以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X〜Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.本発明の概要≫
本発明に係る酸化鉱石の製錬方法は、酸化鉱石を原料として、その酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合して混合物とし、得られた混合物を高温下で還元処理に付して還元物であるメタルを製造する方法である。例えば、酸化鉱石として、酸化ニッケルや酸化鉄等を含有するニッケル酸化鉱石を原料とし、そのニッケル酸化鉱石を炭素質還元剤と混合して、高温下において、混合物に含まれるニッケルを優先的に還元し、また鉄を部分的に還元することで鉄とニッケルの合金であるフェロニッケルを製造する方法が挙げられる。
具体的に、本発明に係る酸化鉱石の製錬方法は、酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合し、得られた混合物を原料として加熱して還元処理に付し、還元物であるメタルとスラグとを得る方法において、その還元処理に供する混合物として、無作為に選ばれる20カ所についての炭素含有量の測定値の標準偏差が0.013%以下であるものを用いることを特徴としている。また、その混合物としては、炭素質還元剤を0.5質量%以上7.0質量%以下の割合で含有するものであることが好ましい。
このような製錬方法によれば、混合物中における炭素質還元剤の分散性が高まりことによりその炭素質還元剤の凝集や偏在が抑制されるため、均一に還元反応を進行させることができる。これにより、生産性や効率性が高く、且つ低廉な製造コストで、高品質のメタルを製造することができる。
以下では、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)として、ニッケル酸化鉱石の製錬方法を例に挙げて説明する。上述したように、製錬原料であるニッケル酸化鉱石は、酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを少なくとも含むものであり、そのニッケル酸化鉱石を製錬原料として還元処理することすることで、メタルとして鉄−ニッケル合金(フェロニッケル)を製造することができる。
なお、本発明は、酸化鉱石としてニッケル酸化鉱石に限定されるものではなく、製錬方法としても酸化ニッケル等を含むニッケル酸化鉱石からフェロニッケルを製造する方法に限られるものではない。
≪2.ニッケル酸化鉱石の製錬方法≫
本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石を炭素質還元剤と混合して混合物とし、その混合物に対して還元処理を施すことによって、還元物としてメタルであるフェロニッケルとスラグとを生成させる方法である。この製錬方法では、混合物中のニッケル(酸化ニッケル)を優先的に還元させ、また、鉄(酸化鉄)を部分的に還元することで、フェロニッケルを生成させる。なお、メタルであるフェロニッケルは、還元処理を経て得られたメタルとスラグとを含む混合物から、そのメタルを分離することで回収することができる。
図1は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。図1に示すように、この製錬方法は、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合する混合処理工程S1と、得られた混合物を塊状化し又は所定の容器に充填して成形する還元投入前処理工程S2と、塊状化され又は容器に充填された混合物を所定の温度(還元温度)で加熱する還元処理工程S3と、還元処理工程S3にて生成したメタルとスラグとを含む混合物(混在物)からメタルを分離して回収する分離工程S4とを有する。
<1.混合処理工程>
混合処理工程S1は、ニッケル酸化鉱石を含む原料粉末を混合して混合物を得る工程である。具体的には、混合処理工程S1では、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に、炭素質還元剤を添加して混合し、また任意成分の添加剤として、鉄鉱石、フラックス成分、バインダー等の、例えば粒径が0.1mm〜0.8mm程度の粉末を添加して混合し、混合物を得る。なお、混合処理は、混合機等を用いて行うことができる。
(ニッケル酸化鉱石)
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。なお、ニッケル酸化鉱石は、酸化ニッケル(NiO)と、酸化鉄(Fe2O3)とを少なくとも含有する。
混合物中のニッケル酸化鉱石の含有量(混合量)としては、混合処理工程S1による混合物の乾燥前の全質量に対して、35質量%以上70質量%以下とすることが好ましく、65質量%以上70質量%以下とすることがより好ましい。
(炭素質還元剤)
炭素質還元剤としては、特に限定されないが、石炭粉、コークス粉等が挙げられる。
混合物中の炭素質還元剤の含有量(混合量)としては、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルを多く還元でき、且つ、酸化鉄を部分的に還元できる量が好ましい。より具体的には、得られる混合物の乾燥前の全質量に対して、0.5質量%以上7.0質量%以下となるようにすることが好ましい。このように、混合物中の炭素質還元剤の含有量が上述した範囲となるように調整することによって、ペレット等の形状にした原料表面にメタルシェルを均一に生成させることができ、ニッケル酸化鉱石の還元を適切に進行させて、高品質のフェロニッケルを得ることができる。また、混合物中での炭素質還元剤とニッケル酸化鉱石とが良好に混合し易くなるため、混合物における炭素含有量のばらつきをより小さくすることができる。
より具体的に、炭素質還元剤の含有量としては、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。炭素質還元剤の混合量が少なすぎると、還元処理に際して混合物の周囲に還元剤を配置しても、ニッケルの還元が不十分となる可能性があり、生産性が低下する。また、均一な還元反応も困難になる。
また、炭素質還元剤の含有量としては、7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。炭素質還元剤の混合量が多すぎると、還元反応が進み過ぎて鉄の還元量が多くなる可能性があり、フェロニッケル中のニッケル品位が低下する等、品質面の問題が生じるため好ましくない。
炭素質還元剤の形態としては、特に限定されないが、粒子(還元剤粒子)から構成され、例えば、還元剤粒子についての平均最大粒子長が5μm以上500μm以下であるものを用いることが好ましい。これにより、混合物中での炭素質還元剤とニッケル酸化鉱石とが良好に混合し易くなるため、混合物における炭素含有量のばらつきをより小さくし易くすることができる。そして、このような混合物を用いることで、均一な還元反応が実現し、その結果、高品質のフェロニッケルを得ることができる。
炭素質還元剤に含まれる還元剤粒子の平均最大粒子長としては、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。平均最大粒子長が小さすぎると、炭素質還元剤が凝集する等によって、混合物における炭素質還元剤の分散が不十分になるため、混合物における炭素含有量のばらつきが大きくなる。また、混合中に微粉が粉塵として舞うことで、混合物の組成が設定した値からずれる等の懸念が生じ得る。
また、炭素質還元剤に含まれる還元剤粒子の平均最大粒子長としては、500μm以下であることが好ましい。平均最大粒子長値が大きすぎると、粗い還元剤粒子の割合が多くなりすぎることで、混合物中での炭素質還元剤の分散性がかえって悪化し、それにより混合物における炭素含有量のばらつきが大きくなる。そのため、均一な混合物を得ることが困難になり、且つ偏析が起こり易くなり、その結果、還元反応が不均一になり易くなる。
なお、還元剤粒子の「最大粒子長」とは、粒子における最も長い辺や直径のことである。図2は、還元剤粒子1の最大粒子長Dと、その最大粒子長Dを直径とする球Cの模式図である。還元剤粒子が不定形である場合には、図2のようにして最大粒子長を決定する。より具体的には、例えば、還元剤粒子が楕円の形状であれば最大粒子長は長径になり、還元剤粒子が直方体のような形状であれば最大粒子長は対角線になる。この「最大粒子長」は、金属顕微鏡を用いて測定することができる。
そして、「平均最大粒子長」は、無作為に選定した還元剤粒子300個における、個数平均での最大粒子長Dの平均値であり、下記式(1)により求められる。
平均最大粒子長=還元剤粒子300個の最大粒子長の総和/300 ・・・(1)
(鉄鉱石)
ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤のほか、混合物における鉄−ニッケル比を調整するために任意成分として鉄鉱石を添加することができる。ここで、鉄鉱石としては、特に限定されないが、例えば、鉄品位が50%程度以上のものや、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。
混合物中の鉄鉱石の含有量(混合量)としては、炭素質還元剤を除いた混合物の乾燥前の全質量に対して、0質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。
(バインダー、フラックス成分)
また、得ようとするペレットの成形性を維持できるのに必要な強度を確保するために、バインダーを用いてもよい。バインダーとしては、例えば、ベントナイト、多糖類、樹脂、水ガラス、脱水ケーキ等を挙げることができる。
混合物中のバインダー成分の含有量(混合量)としては、炭素質還元剤を除いた混合物の乾燥前の全質量に対して、0質量%以上7質量%以下とすることが好ましく、2質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。
さらに、熔融時の反応性を向上するために、フラックスを含有させてもよい。フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等を挙げることができる。
混合物中のフラックス成分の含有量(混合量)としては、炭素質還元剤を除いた混合物の乾燥前の全質量に対して、0質量%以上10質量%以下とすることが好ましく、0質量%以上5質量%以下とすることがより好ましい。
下記表1に、混合処理工程S1にて混合する、一部の原料粉末の組成(重量%)の一例を示す。なお、原料粉末の組成としてはこれに限定されない。
(混合物中の炭素含有率の標準偏差)
ここで、本実施の形態においては、上述したような、少なくともニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物を作製するに際して、混合物中の炭素含有量の測定値の標準偏差が0.013%以下となるようにする。このような混合物を作製することで、炭素還元剤をはじめとした原料粉末が均一に混合されるようになり、そしてそれを還元処理に供することで、効率よく均一に還元反応が進行して還元反応の反応時間を短縮させることができる。また、元物におけるニッケル含有量のばらつきも低減させることができる。これらのことにより、生産性の高い処理を行うことができ、且つ高い品質のフェロニッケルを製造することができる。
炭素含有量の測定値の標準偏差は、より好ましくは0.010%以下とする。このような範囲であることにより、より効率よく均一に還元反応を進行させることができ、還元反応によってメタル化するニッケルを増加させることができる。また、還元物のうちフェロニッケルに含まれるニッケルの割合を高めフェロニッケルの品質を高めることができる。
「炭素含有量の測定値の標準偏差」は、1000kgの混合物から無作為に選ばれる20カ所について、1.0gずつサンプルを採取し、得られたサンプルについて炭素含有率を測定したときの測定値の標準偏差である。
炭素含有量の測定値の標準偏差を小さくする手段としては、混合処理工程S1で原料粉末から混合物を作製する際に、各成分を均一に混合させることが挙げられる。より具体的には、原料粉末の混合において、混合時間を長くしたり、混合における回転数を大きくしたり、混練や押出によってせん断を加えたり、混合と混練を繰り返し行ったりすることが挙げられる。
原料粉末の混合に際しては、V型混合機をはじめとする公知の混合機を用いて均一に混合することによって、混合物を得ることができる。具体的な混合条件は、混合させるニッケル酸化鉱石や炭素質還元剤の含有量、装置の構成等に大きく依存するため、一律に決まるものではないが、例えばV型ブレンダーにおいて装置仕様の最高回転数で1時間以上混合させることで、炭素含有量の測定値の標準偏差が0.013%以下となるように混合物を作製することができる。
また、原料粉末を混合する際には、原料粉末を混練してもよい。このような原料粉末の混練は、混合と同時に行ってもよく、混合後に行ってもよい。これにより、混合物にせん断力が加えられて、炭素還元剤をはじめとした原料粉末の凝集が解けてより均一に混合され、炭素質還元剤の分散性を高めることができる。また、原料粉末同士の接触面積が増し、混合物に含まれる空隙が減少して各々の粒子の密着性が高められる。したがって、このことにより、還元反応を均一に進められ、還元反応の反応時間を短縮させることができ、且つ品質のばらつきを低減させることができる。その結果、生産性の高い処理を行うことができ、且つ高い品質のフェロニッケルを製造することができる。
なお、具体的な混練条件についても、混合させる鉱石や炭素質還元剤の含有量や、装置の構成等に大きく依存するため、一律に決まるものではない。
また、原料粉末を混練した後、押出機を用いて混合物を押し出してもよい。このように押出機で押し出すことによって、より一層高い混練効果が得られ、炭素質還元剤の分散性を高めることができる。また、原料粉末同士の接触面積を増加させ、且つ混合物に含まれる空隙を減少させることができる。それにより、高品質のフェロニッケルをより効率的に製造することができる。
このように、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物において、炭素含有量の測定値の標準偏差が0.013%以下となるようにすることで、混合物中における炭素質還元剤の分散性が高まり、炭素質還元剤とニッケル酸化鉱石とを均一に混合させることができる。これにより、後述する還元処理工程S3において、均一な還元をより効率的に実現することができるため、反応時間を短縮して製造コストを低廉にすることができ、また、得られるフェロニッケルにおけるニッケル含有量をより高めることができる。加えて、フェロニッケルにおけるニッケル含有量が多くなることで、メタルの粗大化が起きやすくなるため、ニッケルの収率を高め、生産性もより一層高めることができる。
<2.還元投入前処理工程(前処理工程)>
還元投入前処理工程S2は、混合処理工程S1で得られた、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物を成形させ、必要に応じて乾燥させる工程である。すなわち、この還元投入前処理工程S2では、原料粉末を混合して得られた混合物を、後述する還元処理工程S3にて使用する炉に投入し易くし、また効率的に還元反応が起こるように成形する。
(1)混合物の成形
得られた混合物を成形する場合、その混合物を塊状化(造粒)して塊状の成形体(ペレット、ブリケット等)にしてもよく、混合物を容器等に充填して混合物充填容器にしてもよい。
(混合物の塊状化)
このうち、混合物を塊状化する場合、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物に対して、塊状化に必要な所定量の水分を添加し、例えば塊状物製造装置(転動造粒機、圧縮成形機、押出成形機等、あるいはペレタイザーともいう)を用いて、ペレット、ブリケット等の塊状の成形体(以下、単に「ペレット」という場合がある。)に成形する。
混合物を成形する形状、すなわちペレットの形状としては、特に限定されず、立方体、直方体、円柱又は球の形状にすることができる。その中でも特に、球状のペレットに成形することが好ましい。球状のペレットにすることで、還元反応を比較的均一に進め易くすることができ、且つ、混合物の成形を容易にして成形にかかるコストを抑えることができる。また、ペレットの形状が単純になることで、成形不良のペレットを低減することができる。
塊状化によって得られるペレットの大きさ(球状のペレットの場合には直径)は、特に限定されないが、例えば、前処理工程S2における乾燥処理や、還元処理工程S3における乾燥処理(乾燥工程S31)、予熱処理(予熱工程S32)を経て、還元処理(還元工程S33)を行う場合であれば、10mm〜30mm程度にすることができる。なお、還元処理工程S3等については、詳しくは後述する。
(混合物の容器への充填)
他方で、混合物を容器等に充填して成形する場合、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物を押出機等で混練しながら所定の容器等に充填することで、混合物充填容器とすることができる。得られた混合物充填容器は、そのまま次工程の還元処理工程S3に供してもよいが、容器等に収容されている混合物をプレス等によって押し固めたものを、還元処理工程S3に供することがより好ましい。特に、容器等に収容されている混合物を押し固めて成形し、成形された混合物を次工程の還元処理工程S3に付すことで、混合物の間に生じる空隙を低減させて密度を高めることができ、また、密度が均一化することで還元反応をより均一に進め易くすることができる。したがって、品質のばらつきのより小さいフェロニッケルを作製することができる。
混合物充填容器の形状としては、特に限定されないが、例えば直方体、立方体、円柱等の形状であることが好ましい。また、その大きさについても特に限定されないが、例えば直方体や立方体の形状であれば、概ね、縦、横、高さの内寸が、各々500mm以下であることが好ましい。このような形状、大きさとすることにより、品質のばらつきが小さく、且つ生産性の高い製錬を行うことができる。
(2)混合物の乾燥処理
ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含有する混合物には、混合物を成形する前後の少なくともいずれかにおいて、乾燥処理を行ってもよい。ここで、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤を含有する混合物には水分が多く含まれていることがあり、このような混合物を急激に還元温度まで昇温すると、水分が一気に気化し、膨張して混合物が破壊することがある。また、混合物は、水分によってべたべたした状態となっていることも多い。
したがって、混合物に対して乾燥処理を施し、例えば塊状物の固形分が70重量%程度で、水分が30重量%程度となるようにすることで、次工程の還元処理工程S3において、混合物が崩壊することを防ぐことができ、それにより還元炉からの取り出しが困難になることを防ぐことができる。また、混合物に対して乾燥処理を施すことで、表面のべたべたした状態を解消できるため、還元炉への装入までの取り扱いを容易にすることができる。
具体的に、混合物に対する乾燥処理としては、特に限定されないが、例えば200℃〜400℃の熱風を混合物に対して吹き付けて乾燥させる。なお、乾燥処理時の混合物の温度は、ペレットを破壊され難くする観点から、100℃未満を維持することが好ましい。
乾燥処理は、後述の還元処理工程S3における乾燥処理(乾燥工程S31)を含めて、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。なお、乾燥処理を1回のみ行う場合は、後述するように、還元処理工程S3において乾燥工程S31を行うことで、エネルギー効率をより高めることができる。
下記表2に、乾燥処理後のペレットにおける固形分中組成(重量部)の一例を示す。なお、ペレットの組成としては、これに限定されるものではない。
<3.還元処理工程>
還元処理工程S3では、還元投入前処理工程S2を経て成形された混合物を還元炉に装入して、所定の還元温度に還元加熱する。このように、混合物に対して加熱処理することで、製錬反応(還元反応)が進行して、メタルとスラグとの混在物が生成する。
図3は、還元処理工程S3にて実行する処理工程を示す工程図である。図3に示すように、還元処理工程S3は、混合物を乾燥する乾燥工程S31と、乾燥させた混合物を予熱する予熱工程S32と、混合物を加熱して還元する還元工程S33と、得られた還元物を冷却する冷却工程S35と、を有する。また、還元工程S33を経て得られた還元物を所定の温度範囲に保持する温度保持工程S34を有してもよい。
ここで、還元処理工程S3における還元加熱処理は、還元炉等を用いて行われる。還元加熱処理に用いる還元炉としては、特に限定されないが、移動炉床炉を用いることが好ましい。還元炉として移動炉床炉を使用することにより、炉外で混合物の炉床への載置を行った後で、移動炉床炉に装入させることができるため、還元炉をより効率的に運用することができる。また、移動炉床炉を用いることで、連続的に還元反応が進行し、一つの設備で反応を完結させることができ、各工程における処理を別々の炉を用いて行うよりも処理温度の制御を的確に行うことができる。さらに、移動炉床炉を使用して一つの設備で各処理を行うことで、ヒートロスが低減されるとともに炉内雰囲気も的確に制御できるため、反応をより効果的に進行させることができる。そのため、より効果的に、ニッケル品位が高いフェロニッケルを得ることができる。
移動炉床炉としては、特に限定されず、回転炉床炉や、ローラーハースキルン等を用いることができる。このうち、回転炉床炉を用いる例としては、例えば、図4に示すような、円形状であって複数の処理室23〜26に区分けされた回転炉床炉(ロータリーハース炉)20を有する還元炉2を挙げることができる。回転炉床炉20は、平面上を回転移動する炉床を備えており、混合物を載置した炉床が所定の方向に回転移動することで、各領域においてそれぞれの処理が行われる。このとき、各領域を通過する際の時間(移動時間、回転時間)を制御することで、それぞれの領域での処理温度を調整することができ、回転炉床が1回転する毎に混合物10が製錬処理される。
この回転炉床炉20では、例えば処理室23〜26のすべてを還元室として、乾燥室21から順次供給される混合物10に対して、処理室23〜26で還元処理を行ってもよい。他方で、処理室23を予熱室、処理室24を還元室、処理室25を温度保持室、処理室26を冷却室として、乾燥室21から順次供給される混合物10に対して、処理室23で予熱を行い、処理室24で還元処理を行い、処理室25で温度を保持した後、処理室26で冷却させ、外部冷却室27にてさらに冷却処理されるようになっていてもよい。このように、処理室23〜26の間で温度を異ならせる場合は、反応温度を厳密に制御してエネルギーロスを抑制するために、処理室23〜26を可動式の仕切り壁で仕切られた構成とすることが好ましい。なお、図4における回転炉床炉20上の矢印は、炉床の回転方向を示すとともに、処理物(混合物)の移動方向を示す。
回転炉床炉20を用いて、これらの処理を一つの還元炉内にて行うことによって、その還元炉内の温度を高い温度で維持することができるため、それぞれの工程における処理の都度、温度を上げたり下げたりする等の必要が無くなり、エネルギーコストを低減することができる。そのため、高い生産性で、品質の良好なフェロニッケルを、連続して安定的に作製することができる。
なお、特に混合物を還元炉に装入する場合、予めその還元炉の炉床に炭素質還元剤(以下、「炉床炭素質還元剤」ともいう)を敷き詰めて、その敷き詰められた炉床炭素質還元剤の上に混合物を載置してもよい。また、混合物を充填した容器を炉床炭素質還元剤上に載置した後、炭素質還元剤を用いて覆い隠す状態にすることもできる。このように、炉床に炭素質還元剤が敷き詰められた還元炉に混合物を装入し、又は、装入した混合物をさらに覆い隠すように炭素質還元剤で包囲させた状態で還元加熱処理を施すことで、混合物の崩壊を抑制しながら、製錬反応をより速く進行させることができる。また、特に炉床炭素質還元剤を敷き詰めることで、処理室23〜26において還元反応が進んでニッケルメタルやスラグが生成しても、炉床との反応が抑えられるため、スラグが炉床に染み込んだり貼り付いたりすることを低減することができる。
(1)乾燥工程
乾燥工程S31では、原料粉末を混合して得られた混合物に対して乾燥処理を施す。この乾燥工程S31は、混合物中の水分や結晶水を飛ばすことを主な目的とする。
混合処理工程S1にて得られた混合物には水分等が多く含まれており、そのような状態で還元処理時に還元温度のような高温まで急加熱すると水分が一気に気化、膨張することで、成形した混合物が割れ、場合によっては破裂して粉々になるため、均一な還元処理を行うことが困難になる。そこで、還元処理を行う前に、混合物に対する乾燥処理を施して水分を除去することで、このような混合物の破壊を低減させ、それにより均一な還元処理を促進することができる。
乾燥工程S31における乾燥処理は、還元炉に接続される形態で行われることが好ましい。他方で、還元炉内において乾燥処理を施すエリア(乾燥エリア)を設けて実施することも考えられるが、この場合、乾燥エリアでの乾燥処理が律速になるため、還元工程S33における処理の効率や、温度保持工程S34における処理の効率を低下させる可能性がある。
したがって、乾燥工程S31における乾燥処理は、還元反応を行う炉の外に設けられ、その炉に直接又は間接的に接続された乾燥室で行われることが好ましい。例えば、図4の還元炉2では、回転炉床炉20の炉外に乾燥室21を設けることで、後述する予熱、還元、冷却といった工程とは全く別に乾燥室を設計でき、望ましい乾燥処理、予熱処理、還元処理、冷却処理をそれぞれ実行し易くすることができる。例えば、原料に依存して混合物に水分が多く残存するような場合には、乾燥処理に時間がかかるため、乾燥室21の全長が長めになるように設計し、又は、乾燥室21の内部での混合物10の搬送速度が遅くなるように設計すればよい。
乾燥工程S31における乾燥処理の方法については、特に限定されないが、乾燥室21において搬送されてきた混合物10に対して、熱風を吹き付けることによって行うことができる。また、乾燥室21の乾燥温度についても、特に限定されないが、還元反応が始まらないようにする観点から、500℃以下とすることが好ましく、500℃以下の温度で混合物10の全体を均一に乾燥することがより好ましい。
(2)予熱工程
予熱工程S32では、乾燥工程S31での乾燥処理によって水分を除去した後の混合物を予熱(予備加熱)する。この予熱工程S32は、還元時に温度がスムーズに還元温度まで上がるようにすることを主な目的とする。
還元反応を行う炉の外部から内部に混合物を装入するとき、混合物が急激に還元温度まで昇温することで、熱応力によって混合物が割れたり、粉状になったりすることがある。また、混合物の温度が均一に上がらないことで、還元反応にばらつきが生じ、生成されるメタルの品質がばらつくことがある。そのため、混合物に対して乾燥工程S31を行った後に、所定の温度にまで予熱することが好ましく、これにより混合物の破壊や還元反応のばらつきを抑えることができる。
予熱工程S32における予熱処理は、回転炉床炉の中に設けられた予熱室で行ってもよく、回転炉床炉の外側に設けられ、乾燥室から予熱室を経て回転炉床炉まで連続するように設けられた予熱室で行ってもよい。例えば、図4に示す還元炉2では、回転炉床炉20の中に、乾燥室21から連続するように設けられている処理室23を予熱室とすることで、回転炉床炉20の内部の温度を高い温度に維持することができるため、還元工程S33において、混合物10を供給した回転炉床炉20の再加熱に必要なエネルギーを、大幅に削減することができる。
予熱工程S32における予熱温度としては、特に限定されないが、600℃以上であることが好ましく、700℃以上であることがより好ましい。他方で、予熱工程S32における予熱温度の上限は、1280℃としてもよい。特に、高い予熱温度で処理することによって、還元工程S33において還元温度まで再加熱する際に必要となるエネルギーを、大幅に削減することができる。
(3)還元工程
還元工程S33では、予熱工程S32にて予熱した混合物に対し、所定の還元温度で還元処理を施す。この還元工程S33は、予熱工程S32で予熱した混合物を還元することを主な目的とする。
還元炉を使用した還元処理においては、ニッケル酸化鉱石に含まれる金属酸化物である酸化ニッケルは可能な限り完全に還元し、一方で、ニッケル酸化鉱石とともに原料粉末として混合した鉄鉱石等に由来する酸化鉄は一部だけ還元して、目的とするニッケル品位のフェロニッケルが得られようにすることが好ましい。
還元工程S33における還元温度としては、特に限定されないが、1200℃以上1450℃以下の範囲とすることが好ましい。ここで、還元工程S33における還元温度は、好ましくは1200℃、より好ましくは1300℃を下限とする。また、還元工程S33における還元温度は、好ましくは1450℃、より好ましくは1400℃を上限とする。このような温度範囲で還元することによって、均一に還元反応が進みやすくなるため、品質のばらつきを抑制したメタル(フェロニッケル)を生成させることができる。また、この温度範囲で還元することで、比較的短時間で所望の還元反応を進めることができる。
還元工程S33において還元加熱処理を行う時間は、還元炉の温度に応じて設定されるが、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、15分以上であることがさらに好ましい。他方で、還元工程S33において還元加熱処理を行う時間の上限は、製造コストの上昇を抑える観点から、50分以下としてもよく、40分以下としてもよい。
還元工程S33における還元加熱処理では、例えば1分程度のわずかな時間で、先ず還元反応の進みやすい混合物の表面近傍において、酸化ニッケル及び酸化鉄が還元されメタル化して、鉄−ニッケル合金(フェロニッケル)となり、シェル(以下、「殻」ともいう)を形成する。一方で、殻の中では、その殻の形成に伴って混合物中のスラグ成分が徐々に熔融して液相のスラグが生成する。これにより、1個の混合物の中で、フェロニッケル等の合金や金属からなるメタル(以下、単に「メタル」という)と、酸化物からなるスラグ(以下、単に「スラグ」という)とが分かれて生成する。
そして、還元工程S33における還元加熱処理の処理時間が10分程度経過すると、還元反応に関与しない余剰の炭素質還元剤の炭素成分が、鉄−ニッケル合金に取り込まれて融点を低下させる。その結果、炭素を含有した鉄−ニッケル合金は溶解して液相となる。
上述したように、還元加熱処理によって形成されるスラグは、熔融して液相となっているが、既に分離して生成したメタルとスラグとは混ざり合うことがなく、その後の冷却によってメタル固相とスラグ固相との別相として混在する混在物となる。この混在物の体積は、装入する混合物と比較すると、50%〜60%程度の体積に収縮している。
還元工程S33における還元処理は、上述したとおり、還元炉等を用いて行われる。例えば、図4の還元炉2の処理室24で還元工程S33を行う場合、予熱室である処理室23で混合物を予熱した後、炉床の回転によって処理室24に移動させることが好ましい。
(4)温度保持工程
還元工程S33を経て得られた還元物に対して、回転炉床炉内で所定の温度条件で保持する温度保持工程S34を行ってもよい。具体的に、この温度保持工程S34は、還元工程S33における還元温度を同等の温度に還元物を保持することによって、その還元物中におけるメタル成分をさらに沈降させて纏め、メタルを粗大化させる。これにより、メタルを回収し易くすることができる。
還元処理して得られた状態において還元物中のメタル成分が小さい場合、例えば200μm以下程度のバルク状のメタルが得られた場合には、その後の分離工程S4でメタルとスラグとを分離することが困難になる。このとき、必要に応じて、還元物を高温保持することで、還元物中のスラグよりも比重の大きいメタルを沈降、凝集させて、メタルを粗大化させることができる。
温度保持工程S34における還元物の保持温度は、還元工程S33における還元温度に応じて適宜設定することができ、1300℃以上1500℃以下の範囲内にあることが好ましい。この温度範囲内で還元物を高温保持することによって、還元物中のメタル成分を効率よく沈降させて、粗大なメタルを得ることができる。ここで、保持温度が1300℃未満であると、還元物の多くの部分が固相となるため、メタル成分が沈降しないか、沈降した場合であっても粗大なメタルを得るには時間を要する。また、保持温度が1500℃を超えると、得られた還元物と、炉床や炉床炭素質還元剤との反応が進行することで、還元物を回収できなくなることがあり、また、炉を損傷させてしまうことがある。
温度保持工程S34において温度を保持する時間は、還元炉の温度に応じて設定されるが、10分以上であることが好ましく、15分以上であることがより好ましい。他方で、温度保持工程S34において温度を保持する時間の上限は、製造コストの上昇を抑える観点から、50分以下としてもよく、40分以下としてもよい。
温度保持工程S34における処理は、還元反応を行う炉の中で、還元工程S33に続いて連続的に行うことが好ましい。例えば、図4の還元炉2の処理室25で温度保持工程S34を行う場合、処理室24で混合物を還元処理した後、炉床の回転によって処理室25に移動させることが好ましい。
このように、還元工程S33と温度保持工程S34とを連続的に行うことによって、還元物中のメタル成分が効率的に沈降するため、得られるメタルを粗大化させることができる。また、これにより各処理間におけるヒートロスが低減するため、効率的な操業を行うことができる。
なお、還元工程S33における還元処理によって、製造上問題ないレベルまでメタルが粗大化している場合には、特に温度保持工程S34を設けることを必要としない。
(5)冷却工程
冷却工程S35は、還元工程S33を経て、あるいは必要に応じて温度保持工程S34にて温度を保持した後の還元物を、続く分離工程S4にて分離回収できる温度にまで冷却する工程である。
冷却工程S35における還元物の冷却は、還元反応を行う炉の内側にある処理室と、炉の外側に接続された処理室のうち、少なくともいずれかで行うことができる。例えば、図4の還元炉2では、回転炉床炉20の処理室26を冷却室とし、且つ炉外に外部冷却室27を設けることで、回転炉床炉20の内部における温度低下が小さくなるため、還元炉2におけるエネルギーロスを低減することができる。また、特に回転炉床炉20から外部冷却室27には熱が伝わり難くなるため、還元物の冷却をよりスムーズに行うことができる。
冷却工程S35において、還元工程S33を経た還元物を冷却室に移す温度(以下、「回収時温度」ともいう)は、還元物を実質的に固体として扱える温度であればよい。特に、回転炉床炉を用いて還元工程S33を行った場合には、回収時温度ができるだけ高い温度であることが好ましい。このとき、回収時温度をできるだけ高くすることで、冷却室に移すまでの回転炉床炉20の炉床の温度低下が小さくなる。そのため、回転炉床や炉内の雰囲気への冷却及び予熱によるエネルギーロスを低減することができ、再加熱に要するエネルギーをより一層節約することができる。
ここで、冷却工程S35における回収時温度は、600℃以上であることが好ましい。回収時温度をこのような高い温度にすることで、再加熱に要するエネルギーが大幅に低減するため、より低コストで効率的な製錬処理を行うことができる。また、回転炉床炉20の炉床における温度差が減少することで、その炉床や炉壁等に加わる熱応力も減少するため、回転炉床炉20の寿命を大きく延ばすことができることに加え、回転炉床炉20の操業中の不具合も大幅に減らすことができる。
本実施の形態では、還元処理工程S3における反応が理想的に進行した場合、還元処理工程S3を行った後の混合物は、メタルとスラグとの混在物になる。このとき、大きな塊のメタルが形成されることで、還元炉から回収する際における回収の手間を低減させることができ、また、メタル回収率の低下を抑えることができる。
<4.分離工程>
分離工程S4では、還元処理工程S3にて生成した還元物から、メタル(フェロニッケルメタル)を分離して回収する。具体的には、混合物を還元加熱処理することによって得られた、メタル相(メタル固相)とスラグ相(スラグ固相)とを含む混在物(還元物)から、メタル相を分離して回収する。
固体として得られたメタル相とスラグ相との混在物からメタル相とスラグ相とを分離する方法としては、例えば、篩い分けによる不要物の除去に加えて、比重による分離や、磁力による分離等の方法を利用することができる。また、得られたメタル相とスラグ相は、濡れ性が悪いことから容易に分離することができ、上述した大きな混在物に対して、例えば、所定の落差を設けて落下させ、あるいは篩い分けの際に所定の振動を与える等の衝撃を付与することで、その混在物から、メタル相とスラグ相とを容易に分離することができる。
このようにしてメタル相とスラグ相とを分離することによって、メタル相を回収し、フェロニッケルの製品とすることができる。
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[混合処理工程]
実施例1〜24、比較例1〜4の各試料について、原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び炭素質還元剤(石炭粉)を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合した。ここで、各試料における炭素質還元剤としては、平均最大粒子長が100〜120μmのものを用い、その配合量は、混合物の全質量に対して、表4、表5に記載される値になるようにした。また、他の成分の含有量は、炭素質還元剤を除いた混合物の全質量を100%としたときに、ニッケル酸化鉱石の含有量を65%、珪砂の含有量を3%、石灰石の含有量を2%、バインダーの含有量を2%、水の含有量を28%にし、鉄鉱石は含有させなかった。
なお、表4、表5に記載される炭素含有率の標準偏差は、混合物1000kgの中から無作為に20カ所から各1.0gを取り出して炭素含有率を計測し、その計測値から標準偏差を求めた。
また、混合物を構成する各成分の平均最大粒子長は、金属顕微鏡を用いて、無作為に選定し測定した300個の粒子についての、最大粒子長の平均値より求めた。
そして、市販のV型混合機を用いて、試料に応じて0.2〜3.0時間混合することで、混合物を得た。
[前処理工程]
混合処理によって得られる混合物に対して、パン型造粒機を用いてφ18±1.5mmの球形状のペレットに成形することで塊状化した後、固形分が70重量%程度、水分が30重量%程度となるように、250℃〜350℃の熱風を吹き付けて乾燥処理を施した。下記表3に、乾燥処理後の混合物(ペレット)の固形分組成(炭素を除く)を示す。
[還元処理工程]
前処理を行った後のペレットを、実質的に酸素を含まない窒素雰囲気にした、回転炉床炉を有する還元炉に各々装入した。還元炉としては、図4に示すように、炉床が回転移動する領域を4分割するように4つの処理室23〜26を備えた回転炉床炉20を有するものを用いた。この還元炉2では、乾燥室21が回転炉床炉20の処理室23に接続されており、また、外部冷却室27が回転炉床炉20の処理室26に接続されている。
そして、回転炉床炉20の炉外に接続された乾燥室21にペレットを装入して乾燥処理を施した後、乾燥室21に連続して回転炉床炉20の中に設けられた、予熱室である処理室23に移行させ、予熱室内の温度を700℃以上1280℃以下の範囲に保持して、ペレットに対して予熱処理を行った。
続いて、予熱処理後のペレットを、回転炉床炉20の中で処理室24に移行させて、表4、表5に示す温度及び時間で還元処理を行った。
還元処理を経て得られたペレットの還元物は、表4、表5に示す還元温度と同じ温度に維持された温度保持室である処理室25と、冷却室である処理室26との順に移行させ、次いで、回転炉床炉20に接続された外部冷却室27に移行させ、窒素を流しながら速やかに室温まで冷却して大気中へ取り出した。なお、還元物の回転炉床炉20からの回収は、還元物を外部冷却室27に移行させる際に行い、外部冷却室27に設置したガイドに還元物を沿わせるようにして回収した。
また、還元加熱処理後の各試料について、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有率を、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100型)により分析して算出した。
ニッケルメタル化率、メタル中のニッケル含有率は、以下の式により算出した。
ニッケルメタル化率=
ペレット中のメタル化したNi量÷(ペレット中の全てのNi量)×100(%)
メタル中のニッケル含有率=
ペレット中のメタル化したNi量÷
(ペレット中のメタル化したNiとFeの合計量)×100(%)
下記表4、表5に、実施例1〜24、比較例1〜4の各試料より得られたメタルのニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有率を示す。
表4、表5の結果に示されるように、炭素含有量の測定値の標準偏差が0.013%以下となるように混合物を作製することで、ニッケルメタル化率は98.5%以上と高く、メタル中のニッケル含有量も18.5%以上と高い、高品位のフェロニッケルを製造することができることが分かった(実施例1〜実施例24)。その中でも特に、炭素含有量の測定値の標準偏差が0.009%以下となるように混合物を作製した場合には、ニッケルメタル化率は99.2%以上とより高くなり、メタル中のニッケル含有量も19.0%以上とより高くなることが分かった(実施例1〜実施例17、実施例20〜実施例22)。
また、ニッケル含有量が高いメタルを得られることで、メタルの粗大化が生じやすくなるため、製錬処理の収率及び生産性が高められることが推察される。
このように、高品位のフェロニッケルを製造することができた理由として、混合物における炭素含有量のばらつきを小さくすることで、混合物の均一性が高まり、それにより均一であり且つ効率的な製錬処理を行えるようになったことが考えられる。
これに対して、比較例1〜4の結果に示されるように、炭素含有量の測定値の標準偏差を0.013%超にした場合、ニッケルメタル化率は高くても96.3%であり、メタル中ニッケル含有量は高くても17.6%であり、実施例と比較して低い値であった。