ところで、上述したように、特許文献1に記載の可変容量ポンプの運転状態切替装置では、エンジン回転数およびトランスミッション油温に基づいて算出された半容量運転状態にあるときのオイルポンプの吐出流量と、車両の緒元や車両の運転状態から算出されたオイルポンプの必要吐出流量との差分(余裕流量)が、予め設定された所定の判定閾値以上の場合に、シフトソレノイドバルブが制御されることで、オイルポンプの運転状態が半容量運転状態に切り替えられ、判定閾値未満であればオイルポンプが全容量運転状態に切り替えられる。
ここで、通常、電子制御ユニットでは、例えば、オイルポンプ、ポンプシフトバルブ、シフトソレノイドバルブ、及び各センサ(特性)等の製造ばらつきや、制御遅れを考慮し(すなわちワーストケースを想定し)、安全側にマージンを持って、全容量運転状態(全吐出運転状態)と半容量運転状態(半吐出運転状態)との切替えが制御される。すなわち、半容量運転状態にあるときのオイルポンプの吐出流量や、オイルポンプの必要吐出流量の算出、及び、余裕流量と比較される所定の判定閾値の設定等においては、安全側にマージンを持って処理を行う必要がある。
また、特許文献1に記載の可変容量ポンプの運転状態切替装置では、ロックアップクラッチの瞬間滑り時、連続滑り時には、流量収支計算と実機との関係がずれている場合であるとして、オイルポンプが全吐出運転状態に設定される。同様に、車両の発進直後は、流量収支計算の精度の確保が難しいため、オイルポンプが全吐出運転状態に設定される。以上のように、特許文献1に記載の可変容量ポンプの運転状態切替装置では、半吐出(部分吐出)運転領域が制限を受け、オイルポンプの負荷低減効果を十分に得ることができないおそれがある。
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、部分吐出状態の運転領域を拡大して、オイルポンプの負荷をより軽減することができ、燃料消費量(燃費)をより低減することが可能なオイルポンプの吐出量切替回路を提供することを目的とする。
本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路は、吸入口から吸入したオイルを昇圧して複数の吐出口から吐出するオイルポンプと、複数の吐出口すべてが高圧油路と連通される全吐出状態と、複数の吐出口のうち一部の吐出口が高圧油路に連通され、かつ他の一部の吐出口がオイルポンプの吸入口と連通される部分吐出状態とを、高圧油路の実の油圧による押力と、該油圧を調節するための制御油圧による押力との押力差に応じて切替える吐出状態切替手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路によれば、高圧油路の実際の油圧による押力と、該油圧の制御圧である実際の制御油圧による押力との押力差に応じて、複数の吐出口すべてが高圧油路と連通される全吐出状態と、複数の吐出口に含まれる一部の吐出口が高圧油路に連通され、かつ他の一部の吐出口がオイルポンプの吸入口と連通される部分吐出状態とが切り替えられる。すなわち、高圧油路の実油圧による押力とその制御油圧による押力との押力差に応じて、全吐出状態と部分吐出状態とが切替えられる。よって、従来のように、部品ばらつきや制御遅れ等を考慮したマージンを持ってシフトソレノイドバルブ等の駆動制御を行う必要がない。その結果、部分吐出状態の運転領域を拡大して、オイルポンプの負荷をより軽減することができ、燃料消費量(燃費)をより低減することが可能となる。
その際に、本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路では、上記吐出状態切替手段が、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力が制御油圧による押力よりも大きい場合には、部分吐出状態となるように油路を切替え、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力が制御油圧による押力未満の場合には、全吐出状態となるように油路を切替えることが好ましい。
このようにすれば、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力及び制御油圧による押力のどちらが大きいかにより、適確に油路の切替え(すなわち部分吐出状態と全吐出状態との切替え)を行うことができる。
本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路は、昇圧したオイルを吐出する第1吐出口及び第2吐出口を有するオイルポンプと、第1吐出口と連通された高圧油路と、第2吐出口から吐出されたオイルの吐出先を、高圧油路と、オイルポンプの吸入口に連通する低圧油路との間で切替える切替バルブと、高圧油路の実の油圧による押力と、該油圧を調節するための制御油圧による押力との押力差に基づいて、切替バルブを制御する制御バルブとを備えることを特徴とする。
本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路によれば、高圧油路の実際の油圧による押力と、該油圧の制御圧である実際の制御油圧による押力との押力差に応じて、第2吐出口から吐出されたオイルの吐出先が、高圧油路と、オイルポンプの吸入口に連通する低圧油路との間で切替えられる。すなわち、高圧油路の実油圧による押力とその制御油圧による押力との押力差に応じて、全吐出状態と部分吐出状態とが切替えられる。よって、従来のように、部品ばらつきや制御遅れ等を考慮したマージンを持ってシフトソレノイドバルブ等の駆動制御を行う必要がない。その結果、部分吐出状態の運転領域を拡大して、オイルポンプの負荷をより軽減することができ、燃料消費量(燃費)をより低減することが可能となる。
その際に、本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路では、上記制御バルブが、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力が、該油圧を調節するための制御油圧による押力よりも大きい場合には、第2吐出口と低圧油路とが連通するように切替バルブを制御し、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力が、該油圧を調節するための制御油圧による押力未満の場合には、第2吐出口と高圧油路とが連通するように切替バルブを制御することが好ましい。
このようにすれば、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力及び制御油圧による押力のどちらが大きいかによって、切替バルブを制御することにより、オイルポンプの第2吐出口の連通状態を、低圧油路と高圧油路との間で適確に切替えることが可能となる。
また、本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路では、制御バルブが、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力が制御油圧による押力よりも大きい場合には、閉弁して、切替バルブに対する制御油圧の供給を停止し、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力が制御油圧による押力未満の場合には、開弁して、制御油圧を切替バルブに供給し、切替バルブが、制御油圧の供給が停止された場合には、第2吐出口と低圧油路とを連通するように油路を切替え、制御油圧が供給された場合には、第2吐出口と高圧油路とを連通するように油路を切替えることが好ましい。
このようにすれば、高圧油路の実油圧による押力を含む押力及びその制御油圧による押力のどちらが大きいかによって、切替バルブに対する制御油圧の供給をコントロールすることにより、オイルポンプの第2吐出口の連通状態を、高圧油路と低圧油路との間で適確に切替えることが可能となる。
本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路は、昇圧したオイルを吐出する第1吐出口及び第2吐出口を有するオイルポンプと、第1吐出口と連通された高圧油路と、高圧油路の実の油圧による押力と、該油圧を調節するための制御油圧による押力との押力差に基づいて、第2吐出口から吐出されたオイルの吐出先を、高圧油路と、オイルポンプの吸入口に連通する低圧油路との間で切替える切替制御バルブとを備えることを特徴とする。
本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路によれば、高圧油路の実際の油圧による押力と、該油圧の制御圧である実際の制御油圧による押力との押力差に応じて、第2吐出口から吐出されたオイルの吐出先が、高圧油路と、オイルポンプの吸入口に連通する低圧油路との間で切替えられる。すなわち、高圧油路の実油圧による押力とその制御油圧による押力との押力差に応じて、全吐出状態と部分吐出状態とが切替えられる。よって、従来のように、部品ばらつきや制御遅れ等を考慮したマージンを持ってシフトソレノイドバルブの駆動制御を行う必要がない。その結果、部分吐出状態の運転領域を拡大して、オイルポンプの負荷をより軽減することができ、燃料消費量(燃費)をより低減することが可能となる。また、この場合には、1つの切替制御バルブで全吐出と部分吐出とを切替え可能なため、特に、部品点数やコストの低減、及び、回路の小型・軽量化を図ることが可能となる。
その際に、本発明に係るオイルポンプの吐出量切替回路では、上記切替制御バルブが、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力が制御油圧による押力よりも大きい場合には、第2吐出口と低圧油路とを連通するように油路を切替え、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力が制御油圧による押力未満の場合には、第2吐出口と高圧油路とを連通するように油路を切替えることが好ましい。
このようにすれば、高圧油路の実の油圧による押力を含む押力及び制御油圧による押力のどちらが大きいかにより、オイルポンプの第2吐出口の連通状態を、低圧油路と高圧油路との間で適確に切替えることが可能となる。
本発明によれば、部分吐出状態の運転領域を拡大して、オイルポンプの負荷をより軽減することができ、燃料消費量(燃費)をより低減することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、図1及び図2を併せて用いて、第1実施形態に係るオイルポンプの吐出量切替回路1の構成について説明する。オイルポンプの吐出量切替回路1は、自動変速機等に用いられるオイルポンプ10から吐出されるオイルの流量を切替えて制御するものである。なお、ここでは、本発明を無段変速機(CVT)110に適用した場合を例にして説明する。図1は、オイルポンプの吐出量切替回路1が適用される無段変速機110の構成を示す図である。図2は、オイルポンプの吐出量切替回路1の構成を示す図である。
無段変速機110は、例えば、トルクコンバータ(図示省略)を介して、エンジン(図示省略)のクランク軸に接続され、エンジンからの駆動力を変換して出力する。無段変速機110は、トルクコンバータの出力軸と接続されるプライマリ軸(入力軸)120と、該プライマリ軸120と平行に配設されたセカンダリ軸(出力軸)130とを有している。
プライマリ軸120には、プライマリプーリ121が設けられている。プライマリプーリ121は、プライマリ軸120に接合された固定プーリ121aと、該固定プーリ121aに対向して、プライマリ軸120の軸方向に摺動自在でかつ相対回転不能に装着された可動プーリ(シーブ)121bとを有し、それぞれのプーリ121a,121bのコーン面間隔、すなわちプーリ溝幅を変更できるように構成されている。一方、セカンダリ軸130には、セカンダリプーリ131が設けられている。セカンダリプーリ131は、セカンダリ軸130に接合された固定プーリ131aと、該固定プーリ131aに対向して、セカンダリ軸130の軸方向に摺動自在でかつ相対回転不能に装着された可動プーリ(シーブ)131bとを有し、プーリ溝幅を変更できるように構成されている。
プライマリプーリ121とセカンダリプーリ131との間には駆動力を伝達するチェーン140が掛け渡されている。プライマリプーリ121及びセカンダリプーリ131の溝幅を変化させて、各プーリ121,131に対するチェーン140の巻き付け径の比率(プーリ比)を変化させることにより、変速比が無段階に変更される。なお、チェーン140のプライマリプーリ121に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ131に対する巻き付け径をRsとすると、変速比iは、i=Rs/Rpで表される。
ここで、プライマリプーリ121(可動プーリ121b)にはプライマリ駆動油室(油圧シリンダ室)122が形成されている。一方、セカンダリプーリ131(可動プーリ131b)にはセカンダリ駆動油室(油圧シリンダ室)132が形成されている。プライマリプーリ121、セカンダリプーリ131それぞれの溝幅は、プライマリ駆動油室122に導入されるプライマリ油圧と、セカンダリ駆動油室132に導入されるセカンダリ油圧とを調節することにより設定・変更される。
無段変速機110を変速させるための油圧、すなわち、上述したプライマリ油圧及びセカンダリ油圧は、コントロールバルブ(C/V)機構160が組み込まれたバルブボディによってコントロールされる。コントロールバルブ機構160は、複数のスプールバルブと該スプールバルブを動かすソレノイドバルブ(電磁弁)を用いてコントロールバルブ機構160内に形成された油路を開閉することで、オイルポンプ10から吐出された油圧(ライン圧)を調圧して、上述した無段変速機110のプライマリ駆動油室122及びセカンダリ駆動油室132に供給する。また、コントロールバルブ機構160は、例えば車両の前進/後進を切替える前後進切替機構等の各油圧機構170にも調圧した油圧(作動油圧や潤滑油圧等)を供給する。
オイルポンプ10は、オイルパン150に貯留されているオイル(ATF)を、第1吸入油路80A、及び2つの吸入口(第1吸入口106A及び第2吸入口106B)を通して吸入し、昇圧して2つの吐出口(第1吐出口107A及び第2吐出口107B)から吐出する。本実施形態では、オイルポンプ10として、2つの吐出口(第1吐出口107A及び第2吐出口107B)を有する2ポート型のベーンポンプを用いた。
オイルポンプ10は、いわゆる平衡型ベーンポンプであり、断面が略楕円形の内周面を有するカムリング101と、カムリング101の内部に配置され、エンジンの駆動力によって駆動されるロータ102と、ロータ102を回転自在に支持するポンプ軸103と、ロータ102の周囲に形成された溝に組み込まれた複数のベーン104とを有して構成されている。
複数のベーン104それぞれはロータ102の径方向に移動可能とされており、ロータ102が回転すると、ロータ102の溝に組み込まれたベーン104が遠心力で飛び出し、その先端がカムリング101の内周面に接触した状態で偏心したカムリング101の内側面に沿って回転する。このとき、カムリング101とロータ102とベーン104とで画成される油室105の容積が変化して吸入・吐出動作が行われる。
すなわち、ロータ102の回転により、第1吸入油路80Aを通して第1吸入口106Aから吸入されたオイルは、昇圧されて第1吐出口107Aから第1ライン油路70Aに吐出される。同様に、第1吸入油路80Aを通して第2吸入口106Bから吸入されたオイルは、昇圧されて第2吐出口107Bから第2ライン油路70Bに吐出される。
上述したように、オイルポンプ10の第1吐出口107Aには、第1ライン圧油路(特許請求の範囲に記載の高圧油路に相当)70Aが接続されている。また、第2吐出口107Bには、第2ライン圧油路70Bが接続されている。第2ライン圧油路70Bは、切替バルブ50を介して、第1ライン圧油路70Aと連通されるように構成されている(詳細は後述する)。第1ライン圧油路70Aには、オイルポンプ10から吐出されるオイルの油圧(吐出圧)を無段変速機110に要求される油圧(ライン圧)に調圧するためのライン圧コントロールバルブ(レギュレータバルブ)30が設けられている。
ライン圧コントロールバルブ30は、後述するライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、第1ライン圧油路70A、及び、オイルを排出するドレン油路93と接続されている。ライン圧コントロールバルブ30は、その内部に、スプール31を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール31の端部にはスプリング32が配設されており、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧(特許請求の範囲に記載の制御油圧に相当、詳細は後述する)による押力(ライン圧制御圧×受圧面積)と、スプリング32のバネ力(付勢力)と、ライン圧による押力(ライン圧×受圧面積)とのバランスに応じてスプール31が軸方向に駆動されることにより、ライン圧油路70Aからドレン油路93に排出されるオイルの量が調節され、ライン圧の調圧が行われる。
すなわち、ライン圧コントロールバルブ30は、実ライン圧による押力がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合に、第1ライン圧油路70Aとドレン油路93とを連通して、第1ライン圧油路70Aのオイルをドレン油路93を通して排出することにより、実ライン圧とライン圧制御圧とが一致するようにライン圧を調節する。一方、ライン圧コントロールバルブ30は、実ライン圧による押力がライン圧制御圧による押力よりも小さい場合には、第1ライン圧油路70Aとドレン油路93とを連通を遮断し、第1ライン圧油路70Aからのオイルの排出を停止する。
ライン圧リニアソレノイド20は、無段変速機110に要求されるライン圧に基づいてTCU(トランスミッション・コントロール・ユニット)から印加される電流値に応じてバルブを軸方向に変位させるリニアソレノイド21を有しており、該リニアソレノイド21に印加される電流に応じて、パイロット圧油路90からの供給圧(パイロット圧)とドレンとのバランスを調節することにより、ライン圧制御圧を調圧する。調圧されたライン圧制御圧が第1制御圧油路91を通してライン圧コントロールバルブ30に供給されることにより、上述したように、ライン圧コントロールバルブ30が駆動制御される。
オイルポンプ10の第2吐出口107Bは、第2ライン圧油路70B、切替バルブ50、第3ライン圧油路70Cを介して、第1ライン圧油路70Aに連通される。また、オイルポンプ10の第2吐出口107Bは、第2ライン圧油路70B、切替バルブ50、第2吸入油路80B(特許請求の範囲に記載の低圧油路に相当)を介して、第1吸入油路80Aに連通されている。切替バルブ50は、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、第3ライン圧油路70Cと第2吸入油路80Bとの間で切替える。
より具体的には、切替バルブ50は、後述する制御バルブ40と連通する第2制御圧油路92、第2吐出口107Bと連通する第2ライン圧油路70B、第1ライン圧油路70Aと連通する第3ライン圧油路70C、及び、第1吸入油路80A(オイルポンプ10の第1,第2吸入口106A,106B)と連通する第2吸入油路80Bと接続されている。切替バルブ50は、その内部に、スプール51を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール51の端部にはスプリング52が配設されており、制御バルブ40からライン圧制御圧(詳細は後述する)が供給されるか否かに応じてスプール51の軸方向への駆動(位置)が制御され、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第3ライン圧油路70Cと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。
すなわち、切替バルブ50は、後述する制御バルブ40からライン圧制御圧が供給された場合には、第2ライン圧油路70Bと第3ライン圧油路70Cとを連通するように油路(回路)を切替える。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが第1吐出口107Aから吐出されたオイルと合流される全吐出運転状態となる。一方、切替バルブ50は、ライン圧制御圧の供給が停止された場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように油路(回路)を切替える。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが第1吸入油路80A(第1,第2吸入口106A,106B)に戻されて半吐出運転状態となる。これにより、オイルポンプ10の負荷が低減される。
制御バルブ40は、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力が、該ライン圧を調節するためのライン圧制御圧による押力よりも大きい場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとが連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように切替バルブ50を制御する。一方、制御バルブ40は、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力未満の場合には、第2ライン圧油路70Bと第3ライン圧油路70Cとが連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第3ライン圧油路70Cとなるように切替バルブ50を制御する。制御バルブ40及び切替バルブ50は特許請求の範囲に記載の吐出状態切替手段として機能する。
より具体的には、制御バルブ40は、ライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、第1ライン圧油路70A、及び、切替バルブ50と連通する第2制御圧油路92と接続されている。制御バルブ40は、その内部に、スプール41を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール41の端部にはスプリング42が配設されており、実ライン圧による押力(ライン圧×受圧面積)と、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧による押力(ライン圧制御圧×受圧面積)と、スプリング42のバネ力(付勢力)とのバランスに応じてスプール41が軸方向に駆動されることにより、ライン圧制御圧が第2制御圧油路92を通して切替バルブ50に供給されるか否かが制御される。なお、スプール41のライン圧の受圧面積は、ライン圧制御圧の受圧面積よりも小さく設定されている。
すなわち、制御バルブ40は、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合には、閉弁して、切替バルブ50に対するライン圧制御圧の供給を停止する。一方、制御バルブ40は、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力未満の場合には、開弁して、ライン圧制御圧を切替バルブ50に供給する。
上述したように構成されることにより、制御バルブ40のスプール41に作用する力、すなわち、実ライン圧PLによる押力FPL(=実ライン圧PL×受圧面積)と、バネ力(付勢力)Fspringと、実ライン圧制御圧PLCONTによる押力FPLCONT(=実ライン圧制御圧PLCONT×受圧面積)とのバランスが「FPL+Fspring>FPLCONT」となった場合には、制御バルブ40が閉弁して切替バルブ50に対するライン圧制御圧の供給が停止され、切替バルブ50により第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが、第2ライン圧油路70B、第2吸入油路80B、第1吸入油路80Aを通してオイルポンプ10の第1,第2吸入口106A,106Bに戻される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107Aのみから第1ライン圧油路70Aにオイルが供給される半吐出(部分吐出)運転状態となる。
一方、制御バルブ40のスプール41に作用する力のバランスが「FPL+Fspring<FPLCONT」となった場合には、制御バルブ40が開弁して切替バルブ50に対してライン圧制御圧が供給される。そして、切替バルブ50により第2ライン圧油路70Bと第3ライン圧油路70Cとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが、第2ライン圧油路70B、第3ライン圧油路70Cを通して第1吐出口107Aから吐出されたオイルと合流して供給される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107A及び第2吐出口107Bから第1ライン圧油路70Aにオイルが供給される全吐出運転状態に切替えられる。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力と、該ライン圧の制御圧であるライン圧制御圧による押力との押力差に応じて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が、第3ライン圧油路70Cと、オイルポンプ10の第2吸入口107Bに連通する第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。すなわち、第1ライン油路70Aの実油圧(実ライン圧)による押力とバネ力との合力とその制御油圧(ライン圧制御圧)による押力との押力差に応じて、全吐出状態と半吐出(部分吐出)状態とが切替えられる。その結果、半吐出(部分吐出)状態の運転領域を拡大して、オイルポンプ10の負荷をより軽減することができ、燃料消費量(燃費)をより低減することが可能となる。
その際に、本実施形態によれば、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合には、制御バルブ40が閉弁されて、切替バルブ50に対するライン圧制御圧の供給が停止され、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力未満の場合には、制御バルブ40が開弁されて、ライン圧制御圧が切替バルブ50に供給される。また、ライン圧制御圧が供給された場合には、第2ライン圧油路70Bと第3ライン圧油路70Cとが連通するように油路が切替えられ、ライン圧制御圧の供給が停止された場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとが連通するように油路が切替えられる。そのため、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力及びライン圧制御圧による押力のどちらが大きいかによって、切替バルブ50に対するライン圧制御圧の供給をコントロールすることにより、オイルポンプ10の第2吐出口107Bの連通状態を、第3ライン圧油路70Cと第2吸入油路80Bとの間で適確に切替えることが可能となる。
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、切替バルブ50及び制御バルブ40を用いて油路(回路)を切替えることによりオイルポンプ10の吐出状態(半吐出状態・全吐出状態)を切替えたが、切替バルブ50及び制御バルブ40を一体化した構成とすることもできる。
そこで、次に、図3を用いて、第2実施形態に係るオイルポンプの吐出量切替回路2の構成について説明する。図3は、オイルポンプの吐出量切替回路2の構成を示す図である。なお、図3において上記第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号が付されている。
本実施形態は、切替バルブ50及び制御バルブ40に代えて、当該切替バルブ50及び制御バルブ40を機能的に一体化した切替制御バルブ60を用いている点で、上述した第1実施形態と異なっている。なお、この相違に伴い、第2制御圧油路92、及び、第3ライン圧油路70Cが削除されている点でも上述した第1実施形態と異なっている。その他の構成は、上述した第1実施形態と同一または同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
切替制御バルブ60は、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧(実油圧)による押力と、該ライン圧を調節するためのライン圧制御圧(制御油圧)による押力との押力差に基づいて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先を、第1ライン圧油路70A(高圧油路)と、オイルポンプの第2吸入口106Bに連通する第2吸入油路80B(低圧油路)との間で切替える。すなわち、切替制御バルブ60は、特許請求の範囲に記載の吐出状態切替手段として機能する。
より具体的には、切替制御バルブ60は、ライン圧リニアソレノイド20と連通する第1制御圧油路91、第1ライン圧油路70A、第2吐出口107Bと連通する第2ライン圧油路70B、及び、第1吸入油路80A(第1,第2吸入口106A,106B)と連通する第2吸入油路80Bと接続されている。切替制御バルブ60は、その内部に、スプール61を軸方向に摺動自在に収容している。このスプール61の端部にはスプリング62が配設されており、実ライン圧による押力(ライン圧×受圧面積)と、ライン圧リニアソレノイド20により生成されたライン圧制御圧による押力(ライン圧制御圧×受圧面積)と、スプリング62のバネ力(付勢力)とのバランスに応じてスプール61が軸方向に駆動されることにより、第2ライン圧油路70Bに連通する油路が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。なお、スプール61のライン圧の受圧面積は、ライン圧制御圧の受圧面積よりも小さく設定されている。
すなわち、切替制御バルブ60は、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合には、第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第2吸入油路80Bとなるように切替える。一方、切替制御バルブ60は、第1ライン圧70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力未満の場合には、第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように、すなわち、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が第1ライン圧油路70Aとなるように切替える。なお、その他の構造は、上述した第1実施形態と同一又は同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
上述したように構成されることにより、制御バルブ40のスプール41に作用する力、すなわち、実ライン圧PLによる押力FPL(=実ライン圧PL×受圧面積)と、バネ力(付勢力)Fspringと、実ライン圧制御圧PLCONTによる押力FPLCONT(=実ライン圧制御圧PLCONT×受圧面積)とのバランスが「FPL+Fspring>FPLCONT」となった場合には、切替制御バルブ60により第2ライン圧油路70Bと第2吸入油路80Bとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが、第2ライン圧油路70B、第2吸入油路80B、第1吸入油路80Aを通して、オイルポンプ10の第1,第2吸入口106A,106Bに戻される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107Aのみから第1ライン圧70Aにオイルが供給される半吐出(部分吐出)運転状態となる。
一方、制御バルブ40のスプール41に作用する力のバランスが「FPL+Fspring<FPLCONT」となった場合には、切替制御バルブ60により第2ライン圧油路70Bと第1ライン圧油路70Aとが連通される。そのため、第2吐出口107Bから吐出されたオイルが第1吐出口107Aから吐出されたオイルと合流して供給される。その結果、オイルポンプ10は、第1吐出口107A及び第2吐出口107Bからオイルが供給される全吐出運転状態に切替えられる。
本実施形態によれば、第1ライン圧油路70Aの実際のライン圧による押力とバネ力との合力と、該ライン圧の制御圧である実際のライン圧制御圧による押力との押力差に応じて、第2吐出口107Bから吐出されたオイルの吐出先が、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で切替えられる。すなわち、第1ライン圧油路70Aの実油圧(実ライン圧)による押力とバネ力との合力とその制御油圧(ライン圧制御圧)による押力との押力差に応じて、全吐出状態と半吐出(部分吐出)状態とが切替えられる。その結果、半吐出(部分吐出)状態の運転領域を拡大して、オイルポンプ10の負荷をより軽減することができ、燃料消費量(燃費)をより低減することが可能となる。また、この場合には、1つの切替制御バルブ60で全吐出状態と半吐出(部分吐出)状態とを切替え可能なため、特に、部品点数やコストの低減、及び、回路の小型・軽量化を図ることが可能となる。
その際に、本実施形態によれば、第1ライン圧油路70Aの実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力よりも大きい場合には、第2吐出口107Bと第2吸入油路80Bとを連通するように油路が切替えられ、実ライン圧による押力とバネ力との合力がライン圧制御圧による押力未満の場合には、第2吐出口107Bと第1ライン圧油路70Aとを連通するように油路が切替えられる。そのため、実ライン圧による押力とバネ力との合力及びライン圧制御圧による押力のどちらが大きいかにより、オイルポンプ10の第2吐出口107Bの連通状態を、第1ライン圧油路70Aと第2吸入油路80Bとの間で適確に切替えることが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明を無段変速機(CVT)に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、有段自動変速機(Step AT)やDCTなどにも適用することができる。また、上記実施形態では、本発明をチェーン式の無段変速機(CVT)に適用したが、チェーン式の無段変速機に代えて、例えば、ベルト式の無段変速機や、トロイダル式の無段変速機等にも適用することができる。
上記実施形態では、2つの吐出口107A,107Bを有する2ポート型のオイルポンプ10を例にして説明したが、2ポート型のオイルポンプ10に代えて、3つ以上の吐出口を有するオイルポンプを用いてもよい。また、上記実施形態では、オイルポンプ10としてベーンポンプを用いたが、ベーンポンプに代えて、例えば、内接歯車式ギヤポンプやトロコイドポンプ等を用いることもできる。
なお、部分吐出運転状態は半吐出運転状態に限定されず、全吐出運転状態よりも吐出量(容量)の小さい運転状態であればよい。