JP6910594B2 - 非水電解質二次電池及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、特許文献1,2には、黒鉛を負極に用いると、充放電サイクルに伴い大きな電池膨れが生じるという上記の課題について、何も示していない。
また、特許文献4には、リチウム過剰型正極活物質を用いる正極と、黒鉛と不定形炭素を混合した負極に、ホウ素を添加した電解液を組み合わせることにより、製造時の電池の膨れを抑制することが記載されている。
しかし、特許文献3,4にも、充放電サイクルに伴う電池膨れという上記の課題について、検討されていない。
また、特許文献3,4に記載された正極活物質は、共沈炭酸塩前駆体を用いて作製されている。共沈炭酸塩前駆体を用いたリチウム過剰型活物質は、ポーラスで微細な一次粒子を有するため、リチウムイオンの拡散に有利な粒子形態となり、高率放電性能が改善されるものの、高密度化が困難であるから、正極合剤の密度を高めることが困難である。
(1)正極と負極と非水電解質を備えた非水電解質二次電池であって、前記正極は、α−NaFeO2型結晶構造を有し遷移金属元素(Me)に対するLiのモル比Li/Meが1<Li/Meであるリチウム遷移金属複合酸化物を、活物質として含有する正極合剤層を備え、前記正極合剤層の密度が2.6g/cm3以上であり、かつ、前記負極は、黒鉛と非黒鉛質炭素を含有する非水電解質二次電池。
(2)前記(1)の非水電解質二次電池の製造方法であって、遷移金属の水酸化物前駆体とリチウム化合物とを混合して焼成したリチウム遷移金属複合酸化物を用い、前記リチウム遷移金属複合酸化物、導電剤及び結着剤を含有する合剤を集電体に塗布しプレスして、正極合剤層の密度が2.6g/cm3以上の正極を製造することを備える非水電解質二次電池の製造方法。
本発明の作用機構は、以下のように推定される。
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2のような「LiMeO2型」正極活物質に含まれるMnは、合成時点だけでなく、充放電反応が進行しても、Mn4+のまま価数が変化しないのに対し、Li2MnO3とLiMeO2との固溶体として表記可能な「リチウム過剰型」正極活物質に含まれるMnは、合成時点ではMn4+であるが、充放電サイクルに伴って部分的にMn3+を生成し、生成したMn3+は、2Mn3+→Mn4++Mn2+の不均化反応により、Mn2+が生成する。このMn2+は、正極合剤層の密度が低く、電解質との界面面積が大きいほど、溶解しやすい。正極から溶出したMn2+は、負極の炭素材料に析出する反応が生じ、この反応に伴って、リチウムイオンも析出しやすくなる。析出したリチウムは高い電子伝導性を有していることから、その近傍の溶媒が電子を受け取りやすい状態となり、溶媒が分解しやすくなるため、ガスが発生すると推察される。
一方、炭素材料の中でも、非黒鉛質炭素は、多方向の挿入サイトを有する構造を有しているので、黒鉛よりもリチウムイオンの挿入が低抵抗で行われる。
そのため、黒鉛に非黒鉛質炭素を混合した負極を用いた場合、充放電サイクルに伴い、リチウム過剰型活物質に含まれるMnが負極に析出した場合であっても、Liの析出が抑制され、溶媒の分解反応が抑制され、ガス発生も抑制されると推察される。
以下、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る非水電解質二次電池及びその製造方法について、詳述する。
本実施形態に係る非水電解質二次電池の正極に含まれる活物質は、Co、Ni及びMnを含む遷移金属元素Me、並びにLiを含有し、Li2MnO3とLiMeO2との固溶体として表記可能であり、組成式Li1+αMe1−αO2(α>0)とも表記することができる、いわゆる「リチウム過剰型」である。
遷移金属元素Meに対するMnのモル比Mn/Meは0.42〜0.66が好ましく、0.45〜0.60がより好ましい。この範囲であると、単位重量当たりの放電容量を維持しつつ、粉体密度を向上させることが可能であり、体積当たりの放電容量が向上する。また、一般に、正極合剤層の密度が高い正極板、なかでも、厚みが50μm以上の正極合剤層を備える正極板では、柔軟性が低下し、製造時の加工性が低下する傾向があるが、本実施形態においては、Mn/Meが0.66以下であることで、正極合剤層の密度が2.6g/cm3以上である正極においても、正極板の柔軟性が低下する虞を効果的に低減できる。よって、厚みが50μm以上の正極合剤層を備える正極に適用した場合であっても、製造時の加工性に優れた正極板を提供することができるので、体積エネルギー密度が高い非水電解質電池を提供できる。
Coは初期効率を向上させる効果があるが、Coが多すぎると結晶子の成長が進み、FWHM(003)が小さくなりすぎる傾向がある。また、希少資源であることからコスト高である。したがって、遷移金属元素Meに対するCoのモル比Co/Meは0.24未満が好ましく、0.18未満がより好ましく、0でも良い。この範囲であると、体積当たりの放電容量が向上する。
遷移金属元素Meに対するNiのモル比Ni/Meは、0.2〜0.5が好ましく、0.25〜0.4がより好ましい。このような組成によって、放電容量が大きい非水電解質二次電池を得ることができる。
本実施形態に係る非水電解質二次電池の正極活物質は、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Mn,Co,Ni)を目的とする活物質(酸化物)の組成どおりに含有する原料を調整し、これを焼成することによって得ることができる。但し、Li原料の量については、焼成中にLi原料の一部が消失することを見込んで、1〜5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
目的とする組成の酸化物を作製するにあたり、Li,Co,Ni,Mnのそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめCo,Ni,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはCo,Niに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。これまで文献などにおいては、固相法によってNiやCoの一部にMnを固溶(LiNi1−xMnxO2など)しようという試みが多数なされているが、「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。そこで、後述する実施例においては、「共沈法」を採用した。
さらに、錯化剤と共に還元剤を用いることが好ましい。錯化剤としてはアンモニア、還元剤としてはヒドラジンを用いることができる。pHが10.5〜14の場合、アンモニア濃度は0.1〜2.0M、ヒドラジン濃度は0.02〜1.0Mとすることが好ましい。
水酸化物前駆体の原料水溶液を滴下供給する間、水酸化ナトリウム、アンモニア、及びヒドラジンを含む混合アルカリ溶液を適宜滴下する方法が好ましい。
焼成温度が高すぎると、得られた活物質が酸素放出反応を伴って崩壊すると共に、主相の六方晶に加えて単斜晶のLi[Li1/3Mn2/3]O2型に規定される相が、固溶相としてではなく、分相して観察される傾向がある。このような分相が多く含まれすぎると、活物質の可逆容量の減少を導くので好ましくない。このような材料では、X線回折図上35°付近及び45°付近に不純物ピークが観察される。従って、焼成温度は、活物質の酸素放出反応の影響する温度未満とすることが好ましい。活物質の酸素放出温度は、本実施形態に係る組成範囲においては、概ね1000℃以上であるが、活物質の組成によって酸素放出温度に若干の差があるので、あらかじめ活物質の酸素放出温度を確認しておくことが好ましい。特に試料に含まれるCo量が多いほど水酸化物前駆体の酸素放出温度は低温側にシフトすることが確認されているので注意が必要である。活物質の酸素放出温度を確認する方法としては、焼成反応過程をシミュレートするために、水酸化物前駆体とリチウム化合物を混合したものを熱重量分析(DTA−TG測定)に供してもよいが、この方法では測定機器の試料室に用いている白金が揮発したLi成分により腐食されて機器を傷めるおそれがあるので、あらかじめ500℃程度の焼成温度を採用してある程度結晶化を進行させた組成物を熱重量分析に供するのが良い。
また、発明者らは、本実施形態に係る活物質の回折ピークの半値幅を詳細に解析することで750℃までの温度で合成した試料においては格子内にひずみが残存しており、それ以上の温度で合成することでほとんどひずみを除去することができることを確認した。また、結晶子のサイズは合成温度が上昇するに比例して大きくなるものであった。よって、本実施形態に係る活物質の組成においても、系内に格子のひずみがほとんどなく、かつ結晶子サイズが十分成長した粒子を志向することで良好な放電容量を得られるものであった。具体的には、格子定数に及ぼすひずみ量が2%以下、かつ結晶子サイズが50nm以上に成長しているような合成温度(焼成温度)及びLi/Me比組成を採用することが好ましいことがわかった。これらを電極として形成して充放電を行うことで膨張収縮による変化も見られるが、充放電過程においても結晶子サイズは30nm以上を保っていることが得られる効果として好ましい。即ち、焼成温度を上記した活物質の酸素放出温度にできるだけ近付けるように選択することにより、はじめて、可逆容量が顕著に大きい活物質を得ることができる。
本実施形態に係る正極は、前記の製造方法により製造されたリチウム遷移金属複合酸化物を含有する活物質を用い、導電剤及び結着剤と混合した合剤を集電体に塗布し、プレスして、正極合剤層の密度を2.6g/cm3以上とすることにより製造することができる。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総質量に対して添加量は30質量%以下が好ましい。
本実施形態に係る負極は、活物質として黒鉛と非黒鉛質炭素を含有する。
本願明細書において、黒鉛とは、平均面間隔d002が0.34nm未満の炭素材料を指し、非黒鉛質炭素とは、d002が0.34nm以上の炭素材料を指す。非黒鉛質炭素は、ソフトカーボン(d002が0.34〜0.36nm)、及びハードカーボン(d002が0.37nm以上)に分類される。非黒鉛質炭素は、多方向の挿入サイトを有する構造を有しているので、黒鉛よりもリチウムイオンの挿入が低抵抗で行われるという特徴を有する。そのため、黒鉛に非黒鉛質炭素を混合した負極を用いた場合、充放電サイクルに伴い、リチウム過剰型活物質に含まれるMnが負極に析出した場合であっても、Liの析出が抑制され、溶媒の分解反応が抑制され、ガス発生も抑制されると推察される。なかでも、ハードカーボンは、ソフトカーボンに比べて、層間(d002)が広いことから、リチウムイオンの挿入がより低抵抗で行われるため、好ましい。
ただし、放電容量を大きくするためには、非黒鉛質炭素が多すぎない方が好ましい。本実施形態においては、活物質に含まれる非黒鉛質炭素は、黒鉛と非黒鉛質炭素の合計量の5〜20質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。
本実施形態における非水電解質二次電池のセパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
本実施形態に係る非水電解質二次電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極及びロール状のセパレータを有する円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
図1に、本発明の一態様に係る非水電解質二次電池である矩形状のリチウム二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解質二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本実施形態は、上記の非水電解質二次電池を複数個集合した蓄電装置としても実現することができる。本発明の一態様に係る蓄電装置を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
[正極活物質]
前述の特許文献2の実施例1と同様の反応晶析法を用いて作製した遷移金属の水酸化物前駆体を使用して、α−NaFeO2型結晶構造を有し、Li1.09Ni0.24Co0.24Mn0.44O2(Li/Me=1.18、 Mn/Me=0.48)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を作製し、これを実施例1に係る正極活物質として用いた。この正極活物質のTAP密度は1.72g/cm3であった。
水を分散媒とし、正極活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比90:5:5の割合で混練分散されている合剤ペーストを作製した。該合剤ペーストを、アルミニウム箔集電体の片方の面に単位面積当たりの活物質の質量が13.3mg/cm2となるように塗布し、乾燥した。その後、ロールプレスを用いてプレスし、密度が2.6g/cm2となる正極合剤層を集電体上に備える正極を製造した。正極合剤層の厚みは57μmであった。
N−メチルピロリドンを分散媒とし、黒鉛と非黒鉛質炭素であるハードカーボン(HC)を90:10の質量比率で混合した活物質とスチレン−ブタジエン・ゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)が質量比96.7:2.1:1.2の割合で混練分散されている合剤を作製した。該合剤を銅箔集電体の片方の面に塗布し乾燥することで、負極を作製した。なお、単位面積当たりに塗布されている活物質の質量を9.4mg/cm2とした。また、ロールプレスを用いて電極の多孔度29%となるようにプレスを行った。
電解質として、フルオロエチレンカーボネート(FEC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)をFEC:EMC=5:95の体積比で混合し、さらに2質量%の1、3プロペンスルトン(PRS)を添加した非水溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1.2mol/Lの濃度で含有させ実施例1に係る非水電解質を調製した。
前記正極と負極の間に、セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を設置して電極体とした。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用いた。正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように、電極体を収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記電解質を注液した。次いで、予備充電として、充電方向に0.2CmAの電流を90分間通電した。前記通電後、ガス抜きを行うため1時間静置してから注液孔を封止し、実施例1に係る非水電解質二次電池を作製した。
前記非水電解質二次電池の電池厚みをノギスで測定し、予備充電後の電池厚みとした。
以上の手順にて作製された非水電解質二次電池は、25℃の下、初期充放電工程に供した。充電は、電流0.1C(=2.9mA)、電圧4.5Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/5に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。この充放電を2サイクル行った。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ10分の休止過程を設けた。
この試験を50サイクル行った後、電池厚みを測定した。
実施例1と同じ正極合剤を用い、正極合剤層の密度が2.8g/cm2となるようにプレスした以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る非水電解質二次電池を作製した。正極合剤層の厚みは51μmであった。
負極活物質を黒鉛100%とした以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る非水電解質二次電池を作製した。正極合剤層の厚みは54μmであった。
負極活物質を黒鉛100%とした以外は、実施例2と同様にして比較例2に係る非水電解質二次電池を作製した。正極合剤層の厚みは51μmであった。
実施例1と同じ正極合剤を用い、正極合剤層の密度が2.4g/cm2となるようにプレスした以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係る非水電解質二次電池を作製した。正極合剤層の厚みは59μmであった。
負極活物質を黒鉛と非黒鉛質炭素を80:20の質量比率で混合した以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る非水電解質二次電池を作製した。正極合剤層の厚みは55μmであった。
負極活物質を黒鉛と非黒鉛質炭素を95:5の質量比率で混合した以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る非水電解質二次電池を作製した。正極合剤層の厚みは56μmであった。
実施例1と同じ正極活物質を用い、正極活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比80:10:10の割合で混練分散されている合剤を作製した以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る非水電解質二次電池を作製した。正極合剤層の厚みは63μmであった。
以下の表1に、実施例1〜5及び比較例1〜3に係る電池の予備充電後及び充放電サイクル試験後(50サイクル後)の電池厚みを測定した結果を示す。
より詳細には、実施例1、2から、正極合剤層の密度は高い方が電池厚みの増加がより抑制されることがわかる。
実施例1、3及び4からは、負極の非黒鉛質炭素の含有量が多い方が電池厚みの増加はより抑制されるが、放電容量はより減少する傾向にあることがわかる。
また、実施例1、5からは、正極合剤に含まれる活物質の量が少ない方が電池厚みの増加量がより抑制されるが、放電容量もより減少することがわかる。
また、正極合剤層の密度が2.6g/cm2に達しない比較例3からは、非黒鉛質炭素を含有する黒鉛負極を組み合わせても、電池厚みの増加を抑制する効果を奏しないことがわかる。
なお、予備充電後の電池厚みは、上記の実施例及び比較例において、同程度の水準であり、また、非水電解質を注液後の予備充電前の電池厚みとほぼ同じであった。
[正極活物質]
前述の特許文献2の比較例11と同様の反応晶析法を用いて作製した遷移金属の炭酸塩前駆体を使用して、α−NaFeO2型結晶構造を有し、Li1.18Co0.10Ni0.17Mn0.55O2(Li/Me=1.44、 Mn/Me=0.67)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を作製し、これを比較例4に係る正極活物質として用いた。
水を分散溶媒とし、正極活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比90:5:5の割合で混練分散されている合剤ペーストを作製した。該合剤ペーストを、アルミニウム箔集電体の片方の面に単位面積当たりの活物質の質量が11.4mg/cm2となるように塗布し、乾燥した。その後、ロールプレスを用いてプレスし、密度が2.2g/cm2となる正極合剤層を集電体上に備える正極を製造した。なお、正極合剤層の密度を2.2g/cm2より高くしようとすると、ロールに活物質が付着し、均一な正極合剤層が得られなかった。
前記正極と、黒鉛と非黒鉛質炭素を80:20の質量比率で含有する負極(実施例3と同じ)とを組み合わせ、実施例1と同様にして比較例4に係る非水電解質二次電池を作製した。
黒鉛と非黒鉛質炭素を95:5の質量比率で含有する負極を用いた以外は、比較例4と同様にして比較例5に係る非水電解質二次電池を作製した。
黒鉛100%とした以外は、比較例4と同様にして比較例6に係る非水電解質二次電池を作製した。
以下の表2に、比較例4〜6に係る電池の予備充放電後及び充放電サイクル試験後の電池厚みを測定した結果を示す。
なお、表2に示す炭酸塩前駆体から作製された正極活物質を有する電池では、表1に示す水酸化物前駆体から作製された正極活物質を有する電池よりも、質量当たりの放電容量は大きいが、正極合剤層の密度を高めることができないので、体積当たりの放電容量を大きくすることができなかった。
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
Claims (4)
- 正極と負極と非水電解質を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極は、α−NaFeO2型結晶構造を有し遷移金属元素(Me)に対するLiのモル比Li/Meが1<Li/Meであるリチウム遷移金属複合酸化物を、活物質として含有する正極合剤層を備え、
前記正極合剤層の密度が2.6g/cm3以上であり、かつ、
前記負極は、黒鉛と非黒鉛質炭素を含有する非水電解質二次電池。 - 前記正極は、遷移金属元素(Me)としてMn及びNi、又はMn、Ni及びCoを含み、Meに対するMnのモル比Mn/Meが0.4≦Mn/Me≦0.6であるリチウム遷移金属複合酸化物を含有する請求項1に記載の非水電解質二次電池。
- 前記負極は、前記非黒鉛質炭素を、黒鉛と非黒鉛質炭素の合計量の5〜20質量%含有する請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法であって、
遷移金属の水酸化物前駆体とリチウム化合物とを混合して焼成したリチウム遷移金属複合酸化物を用い、
前記リチウム遷移金属複合酸化物、導電剤及び結着剤を含有する合剤を集電体に塗布しプレスして、正極合剤層の密度が2.6g/cm3以上の正極を製造することを備える非水電解質二次電池の製造方法。
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