以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.参考例>
まず、図1〜図5を参照して、参考例に係る油圧供給機構9について、本発明の各実施形態に係る油圧供給機構の説明に先立って説明する。
図1は、参考例に係る油圧供給機構9の概略構成の一例を示す模式図である。
油圧供給機構9は、例えば、油圧供給先としてのCVT(Continuously Variable Transmission)70へ油圧を供給するための機構である。CVT70は、プライマリプーリ73と、セカンダリプーリ75と、プライマリプーリ73とセカンダリプーリ75との間に巻き掛けられたチェーン71とを備える無段変速機である。また、油圧供給機構9は、アイドリングストップ制御を実行する車両に搭載される。
油圧供給機構9は、図1に示されるように、機械式オイルポンプ65及び電動式オイルポンプ69を油圧発生源として備える。また、油圧供給機構9は、逆止弁960と、リリーフ弁970とを備える。また、油圧供給機構9は、制御装置80を備える。
機械式オイルポンプ65の吐出側は、油路951を介してCVT70と接続される。エンジン63の運転時に、タンク61に貯留されるオイルが機械式オイルポンプ65によって吸入されて油路951側へ吐出される。油路951は、具体的には、下流側において分岐路951a及び分岐路951bに分岐してプライマリプーリ73及びセカンダリプーリ75とそれぞれ接続される。例えば、油路951における分岐部より上流側には、調圧弁81が設けられる。油路951における分岐部より上流側の油圧は、調圧弁81によりあらかじめ設定される設定圧力に調整される。また、分岐路951a及び分岐路951bには、それぞれ圧力制御弁83及び圧力制御弁85が設けられる。圧力制御弁83及び圧力制御弁85は、プライマリプーリ73及びセカンダリプーリ75へ供給される圧力を制御装置80からの動作指令に応じてそれぞれ調整する。
電動式オイルポンプ69の吐出側は、油路952を介して油路951と接続される。モータ67の駆動時に、タンク61に貯留されるオイルが電動式オイルポンプ69によって吸入されて油路952側へ吐出される。
逆止弁960は、油路952に設けられ、油路952におけるオイルの流れる方向を電動式オイルポンプ69の吐出側から油路951側へ向かう一方向に規制する。例えば、逆止弁960は、付勢部材により油路951を閉鎖する方向に付勢される弁体961を備える。弁体961に掛かる力の合力の向きが油路951側へ向かう方向である場合、油路952は弁体961によって開放される。一方、弁体961に掛かる力の合力の向きが電動式オイルポンプ69側へ向かう方向である場合、油路952は弁体961によって閉鎖される。
リリーフ弁970は、電動式オイルポンプ69の吐出側と吸入側とを接続する油路953に設けられ、油路952における油圧である油路油圧P9が基準油圧より高い場合に油路953を開放する。例えば、リリーフ弁970は、付勢部材により油路953を閉鎖する方向に付勢される弁体971を備える。油路油圧P9が基準油圧より高い場合、油路953は弁体971によって開放される。一方、油路油圧P9が基準油圧以下である場合、油路953は弁体971によって閉鎖される。基準油圧は、油路952における油圧である油路油圧P9が過剰に高くなることを抑制し得る値に設定される。
制御装置80は、車両の走行状態に応じて、モータ67、圧力制御弁83及び圧力制御弁85の各装置に対して動作指令を出力することによって、各装置の動作を制御する。具体的には、制御装置80は、エンジン63の自動停止中において、モータ67を駆動させる。それにより、電動式オイルポンプ69が駆動される。また、制御装置80は、エンジン63の再始動後において、モータ67の駆動を継続させた後、エンジン63の再始動が完了したと判定した時にモータ67を停止させる。それにより、電動式オイルポンプ69が停止する。
上記では、油圧供給機構9の構成の一例について説明したが、油圧供給機構9において、モータ67と、電動式オイルポンプ69と、油路952と、油路953と、逆止弁960と、リリーフ弁970とを含んでオイルポンプ装置980が構成されてもよい。その場合、オイルポンプ装置980は油路951と接続される。
図2及び図3は、参考例に係る油圧供給機構9のエンジン63の自動停止中における様子の一例を示す模式図である。具体的には、図2は、エンジン63の自動停止中に油路油圧P9が基準油圧以下になった場合の油圧供給機構9の様子が示されている。一方、図3は、エンジン63の自動停止中に油路油圧P9が基準油圧より高くなった場合の油圧供給機構9の様子が示されている。
エンジン63の自動停止中には、機械式オイルポンプ65が停止した状態で、電動式オイルポンプ69が駆動される。ゆえに、図2及び図3に示されるように、油路952は逆止弁960の弁体961によって開放される。よって、電動式オイルポンプ69からCVT70へ油路952及び油路951を介して油圧が供給される。それにより、CVT70への油圧の供給が維持される。
ここで、エンジン63の自動停止中に油路油圧P9が基準油圧以下である場合には、図2に示されるように、油路953はリリーフ弁970の弁体971によって閉鎖される。
一方、エンジン63の自動停止中に油路油圧P9が基準油圧より高い場合には、図3に示されるように、油路953はリリーフ弁970の弁体971によって開放される。それにより、油路952から電動式オイルポンプ69の吸入側へ油路953を介してオイルが送られることによって、油路952における油圧である油路油圧P9が基準油圧以下に調整される。
図4及び図5は、参考例に係る油圧供給機構9のエンジン63の再始動後における様子の一例を示す模式図である。具体的には、図4は、エンジン63の再始動後において電動式オイルポンプ69の駆動が継続している時の油圧供給機構9の様子が示されている。一方、図5は、エンジン63の再始動後において電動式オイルポンプ69が停止された後の油圧供給機構9の様子が示されている。
エンジン63の再始動後には、機械式オイルポンプ65が駆動される。よって、機械式オイルポンプ65からCVT70へ油路951を介して油圧が供給される。ここで、機械式オイルポンプ65の最大吐出圧は、電動式オイルポンプ69の最大吐出圧と比較して高い。ゆえに、機械式オイルポンプ65の吐出圧は、電動式オイルポンプ69の吐出圧と比較して基本的に高い。ゆえに、図4及び図5に示されるように、油路952は逆止弁960の弁体961によって閉鎖される。それにより、電動式オイルポンプ69側へオイルが逆流することが抑制される。
エンジン63の再始動後において、エンジン63の再始動が完了したと判定されるまでの間、電動式オイルポンプ69の駆動が継続される。ここで、油路952は逆止弁960の弁体961によって閉鎖されているので、電動式オイルポンプ69が駆動されることにより油路油圧P9が上昇して基準油圧に到達する。ゆえに、図4に示されるように、油路953はリリーフ弁970の弁体971によって開放される。それにより、油路952から電動式オイルポンプ69の吸入側へ油路953を介してオイルが送られることによって、油路952における油圧である油路油圧P9が過剰に高くなることが抑制される。それにより、油圧供給機構9が損傷することが抑制される。
そして、エンジン63の再始動後において、上述したように、エンジン63の再始動が完了したと判定された時に、電動式オイルポンプ69が停止する。それにより、油路油圧P9が低下して基準油圧以下になる。ゆえに、図5に示されるように、油路953はリリーフ弁970の弁体971によって閉鎖される。
以上説明したように、参考例に係る油圧供給機構9では、少なくとも逆止弁960及びリリーフ弁970を備えることによって、電動式オイルポンプ69側へオイルが逆流すること及び電動式オイルポンプ69と接続される油路952における油圧である油路油圧P9が過剰に高くなることを抑制することができる。
<2.第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態に係る油圧供給機構1について説明する。
[2−1.油圧供給機構の構成]
まず、図6を参照して、本実施形態に係る油圧供給機構1の構成について説明する。
図6は、本実施形態に係る油圧供給機構1の概略構成の一例を示す模式図である。
油圧供給機構1は、例えば、油圧供給先としてのCVT20へ油圧を供給するための機構である。CVT20は、本発明に係る油圧供給先の一例に相当する。なお、油圧供給機構1の油圧供給先は、特に限定されず、CVT20と異なる変速機(例えば、有段自動変速機)であってもよい。また、油圧供給機構1の油圧供給先は、油圧を用いる装置であればよく、変速機以外の装置であってもよい。
CVT20は、プライマリプーリ23と、セカンダリプーリ25と、プライマリプーリ23とセカンダリプーリ25との間に巻き掛けられたチェーン21とを備える無段変速機である。各プーリは、互いに対向する固定シーブ及び可動シーブを備える。チェーン21は、各プーリについて固定シーブと可動シーブとの間に挟持され、プライマリプーリ23とセカンダリプーリ25との間で動力を伝達する。各プーリにおける固定シーブと可動シーブとの距離に相当するシーブ幅を変化させることによって、各プーリについてのチェーン21の巻き掛け径を変化させることができる。CVT20では、各プーリのシーブ幅が連続的に変更可能であるので、プライマリプーリ23の回転数とセカンダリプーリ25の回転数との比である変速比を無段階に変更することができる。
また、油圧供給機構1は、アイドリングストップ制御を実行する車両に搭載される。具体的には、アイドリングストップ制御は、油圧供給機構1の制御装置30と異なる制御装置からエンジン13に対して動作指令が出力されることによって実行され得る。アイドリングストップ制御では、自動停止条件が満たされる場合に、ドライバの操作によらずエンジン13のアイドル運転を停止させる自動停止制御が実行される。自動停止条件が満たされるか否かは、例えば、ブレーキペダル及びアクセルペダルの操作量と、シフトレバーの位置と、車速とに基づいて判定され得る。また、アイドリングストップ制御では、エンジン13が自動停止した後に再始動条件が満たされる場合に、ドライバの操作によらずエンジン13を始動させる再始動制御が実行される。再始動条件は、例えば、エンジン13が自動停止した後に自動停止条件が満たされなくなることである。
油圧供給機構1は、図6に示されるように、機械式オイルポンプ15及び電動式オイルポンプ19を油圧発生源として備える。機械式オイルポンプ15及び電動式オイルポンプ19は、本発明に係る第1オイルポンプ及び第2オイルポンプの一例にそれぞれ相当する。また、油圧供給機構1は、油圧を伝達する油路として、第1油路151と、第2油路152と、第3油路153と、第4油路154と、第5油路155とを備える。また、油圧供給機構1は、軸方向に移動することによって油路間の連通状態を切り替え可能なスプール120を含む切替弁100を備える。また、油圧供給機構1は、制御装置30を備える。
機械式オイルポンプ15は、エンジン13から出力される動力を用いて駆動される。具体的には、機械式オイルポンプ15は、エンジン13のクランクシャフトと接続される。ゆえに、エンジン13の運転時に、エンジン13から出力される動力が、クランクシャフトを介して機械式オイルポンプ15に伝達される。それにより、機械式オイルポンプ15が駆動される。
機械式オイルポンプ15の吐出側は、第1油路151を介してCVT20と接続される。エンジン13の運転時に、タンク11に貯留されるオイルが機械式オイルポンプ15によって吸入されて第1油路151側へ吐出される。第1油路151は、具体的には、下流側において分岐路151a及び分岐路151bに分岐してプライマリプーリ23及びセカンダリプーリ25とそれぞれ接続される。例えば、第1油路151における分岐部より上流側には、調圧弁31が設けられる。第1油路151における分岐部より上流側の油圧は、調圧弁31によりあらかじめ設定される設定圧力に調整される。また、分岐路151a及び分岐路151bには、それぞれ圧力制御弁33及び圧力制御弁35が設けられる。圧力制御弁33及び圧力制御弁35は、プライマリプーリ23及びセカンダリプーリ25へ供給される圧力を制御装置30からの動作指令に応じてそれぞれ調整する。
また、第1油路151は、第2油路152と接続される。具体的には、第1油路151における機械式オイルポンプ15の吐出側と調圧弁31との間の部分が第2油路152と接続される。
また、第2油路152は、第5油路155と接続される。
電動式オイルポンプ19は、モータ17から出力される動力を用いて駆動される。また、電動式オイルポンプ19は、機械式オイルポンプ15の最大吐出圧と比較して低い最大吐出圧を有する。ゆえに、電動式オイルポンプ19の吐出圧は、機械式オイルポンプ15の吐出圧と比較して基本的に低い。具体的には、電動式オイルポンプ19は、モータ17の出力軸と接続される。ゆえに、モータ17の駆動時に、モータ17から出力される動力が、モータ17の出力軸を介して電動式オイルポンプ19に伝達される。それにより、電動式オイルポンプ19が駆動される。
電動式オイルポンプ19の吐出側は、第3油路153と接続される。モータ17の駆動時に、タンク11に貯留されるオイルが電動式オイルポンプ19によって吸入されて第3油路153側へ吐出される。
また、電動式オイルポンプ19の吸入側は、第4油路154と接続される。
切替弁100は、スプール120と、スプール120を収容するハウジング130と、バネ141及びバネ142とを備える。バネ141及びバネ142は、本発明に係る付勢部材の一例に相当する。例えば、ハウジング130は、円筒形状を有する。スプール120は、ハウジング130の軸方向に沿って延在し、ハウジング130の内周部と部分的に摺接した状態で軸方向に移動可能である。
スプール120は、例えば、第1ランド121と、第2ランド122と、溝部123と、連通路124とを備える。
第1ランド121及び第2ランド122は、ハウジング130の内周部と摺接する。第1ランド121及び第2ランド122は、軸方向に間隔を空けて設けられる。ゆえに、ハウジング130の内部空間は、各ランドによって軸方向に区画される。例えば、第1ランド121及び第2ランド122は、ハウジング130の内周部と対応する形状の横断面形状を有する。なお、以下では、第2ランド122に対する第1ランド121の方向を一側と称し、第1ランド121に対する第2ランド122の方向を他側と称する。よって、第2ランド122は、第1ランド121より他側に位置する。
溝部123は、第1ランド121と第2ランド122との間に位置し、第1ランド121及び第2ランド122の外周部と比較して小さい外径を有する。換言すると、溝部123は、第1ランド121及び第2ランド122の外周部と比較して径方向内側へ凹設された部分に相当する。例えば、溝部123は、周方向の全周に亘って環状に形成される。
連通路124は、第1ランド121の外周部の後述される第2ポート132側と溝部123の外周部とを連通する。具体的には、連通路124はスプール120の内部を貫通して設けられ、第1ランド121の外周部に形成される連通路124の開口部が周方向について第2ポート132側に位置する。また、スプール120のハウジング130に対する相対的な回転は規制されている。それにより、ハウジング130に対するスプール120の軸方向の相対位置によらず、第1ランド121の外周部に形成される連通路124の開口部が周方向について第2ポート132側に位置し得る。
例えば、スプール120のランドの外周部及びハウジング130の内周部のうちの一方にキー溝が設けられ、他方にキー溝と係合するキーが設けられることによって、スプール120のハウジング130に対する相対的な回転が規制され得る。また、例えば、スプール120のランドの外周部及びハウジング130の内周部が円形状以外の横断面形状を有することによって、スプール120のハウジング130に対する相対的な回転が規制され得る。また、例えば、バネ141及びバネ142の少なくとも一方がスプール120及びハウジング130と周方向に係合されることによって、スプール120のハウジング130に対する相対的な回転が規制され得る。
なお、溝部123の外周部に形成される連通路124の開口部は、周方向について第3ポート133側に位置してもよく、周方向について第3ポート133側に位置しなくてもよい。
ハウジング130には、例えば、第1ポート131と、第2ポート132と、第3ポート133と、第4ポート134とが設けられる。具体的には、第1ポート131、第2ポート132及び第3ポート133は、ハウジング130の側周部に貫通して設けられる。また、第4ポート134は、ハウジング130の一側の端部に貫通して設けられる。
第3ポート133は、第1ポート131及び第2ポート132より他側に位置する。第1ポート131及び第2ポート132は、第1ランド121によって同時に閉鎖され得る位置に設けられる。例えば、第1ポート131及び第2ポート132がハウジング130において設けられる位置は、ハウジング130の軸方向について一致してもよい。
第1ポート131には、第2油路152が接続される。このように、第2油路152は、第1油路151と第1ポート131とを接続する。
第2ポート132には、第3油路153が接続される。このように、第3油路153は、電動式オイルポンプ19の吐出側と第2ポート132とを接続する。
第3ポート133には、第4油路154が接続される。このように、第4油路154は、電動式オイルポンプ19の吸入側と第3ポート133とを接続する。
第4ポート134には、第5油路155が接続される。このように、第5油路155は、第2油路152と第4ポート134とを接続する。ゆえに、第5油路155は、第2油路152とスプール120の一側の端部129とを接続する。よって、スプール120の一側の端部129には、第5油路155を介して油圧が付与される。なお、第5油路155は、第1油路151とスプール120の一側の端部129とを接続してもよい。
上述したように、スプール120は、ハウジング130の内周部と摺接する各ランドを有する。ゆえに、スプール120が軸方向に移動することによって、ハウジング130の側周部に貫通して設けられる第1ポート131、第2ポート132及び第3ポート133の開閉状態が切り替えられる。それにより、第2油路152、第3油路153及び第4油路154の油路間の連通状態が切り替えられる。このように、スプール120は、軸方向に移動することによって油路間の連通状態を切り替え可能である。
バネ141及びバネ142は、スプール120を他側から一側へ向かう方向に付勢する。具体的には、バネ141及びバネ142は、スプール120の他側の端部とハウジング130の他側の端部との間に設けられる。バネ141及びバネ142は、ハウジング130の軸方向に沿って伸縮自在に設けられる。ゆえに、ハウジング130内においてスプール120が他側へ移動することに伴いバネ141及びバネ142の少なくとも一方が圧縮されることによって、他側から一側へ向かう方向の力である付勢荷重がスプール120に作用する。例えば、バネ141のバネ定数は、バネ142と比較して大きい。また、例えば、バネ141の自然長は、バネ142と比較して短い。
なお、油圧供給機構1に設けられるバネの数、各バネ間の接続状態及びバネの位置は、特に限定されない。例えば、油圧供給機構1に設けられるバネの数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、例えば、各バネは、互いに直列に接続されていてもよい。また、バネは、スプール120を他側から一側へ向かう方向に付勢すればよく、例えば、スプール120の一側の端部129とハウジング130の一側の端部との間に設けられてもよい。また、油圧供給機構1において、付勢部材として、バネと異なる部材が適用されてもよい。
スプール120には、スプール120の一側の端部129に油圧が付与されることによって、一側から他側へ向かう方向の力である油圧荷重が作用する。一方、スプール120には、バネ141及びバネ142によって、他側から一側へ向かう方向の力である付勢荷重が作用する。ゆえに、スプール120は、油圧荷重と付勢荷重とが釣り合う位置へ移動する。よって、スプール120は、第5油路155を介してスプール120の一側の端部129に付与される油圧である付与油圧P1に応じて、軸方向に移動する。具体的には、スプール120は、付与油圧P1の増大に伴って、一側から他側へ向かう方向に移動する。したがって、スプール120は、第5油路155を介してスプール120の一側の端部129に付与される付与油圧P1に応じて、油路間の連通状態を切り替え可能である。具体的には、スプール120は、付与油圧P1に応じて、第2油路152と第3油路153との連通状態及び第3油路153と第4油路154との連通状態を切り替え可能である。
制御装置30は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)及びCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
また、制御装置30は、各装置から出力される情報を受信する。制御装置30と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。具体的には、制御装置30は、アイドリングストップ制御を実行する制御装置からエンジン13の自動停止制御が実行されているか否かを示す情報及びエンジン13の再始動制御が実行されているか否かを示す情報を受信する。また、制御装置30は、他の制御装置からCVT20の変速比の目標値を示す情報を受信する。
また、制御装置30は、車両の走行状態に応じて、モータ17、圧力制御弁33及び圧力制御弁35の各装置に対して動作指令を出力することによって、各装置の動作を制御する。具体的には、制御装置30は、エンジン13の自動停止中において、モータ17を駆動させる。それにより、電動式オイルポンプ19が駆動される。また、制御装置30は、エンジン13の再始動後において、モータ17の駆動を継続させた後、エンジン13の再始動が完了したと判定した時にモータ17を停止させる。それにより、電動式オイルポンプ19が停止する。制御装置30は、例えば、エンジン13の回転数が基準回転数に到達した場合にエンジン13の再始動が完了したと判定し得る。基準回転数は、具体的には、エンジン13の運転状態が比較的安定したか否かを判定し得る値に設定される。なお、制御装置30は、エンジン13の回転数を検出可能な車載されるセンサから出力される検出結果を受信することにより、エンジン13の回転数を示す情報を取得し得る。また、制御装置30は、CVT20の変速比が目標値と一致するように圧力制御弁33及び圧力制御弁35の動作を制御する。
上記では、油圧供給機構1の構成の一例について説明したが、油圧供給機構1において、モータ17と、電動式オイルポンプ19と、第2油路152と、第3油路153と、第4油路154と、第5油路155と、切替弁100とを含んでオイルポンプ装置180が構成されてもよい。その場合、オイルポンプ装置180は第1油路151と接続される。
[2−2.油圧供給機構の動作]
続いて、図7〜図10を参照して、本実施形態に係る油圧供給機構1の動作について説明する。
上述したように、スプール120は、付与油圧P1に応じて、第2油路152と第3油路153との連通状態及び第3油路153と第4油路154との連通状態を切り替え可能である。具体的には、スプール120は、付与油圧P1が第1閾値より高いか否かに応じて、第2油路152と第3油路153との連通状態を切り替え可能である。第1閾値は、機械式オイルポンプ15の最大吐出圧より低く、電動式オイルポンプ19の最大吐出圧より高い値である。また、スプール120は、付与油圧P1が第2閾値より高いか否かに応じて、第3油路153と第4油路154との連通状態を切り替え可能である。第2閾値は、第1閾値より低い値である。第2閾値は、具体的には、電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることを抑制し得る値に設定される。
スプール120による油路間の連通状態の付与油圧P1に応じた上記の切り替えは、例えば、ハウジング130の横断面積や、バネ141及びバネ142のバネ定数や、バネ141及びバネ142の自然長や、スプール120の各ランドの寸法や、各ランド間の位置関係や、ハウジング130における各ポート間の位置関係等の切替弁100の構成部品の特性を適宜設定することにより実現される。
以下では、スプール120により切り替えられる油路間の連通状態と付与油圧P1との関係性について、より具体的に説明する。
(自動停止中)
図7及び図8は、本実施形態に係る油圧供給機構1のエンジン13の自動停止中における様子の一例を示す模式図である。具体的には、図7は、エンジン13の自動停止中にスプール120の一側の端部129に付与される付与油圧P1が第2閾値以下になった場合の油圧供給機構1の様子が示されている。一方、図8は、エンジン13の自動停止中にスプール120の一側の端部129に付与される付与油圧P1が第2閾値より高くなった場合の油圧供給機構1の様子が示されている。
エンジン13の自動停止中には、機械式オイルポンプ15が停止するので、機械式オイルポンプ15からスプール120の一側の端部129への第1油路151、第2油路152及び第5油路155を介した油圧の供給は行われない。それにより、付与油圧P1は、第1閾値以下になる。付与油圧P1が第1閾値以下である場合には、図7及び図8に示されるように、第1ポート131と第2ポート132とが溝部123を介して連通される。よって、第2油路152と第3油路153とが連通される。ゆえに、電動式オイルポンプ19からCVT20へ第3油路153、第2油路152及び第1油路151を介して油圧が供給される。それにより、CVT20への油圧の供給が維持される。
ここで、エンジン13の自動停止中には、電動式オイルポンプ19からスプール120の一側の端部129へ第3油路153、第2油路152及び第5油路155を介して油圧が供給される。付与油圧P1が第2閾値以下である場合には、図7に示されるように、第3ポート133と第1ポート131及び第2ポート132とが第2ランド122によって遮断される。ゆえに、第3油路153と第4油路154とが遮断される。
例えば、エンジン13の自動停止中において、付与油圧P1が第2閾値以下である場合、比較的小さなバネ定数を有するバネ142のみが圧縮されて、スプール120はバネ142のみから付勢荷重を受ける。このように、スプール120にバネ142による付勢荷重が作用することによって、第3ポート133と第1ポート131及び第2ポート132とが第2ランド122によって遮断される状態が実現され得る。
一方、付与油圧P1が第2閾値より高い場合には、付与油圧P1が第2閾値以下である場合と比較して、スプール120は他側に位置する。それにより、付与油圧P1が第1閾値以下になるエンジン13の自動停止中において、付与油圧P1が第2閾値より高い場合には、図8に示されるように、第1ポート131と第2ポート132と第3ポート133とが溝部123を介して連通される。ゆえに、第3油路153と第4油路154とが連通される。それにより、第3油路153から電動式オイルポンプ19の吸入側へ溝部123及び第4油路154を介してオイルが送られることによって、第3油路153における油圧が第2閾値以下に調整される。
例えば、エンジン13の自動停止中において、付与油圧P1が第2閾値より高い場合、バネ142に加えて比較的大きなバネ定数を有するバネ141が圧縮されて、スプール120はバネ141及びバネ142の双方から付勢荷重を受ける。このように、スプール120にバネ141及びバネ142による付勢荷重が作用することによって、第1ポート131と第2ポート132と第3ポート133とが溝部123を介して連通される状態が実現され得る。
(再始動後)
図9及び図10は、本実施形態に係る油圧供給機構1のエンジン13の再始動後における様子の一例を示す模式図である。具体的には、図9は、エンジン13の再始動後において電動式オイルポンプ19の駆動が継続している時の油圧供給機構1の様子が示されている。一方、図10は、エンジン13の再始動後において電動式オイルポンプ19が停止された後の油圧供給機構1の様子が示されている。
エンジン13の再始動後には、機械式オイルポンプ15が駆動される。よって、機械式オイルポンプ15からCVT20へ第1油路151を介して油圧が供給される。ここで、エンジン13の再始動後には、機械式オイルポンプ15からスプール120の一側の端部129へ第1油路151、第2油路152及び第5油路155を介して油圧が供給される。それにより、付与油圧P1は、第1閾値より高くなる。付与油圧P1が第1閾値より高い場合には、付与油圧P1が第1閾値以下である場合と比較して、スプール120は他側に位置する。それにより、付与油圧P1が第1閾値より高いエンジン13の再始動後には、図9及び図10に示されるように、第1ポート131及び第2ポート132が第1ランド121によって閉鎖される。ゆえに、第2油路152と第3油路153とが遮断される。それにより、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することが抑制される。
エンジン13の再始動後において、エンジン13の再始動が完了したと判定されるまでの間、電動式オイルポンプ19の駆動が継続される。ここで、付与油圧P1が第1閾値より高い場合には、図9に示されるように、第3ポート133が溝部123と連通される。また、スプール120には、第1ランド121の外周部の第2ポート132側と溝部123の外周部とを連通する連通路124が設けられる。ゆえに、第3油路153と第4油路154とが連通路124を介して連通される。それにより、第3油路153から電動式オイルポンプ19の吸入側へ連通路124及び第4油路154を介してオイルが送られることによって、電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることが抑制される。それにより、油圧供給機構1が損傷することが抑制される。
そして、エンジン13の再始動後において、上述したように、エンジン13の再始動が完了したと判定された時に、電動式オイルポンプ19が停止する。エンジン13の再始動後において、電動式オイルポンプ19が駆動されているか否かに関わらず機械式オイルポンプ15からスプール120の一側の端部129へ油圧が供給されるので、付与油圧P1は第1閾値より高くなる。よって、例えば、車両の走行中において、図10に示されるように、第1ポート131及び第2ポート132が第1ランド121によって閉鎖され、第2油路152と第3油路153とが遮断される状態が維持される。それにより、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することが抑制される。
[2−3.油圧供給機構の効果]
続いて、本実施形態に係る油圧供給機構1の効果について説明する。
油圧供給機構1では、第2油路152と第3油路153との連通状態及び第3油路153と第4油路154との連通状態が、第5油路155を介してスプール120の一側の端部129に付与される付与油圧P1に応じて、スプール120によって切り替えられる。第2油路152は、機械式オイルポンプ15の吐出側と油圧供給先であるCVT20とを接続する第1油路151と接続される。第3油路153は、電動式オイルポンプ19の吐出側と接続される。第4油路154は、電動式オイルポンプ19の吸入側と接続される。第5油路155は、第2油路152とスプール120の一側の端部129とを接続する。
ここで、第5油路155を介してスプール120の一側の端部129に付与される付与油圧P1は、機械式オイルポンプ15及び電動式オイルポンプ19の駆動状態に応じて変動する。ゆえに、第2油路152と第3油路153との連通状態が付与油圧P1に応じて切り替えられることによって、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することを機械式オイルポンプ15の駆動状態に応じて適切に抑制することができる。また、第3油路153と第4油路154との連通状態が付与油圧P1に応じて切り替えられることによって、電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることを電動式オイルポンプ19の駆動状態に応じて適切に抑制することができる。
したがって、本実施形態に係る油圧供給機構1では、油路間の連通状態を切り替え可能なスプール120を備えることによって、逆止弁及びリリーフ弁を備えることなく電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流すること及び電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることを抑制することができる。それにより、油圧供給機構1を構成する部品点数を低減することができる。ゆえに、油圧供給機構1を小型化することが可能となる。また、油圧供給機構1が小型化されることによって、油圧供給機構1が搭載される車両全体の重量を低減することや車両に搭載される機器のレイアウトの自由度を向上させることができる。
また、油圧供給機構1では、付与油圧P1が第1閾値より高い場合に、第2油路152と第3油路153とが遮断され、付与油圧P1が第1閾値以下である場合に、第2油路152と第3油路153とが連通され得る。それにより、第2油路152と第3油路153との連通状態を、機械式オイルポンプ15が駆動されているか否かに応じてより適切に切り替えることができる。ゆえに、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することをより適切に抑制することができる。
また、油圧供給機構1では、付与油圧P1が第1閾値と比較して低い第2閾値より高い場合に、第3油路153と第4油路154とが連通され、付与油圧P1が第2閾値以下である場合に、第3油路153と第4油路154とが遮断され得る。それにより、第3油路153と第4油路154との連通状態を、電動式オイルポンプ19の吐出圧に応じてより適切に切り替えることができる。ゆえに、電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることをより適切に抑制することができる。
また、油圧供給機構1では、スプール120を収容するハウジング130には、第2油路152が接続される第1ポート131、第3油路153が接続される第2ポート132及び第4油路154が接続される第3ポート133が設けられ得る。また、第3ポート133は、第1ポート131及び第2ポート132より他側に位置し得る。また、スプール120は、ハウジング130の内周部と摺接する第1ランド121と、ハウジング130の内周部と摺接し第1ランド121より他側に位置する第2ランド122と、第1ランド121と第2ランド122との間に位置し第1ランド121及び第2ランド122の外周部と比較して小さい外径を有する溝部123と、第1ランド121の外周部の第2ポート132側と溝部123の外周部とを連通する連通路とを備え得る。また、付与油圧P1が第1閾値より高い場合に、第1ポート131及び第2ポート132が第1ランド121によって閉鎖され、第3ポート133が溝部123と連通され得る。また、付与油圧P1が第1閾値以下であり第2閾値より高い場合に、第1ポート131と第2ポート132と第3ポート133とが溝部123を介して連通され得る。また、付与油圧P1が第2閾値以下である場合に、第1ポート131と第2ポート132とが溝部123を介して連通され、第3ポート133と第1ポート131及び第2ポート132とが第2ランド122によって遮断され得る。それにより、付与油圧P1が第1閾値より高いか否かに応じた第2油路152と第3油路153との連通状態の切り替えを効果的に実現することができる。また、付与油圧P1が第2閾値より高いか否かに応じた第3油路153と第4油路154との連通状態の切り替えを効果的に実現することができる。
<3.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る油圧供給機構2について説明する。
[3−1.油圧供給機構の構成]
まず、図11を参照して、本実施形態に係る油圧供給機構2の構成について説明する。
図11は、本実施形態に係る油圧供給機構2の概略構成の一例を示す模式図である。
油圧供給機構2は、上述した油圧供給機構1と比較して、切替弁の構成が異なる。
油圧供給機構2は、上述した油圧供給機構1と同様に、例えば、油圧供給先としてのCVT20へ油圧を供給するための機構である。また、油圧供給機構2は、アイドリングストップ制御を実行する車両に搭載される。また、油圧供給機構2は、図11に示されるように、機械式オイルポンプ15及び電動式オイルポンプ19を油圧発生源として備える。また、油圧供給機構2は、油圧を伝達する油路として、第1油路151と、第2油路152と、第3油路153と、第4油路154と、第5油路155とを備える。また、油圧供給機構2は、制御装置30を備える。油圧供給機構2において、モータ17、圧力制御弁33及び圧力制御弁35の動作は、制御装置30によって上述した油圧供給機構1と同様に制御される。
第2の実施形態に係る油圧供給機構2は、軸方向に移動することによって油路間の連通状態を切り替え可能なスプール220を含む切替弁200を備える。
切替弁200は、スプール220と、スプール220を収容するハウジング230と、バネ241及びバネ242とを備える。バネ241及びバネ242は、本発明に係る付勢部材の一例に相当する。例えば、ハウジング230は、円筒形状を有する。スプール220は、ハウジング230の軸方向に沿って延在し、ハウジング230の内周部と部分的に摺接した状態で軸方向に移動可能である。
スプール220は、例えば、第1ランド221と、第2ランド222と、溝部223とを備える。
第1ランド221及び第2ランド222は、ハウジング230の内周部と摺接する。第1ランド221及び第2ランド222は、軸方向に間隔を空けて設けられる。ゆえに、ハウジング230の内部空間は、各ランドによって軸方向に区画される。例えば、第1ランド221及び第2ランド222は、ハウジング230の内周部と対応する形状の横断面形状を有する。なお、以下では、第2ランド222に対する第1ランド221の方向を一側と称し、第1ランド221に対する第2ランド222の方向を他側と称する。よって、第2ランド222は、第1ランド221より他側に位置する。
溝部223は、第1ランド221と第2ランド222との間に位置し、第1ランド221及び第2ランド222の外周部と比較して小さい外径を有する。換言すると、溝部223は、第1ランド221及び第2ランド222の外周部と比較して径方向内側へ凹設された部分に相当する。例えば、溝部223は、周方向の全周に亘って環状に形成される。
ハウジング230には、例えば、第1ポート231と、第2ポート232と、第3ポート233と、第4ポート234とが設けられる。具体的には、第1ポート231、第2ポート232及び第3ポート233は、ハウジング230の側周部に貫通して設けられる。また、第4ポート234は、ハウジング230の一側の端部に貫通して設けられる。
第3ポート233は、第2ポート232より他側に位置する。また、第2ポート232は、第1ポート231より他側に位置する。ゆえに、各ポートは、ハウジング230の軸方向について一側から順に第1ポート231、第2ポート232、第3ポート233の順に位置する。
第1ポート231には、第2油路152が接続される。このように、第2油路152は、第1油路151と第1ポート231とを接続する。
第2ポート232には、第3油路153が接続される。このように、第3油路153は、電動式オイルポンプ19の吐出側と第2ポート232とを接続する。
第3ポート233には、第4油路154が接続される。このように、第4油路154は、電動式オイルポンプ19の吸入側と第3ポート233とを接続する。
第4ポート234には、第5油路155が接続される。このように、第5油路155は、第2油路152と第4ポート234とを接続する。ゆえに、第5油路155は、第2油路152とスプール220の一側の端部229とを接続する。よって、スプール220の一側の端部229には、第5油路155を介して油圧が付与される。なお、第5油路155は、第1油路151とスプール220の一側の端部229とを接続してもよい。
上述したように、スプール220は、ハウジング230の内周部と摺接する各ランドを有する。ゆえに、スプール220が軸方向に移動することによって、ハウジング230の側周部に貫通して設けられる第1ポート231、第2ポート232及び第3ポート233の開閉状態が切り替えられる。それにより、第2油路152、第3油路153及び第4油路154の油路間の連通状態が切り替えられる。このように、スプール220は、軸方向に移動することによって油路間の連通状態を切り替え可能である。
バネ241及びバネ242は、スプール220を他側から一側へ向かう方向に付勢する。具体的には、バネ241及びバネ242は、スプール220の他側の端部とハウジング230の他側の端部との間に設けられる。バネ241及びバネ242は、ハウジング230の軸方向に沿って伸縮自在に設けられる。ゆえに、ハウジング230内においてスプール220が他側へ移動することに伴いバネ241及びバネ242の少なくとも一方が圧縮されることによって、他側から一側へ向かう方向の力である付勢荷重がスプール220に作用する。例えば、バネ241のバネ定数は、バネ242と比較して大きい。また、例えば、バネ241の自然長は、バネ242と比較して短い。
なお、油圧供給機構2に設けられるバネの数、各バネ間の接続状態及びバネの位置は特に限定されず、油圧供給機構2において、付勢部材として、バネと異なる部材が適用されてもよい。
スプール220には、スプール220の一側の端部229に油圧が付与されることによって、一側から他側へ向かう方向の力である油圧荷重が作用する。一方、スプール220には、バネ241及びバネ242によって、他側から一側へ向かう方向の力である付勢荷重が作用する。ゆえに、スプール220は、油圧荷重と付勢荷重とが釣り合う位置へ移動する。よって、スプール220は、第5油路155を介してスプール220の一側の端部229に付与される油圧である付与油圧P2に応じて、軸方向に移動する。具体的には、スプール220は、付与油圧P2の増大に伴って、一側から他側へ向かう方向に移動する。したがって、スプール220は、第5油路155を介してスプール220の一側の端部229に付与される付与油圧P2に応じて、油路間の連通状態を切り替え可能である。具体的には、スプール220は、付与油圧P2に応じて、第2油路152と第3油路153との連通状態及び第3油路153と第4油路154との連通状態を切り替え可能である。
上記では、油圧供給機構2の構成の一例について説明したが、油圧供給機構2において、モータ17と、電動式オイルポンプ19と、第2油路152と、第3油路153と、第4油路154と、第5油路155と、切替弁200とを含んでオイルポンプ装置280が構成されてもよい。その場合、オイルポンプ装置280は第1油路151と接続される。
[3−2.油圧供給機構の動作]
続いて、図12〜図15を参照して、本実施形態に係る油圧供給機構2の動作について説明する。
上述したように、スプール220は、付与油圧P2に応じて、第2油路152と第3油路153との連通状態及び第3油路153と第4油路154との連通状態を切り替え可能である。具体的には、スプール220は、付与油圧P2が第1閾値より高いか否かに応じて、第2油路152と第3油路153との連通状態を切り替え可能である。また、スプール220は、付与油圧P2が第2閾値より高いか否かに応じて、第3油路153と第4油路154との連通状態を切り替え可能である。
スプール220による油路間の連通状態の付与油圧P2に応じた上記の切り替えは、例えば、ハウジング230の横断面積や、バネ241及びバネ242のバネ定数や、バネ241及びバネ242の自然長や、スプール220の各ランドの寸法や、各ランド間の位置関係や、ハウジング230における各ポート間の位置関係等の切替弁200の構成部品の特性を適宜設定することにより実現される。
以下では、スプール220により切り替えられる油路間の連通状態と付与油圧P2との関係性について、より具体的に説明する。
(自動停止時)
図12及び図13は、本実施形態に係る油圧供給機構2のエンジン13の自動停止中における様子の一例を示す模式図である。具体的には、図12は、エンジン13の自動停止中にスプール220の一側の端部229に付与される付与油圧P2が第2閾値以下になった場合の油圧供給機構2の様子が示されている。一方、図13は、エンジン13の自動停止中にスプール220の一側の端部229に付与される付与油圧P2が第2閾値より高くなった場合の油圧供給機構2の様子が示されている。
エンジン13の自動停止中には、機械式オイルポンプ15が停止するので、機械式オイルポンプ15からスプール220の一側の端部229への第1油路151、第2油路152及び第5油路155を介した油圧の供給は行われない。それにより、付与油圧P2は、第1閾値以下になる。付与油圧P2が第1閾値以下である場合には、図12及び図13に示されるように、第1ポート231と第2ポート232とが溝部223を介して連通される。よって、第2油路152と第3油路153とが連通される。ゆえに、電動式オイルポンプ19からCVT20へ第3油路153、第2油路152及び第1油路151を介して油圧が供給される。それにより、CVT20への油圧の供給が維持される。
ここで、エンジン13の自動停止中には、電動式オイルポンプ19からスプール220の一側の端部229へ第3油路153、第2油路152及び第5油路155を介して油圧が供給される。付与油圧P2が第2閾値以下である場合には、図12に示されるように、第3ポート233と第1ポート231及び第2ポート232とが第2ランド222によって遮断される。ゆえに、第3油路153と第4油路154とが遮断され得る。
例えば、エンジン13の自動停止中において、付与油圧P2が第2閾値以下である場合、比較的小さなバネ定数を有するバネ242のみが圧縮されて、スプール220はバネ242のみから付勢荷重を受ける。このように、スプール220にバネ242による付勢荷重が作用することによって、第3ポート233と第1ポート231及び第2ポート232とが第2ランド222によって遮断される状態が実現される。
一方、付与油圧P2が第2閾値より高い場合には、付与油圧P2が第2閾値以下である場合と比較して、スプール220は他側に位置する。それにより、付与油圧P2が第1閾値以下になるエンジン13の自動停止中において、付与油圧P2が第2閾値より高い場合には、図13に示されるように、第1ポート231と第2ポート232と第3ポート233とが溝部223を介して連通される。ゆえに、第3油路153と第4油路154とが連通される。それにより、第3油路153から電動式オイルポンプ19の吸入側へ溝部223及び第4油路154を介してオイルが送られることによって、第3油路153における油圧が第2閾値以下に調整される。
例えば、エンジン13の自動停止中において、付与油圧P2が第2閾値より高い場合、バネ242に加えて比較的大きなバネ定数を有するバネ241が圧縮されて、スプール220はバネ241及びバネ242の双方から付勢荷重を受ける。このように、スプール220にバネ241及びバネ242による付勢荷重が作用することによって、第1ポート231と第2ポート232と第3ポート233とが溝部223を介して連通される状態が実現され得る。
(再始動時)
図14及び図15は、本実施形態に係る油圧供給機構2のエンジン13の再始動後における様子の一例を示す模式図である。具体的には、図14は、エンジン13の再始動後において電動式オイルポンプ19の駆動が継続している時の油圧供給機構2の様子が示されている。一方、図15は、エンジン13の再始動後において電動式オイルポンプ19が停止された後の油圧供給機構2の様子が示されている。
エンジン13の再始動後には、機械式オイルポンプ15が駆動される。よって、機械式オイルポンプ15からCVT20へ第1油路151を介して油圧が供給される。ここで、エンジン13の再始動後には、機械式オイルポンプ15からスプール220の一側の端部229へ第1油路151、第2油路152及び第5油路155を介して油圧が供給される。それにより、付与油圧P2は、第1閾値より高くなる。付与油圧P2が第1閾値より高い場合には、付与油圧P2が第1閾値以下である場合と比較して、スプール220は他側に位置する。それにより、付与油圧P2が第1閾値より高いエンジン13の再始動後には、図14及び図15に示されるように、第1ポート231が第1ランド221によって閉鎖される。ゆえに、第2油路152と第3油路153とが遮断される。それにより、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することが抑制される。
エンジン13の再始動後において、エンジン13の再始動が完了したと判定されるまでの間、電動式オイルポンプ19の駆動が継続される。ここで、付与油圧P2が第1閾値より高い場合には、図14に示されるように、第2ポート232と第3ポート233とが溝部223を介して連通される。ゆえに、第3油路153と第4油路154とが溝部223を介して連通される。それにより、第3油路153から電動式オイルポンプ19の吸入側へ溝部223及び第4油路154を介してオイルが送られることによって、電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることが抑制される。それにより、油圧供給機構2が損傷することが抑制される。
そして、エンジン13の再始動後において、上述したように、エンジン13の再始動が完了したと判定された時に、電動式オイルポンプ19が停止する。エンジン13の再始動後において、電動式オイルポンプ19が駆動されているか否かに関わらず機械式オイルポンプ15からスプール220の一側の端部229へ油圧が供給されるので、付与油圧P2は第1閾値より高くなる。よって、例えば、車両の走行中において、図15に示されるように、第1ポート231が第1ランド221によって閉鎖され、第2油路152と第3油路153とが遮断される状態が維持される。それにより、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することが抑制される。
[3−3.油圧供給機構の効果]
続いて、本実施形態に係る油圧供給機構2の効果について説明する。
油圧供給機構2では、上述した油圧供給機構1と同様に、第2油路152と第3油路153との連通状態及び第3油路153と第4油路154との連通状態が、第5油路155を介してスプール220の一側の端部229に付与される付与油圧P2に応じて、スプール220によって切り替えられる。ゆえに、第2油路152と第3油路153との連通状態が付与油圧P2に応じて切り替えられることによって、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することを機械式オイルポンプ15の駆動状態に応じて適切に抑制することができる。また、第3油路153と第4油路154との連通状態が付与油圧P2に応じて切り替えられることによって、電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることを電動式オイルポンプ19の駆動状態に応じて適切に抑制することができる。
したがって、本実施形態に係る油圧供給機構2では、油路間の連通状態を切り替え可能なスプール220を備えることによって、逆止弁及びリリーフ弁を備えることなく電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流すること及び電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることを抑制することができる。それにより、油圧供給機構2を構成する部品点数を低減することができる。ゆえに、油圧供給機構2を小型化することが可能となる。また、油圧供給機構2が小型化されることによって、油圧供給機構2が搭載される車両全体の重量を低減することや車両に搭載される機器のレイアウトの自由度を向上させることができる。
また、油圧供給機構2では、上述した油圧供給機構1と同様に、付与油圧P2が第1閾値より高い場合に、第2油路152と第3油路153とが遮断され、付与油圧P2が第1閾値以下である場合に、第2油路152と第3油路153とが連通され得る。それにより、第2油路152と第3油路153との連通状態を、機械式オイルポンプ15が駆動されているか否かに応じてより適切に切り替えることができる。ゆえに、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することをより適切に抑制することができる。
また、油圧供給機構2では、上述した油圧供給機構1と同様に、付与油圧P2が第1閾値と比較して低い第2閾値より高い場合に、第3油路153と第4油路154とが連通され、付与油圧P2が第2閾値以下である場合に、第3油路153と第4油路154とが遮断され得る。それにより、第3油路153と第4油路154との連通状態を、電動式オイルポンプ19の吐出圧に応じてより適切に切り替えることができる。ゆえに、電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることをより適切に抑制することができる。
また、油圧供給機構2では、スプール220を収容するハウジング230には、第2油路152が接続される第1ポート231、第3油路153が接続される第2ポート232及び第4油路154が接続される第3ポート233が設けられ得る。また、第3ポート233は第2ポート232より他側に位置し、第2ポート232は第1ポート231より他側に位置し得る。また、スプール220は、ハウジング230の内周部と摺接する第1ランド221と、ハウジング230の内周部と摺接し第1ランド221より他側に位置する第2ランド222と、第1ランド221と第2ランド222との間に位置し第1ランド221及び第2ランド222の外周部と比較して小さい外径を有する溝部223とを備え得る。また、付与油圧P2が第1閾値より高い場合に、第1ポート231が第1ランド221によって閉鎖され、第2ポート232と第3ポート233とが溝部223を介して連通され得る。また、付与油圧P2が第1閾値以下であり第2閾値より高い場合に、第1ポート231と第2ポート232と第3ポート233とが溝部223を介して連通され得る。また、付与油圧P2が第2閾値以下である場合に、第1ポート231と第2ポート232とが溝部223を介して連通され、第3ポート233と第1ポート231及び第2ポート232とが第2ランド222によって遮断され得る。それにより、上述した油圧供給機構1と同様に、付与油圧P2が第1閾値より高いか否かに応じた第2油路152と第3油路153との連通状態の切り替えを効果的に実現することができる。また、付与油圧P2が第2閾値より高いか否かに応じた第3油路153と第4油路154との連通状態の切り替えを効果的に実現することができる。
<4.むすび>
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、第2油路152と第3油路153との連通状態及び第3油路153と第4油路154との連通状態が、第5油路155を介してスプール120(220)の一側の端部129(229)に付与される付与油圧P1(P2)に応じて、スプール120(220)によって切り替えられる。ゆえに、第2油路152と第3油路153との連通状態が付与油圧P2に応じて切り替えられることによって、電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流することを機械式オイルポンプ15の駆動状態に応じて適切に抑制することができる。また、第3油路153と第4油路154との連通状態が付与油圧P2に応じて切り替えられることによって、電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることを電動式オイルポンプ19の駆動状態に応じて適切に抑制することができる。
したがって、本発明の各実施形態に係る油圧供給機構1(2)では、油路間の連通状態を切り替え可能なスプール120(220)を備えることによって、逆止弁及びリリーフ弁を備えることなく電動式オイルポンプ19側へオイルが逆流すること及び電動式オイルポンプ19と接続される第3油路153における油圧が過剰に高くなることを抑制することができる。それにより、油圧供給機構1(2)を構成する部品点数を低減することができる。ゆえに、油圧供給機構1(2)を小型化することが可能となる。また、油圧供給機構1(2)が小型化されることによって、油圧供給機構1(2)が搭載される車両全体の重量を低減することや車両に搭載される機器のレイアウトの自由度を向上させることができる。
なお、上記では、本発明の各実施形態について、第1オイルポンプ及び第2オイルポンプとして機械式オイルポンプ15及び電動式オイルポンプ19が油圧供給機構に備えられる例を説明したが、本発明に係る油圧供給機構における各オイルポンプはこのような例に限定されない。具体的には、本発明に係る油圧供給機構は、互いに最大吐出圧が異なる少なくとも2つのオイルポンプを備えればよい。ゆえに、各オイルポンプの駆動源は特に限定されず、例えば、第1オイルポンプ及び第2オイルポンプの双方が電動式オイルポンプであってもよい。そのような場合であっても、第1オイルポンプの最大吐出圧と比較して低い最大吐出圧を有する第2オイルポンプ側へオイルが逆流することを第1オイルポンプの駆動状態に応じて適切に抑制することができる。また、第2オイルポンプと接続される第3油路における油圧が過剰に高くなることを第2オイルポンプの駆動状態に応じて適切に抑制することができる。
また、上記では、各図面を参照して、本発明の各実施形態に係る油圧供給機構1(2)における各構成要素について説明したが、各構成要素の形状及び各構成要素間の位置関係は各図面に対応する例に限定されず、図面に示した形状及び位置関係は一例に過ぎない。また、各構成要素は、一体として形成されてもよく、複数の部材によって形成されてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。