JP2007135583A - 農作物栽培用資材及びそれを用いた農作物栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも熱可塑性樹脂と蛍光色素とから構成され、太陽光の照射によって放射される蛍光が光合成を促進しかつ害虫を駆除する効果を発揮することができる農作物栽培用資材であって、蛍光色素と熱可塑性樹脂を含み、放射される蛍光の波長域が450〜700nmであることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
しかし、このような方法では計画栽培が可能であるが、栽培を行うためには大量の電力を消費し、地球温暖化、化石燃料の枯渇化など環境・エネルギー問題に大きな影響を与えることが懸念されている。
また、露地栽培などでは、野菜等の品質を管理するには農薬散布が一般的である。しかし、大量の農薬を使用することによる周辺の大気汚染、雨水に混入することによる水質汚染が深刻になっている。さらに加えて、最近の健康志向の高まりにより無農薬栽培や豊潤な味の有機栽培が要請されている。
さらに、光合成促進効果と防虫効果を狙いとした農業用光質変換資材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、このような提案技術は、光合成促進にも防虫にも実用的なレベルの効果をもたらすものではない。
また、本発明の第二の目的は、太陽光線の照射により、強い刺激光を放射して、植物等に寄生しようとするあるいは寄生する害虫を確実かつ効果的に駆除することができる農作物栽培用資材、及び該農作物栽培用資材を用いた農作物の栽培方法を提供することである。
したがって、本発明は、以下の通りである。
(1)R/B相対値=農作物栽培用資材のR/B値/照射光のR/B値
(2)R/B値=下記式(3)から算出される赤色帯の減衰率(R)/下記式(4)から算出される青色帯の減衰率(B)
(3)赤色帯(580〜780nmの波長帯)の積分値
(4)青色帯(380〜580nmの波長帯)の積分値
また、植物等に寄生しようとする害虫を確実かつ効果的に駆除することができる農作物栽培用資材、及び該農作物栽培用資材を用いた農作物の栽培方法を提供することである。
植物の光合成反応は、太陽光、CO2、水の三要素によって行われることがよく知られている。ここで、太陽光は幅広い波長帯域(約200nm〜4000nm)から成り立っているが、光合成反応に寄与する波長はこれらの波長帯域すべてを必要としているわけではなく、光合成反応に寄与する波長帯域は青色波長帯域(450〜550nm)と赤色波長帯域(550〜650nm)であると考えられている。
一般に植物の光合成反応は、太陽光の照射によって行われており、さらに光合成反応を積極的に促すには赤色波長帯域の成分を重畳させることによって実現できる。
本発明の農作物栽培用資材を作製するのに使用されるフィルムあるいは素材の製造法としては、特に限定されるわけではなく、押出し成形、射出成形、圧縮成形などが適用可能であり、特に押出し成形が好ましく使用される。
また、織編布としては、特にネットを挙げることができるが特に限定されない。
また、本発明の農作物栽培用資材としての織編布とフィルムの使用方法は、特に限定されるわけではなく、通常、農作物の種苗が撒かれた、あるいは農作物が育成されている農地を覆って使用され、またその大きさは限定的でなく、さらに、一枚のみならず複数枚を重ねて使用することができる。
この複数枚を重ねた形態として、複数枚の農作物栽培用資材を予め相互に結着させたものとしても良い。
本発明の農作物栽培用資材としての織物とフィルムは、いずれも該蛍光色素として紫外線波長域の光を吸収して波長域450〜700nmの蛍光を発するものを用いることを特徴とするものであるが、蛍光発光波長域がこの範囲外であると、光合成促進効果も防虫効果として所期の実用的レベルが得ることが困難となる。
蛍光色素の含有量が不十分な場合には、太陽光の吸収量が少なくなるため、放射(蛍光)光量が少なくピークの値が小さく好ましくないが、蛍光色素量が多くなるに従い、太陽光の吸収量は増えるが、放射した光(蛍光光)はその蛍光染料分子近傍の別の蛍光染料分子に再吸収され、この現象が繰り返されて、その結果、本発明のフィルム自体、織編布の中でこの現象が繰り返されて、必ずしも外部に放射(蛍光)する量が増えることにはならない。
また、本発明の農作物栽培用資材の織編布を作製する素材あるいはフィルム自体には、一種類の蛍光色素を含有させることが好ましい。複数の色素を含有させた場合には、相互に吸収光を分割し蛍光量が減じる蛍光があるため好ましくない。
そのために、複数の色素を含有させる必要がある場合には、後述するように、複数の該素材を用い、それぞれに異種の色素を含有させることができる。
なお、フラットヤーンの素材として用いるフィルムの厚みは0.2〜0.7mm程度であることが好ましく、特に0.1〜0.5mm程度がさらに好ましく用いることができる。
しかしながら、各種の方法によって製造される、これらの極めて薄いあるいは細い素材の表面は、光学的に平滑ではなく粗れた凹凸状態であるため、素材内部で蛍光色素から発生する放射光が、この粗表面に乱反射し、その乱反射によって素材から外部に放射される光量が増加し、さらに、これらのフィルム自体、及び織編布に外部から光が当たると、粗表面で乱反射することも加わって、本発明の目的とする効果を一層高めるものと考えられる。
特に、フィルム、フラットヤーン及びモノフィラメントの場合には、この乱反射効果が加わって、所期の効果を達成するための発光量を得るのに、0.03重量%を上限として蛍光色素を配合することが好ましいが、該配合量は限定的なものではない。
本発明の織編布の織り具合については、自然光、人工光を吸収した後、放射光(蛍光)を効果的に照射(面的に)させるような状態にすることが重要であり、このような凹凸状態を形成することは、効果的な照射に効果的である。
特に、本発明の農作物栽培用資材が、光合成促進効果と防虫効果を長期間発揮できるものであるためには、長期間安定なものであることが必要であり、そのために、上述したように、熱可塑性樹脂と蛍光色素との分散性、相溶性が良く、色素の成形体からの離出がないことが望ましく、従って、上記の熱可塑性樹脂のうち、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィンが好ましく、ポリエステルが特に好ましく使用される。
ポリエステルとしては、酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等と、グリコール成分としてエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等とを重縮合させて得られる重合体であって、その酸成分および/またはグリコール成分の一部を共重合成分で置き換えた共重合体も包含する。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが用いられる。
しかしながら、放射光が赤色系を選択する場合には、蛍光色素として、光吸収波長領域は400〜600nmが好ましく、特に470〜600nmがより好ましく、また、太陽光を照射して発生する放射光の波長領域が600〜700nmのものを用いることがこのましく、また、押出し成形によって作製される成形体が好ましく、赤色の鋭い光を発生させることができる。
上記蛍光色素としては、非イオン性の蛍光色素、例えば、ビオラントロン系色素、イソビオラントロン系色素、ビラントロン系色素、フラバントロン系色素、ペリレン系色素及びビレン系色素などの多環系色素、キサンテン系色素、チオキサンテン系色素、ナフタルイミド色素、ナフトラクタム色素、アントラキノン色素、ベンゾアントロン色素、クマリン色素などが挙げられ、これらの中から、上記の吸収波長域を有しおよび上記の波長域の光を放射する色素を適宜選択使用することができる。
また、ナフタルイミド系色素としては、例えば、ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト社製の商品名 Lumogen FシリーズのViolet 570、Blue 650などが挙げられる。
ネットを製造するのに用いられる糸の形態としては、各種成形機によって作製されたフィルムをスリットした後、延伸して得られるフラットヤーンや、フラットヤーンを割繊したスプリットヤーン、また円形または異形ノズルから押し出したフィラメントを延伸したモノフィラメントや、低繊度フィラメントを収束したマルチフィラメントなどの単層型あるいは多層型、芯鞘型、並列型等の複合糸条など制限なく採用される。
また、上記フィルムをスリットして得られた長尺フィルムから、直径約0.3〜0.5mmの縒り糸を造り、この縒り糸を3〜5本束ねて、ネット作製用素材とすることもできる。
しかし、ベースとなる熱可塑性樹脂と同種または同系の樹脂に予め高濃度の蛍光色素を含有させたマスターバッチを製造し、フィルム成形時に所定の含有量に調整してフィルム成形を行なう、いわゆるマスターバッチ法を採用することが好ましい。
この際の延伸処理は高融点の熱可塑性樹脂の融点以下、低融点の熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度下に行われるが、加熱法としては、熱ロール式、熱板式、熱風式等いずれの方法も採用できる。
織編布の形態としては、特に限定されるものではなく、織物では、例えば、平織、綾織、模紗織、絽織、絡み織などが挙げられ、編物ではラッセル編、トリコット編み、ミラニーズ編等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂製延伸糸を所定間隔で経緯に並べて配置し、重ね合わせて交差部を接着して積層不織布を形成したシート状物としたものでもよい。
この場合、素材表面に蛍光色素を付着させること以外の材料・製法などの条件については、熱可塑性樹脂と蛍光色素を主成分とする組成物から作製する農作物栽培用資材と同様であり、省略する。
この場合の「素材表面への蛍光色素の付着」とは、素材の表面に蛍光色素の塗布液を塗布して蛍光色素からなる膜が形成された場合、および蛍光色素として染料を用いて染色する場合のように、表面処理によって得られた蛍光色素の状態を総称するものである。
上記素材に蛍光色素を表面被覆する方法としては、上記成形体を蛍光色素溶液中に浸漬して塗布するディップコート法、上記成形体表面に蛍光色素溶液をスプレーして塗布するスプレーコート法、刷毛塗りやロールコータを用いて上記成形体表面に蛍光色素溶を塗布する方法等が挙げられる。上記蛍光色素の塗布量は、上記成形体に対して、0.001〜0.03重量%、好ましくは、0.015〜0.02重量%の範囲内であることが好ましい。
染色温度としては、60℃〜140℃の範囲で、かつ染浴中の被染物に掛かる張力を実質的に無張力の状態に保って染色すると、上記成形品の強度を低下させることがなく、良好な染色性が得られるので好ましい。また染色作業は、ウェブ状物の連続処理も枚葉でのバッチ処理のいずれも可能である。
織編布は、縦糸と横糸用の少なくとも2種類の素材が、例えば、長尺フィルム、フラットヤーン、モノフィラメントおよびそれらの二次加工体から選択されるが、2種類の素材として同種のものに限らず異種のものを選択し使用することができ、本発明の織敷布として縦糸と横糸に異種のものを用いて織られたものが包含される。
また、縦糸と横糸に用いる2種類の素材が、目的に応じて、相互に発光波長範囲が異なる(同一でないが重複する範囲を含む場合あり)同種の蛍光色素を含有させる場合と、異種の蛍光色素を含有させる場合とがある。
異種の蛍光色素を含有させる場合には、例えば、一方に、光合成促進効果に寄与する波長域の蛍光を発光する色素を、他方に、防虫効果に寄与する波長域(約450〜600nm)の蛍光を発光する色素を含有させることができ、あるいは、一方に、葉を主体とする農作物の光合成促進効果に寄与する波長域(約410〜530nm)の蛍光を発光する色素を、他方に防虫効果に寄与する波長域の蛍光を発光する色素を含有させることができ、さらに、一方に、実を主体とする農作物の光合成促進効果に寄与する波長域(約610〜690nm)の蛍光を発光する色素を、他方に防虫効果に寄与する波長域の蛍光を発光する色素を含有させるように、目的に応じて使い分けすることができる。
このように、2種類の蛍光染料を使用すると、より広い波長範囲がカバーできるため、実用的である。
該農作物栽培用資材の上面に吸収された自然光、人工光が波長変換されて蛍光となるが、この発生した蛍光量のうち該資材から放射する量が多ければ多いほど、所期の効果を達成しやすいものと考えられる。
本発明者等の観察結果によると、農作物栽培用資材がフィルムの場合には、膜厚が薄いため不規則な凹凸が生じ、この凹凸を介して表面、裏面などフィルム全体から蛍光が放射される。フィルムから放射される蛍光量は、凹凸の程度に左右されるが、全体の20〜25%程度であることを確認した。
さらに、農作物栽培用資材として織編布として、長尺フィルムを縒った細い幅の紐(凹凸のあるもの)を縦横糸にして編んで得られるネットについて、発生蛍光光量(放射光量)を考察した。
この結果、該ネット全体から放射する蛍光は、このネットの上面、下面から放射される蛍光量は全体の50%程度であることが確認した。
(1)赤色の蛍光染料を使用した場合
栽培中の野菜や果物を赤色の蛍光染料を使用したネット、フィルムで覆った場合には、赤色の普通染料(非蛍光染料)を使用したネット、フィルムで覆った場合に比べて、人の目に与える刺激(明るい場所での刺激で人の明所視の特性)は約3.0倍になることを確認した。
害虫の視感度(感じる光の波長範囲)は人の視感度を含み広範囲であると言われており、害虫が感じる波長範囲の蛍光染料を選択すれば、害虫にとって刺激が強く野菜や果実に寄って来ないため、特に野菜に対して、害虫が寄り付かず、幼虫になる卵を産み付けることもなく、農作物栽培に有効である。
黄色、橙色の蛍光染料を使用したネット、フィルムの場合も同様で、人の目に与える刺激(明るい場所での刺激で人の明所視の特性)は約3.2倍になることを確認した。
(1)本発明の織編布とフィルムは、自然光、人工光を吸収して波長変換されて得られた蛍光光が、上面(表面)下面(裏面)から放射されるが、ネットのような織編布は横糸と縦糸とを隙間を空けて(空隙武という)編んでいるため、照射された光が全て蛍光に波長変換するわけではない。
この空隙率は、農作物の種類によって異なるが、本発明者等の検証によれば、廿日大根の例では、ネットの場合には、空隙率が60%の場合に大根の収穫量が最大になった。
一方、農作物栽培用資材がフィルムの場合、入射光の透過率をフィルムの厚さを制御して決めることが好ましく、赤色蛍光染料を0.015重量%の割合で含有させたフィルムの場合、厚さが0.5mmの場合に大根の収穫量が最大になった。
また、使用場所に制限はなく、例えば、屋外でも温室でも、あるいは照明付きインキュベータ(植物栽培容器)内で使用することができる。
また、温室で用いる場合には、複数枚重ねて使用できるような状態として、太陽光の入射量に応じて、自動的に枚数を変更可能な構成とすることができる。
さらに、先述のように、異種の素材から作製された本発明の織編布として、赤色蛍光染料を用いたフラットヤーンと橙色蛍光染料を用いたフラットヤーンとをそれぞれ横糸と縦糸にしてラッセル織でネットを構成することにより、広い波長(橙色帯から赤色帯まで)範囲をカバーできるため、さらに顕著な害虫駆除の効果を得ることができる。
実験は、回折格子型分光放射計(英弘精機製:MS)、精密全天日射計(英弘精機製:MS−801)を用い、(1)スペクトル分布特性と(2)水平面全天日射強度を測定し、スペクトル分布特性と水平面全天日射強度の測定値(kW・h/m2)から、下記式に基づいて3波長帯の入射光に対する減衰率を算出した。
R/B相対値が小さ過ぎると、赤色帯の減衰率(R)が低くなり過ぎて十分な光合成効果が得られなくなる。上記のR/B相対値の数値範囲は、本発明の農作物栽培用資材を重ねて用いる場合は、その重ねた状態のR/B相対値を含むことを意味する。
先述したように、本発明の農作物栽培用資材であるシートあるいはネットは、必要に応じて複数枚重ねて使用することができ、枚数が多くなるほど赤色帯の減衰率(R)が高くなるが、照射光を遮蔽する状態が増加するため、R/B相対値は大き過ぎても、初期の効果が得られないことになる。
なお、自然光(太陽光)の強さ(日射強度という)が1m2当たり1kWのときを基準日射強度といい、太陽スペクトル分布の基準とされ、自然光自体のR/B値は0.8(±5%)であり、人工光のR/B値は0.94である。なお、太陽光のような自然光の場合、日によって強さに変化があるため、±5%はその変化程度を意味する。
本発明の農作物栽培用資材を用いると、当然のことながら農作物に到達する照射光量は最大20%程度減少するが、本発明者等の実験結果によれば、この程度照射光が減少(減光)しても、収穫量が大きく減ることがないことが確認された。
本発明者等が行なった芝生の庭(露地)と温室の二箇所でのフィ−ルド実験を行なったところ、収穫量が1.0〜1.26倍増加し、特に、ガラス温室内の栽培では、ガラスを透過する太陽光が10%程度減光するが、温室内の温度、湿度などを一定に調整し、減光の影響がほとんどないことを確認した。
なお、本発明の農作物栽培用ネットを使用したガラス温室の中での栽培では、入射量(照射量)が30%程度減少するが、減光量に関係なく収穫量が増えることが確認された。
すなわち、トマトのフイールドにおける栽培実験では、露地栽培と温室栽培の双方共、通常4〜5程度と言われている糖度が6〜10程度に増加し、通常11程度と言われているスイカの糖度に近い甘さになることが確認され、高付加価値のトマトの生産の可能性が認識された。
(1)農作物栽培用シート(フィルムタイプ)
ポリエステルとして、エチレングリコール/1,4シクロヘキサンジメタノールの重量比が60/40の割合のグリコール成分とテレフタル酸の酸成分とを重縮合させて得られる重合体(SKChemicals社製 商品名:PET−G 銘柄:S2008)を予め準備した。
このポリエステルを用いて、これに蛍光色素としてのぺリレン系色素(ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト社製の商品名Lumogen FシリーズのRed300。赤色帯の光を放射する特性を持つ。)の0.02重量%を配合し、ヘンシェルミキサーで混練して得られた樹脂組成物を用いて、65mmφ押出機により溶融温度260℃で、Tダイ法でフィルム状物にした後、30℃で冷却固化して厚さ600μmのフィルムを形成した。
ここに使用した蛍光色素(Lumogen FシリーズのRed305)は、約520〜約590nmの波長領域で光を吸収し、その最大吸収波長は578nmであった。
また、約600〜約680nmの波長領域で光を放射し、最大放射波長は613nmであった。
上記(1)のフィルムをスリットして得られた長尺フィルムから、直径約0.4mmの縒り糸を造り、この縒り糸を3本束ねて農作物栽培用資材用素材を準備した。
この素材を縦糸と横糸に用い、ラッセル編機によって、網目が2.0cm×2.0cm、空隙率が16%、大きさが1.5m2のラッセル編のネットを作製し、織編布タイプの農作物栽培用ネットAとした。
蛍光色素としてぺリレン系色素(ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト社製の商品名Lumogen FシリーズのRed305)を用いる以外、上記(1)と同様にして作製したフィルムを巾5mmにスリットし、延伸し、赤色の蛍光色素を含有する、その繊度が600dtのフラットヤーンを得た。
一方、高密度ポリエチレン(MFR=0.7g/10分、密度=0.957g/cm3、Tm=129℃)を用いて、モノフィラメント成形ダイスで溶融押出し、次いで20℃で冷却固化した後、延伸処理して繊度700dtのモノフィラメント(蛍光色素不含)を得た。
得られた繊度が700dtのモノフィラメントを鎖編糸とし、得られた繊度が600dtの上記のフラットヤーンを挿入糸として用い、ラッセル編機を使用して、網目が2.0cm×2.0cm、大きさが1.5m2のラッセル編のネットを編成し、本発明の農作物栽培用ネットBを作製した。
本発明のFN(A)、FN(B)では、赤色帯の光を放射する特性が強いことを示している。
<本発明の農作物栽培用資材を用いた光合成促進効果および防虫効果試験>
(織編布タイプの農作物栽培用ネットAによるインキュベータ内での試験)
照明付きインキュベータ(植物栽培容器、東京理化機械株式会社製LST−300型、容積300リットル)を用い、蛍光灯(人工光)の下で廿日大根(さくらんぼ廿日大根 サカタノタネ製)を栽培した。
この機器の内部の温度、湿度、二酸化炭素濃度は自由に設定することが可能であり、本実験では温度20℃、湿度50%、二酸化炭素濃度は無調整で大気とし、また、栽培はポリポット(直径100mm×高さ90mm)使用し、全て同一の土を使用した。
なお、1日のサイクルは、点灯時間16時間、消灯時間8時間として行なった。
図2は、遮光ネット(スウェーデンLS Svensson社製の農業用ネットで、照射光量を10、30、40、50、70%遮光するネット5種類を使用)を用い、減少する照射光の積算値に対する収穫量の関係を示したもので、横軸が入射光の相対値、縦軸が収穫量の相対値であり、実線カーブは近似曲線を表している。
上記遮光ネットは、反射率の高いアルミニウムの微粉を混入したポリエチレンシートを細い帯状に裁断して編んで作製され、入射光を一部遮断するものであり、蛍光を発するものではなく、R/B値は0.80以下である。
実験期間は冬期の28日間で、積算照射光量は(蛍光灯による人工光による)25.5kWh/m2)、適用なし(遮光ネット不使用)を基準(1.0)とした相対値をプロットしたもので、プロットから近似曲線として実線カーブを描いてある。
この実線カーブから、遮光量が多くなるに従がって収穫量が減少することが理解できる。
図3は、上記の農作物栽培用資材(1)を、一枚用いた場合(■)、二枚重ねて用いた場合(●)、三枚重ねて用いた場合(▲)の収穫量の相対値を示したもので、それぞれについて3回づつ、4月〜8月にかけて実験を行った。
積算照射光量は(蛍光灯を用いた人工光による)25.5kWh/m2、適用なし(農作物栽培用資材不使用)を基準(1.0)とした相対値をプロットしたものであり、横軸は照射光の相対値、縦軸は収穫量の相対値である。
本発明の農作物栽培用資材を用いて実験した結果の各プロット点は、いずれもこの近似曲線より上側にあることを示しており、このことは本発明の農作物栽培用ネットが、照射光を遮蔽して照射量を減少させるにもかかわらず、収穫量を増加させることができ、上記(A)の遮光シートの傾向とは異なり、その有効性が高いことを立証している。
なお、本実施例において人工光を照射光にして使用した農作物栽培用資材のR/B値は、本発明の農作物栽培用ネットA一枚が1.04、二枚重ねて用いた場合が1.13、三枚重ねて用いた場合が1.27で、ネットを用いない人工光のみの場合は0.94であった。
<本発明の農作物栽培用資材による温室内での栽培試験>
廿日大根の種を同量同日に蒔いたプランター(縦:210mm、横:630mm、高さ:180mm、)を3つ用意して、1つは比較用として本発明の農作物栽培用資材を用いず、他の2つにはそれぞれに上述のフィルムタイプの農作物栽培用シート1枚、及び織編布タイプの農作物栽培用ネットA1枚で該プランターを覆い、太陽光が照射される温室内で、最高温度30.9℃、最低温度16.5℃、平均温度24.8℃の7〜8月の4週間経過後、栽培した廿日大根の収穫量を測って、農作物栽培用資材を光合成促進効果と防虫効果を観察した。
なお、本実施例において太陽光を照射光にして使用した農作物栽培用資材のR/B値は、フィルムタイプのシート1枚の場合は0.92、織編布タイプのネットA1枚の場合が1.04であった。
<本発明の農作物栽培用資材による露地での栽培試験>
廿日大根の種を同量同日に蒔いたプランター(縦:210mm、横:630mm、高さ:180mm、)を3つ用意して、1つは比較用として本発明の農作物栽培用資材を用いず、他の2つにはそれぞれに上述の織編布タイプの農作物栽培用ネットAを1枚で覆い、及び織編布タイプの農作物栽培用ネットAを3枚重ねて覆い、太陽光が照射される露地で、最高温度42.9℃、最低温度13.7℃、平均温度24.8℃の7〜8月の4週間経過後、廿日大根の育成状況を観察した。
一方、フィルムタイプの農作物栽培用シート3枚を用いた場合には廿日大根の10株あたりの収穫量は36.0g、織編布タイプの農作物栽培用ネットAを3枚重ねて用いた場合には収穫量は48.8gであり、害虫被害は、いずれも少なく、後者の方が前者よりも特に少なかった。
なお、本実施例において太陽光を照射光にして使用した農作物栽培用資材のR/B値は、フィルムタイプのシート1枚の場合が0.92、織編布タイプのネットAを3枚重ねた場合が1.19であった。
<本発明の農作物栽培用資材による露地での栽培試験>
廿日大根とクーニャンの種を、同量同日に別々に蒔いたプランター(縦:210mm、横:630mm、高さ:180mm、)をそれぞれ2つづつ用意して、1つは比較用として農作物栽培用資材を用いず、他の1つにはそれぞれに上述の織編布タイプの農作物栽培用ネットAを3枚重ねて覆い、太陽光が照射される露地で、最高温度40.2℃、最低温度7.2℃、平均温度19.2℃の9月の29日間栽培し、それぞれの栽培状況を観察した。
実施例4の栽培試験は、実施例3の場合と違って、夏から秋の変わり目の9月に行なったため、寒暖の差が激しく、また平均気温が第1回試験栽培の時期に比して5.6℃低い環境であった。
害虫被害状況は、廿日大根の場合には、本発明の農作物栽培用ネットAを用いた場合の方が多少被害が少ない程度であったが、クーニャンについては、本発明の農作物栽培用ネットAを用いた場合は害虫被害がほとんど見られなかったのに対して、何も用いない場合には40%程度が被害を受けていた。
なお、本実施例において太陽光を照射光にして使用した織編布タイプのネットAを3枚重ねた場合のR/B値は1.19であった。
Claims (17)
- 太陽光によって蛍光を発する織編布からなる通気性の農作物栽培用資材であって、該織編布が蛍光色素と熱可塑性樹脂を含む透光性の素材から構成され、該蛍光色素が紫外線波長域の光を吸収して波長域450〜700nmの蛍光を発するものであることを特徴とする防虫効果と光合成促進効果を併せ持つ農作物栽培用資材。
- 前記蛍光色素の前記熱可塑性樹脂に対する含有割合が0.001〜0.03重量%であることを特徴とする請求項1に記載の農作物栽培用資材。
- 前記織編布がネットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の農作物栽培用資材。
- 前記織編布が長尺フィルム、フラットヤーン、モノフィラメントおよびそれらの二次加工体から選択される同種または異種のものを素材として用いて織られたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の農作物栽培用資材。
- 前記織編布が縦糸と横糸に異種のものを素材として用いて織られた織物であることを特徴とする請求項4に記載の農作物栽培用資材。
- 前記縦糸と横糸に用いる前記素材が相互に発光波長域に異なる領域を有する異種の蛍光色素を含有することを特徴とする請求項5に記載の農作物栽培用資材。
- 一方の前記蛍光色素が450〜600nmの蛍光波長域を有するものであることを特徴とする請求項6に記載の農作物栽培用資材。
- 前記縦糸と横糸の前記素材の一方に蛍光色素が含有され、他方に蛍光色素が含有されないことを特徴とする請求項6又は7に記載の農作物栽培用資材。
- 前記織編布がネットであって、該ネットの空隙率が65〜10%であることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載の農作物栽培用資材。
- 光合成促進効果を呈する蛍光波長域を有する蛍光色素を育成農作物の種類によって選択し、前記育成農作物が葉を主体とする場合には410〜530nmに蛍光波長域を有する蛍光色素を、前記育成農作物が実を主体とする場合には610〜690nmに蛍光波長域を有する蛍光色素をそれぞれ選択することを特徴とする請求項7に記載の農作物栽培用資材。
- 太陽光によって蛍光を発するフィルムからなる透光性の農作物栽培用資材であって、蛍光色素と熱可塑性樹脂を含み、該蛍光色素が紫外線波長域の光を吸収して波長域450〜700nmの蛍光を発するものであり、かつ厚さが0.2〜0.7mmであることを特徴とする防虫効果と光合成促進効果を併せ持つ農作物栽培用資材。
- 前記蛍光色素の前記熱可塑性樹脂に対する含有割合が0.001〜0.03重量%であることを特徴とする請求項11に記載の農作物栽培用資材。
- 前記蛍光色素が非イオン系の蛍光色素であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の農作物栽培用資材。
- 前記蛍光色素がビオラントロン系色素、イソビオラントロン系色素、ビラントロン系色素、フラバントロン系色素、ペリレン系色素、ビレン系色素、キサンテン系色素、チオキサンテン系色素、ナフタルイミド色素、ナフトラクタム色素、アントラキノン色素、ベンゾアントロン色素から選ばれた少なくとも一種の色素であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の農作物栽培用資材。
- 請求項15に記載の農作物栽培用資材を露地で用いることを特徴とする農作物の栽培方法。
- 請求項1乃至15のいずれか1項に記載の農作物栽培用資材を1枚又は複数枚用い、栽培地の環境条件に応じて枚数を変更することを特徴とする農作物の栽培方法。
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