JP6923044B1 - プレス成形金型、プレス成形方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、高強度鋼板は強度の低い鋼板と比較して延性に乏しく、加工中に破断を生じやすい。また、高強度鋼板を用いた場合でも、さらなる軽量化のために薄肉化も同時に行うため、鋼板の座屈が生じやすくてプレス成形中にしわが発生しやすいという問題もある。そのため、破断やしわを抑制するためのプレス成形方法の開発が強く求められている。
特許文献1に開示された方法によれば、製品内部のしわや割れを生じやすい自動車部品を、成形不具合なく製造することができるとされる。
上型と、該上型と協働して前記天板部、前記縦壁部、前記縦壁部における壁深さが深い部位の下端辺及び前記第1湾曲部にフランジ部を形成すると共に、前記傾斜辺部にねじり形状部を形成する下パッドと、該下パッドに隣接して配置され、前記上型と協働して前記ねじり形状部をフランジ部に成形すると共に、前記傾斜辺部に連続する第2湾曲部と前記凹み辺部にフランジ部を形成する下型とを有し、
前記上型は、前記天板部を成形する天板成形部と、前記縦壁部を成形する縦壁成形部と、前記縦壁部の天板部の反対側の辺部である下端辺にフランジ部を成形する下端辺フランジ成形部と、前記第1湾曲部にフランジ部を成形する第1湾曲部フランジ成形部と、前記傾斜辺部にフランジ部を成形する傾斜辺部フランジ成形部と、前記第2湾曲部にフランジ部を成形する第2湾曲部フランジ成形部と、前記凹み辺部にフランジ部を成形する凹み辺部フランジ成形部とを有し、
前記下パッドは、下パッド天板成形部と、下パッド縦壁成形部と、下パッド下端辺フランジ成形部と、下パッド第1湾曲部フランジ成形部とを有し、
前記下型は、前記傾斜辺部にフランジ部を成形する下型傾斜辺部成形部と、前記第2湾曲部にフランジ部を成形する下型第2湾曲部フランジ成形部と、前記凹み辺部にフランジ部を成形する下型フランジ成形部とを有し、
成形初期に、前記上型と前記下パッドによって、前記天板部、前記縦壁部、前記縦壁部における壁深さが深い部位の下端辺及び前記第1湾曲部にフランジ部を形成すると共に、前記傾斜辺部にねじり形状部を形成し、
成形後期に、前記上型と前記下型によって、前記ねじり形状部をフランジ部に成形すると共に、前記第2湾曲部と前記凹み辺部にフランジ部を形成して、目標形状に成形できることを特徴とするものである。
前記上型及び下パッドによって、前記天板部、前記縦壁部、前記縦壁部における壁深さが深い部位の下端辺及び前記第1湾曲部にフランジ部を形成すると共に、前記傾斜辺部にねじり形状部を形成する初期成形工程と、
前記上型と前記下パッドでブランクを挟持した状態で、前記下型を上型に対して相対移動して、前記ねじり形状部をフランジ部に成形すると共に、前記第2湾曲部と前記凹み辺部にフランジ部を成形して、目標形状に成形する後期成形工程と、を備えたことを特徴とするものである。
図12に示すプレス成形品1は、自動車部品であるフロントフロアクロスの斜視図であり、天板部3と、天板部3から連続する縦壁部5であって側面視で天板部の反対側の辺部である下端辺が天板部3側に凹む凹み部7を有する縦壁部5と、縦壁部5の下端辺に外向きに形成されたフランジ部9を有するものである。
図13は、図12の破線で囲んだEE部における成形過程の材料流れを説明する図であり、図12を上面視(図13(a))及び側面視(図13(b))した状態を示している。また、図13において、破線が成形前のブランクの先端であり、実線が目標形状に成形されたフランジ部9の端辺である。
また、図中のD点及びB点は成形前のブランクにおける第1湾曲部17のR止まりに相当する点であり、これらに対応して側面図においてD点及びB点から目標形状の端辺に対して垂直に向かう線と目標形状の端辺との交点が、D´点及びB´点である。
同様に、図中のA点及びE点は成形前のブランクにおける第2湾曲部19のR止まりに相当する点であり、これらに対応して側面図においてE点及びA点から目標形状の端辺に対して垂直に向かう線と目標形状の端辺との交点が、A´点及びE´点である。
図13(b)側面図に示すように、材料は稜線(曲げの線)にほぼ垂直に流れるので、a部では材料が寄る方向に流れて、b部では材料が離れる方向に流れる。そのため、a部ではしわが発生しやすくてb部では割れが発生しやすい。
下パッド27において、軸方向に隣り合う下パッド第1湾曲部フランジ成形部27dの間、すなわち上型23の第2湾曲部フランジ成形部23f及び凹み辺部フランジ成形部23gに対向する部分は空洞部31となっており、この空洞部31に下型29が配置されている。
本実施の形態のプレス成形方法は、図4に示すように、ブランク33をプレス成形金型21にセットする成形開始前工程S1、初期成形工程S3、後期成形工程S5とを備えたものである。
以下、各工程について、図4〜図11に基づいて詳細に説明する。なお、金型の動きを説明する図5、図6、図9においては、ブランク33の成形状態を示すため、上型23は透視図としている。
成形開始前工程S1では、図5に示すように、金属板からなるブランク33を下パッド27上に載置する。このとき、下型29は下方に退避しており、その上面すなわち下型凹み辺部フランジ成形部29cが下パッド27の下パッド下端辺フランジ成形部27cよりも下方に位置している。
初期成形工程S3では、図6に示すように、上型23を下パッド27に向けて成形下死点まで移動する。
これによって、上型23及び下パッド27によって、天板部3、縦壁部5、縦壁部5における壁深さが深い部位の下端辺11及び第1湾曲部17にフランジ部9を形成すると共に傾斜辺部13にねじり形状部25(図7)が成形される。
ねじり形状部25が成形されるのは、図6に示した上型23を成形下死点まで移動した状態では、上型23(図3)における傾斜辺部フランジ成形部23e、第2湾曲部フランジ成形部23f及び凹み辺部フランジ成形部23gに対応する部位にはブランク33を挟む下型29が存在しないため、図7に示す傾斜辺部13の下端側の第1湾曲部17にフランジ部9が形成されるが、凹み辺部15にはフランジ部9が形成されないためである。
ねじり形状部25の成形の際には、図7の矢印で示すように、第1湾曲部17側から傾斜辺部13へ材料流入が生じ、縮みフランジ変形における材料余りが緩和され、しわの発生が抑制される。
図8は、図7の破線で囲んだCC部における成形過程における材料流れを説明する図であり、図7の中間成形品20を上面視及び側面視した状態を示している。また、図8において、目の細かい破線が成形前のブランク33の端辺であり、目の粗い破線が中間成形品20の端辺であり、実線が目標形状におけるフランジ部9の端辺である。
図中のA〜E点及びA´〜E´点は、図13に示したものと同一の点である。
すなわち、図中A点は、ブランク33における第2湾曲部19のR止まりであり、ねじり形状部25の先端位置となる。B点は、従来の縮みフランジ変形を生じるブランク部位の一方のR止まり(図13)に対応する点で、B´点は側面図においてB点からねじり形状部25の端辺に対して垂直に向かう線とねじり形状部25の端辺との交点である。
D点はブランク33における湾曲部のR止まり、D´点は側面図においてD点から目標形状の端辺に対して垂直に向かう線と目標形状の端辺との交点である。
他方、A点からB´点までの距離は、3次元的にみると、A点からB点までの距離よりも長い(AB´>AB)ため、材料はA点側に引っ張られて図13のa部に示す「稜線にほぼ垂直」からずれて流れる。そのため、従来の図13のしわ発生領域での矢印の材料流れに比べてA点寄りの図8の矢印で示す材料流れが生じ、この材料流れにより、成形初期で成形される縮みフランジ変形での材料余りが緩和され、しわの発生が防止される。
本発明を適用するにあたり、縦壁部5を垂直にしたままフランジ部9を成形すると、スプリングバックによって縦壁部5とフランジ部9との曲げ角度が大きくなり、また、縦壁部5に反りが生じやすい。曲げ部35を形成することにより、先端が下向きV字形状の金型でフランジ部9を成形できるため、縦壁部5とフランジ部9との曲げ角度を鋭利にできて、かつ、フランジ部9に隣接する縦壁部5の高さを低くできて反りを抑制できる。その結果、フランジ部9の一部分、すなわち縮みフランジ変形部のみを成形することが容易になる。
後期成形工程S5では、上型23と下パッド27でブランク33を挟持した状態で、図9に示すように、下型29を上型23に向けて移動して、ねじり形状部25をフランジ部9に成形すると共に、第2湾曲部19と凹み辺部15にフランジ部9を成形して目標形状とする。
後期成形工程S5の成形過程では、図10の矢印で示すように、図7の材料余りを吸収したねじり形状部25からねじりを戻すことで、余った材料により伸びフランジ変形部へと材料流入が生じるため、伸びフランジ変形部の材料不足が緩和され、割れの発生が抑制される。
図11は、図10の破線で囲んだDD部の成形過程における材料流れを説明する図であり、図10を上面視及び側面視した状態を示している。また、図11において、目の細かい破線が成形前のブランクの端辺であり、目の粗い破線がねじり形状部25の端辺、実線が目標形状におけるフランジ部9の端辺である。また、図中のA〜E点及びA´〜E´点は、図13に示したものと同一の点である。
他方、3次元的にみると、D´点からE´点までの距離は、D´点からE点までの距離よりも短い(D´E´<D´E)ため、材料はA´側に押されて図13のb部に示す「稜線にほぼ垂直」からずれて流れる。そのため、従来の図13の割れ発生領域での矢印の材料流れに比べてA点寄りの図11の矢印で示す材料流れが生じ、この材料流れにより、後期成形工程S5で成形される伸びフランジ変形での材料不足が緩和され、割れの発生が防止される。
このため、成形初期において、縮みフランジ変形となる部位のみを先に成形することで、伸びフランジ変形となる部位側への材料流れを促進するようなねじり形状部25が成形され、成形後期において、伸びフランジ変形となる部位を成形することで、ねじり形状部25からの材料流れにより、伸びフランジ変形での材料不足を抑制して目標形状を成形できる。
材料は、引張強度が1180MPa級、板厚1.4mmの鋼板とした。
まず、比較例として、ねじり形状部25を成形することなく一工程で目標形状を成形し、天板部をパッドで押さえるパッドフォーム成形によるプレス成形を行った。
次に、本発明の実施例として、実施の形態で説明したプレス成形金型21を用いて、縦壁部5における壁深さが深い部位の下端辺11及び第1湾曲部17にフランジ部9を形成すると共に傾斜辺部13にねじり形状部25を成形する初期成形工程S3と、ねじり形状部25をフランジ部9に成形すると共に、第2湾曲部19と凹み辺部15にフランジ部9を形成して、目標形状に成形する後期成形工程S5を有し、いずれの成形工程も天板部をパッドで押さえるパッドフォーム成形としたプレス成形を行った。
他方、本発明の実施例では、フランジ部9の割れ・しわともに発生せず、高品質なプレス成形品1を得ることができた。
以上により、フランジ部を有し縦壁深さが大きく変化するプレス成形部品の成形に際し、伸びフランジ割れおよび縮みフランジしわを抑制するために本発明が有効であることが示された。
3 天板部
5 縦壁部
7 凹み部
9 フランジ部
11 深い部位の下端辺
13 傾斜辺部
15 凹み辺部
15a ブランク端部
17 第1湾曲部
19 第2湾曲部
20 中間成形品
21 プレス成形金型
23 上型
23a 天板成形部
23b 縦壁成形部
23c 下端辺フランジ成形部
23d 第1湾曲部フランジ成形部
23e 傾斜辺部フランジ成形部
23f 第2湾曲部フランジ成形部
23g 凹み辺部フランジ成形部
25 ねじり形状部
27 下パッド
27a 下パッド天板成形部
27b 下パッド縦壁成形部
27c 下パッド下端辺フランジ成形部
27d 下パッド第1湾曲部フランジ成形部
29 下型
29a 下型傾斜辺部フランジ成形部
29b 下型第2湾曲部フランジ成形部
29c 下型凹み辺部フランジ成形部
31 空洞部
33 ブランク
35 曲げ部
Claims (2)
- 天板部と、該天板部から連続する縦壁部であって側面視で天板部の反対側の辺部である下端辺が前記天板部側に凹む凹み部を有する縦壁部と、該縦壁部の下端辺に外向きに形成されたフランジ部とを有し、
前記凹み部が、壁深さが深い部位の下端辺から順に、該下端辺に連続する第1湾曲部、該第1湾曲部に連続する傾斜辺部、該傾斜辺部に連続する第2湾曲部、壁深さが浅い凹み辺部を有し、前記第1湾曲部に形成されるフランジ部が縮みフランジで、前記第2湾曲部に形成されるフランジが伸びフランジとなるプレス成形品を成形するプレス成形金型であって、
上型と、該上型と協働して前記天板部、前記縦壁部、前記縦壁部における壁深さが深い部位の下端辺及び前記第1湾曲部にフランジ部を形成すると共に、前記傾斜辺部にねじり形状部を形成する下パッドと、該下パッドに隣接して配置され、前記上型と協働して前記ねじり形状部をフランジ部に成形すると共に、前記傾斜辺部に連続する第2湾曲部と前記凹み辺部にフランジ部を形成する下型とを有し、
前記上型は、前記天板部を成形する天板成形部と、前記縦壁部を成形する縦壁成形部と、前記縦壁部の天板部の反対側の辺部である下端辺にフランジ部を成形する下端辺フランジ成形部と、前記第1湾曲部にフランジ部を成形する第1湾曲部フランジ成形部と、前記傾斜辺部にフランジ部を成形する傾斜辺部フランジ成形部と、前記第2湾曲部にフランジ部を成形する第2湾曲部フランジ成形部と、前記凹み辺部にフランジ部を成形する凹み辺部フランジ成形部とを有し、
前記下パッドは、下パッド天板成形部と、下パッド縦壁成形部と、下パッド下端辺フランジ成形部と、下パッド第1湾曲部フランジ成形部とを有し、
前記下型は、前記傾斜辺部にフランジ部を成形する下型傾斜辺部成形部と、前記第2湾曲部にフランジ部を成形する下型第2湾曲部フランジ成形部と、前記凹み辺部にフランジ部を成形する下型フランジ成形部とを有し、
成形初期に、前記上型と前記下パッドによって、前記天板部、前記縦壁部、前記縦壁部における壁深さが深い部位の下端辺及び前記第1湾曲部にフランジ部を形成すると共に、前記傾斜辺部にねじり形状部を形成し、
成形後期に、前記上型と前記下型によって、前記ねじり形状部をフランジ部に成形すると共に、前記第2湾曲部と前記凹み辺部にフランジ部を形成して、目標形状に成形できることを特徴とするプレス成形金型。 - 天板部と、該天板部から連続する縦壁部であって側面視で天板部の反対側の辺部である下端辺が前記天板部側に凹む凹み部を有する縦壁部と、該縦壁部の下端辺に外向きに形成されたフランジ部とを有し、
前記凹み部が、壁深さが深い部位の下端辺から順に該下端辺に連続する第1湾曲部、該第1湾曲部に連続する傾斜辺部、該傾斜辺部に連続する第2湾曲部、壁深さが浅い凹み辺部を有し、前記第1湾曲部に形成されるフランジ部が縮みフランジで、前記第2湾曲部に形成されるフランジが伸びフランジとなるプレス成形品を、請求項1に記載のプレス成形金型を用いて成形するプレス成形方法であって、
前記上型及び下パッドによって、前記天板部、前記縦壁部、前記縦壁部における壁深さが深い部位の下端辺及び前記第1湾曲部にフランジ部を形成すると共に前記傾斜辺部にねじり形状部を形成する初期成形工程と、
前記上型と前記下パッドでブランクを挟持した状態で、前記下型を上型に対して相対移動して、前記ねじり形状部をフランジ部に成形すると共に、前記第2湾曲部と前記凹み辺部にフランジ部を成形して、目標形状に成形する後期成形工程と、を備えたことを特徴とするプレス成形方法。
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