JP6917468B2 - 衝撃吸収シート - Google Patents
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Description
このような薄厚の衝撃吸収材としては、ポリエチレンに代表されるポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系樹脂発泡体が広く知られている。ポリオレフィン系樹脂発泡体では、気泡の形状を一定のものに制御して、柔軟性を制御することで衝撃吸収性能が向上することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[13]を提供する。
[1]発泡樹脂層を含む衝撃吸収シートであって、13℃における損失係数(tanδ)が0.5以上である衝撃吸収シート。
[2]厚さが200μm以下である上記[1]に記載の衝撃吸収シート。
[3](13℃におけるtanδ)/(tanδの半値幅[℃])が0.03以上である上記[1]又は[2]に記載の衝撃吸収シート。
[4]損失係数(tanδ)のピーク温度であるガラス転移温度(Tg)が5℃以上25℃以下である上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
[5]前記発泡樹脂層の密度が0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下である上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
[6]前記発泡樹脂層がアクリル系発泡樹脂層である上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
[7]前記発泡樹脂層における気泡の内壁が、シェル構造を有さない上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
[8]初期衝撃吸収率が45%以上である上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
[9]前記発泡樹脂層の厚さをTとすると、前記発泡樹脂層の一方の面から、厚さ0.1Tにおける面方向断面の空隙率(P0.1)、厚さ0.5Tにおける面方向断面の空隙率(P0.5)、及び厚さ0.9Tにおける面方向断面の空隙率(P0.9)がそれぞれ、10面積%以上60面積%以下であり、
前記空隙率(P0.1)、空隙率(P0.5)、及び空隙率(P0.9)から求めた平均空隙率に対する標準偏差(Pσ)が1.0以上20以下である、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
[10]電子機器に使用される上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
[11]表示装置の背面側に配置される上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
[12]上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シートと、前記衝撃吸収シートの少なくともいずれか一方の面に設けられる粘着材とを備える粘着テープ。
[13]上記[1]〜[11]のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート、又は上記[12]に記載の粘着テープを備える、表示装置。
[衝撃吸収シート]
本発明の衝撃吸収シートは、発泡樹脂層を含む衝撃吸収シートであって、13℃における損失係数(tanδ)が0.5以上となるものである。
発泡樹脂層を含む衝撃吸収シートにおいては、常温付近における衝撃吸収性能を高めるためには、実施例における評価方法での13℃における損失係数(tanδ)を大きくすることが効果的であり、本発明では、13℃におけるtanδを0.5以上にすることで、衝撃吸収シートの衝撃吸収性能が優れたものになる。したがって、常温、又は電子機器の発熱などにより多少常温より高くなった電子機器内部などにおいて、衝撃吸収シートを薄厚にしても局所的な衝撃なども十分に吸収できるようになる。また、繰り返し衝撃が加えられた後でも、衝撃吸収性能を良好に維持しやすくなる。一方で、13℃における損失係数が0.5未満となると、衝撃吸収性能が不十分となって、外部からの衝撃を十分に吸収できなくなる。
衝撃吸収シートの厚さは、20μm以上190μm以下であることがより好ましく、50μm以上160μm以下であることがさらに好ましい。衝撃吸収シートの厚さを20μm以上とすることで、衝撃吸収シートに衝撃が加えられたときに、いわゆる底付きなどが発生することが防止できる。
初期衝撃吸収率を45%以上とすることで、衝撃吸収性能、特に、局所的な衝撃に対する衝撃吸収性能を高くすることが可能になる。
本発明の発泡樹脂層は、中空粒子を含有し、気泡が中空粒子内部の空間により形成されてもよい。
また、発泡樹脂層の気泡は、その他の手段により形成されてもよく、例えば、樹脂組成物に混入された気体により形成されることが好ましい。この場合、気泡は、発泡樹脂層を構成する樹脂組成物に直接形成された空隙であり、気泡の内面が樹脂組成物よりなる。すなわち、発泡樹脂層の気泡は、その内壁がシェル構造を有しない気泡となる。
内壁にシェル構造を有さない気泡は、衝撃により内壁が損傷しにくく、その形状が崩れにくいため、衝撃吸収シートの繰り返し衝撃後の衝撃吸収性能を向上させることが可能である。
発泡樹脂層に混入された気体は、発泡樹脂層を構成する樹脂組成物に配合された発泡剤などから発生した気体でもよいが、後述するメカニカルフロス法などにより樹脂組成物の外部から混入された気体であることが好ましい。
具体的には、発泡樹脂層の厚さを“T”とすると、発泡樹脂層の一方の面から、厚さが0.1Tにおける面方向断面の空隙率(P0.1)、厚さが0.5Tにおける面方向断面の空隙率(P0.5)、及び、厚さが0.9Tにおける面方向断面の空隙率(P0.9)がそれぞれ、10面積%以上60面積%以下となることが好ましい。空隙率(P0.1)、空隙率(P0.5)、及び空隙率(P0.9)がこれら範囲内であると、厚さ方向のいずれに位置においても、面方向に十分な量の気泡が存在することとなる。
また、空隙率(P0.1)、空隙率(P0.5)、及び空隙率(P0.9)から求めた平均空隙率に対する標準偏差(Pσ)が1.0以上20以下であることが好ましい。この標準偏差(Pσ)は、厚み方向の気泡分布の指標となるもので、上記範囲内になっていることで、厚み方向の気泡分布が均一となっていることを示す。
P0.1、P0.5、及び、P0.9のそれぞれは、15面積%以上55面積%以下となっていることがより好ましく、また、標準偏差(Pσ)は、2.0以上15となっていることがさらに好ましい。
上記空隙率及び標準偏差は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
発泡樹脂層に含有される中空粒子としては、特に限定されず、中空の無機系微小球状体であってもよく、中空の有機系微小球状体であってもよく、中空の有機無機複合体の微小球状体であってもよい。中空の無機系微小球状体としては、例えば、中空ガラスバルーン等のガラス製の中空バルーン、中空シリカバルーン、中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン、中空セラミックバルーン等の磁器製中空バルーンなどが挙げられる。また、中空の有機系微小球状体としては、例えば中空アクリルバルーン、中空の塩化ビニリデンバルーン、フェノールバルーン、及びエポキシバルーン等の樹脂製の中空バルーンなどが挙げられる。
中空粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折法、または低角度レーザー光散乱法により測定することができる。
これらの中では、発泡樹脂層を構成する樹脂がアクリル系樹脂であり、発泡樹脂層がアクリル系発泡樹脂層となることが好ましい。発泡樹脂層を構成する樹脂をアクリル系樹脂とすることで、衝撃吸収シートの13℃におけるtanδ、tanδ幅比などを所定の範囲内に調整しやすくなる。
なお、アクリル系発泡樹脂層において、アクリル系樹脂は、発泡樹脂層中の樹脂成分の主成分であり、その含有量は、発泡樹脂層の樹脂成分全量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
スキン層は、発泡樹脂層を構成する樹脂と同じ種類の樹脂により形成されていてもよいし、それ以外の樹脂により形成されてもよい。スキン層を形成する樹脂としては、上記したアクリル系樹脂、熱可塑性エラストマー以外でも、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートなどでもよいが、ゴム系樹脂でもよい。また、スキン層は、金属箔、不織布などでもよい。
一方で、スキン層は、発泡樹脂層の機能を阻害しない程度の厚さであればよく、各スキン層の厚さは、発泡樹脂層の厚さ未満であるとよい。また、各スキン層の厚さは、例えば、1μm以上50μm以下程度である。
(アクリル系樹脂)
アクリル系樹脂は、アクリル系単量体成分を含む単量体成分(a)を重合してなるアクリル系重合体である。アクリル系重合体は、衝撃吸収シートの13℃におけるtanδが上記した範囲内になるように、単量体成分(a)を適宜調整すればよい。単量体成分(a)は、ビニル基を1つ有するモノマー成分である。単量体成分(a)は、特に限定されないが、好ましくは、アクリル系単量体成分としてアルキル(メタ)アクリレートを含む。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表し、他の類似する用語も同様である。
アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、及びn−テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
アルキル(メタ)アクリレート以外のビニル系モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー又はその無水物、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、窒素含有ビニルモノマー、スチレン系モノマーなどが挙げられる。
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートを挙げることができる。
窒素含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類、アミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート以外のビニル系モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて用いることができる。
アルキル(メタ)アクリレート以外のビニル系モノマーは、アクリル系重合体を構成する単量体成分(a)において、55質量%以下含有されることが好ましく、0質量%以上45質量%以下含有されることがより好ましく、0質量%以上35質量%以下含有されることがさらに好ましい。
そのようなモノマー(a1)としては、アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。ホモポリマーのガラス転移温度が低いアルキル(メタ)アクリレートを使用することで、13℃におけるtanδ、衝撃吸収シートのガラス転移温度(Tg)を上記したように所望の範囲内に調整しやすくなる。
モノマー(a1)としてのアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素数が2〜10のアルキルアクリレートがより好ましく、好適な化合物の具体例としては、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。
なお、ホモポリマーのガラス転移温度は、公知であり、例えば、J.ブランドラップ及びE.H.インマーグートによるインターサイエンスパブリッシャーズ編集の「ポリマーハンドブック」などを参照できる。
モノマー(a2)としては、アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有モノマー又はその無水物、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルモノマー、窒素含有ビニルモノマー、スチレン系モノマーなどを使用すればよい。これらの中では、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、アクリルアミド類、カルボキシル基含有モノマー又はその無水物がより好ましい。
モノマー(a2)の好ましい具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、スチレン、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸が挙げられるが、より好ましくは、メチルアクリレート、スチレンである。
具体的な架橋剤としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ε―カプロラクトン変性トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び液状水素化1,2−ポリブタジエンジアクリレート等が挙げられる。
アクリル系樹脂組成物における架橋剤の含有量は、特に制限されないが、単量体成分(a)100質量部に対して、0.1質量部以上7質量部以下が好ましく、0.2質量部以上5質量部以下がより好ましい。
光重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、ケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
これらの光重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、単量体成分(a)100質量部に対して、0.03質量部以上3質量部以下が好ましく、0.05質量部以上1.5質量部以下であることがより好ましい。
以下、衝撃吸収シートの製造方法について詳細に説明する。以下では、まず、気泡を中空粒子から形成する場合の発泡樹脂層の製造方法を説明する。
発泡樹脂層は、樹脂成分、又は硬化などすることで樹脂成分となる樹脂成分の前駆体と、中空粒子と、その他必要に応じて配合される添加剤とを含有する樹脂組成物から形成すればよい。
例えば、アクリル系発泡樹脂層は、特に制限されないが、剥離フィルムや基材等の適当な支持体上に、既述の単量体成分(a)及び中空粒子、必要に応じて配合される架橋剤、光重合開始剤等を含有するアクリル系樹脂組成物を塗布し、塗布層を形成させ、該層を、活性エネルギー線により硬化させることにより形成される。
なお、上記アクリル系発泡樹脂層の形成の際に用いられる剥離フィルム(セパレータ)は、作製後の衝撃吸収シートを使用する前までに適宜剥離されるとよい。
単量体成分(a)が部分重合されたアクリル系樹脂組成物は、例えば、下記のようにして作製することができる。まず、中空粒子及び架橋剤を含有しない一方で単量体成分(a)を含む組成物に対して、活性エネルギー線を用いた重合によって部分重合を行い、これにより、いわゆるシロップ状の硬化性アクリル樹脂材料を調製する。このときの粘度は、200mPa・s以上5000mPa・s以下に調整されていることが好ましく、300mPa・s以上4000mPa・s以下に調整されていることがより好ましい。200mPa・s以上5000mPa・s以下に調整されていることで、中空粒子の浮き上がりを防止して、厚み方向の空隙率を均一にすることができる。なお、粘度とは、B型粘度計における粘度測定において、測定温度23℃、100rpmの条件で測定された粘度である。
次いで、この硬化性アクリル樹脂材料と中空粒子及び架橋剤等とを撹拌混合して、硬化性アクリル樹脂材料中に中空粒子を分散させたアクリル系樹脂組成物を調製することができる。
また、活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線、紫外線などが挙げられる。特に、紫外線が好適に用いられる。活性エネルギー線の照射エネルギーやその照射時間などは、単量体成分(a)を適切に重合できる限り特に制限されない。
エマルジョン組成物は、分散媒として水を含む。また、水以外にも、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの極性溶媒を含んでいてもよい。また、エマルジョン組成物は、界面活性剤などからなる起泡剤、架橋剤などが必要に応じて配合されていてもよい。エマルジョン組成物の固形分量は、例えば、30質量%以上70質量%以下、より好ましくは35質量%以上60質量%以下である。
エマルジョン組成物への気体の混入は、メカニカルフロス法により行うことが好ましい。具体的には、エマルジョン組成物を、攪拌羽等で攪拌し、大気中の空気やガスを混入させる方法であり、供給は連続式でもバッチ式でもよい。ガスには窒素、空気、二酸化炭素、アルゴン等を用いることができる。気体の混入量は、得られる発泡樹脂層が上記した密度になるように適宜調整するとよい。具体的には攪拌時間や、空気やガスとの混合割合を調整するとよい。
気泡が形成されたエマルジョン組成物は、その後、剥離フィルムや基材等の適当な支持体上に塗布して、塗布層を形成し、該層を加熱して乾燥させることで、発泡樹脂層を得ることができる。ここで、加熱温度は、特に限定されないが、45〜155℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。
以下、上記で説明した本発明の衝撃吸収シートの使用方法について説明する。
本発明の衝撃吸収シートは、例えば、各種の電子機器、好ましくはノート型パーソナルコンピューター、携帯電話、電子ペーパー、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の携帯電子機器に使用されるものである。より具体的には、これら電子機器に設けられる表示装置(ディスプレイ)用の衝撃吸収シートとして使用される。表示装置としては、有機EL表示装置、液晶表示装置等が挙げられるが、有機EL表示装置が好ましい。
また、表示装置、特に有機EL表示装置は、フレキシブルディスプレイとすることが好ましい。有機EL表示装置は、フィルム基板上に、両電極と、その両電極間に形成された発光層と、発光層を封止するための封止材とを備える有機EL素子を形成することでフレキシブルディスプレイとすることが可能である。
より具体的には、衝撃吸収シートは、例えば電子機器の筐体上に置かれて、筐体と表示装置間に配置される。また、衝撃吸収シートは、通常、筐体等の電子機器を構成する部品と表示装置の間において圧縮して配置される。
本発明の衝撃吸収シートは、薄厚であっても高い衝撃吸収性能を有するため、電子機器を薄型化しながら表示装置の破損を適切に防止することが可能である。また、衝撃吸収シートは、局所的に比較的大きな衝撃が作用されるような場合でも、その衝撃を適切に吸収することが可能になるため、フレキシブルディスプレイで生じる表示欠点などを適切に防止することが可能になる。
粘着材は、少なくとも粘着剤層を備えるものであればよく、衝撃吸収シートの表面に積層された粘着剤層単体からなるものであってもよいし、衝撃吸収シートの表面に貼付された両面粘着シートであってもよいが、粘着剤層単体であることが好ましい。なお、両面粘着シートは、基材と、基材の両面に設けられた粘着剤層とを備えるものである。両面粘着シートは、一方の粘着剤層を衝撃吸収シートに接着させるとともに、他方の粘着剤層を他の部品に接着させるために使用する。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることができる。粘着材の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、より好ましくは7〜150μmである。また、粘着材の上には、さらに離型紙等の剥離シートが貼り合わされて、使用前に離型紙により粘着剤層を保護してもよい。
衝撃吸収シートの各物性や性能は、以下の方法で評価した。
<空隙率及び標準偏差>
衝撃吸収シートを厚さ50μmのPETフィルムに貼り付けて幅3mm、長さ15mmのサイズで切り出し、X線CT装置による三次元計測を行った。なお、X線CT装置は特に限定されないが、本実施例ではヤマト科学株式会社製 TDM1000H−II(2K)を使用した。解像度は1.5μm/1ピクセル程度である。
次に、PETフィルムと衝撃吸収シートの境界面を基準面とし、その面に垂直な方向(厚み方向)に存在する断面画像の合計枚数STを数えた。なお、厚み方向に存在する断面画像は、PETフィルムと衝撃吸収シートの境界面(基準面)の画像から反対面の衝撃吸収シートが最後に写った画像までとした。
その後、0.1ST番目の断面画像に対し、画像処理ソフトウェア「Avizo9.2.0」(FEI社製)を用いて二値化処理を行い、空隙部分と樹脂部分を分離した。最後に、画像全体面積に対する空隙部分の面積の割合を算出し、0.1Tの厚みにおける面方向断面の空隙率(P0.1)とした。なお、0.1STが整数でない場合は小数第一位を四捨五入した。
0.5Tの厚みにおける面方向断面の空隙率(P0.5)、及び0.9Tの厚みにおける面方向断面の空隙率(P0.9)もそれぞれ、同様の操作を行った。
また、算出した空隙率(P0.1)、空隙率(P0.5)、及び空隙率(P0.9)から平均空隙率を求めて、これに対する標準偏差(Pσ)を求めた。
測定装置:DVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用いて、せん断モード:1Hz、歪み量:0.08%、温度範囲:−50℃〜100℃、昇温速度:5℃/minの条件下で、13℃におけるtanδ、及びtanδがピーク値となったときの温度を求めた。tanδがピーク値となったときの温度をガラス転移温度Tgとした。また、tanδの値をプロットし、tanδのピーク値の半分の高さにおける、山の温度幅をtanδの半値幅とした。なお、試料サイズは、長さ10mm、幅5mm、厚み1mmであった。なお、各実施例、比較例では、サンプルを重ね合わせて厚み約1mmとなるようにした。
ダイヤルゲージで計測したものを厚さとした。
<見掛け密度>
発泡樹脂層の密度は、JIS K6767に準拠して測定した見掛け密度の値である。
衝撃吸収シート(50mm角)をアクリル板(100mm角、厚さ10mm)の中心に載せて、この衝撃吸収シートを載せた該アクリル板の面の反対側の面に加速度センサーを取り付けた。なお、アクリル板は、四隅を長さ35mmのボルトにて台座に固定し、該アクリル板の上面が台座面より25mmの位置となるよう保持したものである。
衝撃吸収シートの中心位置に対して、100mmの高さから13.8g(直径15mm)の鉄球を落下させ、衝撃吸収シートと衝突した際の加速度を測定した。また、該衝撃吸収シートは交換せずに同様の鉄球落下、加速度測定を6回繰り返し、全7回分の加速度の平均値を加速度(L1a)とした。また、衝撃吸収シートをアクリル板に置かずに同様の鉄球落下、加速度測定を行った全7回分の加速度の平均値を加速度(L0a)とし、得られた加速度(L1a)及び加速度(L0a)より、7回平均の衝撃吸収率を、以下の式により算出した。なお、試験は、温度23℃、湿度50RH%の条件下で行った。
7回平均の衝撃吸収率(%)=(L0a−L1a)/L0a×100
また、初回(第1回)について、その加速度(L11)と加速度(L0a)とから、初回の衝撃吸収率を、以下の式により算出した。
初回の衝撃吸収率(%)=(L0a−L11)/L0a×100
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、Tg:−70℃
BA:n−ブチルアクリレート、Tg:−54℃
EA:エチルアクリレート、Tg:−24℃
MA:メチルアクリレート、Tg:8℃
AN:アクリロニトリル 、Tg:125℃
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド、Tg:134℃
AAC:アクリル酸、Tg:106℃
MAA:メタクリル酸、Tg:228℃
St:スチレン、Tg:100℃
2官能架橋剤(商品名「NKエステルAPG−400」、新中村化学工業(株)製)
3官能架橋剤(商品名「NKエステルA−9300−3CL」、新中村化学工業(株)製)
光開始剤(商品名「Irgacure184」、BASFジャパン(株)製)
中空粒子A(商品名「エクスパンセル920DE80d30」、日本フィライト(株)製)、平均粒径:80μm
乳化重合により得た表1に示す単量体成分(a)からなる固形分量50質量%のアクリル系重合体(平均粒径120nm)の水分散体を用意した。エマルジョン組成物を、攪拌機(TESCOM1200)を用いて室温条件下、速度2段階目で、1.0分攪拌することで、メカニカルフロス法により空気を混入させて気泡を形成した。気泡が形成されたエマルジョン組成物を、剥離紙上に塗布した後100℃で5分間加熱して乾燥させて、発泡樹脂層からなる衝撃吸収シートを得た。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
単量体成分(a)の配合を表1に示すように変更し、かつ攪拌時間を0.5分に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
単量体成分(a)の配合を表1に示すように変更し、かつ攪拌時間を1.5分に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
単量体成分(a)の配合を表1に示すように変更し、かつ攪拌時間を1.0分に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
単量体成分(a)の配合を表1に示すように変更し、かつ攪拌時間を0.5分に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
単量体成分(a)の配合を表1に示すように変更し、かつ攪拌時間を1.5分に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
ブチルアクリレート25質量部、メチルアクリレート75質量部、及び光開始剤0.5質量部を混合し、その混合物を紫外線を用いた重合によって部分重合して、シロップ状の粘度が2000mPa・sである硬化性アクリル樹脂材料を得た。本樹脂材料に、2官能架橋剤を2質量部、3官能架橋剤を1質量部、中空粒子Aを2質量部加えて混合し、アクリル系樹脂組成物を作製した。得られたアクリル系樹脂組成物を剥離紙上に塗布し、照度:4mW/cm2、光量:720mJ/cm2の条件で紫外線を照射して衝撃吸収シートを得た。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
また、実施例7において、空隙率(P0.1)、空隙率(P0.5)、及び空隙率(P0.9)は、それぞれ、22.4%、50.4%、25.3%であり、平均空隙率に対する標準偏差(Pσ)は12.6であった。
単量体成分(a)の配合を表1に示すように変更し、かつ攪拌時間を1.5分に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
単量体成分(a)の配合を表1に示すように変更し、かつ攪拌時間を1.5分に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。衝撃吸収シートの評価結果を表1に示す。
Claims (11)
- 発泡樹脂層を含む衝撃吸収シートであって、13℃における損失係数(tanδ)が0.5以上であり、(13℃におけるtanδ)/(tanδの半値幅[℃])が0.03以上であり、前記発泡樹脂層が、アクリル系発泡樹脂層であり、かつ、中空粒子を含有する衝撃吸収シート。
- 発泡樹脂層を含む衝撃吸収シートであって、13℃における損失係数(tanδ)が0.5以上であり、前記発泡樹脂層がアクリル系発泡樹脂層であり、かつ、中空粒子を含有する衝撃吸収シート。
- 厚さが200μm以下である請求項1又は2に記載の衝撃吸収シート。
- 損失係数(tanδ)のピーク温度であるガラス転移温度(Tg)が5℃以上25℃以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
- 前記発泡樹脂層の密度が0.3g/cm3以上0.8g/cm3以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
- 初期衝撃吸収率が45%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
- 前記発泡樹脂層の厚さをTとすると、前記発泡樹脂層の一方の面から、厚さ0.1Tにおける面方向断面の空隙率(P0.1)、厚さ0.5Tにおける面方向断面の空隙率(P0.5)、及び厚さ0.9Tにおける面方向断面の空隙率(P0.9)がそれぞれ、10面積%以上60面積%以下であり、
前記空隙率(P0.1)、前記空隙率(P0.5)、及び前記空隙率(P0.9)から求めた平均空隙率に対する標準偏差(Pσ)が1.0以上20以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。 - 電子機器に使用される請求項1〜7のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
- 表示装置の背面側に配置される請求項1〜8のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の衝撃吸収シートと、前記衝撃吸収シートの少なくともいずれか一方の面に設けられる粘着材とを備える粘着テープ。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の衝撃吸収シート、又は請求項10に記載の粘着テープを備える、表示装置。
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