図1と共に図11−図16を参照して、この発明の一実施例である接続治具10は、一対の分割体12を含み、EFソケット継手104を用いた樹脂管100の施工に用いられる。詳細は後述するように、この接続治具10は、樹脂管100の外側面に着脱可能に取り付けられて、矯正治具、嵌込治具および固定治具として兼用される。
なお、施工する樹脂管100の用途および口径などは特に限定されないが、接続治具10は、外径が630mm以上である大口径の樹脂管100の施工に好適に用いられる。この実施例では、設計外径(真円時の外径)が800mmの樹脂管100を施工する場合を想定して説明する。
図1に示すように、接続治具10は、一対の割りリング状の分割体12を組み合わせることによって構成され、一対の分割体12の連結部22同士を連結したときに、その内側縁10a、つまり樹脂管100の外側面に当接する部分が真円形状となるものである。各分割体12としては、同じ構造のものが用いられる。
図2−図5に示すように、分割体12は、鉄鋼またはステンレス鋼などの金属によって形成される。分割体12は、割りリング状の本体20を備え、この本体20の両端部には、一対の分割体12同士を連結して一体化するための連結部22が設けられる。
具体的には、分割体12の本体20は、所定間隔で対向配置される半円弧板状の一対のフレーム24を備える。一対のフレーム24同士は、フレーム24の湾曲方向に沿って所定間隔で並ぶ複数の矩形板状のリブ26によって一体化されている。各リブ26には、リブ26を厚み方向に貫通する円形の孔28が形成される。この孔28は、後述する引寄治具106を取付可能な治具取付部として用いられる。また、各フレーム24には、フレーム24を厚み方向に貫通する円形の複数の孔30が、フレーム24の湾曲方向に沿って所定間隔で並ぶように形成される。これら複数の孔30は、後述する内径調整用ライナ60を取付可能なライナ取付部として用いられる。
連結部22は、本体20の一方端部に設けられるラジアル方向締結部32、スラスト方向締結部34および第1ガイドリブ36、並びに、本体20の他端部に設けられる係止部38、一対のガイドプレート40および第2ガイドリブ42等を備える。
ラジアル方向締結部32は、接続治具10のラジアル方向に連結部22を締め付ける部分であって、この実施例では、デンデンボルト44(蝶番ボルトまたはロットボルトとも言われる。)および長ナット46によって構成される。デンデンボルト44は、リング状の頭部が一対のフレーム24間に掛け渡された軸に外嵌めされることによって、この軸周りに回動可能に支持されている。また、デンデンボルト44の胴部には、ワッシャ48が遊嵌されると共に、その先端部に長ナット46が螺合される。
スラスト方向締結部34は、接続治具10のスラスト方向に連結部22を締め付ける部分であって、この実施例では、六角ボルト50およびナット52によって構成される。六角ボルト50は、一対のフレーム24の端部のそれぞれに形成された孔に胴部が挿通されて、一対のフレーム24間に掛け渡されるように設けられる。この六角ボルト50の胴部には、フレーム24の外側においてワッシャ54が遊嵌されると共に、その先端部にナット52が螺合される。
また、六角ボルト50の胴部には、一対のフレーム24間において円筒状のカラー56が設けられ、このカラー56に上述のデンデンボルト44の頭部が外嵌めされる。つまり、ラジアル方向締結部32のデンデンボルト44を支持する軸として、カラー56を装着した六角ボルト50の胴部が利用される。このように六角ボルト50の胴部にカラー56を装着しておくことで、六角ボルト50の胴部が補強され、ラジアル方向締結部32を締め付けた際の六角ボルト50の変形、および、スラスト方向締結部34を締め付けた際のフレーム24の変形が防止される。
第1ガイドリブ36は、一対の分割体12同士を連結するときに、第2ガイドリブ42と摺接する部分である。第1ガイドリブ36は、矩形板状に形成され、カラー56の内縁側に沿って一対のフレーム24の先端部間に掛け渡されるように設けられる。
一方、係止部38は、ラジアル方向締結部32の長ナット46を係止する部分であり、一対のフレーム24間に掛け渡されるように設けられる。係止部38は、ラジアル方向締結部32のデンデンボルト44の胴部を受容可能なスリット38aを有する矩形板状に形成される。
一対のガイドプレート40は、スラスト方向締結部34の六角ボルト50の胴部と嵌合する部分であり、一対のフレーム24の先端部から延出するように設けられる。一対のガイドプレート40のそれぞれは、六角ボルト50の胴部を受容可能なスリット40aを有する矩形板状に形成される。
第2ガイドリブ42は、第1ガイドリブ36と摺接する部分であり、矩形板状に形成される。第2ガイドリブ42は、一対のフレーム24の先端部から延出するように、一対のフレーム24間に架け渡されて設けられる。
次に、図6〜図8を参照して、このような割りリング状の分割体12同士を連結してリング状の接続治具10を形成する方法について説明する。先ず、図6に示すように、一対のフレーム24と、スラスト方向締結部34の六角ボルト50の頭部およびナット52との間のそれぞれに、一対のガイドプレート40のそれぞれを嵌め込んで、フレーム24とガイドプレート40とを重ね合わせる。また、一対のガイドプレート40のスリット40a内に、スラスト方向締結部34の六角ボルト50の胴部を嵌め込む。このとき、一対のガイドプレート40および第2ガイドリブ42によって、分割体12同士が径方向および軸方向に位置決めされることで、分割体12は連結方向に適切に案内される。
次に、ラジアル方向締結部32のデンデンボルト44を回動させて、係止部38のスリット38a内にデンデンボルト44の胴部を嵌め込み、係止部38によってラジアル方向締結部32の長ナット46を係止させる。
続いて、図7に示すように、ラジアル方向締結部32の長ナット46を締め込むことで、接続治具10のラジアル方向に連結部22を適度に締め付ける。これによって、一対の分割体12同士が一体化される。その後、図8に示すように、スラスト方向締結部34のナット52を締め込むことで、接続治具10のスラスト方向に連結部22を強固に締め付ける。これによって、フレーム24の端部同士が強固に一体化される。したがって、スラスト方向の荷重に対する連結部22の強度が大きくなり、後述のように接続治具10を用いて樹脂管100を引き寄せる際の接続治具10の曲げ変形が防止される。
分割体12同士を連結して形成した接続治具10は、図7に示すように、フレーム24の先端面同士の間隔hがたとえば13mmとなる状態が基準形状とされる。すなわち、13mmの調整代を有する状態が接続治具10の基準形状とされる。そして、基準形状の接続治具10の内側縁10aは、取り付けられる樹脂管100の設計外径と同じ大きさの径を有する真円形状となる。この実施例では、基準形状の接続治具10の内側縁10aの径(つまり内径)は、800mmに設定されている。なお、分割体12の重量はそれぞれ、約19.5kgであり、接続治具10全体では約39kgである。
また、この実施例では、各分割体12のフレーム24には、所定外径(この実施例では800mm)の樹脂管100以外にも接続治具10を適用できるように、1または複数種類の内径調整用ライナ60が着脱自在に取付可能とされる。
図9に示すように、内径調整用ライナ60は、円弧板状に形成される。内径調整用ライナ60には、内径調整用ライナ60を厚み方向に貫通する円形の複数の孔62が、上述のフレーム24の孔30と対応する位置において、内径調整用ライナ60の湾曲方向に沿って所定間隔で並ぶように形成される。内径調整用ライナ60の内径は、適用したい樹脂管100の設計外径と同じ大きさに設定される。一例として、内径800mmの接続治具10に対しては、内径710mmおよび内径630mmの2種類の内径調整用ライナ60が取付可能とされる。つまり、この実施例の接続治具10は、外径が800mm、710mmおよび630mmの樹脂管100に対して適用可能である。
このような内径調整用ライナ60は、図10に示すように、一対のフレーム24のそれぞれに取り付けられる。具体的には、内径調整用ライナ60は、フレーム24および内径調整用ライナ60の孔30,62に挿通したボルト64およびナット66によって、フレーム24の外側面側に固定される。
続いて、図11−図16を参照して、上述のような接続治具10を利用して樹脂管100の端部同士をEFソケット継手104で接続する方法(EFソケット継手104を用いる樹脂管100の施工方法)について説明する。
先ず、接続治具10、樹脂管100、切削治具102、EFソケット継手104および引寄治具106などの樹脂管100の施工に使用する治具(装置)などを施工現場に用意する。この実施例では、樹脂管100として、10mの長さを有する外径800mmのポリエチレン管を用いるものとする。また、切削治具(スクレーパ)102およびEFソケット継手104としては、公知の市販品を用いるとよい。さらに、引寄治具106としては、公知のレバーブロック(登録商標)などを用いるとよい。
各種の治具等が準備できると、次に、図11に示すように、接続する第1の樹脂管100および第2の樹脂管100の接続側端部のそれぞれに接続治具10を外嵌めして、各樹脂管100の接続側端部を真円形状に矯正する。つまり、ここでは、接続治具10は矯正治具として用いられる。接続治具10を取り付ける位置は、樹脂管100の端面から所定距離の位置、すなわち、少なくともEFソケット継手104への挿入長さだけ端面から離れた位置である。たとえば、接続治具10は、樹脂管100の端面から300mm離れた位置において樹脂管100に取り付けられる。
具体的には、図12(A)に示すように、一対の分割体12によって樹脂管100を挟持するように分割体12同士を連結し、ラジアル方向締結部32の長ナット46を係止部38に係止させる。そして、図12(B)に示すように、樹脂管100の外側面全体が接続治具10の内側縁10aに密着する状態となるまで、ラジアル方向締結部32の長ナット46を締め込む。すると、樹脂管100は、接続治具10の内側縁10aに沿うように強制的に変形され、偏平形状から真円形状に矯正される。その後、スラスト方向締結部34のナット52を締め込むことで、接続治具10のスラスト方向に連結部22を強固に締め付けておく。
ここで、一対の分割体12によって樹脂管100を挟み込む方向は、図12(A)に示すように、偏平した樹脂管100の長径部分が各分割体12の中央部分と当接する方向が好ましい。これは、ラジアル方向締結部32による締付力が樹脂管100に作用し易いからである。ただし、接続治具10は、真円形状となる内側縁10aを有するので、樹脂管100に対してどの方向に外嵌めしても、樹脂管100を真円形状に矯正することが可能である。つまり、作業者は、樹脂管100の偏平方向を気にすることなく(延いては、樹脂管100の偏平状態を事前に測定することなく)、樹脂管100に接続治具10を取り付けることも可能である。また、接続治具10が真円形状となる内側縁10aを有することで、樹脂管100は確実に矯正されるので、樹脂管100が適切に矯正されたか否かの確認も不要となる。
各樹脂管100に接続治具10を取り付けると、続いて、図13に示すように、接続治具10によって各樹脂管100の接続側端部を矯正した状態を保持しながら、各樹脂管100の接続側端部の外表面を切削治具102によって切削する。樹脂管100を切削する部分は、接続治具10を取り付けた位置よりも端面側の部分、すなわち、EFソケット継手104への挿入部分の外表面である。このように、接続治具10による矯正状態を保持しながら切削作業を行うことで、切削作業をスムーズに行うことができ、樹脂管100が片削りとなって配管品質に影響が出てしまうことも防止できる。また、樹脂管100に接続治具10を装着したままとしておくことで、次の嵌入作業にもスムーズに移行できる。
切削治具102による切削作業が終了すると、切削表面をエタノール等で適宜清掃した後、図14に示すように、接続治具10によって各樹脂管100を矯正した状態を保持しながら、EFソケット継手104の一方端部に第1の樹脂管100の接続側端部を嵌め入れる。この際、第1の樹脂管100の接続側端部は接続治具10によって真円形状に矯正されているので、EFソケット継手104は、スムーズに嵌め入れることができる。これにより、EFソケット継手104が備える電熱線等が樹脂管100によって損傷してしまうことが防止される。
第1の樹脂管100の接続側端部をEFソケット継手104に嵌め入れると、続いて、図15および図16に示すように、接続治具10によって各樹脂管100を矯正した状態を保持しながら、EFソケット継手104の他端部に第2の樹脂管100の接続側端部を嵌め入れる。
具体的には、各樹脂管100に取り付けた接続治具10の孔28に、シャックル等の取付治具108を介して複数(たとえば2−6つ)の引寄治具106を取り付け、接続治具10同士を複数の引寄治具106によって連結する。そして、引寄治具106のレバーを操作して接続治具10同士を引き寄せることによって、第2の樹脂管100の接続側端部をEFソケット継手104の他端部に嵌め入れる。つまり、この嵌入作業では、接続治具10は、矯正治具としてだけでなく嵌込治具としても用いられる。
この際、第2の樹脂管100の接続側端部は、接続治具10によって真円形状に矯正されているので、EFソケット継手104にスムーズに嵌め入れることができ、EFソケット継手104の損傷も防止される。また、大口径の樹脂管100は重量物であり(たとえば、この実施例では、樹脂管100の重量は約1130kgである)、人力のみでは嵌入作業は難しいが、接続治具10に引寄治具106を連結して嵌込治具として用いることで、EFソケット継手104に第2の樹脂管100を容易に嵌め入れることができる。また、樹脂管100に装着済みの接続治具10をそのまま嵌込治具として利用することで、嵌込治具を別途用意する必要が無くなり、重量物であるため大きな労力を要する治具の交換作業も必要無くなる。
EFソケット継手104に第1および第2の樹脂管100に接続側端部を嵌め入れる嵌入作業が終了すると、図16に示すように、接続治具10および引寄治具106を用いて、その嵌入状態のまま、EFソケット継手104と第1および第2の樹脂管100とを固定する。つまり、接続治具10は、固定治具としても用いられる。このように、樹脂管100に装着済みの接続治具10をそのまま固定治具として利用することで、固定治具を別途用意する必要が無くなり、重量物であるため大きな労力を要する治具の交換作業も必要無くなる。
上述のようなEFソケット継手104と第1および第2の樹脂管100との嵌入固定作業が終了すると、その嵌入固定状態を保持しながら、EFソケット継手104に通電して、EFソケット継手104の内側面と第1および第2の樹脂管100の外側面のそれぞれとを融着接合する。この際、第1および第2の樹脂管100は、接続治具10によって真円形状に矯正されているので、EFソケット継手104と樹脂管100との融着面同士は隙間を生じさせることなく適切に密着される。
EFソケット継手104と各樹脂管100との融着接合は、融着面が冷却固化した時点で完了するので、その後、接続治具10および引寄治具106を第1および第2の樹脂管100から取り外して、この接続作業(施工作業)を終了する。なお、回収した接続治具10は、他の接続作業に利用可能である。
以上のように、この実施例の施工方法によれば、接続治具10による矯正状態を保持しながら切削作業を行うので、切削作業をスムーズに行うことができ、樹脂管100が片削りとなって配管品質に影響が出てしまうことも防止できる。また、樹脂管100に接続治具10を装着したままとしておくことで、次の嵌入作業にもスムーズに移行できる。したがって、配管品質を確保しつつ、作業効率を向上できる。
また、この実施例の施工方法によれば、接続治具10による矯正状態を保持しながら嵌入作業を行うので、EFソケット継手104に樹脂管100をスムーズに嵌め入れることができる。したがって、作業効率が向上される。また、EFソケット継手104が備える電熱線等が樹脂管100によって損傷してしまうことが防止されるので、配管品質が確保される。
さらに、この実施例の施工方法によれば、接続治具10による矯正状態を保持しながら融着作業を行うので、EFソケット継手104と樹脂管100との融着面同士は隙間を生じさせることなく適切に密着される。したがって、EFソケット継手104と樹脂管100とが適切に融着されて、配管品質が確保される。
さらにまた、この実施例の施工方法によれば、真円形状の内側縁10aを有する接続治具10を用いるので、樹脂管100は確実に矯正される。したがって、樹脂管100の偏平状態を測定する手間などを省略することができ、作業効率が向上される。
また、この実施例の施工方法によれば、接続治具10を矯正治具、嵌込治具および固定治具として兼用するので、これらの治具を個別に用意する必要がない。また、重量物であるため大きな労力を要するこれらの治具の交換作業も省略できるので、作業効率が向上される。
なお、上述の実施例では、第2の樹脂管100をEFソケット継手104に嵌め入れる際に、引寄治具106によって接続治具10同士を連結して引き寄せるようにしたが、可能であれば、引寄治具106を用いることなく第2の樹脂管100をEFソケット継手104に嵌め入れてもよい。つまり、接続治具10を必ずしも嵌込治具として用いる必要はない。この場合には、EFソケット継手104に第1および第2の樹脂管100を嵌め入れた後に、接続治具10同士をロッド部材で連結することによって、その嵌入状態で固定するとよい。
また、上述の実施例では、一対の分割体12を互いに同じ構造を有するものとしたが、これに限定されない。たとえば、一方の分割体12の両端部にラジアル方向締結部32、スラスト方向締結部34および第1ガイドリブ36等を設け、他方の分割体12の両端部に係止部38、一対のガイドプレート40および第2ガイドリブ42等を設けてもよい。
さらに、上述の実施例では、一対の分割体12の両端部に連結部22を設け、分割体12同士を完全に分離できるようにしたが、一方の連結部は、ヒンジ等で分離不可に連結されていても構わない。ただし、大口径用の接続治具10は、上述のように40kg程度の重量物となるので、分割体12同士を完全に分離可能としておく方が、運搬等の取扱いの観点から好ましい。
さらにまた、上述の実施例では、分割体12のフレーム24の先端面同士に間隔hを有する状態を接続治具10の基準形状としたが、フレーム24の先端面同士が突き当たる状態、つまり間隔hが0となる状態を接続治具10の基準形状としてもよい。
また、上述の実施例では、引寄治具106を取付可能な治具取付部(孔28)をリブ26に形成したが、治具取付部の形成位置および形状等は、適宜変更可能である。たとえば、治具取付部は、フレーム24に形成されてもよいし、孔の代わりにリング状またはフック状に形成されても構わない。
続いて、図17−図20を参照して、この発明の他の実施例であるサドル固定治具70について説明する。サドル固定治具70は、EFサドル継手110を用いた樹脂管100の施工に用いられる。具体的には、樹脂管100に分岐を設けるためのEFサドル継手110と樹脂管100とを電気融着接合するときに、樹脂管100の外側面に対してEFサドル継手110のサドル部112の内側面(融着面)を密着させて固定するために用いられる。
図17に示すように、サドル固定治具70は、第1および第2のクランプ部材72と、これらクランプ部材72に架け渡される押え部材74とを備える。
各クランプ部材72としては、上述の図1に示す接続治具10が用いられる。すなわち、一対の割りリング状の分割体12を含み、一対の分割体12の連結部22同士を連結したときに内側縁10aが真円形状と接続治具10が各クランプ部材72として用いられる。したがって、クランプ部材72の各構成部品については、接続治具10と同じ参照番号を付し、重複する説明は省略する。
図17と共に図18〜図20を参照して、押え部材74は、第1および第2のクランプ部材72に架け渡されるように設けられて、EFサドル継手110のサドル部112の外側面(融着面と反対側の面)を押さえる部材である。この実施例の押え部材74は、第1および第2のクランプ部材72に架け渡される一対の第1フレーム80、一対の第1フレーム80に架け渡される一対の第2フレーム82、および一対の第2フレーム82に架け渡される一対の第3フレーム84等によって構成される。これらフレーム80,82,84は、鉄鋼またはステンレス鋼などの金属によって形成される。
一対の第1フレーム80は、クランプ部材72の周方向に対して所定間隔で配置される。第1フレーム80の両端部には、ボルト等の連結固定部材86を取り付けるための取付孔が形成される。そして、この取付孔およびクランプ部材72の孔30に挿通した連結固定部材86によって、第1フレーム80の両端部がクランプ部材72のそれぞれに着脱可能に固定される。つまり、押え部材74は、クランプ部材72に対して着脱可能である。また、第1フレーム80の中央部分には、第1フレーム80の長手方向に延びる長孔状の複数の取付孔88が形成される。
一対の第2フレーム82は、第1フレーム80の長手方向に対して所定間隔で配置される。第2フレーム82の両端部には、ノブ螺子などの連結固定部材90を取り付けるための取付孔が形成される。そして、この取付孔および第1フレーム80の取付孔88に挿通した連結固定部材90によって、第2フレーム82の両端部が第1フレーム80のそれぞれに固定される。また、第2フレーム82の中央部分には、第2フレーム82の長手方向に延びる長孔状の複数の取付孔92が形成される。
一対の第3フレーム84は、第2フレーム82の長手方向に対して所定間隔で配置される。第3フレーム84の両端部には、ノブ螺子などの連結固定部材94を取り付けるための取付孔が形成される。そして、この取付孔および第2フレーム82の取付孔92に挿通した連結固定部材94によって、第3フレーム84の両端部が第2フレーム82のそれぞれに固定される。
上述のような一対の第2フレーム82と一対の第3フレーム84とによって、押え部材74には、EFサドル継手110の分岐管部114を囲繞する矩形枠部96が形成される(図23参照)。一対の第2フレーム82および一対の第3フレーム84は、取付孔88,92が長孔状に形成されていることから、連結固定部材90,94を緩めることで、その取付間隔を調整可能である。すなわち、矩形枠部96の大きさは変更可能であるので、サドル固定治具70は、大きさの異なる複数種類のEFサドル継手110に適用可能である。
この矩形枠部96(つまり一対の第2フレーム82および一対の第3フレーム84)には、パッド付クランプボルト等の複数(この実施例では8つ)のサドル押付用ノブ120が設けられる。サドル押付用ノブ120は、先端部に首振り可能なパッド120aを有し、ノブを締め込むことで、EFサドル継手110のサドル部112の外側面を押え付けることが可能である。
また、矩形枠部96には、パッド付クランプボルト等の複数(この実施例では4つ)の継手位置固定用ノブ122が設けられる。継手位置固定用ノブ122は、先端部に首振り可能なパッド122aを有し、ノブを締め込むことで、EFサドル継手110の分岐管部114の外側面を押え付けることが可能である。
続いて、図21−図24を参照して、上述のようなサドル固定治具70を利用して、樹脂管100と分岐管とをEFサドル継手110を介して接続する方法(EFサドル継手110を用いる樹脂管100の施工方法)について説明する。
先ず、サドル固定治具70およびEFサドル継手110などの治具(装置)を施工現場に用意する。
次に、樹脂管100にEFサドル継手110を載置すると共に、サドル固定治具70の第1および第2のクランプ部材72をEFサドル継手110の両側において樹脂管100に外嵌めし、サドル固定治具70の押え部材74によってEFサドル継手110のサドル部112の外側面を押さえる。
具体的には、図21に示すように、EFサドル継手110の取付位置を確認した後、その取付位置の両側において、樹脂管100に第1および第2のクランプ部材72を取り付ける。すなわち、一対の分割体12によって樹脂管100を挟持するように分割体12同士を連結し、ラジアル方向締結部32の長ナット46を係止部38に係止させる。そして、ラジアル方向締結部32を締め込んだ後、スラスト方向締結部34を締め込む。これによって、樹脂管100のEFサドル継手110の取付部分が真円形状に矯正される。
次に、EFサドル継手110の取付位置、つまり第1および第2のクランプ部材72の間にEFサドル継手110を載置する。その後、第1および第2のクランプ部材72に対して押え部材74を取り付ける。すなわち、押え部材74の矩形枠部96内にEFサドル継手110の分岐管部114を嵌め込み、押え部材74の一対の第1フレーム80の両端部のそれぞれを、連結固定部材86によってクランプ部材72のフレーム24に固定する。
図23−図25に示すように、第1および第2のクランプ部材72に対して押え部材74を取り付けると、続いて、継手位置固定用ノブ122を締め込んで、EFサドル継手110の分岐管部114の外側面を側方から押え付けることで、EFサドル継手110が位置ずれしないように固定する。その後、サドル押付用ノブ120を締め込み、EFサドル継手110のサドル部112の外側面を上から押え付けることで、樹脂管100の外側面に対してサドル部112の内側面を密着させた状態でEFサドル継手110を固定する。
上述のようなEFサドル継手110の固定作業が終了すると、その固定状態を保持しながら、EFサドル継手110に通電して、樹脂管100の外側面とEFサドル継手110のサドル部112の内側面とを融着接合する。この際、樹脂管100は、サドル固定治具70の第1および第2のクランプ部材72によって真円形状に矯正されているので、樹脂管100とEFサドル継手110との融着面同士は隙間を生じさせることなく適切に密着される。樹脂管100とEFサドル継手110との融着接合は、融着面が冷却固化した時点で完了するので、その後、サドル固定治具70を樹脂管100から取り外して回収する。
樹脂管100とEFサドル継手110とが融着接合されると、その後、EFサドル継手110の分岐管部114に対して分岐管(図示せず)を接続すると共に、穿孔カッタを用いて樹脂管100を穿孔する。これによって、樹脂管100と分岐管とがEFサドル継手110を介して連通される。
以上のように、この実施例の施工方法によれば、第1および第2のクランプ部材72に架け渡した押え部材74によってEFサドル継手110を樹脂管100に固定するので、部材点数を低減でき、着脱作業も手間も低減される。したがって、作業効率を向上できる。
また、この実施例の施工方法によれば、サドル固定治具70によって樹脂管100を真円形状に矯正しつつ、樹脂管100にEFサドル継手110を固定するので、樹脂管100とEFサドル継手110との融着面が適切に密着され、配管品質が確保される。
さらに、この実施例の施工方法によれば、真円形状の内側縁10aを有するクランプ部材72を備えるサドル固定治具70を用いるので、樹脂管100は確実に矯正される。したがって、樹脂管100の偏平状態を測定する手間を省略することができ、作業効率が向上される。
なお、サドル固定治具70の押え部材74は、図18等に示す態様に限定されず、第1および第2のクランプ部材72に架け渡されて、EFサドル継手110のサドル部112の外側面を押え付けることが可能なものであれば、その具体的構成は適宜変更可能である。
たとえば、サドル固定治具70の押え部材74としては、図25に示すものを用いることもできる。図25−図27に示すように、この押え部材74は、EFサドル継手110のサドル部112の外側面に沿う湾曲板状に形成されるサドル押え部130と、サドル押え部130の両端部に設けられる円弧板状のフランジ132とを備える。
サドル押え部130の中央部には、EFサドル継手110の分岐管部114を挿通可能な平面視円形の挿通孔134が形成される。また、サドル押え部130の一方端部には、EFサドル継手110の端子を外部に露出させるための平面視矩形の孔136が形成される。一方、フランジ132には、フランジ132の短手方向に延びる長孔状の複数の取付孔138が、クランプ部材72のフレーム24の孔30と対応する位置に形成される。
このような押え部材74は、第1および第2のクランプ部材72に架け渡されて、フランジ132の取付孔138およびクランプ部材72の孔30に挿通したボルト等の連結固定部材140によって、クランプ部材72に対して着脱可能に固定される(図29参照)。
次に、図28および図29を参照して、図25に示す押え部材74を備えるサドル固定治具70を用いて、樹脂管100にEFサドル継手110を固定する固定作業について説明する。
図28に示すように、第1および第2のクランプ部材72を押え部材74によって連結した状態にすると共に、第1および第2のクランプ部材72の一対の分割体12同士は、分離させた状態としておく。また、樹脂管100にEFサドル継手110を載置する。
その後、図29に示すように、押え部材74の挿通孔134内にEFサドル継手110の分岐管部114を嵌め込み、サドル固定治具70の第1および第2のクランプ部材72をEFサドル継手110の両側において樹脂管100に外嵌めすることで、そのまま、押え部材74によってEFサドル継手110のサドル部112の外側面(上面)を押さえる。これによって、樹脂管100のEFサドル継手110の取付位置部分が真円形状に矯正されると共に、樹脂管100の外側面に対してサドル部112の内側面を密着させた状態でEFサドル継手110が固定される。この固定作業が終了すると、上述と同様に、融着作業および分岐管の接続作業などを行うとよい。
なお、この発明における「真円」とは、厳密な意味での真円だけではなく、この発明の作用効果を奏しうる範囲で、実質的な真円(つまり略真円)も含む概念である。
また、上で挙げた寸法などの具体的数値および治具の具体的構成などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。