JP6929240B2 - 電池用硫酸コバルトの製造方法 - Google Patents
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Description
しかるに、リチウムイオン二次電池その他の電池の原料として用いられる硫酸コバルト等のコバルト原料は、さらに不純物の含有量が少ないものであることが要求されるところ、上記の電気コバルトは不純物として特にニッケルをある程度含むので、電池原料のニッケル含有量についてのスペックを満たさない。それ故に、かかる電気コバルトをそのまま電池の原料として用いることができないという問題がある。
一の実施形態に係る電池用硫酸コバルトの製造方法は、図1に例示するように、ニッケルを含有する電気コバルトを酸で溶解する溶解工程と、溶解工程で得られるコバルト溶液中のコバルトイオンを抽出するとともに逆抽出する抽出工程と、抽出工程後の逆抽出後液中のコバルトイオンを結晶化させ、硫酸コバルトを得る結晶化工程とを含むものである。
特にこの方法では、抽出工程で、コバルト溶液中のコバルトイオンを抽出するに際し、コバルト溶液と抽出剤とを接触させる際または前もしくは後に、pH調整剤として、アンモニアイオンを添加することとし、このアンモニアイオンをニッケルイオンのマスキング剤としても機能させることにより、コバルトイオンのみを選択的に抽出することを特徴とする。
電気コバルトは、電解採取を含む電気分解により得られたものであって、ニッケルを含有するものであれば、どのようなものであってもよい。このような比較的多い量でニッケルを含む電気コバルトは、リチウムイオン二次電池等の電池の原料として用いられるコバルトのニッケル含有量についての厳しい要求特性を満たさない。この実施形態は、後述する工程を行うことにより、電気コバルト中のニッケルを効果的に除去して、電池原料として用いることができる硫酸コバルトを製造するものである。
上記の所定の処理とは、たとえば、図2に示すように、前処理工程として、リチウムイオン二次電池廃棄物に対して焙焼、破砕及び篩別を順次に行った後、それにより得られる電池粉末を酸で浸出させる浸出工程を行い、その後、必要に応じて浸出後液に含まれる不要な金属等を除去し、溶媒抽出法により浸出後液中のコバルトイオンを抽出するとともに逆抽出する抽出工程を行い、さらにその逆抽出後液に対して電解採取工程を行うというものである。電解採取工程で陰極表面に電着する金属として、電気コバルトが得られる。各工程の具体的な方法及び条件については、公知のものを参照して適宜決定することができる。
あるいは、超硬工具スクラップからコバルトを回収するため、超硬工具スクラップに対して所定の処理を施した後に、電気コバルトが得られることもある。
溶解工程では、上述したような電気コバルトを、硫酸または、硫酸及び酸化剤等の酸で溶解させる。酸化剤は不要である場合もある。このときに、コバルトとともに、電気コバルトに含まれていたニッケルも溶解する。それにより、少なくともコバルトイオン及びニッケルイオンを含むコバルト溶液が得られる。
溶解工程で得たコバルト溶液からコバルトイオンを、ニッケルイオンから分離させて選択的に抽出するため、溶媒抽出法による抽出工程を行う。
ここで、所定の抽出剤を用いる場合、横軸をpHとするとともに縦軸を抽出率としたグラフにおけるコバルトの抽出曲線は、ニッケルの抽出曲線よりもpHが低い側に位置するところ、コバルト溶液では、たとえば図2の抽出工程の抽出前液等に比して、コバルト濃度が高いことから、抽出曲線がpHのより高い側にシフトする。この場合、コバルトイオンを十分に抽出できるpHに設定すると、多くのニッケルイオンまで抽出されてしまい、コバルトのみを選択的に抽出することができない。
アンモニアイオンは、たとえば、アンモニア水または、塩化アンモニウム(NH4Cl)と水酸化ナトリウム(NaOH)等の形態として添加することができる。
水酸化アンモニウム(NH4OH)またはアンモニア(NH3)は、ニッケル1mоlに対して、たとえば1〜10倍モル当量、好ましくは1〜6倍モル当量で添加することができるが、これに限定されない。
抽出剤は、芳香族系、パラフィン系、ナフテン系等の炭化水素系有機溶剤を用いて、濃度が10〜30体積%となるように希釈して使用することができる。
溶媒抽出は繰り返し行ってもよく、たとえば有機相と水相が向流接触するようにした多段方式とすることもできる。O/A比(水相に対する有機相の体積比)は0.1〜10とすることが一般的である。
逆抽出液としては、次工程である硫酸コバルトの結晶化工程を考慮すると、硫酸を使用することが好ましい。逆抽出液の酸濃度はpH:1.0〜3.0に調整することが好ましく、pH:1.5〜2.5に調整することがより好ましい。
逆抽出は、15℃〜60℃以下で実施することができる。
抽出後液中のコバルト濃度は、たとえば1g/L〜200g/L、典型的には80g/L〜100g/Lになる。また抽出後液中のニッケル濃度は、たとえば2mg/L以下、典型的には1mg/L以下とすることができる。
抽出工程で得られた逆抽出後液に対しては、そこに含まれるコバルトイオンを結晶化させる結晶化工程を行う。
ここでは、逆抽出後液を、たとえば40℃〜50℃に加熱して濃縮し、コバルトを硫酸コバルトとして晶析させる。
コバルト濃度が20g/Lでニッケル濃度が20mg/Lであるコバルト溶液に対し、水酸化ナトリウムとアンモニア水の二種類のpH調整剤のそれぞれを用いて、コバルト溶液中のコバルトイオンの抽出を行った。ここで用いた抽出剤はALBRITECT TH1(SOLVAY社製)とし、抽出条件は、抽出剤25vol% 希釈剤(Solvesso D70)75vol%、Co:23g/L、Ni:19mg/L 抽出溶媒:抽出対象水溶液=50ml:50ml、操作温度:室温、抽出時間:1時間とした。その結果を図3にグラフで示す。
一方、pH調整剤をアンモニア水とした場合は、平衡pHの上昇に伴い、コバルトの抽出率は増加するもニッケルの抽出率はほぼ増加しないことから、コバルトイオンのみを有効に抽出できることが明らかである。
PC−88AとALBRITECT TH1のそれぞれを抽出剤とした場合のコバルト及びニッケルの典型的な抽出曲線を図4に示す。ALBRITECT TH1を用いた場合は、コバルトの抽出曲線とニッケルの抽出曲線とが、図4に実線で示すように、破線で示すPC−88Aに比して、pHの低い側と高い側に大きく離れて位置することになり、コバルトイオンとニッケルイオンの抽出率が50%のときのpHの差ΔpH50が、PC−88AのΔpH50よりも飛躍的に大きくなる。したがって、PC−88AよりもALBRITECT TH1のほうが、コバルトイオンとニッケルイオンの分離性に優れることが解かる。
Claims (6)
- 電気分解により得られ、ニッケルを含有する電気コバルトから、電池用硫酸コバルトを製造する方法であって、
前記電気コバルトを酸で溶解する溶解工程と、溶解工程で得られるコバルト溶液中のコバルトイオンを抽出するに当り、コバルト溶液と抽出剤とを接触させる際または前もしくは後に、コバルト溶液にアンモニアイオンを添加してpHを調整し、コバルトイオンを抽出するとともに逆抽出する抽出工程と、抽出工程後の逆抽出後液中のコバルトイオンを結晶化させ、硫酸コバルトを得る結晶化工程とを含む、電池用硫酸コバルトの製造方法。 - 前記抽出工程で、前記抽出剤をホスフィン酸系抽出剤とする、請求項1に記載の電池用硫酸コバルトの製造方法。
- 前記抽出工程で、前記抽出剤がビス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸を含む、請求項2に記載の電池用硫酸コバルトの製造方法。
- 前記抽出工程で、抽出時の平衡pHを4〜7に調整する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池用硫酸コバルトの製造方法。
- 前記電気コバルトとして、少なくともコバルト及びニッケルを含有するリチウムイオン電池スクラップを処理して得られる電気コバルトを用いる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池用硫酸コバルトの製造方法。
- ニッケルの含有量が5質量ppm以下である硫酸コバルトを製造する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池用硫酸コバルトの製造方法。
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