粒子線が、第2補強部132gに遮蔽されてしまうことなく、露光対象物に照射されるため、所期のパターンが精度良く形成され得る。また、開口部11を透過した荷電粒子線を遮蔽しないようにするために、第1の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスク1においては補強部13の高さ、具体的には下補強部13gの高さをできるだけ低くすることが考えられるが、下補強部13gの高さをあまりに低くし過ぎると薄板部10に対する補強部13による補強性能が低下する可能性がある。そのため、第2の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスク1において、補強部13が第2補強部132gを有していることは、特に有意義である。なお、第2補強部132gの幅は、開口部11を透過した荷電粒子線が遮蔽されず、かつ、薄板部10を補強し得る程度の十分な強度を確保可能であれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜400μmの範囲内で適宜設定され得る。
上述したように、第2の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスク1においては、第1補強部131gの高さを、第1の実施形態における下補強部13g(図2参照)の高さよりも低くしても、薄板部10が十分に補強され得る。このような第1補強部131gの高さは、例えば、5μm〜150μmの範囲内で適宜設定され得る。
[荷電粒子線露光用マスクの製造方法]
[第1の実施形態]
次に、荷電粒子線露光用マスクの製造方法の実施形態について説明する。
図4〜図6は、第1の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスクの製造方法を説明するための工程図であり、図1および図2に示される第1の実施形態にかかる荷電粒子線露光用マスク1の製造方法を例として説明するものである。
荷電粒子線露光用マスクを形成するための基板30として、シリコン単結晶を主材とする支持基板70と、ボックス層60と、単結晶シリコン層50とが、この順で積層されたSOI基板を準備する。ボックス層60は酸化シリコンを含み、単結晶シリコン層50の厚さは1μm〜10μmである。そして、この基板30の主面30m(ここでは、単結晶シリコン層50の上面で、図2に示される薄板部10の第2面Fに相当)、および、これに対向する主面30s(ここでは支持基板70の下面に相当)にハードマスク材料層を形成する。すなわち、基板30を構成する単結晶シリコン層50上にハードマスク材料層80aを形成し、支持基板53a上にハードマスク材料層80bを形成する(図4(A))。
基板30の厚さは、特に制限されず、例えば、200μm〜2000μmの範囲の厚さであればよいが、基板の加工性を考慮すると、基板30の厚さは300μm〜725μmであることが好ましい。
ハードマスク材料層80a、80bを構成する材料としては、例えば、酸化シリコン;クロム、アルミニウム等の金属材料等が挙げられ、ボックス層60をエッチング可能なエッチャントと同じエッチャントによりエッチング可能な材料であるのが好適である。以降の説明においては、ハードマスク材料層80a、80bとして、ボックス層60に含まれる酸化シリコンを使用したプロセスについて説明する。
次に、ハードマスク材料層80aにレジストパターン90を形成する(図4(B))。このレジストパターン90は、図2に示されるパターン領域Pに相当する領域P’内に複数の開口91を有している。なお、電子線感応型レジストを用いて電子線リソグラフィ法により、あるいは、感光性レジストを用いてフォトリソグラフィ法により、レジストパターン90を形成することができる。さらに、電子線リソグラフィ法とフォトリソグラフィ法とを組み合わせてレジストパターン90を形成してもよい。
次いで、レジストパターン90をマスクとしてハードマスク材料層80aをエッチングしてハードマスクパターン80’aを形成し、このハードマスクパターン80’aをエッチングマスクとして単結晶シリコン層50をエッチングする(図4(C))。このエッチングでは、ボックス層60がエッチングストッパーとして作用し、単結晶シリコン層50に、ボックス層60の表面を底面とする凹部51が形成される。これにより、凹部51の深さは単結晶シリコン層50の厚さに対応し、1μm〜10μmの範囲内となる。したがって、後工程において、支持基板70をエッチングし、さらに、露出したボックス層60を除去して、凹部51の底面が支持基板70側に貫通した段階で形成される開口部11の深さは1μm〜10μmの範囲内で所望の深さになっている。なお、図4(C)において、互いに隣接する凹部51同士に挟まれる領域、すなわち領域P’における凹部51が形成されていない非開口領域50aは図1及び図2に示される非透過部10aに対応する領域である。また、領域P’の外周領域50bは図1及び図2に示される非パターン領域10bに対応する領域である。
ハードマスク材料層80aのエッチングを、ウェットエッチングまたはドライエッチングによって行うことができる。酸化シリコンにより構成されるハードマスク材料層80aをウェットエッチングする場合、エッチャントとしてフッ化水素酸またはフッ化水素酸を含む薬液等をエッチング液として使用することができる。一方、酸化シリコンにより構成されるハードマスク材料層80aをドライエッチングする場合、トリフルオロメタン(CHF3)ガスや六フッ化エタン(C2F6)ガス等をエッチングガスとして使用することができる。異方性を有するドライエッチングによれば、ほぼ設計値通りのサイズのハードマスクパターン80’aを形成することができる。
また、単結晶シリコン層50のエッチングも、ウェットエッチングまたはドライエッチングによって行うことができる。単結晶シリコン層50をウェットエッチングする場合、KOH水溶液、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、または、4メチル水酸化アンモニウム(TMAH)等をエッチング液として使用することができる。一方、単結晶シリコン層50をドライエッチングする場合、4フッ化炭素(CF4)、8フッ化炭素(C4F8)、六フッ化硫黄(SF6)、臭化水素(HBr)等をエッチングガスとして使用することができる。
次に、凹部51が形成された単結晶シリコン層50の上面(薄板部10の第2面Fに相当)に当該面を覆う樹脂層100を形成する。また、ハードマスク材料層80aに形成したレジストパターン90と同様に、ハードマスク材料層80bにレジストパターン(不図示)を形成し、このレジストパターンをマスクとしてハードマスク材料層80bをエッチングしてハードマスクパターン80’bを形成する(図5(A))。なお、ハードマスク材料層80aのエッチングと同様に、ウェットエッチングまたはドライエッチングによってハードマスク材料層80bをエッチングすることができる。
樹脂層100は、凹部51を保護する目的、および、後工程で支持基板70をエッチングする際の歪みを抑制する目的で形成される。したがって、樹脂層100の厚さは5μm〜30μmの範囲で適宜設定され得る。このような樹脂層100は、図示例では、基板全域に亘って形成されているが、少なくとも凹部51を覆う範囲内に形成されていればよい。樹脂層100を構成する材料としては、レジスト等として用いられる公知の樹脂材料を使用することができ、当該樹脂材料の溶液をスピンコート法等により塗布し、熱処理を行うことにより樹脂層100が形成され得る。樹脂層100の厚さは、樹脂材料や添加剤の濃度調整により溶液の粘度を調整し、さらに溶液塗布時の基板の回転速度を調整することで制御され得る。一度の溶液の塗布で所望の厚さを得ることができない場合は、樹脂層が所望の厚さになるまで溶液の塗布及び硬化を複数回繰り返してもよい。
ハードマスクパターン80’bは、図1及び図2に示されるパターン領域P(図1に破線で示す)に対応する平面視矩形状の開口85を有している。この開口85は、エッチング方法、エッチング条件、基板30の材質などを考慮して、後述する支持部72gを形成するのに適した開口寸法、開口形状を備えたものとする。
次いで、上記の開口85(パターン領域P)に対応する支持基板70の下面30sに、補強部13に対応するレジストパターン110を形成し、このレジストパターン110をエッチングマスクとして支持基板70を矢印E方向で示される上方へ所定の深さまでドライエッチングして、凹部51に対向する複数の開口75を形成する(図5(B))。支持基板70をエッチングする「所定の深さ」は、上記式(1)〜(5)で表わされる高さZ0の補強部13を形成することができる程度に適宜設定され得る。
なお、電子線感応型レジストを用いて電子線リソグラフィ法により、あるいは、感光性レジストを用いてフォトリソグラフィ法により、レジストパターン110を形成することができる。さらに、電子線リソグラフィ法とフォトリソグラフィ法とを組み合わせてレジストパターン110を形成してもよい。
支持基板70を上記「所定の深さ」までエッチングした後、樹脂層100とレジストパターン110とを除去し、ハードマスクパターン80’bをエッチングマスクとして支持基板70を矢印E方向で示される上方へさらにドライエッチングする(図5(C))。このエッチングでも、ボックス層60がエッチングストッパーとして作用する。これにより、単結晶シリコン層50の非パターン領域50bに対応する位置(ボックス層60の下面)に枠形状の支持部72gが形成されるとともに、領域50aに対応する位置(ボックス層60の下面)に下補強部73gが形成される。このような支持基板70のエッチングにより形成された支持部72gと下補強部73gとの間、及び下補強部73g同士の間に露出したボックス層60を、後工程において、基板30の主面30s側からエッチングすることにより、凹部51の底面が貫通して開口部11が形成される。なお、単結晶シリコン層50のエッチングと同様に、ウェットエッチングまたはドライエッチングによって支持基板70をエッチングすることができる。
樹脂層100とレジストパターン110とを、有機溶媒を用いて除去してもよく、また、酸素プラズマ処理等のアッシングにより除去してもよい。有機溶媒としては、例えばレジストリムーバを使用することができる。レジストリムーバを用いて樹脂層100とレジストパターン110とを除去した後に、露出したハードマスクパターン80’a、80’b、及び、凹部51の形成によって露出したボックス層60の表面に残留する有機物を除去するためにSPM洗浄を行ってもよい。SPM洗浄は、硫酸過酸化水素水洗浄ともいい、例えばH2O2:H2SO4=3:1で混合した薬液を70℃〜80℃に加熱して使用する例を挙げることができる。SPM洗浄は、強力な酸化作用を利用することで有機物の除去に効果がある洗浄方法である。SPM洗浄の後はIPA乾燥によって基板を乾燥してもよい。このような樹脂層100とレジストパターン110との除去を、同一工程で行ってもよく、それぞれ別の工程で行ってもよい。
次いで、ボックス層60を基板30の主面30s側からエッチングすることで凹部51の底面が貫通して開口部11を形成した後、ハードマスクパターン80’aとハードマスクパターン80’bを除去することにより、荷電粒子線露光用マスク1が形成される(図6)。第1の実施形態では、このように形成された開口部51の深さは、単結晶シリコン層52の厚さに対応したものであり、1μm〜10μmの範囲内で所望の深さとなっている。なお、ハードマスク材料層80aのエッチングと同様に、ウェットエッチングまたはドライエッチングによってボックス層60をエッチングすることができる。また、このボックス層60のエッチングと同時に、ハードマスクパターン80’aとハードマスクパターン80’bとを除去してもよい。また、支持部72gと下補強部73gとの間、及び下補強部73g同士の間に露出するボックス層60をエッチングして開口部11を形成した後に、上記の樹脂層100を除去してもよい。
このようにボックス層60をエッチングし、ハードマスクパターン80’a、80’bを除去した後の基板30に対して、SPM洗浄、APM洗浄、および、フッ酸(HF)洗浄が行われる。また、基板30の洗浄後はIPA乾燥によって荷電粒子線露光用マスクを乾燥してもよい。ここで、APM洗浄は、アンモニア過酸化水素水洗浄ともいい、例えば、アンモニア(NH4OH):H2O2:H2O=1:2:5で混合した薬液を70℃〜80℃に加熱して使用する例を挙げることができる。APM洗浄は、有機物の除去および不溶性のパーティクルの除去に効果がある洗浄方法である。
第1の実施形態において、レジストパターン110のアライメントズレが発生したり、レジストパターン110をエッチングマスクとした支持基板70のドライエッチングにより形成される開口75の側壁にテーパーが発生したりすることがあり、傾斜や歪み等を有する下補強部73gが形成され得る。しかし、レジストパターン110の除去後にハードマスクパターン80’bをエッチングマスクとして支持基板70をドライエッチングすることで、下補強部73gが支持部72gの高さよりも低い高さで形成される。これにより、上記アライメントズレやテーパーが発生したとしても、製造される荷電粒子線露光用マスク1において、開口部11を透過する荷電粒子線が下補強部73gによって遮蔽されるのを防止することができる。
よって、第1の実施形態における上述の荷電粒子線露光用マスクの製造方法によれば、開口部11を透過した荷電粒子線が、下補強部73gによって遮蔽されてしまうことなく、露光対象物に照射され得る高品質の荷電粒子線露光用マスク1を製造することができる。
第1の実施形態においては、基板30としてSOI基板を使用しているが、これに限定されず、例えば、シリコン基板;窒化シリコン、炭化シリコン、酸化シリコン等のシリコン化合物基板;これらの基板材質を含む所望の材質の中から選択される材質からなる層を複数積層してなる積層基板等を使用することができる。上記積層基板を基板30として使用する場合、例えば図1に示される荷電粒子線露光用マスク1を用いて説明すると、薄板部10となる層と、支持部12となる層との2層構造を有する積層基板を基板30として使用してもよい。この場合の積層基板は、薄板部10となる層と支持部12となる層との間で選択性のあるエッチングが可能なものであればよく、また、薄板部10となる層は、薄板部10が開口部11を有する状態で維持可能な程度に自立可能な薄膜(メンブレン)となるようなものであればよい。また、薄板部10となる層と、支持部12となる層との間にエッチング選択性をもたせるために、積層基板は3層以上の積層構造を有していてもよい。このような積層基板を使用する場合、積層基板を構成する各層のエッチング選択性に応じたエッチング条件を設定することにより、上述のSOI基板を使用した場合と同様にして、荷電粒子線露光用マスクを製造することができる。なお、本開示において、異なる層、材料間においてエッチング選択性があるとは、同一条件でエッチングを行ったときに、エッチング速度に相違が生じる場合があることを意味する。
[第2の実施形態]
第2の実施形態における荷電粒子線露光用マスクの製造方法について説明する。図7〜図8は、第2の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスクの製造方法を説明するための工程図であり、図3に示される第2の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスク1の製造方法を例として説明するものである。第2の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスクの製造方法は、上述した図4〜図6に示される第1の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスクの製造方法のうち、図5〜図6に示される工程と異なる工程を含む。すなわち、図7〜図8に示す工程は、図4に示す工程に続く工程である。よって、第2の実施形態において、図4に示される工程についての詳細な説明は省略するものとする。
図4(C)において、単結晶シリコン層50に凹部51が形成された後、凹部51が形成された単結晶シリコン層50の上面(薄板部10の第2面Fに相当)を覆うように当該面に樹脂層100を形成する。また、複数の開口を有するレジストパターン(不図示)をハードマスク材料層80bに形成し、このレジストパターンをエッチングマスクとしてハードマスク材料層80bをエッチングして、支持部12に対応するハードマスクパターン80’b(第1ハードマスクパターン)及び第2補強部132gに対応する対応パターン81b(第2ハードマスクパターン)を形成する(図7(A))。第2の実施形態において、上記式(1)〜(5)及び上記式(7)で表される幅S1の第1補強部131gが形成されるようにレジストパターンの幅が設定され、上記式(1)〜(13)で表される幅S5の第2補強部132gが形成されるように対応パターン81bの幅が設定される。
なお、ウェットエッチングまたはドライエッチングによってハードマスク材料層80bをエッチングすることができる。本実施形態においては、図7(A)に示されるハードマスクパターン80’bに加え、対応パターン81bが形成される点で、第1の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスクの製造方法と異なる(図5(A)参照)。
樹脂層100は、凹部51を保護する目的、および、後工程で支持基板70をエッチングする際の歪みを抑制する目的で形成される。したがって、樹脂層100の厚さは5μm〜30μmの範囲で適宜設定され得る。このような樹脂層100は、図示例では、基板全域に亘って形成されているが、少なくとも凹部51を覆う範囲内に形成されていればよい。樹脂層100を構成する材料としては、レジスト等として用いられる公知の樹脂材料を使用することができ、当該樹脂材料の溶液をスピンコート法等により塗布し、熱処理を行うことにより樹脂層100が形成され得る。樹脂層100の厚さは、樹脂材料や添加剤の濃度調整により溶液の粘度を調整し、さらに溶液塗布時の基板の回転速度を調整することで制御され得る。一度の溶液の塗布で所望の厚さを得ることができない場合は、樹脂層が所望の厚さになるまで溶液の塗布及び硬化を複数回繰り返してもよい。
本実施形態においては、ハードマスクパターン80’bは、図1及び図3に示されるパターン領域P(図1に破線で示す)に対応する平面視略矩形状の開口85を有し、この開口85内に複数の対応パターン81bが位置している。この開口85は、エッチング方法、エッチング条件、基板30の材質などを考慮して、後述する支持部72g(図8参照)を形成するのに適した開口寸法、開口形状を有する。
次いで、対応パターン81bの下面及び側面を覆う、第1補強部731g(図7(C)参照)に対応するレジストパターン110を支持基板70の下面30sに形成し、このレジストパターン110をエッチングマスクとして支持基板70を矢印E方向で示される上方へ所定の深さまでエッチングして複数の開口75を形成する(図7(B))。なお、電子線感応型レジストを用いて電子線リソグラフィ法により、あるいは、感光性レジストを用いてフォトリソグラフィ法によりレジストパターン110を形成することができる。また、電子線リソグラフィ法とフォトリソグラフィ法を組み合わせてレジストパターン110を形成することができる。上記「所定の深さ」は、第1補強部731gの高さに応じて適宜設定される深さである。所定の深さが深いほど、形成される第1補強部731gの高さは高くなり、所定の深さが浅いほど、形成される第1補強部731gの高さは低くなる。支持基板70をエッチングする「所定の深さ」は、上記式(1)〜(5)で表わされる高さZ0の第1補強部731gと、上記式(6)から導出される高さZ1の第2補強部732gとを形成することができる程度に適宜設定され得る。
支持基板70を上記「所定の深さ」までエッチングした後、樹脂層100とレジストパターン110とを除去し、ハードマスクパターン80’b及び対応パターン81bをエッチングマスクとして支持基板70(パターン81bでマスクされている部分を除く)を矢印E方向(第2補強部732gの両側面においては矢印e方向)で示される上方へさらにエッチングする(図7(C))。このエッチングでも、ボックス層60がエッチングストッパーとして作用する。これにより、単結晶シリコン層50の非パターン領域50bに対応する位置に枠形状の支持部72gが形成されるとともに、領域50aに対応する位置に第1補強部731gが形成される。さらに、第2の実施形態においては、第1補強部731gの底側に連続する第2補強部732gが形成される。このような支持基板70のエッチングにより形成された支持部72gと第1補強部731gとの間、及び第1補強部731g同士の間に露出したボックス層60を、後工程において、基板30の主面30s側からエッチングすることにより、凹部51の底面が貫通して開口部11が形成される。なお、単結晶シリコン層50のエッチングと同様に、ウェットエッチングまたはドライエッチングによって支持基板70をエッチングすることができる。
樹脂層100とレジストパターン110とを、有機溶媒を用いて除去してもよく、また、酸素プラズマ処理等のアッシングにより除去してもよい。有機溶媒としては、例えば、レジストリムーバを使用することができる。レジストリムーバを用いて樹脂層100とレジストパターン110とを除去した後に、露出したハードマスクパターン80’a、80’b、および、凹部51の形成によって露出したボックス層60の表面に残留する有機物を除去するためにSPM洗浄を行ってもよい。SPM洗浄は硫酸過酸化水素水洗浄ともいい、例えばH2O2:H2SO4=3:1で混合した薬液を70℃〜80℃に加熱して使用する例を挙げることができる。SPM洗浄は強力な酸化作用を利用することで有機物の除去に効果がある洗浄方法である。SPM洗浄の後はIPA乾燥によって基板を乾燥してもよい。このような樹脂層100とレジストパターン110との除去を、同一工程で行ってもよく、それぞれ別の工程で行ってもよい。
次いで、ボックス層60を基板30の主面30s側からエッチングすることで凹部51の底面が貫通して開口部11を形成した後、ハードマスクパターン80’a、ハードマスクパターン80’b及び対応パターン81bを除去することにより、荷電粒子線露光用マスク1が形成される(図8)。本実施形態では、このように形成された荷電粒子線露光用マスク1における開口部11の深さは、単結晶シリコン層50の厚さに対応したものであり、1μm〜10μmの範囲内で所望の深さとなっている。なお、ハードマスク材料層80aのエッチングと同様に、ウェットエッチングまたはドライエッチングによってボックス層60をエッチングすることができる。このボックス層60のエッチングと同時に、ハードマスクパターン80’aとハードマスクパターン80’bとを除去してもよい。また、支持部72gと第1補強部731gとの間、及び第1補強部731g同士の間に露出するボックス層60をエッチングして開口部11を形成した後に、樹脂層100を除去してもよい。
このようにボックス層60をエッチングし、ハードマスクパターン80’a、80’b、対応パターン81bを除去した後の基板30に対して、SPM洗浄、APM洗浄、および、フッ酸(HF)洗浄が行われる。また、基板30の洗浄後はIPA乾燥によってマスクを乾燥してもよい。ここで、APM洗浄は、アンモニア過酸化水素水洗浄ともいい、例えば、アンモニア(NH4OH):H2O2:H2O=1:2:5で混合した薬液を70℃〜80℃に加熱して使用する例を挙げることができる。APM洗浄は有機物の除去および不溶性のパーティクルの除去に効果がある洗浄方法である。
第2の実施形態において、レジストパターン110のアライメントズレが発生したり、レジストパターン110をエッチングマスクとした支持基板70のドライエッチングにより形成される開口75の側壁にテーパーが発生したりすることがあり、傾斜や歪み等を有する第1補強部731g及び第2補強部732gが形成され得る。しかし、レジストパターン110の除去後にハードマスクパターン80’b及び対応パターン81bをエッチングマスクとして支持基板70をドライエッチングすることで、第1補強部731gが支持部72gの高さよりも低い高さで形成され、第2補強部732gが第1補強部731gよりも小さい幅で形成される。これにより、上記アライメントズレやテーパーが発生したとしても、製造される荷電粒子線露光用マスク1において、開口部11を透過する荷電粒子線が第1補強部731g及び第2補強部732gによって遮蔽されるのを防止することができる。
以上から、第2の実施形態に係る荷電粒子線露光用マスクの製造方法によって、開口部11を透過した荷電粒子線が、変形後の第1補強部731g及び第2補強部732gによって遮蔽されることなく、露光対象物に照射され得る高品質の荷電粒子線露光用マスク1を製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら制限されるものではない。
[実施例1]
<SOI基板の準備>
基板30として、シリコン単結晶を主材とする支持基板70(厚さ:400μm)、シリコン酸化膜を含むボックス層60(厚さ:1μm)、単結晶シリコン層50(厚さ:2μm)の順に積層された、直径200mmのSOI基板30を準備した。
<荷電粒子線露光用マスクの作製>
次に、上記のSOI基板30を用い、このSOI基板30の一方の主面30m側に位置する単結晶シリコン層50上に厚さ1μmのシリコン酸化膜であるハードマスク材料層80aを、熱酸化法を用いて形成するとともに、このハードマスク材料層80aの形成と同時に、SOI基板30の他方の主面30s側に位置する支持基板70上に厚さ1μmのシリコン酸化膜であるハードマスク材料層80bを熱酸化法により形成した(図4(A)参照)。
次に、上記のハードマスク材料層80a上に、電子線感応型のレジスト(スミレジストNEBシリーズ、住友化学工業株式会社製)を(例えばスピンコート法等により)塗布して、レジスト層90を形成した。次いで、電子線描画装置(JBX9500、日本電子株式会社製)内のステージ上に、他方の主面30s側がステージと対向するようにSOI基板30を配置し、SOI基板30の一方の主面30m側に形成されたレジスト層90に電子線を照射して、所望のパターン潜像を形成した。また、一方の主面30m側がステージと対向するようにSOI基板30を配置し、SOI基板30の他方の主面30s側に上記と同様に形成されたレジスト層にも電子線を照射して所望のパターン潜像を形成した。
次に、SOI基板30の一方の主面30m側におけるレジスト層90を現像して、4列×3行で碁盤の目となるように配列された複数の矩形状の凹部91(10μm×30μm)を含むレジストパターンを形成した。このレジストパターンをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチング(CHF3:25sccm、SF6:5sccm)でハードマスク材料層80aをエッチングしてハードマスクパターン80’aを形成した。
次いで、このハードマスクパターン80’aをエッチングマスクとして、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチング(O2:5sccm、CHF3:45sccm)で単結晶シリコン層50をエッチングすることにより、単結晶シリコン層50におけるパターン領域P’に相当する領域内に複数の凹部51を形成した。
次に、複数の凹部51を覆うように単結晶シリコン層50上にスピンコート法により樹脂材料の溶液を塗布して、樹脂層100(厚さ:15μm)を形成した。
次に、SOI基板30の他方の主面30s側にレジスト層を形成し、レジスト層を露光・現像して開口(300mm×300mm)を有するレジストパターンを形成した。このレストパターンをエッチングマスクとして、上記のSOI基板30の一方の主面30m側におけるハードマスク材料層80aに対するエッチングと同様に、フッ素系ガスを用いた反応性イオンエッチングでSOI基板30の他方の主面30s側におけるハードマスク材料層80bをエッチングしてハードマスクパターン80’bを形成した。
次いで、上記の開口に対応する支持基板70の下面(他方の主面30sに相当)にスピンコート法を用いてフォトレジスト(厚さ:20μm)を塗布し、フォトリソグラフィ法により、下補強部73gに対応するレジストパターン110(幅:50μm)を形成した後、支持基板70を150μmの深さまでエッチングした(図5(B)参照)。
次に、有機溶媒である市販のレジストリムーバを使用して、樹脂層100とレジストパターン110を除去し、支持基板70を、ボックス層60までさらにエッチングし、支持部72g及び下補強部73gを形成した。次いで、露出するボックス層60と、SOI基板30の両面に形成されたハードマスクパターン80’a、80’bとを、エッチングにより同時に除去し、荷電粒子線露光用マスク1を形成した。
このように作製された荷電粒子線露光用マスク1における補強部13gの高さZ0、補強部13gの上面13gtと側壁面13gsとのなす角度θ1、及び補強部13gの上面13gtの一端13gtA(または13gtB)と、底面13guの一端13guA(または13guB)との間の幅S2とを測定した。測定結果を下記の表1に示す。
[実施例2]
支持基板70の下面(他方の主面30sに相当)にハードマスクパターン80’bを形成するとともに、幅が20μmの対応パターン81b(第2補強部732gに対応)を形成し、この対応パターン81bを覆うようにフォトレジスト110(厚さ:20μm)を塗布した後、支持基板70を150μmの深さまでエッチングし、さらにその後、第2補強部732gに対応する対応パターン81bを覆っていたフォトレジスト110を除去し、支持基板70をさらにボックス層60までエッチングすることにより、第1補強部731gと、当該第1補強部731gに連続する第2補強部732gを形成した他は、上述の実施例1と同様にして、荷電粒子線露光用マスク1を作製した。
このように作製された荷電粒子線露光用マスク1における第1補強部131gの高さZ0、第1補強部131gの上面131gtと側壁面131gsとのなす角度θ1、及び第1補強部131gの上面131gtの一端131gtA(または131gtB)と、底面131guの一端131guA(または131guB)との間の幅S2、第2補強部132gの高さZ1、第2補強部132gの第1端部132gtと側壁面132gsとのなす角度θ2、及び第2補強部132gの第1端部132gtの一端132gtA(または132gtB)と、第2端部132guの一端132guA(または132guB)との間の幅S6を測定した。測定結果を下記の表1に示す。
[比較例1]
支持基板70の下面(他方の主面30sに相当)にハードマスクパターン80’bを形成するとともに、下補強部73gと同様の幅を有する補強部に対応するハードマスクパターン(幅:50μm)を形成し、支持基板70をボックス層60までエッチングすることにより、支持部72gと同じ高さの補強部を形成した他は、上述の実施例1と同様にして、荷電粒子線露光用マスクを作製した。
このように作製された荷電粒子線露光用マスクにおける補強部の高さZ0、補強部の上面と側壁面とのなす角度θ1、及び補強部の上面の一端と、この上面の一端と同じ側に位置する底面の一端との間の幅S2を測定した。測定結果を下記の表1に示す。
また、表1の計測結果から、実施例1における荷電粒子線露光用マスク1の補強部は上記式(1)を満たし、実施例2における荷電粒子線露光用マスク1の第2補強部は上記式(2)を満たすことが確認された。他方、比較例1における荷電粒子線露光用マスクの補強部は、上記式(1)を満たさないことが確認された。以上から、上記式(1)を満たす補強部や上記式(2)を満たす第2補強部が形成された荷電粒子線露光用マスクは十分な強度を有するとともに、当該マスクによれば、その開口部11を透過した光が変形後の補強部に遮蔽されることなく露光対象物に照射され得るものと考察される。