JP6921713B2 - 下地調整塗料組成物及び複層塗膜の形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート基材の表面に透明な複層塗膜を形成するために用いられる下地調整塗料組成物及び複層塗膜の形成方法に関する。
従来、コンクリート基材の表面に硬化性(塗料)組成物によって塗膜を形成することで、風雨や塩害によるコンクリート基材の経年劣化の進行を抑える技術、すなわち耐候性を付与する技術が知られている。更に、コンクリート基材の保全の観点からは、コンクリート基材の経年劣化に伴い表面に生じる亀裂や膨れ及び欠損等を早期に発見する必要があり、コンクリート基材の表面が目視で確認可能であることが求められる。そのため、コンクリート基材の表面に形成される塗膜はコンクリート基材の経年劣化の進行を抑える効果を有すると共に、透明であることが望ましい。
そこで、十分な補強効果と視認性を併せ持つコンクリート補強層として、エポキシ系樹脂からなるプライマー層と、可視光硬化型ビニルエステル樹脂からなる樹脂層と、補強ネット及び補強シートからなるコンクリート補強層をコンクリート基材の表面上に形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
ところで、コンクリート基材の表面に下地調整塗料組成物を形成する際にコンクリート基材の表面の巣穴由来の発泡を抑えるために、プライマー層を形成する場合がある。しかし、プライマー層を形成した箇所の明度が、他の箇所と比較して低くなると、コンクリート基材の表面が濡れ色になる現象が生じる。これにより、複層塗膜を通してコンクリート基材の表面に生じる亀裂等を目視で確認することが困難になる。従って、プライマー層を有する複層塗膜において、塗膜層が透明であることと共に、プライマー層の形成によりコンクリート基材の表面が濡れ色にならないことが必要である。
特許文献1に記載された発明は、複層塗膜の透明性は十分であるが、プライマー層の形成によりコンクリート基材の表面が濡れ色になるという問題がある。
そこで、コンクリート基材の表面を被覆する下地調整塗料組成物であって、高い透明性を有し且つ塗布によりコンクリート基材の表面が濡れ色にならない複層塗膜が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2007−2514号公報 特開2017−47558号公報
コンクリート基材の表面や、プライマー層上に塗布される下地調整塗料組成物(いわゆるパテ)には、コンクリート基材の表面にある巣穴に対しての巣穴埋め性、耐タレ性、貯蔵時の粘度変化が少ない貯蔵安定性のいずれもが良好であることが求められる。しかし、従来の下地調整塗料組成物において、これらの性質は必ずしも良好ではなく、特に巣穴埋め性において課題がある。
本発明は、透明な複層塗膜を形成でき、巣穴埋め性、耐タレ性、貯蔵安定性が良好な下地調整塗料組成物を提供することを目的とする。
本発明は、コンクリート基材の表面に透明な複層塗膜を形成するために用いられ、主剤(A)と、硬化剤(B)と、を含む下地調整塗料組成物であって、前記主剤(A)は、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む樹脂成分と、親水性フュームドシリカを含む粘度調整剤と、を含み、前記硬化剤(B)は、変性脂肪族ポリアミン化合物を含み、前記親水性フュームドシリカの平均粒子径は、7〜30nmであり、前記主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する前記親水性フュームドシリカの含有量は、3〜18質量部である下地調整塗料組成物に関する。
また、前記親水性フュームドシリカの平均粒子径は、12〜20nmであることが好ましい。
また、前記樹脂成分は、(メタ)アクリル樹脂を更に含むことが好ましい。
また、前記(メタ)アクリル樹脂は、架橋性シリル基を有し、前記硬化剤(B)は、有機錫化合物を更に含むことが好ましい。
また、前記粘度調整剤は、脂肪酸アミド化合物を更に含むことが好ましい。
また、前記硬化剤(B)は、シランカップリング剤を更に含むことが好ましい。
また、前記主剤(A)は、ヒンダードアミン系化合物を更に含むことが好ましい。
本発明は、コンクリート基材の表面に上記下地調整塗料組成物を塗布して下地調整層を形成する工程を含む複層塗膜の形成方法に関する。
また、前記下地調整層上に芳香環を有さないエポキシ樹脂と、変性脂肪族ポリアミン化合物と、扁平状の無機粒子と、を含む上塗塗料組成物を塗布して上塗層を形成する工程を更に含むことが好ましい。
また、前記上塗層の酸素透過度は、0.05mg/(cm・day)以下であることが好ましい。
本発明によれば、透明な複層塗膜を形成でき、巣穴埋め性、耐タレ性、貯蔵安定性が良好な下地調整塗料組成物を提供することができる。
<複層塗膜>
本実施形態に係る複層塗膜は、コンクリート基材の表面に形成されたプライマー層(I)と、プライマー層(I)上に形成された下地調整層(II)と、下地調整層(II)上に形成された上塗層(III)と、を含む。ここで、複層塗膜は、プライマー層(I)を含まなくてもよい。
なお、本明細書において、複層塗膜を透明な複層塗膜と表現する場合があるが、「透明」とは、複層塗膜を介して一方の側から、他方側の状態や物体を認識できるものであればよく、他方側が鮮明に認識できることを必要とするものではない。複層塗膜は、それを介して一方側から他方側の物体の状態を視認できるものであれば、着色されていてもよいし、濁っていてもよい。
本実施形態に係るコンクリート基材は、コンクリート構造物であってもよい。コンクリート構造物としては、例えば、橋梁、トンネル、高架道路、建築物等が挙げられる。複層塗膜は、プライマー層(I)、下地調整層(II)、及び上塗層(III)をコンクリート基材の表面上に順次配設することにより形成される。具体的には、プライマー塗料組成物をコンクリート基材の表面に塗装(塗布)し硬化させた後、更に下地調整塗料組成物を塗装し硬化させ、更に上塗塗料組成物を塗装し硬化させることで複層塗膜は形成される。
また、本実施形態に係る複層塗膜は、複層塗膜形成前のコンクリート基材の表面上のL*a*b*表色系におけるL値(明度)と、複層塗膜を形成した後の複層塗膜表面上のL値との差が−2.0〜4.0となることが好ましい。これにより、コンクリート基材の表面が濡れ色とならず、良好な視認性が確保される。
以下、プライマー塗料組成物、下地調整塗料組成物、上塗塗料組成物について順次説明する。
<プライマー塗料組成物>
プライマー塗料組成物は、有機溶剤形塗料、エマルジョン塗料を含む水性塗料又は無溶剤形のいずれの形態であってもよい。有機溶剤形塗料又は水性塗料としては、一液形塗料を用いてもよいし、主剤及び硬化剤からなる二液混合形塗料を用いてもよい。
<下地調整塗料組成物>
本実施形態に係る下地調整塗料組成物は、コンクリート基材の表面に透明な複層塗膜を形成するために用いられる。下地調整塗料組成物は、主剤(A)と、硬化剤(B)と、を含む。主剤(A)は、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)を含む樹脂成分と、親水性フュームドシリカ(g)を含む粘度調整剤と、を含む。
また、本実施形態に係る樹脂成分は、(メタ)アクリル樹脂(a)を更に含む。また、本実施形態に係る下地調整塗料組成物は、紫外線吸収性化合物(c)と、ヒンダードアミン系化合物(d)と、を更に含む。
また、本実施形態に係る粘度調整剤は、脂肪酸アミド化合物(e)を更に含む。
また、本実施形態に係る硬化剤(B)は、変性脂肪族ポリアミン化合物(h)を含み、シランカップリング剤(i)と、有機錫化合物(j)と、を更に含む。
[(メタ)アクリル樹脂(a)]
本実施形態に係る樹脂成分は、(メタ)アクリル樹脂(a)を含む。本実施形態に係る(メタ)アクリル樹脂(a)は、いわゆるアクリルシリコン樹脂であり、架橋性シリル基を有する。
(メタ)アクリル樹脂(a)は、架橋性シリル基含有エチレン性不飽和モノマーと、他のエチレン性不飽和モノマーとを共重合させることにより得られるものであってもよく、すでに重合体として存在するアクリル樹脂を、架橋性シリル基を有するシリケートオリゴマーで変性して得られるものであってもよい。架橋性シリル基を有するシリケートオリゴマーとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン又はテトラフェノキシシランもしくはこれらの加水分解縮合物が用いられる。
架橋性シリル基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリブトキシシラン及びγ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
他のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。
架橋性シリル基を有するシリケートオリゴマーでアクリル樹脂を変性する方法としては、特に限定されないが、通常のラジカル重合法が挙げられる。そのときに使用される有機溶剤としては、上記シリケートオリゴマーと(メタ)アクリル樹脂を溶解するものであれば適宜選択できる。その具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン等が挙げられる。
(メタ)アクリル樹脂(a)の有する架橋性シリル基としては、式(1)で表される官能基が挙げられる。
[化1]
−[Si(R2−b(Y)O]−Si(R3−a(Y) ・・・(1)
{式中、R、Rは、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R又はRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
加水分解性基としては、例えば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等の官能基が挙げられる。これらのうちでも、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、温和な条件で加水分解されることから取り扱いやすいという点で、アルコキシ基がとくに好ましい。アルコキシ基の中では炭素数の少ないものほど反応性が高くなる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基の順に反応性が低くなるので、目的や用途に応じてこれらの官能基を選択できる。
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合等により連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。特に、一般式(2)で表される架橋性シリル基が、シリル基の入手が容易である点で好ましい。
[化2]
−Si(R3−c(Y) ・・・(2)
(式中、R、Yは前記と同じ、cは1〜3の整数)
(メタ)アクリル樹脂(a)は、架橋性シリル基のケイ素同士がシロキサン結合を形成することで縮合する。本実施形態に係る樹脂成分が(メタ)アクリル樹脂(a)を含むことで、下地調整層(II)の耐候性を高められる。
主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部(本実施形態においては、主剤(A)の樹脂成分である(メタ)アクリル樹脂(a)と、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)との合計固形分100質量部)に対する(メタ)アクリル樹脂(a)の含有量は、20質量部以上であることが好ましく、40〜60質量部であることがより好ましい。
[水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)]
本実施形態に係る水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)は、硬化剤(B)に含まれる変性脂肪族ポリアミン化合物(h)と硬化反応する樹脂成分である。水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)は、芳香環を有さないので、耐候性が高い下地調整層(II)を形成できる。水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に水素原子を付加して得られる水添ビスフェノール型ジグリシジルエーテル(例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂)が挙げられる。水添ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、具体的には、エポライト4000(共栄社化学株式会社製)、EPICLON EXA−7015(DIC株式会社製)、ST−3000(新日鉄住金化学株式会社製)等が挙げられる。
主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)の含有量は、20〜80質量部であることが好ましく、35〜50質量部であることがより好ましい。水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)の含有量が20質量部未満の場合、下地調整層(II)の強度が低下する。水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)の含有量が80質量部を超える場合、下地調整層(II)の耐候性が低下する。
[紫外線吸収性化合物(c)]
本実施形態に係る主剤(A)は、紫外線吸収性化合物(c)を含む。紫外線吸収性化合物(c)は、下地調整層(II)の耐候性を向上させる。紫外線吸収性化合物(c)としては、例えば、トリアジン系化合物、マロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等が挙げられる。
トリアジン系化合物としては、例えば、2,6-ジフェニル−4−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[6(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−[4−[6(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの混合物、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。市販品としては、具体的には、チヌビン1577FF、チヌビン400、チヌビン411L(以上、チバ・ジャパン株式会社製)、CYAGARD UV1164L(三井化学株式会社製)等が挙げられる。
マロン酸エステル系化合物としては、例えば、2−(p−メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル−2,2−(1,4−フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2−(p−メトキシベンジリデン)−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル4−ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。市販品としては、具体的には、ホスタビンPR−25、ホスタビンB−CAP、ホスタビンPR−31(以上、クラリアントジャパン株式会社製)等が挙げられる。
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、2−メチル−2’−エトキシオキサルアニリド、2−エチル−2’−エトキシオキサルアニリド、4,4’−ジオクチルオキシオキサルアニリド、2,2’−ジエトキシオキサルアニリド、2,2’−ジオクチルオキシ−5,5’−ジ−第三ブトキサルアニリド、2,2’−ジドデシルオキシ−5,5’−ジ−第三ブトキサルアニリド、N,N’−ビス(3−ジメチルアミノプロピル)オキサルアミド、2−エトキシ−5−第三ブチル−2’−エトキサルアニリド及び2−エトキシ−2’−エチル−5,4’−ジ−第三ブトキサルアニリドとの混合物、o−及びp−メトキシ−二置換オキサルアニリドの混合物及びo−及びp−エトキシ−二置換オキサルアニリドの混合物等が挙げられる。市販品としては、具体的には、ホスタビンVSU、ホスタビン3206、ホスタビンJPV(以上、クラリアントジャパン株式会社製)、チヌビン312(チバ・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する紫外線吸収性化合物(c)の含有量は、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。紫外線吸収性化合物(c)の含有量が、10質量部を超える場合、形成される下地調整層(II)中で紫外線吸収性化合物(c)が凝集することで強度が低下する。
[ヒンダードアミン系化合物(d)]
本実施形態に係る主剤(A)は、ヒンダードアミン系化合物(d)を含む。ヒンダードアミン系化合物(d)は、下地調整層(II)の耐候性を向上させる。ヒンダードアミン系化合物とは、窒素原子に隣接する炭素原子には水素原子がないピペリジン環を有する化合物である。このようなピペリジン環としては、窒素原子に隣接する炭素原子にメチル基が結合している2,2,6,6−テトラメチルピペリジン環が挙げられる。ヒンダードアミン系化合物は、下地調整層(II)に紫外線が照射されることにより発生したラジカルを捕捉することで、下地調整層(II)の着色を防止する。
ヒンダードアミン系化合物(d)の市販品としては、具体的には、CHIMASSORB119、CHIMASSORB2020、CHIMASSORB944、チヌビン622、チヌビンB75、チヌビン783、チヌビン111、チヌビン791、チヌビンC353、チヌビン494、チヌビン492、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292、チヌビン5100、チヌビン765、チヌビン770、チヌビンXT850、チヌビンXT855、チヌビン440、チヌビンNOR371(以上、チバ・ジャパン株式会社製)、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、アデカスタブLA−501、アデカスタブLA−502XP、アデカスタブLA−503、アデカスタブLA−77、アデカスタブLX−335、アデカノールUC−605(以上、株式会社ADEKA製)、サノール(SANOL)LS770、サノールLS765、サノールLS292、サノールLS440、サノールLS744、サノールLS2626、サノールLS944(以上、三共ライフテック株式会社製)、ホスタビン(HOSTAVIN)N20、ホスタビンN24、ホスタビンN30、ホスタビンN321、ホスタビンPR31、ホスタビン3050、ホスタビン3051、ホスタビン3052、ホスタビン3053、ホスタビン3055、ホスタビン3058、ホスタビン3063、ホスタビン3206、ホスタビン3212、ホスタビンTB01、ホスタビンTB02、ナイロスタッブ(Nylostab)S−EED(以上、クラリアントジャパン株式会社製)、トミソーブ77(吉富ファインケミカル株式会社製)、サイアソーブ(CYASORB)UV3346、サイアソーブUV3529、サイアソーブUV3853(サンケミカル株式会社製)、スミソーブ(SUMISORB)TM61(住友化学株式会社製)、グッドライト(GOODRITE)UV3159、グッドライトUV3034、グッドライトUV3150、グッドライト3110×128(以上BFGoodrich社製)、ユビヌル(UVINUL)4049、ユビヌル4050、ユビヌル5050(以上、BASF社製)等が挙げられる。
主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対するヒンダードアミン系化合物(d)の含有量は、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。ヒンダードアミン系化合物(d)の含有量が、5質量部よりも高い場合、下地調整層(II)の強度が低下する傾向にある。
[脂肪酸アミド化合物(e)]
本実施形態に係る粘度調整剤は、脂肪酸アミド化合物(e)を含む。脂肪酸アミド化合物(e)は、主剤(A)及び硬化剤(B)を混合した混合塗料組成物に構造粘性を付与する役割を果たす。
脂肪酸アミド化合物(e)の融点は、100℃〜140℃であることが好ましい。脂肪酸アミド化合物(e)の融点が、100℃未満であると主剤(A)及び硬化剤(B)を混合した混合塗料組成物の粘度が低下することで、十分な耐タレ性が得難い。一方、脂肪酸アミド化合物(e)の融点が、140℃を超えると、低温環境下において脂肪酸アミド化合物(e)が結晶化しやすくなるので、下地調整層(II)の透明性が低下する。
脂肪酸アミド化合物(e)は、第一級アミド及び/又は第二級アミドであることが好ましい。アミドの窒素原子に複数の置換基が結合した化合物を使用せず、第一級アミド及び/又は第二級アミドを使用することで、主剤(A)及び硬化剤(B)を混合した混合塗料組成物により優れた構造粘性を付与することが可能となる。
脂肪酸アミド化合物(e)としては、例えば、パルミチン酸アミド(融点100℃)、ステアリン酸アミド(融点100℃)、ベヘン酸アミド(融点100℃)、ヒドロキシステアリン酸アミド(融点110℃)等の飽和脂肪酸モノアミド、メチロールステアリン酸アミド(融点111℃)、メチロールベヘン酸アミド(融点110℃)等のメチロールアミド類、メチレンビスラウリン酸アミド(融点131℃)、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点140℃)、メチレンビスオレイン酸アミド(融点131℃)、エチレンビスイソステアリン酸アミド(融点100℃)、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点138℃)、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点140℃)、エチレンビスオレイン酸アミド(融点118℃)、エチレンビスエルカ酸アミド(融点115℃)、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド(融点119℃)、m−キシリレンビスステアリン酸アミド(融点123℃)等のビスアミド類等の脂肪酸エステルアミドが挙げられる。
なお、本願で規定する脂肪酸アミド化合物(e)の融点の好ましい範囲100℃〜140℃に含まれない脂肪酸アミド化合物としては、例えば、ラウリン酸アミド(融点86℃)、オレイン酸アミド(融点75℃)、エタノールアミンジステアレート(融点81℃)、エルカ酸アミド(融点82℃)、リシノール酸アミド(融点65℃)、メチレンビスステアリン酸アミド(融点143℃)、エチレンビスカプリル酸アミド(融点165℃)、エチレンビスラウリン酸アミド(融点157℃)、エチレンビスステアリン酸アミド(融点143℃)、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド(融点144℃)、エチレンビスベヘン酸アミド(融点141℃)、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド(融点143℃)、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド(融点146℃)等が挙げられる。
脂肪酸アミド化合物(e)として、上記化合物を溶剤でペースト化したものが市販されている。市販品としては、具体的には、A670−20M(溶剤:ミネラルターペン、ベンジルアルコール、有効成分20%、融点134℃)、A650−20X(溶剤:キシレン、エチルアルコール、有効成分20%、融点100℃以上)、A603−20X(溶剤:キシレン、有効成分10%、融点100℃以上)、603−10X(溶剤:キシレン、有効成分10%、融点100℃以上)、6850−20X(溶剤:キシレン、エチルアルコール、有効成分20%、融点100℃以上)、6840−10X(溶剤:キシレン、エチルアルコール、有効成分10%、融点100℃以上)、6820−20M(溶剤:ミネラルターペン、ベンジルアルコール、有効成分20%、融点100℃以上)、6810−20X(溶剤:キシレン、エチルアルコール、有効成分20%、融点100℃以上)、6900−10X(溶剤:キシレン、エチルアルコール、有効成分10%、融点100℃以上)、6900−20XN(溶剤:キシレン、エチルアルコール、有効成分20%、融点134℃以上)、6900−20X(溶剤:キシレン、エチルアルコール、有効成分20%、融点100℃以上)(以上、楠本化成株式会社製)等が挙げられる。
主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する脂肪酸アミド化合物(e)の含有量は、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.8〜2.8質量部であることがより好ましい。脂肪酸アミド化合物(e)の含有量が10質量部よりも高い場合、下地調整層(II)の透明性が低下する(特に、低温で下地調整層(II)を形成する場合に透明性の低下が顕著である)。
[フュームドシリカ]
一般にフュームドシリカは、疎水性フュームドシリカ(f)と親水性フュームドシリカ(g)とに大別される。本実施形態に係る粘度調整剤は、平均粒子径が7〜30nmの親水性フュームドシリカ(g)を含む。フュームドシリカが、親水性であるか、疎水性であるかということは、主剤(A)の粘度に影響を与える。なお、本明細書において、疎水性フュームドシリカ(f)とは、疎水性表面処理が施されたフュームドシリカのことであり、親水性フュームドシリカ(g)とは、親水性表面処理が施されたフュームドシリカのことである。
疎水性フュームドシリカ(f)、親水性フュームドシリカ(g)及び後述する無機粒子(z)の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(SALD−3100:株式会社島津製作所製)によって測定することが可能である。
本実施形態に係る粘度調整剤が親水性フュームドシリカ(g)を含有することで、主剤(A)の粘度が増加する。親水性フュームドシリカ(g)の市販品としては、具体的には、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のHDKシリーズ、トクヤマ株式会社製のレオロシールシリーズ、日本アエロジル社製のAEROSILシリーズ、CABOT株式会社製のCAB−O−SILシリーズ等が挙げられる。
親水性フュームドシリカ(g)の平均粒子径は、下地調整塗料組成物(主剤(A))の粘度の増減に影響を与える。親水性フュームドシリカ(g)の平均粒子径が30nm以上であると、粘度を十分に高めることが難しく、貯蔵安定性が低下する。
更に、本実施形態に係る親水性フュームドシリカ(g)の平均粒子径は、7〜30nmであり、好ましくは12〜20nmである。親水性フュームドシリカ(g)の平均粒子径が、7nm未満であると、塗料への混合性が悪くなり、塗料製造に多くの時間を要する。親水性フュームドシリカ(g)の平均粒子径が、30nmを超えると、粘性の発現効果が低くなる。
本実施形態において、主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する親水性フュームドシリカ(g)の含有量は、3〜18質量部である。親水性フュームドシリカ(g)の含有量が、3質量部未満であると、巣穴埋め性が低下する。また、親水性フュームドシリカ(g)の含有量が、18質量部を超えると、透明性が低下する。
本実施形態に係る硬化剤(B)は、変性脂肪族ポリアミン化合物(h)を含む。本実施形態に係る変性脂肪族ポリアミン化合物(h)は、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)と反応して耐候性が高い下地調整層(II)を形成する。変性脂肪族ポリアミン化合物(h)は、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)との反応性が高く、(メタ)アクリル樹脂(a)との相溶性も高い。
変性脂肪族ポリアミン化合物(h)としては、例えば、脂肪族ポリアミンのエポキシ付加物、脂環族(脂環式)ポリアミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。変性脂肪族ポリアミン化合物(h)としては、例えば、トーマイド225X、フジキュアーFXU870、フジキュアー5420F(以上、株式会社T&K TOKA社製)や、アンカマイド500(エアプロダクツジャパン株式会社製)が挙げられる。
なお、上塗塗料組成物に用いる変性脂肪族ポリアミン化合物と、下地調整塗料組成物に用いる変性脂肪族ポリアミン化合物とは、同じ変性脂肪族ポリアミン化合物を用いても良く、異なる変性脂肪族ポリアミン化合物を用いても良い。
硬化剤(B)全配合量に対する変性脂肪族ポリアミン化合物(h)の含有量は、60〜80質量部であることが好ましい。変性脂肪族ポリアミン化合物(h)の含有量が、60質量部未満の場合、下地調整層(II)の強度や、コンクリート基材の表面への接着性が低下する傾向にある。変性脂肪族ポリアミン化合物(h)の含有量が、80質量部よりも高い場合、下地調整層(II)の耐候性(複層塗膜の耐候性)が低下し、黄変しやすくなる傾向にある。
本実施形態に係る硬化剤(B)は、シランカップリング剤(i)を含む。本実施形態に係るシランカップリング剤(i)は、(メタ)アクリル樹脂(a)の重合体と、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)及び変性脂肪族ポリアミン化合物(h)との反応物との相溶性を高め、下地調整層(II)の強度を更に向上させる。
シランカップリング剤(i)としては、アミノ基含有シランカップリング剤及びエポキシ基含有シランカップリング剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤を用いた場合には、アミノ基含有シランカップリング剤のアミノ基が水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)のエポキシ基と反応し、アミノ基含有シランカップリング剤に由来するシラノール基が(メタ)アクリル樹脂(a)の架橋性シリル基と反応する。エポキシ基含有シランカップリング剤を用いた場合には、エポキシ基含有シランカップリング剤のエポキシ基が変性脂肪族ポリアミン化合物(h)のアミノ基と反応し、エポキシ基含有シランカップリング剤に由来するシラノール基が(メタ)アクリル樹脂(a)の架橋性シリル基と反応する。このような反応によって、(メタ)アクリル樹脂(a)の重合体と、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)及び変性脂肪族ポリアミン化合物(h)の反応物とが架橋され、下地調整層(II)の強度が更に向上する。
アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基含有シランカップリング剤の市販品としては、具体的には、KBE−903(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、KBM−602(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)及びKBM−603(N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)(以上、全て信越化学工業社製)等が挙げられる。
エポキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基含有シランカップリング剤の市販品としては、具体的には、KBM−403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE−403(3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、KBE−402(3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)、KBM−303(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、KBM−402(3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)(以上、全て信越化学工業社製)等が挙げられる。
変性脂肪族ポリアミン化合物(h)の全固形分に対するシランカップリング剤(i)の含有量は、0.1〜40質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましい。シランカップリング剤(i)の含有量が、40質量部を超える場合、下地調整塗料組成物の硬化性が低下する傾向にある。
本実施形態に係る硬化剤(B)は、有機錫化合物(j)を含む。本実施形態に係る有機錫化合物(j)は、(メタ)アクリル樹脂(a)の架橋性シリル基の活性を高め、主剤(A)を硬化させる硬化触媒として機能する。
有機錫化合物(j)としては、例えば、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫等が挙げられる。変性脂肪族ポリアミン化合物(h)の全固形分に対する有機錫化合物(j)の含有量は、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。有機錫化合物(j)の含有量が、0.01〜20質量部であれば十分に(メタ)アクリル樹脂(a)の架橋性シリル基の活性を高められる。
本実施形態に係る下地調整塗料組成物は、その機能を阻害しない範囲内で、必要に応じて上記成分以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、縮合触媒、紫外線吸収性化合物、酸化防止剤、硬化性調整剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、有色粒子、消泡剤、発泡剤、防蟻剤、防かび剤等が挙げられる。
<上塗塗料組成物>
本実施形態に係る上塗塗料組成物は、コンクリート基材の表面に透明な複層塗膜を形成するために用いられる。上塗塗料組成物は、エポキシ樹脂(x)と、変性脂肪族ポリアミン化合物(y)と、扁平状の無機粒子(z)と、を含むことが好ましい。
本実施形態に係るエポキシ樹脂(x)は、芳香環を有さない。エポキシ樹脂(x)が芳香環を有さないことで、耐候性が高い上塗層(III)を形成できる。芳香環を有さないエポキシ樹脂(x)としては、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンジルグリコールジグリシジルエーテル、グレセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等を例示することができる。
上塗塗料組成物中の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂と、下地調整塗料組成物中の上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)とは同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
エポキシ樹脂(x)としては、エポキシ基を一分子中に少なくとも2個有するものが、変性脂肪族ポリアミン化合物(y)との反応性が高く、硬化物が3次元的網目を作りやすいことから好ましい。また、本実施形態に係る上塗塗料組成物を硬化させた時の硬化物が透明であるためには、エポキシ樹脂(x)の他の成分との相溶性が高いことが好ましい。例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、他の成分との相溶性が高く、透明な硬化物を得やすい上に、上塗層(III)
が耐候性に優れることから好ましい。
本実施形態に係る上塗塗料組成物の全固形分におけるエポキシ樹脂(x)の含有量は、25〜70質量部であることが好ましい。上塗塗料組成物の全固形分におけるエポキシ樹脂(x)の含有量が、25質量部未満の場合、上塗層(III)の強度や、下地調整層(II)への接着性が低下する傾向にある。上塗塗料組成物の全固形分におけるエポキシ樹脂(x)の含有量が、70質量部よりも高い場合、上塗層(III)の耐候性が低下し、黄変しやすくなる傾向にある。
本実施形態に係る変性脂肪族ポリアミン化合物(y)は、エポキシ樹脂(x)と反応して耐候性が高い上塗層(III)を形成する。上塗塗料組成物中の変性脂肪族ポリアミン化合物(y)と、下地調整塗料組成物中の上記変性脂肪族ポリアミン化合物(h)とは同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
本実施形態に係る上塗塗料組成物の全固形分における変性脂肪族ポリアミン化合物(y)の含有量は、2〜26質量部であることが好ましい。上塗塗料組成物の全固形分における変性脂肪族ポリアミン化合物(y)の含有量が、2質量部未満の場合、上塗層(III)の強度や、コンクリート基材の表面への接着性が低下する傾向にある。上塗塗料組成物の全固形分における変性脂肪族ポリアミン化合物(y)の含有量が、26質量部よりも高い場合、上塗層(III)の耐候性が低下し、黄変しやすくなる傾向にある。
本実施形態に係る無機粒子(z)は、扁平状である。また、無機粒子(z)は、マイカ及びガラスフレークの少なくとも一方であり、その平均アスペクト比は、20〜1,000である。無機粒子(z)として平均アスペクト比が上記範囲のマイカ及びガラスフレークを用いることで、上塗層(III)の酸素遮断性を向上させることができる。無機粒子(z)の平均アスペクト比が、20未満の場合には上塗層(III)の酸素遮断性が低下し、1,000を超える場合には上塗塗料組成物の取り扱いが難しくなる。また、無機粒子(z)の平均アスペクト比は、20〜200であることがより好ましく、32〜150であることが更に好ましい。また、上塗層(III)の隠蔽率を低下させることで、上塗層(III)の透明性を向上させる観点から、無機粒子(z)はガラスフレークであることが好ましい。
なお、無機粒子(z)の平均アスペクト比は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(LMS−30;株式会社セイシン企業製)による50%平均粒子径(L)、及び透過型電子顕微鏡による面間隔の平均厚さ(a)から、平均アスペクト比=L/aとして算出することができる。
無機粒子(z)の平均粒子径は、10〜1,000μmであることが好ましい。無機粒子(z)の平均粒子径が、10μm未満であると上塗層(III)の酸素遮断性が低下する傾向にあり、1,000μmを超えると上塗層(III)の透明性が低下する傾向にある。
無機粒子(z)として用いられるマイカとしては、例えば、A−21S(平均アスペクト比70、平均粒子径23μm)、A−41S(平均アスペクト比80、平均粒子径47μm)、SYA−21RS(平均アスペクト比90、平均粒子径27μm)、B−82(平均アスペクト比100、平均粒子径180μm)(以上、全て株式会社ヤマグチマイカ製)が挙げられる。
また、無機粒子(z)として用いられるガラスフレークの市販品としては、具体的には、RCF−600(平均アスペクト比120、平均厚さ5μm、粒子径150〜1,700μmの成分が占める割合が80%以上)、RCF−2300(平均アスペクト比1150、平均厚さ2μm、粒子径150〜1,700μmの成分が占める割合が85%以下)、RCF−160(平均アスペクト比32、平均厚さ5μm、粒子径45〜300μmの成分が占める割合が65%以上)、(以上、全て日本板硝子株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態に係る上塗塗料組成物の全固形分における無機粒子(z)の含有量は、6〜28質量部であることが好ましい。上塗塗料組成物の全固形分における無機粒子(z)の含有量が、6質量部未満の場合、上塗層(III)の酸素遮断性が低下する。上塗塗料組成物の全固形分における無機粒子(z)の含有量が、28質量部よりも高い場合、上塗層(III)の透明性が失われる。無機粒子(z)の含有量は、8〜22質量部であることがより好ましく、10〜20質量部であることが更に好ましい。
本実施形態に係る上塗塗料組成物は、架橋性シリル基を少なくとも1個有する(メタ)アクリル樹脂を含有することが好ましい。上塗塗料組成物中の(メタ)アクリル樹脂と、下地調整塗料組成物中の(メタ)アクリル樹脂(a)とは同じものであってもよく、異なるものであってもよい。(メタ)アクリル樹脂は、架橋性シリル基のケイ素同士がシロキサン結合を形成することで縮合する。本実施形態に係る上塗塗料組成物が(メタ)アクリル樹脂を更に含有することで、より耐候性が高い上塗層(III)を形成できる。
本実施形態に係る上塗塗料組成物の全固形分における(メタ)アクリル樹脂の含有量は、30〜70質量部であることが好ましく、50〜60質量部であることがより好ましい。上塗塗料組成物の全固形分における(メタ)アクリル樹脂の含有量が、30質量部未満の場合、上塗層(III)の耐候性が低下し、黄変しやすくなる傾向にある。上塗塗料組成物の全固形分における(メタ)アクリル樹脂の含有量が、70質量部よりも高い場合、相対的に架橋性シリル基の量が大きくなるので、得られる上塗塗料組成物の貯蔵安定性が低下しやすくなる傾向にある。
更に、本実施形態に係る上塗塗料組成物は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上塗塗料組成物中のシランカップリング剤と、下地調整塗料組成物中のシランカップリング剤(i)とは同じものであってもよく、異なるものであってもよい。シランカップリング剤は、上塗塗料組成物が上塗層(III)を形成する際に、(メタ)アクリル樹脂の重合体と、エポキシ樹脂(x)及び変性脂肪族ポリアミン化合物(y)の反応物との相溶性を高め、上塗層(III)の強度を更に向上させる。
本実施形態に係る上塗塗料組成物の全固形分におけるシランカップリング剤の含有量は、0.1〜20質量部であることが好ましい。上塗塗料組成物の全固形分におけるシランカップリング剤の含有量が、0.1質量部未満の場合、上塗層(III)の透明性が低下する傾向にある。上塗塗料組成物の全固形分におけるシランカップリング剤の含有量が、20質量部を超える場合、上塗塗料組成物の硬化性が低下する傾向にある。
上述したように、本実施形態に係る下地調整塗料組成物及び上塗塗料組成物は、主剤と硬化剤とが用いられるいわゆる二液混合形の塗料組成物である。これらの主剤及び硬化剤の調製方法としては、特別の方法を必要とせず、当業者において通常用いられる方法を使用することができる。
例えば主剤の調製方法としては、樹脂ビヒクル成分、すなわち、架橋性シリル基を少なくとも1個有する(メタ)アクリル樹脂(a)と水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)を予めワニスにしたものに、上記添加剤等のその他の成分を混入し、ディスパー、2軸ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル、プラネタリミキサー等の分散機で分散することにより調製する方法が挙げられる。
また、例えば硬化剤の調製方法としては、変性脂肪族ポリアミン化合物(h)と、シランカップリング剤(i)と、更に必要に応じて有機溶媒を混入し、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル等の分散機で分散することにより調製する方法が挙げられる。
<プライマー層(I)、下地調整層(II)、上塗層(III)の形成>
本実施形態に係るプライマー層(I)、下地調整層(II)及び上塗層(III)は、それぞれ混合工程と、塗装工程と、硬化工程と、を有する。なお、一液形塗料を用いる場合、混合工程は有さない。
混合工程では、上記実施形態における主剤及び硬化剤を混合して混合塗料組成物(混合された各塗料組成物)を得る。
混合工程における上記二液混合形の塗料組成物の主剤及び硬化剤の混合方法は特に限定されない。混合方法としては、主剤及び硬化剤を配合し、ハンドミキサーやスタティックミキサーで混合する方法が挙げられる。
主剤及び硬化剤の配合比は、全固形分換算で70/30〜90/10とすることが好ましい。このような配合比とすることで、塗膜の形成が円滑に進行する。なお、主剤及び硬化剤以外の第三成分を必要に応じて添加してもよい。
本実施形態に係る各塗料組成物の全固形分濃度は、80〜100質量部であることが好ましい。各塗料組成物の全固形分濃度が、80質量部未満であると、混合塗料組成物の構造粘性が低下する傾向にある。また、各塗料組成物が(メタ)アクリル樹脂を含有する場合には、(メタ)アクリル樹脂のシリル基と反応する官能基を有さない有機溶剤を、混合塗料組成物に添加して、適正な粘度に調整することも可能である。その具体例としては、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、キシレン等が挙げられる。
塗装工程では、各塗料組成物を、コテ又はローラーを用いて、硬化後の合計複層膜厚(目標乾燥膜厚)が300μm〜1,500μmとなるように、コンクリート構造物の基材の表面に塗装する。本実施形態において、コテ又はローラーを用いて手塗りによって塗装するので、コンクリート構造物の設置された現場においても簡便に作業を行うことができる。本実施形態では、プライマー塗料組成物の塗装工程においては刷毛又はローラーを用い、下地調整塗料組成物及び上塗塗料組成物の塗装工程においてはコテを用いることが好ましい。
塗装工程において、各塗料組成物を、硬化後の合計膜厚が300μm未満となるように塗装した場合、コンクリート基材の防食及び保護効果が低くなってしまう。一方、混合塗料組成物を、硬化後の膜厚が1,500μmを超えるように塗装した場合、複層塗膜の形成のために使用する各塗料組成物の量が多くなるのでコストが高くなる上に、複層塗膜の透明性が低下する。更に、垂直面において塗料流れ(タレ)が生じるため、塗装作業性が著しく低下する。硬化後の合計膜厚が700μm〜1,300μmとなるように塗装することがより好ましい。
硬化工程では、コンクリート基材の表面に塗装された各塗料組成物を硬化させて透明な塗膜を形成させる。硬化工程における、混合塗料組成物の硬化方法は特に限定されないが、通常コンクリート基材は屋外に設置されているので、自然条件で放置することにより塗膜を形成させる。
本実施形態においては、コンクリート基材の表面に、プライマー塗料組成物を塗装(塗布)し、硬化させることでプライマー層(I)を形成する。その後、プライマー層(I)上に下地調整塗料組成物を塗布し、硬化させることで下地調整層(II)を形成する。その後、下地調整層(II)上に上塗塗料組成物を塗布し、硬化させることで上塗層(III)を形成する。これにより透明な複層塗膜を形成する。
本実施形態に係る複層塗膜は、予防保全をする目的で、建造直後のコンクリート基材に対して適用してもよいし、補修をする目的で、既に亀裂の入ってしまったコンクリート基材に対して適用してもよい。また、工場等で予め製造されたいわゆるプレキャストコンクリート製品に適用してもよい。
上記の上塗層(III)の酸素透過度は、0.05mg/(cm・day)以下であることが好ましい。上塗層(III)の酸素透過度が0.05mg/(cm・day)を超える場合、無機粒子(z)の含有量が多くなるので形成される上塗層(III)の透明性が損なわれる。
酸素透過度の測定は、製科研式フィルム酸素透過率計を用いて行うことができる。
上記の上塗層(III)の隠蔽率は、45%以下であることが好ましい。硬化後の膜厚が300μmである上塗層(III)の隠蔽率が45%を超える場合には、上塗層(III)の透明性が損なわれるので、コンクリート基材の表面の状態を観察するのが困難になる。なお、硬化後の膜厚が300μmである上塗層(III)の隠蔽率は5〜45%であることが好ましい。硬化後の膜厚が300μmである上塗層(III)の隠蔽率が5%未満である場合には、実質的に無機粒子(z)の配合量が少なくなるため、上塗層(III)の酸素透過度が大きくなる傾向にある。
上塗層(III)の隠蔽率は以下のような方法で求めることができる。
まず、JIS K 5600−4−1 Bに準拠した、塗料の一般的な試験方法に用いる隠蔽率試験紙(日本テストパネル株式会社製)に、上塗塗料組成物を塗装する。次いで、23℃で7日間放置した試験紙について、色彩色差計(コニカミノルタ社製、CR―400)を用いて、白色部(YW)と黒色部(YB)における三刺激値Yを測定し、隠蔽率YB/YWを百分率で算出する。
以上説明したように、本実施形態に係る下地調整塗料組成物は、コンクリート基材の表面に透明な複層塗膜を形成するために用いられ、主剤(A)と、硬化剤(B)と、を含む下地調整塗料組成物であって、主剤(A)は、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む樹脂成分と、親水性フュームドシリカを含む粘度調整剤と、を含み、硬化剤(B)は、変性脂肪族ポリアミン化合物を含み、親水性フュームドシリカの平均粒子径は、7〜30nmであり、主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する親水性フュームドシリカの含有量は、3〜18質量部である。これにより、巣穴埋め性、耐タレ性、貯蔵安定性が良好な下地調整塗料組成物によって透明な複層塗膜の下地調整層(II)を形成できる。
また、本実施形態に係る親水性フュームドシリカの平均粒子径は、好ましくは12〜20nmである。これにより、下地調整塗料組成物の巣穴埋め性、耐タレ性をより高められる。
また、本実施形態に係る樹脂成分は、(メタ)アクリル樹脂(a)を更に含む。これにより、下地調整層(II)の耐候性を高められる。
また、本実施形態において、(メタ)アクリル樹脂(a)は、架橋性シリル基を有し、硬化剤(B)は、有機錫化合物(j)を更に含む。これにより、下地調整層(II)の強度を高められる。
また、本実施形態に係る粘度調整剤は、脂肪酸アミド化合物(e)を含む。これにより、主剤(A)及び硬化剤(B)を混合した混合塗料組成物に構造粘性が付与されるので、下地調整塗料組成物の巣穴埋め性、耐タレ性をより高められる。
また、本実施形態に係る硬化剤(B)は、シランカップリング剤(i)を更に含む。これにより、下地調整層(II)の強度を高められる。
また、本実施形態に係る主剤(A)は、ヒンダードアミン系化合物(d)を含む。これにより、下地調整層(II)の強度を高められる。
また、本実施形態に係る複層塗膜の形成方法は、コンクリート基材の表面に下地調整塗料組成物を塗布して下地調整層(II)を形成する工程を含む。また、下地調整層上に芳香環を有さないエポキシ樹脂と、変性脂肪族ポリアミン化合物と、扁平状の無機粒子と、を含む上塗塗料組成物を塗布して上塗層を形成する工程を更に含む。また、上塗層(III)の酸素透過度は、0.05mg/(cm・day)以下である。これにより、上塗層(III)が十分な膜厚となっても透明性が損なわれない。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
例えば、上塗層(III)を形成する上塗塗料組成物は、エポキシ樹脂(x)と、変性脂肪族ポリアミン化合物(y)と、扁平状の無機粒子(z)と、を含む例を説明したが、これに限定されない。上塗塗料組成物は、エポキシ樹脂(x)、変性脂肪族ポリアミン化合物(y)、扁平状の無機粒子(z)を含まなくてもよい。
<下地調整塗料組成物>
表1及び表2に示した質量比率(固形分の質量比率、質量部)で、主剤(A)、硬化剤(B)の各成分を調製することにより、各実施例、比較例の下地調整塗料組成物を得た。なお、実施例1と実施例17の下地調整塗料組成物は同様である。
[主剤(A)]
各実施例、比較例の主剤(A)には、以下の市販品を用いた。
・(メタ)アクリル樹脂(a):TAポリマーSA120S、カネカ社製
・水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b):エポライト4000、共栄社化学社製
・紫外線吸収性化合物(c):ホスタビン3206、クラリアントジャパン社製
・ヒンダードアミン系化合物(d):CHIMASSORB119、チバ・ジャパン社製
各実施例、比較例の主剤(A)のうち、粘度調整剤には、以下の市販品を用いた。
・脂肪酸アミド化合物(e):ステアリン酸アミド、和光純薬工業社製
・フュームドシリカA:アエロジル200(親水性、粒子径12nm)、日本アエロジル社製
・フュームドシリカB:アエロジル90G(親水性、粒子径20nm)、日本アエロジル社製
・フュームドシリカC:アエロジル130(親水性、粒子径16nm)、日本アエロジル社製
・フュームドシリカD:アエロジル300(親水性、粒子径7nm)、日本アエロジル社製
・フュームドシリカE:sicastar43−00−301(親水性、粒子径30nm)、コアフロント社製
・フュームドシリカF:sicastar43−00−501(親水性、粒子径50nm)、コアフロント社製
・フュームドシリカG:アエロジルRX200(疎水性、粒子径12nm)、日本アエロジル社製
・フュームドシリカH:アエロジルRY200(疎水性、粒子径12nm)、日本アエロジル社製
[硬化剤(B)]
各実施例、比較例の硬化剤(B)には、以下の市販品を用いた。
・変性脂肪族ポリアミン化合物(h):フジキュアー5420F、T&K TOKA社製
・シランカップリング剤(i):KBM―602、信越化学工業社製
・有機錫化合物(j):ジブチル錫オキシド、東京化成工業社製
<下地調整塗料組成物の評価>
[粘度、TI値]
各実施例、比較例の主剤(A)を粘度(TI値)の評価に用いた。各実施例、比較例の主剤(A)(以下「粘度評価試験液」という。)の温度を23℃に調節し、ブルックフィールド型回転粘度計を使用して測定条件23℃にて、低速(6rpm)で攪拌した際の粘度と高速(60rpm)で攪拌した際の粘度を測定し、表1及び表2に示した。その結果をもとに低速攪拌での粘度と高速攪拌での粘度との比(6rpmで攪拌した際の粘度(Pa・s)/60rpmで攪拌した際の粘度(Pa・s))を算出し、これを貯蔵安定試験前のTI値として表1及び表2に示した。
続いて、粘度評価試験液を50℃のインキュベーターに投入し4週間させた後でTI値を算出し、算出された値を貯蔵安定試験後のTI値として表1及び表2に示した。貯蔵安定試験前後のTI値の差は、±0.5未満であることが好ましい。
続いて、粘度評価試験液を5℃に温度調節し、TI値を算出し、算出された値を低温(5℃)でのTI値として表1及び表2に示した。5℃でのTI値と、23℃でのTI値との差は、0.5未満であることが好ましい。
[巣穴埋め性]
試験板(100mm×100mm×100mmのモルタル、水:セメント:砂=0.6:1:2)にドリルで直径1.5cm、深さ4cmの穴をあけ、各実施例、比較例の下地調整塗料組成物(主剤(A)と硬化剤(B)の混合物)をヘラにて穴を埋めるように塗装した。なお、塗装の際はできる限り穴のみに試験塗液が充填されるように、力を加えて塗装した。23℃、相対湿度50%で24時間保持した後、埋めた穴を確認し、穴から垂れている塗膜の長さ(cm)をノギスで測定し、表1及び表2に示した。なお、垂れている長さは、3cm以内であることが好ましく、2cm以内であることが更に好ましい。
[耐候性(色差)]
試験板(70mm×70mm×20mmのモルタル、水:セメント:砂=0.6:1:2)に、各実施例、比較例の下地調整塗料組成物(主剤(A)と硬化剤(B)の混合物)を、コテにて塗装した。なお、塗装する混合塗料組成物の量は、乾燥膜厚が300μmとなる量とした。続いて、試験板表面の塗膜にスーパーUV試験機(アイスーパーテスターSUV−W151、岩崎電気株式会社製)を用いて、波長295〜450nm、照度100mW/cm、ブラックパネル温度63±3℃の紫外線を、光源から240nmの距離で照射した。紫外線の照射4時間、結露(イオン交換水シャワーリング)4時間、休止0.1時間のサイクルを、紫外線の照射時間が合計100時間となるまで繰り返した。紫外線を100時間照射した後の、塗膜の黄変度を確認した。
黄変度は、JIS K 5600 4−1 B法に準拠した隠蔽率試験紙の白色部に塗膜をあわせ、b値をJIS K 7105(2004年度)にしたがって反射法で測定し、b値と反射前後の*値との差(色差Δb)を求めた。結果を表1及び表2に示した。Δbが20未満であることが好ましく、5未満であることがより好ましい。
[タレ性(塗装作業性)]
塗装試験板(材質:石綿スレート板、縦300mm×横200mm)の横方向の端部から5cmの領域(縦300mm×横50mm)を養生テープ(日東電工株式会社製、商品名:マスキングテープNo.720建築塗装用)で覆った。次に、当該塗装試験板を水平面に置き、各実施例、比較例の下地調整塗料組成物(主剤(A)と硬化剤(B)の混合物)を、コテにて塗装した。なお、塗装する混合塗料組成物の量は、乾燥膜厚が300μmとなる量とした。塗装後直ぐに塗装試験板から養生テープを剥がし、次いで、養生テープにて覆われていた部分が下側になるように塗装試験板を垂直面に設置し10分間放置した後、タレの発生状態について目視にて確認をした。それぞれの混合塗料組成物について、養生テープにて覆われていた部分と覆われていなかった部分の境界を基準として、生じたタレの長さをノギスにて測定し、結果を表1及び表2に示した。タレの長さは3cm未満であることが好ましく、1cm未満であることがより好ましい。
<塗膜の評価>
[酸素透過度]
テフロン(登録商標)板上に離型紙を敷き、実施例17の上塗塗料組成物を硬化後の膜厚(乾燥膜厚)が750μmとなるよう塗装し、乾燥した後、離型紙を剥がすことで遊離塗膜を得た。塗装後、28日間、温度23℃、相対湿度50%で養生した。酸素透過度の測定は、製科研式フィルム酸素透過率計を用いて、下記の手順で行なった。算出された酸素透過度を表1に示した。
1.遊離塗膜の表面側に白金電極(陰極)を密着させた。
2.電極セル中に0.5N塩化カルシウム溶液5mLを入れた電極を、蒸留水を満たしたビーカーの中に入れた。
3.蒸留水を満たしたビーカーの中へ電極を入れた。
4.蒸留水中に窒素ガスを200mL/minの流速で吹き込み、酸素ガスを完全に追い出すことで記録計電流を安定させた後、記録計のゼロ点を合わせた。
5.蒸留水中に酸素ガスを200mL/minの流速で吹き込み、酸素の透過量が一定となった時の電流値を読み取り、酸素透過度(単位:mg/(cm・day))を算出した。
なお、表1に示した上塗塗料組成物として、タフガードクリヤー上塗(日本ペイント社製)を用いた。
[透明性(塗装時の隠蔽率)]
JIS K 5600−4−1 Bに準拠した、塗料の一般的な試験方法に用いる隠蔽率試験紙(日本テストパネル株式会社製)に、各実施例、比較例の各塗料組成物を表1及び表2に示した目標となる乾燥膜厚(硬化後の膜厚)となるようにコテで塗装した。隠蔽率試験紙を23℃で7日間放置して各実施例、比較例の塗膜を得た。
得られた塗膜(複層塗膜)について、分光光度計(コニカミノルタ社製、CR―400)を用いて、白色部(Y)と黒色部(Y)における三刺激値Yを測定し、隠蔽率Y/Yを百分率で算出した。当該隠蔽率の結果を塗膜の透明性として評価した。結果を表1及び表2に示した。
/Yの値が小さいほど塗膜の透明性が高いので、Y/Yは、45以下が好ましく、35以下がより好ましい。一方、Y/Yが45を超える塗膜は透明性が不良で、コンクリート基材の表面の状態の変化(亀裂の発生等)を目視で観察することが困難であった。
Figure 0006921713
Figure 0006921713
実施例1〜実施例17と比較例1との比較により、フュームドシリカを含まないと、巣穴埋め性(及び耐タレ性)が低下することが確認された。また、実施例1〜実施例17と比較例2、比較例3との比較により、親水性フュームドシリカ(g)を含まないと、貯蔵安定性(例えば低温環境での貯蔵安定性)が低下することが確認された。
実施例1〜実施例17と比較例4との比較により、親水性フュームドシリカ(g)の平均粒子径が30nmを超えると、巣穴埋め性(及び耐タレ性)が低下することが確認された。
実施例1〜実施例17と比較例5との比較により、主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する親水性フュームドシリカ(g)の含有量が、3質量部未満であると、巣穴埋め性(及び耐タレ性)が低下することが確認された。また、実施例1〜実施例17と比較例6との比較により、主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する親水性フュームドシリカ(g)の含有量が、18質量部を超えると、透明性が低下することが確認された。
実施例1〜実施例17と比較例7との比較により、主剤(A)が水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(b)を含まないと、貯蔵安定性(例えば低温環境での貯蔵安定性)が低下することが確認された。また、実施例1〜実施例17と比較例8との比較により、硬化剤(B)が変性脂肪族ポリアミン化合物を含まないと、巣穴埋め性(及び耐タレ性)が低下することが確認された。
実施例1〜実施例16と実施例17との比較により、下地調整塗料組成物に対して、膜厚が750μm以上の上塗層(III)が形成されても、酸素透過度は、0.05mg/(cm・day)以下となり、上塗層(III)が十分な膜厚となっても透明性が損なわれないことが確認された。

Claims (10)

  1. コンクリート基材の表面に透明な複層塗膜を形成するために用いられ、主剤(A)と、硬化剤(B)と、を含む下地調整塗料組成物であって、
    前記主剤(A)は、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む樹脂成分と、親水性フュームドシリカを含む粘度調整剤と、を含み、
    前記硬化剤(B)は、変性脂肪族ポリアミン化合物を含み、
    前記親水性フュームドシリカの平均粒子径は、7〜30nmであり、
    前記主剤(A)の樹脂成分中の固形分100質量部に対する前記親水性フュームドシリカの含有量は、3〜18質量部である下地調整塗料組成物。
  2. 前記親水性フュームドシリカの平均粒子径は、12〜20nmである請求項1に記載の下地調整塗料組成物。
  3. 前記樹脂成分は、(メタ)アクリル樹脂を更に含む請求項1又は2に記載の下地調整塗料組成物。
  4. 前記(メタ)アクリル樹脂は、架橋性シリル基を有し、
    前記硬化剤(B)は、有機錫化合物を更に含む請求項3に記載の下地調整塗料組成物。
  5. 前記粘度調整剤は、脂肪酸アミド化合物を更に含む請求項1〜4のいずれかに記載の下地調整塗料組成物。
  6. 前記硬化剤(B)は、シランカップリング剤を更に含む請求項1〜5のいずれかに記載の下地調整塗料組成物。
  7. 前記主剤(A)は、ヒンダードアミン系化合物を更に含む請求項1〜6のいずれかに記載の下地調整塗料組成物。
  8. コンクリート基材の表面に請求項1〜7のいずれかに記載の下地調整塗料組成物を塗布して下地調整層を形成する工程を含む複層塗膜の形成方法。
  9. 前記下地調整層上に芳香環を有さないエポキシ樹脂と、変性脂肪族ポリアミン化合物と、扁平状の無機粒子と、を含む上塗塗料組成物を塗布して上塗層を形成する工程を更に含む請求項8に記載の複層塗膜の形成方法。
  10. 前記上塗層の酸素透過度は、0.05mg/(cm・day)以下である請求項9に記載の複層塗膜の形成方法。
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