JP5881952B2 - 硫酸コバルトの製造方法 - Google Patents
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Description
塩基性抽出剤は、陰イオンや錯体を形成して陰イオンを形成する物質に対して有効的に抽出を行なうことができるため、塩酸コバルト溶液など、CoCl4 2−のように陰イオン錯体を形成する系に用いられる。
しかしながら、その抽出はコバルトと陰イオン錯体を形成する物質に限られること、また錯体として有機中に抽出されるため、例えばCoCl4 2−の場合、Clイオンが次工程に持ち込まれるために、その使用方法が制限されるという問題がある。
このようなホスホン酸やホスフィン酸として、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ2−エチルヘキシルエステル、ジ−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸は、コバルトの抽出が良好であり好適である。
また、抽出時のpHを低下させることで分離係数を高める方法もあるが、同時にコバルトの抽出率が低下してしまい、効率的な不純物の除去は難しい。
下記(1)から(3)の工程を含むことを特徴とするものである。
(1)ホスホン酸の有機溶媒又はホスフィン酸の有機溶媒を用い、pH3.5〜5.0のコバルトを含む水溶液からコバルトを抽出する抽出工程。
(2)コバルトを抽出したホスホン酸の有機溶媒又はホスフィン酸の有機溶媒に、pH3.5以上、且つ前記抽出工程のコバルトを含む水溶液のpHより高いpHの硫酸コバルト水溶液を接触させ、コバルトを抽出したホスホン酸の有機溶媒又はホスフィン酸の有機溶媒に含まれる不純物元素のNi、Mg、Ca、Na元素を、接触させた硫酸コバルト水溶液中に分配させ、分離する洗浄工程。
(3)前記不純物元素を分離したホスホン酸の有機溶媒またはホスフィン酸の有機溶媒から、硫酸によるコバルトの逆抽出を行なう逆抽出工程。
(1)ホスホン酸またはホスフィン酸を用いてコバルトを抽出する抽出工程。
(2)コバルトを抽出したホスホン酸またはホスフィン酸に硫酸コバルト水溶液を接触させ、不純物元素を硫酸コバルト水溶液中に分配させて分離する洗浄工程。
(3)不純物を分離したホスホン酸またはホスフィン酸を硫酸により逆抽出を行なう逆抽出工程。
[抽出工程]
(1)の抽出工程では、抽出剤にホスホン酸又はホスフィン酸を使用し、水酸化ナトリウム等のアルカリを添加して、コバルトを含む溶液のpHを3.5〜5.0に調整することによって、高いコバルト抽出率を得ることができる。
pHを上昇させるほど、コバルトの抽出率が上昇するが、同時に不純物の抽出率も上昇し、また、添加する薬品量が増えるために、その処理費用が増加することから、上記範囲内のpHが望ましい。
次に、(2)の洗浄工程では、(1)の工程でコバルトおよび不純物を抽出し、含有する抽出剤に、硫酸コバルト水溶液を洗浄液として接触させる。
その接触させる洗浄液には、塩化コバルト水溶液、硝酸コバルト水溶液等のコバルト鉱酸水溶液でも代替は可能であるが、懸濁や懸垂により抽出剤の有機成分と共に、次工程へ持ち込まれたとき、得られる硫酸コバルト溶液を汚染するため、ここでは硫酸コバルト水溶液を用いるのが最適である。
1回の操作で不純物が目標まで低減しない場合は、抽出剤に硫酸コバルト水溶液を接触させた溶液を有機相と水相に油水分離した後に、有機相(抽出剤成分:ホスホン酸又はホスフィン酸)を新たな硫酸コバルト水溶液と接触させる洗浄操作を繰り返し行なうことにより不純物を除去する。
水溶液中のコバルト濃度は、特に限定はされないがコバルト濃度が高いほど、置換効率が良くなり、10〜100g/Lが好ましい。すなわち、10g/L未満では不純物除去作用が低すぎ、また100g/L以上では、硫酸濃度の変動により結晶が析出してしまう可能性があり、不純物の分配、分離を阻害するためである。
また、洗浄液中にコバルト以外の不純物が含まれる場合においても、洗浄効果を発揮する。不純物濃度が低いほど、洗浄効果が大きく、より純度の高い硫酸コバルトを得ることができる。
次に、(3)の逆抽出工程では、不純物が除去された抽出剤から硫酸溶液によりコバルトを逆抽出し、硫酸コバルト水溶液(逆抽液)を生成するものである。
この逆抽出は、pHが低下するほど、抽出剤中のコバルト残留が低減するが、使用する薬品の費用が増加することから、そのpHは、0〜1が好適である。
この工程で得られた硫酸コバルト水溶液から晶析やスプレードライ等の一般的な結晶化方法を用いて硫酸コバルト結晶を形成する。
表1のコバルトを含む溶液50mlと、調整した抽出剤250mlを混合して混合液を作製して撹拌した。次いで8mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を作製した混合液に添加して、混合液の水相中のpHを4.5に調整した。pH調整後、約10分間撹拌を行い、そのpHに変化がないことを確認した後、混合液の有機相と水相を静置分離した。このとき、97.8%のコバルトが有機相に分配した。
得られた硫酸コバルト水溶液の品位は、表2に示す「逆抽液」のようになり、不純物品位が低い水溶液が得られることがわかる。
このとき得られた硫酸コバルト水溶液の組成を表3「逆抽液」に示す。
表3から実施例1より高純度の硫酸コバルト水溶液が得られることがわかる。
pHを1および5に薄硫酸を用いて調整したコバルト濃度が約50g/Lの水溶液を洗浄始液に用い、この洗浄始液と表4に示す抽出有機とを有機相/水相液量比が5/1となるように混合して洗浄を行い、抽出有機に含まれる不純物を分配、分離した。この洗浄を3回繰り返した。
不純物低減効果は、pHが高い方が悪化し、またpHの値が小さくなるほどコバルト濃度が低下しており、抽出有機から一部が逆抽出されていることがわかる。
抽出剤は16vol%に希釈したPC88Aを用いた。
表5に示す抽出有機を、コバルト濃度が約50g/Lの水溶液を用いて有機相/水相液量比が5/1となるようにして3回混合し、有機中の不純物を洗浄した。このとき、洗浄始液に用いたコバルト溶液には不純物の代表的な例としてマグネシウムもしくはカルシウムを始液中のそれぞれの濃度が0.10もしくは0.15g/Lとなるように硫酸塩として添加し、洗浄効果への影響について調査した。
その結果、得られた洗浄後有機の組成を表5に示す。洗浄始液の不純物濃度が上昇するほど洗浄が悪化し、有機中の不純物が除去され難くなることがわかる。
Co:61g/L、Mg:0.3g/L、Ca:0.03g/L、Na:2g/Lを含む塩化ニッケル溶液を、実施例1と同じPC88A:20vol%の抽出剤(有機溶媒)で抽出した有機相を二分し、一方は50g/Lの硫酸コバルト水溶液で3回洗浄した後、もう一方は硫酸コバルト水溶液による洗浄を行なわずに、その両者を硫酸溶液にてpH0.5の条件で逆抽出を行なった。
Claims (3)
- コバルトを含み、不純物元素のNi、Mg、Ca、Na元素を含む水溶液からの硫酸コバルトの製造方法であって、下記(1)から(3)の工程を含むことを特徴とする。
(1)ホスホン酸の有機溶媒またはホスフィン酸の有機溶媒を用い、pH3.5〜5.0のコバルトを含む水溶液からコバルトを抽出する抽出工程。
(2)コバルトを抽出したホスホン酸の有機溶媒またはホスフィン酸の有機溶媒に、pH3.5以上、且つ前記抽出工程のコバルトを含む水溶液のpHより高いpHの硫酸コバルト水溶液を接触させ、前記コバルトを抽出したホスホン酸の有機溶媒又はホスフィン酸の有機溶媒に含まれる不純物元素のNi、Mg、Ca、Na元素を、接触させた硫酸コバルト水溶液中に分配させ、分離する洗浄工程。
(3)前記不純物元素を分離したホスホン酸の有機溶媒またはホスフィン酸の有機溶媒から、硫酸によりコバルトの逆抽出を行なう逆抽出工程。 - 前記ホスホン酸の有機溶媒が、2−エチルヘキシルホスホン酸モノ2−エチルヘキシルエステルであることを特徴とする請求項1に記載の硫酸コバルトの製造方法。
- 前記ホスフィン酸の有機溶媒が、ジ−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸であることを特徴とする請求項1に記載の硫酸コバルトの製造方法。
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