JP7196461B2 - 酸化鉱石の製錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化鉱石の製錬方法に関するものであり、例えば、ニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を原料として炭素質還元剤により還元することで還元物を得る製錬方法に関する。
酸化鉱石の一種であるリモナイトあるいはサプロライトと呼ばれるニッケル酸化鉱石の製錬方法として、熔錬炉を使用してニッケルマットを製造する乾式製錬方法、ロータリーキルンあるいは移動炉床炉を使用して鉄とニッケルの合金であるフェロニッケルを製造する乾式製錬方法、オートクレーブを使用して高温高圧で酸浸出し、ニッケルやコバルトが混在した混合硫化物(ミックスサルファイド)を製造する湿式製錬方法等が知られている。
上述した様々な方法の中で、特に乾式製錬法を用いてニッケル酸化鉱石を還元して製錬する場合、反応を進めるために原料のニッケル酸化鉱石を適度な大きさに破砕する等して塊状物化する処理が前処理として行われる。
具体的に、ニッケル酸化鉱石を塊状物化する、すなわち粉状や微粒状の鉱石を塊状にする際には、そのニッケル酸化鉱石と、それ以外の成分、例えばバインダーやコークス等の還元剤とを混合して混合物とし、さらに水分調整等を行った後に塊状物製造機に装入して、例えば一辺あるいは直径が10mm以上30mm以下程度の成形物(ペレット、ブリケット等を指す。以下、単に「ペレット」ということもある)とするのが一般的である。
塊状物化して得られるペレットには、含有する水分を「飛ばす」ために、ある程度の通気性が必要となる。さらに、その後の還元処理においてペレット内で均一に還元が進まないと、得られる還元物の組成が不均一になり、メタルが分散したり偏在したりする等の不都合が生じる。そのため、ペレットを作製する際には混合物を均一に混合したり、得られたペレットを還元する際には可能な限り均一な温度を維持することが重要となる。
例えば、特許文献1では、ニッケル含有量の高いフェロニッケルを安定して高効率でかつ安価に製造できるフェロニッケルの製造方法について開示されている。具体的には、酸化ニッケル及び酸化鉄を含有する原料と炭素質還元剤とからなる混合物を造粒機でペレット化したペレットを移動炉床炉内で加熱還元するに際し、ペレットの炉内滞留時間を調整することによって、ニッケル含有量の高いフェロニッケルを得る方法が開示されている。
さて、ペレットの還元処理は、還元炉等を用いて行われ、例えば、ペレットを、所定の還元温度に加熱した還元炉に装入し還元加熱する。還元処理では、先ず還元反応の進みやすいペレット表面の酸化物が還元されメタル化して殻(シェル)が形成される。
しかしながら、酸化鉱石中に還元対象ではない酸化物が含まれた場合には、ペレット表面の酸化物の還元がされず、シェルの形成が阻害されることがあった。ペレット表面の一部にシェルが形成されていない状態で酸化物が還元されると、ペレット中に含まれる炭素質還元剤等が加熱還元処理中にペレットの外部に漏出することがあった。そのため、酸化物の還元反応がペレット全体でばらつきが生じて高品質なメタルを効率的に製造することが困難であるという問題が生じていた。
特開2004-156140号公報
本発明は、ニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を含む混合物を還元することでメタルを製造する製錬方法において、得られるメタルの品位を高めることができ、高品質のメタルを効率的に製造することができる酸化鉱石の製錬方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物により製造されたペレットに加熱還元処理を施すことに先んじてペレットを還元性気体に接触させることによって上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明の第1は、酸化鉱石に還元処理を施してメタルとスラグとを含む還元物を得る製錬方法であって、酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物によりペレットを形成するペレット製造工程と、前記ペレットに還元性気体を接触させることにより該ペレットの表面にメタルからなるシェルを形成する還元第1工程と、シェルが形成されたペレットを所定の温度に加熱することにより還元物を得る還元第2工程と、を含む酸化鉱石の製錬方法である。
(2)本発明の第2は、第1の発明において、前記ペレット製造工程では、前記混合物の表面に金属及び/又は金属酸化物の粉末を付着させてペレットを形成する酸化鉱石の製錬方法である。
(3)本発明の第3は、第2の発明において、前記ペレット製造工程では、前記混合物の表面に金属の粉末を付着させてペレットを形成し、前記金属の付着量が前記混合物に含まれる金属全量に対して0.1質量%以上2.0質量%以下である酸化鉱石の製錬方法である。
(4)本発明の第4は、第2又の発明において、前記ペレット製造工程では、前記混合物の表面に金属酸化物の粉末を付着させてペレットを形成し、前記金属酸化物の付着量が前記混合物に含まれる金属全量に対して0.03質量%以上8.0質量%以下である。
(5)本発明の第5は、第1から第4のいずれかの発明において、前記ペレット製造工程では、前記混合物を350℃以上600℃以下で乾燥させてペレットを形成する酸化鉱石の製錬方法である。
(6)本発明の第6は、第1から第5のいずれかの発明において、前記還元第2工程における還元処理後の雰囲気ガスの少なくとも一部を、前記還元第1工程における処理空間に供給し、前記シェルを形成する還元性気体として用いる酸化鉱石の製錬方法である。
(7)本発明の第7は、第1から第6のいずれかの発明において、前記還元第1工程では、前記ペレットを900℃以上1200℃未満の温度に保持する酸化鉱石の製錬方法である。
(8)本発明の第8は、第1から第7のいずれかの発明において、前記還元第2工程では、前記ペレットを1200℃以上1450℃以下の温度に保持する酸化鉱石の製錬方法である。
(9)本発明の第9は、第1から第8のいずれかの発明において、前記ペレットに含まれる前記炭素質還元剤の含有量が前記ペレットに含まれる酸化鉱石を還元するのに必要な量に対して12.0質量%以上35.0%質量以下の割合である酸化鉱石の製錬方法である。
本発明に係る酸化鉱石の製錬方法によれば、高品質なメタルを効率的に製造することができる。
ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。 ペレット製造工程の流れの一例を示す工程図である。 ペレットの表面にシェルを形成する様子を示す模式図である。 粉末が付着したペレットの表面にシェルを形成する様子を示す模式図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
≪1.酸化鉱石の製錬方法の概要≫
本実施の形態に係る酸化鉱石の製錬方法は、原料鉱石である酸化鉱石(酸化物)と炭素質還元剤とを含む混合物によりペレットを形成し、そのペレットに対して製錬炉(還元炉)内で還元処理を施すことによって、メタルとスラグとを生成させるものである。
例えば、酸化鉱石として、酸化ニッケルや酸化鉄等を含有するニッケル酸化鉱石を原料とし、そのニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物によりペレットを形成して、ペレットに含まれるニッケルを優先的に還元し、また鉄を部分的に還元することで、鉄とニッケルの合金であるフェロニッケルを製造する方法が挙げられる。
そして、本実施の形態に係る酸化鉱石の製錬方法においては、ペレットに加熱還元処理を施すことに先んじて、ペレットに還元性気体を接触させることによりペレットの表面にシェルを形成する工程を含むことを特徴としている。
このような方法によれば、ペレットの表面全体に形成されたシェルによって、ペレット中に含まれる炭素質還元剤等が加熱還元処理中にペレットの外部に漏出することを抑制することができる。これにより、得られるメタルの品位を高めることができ、高品質なメタルを製造することができる。
≪2.ニッケル酸化鉱石を用いてフェロニッケルの製造する製錬方法≫
以下では、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれるニッケル(酸化ニッケル)と鉄(酸化鉄)を還元することで、鉄-ニッケル合金のメタルを生成させ、さらに、そのメタルを分離することによってフェロニッケルを製造する製錬方法を例に挙げて説明する。
具体的に、本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法は、図1に示すように、酸化鉱石であるニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物によりペレットを形成するペレット製造工程S1と、得られたペレットを還元炉内に装入して、所定の還元温度で加熱することによって還元処理を施す還元工程S2と、得られた還元物からメタルとスラグを分離する分離工程S3と、を含む。
<2-1.ペレット製造工程>
ペレット製造工程S1は、酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物によりペレットを形成する工程である。図2は、ペレット製造工程S1における処理の流れを示すフロー図である。図2に示すように、ペレット製造工程S1は、ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む原料を混合して混合物を得る混合処理工程S11と、得られた混合物を塊状物に形成(造粒)する塊状化処理工程S12と、塊状物の表面に金属粉及び/又は金属酸化物を付着させる金属付着工程S13と、表面に金属粉が付着した塊状物を乾燥させる乾燥処理工程S14と、塊状物を加熱処理する加熱処理工程S15と、を含む。
(1)混合処理工程
混合処理工程S11は、具体的には、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に、炭素質還元剤を添加して混合し、また任意成分の添加剤として、鉄鉱石、フラックス成分、バインダー等の、例えば粒径が0.2mm以上0.8mm以下程度の粉末を添加して混合し、混合物を得る。なお、混合処理は、混合機等を用いて行うことができる。
原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。なお、ニッケル酸化鉱石は、酸化ニッケル(NiO)と、酸化鉄(Fe)とを少なくとも含有する。
炭素質還元剤としては、特に限定されないが、例えば、石炭粉、コークス粉等が挙げられる。なお、この炭素質還元剤は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石の粒度や粒度分布と同等の大きさのものであると、均一に混合しやすく、還元反応も均一に進みやすくなるため好ましい。
炭素質還元剤の混合量(混合物中に含まれる炭素質還元剤の含有量)としては、ペレットを構成する酸化ニッケルの全量をニッケルメタルに還元するのに必要な化学当量と、酸化鉄(酸化第二鉄)を金属鉄に還元するのに必要な化学当量との両者合計値(便宜的に「化学当量の合計値」ともいう)を100質量%としたときに、35.0質量%以下の割合とすることが好ましく、30.0質量%以下の割合とすることがより好ましい。このような割合で炭素質還元剤を混合させることで、鉄の還元量を抑えて、ニッケル品位を高めることができ、高品質のフェロニッケルを製造することができる。
なお、化学当量の合計値は、後述する金属付着工程S13にて混合物の表面に金属酸化物の粉末を付着させた場合には、その金属酸化物を還元するのに必要な化学当量も含まれる。
また、炭素質還元剤の混合量としては、化学当量の合計値を100質量%としたときに、12.0質量%以上の割合とすることが好ましく、13.0質量%以上の割合とすることがより好ましい。これにより、ニッケルの還元を効率的に進行させることができ、生産性が向上する。
任意成分の添加剤である鉄鉱石としては、例えば、鉄品位が50.0質量%程度以上の鉄鉱石、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。
フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等を挙げることができる。また、バインダーとしては、例えば、ベントナイト、多糖類、樹脂、水ガラス、脱水ケーキ等を挙げることができる。
混合処理工程S11では、ニッケル酸化鉱石を含む原料粉末を均一に混合することによって混合物を得る。この混合に際しては、混合性を高めるために混練を同時に行ってもよく、混合後に混練を行ってもよい。具体的に、混練は、例えば二軸混練機等を用いて行うことができる。混合物を混練することによって、その混合物にせん断力を加え、炭素質還元剤や原料粉末等の凝集を解いて均一に混合できるとともに、各々の粒子の密着性を向上させ、また空隙を減少させることができる。これにより、その混合物により形成されるペレットにおいて還元反応が起りやすくなるとともに均一に反応させることができ、還元反応の反応時間を短縮することができる。また、品質のばらつきを抑えることができる。
また、混練した後、押出機を用いて押出してもよい。このように押出機で押出すことによって、より一層高い混練効果を得ることができる。
なお、下記表1に、混合処理工程S1にて混合する、一部の原料粉末の組成(質量%)の一例を示すが、原料粉末の組成としてはこれに限定されない。
Figure 0007196461000001
(2)塊状化処理工程
塊状化処理工程S12は、混合処理工程S11で得られた混合物を塊状化する工程である。具体的には、原料粉末を混合して得られた混合物を、ある程度の大きさ以上の塊状物に成形する。
成形方法としては、特に限定されないが、混合物を塊状物化するのに必要な量の水分を添加し、例えば塊状物製造装置(転動造粒機、圧縮成形機、押出成形機等、あるいはペレタイザーともいう)を用いて所定の形状に成形する。なお、試験レベルの量であれば、人の手によって成形してもよい。
混合物を成形して得られる塊状物の形状としては、例えば、球状、直方体状、立方体状、円柱状等とすることができる。このような形状とすることにより、混合物を成形しやすくし、成形コストを抑制することができる。また、上述した形状は、簡易な形状であって複雑なものではないため、不良品の発生を抑制することができ、得られるペレットの品質も均一となり、歩留り低下を抑制することができる。
混合物を成形して得られる塊状物(ペレット)の形状は、球状であることが好ましい。球状の塊状物(ペレット)であることにより還元処理が均一に施され、ばらつきが少なく、かつ生産性の高い製錬を行うことができる。
塊状物(ペレット)の形状を球状とする場合には、直径が10mm以上30mm以下程度となるように成形することができる。また、直方体状、立方体状、円柱状等とする場合には、概ね、縦、横の内寸が500mm以下程度となるように成形することができる。
塊状物(ペレット)の大きさとしては、特に限定されないが、塊状物の体積が8000mm以上であることが好ましい。塊状物の体積が8000mm以上であることにより、成形コストが抑制され、さらに、塊状物全体に占める表面積の割合が低くなるため、還元第2工程における加熱還元処理が均一に施され、ばらつきが少なく、かつ生産性の高い製錬を行うことができる。
(3)金属付着工程
金属付着工程S13は、塊状化処理工程S12で得られた塊状物の表面に金属粉及び/又は金属酸化物を付着させる工程である。なお、本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法において、金属付着工程S13を含むことは必須の態様ではない。
このように、塊状物の表面に金属粉及び/又は金属酸化物を付着させてペレットとすることにより、後述する還元工程S2(還元第1工程S21)においてそのペレットに還元性気体を接触させることで形成されるシャルを、より均一化させることができる。均一なシェルが形成されることにより、ペレットに含まれる炭素質還元剤等がペレットの外部に漏出することをより効果的に抑制することができ、得られるメタルの品位をさらに高めることができる。
また、表面に金属粉及び/又は金属酸化物が付着したペレットであれば、ペレットの強度が向上し、例えば、還元第2工程S22における加熱還元処理においてペレットが破裂すること等を抑制することができる。
(金属粉)
金属粉としては、特に限定されないが、製錬する酸化鉱石に含まれる金属と同一の金属であることが好ましい。具体的に、本実施の形態においては、ニッケル酸化鉱石を製錬対象の酸化鉱石として用いることから、そのニッケル酸化鉱石に含まれる、ニッケルや鉄等の粉末を用いることが好ましい。酸化鉱石に含まれる金属とは異なる金属を金属粉として用いた場合には、製錬後に回収されたメタルからその金属粉に由来する金属を分離する工程が必要となることがある。酸化鉱石に含まれる金属と同一の金属を金属粉として用いることにより、製錬後に回収されたメタルから金属粉に由来する金属を分離する工程が必要となくなるため製錬コストを低減することができる。
金属粉の形状は、特に限定されないが、球状であることが好ましい。金属粉が球状であることにより、塊状物の表面に金属粉を均一に付着させることができる。また、金属粉の大きさは、特に限定されないが、例えば、直径が数mm以上数10mm以下の球状のペレットを製造する場合には、直径が数μm以上数100μm以下の粒子であることが好ましい。これにより、金属粉が塊状物の表面に均一に付着させることができ、また金属粉が舞い上がることによるロスを低減することができる。
金属粉の付着量は、混合物に含まれる金属全量に対して0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲であることが好ましい。金属粉の付着量が0.1質量%以上であることにより、還元工程S2(還元第1工程S21)においてより均一なシェルを形成することができる。金属粉の付着量の上限は特に制限はないが製錬コストを軽減できる点で2.0質量%以下であることが好ましい。
(金属酸化物粉)
金属酸化物粉としては、特に限定されないが、製錬する酸化鉱石に含まれる金属と同一の金属の酸化物であることが好ましい。具体的に、本実施の形態においては、ニッケル酸化鉱石を製錬対象の酸化鉱石として用いることから、そのニッケル酸化鉱石に含まれる、ニッケルや鉄等の酸化物の粉末を用いることが好ましい。これにより、上述した金属粉と同様に、製錬コストを低減することができる。
金属酸化物粉の形状は、特に限定されないが、金属粉と同様に球状であることが好ましい。また、金属酸化物粉の大きさは、特に限定はされないが、金属粉と同様に、直径が数μm以上数μm以下の粒子であることが好ましい。
金属酸化物粉の付着量は、混合物に含まれる金属全量に対して0.03質量%以上8.0質量%以下の範囲であることが好ましく、0.05質量%以上5.0質量%以下の範囲であることがより好ましい。金属酸化物粉の付着量が0.03質量%以上であることにより、還元工程S2(還元第1工程S21)においてより均一なシェルを形成することができる。金属粉の付着量の上限は特に制限はないが製錬コストを軽減できる点で8.0質量%以下であることが好ましい。
(金属付着方法)
塊状物の表面に金属及び/又は金属酸化物の粉末(以下、「金属粉」と総称する)を付着させる方法としては、例えば、塊状物の表面に金属粉を塗り付けて付着させる方法が挙げられ、これにより金属粉を塊状物の表面により均一に付着させることができる。また、敷き詰められた金属粉上に塊状物を転がしながら付着させるようにしてもよい。あるいは金属粉や金属酸化物を塊状物の上方からふりかけることにより付着させてもよい。
なお、塊状物は、塊状化処理工程S12により例えば50質量%程度の水分が含まれ、その表面が粘着性を有する状態となっている。表面の粘着性により金属粉が粘着し、これにより、塊状物の表面に金属粉を容易に付着させることができる。また、粉末を塊状物の表面に付着させることで、表面の粘着性を軽減させることができ、塊状物の取扱いが容易となる。
なお、乾燥処理工程S14または加熱処理工程S15を経た後に金属粉を付着させてペレット表面の付着量を調整してもよい。
(4)乾燥処理工程
乾燥処理工程S14は、塊状物を乾燥させてペレットを得る工程である。ペレット中に所定量の水分が含まれていると、急激な昇温によってペレットの内部の水分が一気に気化してペレットが膨張して破裂する可能性がある。そのため、塊状物に対して乾燥処理を施し、ペレット中の水分を除去する。乾燥処理により、例えば、形成されるペレットの固形分が70質量%程度で、水分が30質量%程度となるようにする。なお、本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法において、乾燥処理工程S14を含むことは必須の態様ではなく、塊状物の水分量が少なく、還元処理においてペレットが膨張して破裂する危険性がない場合は乾燥処理を特段行わなくてもよい。
乾燥処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、その塊状物を所定温度に保持する方法、または300℃以上400℃以下の温度の熱風を塊状物に対して吹き付けて乾燥させる方法等が挙げられる。なお、この乾燥処理時における塊状物自身の温度としては、100℃未満とすることが、ペレット内部からの水分の突沸等によるペレットの破裂を抑制できて好ましい。
また、乾燥処理は連続して一度に行ってもよいし複数回に分けて行ってもよい。乾燥処理を複数回に分けて行うことによりペレットの破裂をより効果的に抑制することができる。なお、乾燥処理を複数回に分けて行った場合において、2回目以降の乾燥温度としては、150℃以上400℃以下が好ましい。この範囲で乾燥することにより、還元反応が進むことなく乾燥することが可能となる。
なお、乾燥処理工程S14の前に塊状物の表面に金属粉を付着させた場合には、塊状物を乾燥させることにより金属粉との密着性が強固なペレットを得ることができる。そのため、塊状物の表面に金属粉を付着させた場合には、塊状物を乾燥させる乾燥処理工程S14に供することが特に好ましい。
下記表2に、乾燥処理後のペレットにおける固形分中組成(質量部)の一例を示す。なお、混合物の組成としては、これに限定されるものではない。
Figure 0007196461000002
(※固形分の組成において、上記以外の成分は残部である。)
(5)加熱処理工程
乾燥処理工程S14で得たペレットを、所定の温度に加熱する加熱処理工程S15を設けてもよい。本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法において、加熱処理工程S15を含むことは必須の態様ではないが、後述する還元工程S2での還元処理に先立ち、予めペレットに対して加熱処理(予備加熱処理)を施しておくことで、高温条件での還元処理において、ペレットに含まれるニッケル酸化鉱石や炭素質還元剤等の成分が急激に熱膨張することを抑え、ペレットの破裂をより効果的に抑制することができる。
加熱処理工程S15では、具体的に、ペレットを350℃以上600℃以下の温度に加熱する加熱処理を施す。また、好ましくは400℃以上550℃以下の温度に加熱する。
なお、加熱処理時間としては、特に限定されず、ニッケル酸化鉱石を含む塊状物の大きさに応じて適宜調整すればよいが、得られるペレットの大きさが10mm以上30mm以下程度となる通常の大きさの塊状物であれば、15分以上30分以下程度の処理時間にできる。
<2-2.還元工程>
還元工程S2は、ペレット製造工程S1を経て得られたペレットを還元炉内に装入して、所定の還元温度で加熱することによって還元処理を施す工程である。還元工程S2における還元処理により、製錬反応(還元反応)が進行して、ペレット中では、フェロニッケルメタル(以下、単に「メタル」という)と、フェロニッケルスラグ(以下、単に「スラグ」という)とが分かれて生成する。
還元処理においては、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケルは可能な限り完全にかつ優先的に還元し、一方で、ニッケル酸化鉱石に含まれる酸化鉄は一部だけ還元して、目的とする高いニッケル品位のフェロニッケルが得られる、いわゆる部分還元を施す。
還元処理では、ペレット中のスラグは熔融して液相となっているが、還元により既に分離して生成したメタルとスラグとは、混ざり合うことがなく、その後の冷却によってメタル固相とスラグ固相との別相として混在する混合物となる。この混合物の体積は、装入する混合物と比較すると、50%以上60%以下程度の体積に収縮している。
還元炉としては、特に限定されないが、単一の炉を用いても、移動炉床炉等の炉床が回転移動等して例えば還元第1工程S21、還元第2工程S22ごとに連続的に処理可能となる炉を用いてもよい。その中でも、還元炉として移動炉床炉を用いることで、連続的に還元反応を進行させ、一つの設備で反応を完結させることができる。また、各工程ごとに別々の炉を使用して操業を行った場合、炉と炉との間を移動させる際に、温度が低下してヒートロスが生じる可能性がある。また、雰囲気ガスに変化を生じさせてしまい、炉に再装入したときに即座に反応を生じさせることができないことがある。この点、移動炉床炉を使用して一つの設備で各工程での処理を行うことで、ヒートロスが低減されるとともに炉内雰囲気も的確に制御できるため、反応をより効果的に進行させることができる。
移動炉床炉としては、特に限定されず、例えば、円形状であって複数の処理領域に区分けされた回転炉床炉を用いることができる。回転炉床炉では、所定の方向に回転しながら、各領域においてそれぞれの処理を行う。この回転炉床炉では、各領域を通過する際の時間(移動時間、回転時間)を制御することで、それぞれの領域での処理温度を調整することができ、回転炉床炉が1回転する毎に混合物が製錬処理される。また、移動炉床炉としては、ローラーハースキルン等であってもよい。
さて、従来の酸化鉱石の製錬方法における還元処理では、先ず還元反応の進みやすいペレットの表面近傍で金属酸化物が還元されてメタルからなるシェルがペレットの表面に形成される。これによりペレット中に含まれる炭素質還元剤等の漏出を抑制し、ペレット内における還元反応を均一にして、得られるメタルの品位を高めることができる。
しかしながら、シェルがペレットの表面全体で形成されていない状態で還元反応が進行すると、還元処理中に炭素質還元剤等がペレットの表面から外部に漏出することがあった。そのため、ペレット中の炭素質還元剤の含有量が不均一となってしまい、高品質なメタルを効率的に製造することが困難となることがあった。
そこで、本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法では、図1のフロー図に示すように、還元工程S2において、ペレットを還元性気体に接触させることによりペレットの表面にメタルからなるシェルを形成する還元第1工程S21と、シェルが形成されたペレットを所定の温度に加熱することにより還元物を得る還元第2工程S22と、を含むことに特徴がある。
(1)還元第1工程
還元第1工程S21は、ペレットを還元性気体に接触させることによりペレットの表面にメタルからなるシェル(メタルシェル)を形成する工程である。
ペレットに対して加熱還元処理を施すことに先んじて、ペレットに還元性気体を接触させることにより、例えば図3の模式図に示すように、ペレット10の表面にメタルからなるシェル20が形成されていく。このようなシェル20が形成されることで、ペレット10中に含まれる炭素質還元剤等が加熱還元処理中にペレット10の外部に漏出することを抑制することができ、その炭素質還元剤に基づいて適切な還元反応を生じさせることが可能となり、得られるメタルの品位を高めることができる。
また、ペレット10の表面にシェル20が形成されることにより、ペレット10の強度が向上し、還元第2工程S22における加熱還元処理によりペレットが破裂することを抑制することができる。
さらに、ペレット10の表面にシェル20が形成されることで、次工程の還元第2工程22での加熱還元処理により熔融したスラグがペレットから漏出することを抑制することができる。これにより、スラグの漏出による還元炉の炉床へのペレットの融着を防止することができ、高いニッケル品位のフェロニッケルを効率的に得ることができる。
還元性気体としては、ペレットに接触させることにより酸化物をメタルに還元することのできる気体であれば特に制限されず、例えば、水素ガス(H)、一酸化炭素(CO)、硫化水素(HS)、二酸化硫黄(SO)、亜酸化窒素(NO)等を含む気体を挙げることができる。なお、還元性気体には、メタルシェルの形成を阻害しない範囲であれば酸素等の酸化性気体が含まれていてもよい。
また、還元性気体としては、後述する還元第2工程S22における還元処理後の雰囲気ガスの少なくとも一部を用いてもよい。すなわち、還元第2工程S22における還元処理後の雰囲気ガスの少なくとも一部を、還元第1工程S21における処理空間に供給して、還元性気体として用いる。還元第2工程S22における還元処理後の雰囲気ガスは、主に炭素質還元剤に由来する一酸化炭素であり、還元性ガスが多く含まれている。このため、そのような還元処理後の雰囲気ガスを排気ガスとして全て排出するのではなく、還元第1工程S21における還元性気体として用いることで、より一層にコストを低減させた製錬操業を行うことができる。
なお、還元第1工程S21における処理と還元第2工程S22における処理とを単一の還元炉にて行う場合には、還元第2工程S22における還元処理後の雰囲気ガスを、排気ガスとして還元炉から排気させずに保持し、その還元炉にペレットを装入する。これにより、ペレットを還元性気体に接触させることができる。このような態様も、「還元第2工程における還元処理後の雰囲気ガスの少なくとも一部を、還元第1工程における処理空間に供給する」との概念に含まれる。
還元性気体として還元第2工程S22における還元処理後の雰囲気ガスを用いる場合、還元処理後の雰囲気ガスは通常高温(例えば1200℃~1450℃程度)であることから、還元第1工程S21における処理空間にガスを供給する際にはガスの温度が1200℃以下となるように放冷等して調整することが好ましい。
ここで、ペレット製造工程S1(金属付着工程S13)において、表面に金属粉を付着させてペレットとした場合、そのペレットに還元性気体を接触させることで、ペレット表面により均一なメタルシェルを形成させることができる。
具体的に、図4は、金属粉30を付着させたペレット10の表面にメタルシェル20が形成されている様子を模式的に示している。このように、ペレット10の表面に金属粉を付着させておくことで、ペレット10の表面近傍の還元反応が促進されて、形成されるメタルシェルが均一化されるものと考えられる。
そして、このように均一なメタルシェルが形成されることによって、ペレット中に含まれる炭素質還元剤等の漏出を抑制し、ペレット内における還元反応を均一にして、得られるメタルの品位を高めることができる。
還元第1工程S21では、ペレット中の炭素質還元剤は反応させずに、ペレットの表面に効率的にメタルシェルを形成させるようにすることが好ましい。そのためには、ペレットを炭素質還元剤が酸化金属と反応する反応温度未満にすることが好ましく、例えば、ペレットを1200℃未満の温度に保持することが好ましい。
また、還元第1工程S21では、ペレットを900℃以上1200℃未満の温度に保持することが好ましい。ペレットを900℃以上1200℃未満の温度に保持することにより、ペレット表面をメタルに還元してメタルシェルを効果的に形成させつつ、ペレット内部の還元反応を抑制することができる。
還元第1工程S21では、ペレット製造工程S1から得られたペレットを還元炉に装入するにあたって、予めその還元炉内の炉床に還元剤(以下、「炉床還元剤」ともいう)を敷き詰めて、その敷き詰められた炉床還元剤の上にペレットを載置するようにしてもよい。この状態でペレットに還元性気体を接触させることにより、ペレットの表面がより優先的に還元されやすくなる。
また、ペレットの融着を防止する観点から炉床に例えば酸化物を主成分とする床敷材(以下、「炉床保護剤」ともいう)を敷いて、その上にペレットを載置するようにしてもよい。ただし、本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法では、還元第一工程S21にてペレットの表面に有効にメタルシェルを形成させるようにしていることから、そのメタルシェルにより熔融スラグの漏出を抑制できるため、炉床保護剤を敷かなくても、炉床へのペレットの融着を防ぐことが可能となる。
(2)還元第2工程
還元第2工程S22は、メタルシェルが表面に形成されたペレットを所定の温度に加熱することにより還元物を得る工程である。具体的には、メタルシェルが形成されたペレットを、所定の還元温度に加熱した還元炉にて加熱還元処理を施す。これにより、ペレット中の炭素質還元剤を反応させてペレット中の酸化物を還元し、メタルとスラグとを含む還元物を得る。
ここで、加熱還元処理に供されるペレットは、上述のように、還元第1工程S21における処理を経て、その表面全体にメタルシェルが形成されていることから、炭素質還元剤が外部に漏出することが抑制され、炭素質還元剤に基づいて適切な還元反応を生じさせることが可能となっており、高品質なメタルを効率的に製造することができる。
ペレット中の炭素質還元剤を反応させて酸化物に還元処理を施すためには、ペレットを炭素質還元剤が酸化物と反応する反応温度以上にすることが好ましく、例えば、ペレットを1200℃以上の温度に保持することが好ましい。
また、還元第2工程S22では、ペレットを1200℃以上1450℃以下の温度に保持することが好ましい。これにより、酸化物に還元処理を精度高く施すことができる。
なお、還元第2工程S22における還元加熱処理の処理時間をさらに例えば10分程度まで延ばしてもよい。これにより、還元反応に関与しない余剰の炭素質還元剤の炭素成分が、メタルに取り込まれて融点を低下させる。その結果、メタルは溶解して液相となる。
<2-3.分離工程>
分離工程S3は、還元工程S2より得られた還元物からメタルとスラグを分離する工程である。具体的には、容器に充填させた状態の混合物に対する還元加熱処理によって得られた、メタル相とスラグ相とを含む混在物(混合物)からメタル相を分離して回収する。
固体として得られたメタル相とスラグ相との混在物からメタル相とスラグ相とを分離する方法としては、例えば、篩い分けによる不要物の除去に加えて、比重による分離や、磁力による分離等の方法を利用することができる。
また、得られたメタル相とスラグ相は、濡れ性が悪いことから容易に分離することができ、還元工程S2における処理で得られた、大きな混在物に対して、例えば、所定の落差を設けて落下させる、あるいは篩い分けの際に所定の振動を与える等の衝撃を与えることで、その混在物からメタル相とスラグ相とを容易に分離することができる。
このようにしてメタル相とスラグ相とを分離することによって、メタルを回収する。
本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法では、ペレットを還元性気体に接触させることによってペレットの表面にシェルを形成し(還元第1工程S21)、シェルが形成されたペレットを所定の温度に加熱することにより還元物を得ていることから(還元第2工程S22)、得られるメタルの品位を高めることができ、高品質なメタルを製造することができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1、比較例1>
[ペレット製造工程]
原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石と、鉄鉱石と、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び炭素質還元剤(石炭粉、炭素含有量:85質量%、平均粒径:約200μm)を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して混合物を得た。炭素質還元剤(石炭粉)は、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケルと酸化鉄(Fe)とを過不足なく還元するのに必要な量を100質量%としたときに、試料に応じて13質量%~41質量%の割合となる量で含有させた(混合処理工程)。
次に、得られた混合物を、適宜水分を添加してパン型造粒機を使って直径15±0.5mmの球状の塊状物(資料)を35(実施例1-1~実施例1-28、比較例1-1~比較例1-7)に分けた(塊状化処理工程)。
次に、塊状物の固形分が70質量%程度、水分が30質量%程度となるように、300℃~400℃の熱風を塊状物に吹き付けて乾燥処理を施して(乾燥処理工程)、実施例1-1~実施例1-28、比較例1-1~比較例1-7のペレットを製造した。下記表3に、乾燥処理後のペレット固形分組成(炭素を除く)を示す。
Figure 0007196461000003
(※なお、その他としてバインダー、炭素質還元剤等が含まれる。)
[還元工程]
次に、製造した実施例1-1~実施例1-28、比較例1-1~比較例1-7のペレット(試料)を還元炉の炉床に装入して、還元処理を施した。なおこのとき、予め還元炉の炉床に炉床保護剤(主成分はSiOであり、その他の成分としてAl、MgO等の酸化物を少量含有する。)を敷き詰め、その上にペレット(試料)を置いた。
ここで、実施例1-1~実施例1-28では、ペレット(試料)を還元炉に装入したのちそのペレットに還元性気体を接触させた。なお、ペレット装入時の温度は500±20℃に維持されていた。そして、下記表4に示すそれぞれの温度、時間で還元処理を施した(還元第1工程)。これにより、ペレットの表面にメタルシェルを形成させた。
次に、メタルシェルが形成されたペレットをバーナー燃焼雰囲気下(酸素を約3%含有する雰囲気)に装入し、下記表4に示すそれぞれの温度、時間で加熱還元処理を施した(還元第2工程)。加熱還元処理後は、窒素雰囲気中で速やかに室温まで冷却した。これによりメタルとスラグとを含む還元物を得た。
一方、比較例1-1~比較例1-7では、ペレットに還元性気体を接触させる処理を行わずに、還元炉にて加熱還元処理を施した。
[分離工程]
温度保持工程を経た還元物からメタルとスラグを分離した。具体的には、還元物を湿式処理よる粉砕後、磁力選別によってメタルを回収した。
≪評価≫
ニッケルメタル化率(Niメタル化率)及びメタル中ニッケル含有率(メタル中Ni含有率)をそれぞれ算出した。具体的には、還元工程後の還元物及び分離工程後のメタルに含まれるニッケル又は鉄の含有量をICP発光分光分析器(株式会社島津製作所 S-8100型)により求めて、下記(1)式~(2)式を用いて算出した。下記表4に、分析結果から算出した値を併せて示す。
Niメタル化率=メタル中のNiの質量÷(還元物中の全てのNiの質量)×100(%) ・・・(1)式
メタル中Ni含有率=メタル中のNiの質量÷(メタル中のNiとFeの合計質量)×100(%) ・・・(2)式
下記表4に、それぞれのペレット試料における、ペレット中に含まれる石炭粉(炭素質還元剤)の混合量(化学当量の合計値を100質量%としたときの割合)を示す。また、ICP分析により測定された測定結果を示す。
Figure 0007196461000004
表4の結果からわかるように、加熱還元処理を施すことに先んじてペレットに還元性気体を接触させた実施例では、Niメタル化率及びメタル中Ni含有率がいずれも高くなった。このことは、均一なメタルシェルが形成されたことにより、ペレット中に含まれる炭素質還元剤等がペレットの外部に漏出することを抑制して、還元反応を適切に進行させることができたためと考えられる。
<実施例2>
[ペレット製造工程]
実施例2-1~実施例2-46では、実施例1-1~実施例1-28と同様にして混合処理工程にて混合物を得たのち、得られた混合物を適宜水分を添加してパン型造粒機を使って直径17±0.5mmの球状の塊状物(資料)を46(実施例2-1~実施例2-46)に分けた(塊状化処理工程)。
次に、実施例2-1~実施例2-46では、金属酸化物粉である酸化ニッケル(NiO)又は酸化鉄(Fe)の粉末を敷き詰めた容器の上に、得られた球状の塊状物を転がすことによって、金属酸化物をその塊状物の表面に均一に付着させた(金属付着工程)。金属酸化物粉の付着量は、形成されるペレットに含まれるニッケル及び鉄の合計量を100質量%としたときに、試料に応じて0.05質量%~7.7質量%の割合となる量とした。なお、金属酸化物粉の一部は、乾燥処理工程後のペレット製造後に上方からふりかけるようにして付着させて付着量を調整した。
次に、固形分が70質量%程度、水分が30質量%程度となるように、300℃~400℃の熱風を塊状物に吹き付けて乾燥処理を施して(乾燥処理工程)、実施例2-1~実施例2-46のペレットを製造した。
[還元工程]
実施例2-1~実施例2-46のペレットを還元炉の炉床に装入して、還元処理を施した。なおこのとき、実施例2-1~実施例2-42については、予め還元炉の炉床に、炉床保護剤(主成分はSiOであり、その他の成分としてAl、MgO等の酸化物を少量含有する。)を敷き詰め、その上にペレット(試料)を置いた。
実施例2-1~実施例2-46のペレット(試料)を一酸化炭素(還元性気体)で満たされた還元炉に装入して、ペレットを一酸化炭素(還元性気体)に接触させた。下記表5~7に示すそれぞれの温度、時間で還元処理を施した(還元第1工程)。これにより、ペレットの表面にシェルが形成された。
次に、実施例2-1~実施例2-46のシェルが形成されたペレットをバーナー燃焼雰囲気下(酸素を約3%含有する雰囲気)に装入し、下記表5~7に示すそれぞれの温度、時間で還元処理を施した(還元第2工程)。還元処理後は、窒素雰囲気中で速やかに室温まで冷却した。これによりメタルとスラグとを含む還元物を得た。
[分離工程]
温度保持工程を経た還元物からメタルとスラグを分離した。具体的には、還元物を湿式処理よる粉砕後、磁力選別によってメタルを回収した。
≪評価≫
温度保持工程を経た還元物についてニッケルメタル化率、及び分離工程を経たメタルについてメタル中のニッケル含有率をそれぞれICP発光分光分析器(株式会社島津製作所 S-8100型))により分析して算出した。下記表5~7に、分析結果から算出した値を併せて示す。なお、ニッケルメタル化率は上記(1)式、メタル中ニッケル含有率は上記(2)式により求めた。
Figure 0007196461000005
Figure 0007196461000006
Figure 0007196461000007
表5~7の結果からわかるように、ペレットの表面に金属酸化物の粉末を付着させた実施例2のうち例えば実施例2-40~2-42は、Niメタル化率及びメタル中Ni含有率が実施例1-1~1-28と比べてさらに高くなるものもあった。このことは、ペレット表面に付着させた金属酸化物の粉末により、より均一なメタルシェルが形成されて、ペレット中に含まれる炭素質還元剤等がペレットの外部に漏出することをより効果的に抑制することができたためと考えられる。
なお、予め還元炉の炉床に炉床保護剤を敷き詰めた実施例2-1~2-42と、炉床保護剤を敷き詰めていない実施例2-43~2-46とで、いずれも高いNiメタル化率及びメタル中Ni含有率の結果が得られた。これは、ペレットの表面に有効にメタルシェルが形成されたことにより、熔融スラグがペレットから漏出することを抑制できたためであると考えられる。
<実施例3>
[ペレット製造工程]
実施例3-1~3-14では、実施例2-1~2-46の金属付着工程において金属酸化物粉の代わりに金属粉としてニッケル(Ni)又は鉄(Fe)の粉末を使用した以外は、同様にしてペレットを製造し、メタルとスラグとを含む還元物を得て、メタルを回収した。
≪評価≫
温度保持工程を経た還元物についてNiメタル化率、及び分離工程を経たメタルについてメタル中のNi含有率をそれぞれICP発光分光分析器(株式会社島津製作所 S-8100型)により分析して算出した。下記表8に、分析結果から算出した値を併せて示す。なお、Niメタル化率は上記(1)式、メタル中Ni含有率は上記(2)式により求めた。
Figure 0007196461000008
表8の結果からわかるように、ペレットの表面に金属の粉末を付着させた実施例3のうち例えば実施例3-12~3-14は、Niメタル化率及びメタル中Ni含有率が実施例1-1~1-28と比べてさらに高くなるものもあった。このことは、ペレット表面に付着させた金属の粉末により、より均一なメタルシェルが形成されて、ペレット中に含まれる炭素質還元剤等がペレットの外部に漏出することをより効果的に抑制することができたためと考えられる。
10 ペレット
20、20a シェル
30 粉末(金属又は金属酸化物)
40 炉床

Claims (7)

  1. ニッケル酸化鉱石に還元処理を施してメタルとスラグとを含む還元物を得る製錬方法であって、
    ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物によりペレットを形成するペレット製造工程と、
    前記ペレットを第1の処理領域に装入し、該第1の処理領域内に還元性気体を供給して、該ペレットに該還元性気体を接触させることにより該ペレットの表面にメタルからなるシェルを形成する還元第1工程と、
    シェルが形成されたペレットを前記第1の処理領域とは異なる第2の処理領域に装入し、該ペレットを所定の温度に加熱することにより還元物を得る還元第2工程と、
    を含
    前記還元第1工程では、前記ペレットを900℃以上1200℃未満の温度に保持し、
    前記還元第2工程では、前記ペレットを1200℃以上1450℃以下の温度に保持する
    ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  2. 前記ペレット製造工程では、
    前記混合物の表面にニッケル又は鉄のうち少なくとも1つを含む金属及び/又はニッケル又は鉄のうち少なくとも1つを含む金属酸化物の粉末を付着させてペレットを形成する
    請求項1に記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  3. 前記ペレット製造工程では、
    前記混合物の表面にニッケル又は鉄のうち少なくとも1つを含む金属の粉末を付着させてペレットを形成し、
    前記金属の付着量が前記混合物に含まれる金属全量に対して0.1質量%以上2.0質量%以下である
    請求項2に記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  4. 前記ペレット製造工程では、
    前記混合物の表面にニッケル又は鉄のうち少なくとも1つを含む金属酸化物の粉末を付着させてペレットを形成し、
    前記金属酸化物の付着量が前記混合物に含まれる金属全量に対して0.03質量%以上8.0質量%以下である
    請求項2に記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  5. 前記ペレット製造工程では、
    前記混合物を350℃以上600℃以下で乾燥させてペレットを形成する
    請求項1から4のいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  6. 前記還元第2工程における還元処理後の雰囲気ガスの少なくとも一部を、前記還元第1工程における第1の処理領域に供給し、前記ペレットに接触させる前記還元性気体として用いる
    請求項1から5のいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
  7. 前記ペレットに含まれる前記炭素質還元剤の含有量が、該ペレットに含まれる酸化鉱石を還元するのに必要な量に対して12.0質量%以上35.0%質量以下の割合である
    請求項1からのいずれかに記載のニッケル酸化鉱石の製錬方法。
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