以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエンジン制御装置を適用したスクータ型自動二輪車1の側面図である。車体前部と車体後部とは低床フロア部104を介して連結されている。車体フレームは、概ねダウンチューブ106とメインパイプ107とから構成されている。メインパイプ107の上方には、シート108が配置されている。
ハンドル111は、ヘッドパイプ105に軸支されて上方に延ばされており、一方の下方側には、前輪WFを回転自在に軸支するフロントフォーク112が取り付けられている。ハンドル111の上部には、計器盤を兼ねたハンドルカバー113が取り付けられている。また、ヘッドパイプ105の前方には、エンジン制御装置としてのECU300が配設されている。
ダウンチューブ106の後端で、メインパイプ107の立ち上がり部には、ブラケット115が突設されている。ブラケット115には、スイングユニット102のハンガーブラケット118がリンク部材116を介して揺動自在に支持されている。
スイングユニット102の前部には、4サイクル単気筒のエンジンEが配設されている。エンジンEの後方には無段変速機110が配設されており、減速機構109の出力軸には後輪WRが軸支されている。減速機構109の上端とメインパイプ107の屈曲部との間には、リヤショックユニット103が介装されている。スイングユニット102の上方には、エンジンEから延出した吸気管22(図3にて吸気通路22)に接続される燃料噴射装置のスロットルボディ120およびエアクリーナ21が配設されている。
図2は、図1のA−A線断面図である。スイングユニット102は、車幅方向右側の右ケース75および車幅方向左側の左ケース76なるクランクケース74を有する。クランク軸51は、クランクケース74に固定された軸受53,54により回転自在に支持されている。クランク軸51には、クランクピン52を介してコンロッド73が連結されている。
左ケース76は変速室ケースを兼ねており、クランク軸51の左端部には、可動側プーリ半体60と固定側プーリ半体61とからなるベルト駆動プーリが取り付けられている。固定側プーリ半体61は、クランク軸51の左端部にナット77によって締結されている。また、可動側プーリ半体60は、クランク軸51にスプライン嵌合されて軸方向に摺動可能とされる。両プーリ半体60,61の間には、Vベルト62が巻き掛けられている。
可動側プーリ半体60の右側では、ランププレート57がクランク軸51に固定されている。ランププレート57の外周端部に取り付けられたスライドピース58は、可動側プーリ半体60の外周端で軸方向に形成されたランププレート摺動ボス部59に係合されている。また、ランププレート57の外周部には、径方向外側に向かうにつれて可動側プーリ半体60寄りに傾斜するテーパ面が形成されており、このテーパ面と可動側プーリ半体60との間に複数のウェイトローラ63が収容されている。
クランク軸51の回転速度が増加すると、遠心力によってウェイトローラ63が径方向外側に移動する。これにより、可動側プーリ半体60が図示左方に移動して固定側プーリ半体61に接近し、その結果、両プーリ半体60,61間に挟まれたVベルト62が径方向外側に移動してその巻き掛け径が大きくなる。スイングユニット102の後方側には、両プーリ半体60,61に対応してVベルト62の巻き掛け径が可変する被動プーリ(不図示)が設けられている。エンジンEの駆動力は、上記ベルト伝達機構によって自動調整され、不図示の遠心クラッチおよび減速機構109(図1参照)を介して後輪WRに伝達される。
右ケース75の内部には、スタータモータとACジェネレータとを組み合わせたACGスタータモータ70が配設されている。ACGスタータモータ70は、クランク軸51の先端テーパ部に取付ボルト125で固定されたアウタロータ71と、該アウタロータ71の内側に配設されて右ケース75に取付ボルト121で固定されるステータ72とから構成されている。アウタロータ71に対して取付ボルト67で固定される送風ファン65の図示右方側には、ラジエータ68および複数のスリットが形成されたカバー部材69が取り付けられている。
クランク軸51には、ACGスタータモータ70と軸受54との間に、不図示のカムシャフトを駆動するカムチェーンが巻き掛けられるスプロケット55が固定されている。また、スプロケット55は、オイルを循環させるポンプ(不図示)に動力を伝達するギヤ56と一体的に形成されている。
図3は、一実施形態に係るエンジン制御装置としてのECU300によって制御されるエンジンEの構成を、主に吸気装置としての構成に着目して示す図である。
図3において、このエンジンEは、図1及び図2で説明した通り、車両たとえば自動二輪車1に搭載されるものであり、エンジン本体10のシリンダブロック11およびシリンダヘッド12間には、シリンダブロック11に摺動可能に嵌合されるピストン13の頂部を臨ませる燃焼室14が形成される。前記シリンダヘッド12には、該シリンダヘッド12に開閉作動可能に配設された吸気弁15で前記燃焼室14への連通・遮断が切換られる吸気ポート17が設けられており、上流端にエアクリーナ21を有するとともにエアクリーナ21および前記吸気ポート17間を結ぶ吸気通路22を有する吸気装置19が前記シリンダヘッド12に接続される。また前記吸気通路22の途中にはスロットル弁23が開閉可能に介設されており、該スロットル弁23を迂回する補助吸気通路24が前記吸気通路22に接続され、補助吸気通路24には補助空気弁25が介設される。而して補助空気弁25は、ノーマルクローズ(常時閉)の弁、すなわち、非通電状態では閉弁しており、通電によって開弁するソレノイド弁である。また前記シリンダヘッド12に開閉作動可能に配設された排気弁16で前記燃焼室14への連通・遮断が切換られる排気ポート18が前記シリンダヘッド12に設けられ、この排気ポート18に通じる排気通路26を有する排気装置20が前記シリンダヘッド12に接続される。
前記吸気装置19の下流端には前記吸気ポート17に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁27が付設され、前記シリンダヘッド12には前記燃焼室14に先端部を臨ませる点火プラグ28が取付けられ、該点火プラグ28には、点火時期に高電圧を印加するための点火コイル/イグナイタ29が接続される。
前記燃料噴射弁27の燃料噴射時期および燃料噴射量と、前記点火コイル/イグナイタ29による点火時期はECU300によって制御されるものであり、このECU300には、前記ピストン13に連接されたクランク軸51の回転数すなわちエンジン回転数NEを検出する回転数検出部31の検出値と、エンジン温度を代表する指標たとえばエンジンオイルの温度を検出する温度検出部32の検出値と、スロットル操作またはアクセル踏込み状態を検知すべくスロットル弁23の回動量を検出するスロットル検知部38の検出値とが入力されている。温度検出部32は、シリンダブロック11に設けられた冷却ジャケット34の冷却水温TWを検出してもよい。
図4は、一実施形態に係るECU300のブロック図であり、ここでは図2で前述した燃料噴射に関する制御系に加えてさらに、本発明による補助空気弁25の開閉の制御系と、当該開閉制御が連動することとなるACGスタータモータ70の制御系と、が主に示されている。前記と同一符号は同一または同等部分を示す。
図4にて、ECU300は、バッテリ80が接続されると共に、直列接続された2つのパワーFETを3組並列接続して構成されACGスタータモータ70の三相交流を全波整流する全波整流ブリッジ回路81と、全波整流ブリッジ回路81の出力を予定のレギュレート電圧(レギュレータ作動電圧:例えば、14.5V)に制限するレギュレータ82と、ステージ判定部83(後述)と、エンジン始動状況判定部84(後述)と、エンジン始動時にクランク軸51を所定の位置まで逆転させた後にエンジン制御を行うスイングバック制御部91と、アイドルストップ開始時にクランク軸51を所定の位置まで逆転させる巻き戻し制御を行った後にエンジン制御を行うアイドルストップ制御部92と、スイングバック制御部91及びアイドルストップ制御部92の各制御のもとで全波整流ブリッジ回路81を駆動制御する駆動制御部93と、エンジン制御時に補助空気弁25の開閉制御を行う開閉制御部30と、を含む。
また、図4にてアイドルストップ制御部92に接続して示されるように、ECU300はさらに、アイドルストップ制御部92が各制御を行うために必要となる制御を担う構成として、アイドルストップ状態からエンジンを再始動する際に噴射・点火ステージを設定する再始動時モータステージ変換部94と、アイドルストップ開始時にクランク軸位置としての720度モータステージを記憶・保持する720度モータステージ記憶部95と、噴射・点火ステージの設定に使用される噴射・点火ステージ対応表96とを含む。
ECU300には、当該各センサ等からの信号等を受け取るための構成として、モータ角度センサ39、回転数検出部31、温度検出部32及びスロットル検知部38が接続されている。ECU300にはまた、当該各装置等を制御するための構成として、点火コイル/イグナイタ29、燃料噴射弁27及び補助空気弁25が接続されている。
さらに、ECU300には、当該各スイッチ又はセンサ等から乗員による操作等に基づいた信号等を受け取るための構成として、スタータスイッチ40、アイドルストップ許可スイッチ41、シートスイッチ42及び車速センサ43が接続されている。なお、上記の各部品には、不図示のメインヒュ−ズおよびメインスイッチを介して、バッテリ80から電力が供給される。
以下、図4のように当該構成されるECU300の各部の制御の詳細を説明する。
ステージ判定部83は、モータ角度センサ39及び回転数検出部31(これらはクランク位置検出手段に該当する)の出力信号に基づいて、クランク軸51の2回転をステージ#0〜71の72ステージ(720度モータステージ)に分割すると共に、現在のステージを判定する。なお、ステージの判定は、エンジンの始動後、PBセンサの出力値等に基づいて行程判別(クランク軸2回転の表裏判定)が完了するまでの間は、クランク軸51の1回転をステージ♯0〜35の36ステージに分けた360度モータステージによって行われる。点火パルサ(点火コイル/イグナイタ29)において構成される回転数検出部31は、ACGスタータモータ70のモータ角度センサ39と一体に設けられ、クランク軸51に取り付けられたACGスタータモータ70の回転角度を検出している。
本実施形態に係るECU(エンジン制御装置)300は、スイングバック制御部91によって、エンジンEが停止している状態からスタータスイッチ40を操作してエンジンEを始動する際に、一度所定位置まで逆転させる、換言すれば、所定位置までスイングバックさせてから正転を開始することで、圧縮上死点までの助走期間を長くして、最初に圧縮上死点を乗り越える際のクランク軸51の回転速度を高める「エンジン始動時スイングバック制御」の実行が可能である。このエンジン始動時スイングバック制御によれば、スタータスイッチ40によってエンジンを始動する場合の始動性を高めることが可能となる。
また、ECU300は、アイドルストップ制御部92によって、信号待ち等の停車時に所定条件を満たすとエンジンを一旦停止させるアイドルストップ制御を実行することができる。アイドルストップを開始する所定条件は、例えば、アイドルストップ許可スイッチ41がオンで、かつシートスイッチ42で乗員の着座が検知され、かつ車速センサ43で検知される車速が所定値(例えば、5km/h)以下で、かつ点火パルサとしての回転数検出部31で検知されるエンジン回転数が所定値(例えば、2000rpm)以下で、かつスロットル検知部38で検知されるスロットル開度が所定値(例えば、5度)以下の状態において所定時間が経過した場合等とされる。そして、アイドルストップ中にスロットル開度が所定値以上になると、エンジンEを再始動するように構成されている。
さらに、本実施形態に係るECU300は、アイドルストップ制御部92によって、上記したアイドルストップ条件が満たされてエンジンEを一旦停止させる際に、クランク軸51が停止した位置から所定位置まで逆転させる、換言すれば、所定位置まで巻き戻すことによって圧縮上死点までの助走期間を長くして、再始動時の始動性を高める「アイドルストップ開始時巻き戻し制御」を実行可能に構成されている。なお、この巻き戻し制御は、メインスイッチ(不図示)をオフにしてエンジンEが停止する場合には実行されない。
エンジン始動状況判定部84は、エンジンEの始動が、スタータスイッチ40の操作によって行われる、すなわち、完全停止状態から始動される状況であるか、または、アイドルストップ状態からスロットル操作によって再始動される状況であるかを判定する。そして、完全停止状態から始動する状況であると判定されると、スイングバック制御部91によって、スイングバック制御でACGスタータモータ70を逆転させる際のデューティ比が設定される。
一方、エンジン始動状況判定部84によって、アイドルストップ状態から再始動される状況であると判定されると、アイドルストップ制御部92によって、巻き戻し制御のためにACGスタータモータ70を逆転させる際のデューティ比が設定される。なお、アイドルストップ制御部92は、各種の所定時間を検知するタイマ機能を有している。
そして、駆動制御部93は、スイングバック制御時には、スイングバック制御部91によって設定されたデューティ比の駆動パルスを全波整流ブリッジ回路81の各パワーFETへ供給し、一方、アイドルストップ制御時の巻き戻し制御時には、アイドルストップ制御部92によって設定されたデューティ比の駆動パルスを全波整流ブリッジ回路81の各パワーFETへ供給する。本実施形態に係るエンジン制御装置(ECU)300は、このスイングバック制御時のデューティ比と、巻き戻し制御時のデューティ比とを異ならせている。具体的には、スイングバック制御時の逆転デューティ比より巻き戻し制御時の逆転デューティ比が小さくなるように設定されている(例えば、スイングバック制御時:100%、巻き戻し制御時:45%)。
以下、図5ないし8を参照して、このスイングバック制御およびアイドルストップ制御を詳細に説明してから、本発明の開閉制御部30の説明を行うものとする。開閉制御部30による補助空気弁25の開閉制御は、当該スイングバック制御及びアイドル制御を伴ってのエンジン制御に連動する形で行われるものである。
図5は、エンジン始動時のスイングバック制御の流れを示すタイムチャートである。この図では、上から、モータ回転数、モータ回転状態、スタータスイッチ作動状態をそれぞれ示している。エンジンEが完全停止している状態(アイドルストップ状態からの再始動ではなく)から、時刻t10でスタータスイッチ40がオンにされると、スイングバック制御部91が、デューティ比100%でACGスタータモータ70の逆転駆動を開始する。
次に、時刻t11では、デューティ比100%での正転駆動が開始される。そして、時刻t13では、エンジンEが始動してACGスタータモータ70の回転速度が通電制御による駆動速度より高くなり、これに伴って通電が停止される。時刻t14では、エンジンEの始動を確認した乗員により、スタータスイッチ40がオフにされる。なお、モータステージは、時刻t12から360度モータステージの検知が開始され、その後、時刻t15において行程判別が完了した時点で720度モータステージが確定する。
図6は、スイングバック制御部91によって実行される、エンジン始動時スイングバック制御の手順を示すフローチャートである。ステップS100では、エンジンEが停止中か否かが判定される。ステップS100で肯定判定されると、ステップS101に進んでアイドルストップ中であるか否かが判定される。ステップS101で肯定判定されると、ステップS102に進んで、スイングバック制御用逆転モータデューティ比(100%)が決定される。なお、ステップS100,101で否定判定されると、それぞれの判定に戻る。続くステップS103では、スタータスイッチ35がオンにされたか否かが判定され、肯定判定されるとステップS104に進み、否定判定されるとステップS103の判定に戻る。
ステップS104では、デューティ比100%でACGスタータモータの逆転駆動が開始される。続くステップS105では、圧縮上死点後の所定位置を検出したか否かが判定される。この所定位置は、例えば、圧縮上死点後30度の位置に設定することができる。ステップS105で肯定判定されると、ステップS106に進んで、デューティ比100%でACGスタータモータ70の正転駆動が開始される。なお、ステップS105で否定判定されると、ステップS104に戻る。
次に、ステップS107では、360度モータステージの予め設定されたステージでクランク2回転毎に燃料を噴射する斉時噴射と、360度モータステージの予め設定されたステージでクランク1回転毎に点火を行う360度点火が開始される。ステップS108では、クランク2回転におけるPBセンサ(不図示)の出力値等を用いることによりエンジンEの行程判別(クランク720度に対応するエンジンの吸気・排気・圧縮・燃焼の各行程の判別)が完了したか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS109で720度モータステージが確定すると共に、ステップS110で噴射・点火ステージが確定する。そして、ステップS111では、720度に1回(クランク2回転に1回)の点火制御および噴射制御が開始され、一連の制御を終了する。なお、ステップS108で否定判定されると、ステップS107に戻る。
上記したように、本実施形態に係るエンジン制御装置では、スイングバック制御時に逆転駆動のデューティ比を100%に設定することで、正転駆動の準備としての逆転駆動を可能な限り短い時間で完了させるように構成されている。これに対し、アイドルストップ開始時の巻き戻しにおいては、逆転駆動後に連続的に正転駆動させることはないので、例えば、デューティ比45%等の遅い速度で逆転させても問題がない。そして、以下で説明するアイドルストップ開始時の巻き戻し制御によれば、巻き戻し時の逆転速度を低下させることで、圧縮上死点から正転方向に戻りすぎないようにすると共に、逆転時に受ける圧縮反力の影響を小さくして、再始動に最適な位置にクランク軸51を速やかに停止させることが可能となる。なお、予め設定されたそれぞれのデューティ比は、エンジン水温等に応じて補正されるように構成してもよい。
図7は、アイドルストップ制御部92によって実行される、アイドルストップ開始時の巻き戻し制御の流れを示すタイムチャートである。この図では、上から、モータ回転数およびスロットル開度、モータ回転状態を示している。時刻t20では、前記したようなアイドルストップ条件が満たされて、アイドルストップ制御が開始される。その後、時刻t21において、クランク軸51が停止したことが検知されると、デューティ比45%での巻き戻し制御が開始される。
時刻t22では、クランク軸51が逆転方向で圧縮上死点に近づいて、ピストンの圧縮反力が高まることにより、デューティ比45%での逆転通電が継続された状態でピストンが押し戻されてクランク軸51が正転に転じる、換言すれば、クランク軸51の揺り戻しが開始される。アイドルストップ制御部92は、モータ角度センサ39の出力信号に基づいて、ACGスタータモータ70が正転を開始したことを検知すると、クランク軸が圧縮上死点後の所定位置に到達したと判定して、ACGスタータモータ70の通電を停止すると共に、タイマ機能により揺り戻し待ち所定時間の計測を開始する。
次に、時刻t23〜t24の間では、排気バルブの駆動抵抗によって少しだけ逆転し、時刻t24において停止する。そして、時刻t25では、タイマ機能によって計測していた時間が揺り戻し待ち所定時間に到達することにより、アイドルストップ状態へ移行する。
その後、時刻t26では、乗員のスロットル操作によりスロットル開度が所定値以上となったことが検知され、エンジンを再始動するためにデューティ比100%での正転駆動が開始される。そして、時刻t27において、エンジンが始動することでその回転速度がACGスタータモータ70の駆動回転数を超えて、再始動が完了する。
なお、上記した圧縮上死点後の所定位置は、クランク軸51の2回転を72個のモータステージで等分した720度モータステージの通過速度の変化(減速度)に基づいて検知することもできる。ステージの通過速度は、各ステージの通過時間の計測によって可能となる。なお、720度モータステージの詳細は後述するが、前記したスイングバック制御における、逆転駆動中の圧縮上死点後の所定位置の検出も、720度モータステージが所定のステージに到達した場合や、720度モータステージの通過速度の変化に基づいて行うことが可能である。
図8は、アイドルストップ開始時巻き戻し制御の手順を示すフローチャートである。ステップS200では、アイドルストップ条件が成立したか否かが判定され、肯定判定されるとステップS201に進んでエンジンEの停止処理が実行される。なお、ステップS200で否定判定されると、ステップS200の判定に戻る。
次に、ステップS202では、モータ角度センサ39の出力信号に基づいて、クランク軸51の回転が停止したか否かが判定される。ステップS202で否定判定されるとステップS202の判定に戻り、一方、肯定判定されると、ステップS203に進んで、巻き戻し制御用モータデューティ比(45%)が決定される。続くステップS204では、デューティ比45%での逆転駆動が開始され、ステップS205では、モータ角度センサ39により正転が検出されたか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS206に進む。ステップS205で否定判定されると、ステップS204に戻る。クランク軸51の正転が検知されたことで移行するステップS206では、モータデューティ比をゼロにする、すなわち、ACGスタータモータ70への通電を停止し、続くステップS207において、タイマ機能による揺り戻し待ち所定時間(例えば、2秒)の計測が開始される。そして、ステップS208では、揺り戻し待ち所定時間が経過したか否かが判定され、否定判定されるとステップS208の判定に戻り、一方、肯定判定されると、ステップS209に進んでアイドルストップ状態へ移行し、一連の制御を終了する。
図9は、アイドルストップ開始時における、燃料噴射装置としての燃料噴射弁27および点火装置としての点火コイル/イグナイタ29の駆動状態を示すグラフである。この図では、上から、PBセンサによる吸気負圧の計測値、点火装置および燃料噴射装置の駆動パルスを示している。また、図10は、アイドルストップ開始時のエンジン停止制御の手順を示すフローチャートである。
本実施形態に係るエンジン制御装置では、アイドルストップの開始時に、燃料噴射のみを停止し、点火動作はそのまま継続するように構成されている。図10を参照して、ステップS300では、アイドルストップ条件が成立したか否かが判定され、肯定判定されるとステップS301に進む。なお、ステップS300で否定判定されると、そのまま制御を終了する。ステップS301では、燃料噴射装置による燃料噴射が停止されると共に、点火装置による点火はそのまま継続され、ステップS302でエンジンが停止(クランク軸回転が停止)すると、一連の制御を終了する。上記した構成によれば、アイドルストップの開始時に、万一、エンジンEの燃焼室等に未燃ガスが残っていた場合でも、クランク軸51が停止するまでの間にこれを完全に燃焼させることが可能となる。
ところで、エンジン始動時の燃料噴射装置および点火装置の駆動は、エンジンの行程判別が完了して720度モータステージが確定するまでの間は、エンジン回転数が所定値以上になると1回噴射を行う斉時噴射を行った後、所定のクランク角度毎のタイミングで噴射を行うと共に、クランク1回転(360度)に1回の固定点火を行うのが通常である。したがって、アイドルストップによるエンジン停止状態からエンジンを再始動する場合でも、行程判別が完了するまでの間は、斉時噴射および所定のクランク角度毎のタイミングでの噴射と、360度点火とが行われていた。
これに対し、本実施形態に係るエンジン制御装置では、アイドルストップを開始する前に確定していた720度モータステージをアイドルストップ中も記憶・保持しておき、エンジンの再始動時に行程判別を行うことなく、720度モータステージに基づく燃料噴射および点火制御を最初から実行することが可能に構成されている。以下、図11ないし13を参照して、これを詳細に説明する。
図11は、クランク軸51の回転角度と720度モータステージ等との関係を示すタイミングチャートである。この図では、上(最上段を除く)から、4サイクルエンジンの4行程(圧縮、燃焼、排気、吸気)、クランク軸回転角度、クランクパルス、モータ角度センサ39の出力信号(W相、U相、V相)、燃料噴射装置の駆動タイミングの基準となる噴射(FI)ステージ、点火装置の駆動タイミングの基準となる点火ステージ(IG)、720度モータステージをそれぞれ示している。さらに、これらに対応させて、最下段では図14を参照して詳述するスイングバック行程(本発明の一実施形態に係る開弁制御が連動して実施されるもの)を示している。最上段は当該開弁制御に従って始動ソレノイド(補助空気弁25)が開状態となることを示すと共に、後述する閉弁制御によりその後に始動ソレノイド(補助空気弁25)が閉状態となることを示している。なお、図11の最上段における始動ソレノイド(補助空気弁25)が閉状態となる実際の時刻(FIステージが「23」となっている時刻)は、図11の最下段におけるスイングバック行程の逆転後の正転の直後の当該FIステージが「23」となる時刻よりも後のものであってよい。すなわち、図11はモータステージ等との関係においてスイングバック行程と始動ソレノイドが「閉」となる制御とをそれぞれ個別に模式的に示すものであり、これらの時刻が同じものであることを示すものではない。換言すれば、図11の最下段に示すスイングバック行程の逆転を経たうえで正転を開始してから何サイクルかを経て温度などの条件が満たされた後に、図11の最上段に示す始動ソレノイドを閉じる制御が実行されるものである。
720度モータステージは、1ステージを10度として、クランク軸2回転分(720度)の期間を、♯0〜71の計72ステージに割り当てたものである。また、モータ角度センサ39は、W相、U相、V相が、それぞれ30度幅のパルス信号を30度間隔で出力するように構成されており、各相を10度ずつずらして配置することにより、クランク軸51の回転角度を10度毎に検知可能とするものであり、その基準位置はクランクパルス信号によって定められる。クランクパルス信号を検知するためにクランク軸51に取り付けられるパルサロータは、周方向に22.5度の検知幅を有する4個の短リラクタと、周方向に82.5度の検知幅を有する1個の長リラクタとを、37.5度間隔で配置した形状とされている。長リラクタの中央の位置で信号を出力するように構成されているW相の出力が、クランク回転角度を導出する基準となる。
そして、クランクパルス信号およびロータセンサ信号により360度モータステージが確定し、表側の吸気行程では吸気負圧によってPB値(PBセンサの出力値)が小さくなり、360度回転後の裏側の燃焼行程では吸気が行われずPB値が高くなることに基づいた表裏判定が行われ、これにより、クランク軸の2回転の表裏判定が確定すると、720度モータステージが確定する。例えば、前記した圧縮上死点前30度の位置は、720度モータステージが♯69であることにより検知できる。なお、点火は、IGステージが9〜11の間で行われ、燃料噴射は、FIステージ12〜17の間で行われる。
図12は、噴射・点火ステージ変換制御の手順を示すフローチャートである。ステップS400では、アイドルストップ中か否かが判定され、肯定判定されるとステップS401に進む。ステップS401では、スロットルが所定開度以上開かれたか否かが判定され、肯定判定されると、ステップS402に進む。なお、ステップS400,401で否定判定されると、それぞれの判定に戻る。
ステップS402では、エンジンを再始動するためにACGスタータモータ70が正転駆動される。そして、ステップS403では、720度モータステージ記憶部95に記憶されているアイドルストップ開始時の720度モータステージに基づいて、図13に示す噴射・点火ステージ対応表96を参照して、FIステージおよびIGステージが導出される。例えば、720度モータステージが♯2〜4であった場合には、FIステージが♯4、IGステージが♯12にそれぞれ変換されることとなる。なお、アイドルストップ中は、ECU300への通電が継続されるので、720度モータステージ記憶部95は、電源のオフにより記憶内容がリセットされるRAMで構成することができる。
ステップS404では、ステップS403で判明したFIステージおよびIGステージと、予め定められた燃料噴射マップおよび点火マップとに応じた燃料噴射装置および点火装置の駆動が開始される。なお、燃料噴射マップは、エンジン回転数Ne、スロットル開度θ、PBセンサによる吸気圧値等に基づいて燃料噴射時間を決定するマップで構成することができる。そして、ステップS405では、エンジン回転数(モータ回転数)Neが始動完了回転数(例えば、1000rpm)以上に達したか否かが判定され、否定判定されるとステップS405の判定に戻り、一方、肯定判定されるとステップS406に進んでACGスタータモータ70の駆動を停止し、一連の制御を終了する。
上記した噴射・点火ステージ変換制御によれば、アイドルストップからの再始動時にエンジンの行程判別を行う必要がなく、720度モータステージに基づいた最適な燃料噴射および点火制御を最初から実行できるので、再始動時の始動性を向上させることができる。また、斉時噴射を行わないので、燃費を向上させることが可能となる。
以上、図5ないし図12を参照して、エンジン始動に際してのスイングバック制御部91及びアイドルストップ制御部92の詳細を説明した。
開閉制御部30は、スイングバック制御部91及びアイドルストップ制御部92のそれぞれの制御によるエンジン始動時において、吸気装置としてのエンジンEの吸気行程以外の工程(すなわち、燃焼行程、排気行程又は圧縮行程)で補助空気弁25に対して通電を行うことで閉状態から開状態へと切り替えるように制御するものである。当該制御することにより、補助空気弁25を構成するソレノイドの体格が小さい場合であっても、吸気行程の負圧の影響を避けて補助空気弁25を適切に開弁することが可能となる。
開閉制御部30はさらに、当該開弁制御を行った後、エンジンEの暖機判定等を得ることによって補助空気弁25への通電を停止することにより、補助空気弁25を閉弁することができる。以下、(1)スイングバック制御部91を介したエンジン始動時における開閉制御部30による開弁制御、(2)アイドルストップ制御部92を介したエンジン始動時における開閉制御部30による開弁制御、(3)スイングバック制御部91又はアイドルストップ制御部92を介したエンジン始動及び当該開弁制御の後の、開閉制御部30による閉弁制御、の順番で、開閉制御部30の処理の詳細を説明する。
(1)スイングバック制御部91を介したエンジン始動時における開閉制御部30による開弁制御に関して
図14は、当該開弁制御を説明するためのエンジン行程の時間遷移を示す模式図であり、示されている時刻t10及び時刻t11は同符号を付した図5におけるものと同一である。すなわち、時刻t10は、乗員によるスタータスイッチ40をオンする操作を受けての(図6のステップS103での肯定判定を受けてステップS104へ進んだ際の)、ACGスタータモータ70の逆転駆動の開始時刻(スイングバック処理の開始時刻)である。また、時刻t11は、当該逆転駆動後に圧縮上死点後の所定位置を検出してACGスタータモータ70の正転駆動が開始される時刻(図6のステップS105で肯定判定を得てステップS106へと至った時刻)である。
このようにスイングバック制御部91による制御と連動させて、開閉制御部30では、モータ角度センサ39及び/又は回転数検出部31等(クランク位置検出手段)によって検出されるクランク位置に基づき、エンジンの所定行程の所定クランク位置にある際に開弁制御を行うようにすることができる。具体的には、当該検出されるクランク位置が、スイングバックによる逆転駆動時のいずれかか、逆転駆動を完了して以降の正転駆動時のうちの吸気行程以外のいずれかの工程か、における所定位置であると判定された時刻において、開閉制御部30では補助空気弁25を開弁制御するようにすればよい。すなわち、図14に例示される時刻t11から時刻t117までの間であれば、ハッチを付して示されている正転駆動の開始時刻t11以降における1回目の吸気行程[1]の区間(時刻t112−時刻t113間)及び2回目の吸気行程[2]の区間(時刻t116−t117間)以外の区間にある時刻において開弁制御を行うようにすればよい。
開閉制御部30では好適な一実施形態として、時刻t104又は時刻t11において開弁制御を行うようにしてよい。ここで、時刻t104は図6のステップS105において圧縮上死点後の所定位置を検出する肯定判定が得られた時刻であり、時刻t11は既に述べた通り、当該肯定判定を得てステップS106の正転駆動を開始した時刻である。時刻t104及びt11は共に燃焼行程にあり、吸気行程と重複していない。
開閉制御部30ではまた、既に述べた通り、スイングバック制御が行われている時刻t10−t104間の任意の時刻において開弁制御を行うようにしてもよい。すなわち、時刻t10−t101間(逆転での圧縮行程[1]の期間)、時刻t101−t102間(逆転での吸気行程[1]の期間)、時刻t102−t103間(逆転での排気行程[1]の期間)、時刻t103−t104間(逆転での燃焼行程[1]の期間)のいずれかにおける任意の時刻で開弁制御を行うようにしてもよい。そして、時刻t11後の正転駆動が開始された期間で開弁制御を行う場合は、開閉制御部30では既に述べたように、吸気行程以外の工程にある時刻において開弁制御を行うようにすればよい。
(2)アイドルストップ制御部92を介したエンジン始動時における開閉制御部30による開弁制御
この場合も上記(1)と同様に、アイドルストップ制御部92によりアイドルストップ制御が実施された後の正転駆動開始時点以降において、吸気行程以外の工程にある時刻にて、開閉制御部30は開弁制御を行うようにすればよい。
すなわち、この場合は、図14において正転開始時刻t11に連続する時刻としての時刻t10−t104の逆転駆動区間(スイングバック制御の区間)が存在しない場合に該当し、時刻t11以降のみが存在するものとして、(1)の場合と同様とすればよい。具体的には、(1)の場合の図14に示される正転開始時刻t11が、図7に示す時刻t26に該当するものとみなして、すなわち、乗員のスロットル操作によりスロットル開度が所定値以上となって正転駆動が開始される時刻t26(=図14の時刻t11)であるものとみなして、(2)の場合も同様に開弁制御を行うことができる。特に、図7に示す時刻t26のスロットル開度が所定値以上となる判定時刻を、開閉制御を実行する時刻として採用してもよい。
(3)以上の(1)又は(2)での開弁制御の後の開閉制御部30による閉弁制御に関して
以下、当該閉弁制御を図15ないし図18を用いて説明する。これら閉弁制御は、エンジンのクランク軸の2回転の表裏判定が確定した後に実施されるものである。図15は、一実施形態に係る開閉制御部30による、ファーストアイドル制御としての当該閉弁制御の機能ブロック図である。
図15において、開閉制御部30は、前記補助空気弁25を全開状態および全閉状態間でオン/オフ制御する補助空気弁制御部305と、エンジンEのファーストアイドル状態で前記回転数検出部31によって検出されるエンジン回転数NEがファーストアイドル目標回転数NE0となるようにすべく点火時期を制御する点火時期制御部306と、該点火時期制御部306による遅角制御でのベース点火時期からの総遅角量が設定総遅角量に達したか否かを判断する遅角量検出部307と、前記スロットル検知部38の検知に基づいて自動二輪車1の走行状態を判断する走行状態判断部309と、を備える。
前記点火時期制御部306は、前記回転数検出部31によって検出されるエンジン回転数NEがファーストアイドル目標回転数NE0となるようにすべく点火時期を少なくともベース点火時期から遅角側に制御することを可能としたものであり、この実施例では、エンジン回転数NEがファーストアイドル目標回転数NE0よりも低い状態では点火時期制御部306はエンジン回転数NEを上昇させるべく点火時期を進角制御することが可能であり、エンジン回転数NEがファーストアイドル目標回転数NE0よりも高い状態で点火時期制御部306は点火時期を遅角制御する。また前記遅角量検出部307は、ベース点火時期からの総遅角量が設定総遅角量たとえば6度に達したと判断したときにファーストアイドル制御を終了させる終了信号を出力する。さらに前記走行状態判断部309は、スロットル検知部38の検出値に基づいて自動二輪車1が加速または定常走行状態にあるか、減速または停止状態にあるかを判断することができる。
エンジンEの始動後に暖機が完了するまでのファーストアイドル状態において、補助空気弁制御部305、点火時期制御部306、遅角量検出部307および走行状態判断部309は、図16および図17で示す手順に従って、点火時期を制御するとともに、補助空気弁25の開閉を制御する。すなわち図16のステップS1でファーストアイドル状態であることを確認したときには、回転数検出部31によって検出されるエンジン回転数NEが第1設定回転数NE1未満であるか否かを判断する。ここで点火時期制御部306には、第1設定回転数NE1と、第2設定回転数NE2と、第1の閾値である第3設定回転数NE3と、第3設定回転数NE3よりも大きな第2の閾値である第4設定回転数NE4とが予め設定されており、NE1<NE2<NE0<NE3<NE4である。
ステップS2でNE<NE1であることを確認したときに、ステップS3において大きな進角量で点火時期を進角補正した後、ステップS4で補助空気弁25が閉弁状態にあるか否か、すなわちソレノイド弁である補助空気弁25が非通電状態にあって閉弁しているか否かを確認し、閉弁状態にあるときにはステップS1に戻る。またステップS1でファーストアイドル状態ではないと判断したときには、ステップS2,S3を迂回してステップS1からステップS4に進む。
ステップS2においてNE1≦NEであると判断したときには、ステップS5に進んでエンジン回転数NEが第2設定回転数NE2未満であるか否かを判断し、NE<NE2であることを確認したときにはステップS6において小さな進角量で点火時期を進角補正した後、ステップS4に進む。
すなわちエンジン回転数NEがファーストアイドル目標回転数NE0よりも低い第2設定回転数NE2未満の状態ではエンジン回転数NEを上昇させるべく点火時期を進角制御するのであるが、エンジン回転数NEが第1設定回転数NE1未満の状態では大きな進角量で進角補正し、エンジン回転数NEが第1設定回転数NE1以上であって第2設定回転数NE2未満の状態では小さな進角量で進角補正することになる。
ステップS5でNE2≦NEであると判断したときには、ステップS7でエンジン回転数NEが第3設定回転数NE3以上であるか否かを確認し、エンジン回転数NEが第3設定回転数NE3以上であると判断したときには、ステップS8に進んでエンジン回転数NEが第4設定回転数NE4以上であるか否かを確認する。而してステップS8で、NE3≦NE<NE4であることを確認したときには、ステップS9において小さな遅角量たとえば1度だけ点火時期を遅角補正した後、ステップS4に進む。またステップS8でNE4≦NEであることを確認したときには、ステップS10において大きな遅角量たとえば2度だけ点火時期を遅角補正した後、ステップS4に進む。さらにステップS7でNE<NE3であることを確認したときには、ステップS7からステップS4に進む。
すなわちエンジン回転数NEがファーストアイドル目標回転数NE0よりも高い第3設定回転数NE3以上の状態ではエンジン回転数NEの上昇を抑えるべく点火時期を遅角制御するのであるが、エンジン回転数NEが第3設定回転数NE3以上であって第4設定回転数NE4未満の状態では小さな遅角量で遅角補正し、エンジン回転数NEが第4設定回転数NE4以上の状態では大きな遅角量で遅角補正することになる。
ステップS4で補助空気弁25が開弁していることを確認したときには、図17のステップS11に進み、このステップS11では吸気弁15の閉弁タイミングであるか否かを確認し、吸気弁15が開弁タイミングにあるときにはステップS12において補助空気弁25の開弁状態を維持し、吸気弁15が閉弁タイミングにあるときにはステップS13においてファーストアイドル状態であるか否かを判断する。
ステップS13でファーストアイドル状態であることを確認した後のステップS14では、遅角制御でのベース点火時期からの総遅角量が設定総遅角量(たとえば6度)に達したか否かを判断する遅角量検出部307が、ベース点火時期からの総遅角量が設定総遅角量に達したと判断してファーストアイドル制御を終了させる終了信号を出力したか否かを判断し、終了信号の出力時にはステップS15で補助空気弁25を全閉してファーストアイドル制御を終了する。
またステップS14において、終了信号が遅角量検出部307から出力されていないと判断したときには、ステップS14からステップS16に進み、温度検出部32で検出される冷却水温TWが設定温度TW0を超えるか否かを判定し、TW>TW0であったときにはステップS17に進んで補助空気弁25を全閉し、ファーストアイドル制御を終了する。而して前記設定温度TW0は、エンジンEが搭載される車両によって変化するものであるが、たとえば25°Cである。
すなわち補助空気弁制御部305は、遅角量検出部307からの終了信号出力に応じて補助空気弁25を全閉状態とするとともに、遅角量検出部307からの終了信号出力前に温度検出部32で検出される冷却水温TWが設定温度TW0を超えたときには遅角量検出部307からの終了信号出力前であっても補助空気弁25を全閉状態とすることになる。
しかもファーストアイドル制御の終了時に補助空気弁25を全閉状態とするタイミングは、ステップS11での判断によって吸気弁15の閉弁タイミングに定められているので、補助空気弁25が全開状態から全閉状態に変化することによって燃焼室14に導入される吸気量が吸気弁15の開弁中に急激に変化することが防止される。すなわち、このことに関連して、図16及び図17に示すフローによれば閉弁制御に関して以下の第一制御が実現される。
第一制御として、上記の通りステップS11での判断により、補助空気弁25の閉弁タイミングを、吸気弁15の開弁期間以外(すなわち、閉弁期間)におけるものとすることができる。第一制御によれば、吸気弁15の開弁時、つまり、空気を燃焼室14に取り込む時の吸気量を検知しているときに、補助空気弁25を閉じると燃焼室14に取り込まれる空気量が変化してしまい、燃料噴射制御に影響を及ぼしてしまうことを防止できる。すなわち、第一制御は、燃料噴射制御に影響を及ばさないタイミングで補助空気弁25を閉弁させるものである。
上記第一制御においては、上記の通りステップS11での判断により、補助空気弁25の閉弁タイミングを具体的に吸気弁15の閉弁タイミングに定める(吸気弁15が閉弁した直後のタイミングに定める)ことができる。
ステップS13でファーストアイドル状態ではないと判断したとき、すなわち暖機が完了していない冷機状態で自動二輪車が走行を開始したと走行状態判断部309が判断したときには、ステップS18において温度検出部32で検出される冷却水温TWが設定温度TW0を超えるか否かを判定し、TW>TW0であると判断したときには、スロットル弁23が閉じていることをステップS19で確認したときに、ステップS20で補助空気弁25を全閉状態とする。すなわち自動二輪車1が減速または停止状態にあると走行状態判断部309が判断したときには、遅角量検出部307からの終了信号出力前に温度検出部32で検出される冷却水温TWが設定温度TW0を超えたときに補助空気弁25を全閉状態とすることになる。
またTW≦TW0であるときと、TW>TW0であるもののスロットル弁23が開いているときすなわち自動二輪車1が加速または定常走行状態にあると走行状態判断部309が判断したときには、遅角量検出部307からの終了信号出力前に温度検出部32で検出される冷却水温TWが設定温度TW0を超えても、ステップS21で補助空気弁25を開弁したままとする。
このような補助空気弁制御部305による補助空気弁25の開閉制御および点火時期制御部306による点火時期制御によれば、図18において箇所aで示すように補助空気弁25が全開状態を維持しており、また箇所bで示すように燃料噴射弁27がファーストアイドル用マップに従って燃料を噴射している状態で、箇所cで示すエンジン回転数NEが第3設定回転数NE3以上となった時刻t1では、箇所dで示すようにベース点火時期から遅角するようにした点火時期の遅角制御が開始されることになり、前記エンジン回転数NEが第3設定回転数NE3以上であって第4設定回転数NE4未満の状態では、小遅角量(たとえば1度)での遅角制御が行われる。しかもその遅角制御は、ECU300による演算周期に対応した所定時間ΔTの経過毎に遅角量が積算されるようにして行われるものであり、総遅角量は時間経過に応じて増大していくことになる。
また回転数検出部31で検出されるエンジン回転数NEが第4設定回転数NE4以上となった時刻t2では、点火時期の大遅角量(たとえば2度)での遅角制御が開始されることになる。而してベース点火時期からの総遅角量が所定の設定総遅角量に達した時刻t3では、遅角量検出部307が終了信号を出力することになり、それに応じてファーストアイドル制御が終了することになり、時刻t3では補助空気弁25が全開状態から全閉状態に変化し、燃料噴射弁27は走行用マップに従って燃料を噴射することになる。
さらにファーストアイドル制御の終了に応じて点火時期はベース点火時期に徐々に近づくように進角される。この際の進角量は冷機状態に対応して予め定められたマップに従っており、ベース点火時期以上に進角した後には、暖機状態に対応して予め定められたマップに従って点火時期が定められる。
次にこの実施例の作用について説明すると、補助空気弁25を全開状態としたファーストアイドル状態で、点火時期制御部306による遅角制御でのベース点火時期からの総遅角量が設定総遅角量に達したときには、遅角量検出部307がファーストアイドル制御を終了させる終了信号を出力し、その終了信号の出力に応じて補助空気弁制御部305が補助空気弁25を全閉状態とする。(これは、ステップS14からステップS15へ至った場合に該当する。)すなわちエンジン温度を代表する指標である冷却水温TWによらずに点火遅角量に応じてエンジンEの暖機状態が判断されるので、点火遅角を行うことでエンジン回転数NEが目標ファーストアイドル回転数NE0となるように制御しつつ、エンジン温度が上がり難い環境でも暖機終了の時期を速やかにかつ正確に検知して、ファーストアイドル制御が無用に長くなることを回避することができる。
また補助空気弁制御部305は、遅角量検出部307からの終了信号出力前に温度検出部32で検出される冷却水温TWが設定温度を超えたときには、遅角量検出部307からの終了信号出力前であっても補助空気弁25を全閉状態とするので、暖機終了の時期をより正確に検出して、ファーストアイドル制御が無用に長くなることを回避することができる。(これは、ステップS16からステップS17へ至った場合に該当する。)
また点火時期制御部306は、回転数検出部31で検出されるエンジン回転数NEが第1の閾値である第3設定回転数NE3以上であって第1閾値よりも大きな第2の閾値である第4設定回転数NE4未満であるときに所定時間毎に小さな遅角量で点火時期を遅角補正し、回転数検出部31で検出されるエンジン回転数NEが第4設定回転数NE4であるときに所定時間毎に大きな遅角量で所定時間毎に点火時期を遅角補正するので、ファーストアイドル制御によってエンジン回転数NEが増加する過程で、段階的に遅角量が大きくなるような遅角制御が行われることになり、エンジン回転数NEの急激な変化を抑制してエンジン回転数NEを安定化させることができる。
またスロットル操作またはアクセル踏込み状態を検知するスロットル検知部38の検知に基づいて車両の走行状態を判断する走行状態判断部309によって、自動二輪車が加速または定常走行状態にあると判断されたときには、遅角量検出部307からの終了信号出力前に温度検出部32で検出されるエンジン温度が設定温度TW0を超えても補助空気弁25は全開状態に維持されるので、ファーストアイドル制御が終了しない冷機状態で自動二輪車の走行が開始され、自動二輪車が加速または定常走行状態にあるときには、暖機状態に達するのに応じて温度検出部32で検出されるエンジン温度が設定温度TW0を超えても補助空気弁25は全開状態に維持されるようにして、エンジン回転数NEの変化が生じることを抑えてドライバビリティの低下を抑制することができる。(これは、ステップS18からステップS21へ至った場合に該当する。)
さらに補助空気弁制御部305は、自動二輪車が減速または停止状態にあると走行状態判断部309が判断したときには、遅角量検出部307からの終了信号出力前に前記温度検出部32で検出されるエンジン温度が設定温度TW0を超えたときに補助空気弁25を全閉状態とするので、暖機状態に達するのに応じて、ドライバビリティに影響を与えることなく補助空気弁25を閉じてファーストアイドル制御を終了することができる。(これは、ステップS19からステップS20へと至った場合に該当する。)
また、補助空気弁25を全閉に切り替える切替時期をタイマ制御とし、前記温度検出部32で検出されるエンジン温度によって、タイマ制御の時間を可変させてもよい。すなわち、ステップS18,S19,S20の順番でフローを辿る場合に、ステップS20で直ちに補助空気弁25を全閉に切り替えることに代えて、当該ステップS20の別実施形態として、当該エンジン温度に基づく可変タイマ制御時間だけ待つことで暖機完了判定を得てから補助空気弁25を全閉に切り替えるようにしてもよい。この場合、閉弁制御に関して次の第二制御が実現されることとなる。すなわち、補助空気弁25の閉弁条件は(1)タイマ判定、(2)エンジン回転数(NE)判定(所定範囲にあることの判定)及び(3)暖機完了判定の3つの判定を満たすことであり、ステップS11の肯定判定を得たうえで当該3つの判定を得ることから、当該3つの判定が得られる場合の、吸気弁15の閉弁タイミング直後に補助空気弁25を閉弁する。
同様に、ステップS16,S17の順番でフローを辿る場合においても、ステップS17で直ちに補助空気弁25を全閉に切り替えることに代えて、当該ステップS17の別実施形態として、当該エンジン温度に基づく可変タイマ制御時間だけ待つことで暖機完了判定を得てから補助空気弁25を全閉に切り替えるようにしてもよい。この場合も閉弁制御に関して上記の第二制御が実現されることとなる。
なお、以上の第二制御においても第一制御と同様に、3つの判定を得たうえで吸気弁15の開弁時期以外に補助空気弁25を全閉に切り替えるようにすればよい。
以上、開閉制御部30による閉弁制御の実施例を説明したが、その他の変形も可能である。たとえば上記実施例では、エンジン温度を代表する指標として冷却水温TWを検出するようにしたが、エンジン本体10におけるシリンダブロック11もしくはシリンダヘッド12の壁温を検出するようにしてもよく、またエンジン本体10を循環する潤滑オイルの温度を検出するようにしてもよい。
また、図16及び図17のフローによる閉弁制御に対する追加処理及び/又は代替処理として、(特に、ステップS18、S19,S21と辿った際のステップS21の別実施形態として、)エンジン温度が一定(例えば10℃)以上であって、且つ、エンジン回転数NEが一定(例えば4500rpm)以上である場合には、開閉制御部30では強制的に閉弁制御を行うようにしてもよい。これにより、スロットルを急激に開いた場合であっても、エンジン回転数の吹きあがりを抑制することができる。また、第一制御及び第二制御は、図16及び図17のフローによる総遅角量に基づく制御と連動するものとして説明したが、当該連動することなく、第一制御及び第二制御をそれぞれ単独で実行するようにしてもよい。