JP6916971B1 - 銀めっき材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも耐摩耗性に優れた銀めっき材およびその製造方法を提供する。【解決手段】シアン化銀カリウムまたはシアン化銀と、シアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムと、ベンゾチアゾール類またはその誘導体とを含む水溶液からなる銀めっき液中において電気めっきを行うことによって素材上に銀からなる表層を形成して銀めっき材を製造する方法において、銀めっき液中のフリーシアンの濃度をA(g/L)、銀めっき液中のベンゾチアゾール類またはその誘導体のベンゾチアゾール分の濃度をB(g/L)、銀めっき液の温度をC(℃)、電気めっきの電流密度をD(A/dm2)とすると、(BC/A)2/Dが10(℃2・dm2/A)以上になるように電気めっきを行う。【選択図】なし

Description

本発明は、銀めっき材およびその製造方法に関し、特に、車載用や民生用の電気配線に使用されるコネクタ、スイッチ、リレーなどの接点や端子部品の材料として使用される銀めっき材およびその製造方法に関する。
従来、コネクタやスイッチなどの接点や端子部品などの材料として、銅または銅合金やステンレス鋼などの比較的安価で耐食性や機械的特性などに優れた素材に、電気特性や半田付け性などの必要な特性に応じて、錫、銀、金などのめっきを施しためっき材が使用されている。
銅または銅合金やステンレス鋼などの素材に錫めっきを施した錫めっき材は、安価であるが、高温環境下における耐食性に劣っている。また、これらの素材に金めっきを施した金めっき材は、耐食性に優れ、信頼性が高いが、コストが高くなる。一方、これらの素材に銀めっきを施した銀めっき材は、金めっき材と比べて安価であり、錫めっき材と比べて耐食性に優れている。
また、コネクタやスイッチなどの接点や端子部品などの材料は、コネクタの挿抜やスイッチの摺動に伴う耐摩耗性も要求される。
しかし、銀めっき材は、軟質で摩耗し易いため、接続端子などの材料として使用すると、挿抜や摺動により凝着して凝着摩耗が生じ易くなり、また、接続端子の挿入時に表面が削られて摩擦係数が高くなって挿入力が高くなるという問題がある。
このような問題を解消するため、80〜130g/Lの銀と、60〜130g/Lのシアン化カリウムと、30〜80mg/Lのセレンと、50〜190g/Lの炭酸カリウムとを含む銀めっき液中において、電気めっきを行うことによって、素材上に銀からなる表層を形成して銀めっき材を製造する方法(例えば、特許文献1参照)、80〜110g/Lの銀と70〜160g/Lのシアン化カリウムと55〜70mg/Lのセレンを含む銀めっき液中において、銀めっき液中のシアン化カリウムの濃度と電流密度の積をy(g・A/L・dm)とし、液温をx(℃)として、(32.6x−300)≦y≦(32.6x+200)になるように電気めっきを行うことによって、素材上に銀からなる表層を形成して銀めっき材を製造する方法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
しかし、特許文献1および2の方法で製造した銀めっき材は耐摩耗性が十分ではない場合があり、さらに耐摩耗性に優れた銀めっき材が望まれている。
一方、銀めっき材では、再結晶により銀めっきの結晶粒径が増大し易く、この結晶粒径の増大により硬度が低くなって、耐摩耗性が低下するという問題がある(例えば、特許文献3参照)。
このような銀めっき材の耐摩耗性を向上させるために、銀めっき中にアンチモンなどの元素を含有させることにより、銀めっき材の硬度を向上させる方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開2016−204719号公報(段落番号0010) 特開2016−145413号公報(段落番号0010) 特開2008−169408号公報(段落番号0006) 特開2009−79250号公報(段落番号0003−0004)
しかし、特許文献4の方法のように、銀めっき中にアンチモンなどの元素を含有させると、銀が合金化して硬度が向上するものの、耐摩耗性の向上は十分ではなく、さらに耐摩耗性に優れた銀めっき材が望まれている。
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、従来よりも耐摩耗性に優れた銀めっき材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、シアン化銀カリウムまたはシアン化銀と、シアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムと、ベンゾチアゾール類またはその誘導体とを含む水溶液からなる銀めっき液中において電気めっきを行うことによって素材上に銀からなる表層を形成して銀めっき材を製造する方法において、銀めっき液中のフリーシアンの濃度をA(g/L)、銀めっき液中のベンゾチアゾール類またはその誘導体のベンゾチアゾール分の濃度をB(g/L)、銀めっき液の温度をC(℃)、電気めっきの電流密度をD(A/dm)とすると、(BC/A)/Dが10(℃・dm/A)以上になるように電気めっきを行うことにより、従来よりも耐摩耗性に優れた銀めっき材を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明による銀めっき材の製造方法は、シアン化銀カリウムまたはシアン化銀と、シアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムと、ベンゾチアゾール類またはその誘導体とを含む水溶液からなる銀めっき液中において電気めっきを行うことによって素材上に銀からなる表層を形成して銀めっき材を製造する方法において、銀めっき液中のフリーシアンの濃度をA(g/L)、銀めっき液中のベンゾチアゾール類またはその誘導体のベンゾチアゾール分の濃度をB(g/L)、銀めっき液の温度をC(℃)、電気めっきの電流密度をD(A/dm)とすると、(BC/A)/Dが10(℃・dm/A)以上になるように電気めっきを行うことを特徴とする。
この銀めっき材の製造方法において、銀めっき液中のフリーシアンの濃度が3〜60g/Lであるのが好ましく、ベンゾチアゾール分の濃度が2〜30g/Lであるのが好ましく、銀の濃度が15〜85g/Lであるのが好ましい。また、ベンゾチアゾール類がメルカプトベンゾチアゾールであるのが好ましい。また、ベンゾチアゾール類の誘導体がベンゾチアゾール類のアルカリ金属塩であるのが好ましく、アルカリ金属塩がナトリウム塩であるのが好ましい。また、電気めっきが、液温15〜50℃で行われるのが好ましく、電流密度0.5〜10A/dmで行われるのが好ましい。さらに、素材が銅または銅合金からなるのが好ましく、素材と表層との間にニッケルからなる下地層を形成するのが好ましい。
また、本発明による銀めっき材は、素材上に銀からなる表層が形成された銀めっき材において、銀からなる表層の平均結晶子径が25nm以下であり且つビッカース硬さHVが100〜160であることを特徴とする。
この銀めっき材において、ビッカース硬さHVが145以下であるのが好ましい。また、表層が95〜99質量%の銀からなるのが好ましく、表層中の炭素含有量が0.5〜2質量%であるのが好ましい。また、素材が銅または銅合金からなるのが好ましく、素材と表層との間にニッケルからなる下地層を形成するのが好ましい。また、表層がベンゾチアゾール分を含むのが好ましい。
なお、本明細書中において、「ベンゾチアゾール分」とは、ベンゾチアゾール(CNS)(分子量135.19)に対応する部分をいう。
本発明によれば、従来よりも耐摩耗性に優れた銀めっき材およびその製造方法を提供することができる。
本発明による銀めっき材の製造方法の実施の形態では、シアン化銀カリウムまたはシアン化銀と、シアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムと、ベンゾチアゾール類またはその誘導体とを含む水溶液からなる銀めっき液中において電気めっきを行うことによって素材上に銀からなる表層を形成して銀めっき材を製造する方法において、銀めっき液中のフリーシアンの濃度をA(g/L)、銀めっき液中のベンゾチアゾール類またはその誘導体のベンゾチアゾール分の濃度をB(g/L)、銀めっき液の温度をC(℃)、電気めっきの電流密度をD(A/dm)とすると、(BC/A)/Dが10(℃・dm/A)以上になるように電気めっきを行う。
なお、ベンゾチアゾール(CNS)は、ベンゼン骨格とチアゾール骨格を有する複素環式化合物であり、ベンゾチアゾール類は、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのメルカプト基(−SH)を有するベンゾチアゾールであるのが好ましい。また、ベンゾチアゾール類の誘導体として、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(ナトリウムメルカプトベンゾチアゾール(SMBT))、亜鉛−2−メルカプトベンゾチアゾール、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、6−ニトロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾールなどを使用することができる。これらのベンゾチアゾール類の誘導体のうち、ベンゾチアゾール類のアルカリ金属塩であるのが好ましく、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(ナトリウムメルカプトベンゾチアゾール(SMBT))などのベンゾチアゾール類のナトリウム塩であるのが好ましい。また、銀めっき液中のフリーシアンの濃度は、銀めっき液を水で希釈した後に、ヨウ化カリウム水溶液を加えて、銀めっき液が白濁するまで硝酸銀水溶液を滴下して、その滴下量から求めることができる。
このように(シアン系)銀めっき液中に有機添加剤として(メルカプトベンゾチアゾールなどの)ベンゾチアゾール類またはそのアルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩)を添加して電気めっき(銀めっき)を行うと、銀からなる表層中に有機添加剤(の少なくとも一部)を取り込んで表層の銀の結晶粒成長を抑制(結晶粒を微細化)することによって表層の硬度を高めて耐摩耗性を向上させるとともに、有機添加剤の潤滑効果により表層の摩擦係数を低下させることができると考えられる。なお、ベンゾチアゾール類としてメルカプトベンゾチアゾールを使用すれば、銀めっき材の生産効率を向上させることができる。また、銀からなる表層中に有機添加剤を取り込むことにより、銀めっき材を接続端子などの材料として使用した場合に、挿抜や摺動により凝着するのを抑制して耐摩耗性を向上させることができる。特に、上記の条件で電気めっきを行えば、従来よりも耐摩耗性に優れた銀めっき材を製造することができる。
上記の銀めっき材の製造方法において、銀めっき液中のフリーシアンの濃度は、好ましくは3〜60g/L(さらに好ましくは4〜57g/L、最も好ましくは4〜40g/L)であり、銀めっき液中のベンゾチアゾール分の濃度は、好ましくは2〜30g/L(さらに好ましくは2.5〜25g/L、さらに好ましくは5〜22g/L、最も好ましくは7〜20g/L)であり、銀めっき液中の銀の濃度は、好ましくは15〜85g/L(さらに好ましくは20〜82g/L)である。また、銀めっき液中のシアン化銀カリウムまたはシアン化銀の濃度は、好ましくは30〜170g/L(さらに好ましくは35〜150g/L)であり、銀めっき液中のシアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムの濃度は、好ましくは30〜150g/L(さらに好ましくは35〜145g/L、最も好ましくは38〜100g/L)であり、銀めっき液中のベンゾチアゾール類またはそのアルカリ金属塩の濃度は、好ましくは3〜30g/L(さらに好ましくは6〜27g/L、最も好ましくは8〜27g/L)である。また、電気めっき(銀めっき)は、液温15〜50℃で行われるのが好ましく、液温18〜47℃で行われるのがさらに好ましい。また、電気めっき(銀めっき)は、電流密度0.5〜10A/dmで行われるのが好ましく、0.5〜8A/dmで行われるのがさらに好ましい。なお、良好な銀めっき皮膜を形成するためには、電流密度が1.5dm/A以上と比較的高いのが好ましく、2.5dm/A以上であるのがさらに好ましい。また、素材が銅または銅合金からなるのが好ましく、素材と表層との間に(銅、ニッケルまたはこれらの合金からなる)下地層を形成するのが好ましい。
本発明による銀めっき材の実施の形態では、素材上に銀からなる表層が形成された銀めっき材において、銀からなる(厚さが好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは3〜8μmの)表層の平均結晶子径が25nm以下(好ましくは8〜15nm)であり且つビッカース硬さHVが100〜160(好ましくは105〜145)である。
この銀めっき材において、表層が95〜99質量%の銀からなるのが好ましく、表層中の炭素含有量は、0.5〜2質量%であるのが好ましい。また、表層中の硫黄含有量は、0.2〜2質量%であるのが好ましい。また、素材が銅または銅合金からなるのが好ましく、素材と表層との間に厚さ0.3〜2μmのニッケルからなる下地層を形成するのが好ましい。
この銀めっき材において、表層が95〜99質量%の銀からなるのが好ましく、96〜98.5質量%の銀からなるのがさらに好ましい。また、表層中の炭素含有量が0.5〜2質量%であるのが好ましく、0.8〜2質量%であるのがさらに好ましい。また、素材が銅または銅合金からなるのが好ましく、素材と表層との間に(銅、ニッケルまたはこれらの合金からなる)下地層が形成されているのが好ましい。
以下、本発明による銀めっき材およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
[実施例1]
まず、基材(被めっき材)として67mm×50mm ×0.3mmの無酸素銅(C1020 1/2H)からなる圧延板を用意し、この被めっき材の前処理として、被めっき材とSUS板をアルカリ脱脂液に入れ、被めっき材を陰極とし、SUS板を陽極として、電圧5Vで30秒間電解脱脂を行い、水洗した後、3%硫酸中で15秒間酸洗を行った。
次に、540g/Lのスルファミン酸ニッケル四水和物と25g/Lの塩化ニッケルと35g/Lのホウ酸を含む水溶液からなる無光沢ニッケルめっき液中において、前処理を行った被めっき材を陰極とし、ニッケル電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温50℃において電流密度5A/dmで80秒間電気めっき(無光沢ニッケルめっき)を行って、下地めっき皮膜として無光沢ニッケルめっき皮膜を形成した。この無光沢ニッケルめっき皮膜の中央部の厚さを蛍光X線膜厚計(株式会社日立ハイテクサイエンス製のSFT−110A)により測定したところ、1μmであった。
次に、3g/Lのシアン化銀カリウム(KAg(CN))と90g/Lのシアン化カリウム(KCN)を含む水溶液からなる銀ストライクめっき液中において、下地めっき皮膜を形成した被めっき材を陰極とし、白金で被覆したチタン電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら室温(25℃)において電流密度1.4A/dmで10秒間電気めっきを行って、銀ストライクめっき皮膜を形成した後、水洗して銀ストライクめっき液を十分に洗い流した。
次に、40g/Lのシアン化銀カリウム(KAg(CN))と39g/Lのシアン化カリウム(KCN)と4g/Lの2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(ナトリウムメルカプトベンゾチアゾール(SMBT))を含む水溶液からなる銀めっき液(銀濃度21.7g/L、フリーシアン濃度15.6g/L、ベンゾチアゾール分(BT)の濃度2.9g/Lの銀めっき液)中において、銀ストライクめっき皮膜を形成した被めっき材を陰極とし、銀電極板を陽極として、スターラにより500rpmで撹拌しながら液温25℃において電流密度0.7A/dmで780秒間電気めっき(銀めっき)を行って銀めっき皮膜を形成した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを上記の蛍光X線膜厚計により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成の際の銀めっき液中のフリーシアン濃度およびベンゾチアゾール分の濃度をそれぞれA(g/L)およびB(g/L)とし、銀めっき液の温度をC(℃)、電気めっきの電流密度をD(A/dm)とすると、(BC/A)/D=30.9(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材の表面のビッカース硬さHVを、微小硬さ試験機(株式会社ミツトヨ製のHM−221)を使用して、測定荷重10gfを10秒間加えて、JIS Z2244に準じて測定したところ、157であった。
また、上記の銀めっき材を2枚用意し、一方をインデント加工(内側R=1.5mm)して圧子として使用し、他方を平板状の評価試料として使用し、精密摺動試験装置(株式会社山崎精機研究所製のCRS−G2050−DWA)により、評価試料に圧子を一定の荷重(5N)で押し当てながら、素材が露出するまで往復摺動動作(摺動距離5mm、摺動速度1.67mm/s)を継続し、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVHX−1000)により銀めっき材の摺動痕の中心部を倍率100倍で観察して、銀めっき材の摩耗状態を確認する摩耗試験を行うことにより、耐摩耗性の評価を行った。その結果、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。
また、この銀めっき材の銀めっき皮膜の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の各々の結晶面に垂直方向の結晶子径を、XRD分析装置(株式会社リガク製の全自動多目的水平型X線回折装置Smart Lab)によって得られたX線回折パターン(XRDパターン)の結晶面のピーク(38°付近に現れる(111)ピークと44°付近に現れる(200)ピークと64°付近に現れる(220)ピークと77°付近に現れる(311)ピーク)の各々のピークの半価幅からシェラー(Scherrer)の式を用いてそれぞれ算出し、各結晶面の配向比率による重みづけをして、各結晶面の結晶子径の加重平均により平均結晶子径を算出した。その結果、銀めっき皮膜の平均結晶子径は128.7オングストローム(12.87nm)であった。なお、上記の配向比率として、X線回折(XRD)分析装置(株式会社リガク製の全自動多目的水平型X線回折装置Smart Lab)により、Cu管球、Kβフィルタ法を用いて、走査範囲2θ/θを走査して、得られたX線回折パターンから、銀めっき皮膜の(111)面、(200)面、(220)面および(311)面の各々のX線回折ピーク強度(X線回折ピークの強度)をJCPDSカードNo.40783に記載された各々の相対強度比(粉末測定時の相対強度比)((111):(200):(220):(311)=100:40:25:26)で割ることにより補正して得られた値(補正強度)を使用した。
[実施例2]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の量を10g/L(ベンゾチアゾール分(BT)の濃度を7.1g/L)とした以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=184.9(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは130であった。また、10,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は134.0オングストローム(13.40nm)であった。
[実施例3]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度3A/dmで180秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例2と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=43.2(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは120であった。また、20,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は110.1オングストローム(11.01nm)であった。
[実施例4]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度5A/dmで120秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例2と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=25.9(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは137であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は102.4オングストローム(10.24nm)であった。
[実施例5]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の量を15g/L(ベンゾチアゾール分(BT)の濃度を10.7g/L)とし、銀めっき皮膜を形成する際に電流密度4A/dmで150秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=73.5(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは127であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は103.3オングストローム(10.33nm)であった。
[実施例6]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度5A/dmで120秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例5と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=58.8(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは136であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は112.1オングストローム(11.21nm)であった。
[実施例7]
銀めっき液中のシアン化銀カリウム(KAg(CN))の量を80g/L(銀濃度を43.4g/L)とし、銀めっき皮膜を形成する際に液温を35℃とした以外は、実施例4と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=50.7(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは122であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は89.1オングストローム(8.91nm)であった。
[実施例8]
銀めっき皮膜を形成する際に液温を40℃とした以外は、実施例7と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=66.3(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは141であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は83.6オングストローム(8.36nm)であった。
[実施例9]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度7A/dmで85秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例8と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=47.3(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは125であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は91.7オングストローム(9.17nm)であった。
[実施例10]
銀めっき液中のシアン化銀カリウム(KAg(CN))の量を80g/L(銀濃度を43.4g/L)とした以外は、実施例6と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=58.8(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは126であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は95.0オングストローム(9.50nm)であった。
[実施例11]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度3A/dmで180秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例10と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=98.0(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは122であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は98.8オングストローム(9.88nm)であった。
[実施例12]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の量を20g/L(ベンゾチアゾール分(BT)の濃度を14.3g/L)とした以外は、実施例10と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=105.0(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは114であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は73.3オングストローム(7.33nm)であった。
[実施例13]
銀めっき皮膜を形成する際に液温を30℃とした以外は、実施例12と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=151.3(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは123であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は87.5オングストローム(8.75nm)であった。
また、この銀めっき材の重量から、銀めっき皮膜を形成する前の基材の重量を差し引いて、銀めっき皮膜の重量Xを算出し、銀めっき材中の銀を硝酸により溶解させた後、塩酸を白色沈殿(AgCl)が生成しなくなるまで添加し、白色沈殿をろ過し、水洗した後、AgClの重量を測定して、銀めっき皮膜中の銀の重量Yを算出し、銀めっき皮膜中の銀の含有量を(Y/X)×100として算出した。また、炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA−810)を用いて銀めっき材を酸素気流中で1350℃に加熱して溶融させたときに発生するCOとCOを赤外線検出器により定性および定量することにより、銀めっき材中の炭素の含有量を算出した。なお、同様の方法により、銀めっき皮膜を形成する前の基材中の炭素の含有量を算出したが、検出限界以下であったため、銀めっき材中の炭素の含有量を銀めっき皮膜中の炭素の含有量とした。また、銀めっき材を酸素気流中で1350℃に加熱して溶解させたときに発生するSOを赤外線検出器により定性および定量することにより、銀めっき材中の硫黄の含有量を銀めっき皮膜中の硫黄の含有量として算出した。さらに、銀めっき材を酸素・窒素・水素分析装置(LECOジャパン合同会社製)によりヘリウム気流中において5000Wの電力で溶融させたときに発生するNを熱伝導度検出器(TCD)により定量することにより、銀めっき皮膜中の窒素の含有量を銀めっき皮膜中の窒素の含有量として算出した。その結果、銀めっき皮膜は、1.0質量%の炭素と0.6質量%の硫黄と0.2質量%の窒素と98.2質量%の銀を含む皮膜であった。なお、銀めっき皮膜を炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA−810)および酸素・窒素・水素分析装置(LECOジャパン合同会社製)により分析した結果から、銀めっき皮膜中の原子濃度の比がC/S=4、S/N=2であり、ベンゾチアゾールの理論比(C/S=3.5、S/N=2)と同等(C/S=3〜6程度、S/N=1〜4程度)と推測され、銀めっき皮膜中にベンゾチアゾール分が含まれていることがわかった。
[実施例14]
銀めっき皮膜を形成する際に液温を35℃とした以外は、実施例12と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=205.9(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは129であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は95.3オングストローム(9.53nm)であった。
[実施例15]
銀めっき皮膜を形成する際に液温を40℃とした以外は、実施例12と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=268.9(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは131であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は104.7オングストローム(10.47nm)であった。
[実施例16]
銀めっき皮膜を形成する際に液温を45℃とした以外は、実施例12と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=340.3(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは128であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は132.9オングストローム(13.29nm)であった。
[実施例17]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度7A/dmで85秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例16と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=243.1(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは131であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は90.1オングストローム(9.01nm)であった。
また、この銀めっき材の銀めっき皮膜について、実施例13と同様の方法により表面分析を行ったところ、銀めっき皮膜は、1.9質量%の炭素と1.3質量%の硫黄と0.2質量%の窒素と96.5質量%の銀を含む皮膜であった。なお、銀めっき皮膜を実施例13と同様の方法で分析した結果から、銀めっき皮膜中の原子濃度の比がC/S=4、S/N=3であり、銀めっき皮膜中にベンゾチアゾール分が含まれていることがわかった。
[実施例18]
銀めっき液中のシアン化カリウム(KCN)の量を78g/L(フリーシアン濃度を31.1g/L)とし、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の量を25g/L(ベンゾチアゾール分(BT)の濃度を17.9g/L)とした以外は、実施例16と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=134.2(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは120であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は102.9オングストローム(10.29nm)であった。
[実施例19]
銀めっき液中のシアン化銀カリウム(KAg(CN))の量を148g/L(銀濃度80.2g/L)とし、シアン化カリウム(KCN)の量を140g/L(フリーシアン濃度55.9g/L)とした以外は、実施例18と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=41.5(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは128であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は93.1オングストローム(9.31nm)であった。
また、この銀めっき材の銀めっき皮膜について、実施例13と同様の方法により表面分析を行ったところ、銀めっき皮膜は、1.1質量%の炭素と0.6質量%の硫黄と0.1質量%の窒素と98.2質量%の銀を含む皮膜であった。なお、銀めっき皮膜を実施例13と同様の方法で分析した結果から、銀めっき皮膜中の原子濃度の比がC/S=5、S/N=2であり、銀めっき皮膜中にベンゾチアゾール分が含まれていることがわかった。
[実施例20]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度7A/dmで85秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例19と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=29.7(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは134であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は90.6オングストローム(9.06nm)であった。
[実施例21]
銀めっき液として54g/Lシアン化銀(AgCN)と29g/Lのシアン化ナトリウム(NaCN)と20g/Lの2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)を含む水溶液からなる銀めっき液(銀濃度43.5g/L、フリーシアン濃度4.9g/L、ベンゾチアゾール分(BT)の濃度14.3g/Lの銀めっき液)を使用し、銀めっき皮膜を形成する際に電流密度5A/dmで180秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例12と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=1064.6(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは131であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は84.9オングストローム(8.49nm)であった。
[実施例22]
銀めっき皮膜を形成する際に液温を40℃とした以外は、実施例21と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=2725.4(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは113であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は93.0オングストローム(9.30nm)であった。
[比較例1]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の量を2g/L(ベンゾチアゾール分(BT)の濃度を1.4g/L)とした以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=7.2(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは138であった。また、50回以下の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は313.1オングストローム(31.31nm)であった。
[比較例2]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の量を15g/L(ベンゾチアゾール分(BT)の濃度を10.7g/L)とし、銀めっき皮膜を形成する際に液温を25℃とし、電流密度3A/dmで180秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例19と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=7.6(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは143であった。また、100回以下の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は284.7オングストローム(28.47nm)であった。
[比較例3]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度5A/dmで120秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、比較例2と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=4.6(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは153であった。また、100回以下の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は344.4オングストローム(34.44nm)であった。
[比較例4]
銀めっき皮膜を形成する際に電流密度7A/dmで85秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、比較例2と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=3.3(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは89であった。また、100回以下の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は882.0オングストローム(88.20nm)であった。
[比較例5]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の代わりに0.8g/Lの2−メルカプトベンゾイミダゾール(2−MBI)とした(銀濃度21.7g/L、フリーシアン濃度15.6g/L、2−メルカプトベンゾイミダゾール(2−MBI)濃度0.8g/Lの銀めっき液を使用した)以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは187であった。また、40回以下の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は152.0オングストローム(15.20nm)であった。
また、この銀めっき材の銀めっき皮膜について、実施例13と同様の方法により表面分析を行ったところ、銀めっき皮膜は、0.5質量%の炭素と99.2質量%以上の銀を含む皮膜であった。
[比較例6]
銀めっき液として175g/Lのシアン化銀カリウム(KAg(CN))と95g/Lのシアン化カリウム(KCN)と70mg/Lのセレンを含む水溶液からなる銀めっき液(銀濃度94.9g/L、フリーシアン濃度37.9g/L、セレン濃度70mg/Lの銀めっき液)を使用し、銀めっき皮膜を形成する際に液温を18℃とした以外は、実施例4と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは134であった。また、80回の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は278オングストローム(27.8nm)であった。
また、この銀めっき材の銀めっき皮膜について、実施例13と同様の方法により表面分析を行ったところ、銀めっき皮膜は、0.1質量%以下の炭素と99.9質量%以上の銀を含む皮膜であった。
[比較例7]
銀めっき液として148g/Lのシアン化銀カリウム(KAg(CN))と140g/Lのシアン化カリウム(KCN)と8mg/Lのセレンを含む水溶液からなる銀めっき液(銀濃度80.2g/L、フリーシアン濃度55.9g/L、セレン濃度8mg/Lの銀めっき液)を使用し、銀めっき皮膜を形成する際に液温を16℃とし、銀めっき皮膜を形成する際に電流密度8A/dmで75秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは82であった。また、50回の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は750オングストローム(75.0nm)であった。
[比較例8]
銀めっき液として115g/Lのシアン化銀カリウム(KAg(CN))と60g/Lのシアン化カリウム(KCN)と40mg/Lのセレンを含む水溶液からなる銀めっき液(銀濃度62.3g/L、フリーシアン濃度24.0g/L、セレン濃度40mg/Lの銀めっき液)を使用し、銀めっき皮膜を形成する際に電流密度2A/dmで300秒間電気めっき(銀めっき)を行った以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは119であった。また、100回の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は636オングストローム(63.6nm)であった。
[比較例9]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の代わりに1.0g/LのN−アリルチオ尿素とした(銀濃度21.7g/L、フリーシアン濃度15.6g/L、N−アリルチオ尿素1.0g/Lの銀めっき液を使用した)以外は、実施例1と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは61であった。また、30回以下の往復摺動動作後に素材が露出したことが確認され、耐摩耗性に劣っていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は455.6オングストローム(45.56nm)であった。
[実施例23]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の代わりに6g/Lの6−ニトロ−2−メルカプトベンゾチアゾール(NMBT)とした(銀濃度43.4g/L、フリーシアン濃度15.6g/L、ベンゾチアゾール分(BT)濃度3.8g/Lの銀めっき液を使用した)以外は、実施例7と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=14.9(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは122であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は172.5オングストローム(17.25nm)であった。
[実施例24]
銀めっき液中の2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム(SMBT)の代わりに6g/Lの6−ニトロ−2−メルカプトベンゾチアゾール(NMBT)とし(銀濃度43.4g/L、フリーシアン濃度15.6g/L、ベンゾチアゾール分(BT)の濃度3.8g/Lの銀めっき液を使用し)、銀めっき皮膜を形成する際に液温を35℃とした以外は、実施例9と同様の方法により、銀めっき材を作製した。この銀めっき材の銀めっき皮膜の中央部の厚さを実施例1と同様の方法により測定したところ、5μmであった。なお、この銀めっき材の銀めっき皮膜の形成において、(BC/A)/D=10.7(℃・dm/A)であった。
このようにして得られた銀めっき材について、実施例1と同様の方法により、銀めっき皮膜のビッカース硬さHVを測定し、耐摩耗性の評価を行い、結晶子径を算出した。その結果、ビッカース硬さHVは107であった。また、1,000回の往復摺動動作後にも素材が露出しなかったことが確認され、耐摩耗性に優れていることがわかった。さらに、銀めっき皮膜の平均結晶子径は92.4オングストローム(9.24nm)であった。
これらの実施例および比較例で得られた銀めっき材の製造条件および特性を表1〜表6に示す。
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Claims (11)

  1. シアン化銀カリウムまたはシアン化銀と、シアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムと、ベンゾチアゾール類またはその誘導体とを含む水溶液からなる銀めっき液中において電気めっきを行うことによって素材上に銀からなる表層を形成して銀めっき材を製造する方法において、銀めっき液中のフリーシアンの濃度をA(g/L)、銀めっき液中のベンゾチアゾール類またはその誘導体のベンゾチアゾール分の濃度をB(g/L)、銀めっき液の温度をC(℃)、電気めっきの電流密度をD(A/dm)とすると、(BC/A)/Dが10(℃・dm/A)以上になるように電気めっきを行うことを特徴とする、銀めっき材の製造方法。
  2. 前記銀めっき液中のフリーシアンの濃度が3〜60g/Lであることを特徴とする、請求項1に記載の銀めっき材の製造方法。
  3. 前記銀めっき液中のベンゾチアゾール分の濃度が2〜30g/Lであることを特徴とする、請求項1または2に記載の銀めっき材の製造方法。
  4. 前記銀めっき液中の銀の濃度が15〜85g/Lであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
  5. 前記ベンゾチアゾール類がメルカプトベンゾチアゾールであることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
  6. 前記ベンゾチアゾール類の誘導体が前記ベンゾチアゾール類のアルカリ金属塩あることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
  7. 前記アルカリ金属塩がナトリウム塩であることを特徴とする、請求項6に記載の銀めっき材の製造方法。
  8. 前記電気めっきが、液温15〜50℃で行われることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
  9. 前記電気めっきが、電流密度0.5〜10A/dmで行われることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
  10. 前記素材が銅または銅合金からなることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
  11. 前記素材と前記表層との間にニッケルからなる下地層を形成することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の銀めっき材の製造方法。
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