JP2019153562A - 炭酸リチウムの製造方法及び、炭酸リチウム - Google Patents
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Abstract
Description
次いで、篩別の篩下に得られる粉末状の電池粉を浸出液に添加して浸出し、電池粉に含まれ得るリチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム等を液中に溶解させる。そしてその後、浸出後液に溶解している各金属元素を分離させて回収する。ここでは、浸出後液に浸出しているそれぞれの金属を分離させるため、浸出後液に対し、分離させる金属に応じた複数段階の溶媒抽出及び逆抽出等を施す(特許文献2〜3等参照)。
また特許文献5では、少なくともリチウム、ニッケルを含む溶液から、溶媒抽出によりニッケルとリチウムを共抽出し、その後、リチウムのみを逆抽出して得られるリチウム溶液を炭酸化し、リチウムを回収することが記載されている。
この発明の一の実施形態に係る炭酸リチウムの製造方法は、図1に例示するように、リチウムイオン電池廃棄物に所定の湿式処理を施して得られ、Li及び不純物が溶解した酸性溶液に対し、中和工程、炭酸化工程、洗浄工程、溶解工程及び脱炭酸工程を含む各工程を順次に行い、炭酸リチウムを製造するものである。
リチウムイオン電池廃棄物は、携帯電話その他の種々の電子機器、自動車等の様々な機械ないし装置で使用され得るリチウムイオン電池の廃棄物である。より具体的には、たとえば、電池製品の寿命や製造不良またはその他の理由によって廃棄もしくは回収されたもの等であり、このようなリチウムイオン電池廃棄物を対象とすることにより、資源の有効活用を図ることができる。
湿式処理では一般に、上述したリチウムイオン電池廃棄物を、硫酸もしくは塩酸その他の鉱酸などの酸で浸出させる。ここでは、リチウムイオン電池廃棄物に含まれる金属の溶解を促進させるため、過酸化水素水を添加してもよい。それにより、リチウムイオン電池廃棄物中の金属が溶解した浸出後液が得られる。
そして、この浸出後液に対して、中和もしくは硫化または溶媒抽出等を行い、たとえばFe、Al、Cu等を除去した後、溶液中に残るCo、Ni及びMnのうちの少なくとも一種を、それらの各金属に応じた条件の溶媒抽出・逆抽出等で順次に回収する。
酸性溶液は、上記のリチウムイオン電池廃棄物に対して湿式処理を施して得られたものであって、Li及び不純物が溶解したものである。
このような酸性溶液の一例としては、上述した湿式処理で、浸出後液に対して施す複数段階の溶媒抽出もしくは中和等のうち、ニッケルを回収するための溶媒抽出で、ニッケルを抽出した後に得られるNi抽出後液や、当該ニッケルを抽出するとともに逆抽出し、さらに電解採取を行ってニッケルを回収した後に得られるNi電解後液等とすることができる。
その他、酸性溶液として、上記のリチウムイオン電池廃棄物を水等に添加し、主として、そのうちのリチウムを水等に浸出させて得られるLi浸出液を用いることもできる。なおこの場合、湿式処理は、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを水等に浸出させる処理を意味する。
上述したNi抽出後液やNi電解後液、Li浸出液は、必要に応じて、溶媒抽出によりリチウムを濃縮させた後に用いることができ、一般にこのようなリチウムの濃縮により、たとえばpHが0〜1程度の酸性溶液になる。
また、酸性溶液はさらに、Naイオンを、たとえば30g/L〜70g/L、典型的には40g/L〜60g/Lで含み、Caイオンを、たとえば0.001g/L〜0.1g/L、典型的には0.01g/L〜0.05g/Lで含み、Mgイオンを、たとえば0.01g/L〜10g/L、典型的には0.05g/L〜5g/Lで含み、SO4イオンを、たとえば1g/L〜200g/L、典型的には10g/L〜100g/Lで含むことがある。
上述したような酸性溶液にアルカリを添加して酸性溶液を中和し、それにより、酸性溶液中のNiイオンやMgイオンを固体として沈殿させる。これを固液分離により分離させて除去する。その結果、NiイオンやMgイオンが除去されてリチウムイオンを含む中和後液が得られる。
Ca塩のなかでも特にCa(OH)2が、反応制御や設備のスケーリング防止の点で好ましい。なお、CaOでは添加時に発熱してしまうため、設備内部にスケールが発生し、反応槽実容積の低下や配管閉塞などの可能性があり、CaCO3では、所定のpHまで上げられないことが懸念される。
但し、Ca塩では中和物量が増えて濾過器が大きくなることがあるので、この観点では、NaOHを用いることが好ましい。NaOHも、SO4イオンを有効に除去することができる。
一方、酸性溶液にMgイオンが含まれる場合は、アルカリ添加後の酸性溶液のpHを12〜13とすることにより、Mgも沈殿して、これもNiとともに除去することができる。この観点から、アルカリ添加後の酸性溶液のpHは12.0〜13.0、好ましくは12.0〜12.5とすることがより一層好ましい。
中和後液中のNi濃度は5mg/L以下、特に1mg/L以下であることが好ましく、またMg濃度は、5mg/L以下、特に1mg/L以下であることが好ましい。この中和工程で、できる限り多くのNi、Mgを除去しておくことが好適である。
上記の中和工程でニッケルを除去して得られた中和後液に対し、炭酸化工程を行い、中和後液に含まれるLiを炭酸化し、最終的に得られる炭酸リチウムに比して品位が低い粗炭酸リチウムを一先ず得る。
洗浄工程では、上記の炭酸化工程で得られた粗炭酸リチウムの洗浄を行う。ここでは、粗炭酸リチウムに含まれる不純物のうち、主としてSO4の少なくとも一部、さらにはNaの少なくとも一部を除去することを目的とする。特にこの段階で、粗炭酸リチウムに含まれるSO4の品位を下げれば下げるほど、後述の溶解工程及び脱炭酸工程を経て最終的に得られる炭酸リチウムのSO4の品位を大きく低減することができるので有効である。
なおここで、リパルプ洗浄とは、固液分離後のケーキを所定量の水に投入後撹拌しスラリー化させ、再度固液分離操作を実施することを意味する。また、純水とは、少なくともMg、好ましくはさらにNaとCaを含まない水を意味する。
洗浄工程を経た粗炭酸リチウムに対しては、粗炭酸リチウムを炭酸イオンの供給下で液中に溶解させる溶解工程を行う。
より詳細には、たとえば、はじめに粗炭酸リチウムを純水等の液体でリパルプする。そして、その液体に炭酸ガスの吹込み又は炭酸塩の添加により炭酸イオンを供給して、液中に炭酸を溶解させる。これにより、Li2CO3+H2CO3→2LiHCO3の反応により、粗炭酸リチウムが液中に溶解し、炭酸水素リチウム溶液としてのLi溶解液が得られる。
溶解工程の後、そこで得られたLi溶解液を加熱して炭酸を脱離させ、Li溶解液中のLiイオンを炭酸リチウムとして析出させる。
ここでは、Li溶解液を、好ましくは50℃〜90℃の温度に加熱して濃縮し、Li溶解液から炭酸を炭酸ガスとして脱離させることができる。炭酸水素リチウムは温度の上昇に伴い、溶解度が低下する。脱炭酸工程では、炭酸水素リチウムと炭酸リチウムの溶解度差を利用して、加熱により、炭酸水素リチウムの生成によってLi溶解液に十分に溶解しているLiを、炭酸リチウムとして効果的に晶析させることができる。
脱炭酸工程により、比較的高い品位の炭酸リチウムを得ることができる。
脱炭酸工程の後、炭酸リチウムの不純物品位その他の条件によっては、炭酸リチウムを洗浄する洗浄工程を行ってもよい。但し、脱炭酸工程後のこの洗浄工程は省略することも可能である。
脱炭酸工程の加熱時の濃縮比が大きい場合は、この洗浄工程を行うことが、不純物の更なる除去の観点から好ましい。
以上より得られる炭酸リチウムは、その炭酸リチウム品位(純度)が、好ましくは99.2質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上であることが好ましい。
特に、上述した製造方法で製造することにより、炭酸リチウム中のナトリウムの含有量を100質量ppm以下とすることができる。ナトリウムは、たとえば、当該炭酸リチウムをリチウムイオン電池の製造に用いる場合にリチウムイオンの動きを妨害することがあるので、このようにナトリウムを低濃度にできることは有効である。炭酸リチウムのナトリウム含有量は、さらには80質量ppm以下、50質量ppm以下とすることができる。
なお、上述したナトリウムや塩素の含有量、品位は、自動試料燃焼装置イオンクロマトグラフにより測定する。
このような炭酸リチウムは、様々な用途に用いることができるが、とりわけリチウムイオン電池の製造に有効に用いることができる。
上記の酸性溶液にNaOHを添加して酸性溶液のpHを12まで上昇させた。それにより、Ni及びMgがほぼ全量沈殿し、固液分離によりそれらを除去することができた。中和後液の組成を表2に示す。
なお参考までに、NaOH及びCa(OH)2のそれぞれを用いて中和した場合のpHとNi及びMgの溶解度との関係を図2に示す。図2より、pHを12まで上昇させると、Ni及びMgのいずれもが十分に析出することが解かる。
上記の中和後液中のLiに対し、Li2SO4+Na2CO3→Li2CO3+Na2SO4の想定反応において1.2倍モル当量のNa2CO3を添加し、50℃にて1.5時間にわたって撹拌して保持した。これによりLiを粗炭酸リチウムとして一旦回収した。
上記の粗炭酸リチウムの湿重量に対して1倍の純水にて、当該粗炭酸リチウムを60℃にて0.5時間にわたってリパルプ洗浄した。この洗浄操作は2回行った。それにより、表3に示す品位の洗浄後粗炭酸リチウムが得られた。
また、精製前(当該洗浄後)の炭酸リチウム中のSO4品位と、精製後の炭酸リチウム中のSO4品位との関係を、図3にグラフで示す。このグラフより、精製前にSO4品位を下げれば下げるほど、精製後のSO4品位を低減できることが解かる。
洗浄後の粗炭酸リチウムを、それが全量溶解した際のLi濃度が9g/L(at25℃)となるように純水でリパルプ洗浄し、リパルプ洗浄後に炭酸ガスを、Li2CO3+H2CO3→2LiHCO3の想定反応において1.2倍モル当量で吹き込んで粗炭酸リチウムを再度溶解させた。この際に、所定量の吹込み前であって未溶解残渣が少量残る時点で炭酸ガスの吹込みを停止した。それにより、Caを残渣として残して分離することができた。
溶解後の濾液(Li溶解液)を70℃で加熱して炭酸ガスを脱離させ、炭酸水素リチウムと炭酸リチウムの溶解度差を利用して再晶析させた。加熱温度は50℃以上とした。それにより炭酸リチウムを得た。
脱炭酸後、炭酸リチウムを、溶解前の洗浄と同様の条件にて洗浄した。その結果、表4に示す品位の炭酸リチウムが得られた。
表4より、いずれも原料1〜3でも最終的に、Niは10質量ppm以下、Naは100質量ppm以下、Caは100質量ppm以下、Mgは10質量ppm以下、SO4は600質量ppm以下にまで低減されたことが解かる。なかでもSO4は、原料1及び3では300質量ppm以下であった。なお、表4には示していないが、塩素の含有量は、いずれの原料1〜3でも10質量ppm以下となった。
Claims (12)
- Co、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の金属とLiとを含有する電池正極材成分を含むリチウムイオン電池廃棄物に対し、湿式処理を施すことにより、前記リチウムイオン電池廃棄物から前記電池正極材成分の前記金属の少なくとも一種を分離させ、それにより得られるLi及び不純物が溶解した酸性溶液から、不純物を除去して、炭酸リチウムを製造する方法であって、
前記酸性溶液を中和する中和工程と、前記中和工程で得られる中和後液中のLiを炭酸化する炭酸化工程と、前記炭酸化工程で得られる粗炭酸リチウムを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程の後、前記粗炭酸リチウムを炭酸イオンの供給下で液中に溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られるLi溶解液を加熱して、炭酸を脱離させる脱炭酸工程とを含む、炭酸リチウムの製造方法。 - 前記酸性溶液がMgイオンを含み、
前記中和工程で、前記酸性溶液のpHを12.0〜13.0に上昇させる、請求項1に記載の炭酸リチウムの製造方法。 - 前記酸性溶液がMgイオンを含まず、
前記中和工程で、前記酸性溶液のpHを10.0〜10.5に上昇させる、請求項1に記載の炭酸リチウムの製造方法。 - 前記洗浄工程で、前記粗炭酸リチウムの湿重量に対して0.5倍〜2倍の純水で、前記粗炭酸リチウムをリパルプ洗浄する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
- 前記洗浄工程で、前記リパルプ洗浄を複数回にわたって繰り返す、請求項4に記載の炭酸リチウムの製造方法。
- 前記溶解工程で、前記粗炭酸リチウムを純水でリパルプ洗浄し、前記純水に炭酸イオンを供給して、前記粗炭酸リチウムを溶解させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
- 前記溶解工程で、25℃で前記純水に前記粗炭酸リチウムの全量が溶解したと仮定した場合にLi濃度が7g/L〜9g/Lとなる量の前記純水を用いる、請求項6に記載の炭酸リチウムの製造方法。
- リチウムイオン電池の製造に用いる炭酸リチウムを製造する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
- ナトリウムの含有量が100質量ppm以下である炭酸リチウム。
- 塩素の含有量が10質量ppm以下である請求項9に記載の炭酸リチウム。
- 純度が99.2質量%以上である請求項9または10に記載の炭酸リチウム。
- リチウムイオン電池に用いる請求項9〜11のいずれか一項に記載の炭酸リチウム。
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