JP6925188B2 - プレキャストコンクリート基礎の構築方法、およびプレキャストコンクリート造の基礎構造 - Google Patents
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具体的には、PC部材を設置する場合、地盤面上に略水平にコンクリートを打設し(捨てコンクリート)、この捨てコンクリート上に金属製の板材であるライナープレートを設置して、このライナープレート上にPC部材を載置する。その際、捨てコンクリートとPC部材との隙間にグラウト材を充填する。
特許文献3には、セルフレベリング(自己水平)材を用いて勾配を形成するコンクリート床構造体の施工方法が提案されている。
また、特許文献3のようなセルフレベリング材を屋外環境下でPC部材の設置工事に使用した場合、セルフレベリング材が硬化中だけでなく硬化後も太陽光の照射を受けるうえに、セルフレベリング材の表面に風が当たるため、セルフレベリング材に有害な乾燥収縮ひびわれが発生するおそれがあった。
また、硬化したセルフレベリング層は、表面の凹凸が少なく、かつ薄層でありながら、略均一な剛性と強度を有する。具体的には、セルフレベリング材を流し込んだ後、1〜3日後には、10N/mm2程度の圧縮強さを確保できた。この詳細については、後述する。
また、セルフレベリング層の表面にプレキャストコンクリート造の基礎部材を載置することにより、基礎部材の下面の大部分が、略均一な剛性および強度を備えたセルフレベリング層に面接合して、基礎部材の重量が略均一に捨てコンクリートに伝達される。その結果、捨てコンクリートの厚みを大きくしたり、捨てコンクリートの強度が十分に発現するまで待ったりする必要がなく、工期が長期化するのを防止できる。
この発明によれば、プレミックス材を用いてセルフレベリング材を混練する際、温度などの屋外環境を考慮して、プレミックス材に対する加水量および練混ぜ時間を調整する。よって、屋内環境用のプレミックス材を用いた場合でも、屋外環境下で打設直後から太陽光や風を受けるにもかかわらず、所定の薄層を維持した状態で、高い流動性を確保できる。具体的には、異なる屋外環境下において、複数のセルフレベリング材の施工性確認実験を行い、屋外環境下における好ましいフロー値の範囲を得た。
この発明によれば、屋外環境下に形成させたルフレベリング層上に、複数のプレキャストコンクリート造の基礎部材を設置して互いに連結することで、短時間でプレキャストコンクリート造の基礎構造を構築できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る基礎の構築方法により構築された基礎1の部分斜視図である。この図1では、後述の梁接合部50について、現場で打設したコンクリート体の部分の表示を省略している。
柱2は、鉄筋コンクリート造(RC造)であり、基礎部材としてのプレキャストコンクリート造の柱部材10の上にプレキャストコンクリート造の柱部材10Aを接合することにより構築される。
柱4は、鉄骨造(S造)であり、基礎部材としてのプレキャストコンクリート造の柱部材20の上に、図示しない鉄骨部材を接合することにより構築される。
以下、一例として、基礎1の1スパンについて説明する。この基礎1では、柱部材10が一対配置されている。図2中左側の柱部材10の上には、柱部材10Aが接合される。
捨てコンクリート60上にセルフレベリング層62が打設されており、このセルフレベリング層62上に一対の柱部材10が配置され、この一対の柱部材10の間には、基礎梁部材30、40が並んで配置される。
以上のように、プレキャストコンクリート造の基礎1は、地盤面上に形成された捨てコンクリート60と、この捨てコンクリート60上に形成されたセルフレベリング層62と、このセルフレベリング層62上に設置されて互いに連結された複数のプレキャストコンクリート造の柱部材10、10Aおよび基礎梁部材30、40と、を含んで構成される。
柱部材10は、鉄筋コンクリート造であり、水平断面が矩形状で、鉛直方向に延びている。この柱部材10には、柱主筋11、この柱主筋11に巻き回された図示しない帯筋、基礎梁下側主筋12、基礎梁上側主筋13、および、アンカーボルト14が埋設されている。
また、アンカーボルト14に吊り上げ治具を取り付け、この吊り上げ治具を介して柱部材10を揚重することで、柱主筋11や基礎梁下側主筋12、または柱部材10本体に損傷を与えることなく、柱部材10を容易に所定位置に設置することができる。
柱部材10Aは、柱部材10と同様の構成であるが、基礎梁下側主筋12および基礎梁上側主筋13が設けられておらず、柱部材10Aの下端面には、柱部材10の柱主筋11が挿入されて接合される継手部15が埋設されている点が、柱部材10と異なる。
基礎梁部材30は、鉄筋コンクリート造であり、直方体形状である。この基礎梁部材30には、基礎梁下側主筋31、基礎梁下側主筋31が接合された継手部32、基礎梁上側主筋33、基礎梁上側主筋33が接合された継手部34、およびこれら基礎梁主筋31、33に巻き回されたあばら筋35、が埋設されている。
あばら筋35は、基礎梁部材30の上端面から露出している。
また、基礎梁部材30同士は、後述する梁接合部50において、機械式継手51により基礎梁主筋31、33同士を連結して接合する(図1参照)。
ステップS1では、図6に示すように、掘削した地盤面(根切底)61上に捨てコンクリート60を打設し、この捨てコンクリート60上に、柱部材10および基礎梁部材30、40の位置出し(墨出し)を行う。
また、セルフレベリング層62上に、柱部材10および基礎梁部材30、40の位置出し(墨出し)を行う。
具体的には、基礎梁部材30を図示しない揚重機で吊り上げて、セルフレベリング層62上でかつ本来の設置位置に吊り下ろす。
施工性確認実験の手順は、以下の通りである。
図9に示すように、地盤(コンクリート)上に敷砂利を100mmの厚さで敷いて、この砂利の上に、捨てコンクリートとして、50mmの厚さでFc15(設計基準強度が15N/mm2)のコンクリートを打設する。コンクリートを打設した72時間後に、このコンクリートの上に、セルフレベリング層の試験体としてセルフレベリング材を15mmの厚さで打設する。
また、セルフレベリング材の打設後1日目に、セルフレベリング材の表面の高低差を計測して、セルフレベリング材のレベル精度を確認する。
試験体は、セルフレベリング材の種類、セルフレベリング層の下地コンクリート面に塗布するプライマー材の有無、プライマー材の種類、および打設後の養生手段を実験パラメータとした。また、各試験体の大きさは、長辺長さ270cm、短辺長さ110cm、厚さ15mmとした。
試験体No.2、No.5の養生手段は、膜養生剤としてキュアキーパー(太平洋マテリアル株式会社製)を用いた。膜養生剤とは、セルフレベリング材の表面に塗布されてセルフレベリング材表面からの水分の逸散を防止するものである。
屋外環境下で用いるセルフレベリング材は、打設直後より太陽光の照射や風が作用し、屋内環境下で使用した場合に比べて水分の蒸発が早いため、屋外環境よりも早期かつ広範囲に拡がるように調整配合する必要があった。
具体的には、試験体No.1、No.4のそれぞれについて、40mm×40mm×160mmの供試体形状のテストピースを12本採取し、各試験体No.1〜No.5とともに養生を行った後、JIS R 5201セメントの物性試験に基づき、圧縮強さ(N/mm2)を測定した。これらテストピースを用いて、打設後24時間、3日、7日、28日に圧縮試験を実施した。
床レベラーGについて、施工性確認の追加実験を実施した。すなわち、捨てコンクリートの上にセルフレベリング材として床レベラーGを打設し、この打設するセルフレベリング材の物性について、外気温、セルフレベリング材の配合割合、練混ぜ時間およびフロー値を測定する。また、セルフレベリング材の打設後1日目に、セルフレベリング材の表面の高低差を計測して、セルフレベリング材のレベル精度を確認する。
具体的には、以下の表5に示すように、セルフレベリング層の試験体を2体製作した。
試験体は、加水量により調整したフロー値を実験パラメータとした。いずれの試験体でも、セルフレベリング層の下地コンクリート面にUプライマーGを塗布し、打設後の膜養生剤やフィルムによる養生は行わなかった。また、各試験体の大きさは、長辺長さ300cm、短辺長さ120cm、厚さ20mmとした。
表6に、各試験体に用いたセルフレベリング材の混練作業について、外気温、セメント温度、水温、練混ぜ時間、セルフレベリング材の温度、およびフロー値を測定した結果を示す。なお、セルフレベリング材のフロー値は、JASS 15M−103(セルフレベリング材の品質基準)に基づいて測定した。
表7に、セルフレベリング層の天端面(表面)の高低差を測定した結果を示す。具体的には、セルフレベリング層の天端面の15箇所について高低差を測定し、平均値、最大値、最小値、および標準偏差を求めた。
試験体No.1〜No.5の試験結果に、以上の試験体No.6、No.7の試験結果を併せて、さらに、上述の試験体No.1のひび割れ幅は0.05mm未満であり、防水性などの観点から有害なものではなかったことを考慮すると、速硬性のセルフレベリング材を使用すれば、初期の乾燥が抑制されて有害なひび割れは生じないと考えられる。さらに、必要に応じて膜養生剤やフィルムによる養生を実施すれば、外気温や太陽光および風といった環境条件が特に厳しい場合でも、ひび割れを確実に防止できると考えられる。
次に、部材設置実験を行った。この部材設置実験では、施工性確認実験と同様に、屋外環境下で捨てコンクリート(Fc15)を打設し、捨てコンクリートを打設した72時間後に、この捨てコンクリート上にセルフレベリング層を構築した。このとき、セルフレベリング材表面に膜養生剤を塗布して、セルフレベリング層を養生した。セルフレベリング層を構築した24時間後に、セルフレベリング層の上に、柱および梁の実物大の試験体を載置した。
ここで、セルフレベリング材として、施工性確認実験にて好適であると判明した床レベラーG(宇部興産株式会社製)を使用した。また、下塗りプライマー材として宇部興産株式会社製のUプライマーGを使用し、膜養生剤として太平洋マテリアル株式会社製のキュアキーパーを使用した。
また、セルフレベリング層の試験体として、1〜3シリーズの3体を製作した。
また、2シリーズの上に載置する梁の実物大の試験体Aは、底面が1.1m×2.8mで、高さ2.45mのプレキャスト鉄筋コンクリート体であり、重量が20.4tonfである。3シリーズの上に載置する梁の実物大の試験体Bは、底面が0.7m×5.0m、高さが1.8mのプレキャスト鉄筋コンクリート体であり、重量が17.1tonfである。
しかし、この部材設置実験では、平滑なセルフレベリング層を載置面とすることで、試験体の重量がセルフレベリング層、さらには捨てコンクリートに略均一に伝達されるため、セルフレベリング層および捨てコンクリートに沈下や損傷などの問題は生じず、部材の鉛直方向の据え付け精度1/1000を確保できた。
(1)セルフレベリング層62の表面にプレキャストコンクリート造の柱部材10、20および基礎梁部材30、40を載置することにより、柱部材10、20および基礎梁部材30、40の下面の大部分がセルフレベリング層62に面接合して、柱部材10、20および基礎梁部材30、40の重量が略均一に捨てコンクリート60に伝達される。その結果、捨てコンクリートの厚みを大きくしたり、捨てコンクリートの強度が十分に発現するまで待ったりする必要がなく、工期が長期化するのを防止できる。
また、屋外でセルフレベリング材を打設する場合であっても、速硬性のセルフレベリング材を使用することで、セルフレベリング材表面の乾燥に伴う有害な乾燥収縮ひびわれを防止できる。
また、上述の実施形態による施工性確認実験と部材設置実験による配合調整を行ったセルフレベリング材のフロー値、セルフレベリング層天端面の測定値、およびセルフレベリング層の圧縮強さは、屋内床下地調整材であるセルフレベリング材に対して配合調整を行った後、所定時間、混練した結果である。よって、各実験の測定値は、セルフレベリング材単体の性能評価を行ったものではない。
10、20…柱部材(基礎部材) 10A…柱部材 11…柱主筋 12…基礎梁下側主筋 13…基礎梁上側主筋 14…アンカーボルト 15…継手部
30、40…基礎梁部材(基礎部材) 31…基礎梁下側主筋 32…継手部 33…基礎梁上側主筋 34…継手部 35…あばら筋
50…梁接合部 51…機械式継手
60…捨てコンクリート(コンクリート層) 61…地盤面 62…レベリング層 63…機械式継手
Claims (5)
- 複数のプレキャストコンクリート造の基礎部材を複数設置し、当該基礎部材同士を連結して構築されたプレキャストコンクリート基礎の構築方法であって、
地盤面上にコンクリート層を構築する工程と、
前記コンクリート層上にセルフレベリング材を流し込んでセルフレベリング層を構築する工程と、
当該セルフレベリング層上に前記基礎部材を載置して、当該基礎部材同士を連結する工程と、を備え、
前記セルフレベリング材は、屋外環境下で打設した際のフロー値が220mmを超えて250mm以下の流動性を有し、外気温、水温、およびセルフレベリング材の温度に基づいて加水量および練混ぜ時間が調整されて混練されていることを特徴とするプレキャストコンクリート基礎の構築方法。 - 前記加水量は、25kgの前記セルフレベリング材に対して6.3L以上6.75L以下であることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート基礎の構築方法。
- 前記セルフレベリング層を構築する工程では、前記セルフレベリング材の乾燥を抑制する養生手段を設け、
前記養生手段は、前記セルフレベリング材の表面に塗布されて当該セルフレベリング材表面からの水分の逸散を防止する膜養生剤、または、前記セルフレベリング材の打設後に当該セルフレベリング材の表面を覆うフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート基礎の構築方法。 - 前記セルフレベリング材は、宇部興産株式会社製の屋内床下地調整用の床レベラーG、または太平洋マテリアル株式会社製の屋内床下地調整用の太平洋SL材であり、
前記セルフレベリング層を構築する工程では、前記コンクリート層上に桟木を設置し、当該桟木で囲まれた範囲内に、当該桟木の上面の高さまで前記セルフレベリング材を流し込むことで、前記セルフレベリング層を構築することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプレキャストコンクリート基礎の構築方法。 - 地盤面上に形成されたコンクリート層と、
当該コンクリート層上に形成されたセルフレベリング層と、
当該セルフレベリング層上に設置されて互いに連結されたプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備え、
前記セルフレベリング層は、屋外環境下で打設した際のフロー値が220mmを超えて250mm以下の流動性を有し、外気温、水温、およびセルフレベリング材の温度に基づいて加水量および練混ぜ時間が調整されて混練されたセルフレベリング材で形成されていることを特徴とするプレキャストコンクリート造の基礎構造。
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