JP6936586B2 - 農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法 - Google Patents

農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6936586B2
JP6936586B2 JP2017034865A JP2017034865A JP6936586B2 JP 6936586 B2 JP6936586 B2 JP 6936586B2 JP 2017034865 A JP2017034865 A JP 2017034865A JP 2017034865 A JP2017034865 A JP 2017034865A JP 6936586 B2 JP6936586 B2 JP 6936586B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
agricultural house
heat ray
film
shielding means
resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017034865A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017153475A (ja
Inventor
久雄 奥村
久雄 奥村
小林 豊
豊 小林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyobo Co Ltd filed Critical Toyobo Co Ltd
Publication of JP2017153475A publication Critical patent/JP2017153475A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6936586B2 publication Critical patent/JP6936586B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A40/00Adaptation technologies in agriculture, forestry, livestock or agroalimentary production
    • Y02A40/10Adaptation technologies in agriculture, forestry, livestock or agroalimentary production in agriculture
    • Y02A40/25Greenhouse technology, e.g. cooling systems therefor

Landscapes

  • Cultivation Of Plants (AREA)
  • Greenhouses (AREA)

Description

本発明は、日中は天窓を閉鎖し夜間は天窓を開放する、太陽光を利用する農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法に関する。
農業ハウスを利用して植物を栽培することは、囲われた空間を制御して植物の育成に最適な環境を作り出し、植物の収穫量増および高品質化を図れることから広く行われている。特に、近年は、人口増に伴う食料危機の問題から、農業ハウスを用いた植物の効率的な栽培方法についてさまざまな研究が進められている。
植物の光合成は、下記式(1)に示されるように、光エネルギーを駆動源として、空気中から吸収した炭酸ガスと、地中等からを吸収した水から、酸素ガスと炭水化物とを生成する反応であり、植物を大量かつ経済的に栽培するためには、人工光よりも太陽光を利用することが好ましい。
6CO+ 6HO → 6O + C12 (1)
太陽光を利用する農業ハウスにおいては、太陽光には、植物の光合成に利用される波長400〜700nmの光(以下、「可視光」という場合がある。)と共に、農業ハウス内の温度を上昇させる波長800〜1200nmの光(以下、「熱線」という場合がある。)が含まれており、農業ハウス内の温度上昇を防ぐためには、熱線を遮断することが必要となる。これは、農業ハウス内の温度が熱線により上昇すると、植物の生育に適した温度(以下、「適温」という。)に保つために、換気、除湿冷却等に手間、コストを要するためである。
また、上記式(1)からもわかるように、炭酸ガス濃度を高く維持することにより、光合成を活発に行わせて植物の生育を促進させることができる。太陽光を利用した農業ハウスでの植物の栽培において、農業ハウス内の二酸化炭素濃度を高く維持することにより植物の生育を促進させることは、特許文献1〜3で提案されている。
一方、光合成が活発に行われる日中は太陽光により農業ハウス内の温度が上昇するため、農業ハウス内を適温に保つための経済的な手段として、一般的には換気が採用されている。例えば、昼間日射量が十分な場合には、農業ハウス内の温度が40℃を超えることも多くなるため、自然換気または強制通気により、農業ハウス内の温度は20〜25℃程度の適温に維持される。
しかしながら、換気に伴い、農業ハウス内に供給した二酸化炭素が外部に放出されるため、特に日中において農業ハウス内の温度を適温に保ちつつ二酸化炭素濃度を高く維持することは難しい。
特許文献3では、日中、植物栽培施設を事実上密閉状態として、施設内の炭酸ガス濃度を高く保つと共に、冷房設備を用いて施設内の温度を20℃前後に保つことが提案されているが、日中に冷房設備を稼働させて、広い施設内の温度を20℃前後に維持することは、多大なエネルギーが必要となり経済的とはいえない。
特許第2963427号公報 特許第3917311号公報 特開昭53−098246号公報
本発明の課題は、植物の収穫量当たりに投入するエネルギーが少なく植物を経済的かつ効率良く栽培でき、植物への供給水量を少なくでき乾燥地域等においても植物を栽培することができる農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法を提供することにある。
本発明の上記課題は、日中は天井部に設けた天窓を閉鎖し、夜間は天井部に設けた天窓を開放する、太陽光を利用する農業ハウスであって、農業ハウス内部に少なくとも、二酸化炭素を供給するCO供給手段と、熱線遮蔽手段と、農業ハウス内部を冷却する除湿冷却手段を備え、該熱線遮蔽手段は、波長400〜700nmの光の平均透過率が80%以上で、波長800〜1200nmの光の平均反射率が70%以上である熱線反射フィルムを用いて形成されており、該熱線遮蔽手段には、所定の間隔で複数の貫通孔が形成されている農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法により解決される。
本発明者等は、農業ハウス内の二酸化炭素濃度を高く維持できると共に、農業ハウス内を経済的に適温に保つことのできる農業ハウスとして、図3に示すような農業ハウス(以下、「先の農業ハウス」という。)を提案し、2011年3月に、農業情報学会より、「農業・食料産業イノベーション大賞」を受賞したところである。
先の農業ハウスは、図3に示すように、次のような特徴を有するものである。
a)農業ハウスの天井部101と栽培部102とを透明な樹脂板である「サニーコート103」で断熱・区画したこと
b)「サニーコート103」の上部に、「近赤外線吸収フィルム104」を張り渡し、温度を上昇させる波長800nm以上の光を吸収して遮断すると共に、植物の生育に必要な可視光を透過するようにしたこと
c)天井部101に設けた天窓105を介して空気を換気し、「近赤外線吸収フィルム104」の発熱による温度上昇を防ぐようにしたこと
d)該栽培部102に、「CO発生装置106」を設けて二酸化炭素濃度を高く維持すると共に、「ヒートポンプ107」を設けて温度を適温に保つようにしたこと
このように、本発明者等が先に提案した農業ハウスは、農業ハウスの天井部と栽培部とを透明な樹脂板である「サニーコート」で断熱・区画することにより、二酸化炭素が栽培部から漏れ出ないので、栽培部の二酸化炭素濃度を経済的に高濃度に保つことができ、また、「近赤外線吸収フィルム」の発熱を栽培部と断熱・区画された天井部から、天井部に設けた天窓を介して外部に放出するので、栽培部の温度上昇を防止できるものである。
本発明者等は、日中は天窓を閉鎖して農業ハウス内の二酸化炭素濃度を経済的に高濃度に維持し、夜間は天窓を開放して農業ハウス内の温度を低下させる、太陽光を利用する農業ハウスにおいて、先の農業ハウスの「サニーコート」および「近赤外線吸収フィルム」に代えて、特定の構造・物性を備えた熱線遮蔽手段を用いることにより、先の農業ハウスに比べ、植物の栽培を一層経済的かつ効率的に行えることを見出し、本発明を成したものである。
本発明の要旨を以下に示す。
(1)日中は天井部に設けた天窓を閉鎖し、夜間は天井部に設けた天窓を開放する、太陽光を利用する農業ハウスであって、
農業ハウス内部に少なくとも、二酸化炭素を供給するCO供給手段と、熱線遮蔽手段と、農業ハウス内部を冷却する除湿冷却手段を備え、
該熱線遮蔽手段は、波長400〜700nmの光の平均透過率が80%以上で、波長8
00〜1200nmの光の平均反射率が70%以上である熱線反射フィルムを用いて形成されており、
該熱線遮蔽手段には、所定の間隔で複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする農業ハウス。
(2)前記熱線反射フィルムが、屈折率が異なる少なくとも2種類の樹脂層が交互に積層された多層積層フィルムである(1)に記載の農業ハウス。
(3)前記多層積層フィルムの前記2種類の樹脂層の少なくとも一つが、縮合型芳香環を有する樹脂からなる樹脂層である(2)に記載の農業ハウス。
(4)前記熱線遮蔽手段に設けられる前記複数の貫通孔の開孔率が0.5〜10%の範囲であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の農業ハウス。
(5)前記熱線遮蔽手段は、前記熱線反射フィルムに貫通孔が穿設されている(1)〜(4)のいずれかに記載の農業ハウス。
(6)前記熱線遮蔽手段は、前記熱線反射フィルムを細帯状に裁断した細帯状テープを経糸および/または緯糸として編織成したものであり、該経糸間および/または緯糸間に貫通孔が形成されている(1)〜(4)のいずれかに記載の農業ハウス。
(7)前記熱線反射フィルムの波長350nmの光線透過率が10%以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の農業ハウス。
(8)前記熱線反射フィルムの最外層の外側に、紫外線吸収剤を含有するバインダー樹脂からなる樹脂層が形成されていることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の農業ハウス。
(9)前記バインダー樹脂がフッ素樹脂であることを特徴とする(8)に記載の農業ハウス。
(10)前記農業ハウスが、太陽光により光合成を行う果菜類の栽培に用いられるものである(1)〜(9)のいずれかに記載の農業ハウス。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の農業ハウスを用いた植物の栽培方法であって、日中は天井部に設けた天窓を閉鎖して二酸化炭素濃度を調整し、夜間は天井部に設けた天窓を開放して温度調整を行うと共に、少なくとも日中は、農業ハウス内部の温度を35℃以下、二酸化炭素濃度を500〜1500ppmおよび湿度飽差を4g/m以下に制御して植物を栽培することを特徴とする植物の栽培方法。
本発明の農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法では、光合成が活発に行われる日中は、天井部に設けた天窓を閉鎖して農業ハウスを密閉状態とし、農業ハウス内の温度、二酸化炭素濃度および湿度を、光合成が活発に行われる範囲に維持・制御することができ、しかも、可視光の透過率が高く、熱線の反射率が高い熱線反射フィルムを用いて形成された熱線遮蔽手段を用いることにより、植物の生育を妨げることなくエネルギーコストを低減できる。
また、光合成が活発に行われない夜間は、天井部に設けた天窓を開放して、農業ハウス内の温度を翌日の日中の温度上昇に備えて低下させることができ、しかも、熱線反射フィルムに所定の間隔で複数の貫通孔を形成した熱線反射体を熱線遮蔽手段として用いることにより、農業ハウス下部の日中に加熱された空気を熱線遮蔽手段を通して外部に逃がすことができ、さらに、夜間、特に朝方に、屋根に近接する上部の空気が冷やされた場合でも、熱線遮蔽手段下面に生じた結露が水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色、劣化する等の品質低下を生じたり、フィルム自体に劣化が生じるのを防止することができる。
また、本発明では、日中は天井部に設けた天窓を閉鎖して、農業ハウス内の水分が外部に逃げにくくなるため、植物への供給水量を少なくでき、乾燥地域等においても植物を栽培することができる。
また、本発明では、所定の間隔で複数の貫通孔を形成した熱線遮蔽手段を用いることにより、紫外線透過率を、熱線反射フィルムの紫外線劣化を防止しつつ、果実の着色、ハチによる受粉活動を阻害しない範囲に調整することができる。
本発明の農業ハウスの実施形態を示す模式図である。 本発明の農業ハウスにおいて好適に用いることのできる熱線遮断手段の例であって、フィルムを細帯状に裁断した細帯状テープを編織成したものの一部正面図である。 先の農業ハウス(本願発明者等が提案し、農業・食料産業イノベーション大賞を受賞した農業ハウス)を示す模式図である。
以下に、本発明の実施の形態について、図面も用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
図3は先の農業ハウスを示す模式図であって、先に説明したように、農業ハウスの天井部101と栽培部102とを透明な樹脂板である「サニーコート103」で断熱・区画して、栽培部102の二酸化炭素濃度を経済的に高濃度に保つと共に、「近赤外線吸収フィルム104」の発熱を栽培部102と断熱・区画された天井部101から、天窓105を通して外部に放出し、栽培部102の温度上昇を防止するものである。
図1は本発明の熱線反射フィルムを設けた農業ハウスの一例を示す模式図である。この太陽光を利用する農業ハウス1には、上部に本発明の熱線遮蔽手段3が張り渡され、下部には、農業ハウス1の内部に二酸化炭素を供給するCO供給手段2及び農業ハウス1の内部を冷却する除湿冷却手段4が備えられている。この農業ハウス1では、日中は天窓5を閉鎖して農業ハウス内の二酸化炭素濃度を経済的に高濃度に維持し、夜間は天窓5を開放して農業ハウス内の温度を低下させる。
この熱線遮蔽手段3は、波長400〜700nmの光の平均透過率が80%以上、波長800〜1200nmの光の平均反射率が70%以上である熱線反射フィルムを用いて形成され、所定の間隔で複数の貫通孔を形成したものである。
本発明の農業ハウスは、「サニーコート」のような樹脂板を設けないため、先の農業ハウスに比べて、次のような優れた点を有している。
1)植物の生育に必要な可視光の透過率を高めることができる。(「サニーコート」を設けた場合には、図3にも示されているように、可視光の透過率は高々70%程度と低い。)
2)農業ハウスの設備費を軽減できる。
3)夜間、特に朝方に、栽培部と天井部との間の温度差が大きくなるため、「サニーコート」の下面に結露が生じて水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色・劣化するという問題が生じない。
また、先の農業ハウスでは、太陽光に含まれる熱線を遮断するために「近赤外線吸収フィルム」を用いているが、このような熱線吸収タイプのフィルムでは熱線を吸収してフィルム自体が発熱し、農業ハウス内の温度を上昇させる。一方、本発明の農業ハウスでは「波長800〜1200nmの光の平均反射率が70%以上である熱線反射フィルム」という熱線反射タイプのフィルムを用いるため、農業ハウス内の温度を上昇させにくいものである。
次に、本発明の農業ハウスについて、順次説明する。本発明の農業ハウスは、太陽光を利用するものである。LED等の人工光を用いると、光合成の駆動源である光エネルギーの量を調整・制御できるものの、照射エネルギーが必要となるため、植物の大量生産には適さない。
そして、太陽光を利用する農業ハウスでは、太陽光には、植物の生育に必要な可視光と共に、農業ハウス内の温度を上昇させる熱線が含まれているため、農業ハウス内を適温に保つために、自然換気、強制通気等の換気が経済的な冷却手段として一般に採用されるが、換気に手間・コストを要し、また、換気により病害虫が農業ハウス内に侵入しやすくなる。
また、二酸化炭素濃度を高く維持する農業ハウスでは、できるだけ二酸化炭素を外部に逃がさないために換気率を低く保つ必要があるが、そのためには、日中に冷房設備を稼働させ広い農業ハウス内の温度を適温に維持しなければならず、冷房に多量のエネルギーを要する。
本発明の農業ハウスは、光合成が活発に行われる日中は、天井部に設けた天窓を閉鎖し農業ハウスを密閉状態として、二酸化炭素を供給するCO供給手段により、農業ハウス内の二酸化炭素濃度を光合成が活発に行われる範囲に維持・制御すると共に、除湿冷却手段により、農業ハウス内の温度および湿度を光合成が活発に行われる範囲に維持・制御することにより、植物を効率良く栽培することができる。
さらに、該熱線遮蔽手段として、可視光の平均透過率が80%以上と高く、熱線の平均反射率が70%以上と高い熱線反射フィルムを用いることにより、植物の育成を妨げずに、農業ハウス内の温度上昇を防ぎ、適温の維持に要するエネルギーコストを低減することができる。
また、本発明の農業ハウスは、光合成が行われない夜間は、天井部に設けた天窓を開放して、農業ハウス内の温度を翌日の日中の温度上昇に備えて低下させるが、熱線反射フィルムに所定の間隔で複数の貫通孔を形成することにより、農業ハウス下部の日中に加熱された空気を熱線反射フィルムを通して外部に逃がすことができ、また、夜間、特に朝方に、屋根に近接する上部の空気が冷やされた場合でも、熱線反射フィルム下面に生じた結露が水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色、劣化する等の品質低下を生じたり、フィルム自体に劣化が生じるのを防止することができる。
本発明の農業ハウス内部に備えられる、農業ハウス内部に二酸化炭素を供給するCO供給手段としては、公知の各種手段を用いることができる。例えば、炭酸塩または重炭酸塩を酸で中和させる手段、炭化水素類を燃焼させる手段、液化炭酸ガスを用いる手段等が挙げられるが、経済的であり、不純物が少ないことから、LPガス、液化天然ガスを燃焼させる手段を好適に用いることができる。
本発明の農業ハウス内部に備えられる、農業ハウス内部を冷却する手段としては、ヒートポンプによる熱交換のような除湿冷却手段を用いる。
農業ハウス内の冷却には、微細な霧を噴霧して蒸発時の気化冷却を利用して冷却する細霧冷却手段が一般的に用いられるが、本発明のような日中密閉される農業ハウスでは、換気を行わないため水蒸気が飽和状態となり、細霧がそもそも気化しないので、細霧冷却手段を用いて冷却することはできない。
本発明の農業ハウスに用いられる熱線遮蔽手段の第1の特徴は、熱線遮蔽手段が、一般の農業ハウスで用いられているような、金属蒸着層、金属箔、金属含有層の金属により熱線のみならず可視光をも反射するフィルムではなく、光学干渉フィルター、合わせガラスの分野で使用される熱線反射フィルムを用いて形成されていることにある。
具体的には、この熱線反射フィルムは、太陽光に含まれる可視光の平均透過率が80%以上と高く、また、太陽光に含まれる熱線の平均反射率が70%以上と高いものである。
可視光の平均透過率が80%以上という高い熱線反射フィルムを用いることにより、光合成の駆動源となる可視光を植物に十分に供給できるので、植物の生育を十分に促進することができる。
また、熱線の平均反射率が70%以上という高い熱線反射フィルムを用いることにより、農業ハウス内の温度を上昇させる熱線を十分に遮断でき、さらに、熱線吸収フィルムのようにフィルム自体の発熱も少ないため、農業ハウス内の温度の上昇を抑えることができ、除湿冷房に要するコストを低減することができる。
このような可視光の高い平均透過率および熱線の高い平均反射率を有する熱線反射フィルムとしては、
〇特表平9−506837号公報に記載されているような、光学干渉フィルターに用いられる、ポリエステル系多層光学フィルム、
〇特表平11−508380号公報に記載されているような、窓ガラスの表面に貼着される、多層ポリマフィルムと透明導電体とを含むフィルム、
〇国際公開第2005/040868号に記載されているような、合わせガラスでガラスに積層して用いられる、積層ポリエステルフィルム、
〇国際公開第2013/080987号に記載されているような、合わせガラスでガラスに積層して用いられる、二軸延伸積層ポリエステルフィルム、
〇特開2014−228837号公報に記載されているような、合わせガラスでガラスに積層して用いられる、二軸延伸積層ポリエステルフィルム、
等の多層積層フィルムを好適に用いることができる。
これらの多層積層フィルムは、農業ハウスにおいて一般に用いられているような、熱線等を金属蒸着層、金属箔、金属含有層等で反射するものではなく、屈折率が異なる少なくとも2種類の樹脂層が交互に積層された多層積層フィルムであって、太陽光のうち可視光は透過させ、熱線を選択的に反射することができる。
本発明における多層積層フィルムは、上記特性を有するものであれば特に制限されないが、屈折率の異なる少なくとも2種類の樹脂層が交互に積層されていることが好ましい。屈折率の異なる樹脂層の交互積層による反射は、反射波長は樹脂層の光学厚さ(屈折率×厚み)によって、反射率は樹脂層の総数と樹脂層間の屈折率差によって設計することができ、所望の反射特性となるように、樹脂の選択および樹脂層の厚さや積層数を調整することができる。
多層積層フィルムの樹脂層を形成する樹脂としては、それ自体公知のものを採用でき、ポリエステル、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエーテル、ポリケトン、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリオレフィン、ポリフルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレン硫黄、ポリ塩化ビニール、ポリエーテルイミド、テトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトンが挙げられ、これらはホモポリマーに限られず、共重合であってもよい。また、樹脂間の屈折率差を高めやすいことから、少なくとも樹脂層の一つが、屈折率を高くしやすいナフタレン環などの縮合型芳香環を樹脂の繰り返し単位を有する樹脂が好ましく、共重合成分として存在させても良い。
これらの中でも、屈折率の高い樹脂層に用いる樹脂としては、延伸によって高度の分子配向を発現しやすいことから結晶性を有する熱可塑性樹脂が好ましく、特に融点が200℃以上の熱可塑性樹脂が好ましい。そのような観点から、具体的な熱可塑性樹脂としては、ポリエステルが好ましく、さらにポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましく、特に屈折率が高く、高度の延伸倍率で延伸できることから、縮合型芳香環を有するポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
一方、屈折率の低い樹脂層に用いる樹脂としては、屈折率の高い樹脂層と十分な屈折率差が発現でき、かつ必要な密着性を維持できるものであれば、特に制限されない。例えば屈折率の高い樹脂層に用いた樹脂に屈折率を低くできる共重合成分を共重合した樹脂なども用いることができる。また、延伸などによって屈折率を高める必要がないことから非晶性樹脂や屈折率の高い樹脂層の樹脂よりも十分に低い融点を有する樹脂を用いることもできる。例えば、エチレンテレフタレート成分を含む非晶性ポリエステル等を好適に用いることができる。
本発明の農業ハウスに用いられる熱線遮蔽手段の第2の特徴は、熱線遮蔽手段に所定の間隔で複数の貫通孔が形成されていることにある。
本発明の農業ハウスに用いられる熱線遮蔽手段は、熱線を十分に遮断する必要があることから、図1に示すように、農業ハウスの上部全面に亘って張られ、農業ハウスを上部と下部に区画するものであるが、農業ハウスの上部と下部との通気性を良好にするため、所定の間隔で複数の貫通孔が形成される。
本発明の農業ハウスは、光合成が行われない夜間は、天井部に設けた天窓を開放して、農業ハウス内の温度を翌日の日中の温度上昇に備えて低下させるが、熱線遮蔽手段に所定の間隔で複数の貫通孔を形成することにより、農業ハウス下部の日中に加熱された空気を熱線遮蔽手段を通して外部に逃がすことができ、また、夜間、特に朝方に、屋根に近接する上部の空気が冷やされた場合でも、熱線遮蔽手段下面に結露が生じ、水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色、劣化する等の品質低下を生じたり、熱線遮蔽手段自体に劣化が生じるのを防止することができる。
熱線遮蔽手段に形成される複数の貫通孔の開孔率は、0.5〜10%、好ましくは1〜5%の範囲とするのが好ましい。
なお、本発明における「開孔率」は、熱線遮蔽手段の一方の表面における縦横それぞれ10cmの正方形の部分を、表面垂直方向から表面観察を行った場合に、裏面側が遮る物なく見える部分を開孔とし、その面積を開孔面積の総和(Scm)を求めて、式:[S(cm)/100(cm)]×100により求めたものである。
開孔率が0.5%以上であると熱線遮蔽手段の通気性を良好なものとすることができ、光合成が行われない夜間に天井部に設けた天窓を開放して、農業ハウス内の温度を翌日の日中の温度上昇に備えて低下させる場合に、農業ハウス下部の日中に加熱された空気を熱線反射フィルムを通して外部に逃がすことができ、また、夜間、特に朝方に、屋根に近接する上部の空気が冷やされた場合でも、フィルム下面に生じた結露が水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色、劣化する等の品質低下を生じたり、フィルム自体に劣化が生じるのを防止できるため好ましい。さらに、開孔率が1%以上であると熱線反射フィルムの通気性がさらに良好となるためより好ましい。
また、開孔率が10%以下であると、熱線反射フィルムによってもたらされる熱線反射機能が大きく低下することがないため好ましい。さらに、開孔率が5%以下であると熱線反射能力の低下をより小さくできるためより好ましい。
熱線遮蔽手段としては、熱線反射フィルムに貫通孔を穿設した構造のものを用いることができる。
貫通孔の配置は、熱線遮蔽手段の強度、剛性等の物性ができるだけ均一となるように、所定の間隔で穿設されるのが好ましい。貫通孔の間隔は、熱線遮蔽手段の通気性をできるだけ均一なものとするため、30cm以下、好ましくは20cm以下、さらに好ましくは10cm以下とする。
熱線遮蔽手段の具体的な構造としては、単に熱線反射フィルムに所定間隔で円形、三角形、四角形等の所定形状の穴を穿設したものでも良いが、熱線反射体は夜間、冬期等には巻取られることがあるので、熱線反射体の巻取り性を良好にするために、穴の形状は、熱線反射体の長手方向の長さよりも幅方向(すなわち、長手方向と直交する方向)の長さが長いものとすることが好ましい。
熱線遮蔽手段の巻取り性、耐ブロッキング性、耐引裂性、耐久性等を良好にするためには、熱線遮蔽手段を1枚の熱線反射フィルムで形成するよりも、熱線反射フィルムを細帯状に裁断した細帯状テープを経糸および/または緯糸として編織成した織編物とするのが好ましい。さらに、熱線反射フィルムの細帯状テープを経糸または緯糸とし、透明な糸を緯糸または経糸として織成した織物とするのがより好ましい。細帯状テープとしては、熱線反射フィルムを幅1〜50mm、好ましくは幅2〜20mm、より好ましくは幅4〜8mm程度の細帯状に裁断(スリット加工)したものを用いる。
織編物の好適な構造としては、図2(a)、(b)、(c)に示すような、細帯状テープ7を透明な糸8で織編成したものが挙げられる。図2(a)の編織成物は、細帯状テープ7を経糸にして織機に掛けて透明な糸8を横入れして織られたものであり、図2(b)の編織成物は、細帯状テープ7を緯糸、透明な糸8を経糸として織られたものであり、また、図2(c)の編織成物は、細帯状テープ7を経糸、透明な糸8を緯糸として編まれたものである。
織編物における貫通孔は、経糸間および/または緯糸間に形成され、貫通孔の開孔率は、経糸、緯糸の密度などにより調整することができる。
本発明の熱線遮蔽手段は、日中は太陽光に曝されることから、紫外線による劣化を防止するために、熱線遮蔽手段を形成する熱線反射フィルムの波長350nmの光線透過率(以下、「紫外線透過率」という。)を10%以下とすることが好ましい。
熱線反射フィルムが、ナフタレンジ環等の縮合型芳香環を有する樹脂を含有している場合には、熱線反射フィルムの紫外線透過率は自ずと低くなるので、必ずしも紫外線吸収層を設ける必要はないが、熱線反射フィルムの紫外線透過率が高い場合には、熱線反射フィルムの最外層の少なくとも片側に紫外線吸収層を設けて、紫外線透過率を低下させることが好ましい。
紫外線吸収層に含有させる紫外線吸収剤として、例えばトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サルチレート系紫外線吸収剤を挙げることができ、好ましくはトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いることができる。具体的には、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4,6−ビス(1−エチル−1−フェニルエチル)フェノール、フェノール、2−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1,1−ジメチルエチル)4−メチル、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−1,1,3,3−テトラメチルブチル]フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)ロキシ]フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニシル)−1,3,5−トリアジン、ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9分岐および鎖状アルキルエステル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチロキシ)フェノール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが例示される。
また、紫外線吸収層のバインダー樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、メラミン系樹脂、セルロース樹脂、およびポリアミド樹脂を例示することができる。これらのバインダー樹脂の中で、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂が光安定性に優れるため好ましい。
紫外線吸収層を設ける手法としては、例えば、多層積層フィルムの表面に共押出法により紫外線吸収剤層を設ける手法、コーティングなどの方法で紫外線吸収剤層を設ける手法が挙げられる。
上記のように、熱線遮蔽手段の紫外線劣化防止の観点からは、紫外線透過率を10%以下と低くすることが好ましいが、紫外線を過度に遮蔽しすぎると、ナスなどの果実が生育した際の色づきが悪い、農業ハウス内で蜂が花に十分に寄りつかず受粉活動が正常に行われない等の問題が生じる。
熱線遮蔽手段の紫外線透過率が低すぎる場合には、次のようにして、紫外線透過率が高くなうように調整できる。
熱線遮蔽手段が、熱線反射フィルムに貫通孔を穿設したものである場合には、穿設する貫通孔の大きさ、密度を調整して開孔率を調整することにより、熱線遮蔽手段が紫外線を過度に遮蔽しすぎないように調整することができる。
また、熱線遮蔽手段が熱線反射フィルムの細帯状テープと透明な糸との編織物である場合には、編織物を構成する細帯状テープおよび/または透明な糸の密度を調整し、細帯状テープ間および/または透明な糸間に形成される貫通孔の開孔率を調整すること、細帯状テープとして、熱線反射フィルムと共にポリエチレンフィルムのような紫外線透過率の高い透明フィルムを用いること等により、熱線遮蔽手段が紫外線を過度に遮蔽しすぎないように調整できる。
一般的には、熱線反射フィルムが、ナフタレン環等の縮合型芳香環を有する樹脂を含有している場合には、熱線反射フィルムの紫外線透過率が低くなりすぎる傾向があるため、この場合には、熱線遮蔽手段を表面垂直方向から表面観察を行った場合に、熱線遮蔽手段に占める熱線反射フィルムの面積比率(以下、「カバー率」という。)を、95%以下とするのが好ましい。
本発明の農業ハウスは、太陽光により光合成を行う果菜類、例えば、トマト、ナス、ピーマン、パプリカ、キュウリ、スイカ、カボチャ、トウガラシ、えんどう、ソラマメ、イチゴ、ブロッコリー、カリフラワー等の栽培に好適に用いることができる。
本発明の農業ハウスを用いた植物の栽培方法では、光合成が活発に行われる日中は、天井部に設けた天窓を閉鎖して農業ハウスを密閉状態とし、農業ハウス内の温度、二酸化炭素濃度および湿度を、光合成が活発に行われる範囲に維持・制御するものであるが、一時的に日中天窓を開放することまで妨げるものではない。具体的には、農業ハウス内部の温度を35℃以下、二酸化炭素濃度を500〜1500ppmおよび湿度飽差を4g/m以下に維持・制御して植物の栽培を行うのが好ましい。
農業ハウス内部の温度は、栽培する植物の適温、最高限界温度に応じて設定することができる。例えば、日中における果菜類の適温および最高限界温度は、トマト[20〜25℃、35℃]、ナス[23〜28℃、35℃]、ピーマン[25〜30℃、35℃]、キュウリ[23〜28℃、35℃]、スイカ[23〜28℃、35℃]、カボチャ[20〜25℃、35℃]とされている。このことから、農業ハウス内部の温度は、35℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20〜30℃とするのが望ましい。
通常の空気の二酸化炭素濃度は300ppm程度であるが、農業ハウス内部の二酸化炭素濃度を500〜1500ppmに設定することにより植物の光合成を大幅に促進することができる。二酸化炭素濃度が500ppm未満では光合成の促進効果が十分ではなく、また、1500ppmを超えても光合成はさほど促進されないので経済的メリットが小さい。植物の水分状態は、相対湿度よりも湿度飽差(ある温度と湿度の空気に、あとどれだけ水蒸気の入る余地があるかを示す指標で、空気1m当たりの水蒸気の空き容量をg数で表される)に強く影響を受けるが、本発明では、除湿冷却手段により、農業ハウス内部の湿度飽差を4g/m以下に維持・制御して植物の栽培を行う。
農業ハウス内部の湿度飽差は栽培する植物に適する範囲に設定することができるが、一般的には、湿度飽差が大きくなりすぎると、植物は気孔を閉じ蒸散を行われなくなり、光合成が活発に行われなくなるので、農業ハウス内部の湿度飽差はこのましくは4g/m以下、より好ましくは3.5g/m以下とするのが望ましい。
また、湿度飽差が小さくなりすぎると、植物と空気に水蒸気圧差がなくなり、気孔が開いていても蒸散は起こらず、炭酸ガスも吸収されなくなり、光合成が活発に行われなくなるので、農業ハウス内部の湿度飽差は好ましくは2g/m以上、より好ましくは2.5g/m以上とするのが望ましい。
農業ハウス内の温度、二酸化炭素濃度および湿度を上記の範囲に維持・制御するためには、例えば、農業ハウス内に気温センサー、COセンサーおよび湿度センサーを設置し、これらの測定値に応じて、CO供給手段および除湿冷却手段の運転状態を調整すれば良い。
また、光合成が活発に行われる温度、二酸化炭素濃度および湿度は、植物の種類、生育段階等により異なるので、農業ハウス内の温度、二酸化炭素濃度および湿度の目標値は、きめ細かく設定・調整することが望ましい。
このように、本発明の農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法では、光合成が活発に行われる日中は、天井部に設けた天窓を閉鎖して農業ハウスを密閉状態とし、農業ハウス内の温度、二酸化炭素濃度および湿度を、光合成が活発に行われる範囲に維持・制御することができ、しかも、可視光の透過率が高く、熱線の反射率が高い熱線反射フィルムを用いて形成した熱線遮蔽手段を用いることにより、植物の生育を妨げることなくエネルギーコストを低減できる優れたものである。
また、本発明は、光合成が活発に行われない夜間は、天井部に設けた天窓を開放して、農業ハウス内の温度を翌日の日中の温度上昇に備えて低下させることができ、しかも、所定の間隔で複数の貫通孔を形成した熱線遮蔽手段を用いることにより、農業ハウス下部の日中に加熱された空気を熱線遮蔽手段を通して外部に逃がすことができ、さらに、夜間、特に朝方に、屋根に近接する上部の空気が冷やされた場合でも、熱線遮蔽手段下面に生じた結露が水滴となって植物に当たり、植物の果実、葉、花等が変色、劣化する等の品質低下を生じたり、フィルム自体に劣化が生じるのを防止することができる優れたものである。
また、本発明では、日中は天井部に設けた天窓を閉鎖して、農業ハウス内の水分が外部に逃げにくくなるため、植物への供給水量を少なくでき、乾燥地域等においても植物を栽培することができる優れたものである。
また、本発明では、所定の間隔で複数の貫通孔を形成した熱線遮蔽手段を用いることにより、紫外線透過率を、果実の着色、ハチによる受粉活動を阻害しない範囲に調整することができる優れたものである。
以下、実施例・比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。
1.熱線遮断フィルム
熱線遮断フィルムとして、熱線反射タイプフィルム(以下、「フィルムA」という。)及び熱線吸収タイプのフィルム(以下、「フィルムB」という。)を熱線遮断フィルムとして用いて、農業ハウス内の温度上昇を比較した。
フィルムAとして、次のような構造、物性等を有するフィルムを用いた。
*第1の層(PEN樹脂、137層)と第2の層(PETG樹脂、138層)とが交互に
積層された積層部を有し、この積層部の両表面に保護層(PEN樹脂、2層)を設けた
二軸延伸積層ポリエステルフィルム
*PEN樹脂:固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62dl/gのポリエ
チレン−2,6−ナフタレート
*PETG樹脂:シクロヘキサンジメタノールを30mol%共重合した固有粘度(オル
トクロロフェノール、35℃)0.77dl/gのシクロヘキサンジメタノール共重合
ポリエチレンテレフタレート
*積層部の厚み:40μm、各保護層の厚み:5μm、全厚み:50μm
*積層部の第1の層と第2の層の光学厚み比が等しくなるように、第1の層、第2の層の
厚さを調整
*平均透過率:88%、熱線の平均反射率:75%
また、フィルムBとして、市販されている熱線吸収タイプのフィルム(商品名「メガクール」、三菱樹脂アグリドリーム株式会社製)を用いた。
フィルムA、フィルムBを、天窓を閉鎖し密閉された農業ハウスの上部に張り渡し、農業ハウス内の温度を測定した。その結果を表1に示す。表1のグラフの縦軸は農業ハウス内の温度(℃)、横軸は時刻(0時〜24時)を表す。
表1からわかるように、太陽光を利用する、農業ハウスにおいて用いられる熱線遮断フィルムとして、フィルムAのような熱線反射タイプのものを用いることにより、フィルムBのような熱線吸収タイプのものを用いた場合に比べ、密閉された農業ハウス内の温度の上昇を抑えることができる。
Figure 0006936586
2.実施例1〜5、比較例1〜2
フィルムAを用いて、次のようにして熱線遮蔽手段を作成し、これらの性能を調べた。結果を表2に示す。
1)実施例1〜3および比較例2の熱線遮蔽手段
フィルムAを裁断した細帯状テープを経糸にして織機に掛け、透明な糸を横入れして織って、図2(a)に示されるような熱線遮蔽手段を作成した。
具体的には、フィルムAをスリットし、短手方向の幅が4.5mmのフラットヤーンを作成し、このフラットヤーンを経糸とし、高密度ポリエチレン樹脂製のモノフィラメント(繊度:550dtex、引張強度:29N/本、伸度:35%)を緯糸として、織機で熱線遮蔽手段を製織した。
経糸のフラットヤーンの間隔を調整することにより、表2に示すような開孔率を有する熱線遮蔽手段を得た。
2)実施例4の熱線遮蔽手段
上記実施例1の熱線反射フィルムの作成において、フラットヤーンとして、フィルムAから得られたフラットヤーン(フラットヤーンa)と共に、ポリエチレンフィルムから得られた同形状のフラットヤーン(フラットヤーンb)を用い、経糸として、フラットヤーンaの10本毎に、フェラットヤーンbを1本配置するようにし、その他は実施例1と同様にして、織機で熱線遮蔽手段を製織した。
3)実施例5および比較例1の熱線遮蔽手段
実施例5では、フィルムAに、同じ円形の貫通孔を等間隔で穿設し開孔率を3%としたものを、熱線遮蔽手段として使用した。
また、比較例1では、フィルムAをそのまま熱線遮蔽手段として使用した。
Figure 0006936586
表2からわかるように、フィルムAのような熱線反射フィルムを用いて形成すること及び適度の開孔を設けることにより、熱線遮断手段を、通気性を有すると共に適度の紫外線透過率を有するものとすることができる。さらに、織編物構造とすることにより、熱線遮蔽手段を、巻取り性、耐ブロッキング性、耐引裂性、耐久性等が良好なものとすることができる。
1 農業ハウス
2 CO供給手段
3 熱線遮蔽手段
4 除湿冷却手段
5 天窓
7 細帯状テープ
8 透明な糸
101 (農業ハウスの)天井部
102 (農業ハウスの)栽培部
103 サニーコート
104 近赤外線吸収フィルム
105 天窓
106 CO発生装置
107 ヒートポンプ

Claims (11)

  1. 日中は天井部に設けた天窓を閉鎖し、夜間は天井部に設けた天窓を開放する、太陽光を利用する農業ハウスであって、
    農業ハウス内部に少なくとも、二酸化炭素を供給するCO供給手段と、熱線遮蔽手段と、農業ハウス内部を冷却する除湿冷却手段を備え、
    該熱線遮蔽手段は、波長400〜700nmの光の平均透過率が80%以上で、波長800〜1200nmの光の平均反射率が70%以上である熱線反射フィルムを用いて形成されており、
    該熱線遮蔽手段には、所定の間隔で複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする農業ハウス。
  2. 前記熱線反射フィルムが、屈折率が異なる少なくとも2種類の樹脂層が交互に積層された多層積層フィルムである請求項1に記載の農業ハウス。
  3. 前記多層積層フィルムの前記2種類の樹脂層の少なくとも一つが、縮合型芳香環を有する樹脂からなる樹脂層である請求項2に記載の農業ハウス。
  4. 前記熱線遮蔽手段に設けられる前記複数の貫通孔の開孔率が0.5〜10%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の農業ハウス。
  5. 前記熱線遮蔽手段は、前記熱線反射フィルムに貫通孔が穿設されている請求項1〜4のいずれかに記載の農業ハウス。
  6. 前記熱線遮蔽手段は、前記熱線反射フィルムを細帯状に裁断した細帯状テープを経糸および/または緯糸として編織成したものであり、該経糸間および/または緯糸間に貫通孔が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の農業ハウス。
  7. 前記熱線反射フィルムの波長350nmの光線透過率が10%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の農業ハウス。
  8. 前記熱線反射フィルムの最外層の外側に、紫外線吸収剤を含有するバインダー樹脂からなる樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の農業ハウス。
  9. 前記バインダー樹脂がフッ素樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の農業ハウス。
  10. 前記農業ハウスが、太陽光により光合成を行う果菜類の栽培に用いられるものである請求項1〜9のいずれかに記載の農業ハウス。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の農業ハウスを用いた植物の栽培方法であって、
    日中は天井部に設けた天窓を閉鎖して二酸化炭素濃度を調整し、夜間は天井部に設けた天窓を開放して温度調整を行うと共に、
    少なくとも日中は、農業ハウス内部の温度を35℃以下、二酸化炭素濃度を500〜1500ppmおよび湿度飽差を4g/m以下に制御して植物を栽培することを特徴とする植物の栽培方法。
JP2017034865A 2016-02-29 2017-02-27 農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法 Active JP6936586B2 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016037089 2016-02-29
JP2016037089 2016-02-29

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017153475A JP2017153475A (ja) 2017-09-07
JP6936586B2 true JP6936586B2 (ja) 2021-09-15

Family

ID=59807335

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017034865A Active JP6936586B2 (ja) 2016-02-29 2017-02-27 農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6936586B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024079723A1 (en) * 2022-10-14 2024-04-18 Red Sea Farms Ltd A structure for facilitating spectrally selective transformation of light waves

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021533325A (ja) * 2018-07-31 2021-12-02 キング・アブドゥッラー・ユニバーシティ・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー 液体乾燥剤夜間冷却器システムおよび方法
KR20200105237A (ko) * 2019-02-28 2020-09-07 농업회사법인 만나씨이에이 주식회사 이산화탄소 해충 방제 시스템
JP7422998B2 (ja) 2020-02-20 2024-01-29 株式会社タクマ 光合成生物の育成方法、及び光合成生物の育成設備
CN117882592B (zh) * 2024-03-14 2024-06-04 兰州石化职业技术大学 一种复合日光温室大棚及控制方法

Family Cites Families (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5931633A (ja) * 1982-08-13 1984-02-20 芝田 茂 栽培用等ハウス
JPS5997039U (ja) * 1982-12-21 1984-06-30 住友化学工業株式会社 透明性、保温性にすぐれた農業用有孔フイルム
SE8403986L (sv) * 1984-08-06 1986-02-07 Svensson Ludvig Int Vexthusgardin
JPH0655462B2 (ja) * 1986-09-25 1994-07-27 住友化学工業株式会社 積層有孔フイルム
JPH0420204Y2 (ja) * 1987-04-30 1992-05-08
JPH11279358A (ja) * 1998-03-30 1999-10-12 Asahi Glass Co Ltd フッ素樹脂フィルム
JPH11323324A (ja) * 1998-05-13 1999-11-26 Mitsubishi Chemical Corp 蛍光性樹脂シート
JP2001211761A (ja) * 2000-02-04 2001-08-07 Chisso Corp 農業用有孔フィルムおよびその製造方法
JP3997728B2 (ja) * 2001-06-15 2007-10-24 住友金属鉱山株式会社 農園芸施設用断熱資材
JP2004136646A (ja) * 2002-08-20 2004-05-13 Toray Ind Inc フッ素フィルム積層体
JP2005095132A (ja) * 2003-08-25 2005-04-14 Koki Kanehama 長日植物の栽培方法および長日植物栽培施設
JP5273562B2 (ja) * 2009-11-21 2013-08-28 株式会社一色本店 シート及びシートを用いた果樹栽培用簡易ハウス及びシートを用いた果樹栽培用簡易ハウスの組立方法
JP5603658B2 (ja) * 2010-05-21 2014-10-08 出光興産株式会社 植物環境管理システム
JP6378872B2 (ja) * 2012-11-28 2018-08-22 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 二酸化炭素施用制御装置、二酸化炭素施用装置、二酸化炭素施用方法およびプログラム
JP2015208288A (ja) * 2014-04-28 2015-11-24 リケンテクノス株式会社 太陽光発電システムを備えた農園芸用施設

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2024079723A1 (en) * 2022-10-14 2024-04-18 Red Sea Farms Ltd A structure for facilitating spectrally selective transformation of light waves

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017153475A (ja) 2017-09-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6936586B2 (ja) 農業ハウスおよびこの農業ハウスを用いた植物の栽培方法
TWI713701B (zh) 農業溫室、使用此農業溫室之植物栽培方法及熱線反射薄膜構造體
JP6630187B2 (ja) 太陽光を利用する農業ハウスにおいて用いられる熱線反射フィルム構造体
JP2007135583A (ja) 農作物栽培用資材及びそれを用いた農作物栽培方法
KR102508728B1 (ko) 에너지 절약형 온실 스크린
JP7265703B2 (ja) 積層フィルム、施設園芸用フィルム、及び織編物
CN2500092Y (zh) 防虫遮阳网
JP3838741B2 (ja) 遮光ネット
JP3826599B2 (ja) 防虫ネット
WO2012125049A2 (en) Reflective ground cover material
JPH09172883A (ja) 遮光ネット
NL2016364B1 (en) Light pollution screening arrangement
JP2008086284A (ja) 農園芸用ハウスの採光材及び農園芸用ハウス
JP3107430U (ja) 農業用シート
JP5505737B2 (ja) 農作物栽培用資材及びそれを用いた農作物栽培方法
JPH0533339Y2 (ja)
JP2020022442A (ja) 農業用ハウス保温材
JP3102671U (ja) 農業用遮光シート
JPH09262029A (ja) 農業用被覆材
KR101344948B1 (ko) 시설원예용 보온피복재
JP3104069U (ja) 農業用遮熱シート
JP3634591B2 (ja) 遮光ネット
KR102135735B1 (ko) 흡열 및 흡수 기능을 갖는 직조필름
JP2000217446A (ja) 防虫ネット
JP2005256203A (ja) 遮光遮熱ネット

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170314

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20170830

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200221

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210309

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210330

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20210414

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210817

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210827

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6936586

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350