曲げられた金属管の使用例として、地中に温水を流し、その熱で氷雪を融かす方式のロードヒーティングが挙げられる。この方式は、路面が濡れないなどの利点を有するが、施工に際しては、温水を流す金属管を狭い間隔でつづら折り状に敷設するため、U字状に曲げられた金属管が多数必要になる。しかし、曲げられた金属管を外部から調達するならば、需要と供給とのバランスから購入価格が高くなり、施工価格の上昇も避けられず、この方式のロードヒーティングの普及を妨げる要因になっている。そこで施工者自らが加工装置を所有し、安価に曲げ加工を行うことも検討されるが、その場合でも、温水の流れを妨げないよう高い加工精度を有し、しかも現地での施工作業を円滑に行えることが望ましい。
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、金属管を安価且つ高精度で変形させることのできる曲げ加工装置の提供を目的としている。
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、概ね水平に配置された金属管を上型と下型との接触面で挟み込み、該金属管の中間部を下方に押し込んで変形させる曲げ加工装置であって、前記接触面の上型側には、前記金属管の上半分を嵌め込む収容溝を設け、該接触面の下型側には、該金属管の下半分を嵌め込む収容溝を設け、該金属管は該接触面に沿うように変形させ、前記上型は、油圧シリンダ等で上下方向に移動可能としてあり、前記下型は、左右に位置する固定型と中央に位置する可動型との三要素に分割してあり、該固定型はフレームに固定してあり、また該可動型は該フレームに対して上下方向に移動可能としてあり、通常は該可動型を該固定型よりも上方に配置してあり、前記固定型の上部外側には、変形前の前記金属管を載せる一対の押圧体を配置してあり、該押圧体は、前記フレームに対して回動自在に取り付け、且つ該押圧体と前記可動型はリンクで接続してあり、該可動型が下方に移動することで、該リンクを介して該押圧体が内側に移動し、前記上型が下降することで前記金属管の中央部が下方に押し込まれ、同時に該金属管の両端部が立ち上がっていき、さらに該上型が前記可動型を押し込むことで前記押圧体が移動し、該金属管の両端部を内向きに押し込むことを特徴とする曲げ加工装置である。
本発明による曲げ加工装置は、まっすぐに伸びる金属管を変形させるために用い、金属管の両端部を除く中間部を上型で押し込み、下型に密着させる構造である。そして加工前の金属管は、概ね水平に配置するが、上型は金属管よりも上方に配置し、下型は金属管よりも下方に配置し、上型と下型との接触面で金属管を挟み込む。したがって、この接触面を装置の側面から見た場合、中央部が下方に突出するように伸びており、金属管は、接触面に沿うように変形する。なお金属管は、原則として中空の円断面とするが、諸条件が揃うならば、中空ではないものにも対応できるほか、円断面以外にも対応できる。
上型と下型との接触面には、金属管を嵌め込む収容溝を設ける。収容溝は、上型と下型の双方に設けるため、個々の型に形成される収容溝は、接触面を基準として概ね対称形になる。本発明では、金属管の全長のうち、変形を生じさせる全区間を上型と下型で挟み込むため、その横断面の変形が規制され、当初の形状を維持でき、つぶれなどの不具合を防ぐ。また上型は、油圧シリンダなどで上下に移動可能とするが、下型は、床面に据え置かれるフレームに取り付ける。
下型は、その中央上部がくり抜かれた形状になるが、一体構造ではなく、中央に位置する可動型と、その左右に位置する固定型の三要素に分割してあり、そのうち固定型だけがフレームと一体化される。対して可動型は、フレームに対して上下方向に移動可能とする。なお可動型にはバネなどを組み込み、常時、固定型よりも上方に配置する。そして上型が下降して可動型を押し込むことで、可動型は、隣接する固定型と段差なく並び、下型全体の収容溝も段差なく並ぶ。
押圧体は、左右二箇所で一対になり、変形前の金属管の両端部を載せるほか、金属管のスプリングバックを考慮し、変形の最終段階で金属管の両端部を内向きに押し込む役割を担う。したがって押圧体は、下型よりも上方に配置するほか、上型が通り抜ける空間を確保するため、固定型よりも外側に配置する。ただし押圧体は、フレームに固定するのではなく、フレームに対して回動自在に取り付け、曲げ加工の最終段階で内側に移動することで、金属管の両端部を押し込む。なお実際の装置では、アームなどの部品を介して押圧体をフレームに取り付ける。
リンクは、可動型と押圧体を接続する棒状の部品で、可動型が下方に移動するに連れ、押圧体が内側に移動するように組み込む。可動型は、上型との接触で下方に押し込まれるが、その際、リンクによって押圧体が内側に移動し、下型の上方に覆い被さる。なお、下型が可動型に接触するタイミングは、曲げ加工の最終段階であり、その際、金属管の中間部は上型と下型で挟み込まれるが、金属管の両端部は、上型と下型で挟み込まれることがなく、徐々に上向きになる。そこで金属管の両端部を押圧体で押し込み、本来よりも余分に変形させることで、後のスプリングバックによる影響を排除する。
可動型と押圧体の具体的な構造は自在に決めることができ、押圧体については前記のように、アームを介してフレームに取り付けることがある。その場合、リンクの一端は、押圧体ではなく、アームに取り付けてもよい。またリンクの円滑な移動を実現するため、リンクの両端部は、ピンなどを介して可動型や押圧体に取り付ける。さらに、金属管の特性に応じて押し込み量を変化させるため、リンクの長さは、調整可能とすることが望ましい。そのほか、可動型や押圧体の移動範囲を規制するため、必要に応じてストッパなどを組み込む。
加工時は、まず上型を上昇させて押圧体から遠ざけ、次に一対の押圧体の上に金属管を載せ、上型を徐々に下降させると、上型の中央部が金属管に接触し、上型で金属管の中央部が押し下げられてV字状に変形し、押圧体に載る両端部は徐々に立ち上がっていき、やがて金属管が可動型に接触する。その際、金属管の中央部は、上型と可動型で完全に挟み込まれるため、押し潰されるような変形が規制され、当初の横断面を維持する。
その後、上型がさらに下降すると、リンクを介して押圧体が内側に移動するほか、金属管が固定型に嵌まり込み、上型と下型との接触面に沿うように変形する。その際、金属管は上型と下型で挟み込まれるため、その全区間が当初の横断面を維持する。また、上型が可動型を押し下げることで、金属管の両端部は、押圧体によって内向きに押し込まれ、本来よりも余分に変形する。しかし装置から取り出した金属管は、型による拘束が解かれてスプリングバックを生じるため、余分な変形が解消され、正規の形状に仕上がる。なお、スプリングバックの具体的な数値は、金属管の特性によって異なる。そこで実際には、リンクの長さなどを調整する機能を持たせ、あらゆる状況において、金属管が正規の形状に仕上がるようにする。
このように、上型と下型との接触面に収容溝を設け、そこに金属管を挟み込むことで、曲げ加工の最終段階では上型と下型が接触し、金属管の全長のうち、変形を生じさせる全区間が収容溝の内部に嵌まり込む。そのため金属管は、上型や下型からはみ出すような変形が規制され、つぶれなどの不具合を防ぐことができる。また、リンクを介して押圧体を移動させ、金属管の両端部を内向きに押し込むことで、加工後のスプリングバックで正規の形状に仕上がり、ただちに使用可能になる。
押圧体は、変形前の金属管を載せる機能と、金属管の両端部を内向きに押し込む機能を兼ね備えているほか、押圧体の移動には、可動型の移動を利用しており、専用の動力源が不要である。しかもリンクは単純な棒状であるため、金属管の両端部を押し込む機構は、単純且つ軽量で、これらの特徴により、装置構成が簡素化され、その価格を抑制できるほか、金属管の曲げ径が大きい場合でも、リンクの延長を伸ばすだけで無理なく対応できる。そのほか可動型は、曲げ加工の途中段階で金属管に接触するため、早い段階で金属管が上型と下型で挟み込まれ、安定した変形が実現する。
請求項2記載の発明は、金属管の横断面の不正な変形を防ぐためのもので、上型の収容溝は、金属管の横断面の半分を超える範囲を収容する大きさであることを特徴とする。請求項2記載の発明では、上型と下型の収容溝を対称形とするのではなく、上型については、金属管の横断面の半分を超える範囲を収容できる大きさとする。その結果、下型の収容溝が小さくなり、上下の収容溝は、接触面を挟んで対称形になることはなく、上型の方が大きい非対称形になる。このように上型の収容溝を大形化することで、金属管が上型だけに嵌まり込んだ際、その変形を強固に規制することができ、つぶれなどの不具合が生じにくくなる。
請求項3記載の発明は、上型や下型の構造に関するもので、上型は、細分化された分断上型を接触面の長手方向に沿って複数並べた構成で、下型は、細分化された分断下型を接触面の長手方向に沿って複数並べた構成であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、上型と下型のいずれとも、接触面の長手方向に対して細分化された分断型を用いることを特徴としており、個々の分断型は、金属板の一辺に収容溝を切り抜いた形状になる。そして、接触面の長手方向に沿って分断型を複数並べることで、一個の上型や下型が完成する。なお個々の分断型の厚さは、金属管の曲げ径よりも十分に小さく、そこに形成する収容溝は、金属管の曲げ径を考慮する必要がない。そのため分断型は、金属板の一辺に収容溝を切り抜いただけの単純な形状になり、塊状の型よりも、製造に要する費用を削減できる。また、個々の分断型を差し替え可能とすることで、装置の維持管理も容易になる。
請求項1記載の発明のように、上型と下型との接触面に収容溝を設け、そこに金属管を挟み込むことで、曲げ加工の最終段階では上型と下型が接触し、金属管の全長のうち、変形を生じさせる全区間が収容溝の内部に嵌まり込む。そのため金属管は、上型や下型からはみ出すような変形が規制され、つぶれなどの不具合を防ぐことができ、金属管の全長にわたって当初の横断面が維持され、精度に優れた金属管を製造することができる。特に可動型は、曲げ加工の途中段階で金属管に接触するため、早い段階で金属管が上型と下型で挟み込まれ、安定した変形が実現する。
また、リンクを介して押圧体を移動させ、金属管の両端部を内向きに押し込むことで、加工後のスプリングバックで正規の形状に仕上がり、後に調整を行うことなく、ただちに金属管を使用可能になる。しかも押圧体は、変形前の金属管を載せる機能を兼ね備えているほか、押圧体の移動は、可動型の移動をリンクで伝達することで実現しており、専用の動力源が不要である。なお、スプリングバックに対応する技術は従来から存在する。しかし本発明では、単純な棒状のリンクを用いることで装置構成が簡素化され、その価格を抑制でき、金属管を安価で曲げることが可能で、仮に金属管の曲げ径が大きい場合でも、リンクの延長を伸ばすだけで無理なく対応でき、関連箇所が大型化することはない。
請求項2記載の発明のように、上型の収容溝は、金属管の横断面の半分を超える範囲を収容する大きさとすることで、金属管が上型に嵌まり込んだ後、金属管の横断面の半分よりも大きい範囲を拘束できるため、その変形が強固に規制され、金属管が下型に接触するまでの間、押し潰されるような変形を防ぎ、当初の横断面形状を維持する。
請求項3記載の発明のように、上型および下型は、細分化された分断上型や分断下型を用い、これらを接触面の長手方向に沿って複数並べた構成とすることで、個々の分断上型や分断下型は、金属板の一辺に収容溝を切り抜いただけの単純な形状になる。そのため、レーザー加工機などで金属板を切り出すだけで分断上型や分断下型を製造でき、これらを組み付けると上型や下型が完成し、高価な専用の金型を用意する必要がなく、装置の製造価格を抑制できる。
図1は、本発明による曲げ加工装置の構成例を示し、金属管Pを上型11と下型21で挟み込み、U字状に変形させる。この装置の上型11は、下方に突出する円弧状で、その外周面が下型21との接触面15になり、この接触面15の中央には、全長にわたり、金属管Pの上半分を嵌め込む収容溝16を設けてある。また下型21は、上型11と対になり、その上面が上型11との接触面25になり、この接触面25は、装置の側面から見ると下方に突出する半円形である。さらに下型21は、左右両側に位置する固定型23と、中央に位置する可動型24の三要素に分割してある。
上型11は、油圧シリンダ14で上下方向に移動可能で、油圧シリンダ14から伸びるロッド17は、コネクタ18を介して上型11に接続されている。また下型21の固定型23は、フレーム41に固定されている。フレーム41は、本発明による曲げ加工装置の土台になる部品で、床面に据え置かれる。そして図の固定型23は、直角三角形に似た形状で、その直角部を構成する二辺がフレーム41に接触している。なおフレーム41の形状は、自在に決めることができ、フレーム41と固定型23との取り付け方法も自在である。そのほか実際の装置では、油圧シリンダ14を取り付けるため、別途に柱なども必要になる。
下型21の中央部を構成する可動型24は、フレーム41に対し、一定の範囲で上下方向に移動可能で、通常はバネなどの押し上げ具46により、固定型23よりも上方に配置してある。なお、可動型24の円滑な移動を実現するため、その下には台座42を設けてあり、さらに、可動型24の移動範囲を制限するため、フレーム41にストッパ47を設けてある。ストッパ47は、固定型23と可動型24が段差なく並んだ際に機能し、そこから先の下降を防ぐ。
フレーム41の左右両側の上部には、金属管Pを載せる押圧体36を配置してある。押圧体36は、金属管Pの転動を防ぐため、中央がくびれた鼓状で、さらに押圧体36は、その両側に配置されたアーム33を介してフレーム41に取り付けてある。アーム33は支点ピン32を中心として回動可能で、フレーム41の上面には、支点ピン32を保持するブロック31を設けてある。また押圧体36の中心には、上ピン35を差し込んであり、上ピン35の両端部は、アーム33の先端付近で保持されている。
押圧体36は通常時、ブロック31よりも上方に位置する。そのため、押圧体36の落下を防ぐストッパ43を設けてある。ストッパ43はフレーム41から伸び、アーム33の中間付近に接触し、その移動範囲を制限しており、押圧体36に載った金属管Pが上型11で押し込まれた際も、押圧体36が落下することはない。
可動型24と押圧体36はリンク34で接続してあり、可動型24が下降するに連れ、押圧体36は内側に移動する。リンク34は単純な棒状で、その下端部は、可動型24を載せる台座42を貫く下ピン45に取り付けられ、またリンク34の上端部は、押圧体36の中心に差し込まれた上ピン35に取り付けられ、下ピン45の下降により、上ピン35は下方に引き寄せられるが、支点ピン32との兼ね合いでアーム33が回動し、押圧体36が内側に移動する。なおリンク34は、バランスを考慮して押圧体36の左右両側に配置してあり、さらにリンク34の両端部は、下ピン45や上ピン35に対し、自在に回動可能である。
実際に金属管Pを曲げる際は、まず左右の押圧体36を跨ぐように金属管Pを載せ、次に油圧シリンダ14のロッド17を徐々に突出させていくと、上型11の中央部が金属管Pに接触する。以降、押圧体36に載せられた金属管Pは、上型11だけでV字状に変形していくが、やがて金属管Pが可動型24に接触し、金属管Pの中央部は、上型11と可動型24で挟み込まれ、そのつぶれを防ぐ。引き続き上型11が下降すると、金属管Pの中間部は、上型11と下型21で緩みなく挟み込まれ、さらに金属管Pの両端部は、スプリングバックを吸収できるよう、押圧体36で内向きに押し込まれる。
図2は、図1の曲げ加工装置に金属管Pを載せた状態を示す。加工前の金属管Pは、所定の長さに切断された直線状で、その両端部を左右の押圧体36の上に載せる。押圧体36の中央は鼓状にくびれており、また左右の押圧体36の高さは揃っており、金属管Pは安定して据え置かれる。なお、押圧体36を支持するアーム33は、ストッパ43に接触しており、押圧体36がさらに落下することはない。そのほか油圧シリンダ14のロッド17は、完全に引き込まれており、上型11は金属管Pの上方に位置する。
図3は、図2の後、油圧シリンダ14を作動させ、上型11で金属管Pを押し込み始めた状態を示す。油圧シリンダ14を作動させ、そのロッド17を徐々に突出させていくと、やがて上型11の最下部が金属管Pの中央部に接触し、金属管PをV字状に変形させていく。その際、金属管Pの上半分は上型11の収容溝16に嵌まり込み、金属管Pの中央部は徐々に変形し、金属管Pの両端部は徐々に直立していく。
上型11が金属管Pに接触することで、押圧体36には下向きの荷重が作用する。その際、支点ピン32と上ピン35との位置関係から、押圧体36は外側に移動しようとするが、押圧体36を支えるアーム33がストッパ43に接触しており、押圧体36は移動不能である。そのため、上型11から金属管Pと押圧体36を介して伝達される下向きの荷重は、ストッパ43で受け止められ、上型11と押圧体36だけで金属管Pが変形し、この段階では下型21は機能していない。
図4は、図3の後、上型11が可動型24に接触した状態を示す。下型21は、左右の固定型23と中央の可動型24の三要素に分割されているが、そのうち可動型24は、固定型23よりも上方に配置してあり、早い段階で上型11と接触する。したがって金属管Pの中央部は、曲げ加工の途中で上型11と可動型24で挟み込まれ、双方の収容溝16、26からはみ出すような変形が規制され、当初の円断面を維持する。なおこの段階において、可動型24が金属管Pの変形を規制できるよう、押し上げ具46は、相応の反力を発生するように調整してある。
図4に示す状態では、金属管Pの両端部が上型11で押し込まれて固定型23に嵌まり込み、上向きに曲げられる。したがって金属管Pの両端部は、押圧体36から離れる。その段階で金属管PはU字状になるが、金属管Pを装置から取り外すと、スプリングバックにより、両端部がV字状に開いてしまう。なお金属管Pの両端部は、最後まで上型11と下型21で挟み込まれることがない。そのため加工後の金属管Pは、半円形ではなくU字状になる。
図5は、図4の後、上型11と下型21が接触した最終段階を示す。上型11が可動型24を押し込み、上型11と下型21が完全に接触しており、金属管Pの中間部は、上型11と下型21の収容溝16、26で挟み込まれる。また可動型24の移動により、リンク34が上ピン35を引き寄せてアーム33を回動させ、押圧体36を内側に移動させる。その結果、金属管Pの両端部は、押圧体36で内向きに押し込まれて拝み形状になる。ただし金属管Pを装置から取り出すと、その両端部はスプリングバックによって外側に開き、平行に揃う。なおスプリングバックについては、金属管Pの両端部のほか、上型11と下型21で挟み込まれる中間部でも発生することが知られている。そこで上型11と下型21との接触面15、25は、わずかではあるが実際の曲げ径よりも小径としてある。
可動型24は、フレーム41に対して上下方向に移動可能だが、可動型24を載せる台座42がストッパ47に接触することで、そこから先に下降することはない。ストッパ47は、可動型24が固定型23と段差なく並ぶ際に機能する。また台座42の下降に伴い、押し上げ具46は圧縮される。そのほか押圧体36は、金属管Pの変形にも関与するため、その周辺の下ピン45やリンク34や上ピン35やアーム33などは、十分な強度を持たせる必要があり、リンク34はバランスを考慮して左右両側に配置してある。
図1から図5では、円断面の金属管Pを用いているが、上型11や下型21の収容溝16、26の形状を調整することで、様々な横断面の金属管Pに対応可能である。また中空ではない棒材についても、同様に変形させることができる。そのほか図1から図5では、金属管をU字状に変形させているが、上型11と下型21を交換することで、他の形状に変形させることもできる。ただしその場合でも、金属管Pの両端部は、押圧体36で変形させる。
図6は、アーム33に対して押圧体36の位置を調整可能とした構造を示す。先の図5に示すように、変形の最終段階では、押圧体36が金属管Pの両端部を押し込むが、その押し込み量は、曲げ径や金属管Pの直径や肉厚など、様々な要因に基づいて調整する必要がある。そこで、あらゆる状況で金属管Pを適切に押し込めるよう、アーム33に対して押圧体36の位置を調整可能とすることもできる。図6では、アーム33の先端付近に長穴38を設け、その中で上ピン35が移動できるようにしてあり、上ピン35と一体で押圧体36も移動する。
さらに、アーム33と押圧体36との位置関係を固定するため、アーム33の外側にクレビス51を配置してある。クレビス51は、頭部52とオネジ53で構成され、頭部52に上ピン35を差し込むことで、クレビス51と上ピン35が一体化する。またオネジ53は、アーム33の中間部から伸びる枝板37を貫いている。そしてオネジ53にナット54を螺合させ、ナット54で枝板37を挟み込むことで、アーム33に対する上ピン35の位置が固定される。したがって、押圧体36に大きな荷重が作用した際も、押圧体36はアーム33に対して移動することがなく、確実に金属管Pを押し込むことができる。
図6の上方では、上ピン35が長穴38の上方に位置している。しかし、ナット54を緩めてクレビス51を下方に移動させると、押圧体36も一体で下方に移動し、そこでナット54を締め付けると、図6の下方に示すように、上ピン35を長穴38の下方で固定することができる。なお実際には、押圧体36の位置のほか、リンク34の長さも調整できるようにしてあり、これらを一体的に調整することで、諸条件が異なる場合でも、金属管Pを正規の形状に仕上げることができる。
図7は、上型11と下型21の構成例を示し、上型11は、複数の分断上型12を並べたもので、また下型21は、複数の分断下型22を並べたものである。分断上型12や分断下型22は、硬質の金属板に収容溝16、26を形成したもので、これを上型11と下型21との接触面15、25の長手方向に沿って複数並べることで、一個の上型11や下型21が完成する。なお分断上型12は、半円形に曲げられた載置板19に固定され、隣接する分断上型12の境界には隙間が生じる。そのほか載置板19の中央には、ロッド17を取り付けるためのコネクタ18を設けてある。
下型21は、左右の固定型23と中央の可動型24の三要素に分割されるが、固定型23や可動型24を構成する複数の分断下型22を一体化するため、側載置台28と中載置台29を用いており、側載置台28は固定型23になり、中載置台29は可動型24になる。なお、個々の分断上型12や分断下型22の厚さは、金属管Pの曲げ径に対して十分に小さい。そのため個々の収容溝16、26は、金属管Pの曲げ径を考慮した二次元的な曲面にする必要がなく、単純な切り抜きで構わない。
そのほか図7の右方に示すように、分断上型12と分断下型22の双方の収容溝16、26は、接触面15、25を基準として対称形に配置しない場合がある。このような分断上型12と分断下型22を接触させると、収容溝16、26の中心は、分断上型12の方に偏っている。その結果、金属管Pが下型21に接触する前の段階において、金属管Pの半分以上が分断上型12に嵌まり込み、その最大径部分が分断上型12で挟み込まれ、金属管Pの変形が規制される。
なお、分断上型12と分断下型22を用いる場合でも、その収容溝16、26は、接触面15、25を基準として対称形に配置してもよい。また、図7の右方に示す分断上型12の収容溝16は、単純な円形としてあるが、金属管Pを円滑に嵌め込むため、最大径部分から下の区間を単純な垂直面として、収容溝16を円形ではなくU字状にすることもある。
図8は、初期段階で金属管Pを適切に曲げるため、補助型55を用いる場合を示している。通常、一連の曲げ加工は、上型11と下型21と押圧体36だけで行うが、曲げ径や金属管Pの特性によっては、金属管Pの中央部が過大に変形することがある。特に、曲げ加工の初期段階では、図3に示すように、上型11だけで変形が進むため、金属管Pの拘束が不十分になり、横断面が大きく変形する可能性がある。図8はその対策例を示すもので、上型11と補助型55で金属管Pを挟み込み、横断面の変形を抑制する。
補助型55は、上型11に組み込まれる部品で、湾曲することなく水平に伸び、その上面の中央には、金属管Pを嵌め込む収容溝56を設けてある。また補助型55の左右側面の中央には、上方に伸びる接続板57を取り付けてある。そして上型11の上面の中央には、塊状の支持片59を設けてあり、補助型55を上型11に接近させ、二枚の接続板57で支持片59を挟み込み、双方を貫くようにボルト58を差し込むと、補助型55が上型11に取り付けられる。さらに、上型11の収容溝16と補助型55の収容溝56で構成される空間により、金属管Pを保持することができる。
補助型55を用いる際は、まず上型11を持ち上げ、ボルト58を用いて補助型55を上型11に組み込み、併せて収容溝16、56に金属管Pを差し込む。次に上型11を下降させると、金属管Pの両端部が押圧体36に接触し、その中央部が徐々に変形するが、補助型55によって当初の横断面形状が維持され、つぶれなどの不具合を防ぐ。ただし、補助型55が下型21に接触してはならず、変形がある程度進んだ段階で補助型55を取り外し、以降は、上型11と下型21で金属管Pを挟み込む。なお補助型55の代替として、可動型24を用いることもできる。その場合、可動型24の移動範囲を増大させ、図2に示す段階で可動型24を金属管Pに接触させる。その結果、可動型24は、補助型55と同様の機能を併せ持つことになる。
図9は、U字状に曲げられた金属管Pをロードヒーティングで用いる場合を示す。この図のロードヒーティングは、金属管Pに温水を流して路面を加熱する方式で、散水を行わないため、路面が濡れることもなく、歩行者などの快適性が向上する。その施工に際しては、図9の上方に示すように、路面を広い範囲で一定の深さまで掘削し、一段下がった掘り込み部を設ける。次に、掘り込み部の全域に金属管Pを敷設するが、均一な加熱を実現するため、直線状の金属管Pを狭い間隔で配置してあり、その端部同士をU字状の金属管Pで接続してある。そして、掘り込み部を埋め戻して路面を整備すると、図9の下方に示すように、金属管Pは完全に埋め込まれる。
金属管Pを流れる温水は、次第に温度が低下する。そこで図9では、給水直後の金属管Pと排水直前の金属管Pを隣接させており、発散される熱量が全域でほぼ均等になる。なお、図9のようなロードヒーティングでは、温水の熱を効率よく外部に発散させるため、熱伝導に優れた薄肉の金属管Pを用いることが望ましい。対して樹脂管は、断熱性が高く効率が低下するため、このような用途には適さない。
図9に示すように、ロードヒーティングで金属管Pを狭い間隔で敷設するには、U字状に曲げられた金属管Pが多数必要になり、その全てを外部から調達すると、施工価格の上昇が避けられない。しかし、本発明による曲げ加工装置を用いることで、自前で金属管Pを確保できるため、施工価格を抑制できる。また本発明では、金属管Pの両端部を平行に揃えることができ、現地で金属管Pの形状を調整する必要がない。そのため、直ちに敷設作業に着手することができ、施工時の手間や時間を削減できる。当然ながら、本発明による曲げ加工装置の導入には、相応の投資が必要になるが、施工数を確保することで投資は無理なく回収できる。なお本発明は、ロードヒーティングで用いる金属管Pを曲げるために開発されたが、金属管Pの用途に制限はなく、加えて、曲げ形状はU字状に限定されるものではない。