JP7205051B2 - 非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池、及び非水電解質二次電池の製造方法に関する。
リチウム二次電池に代表される非水電解質二次電池は、近年ますます用途が拡大され、より高容量の正極材料の開発が求められている。
従来、非水電解質二次電池用正極活物質として、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が検討され、LiCoOを用いた非水電解質二次電池が広く実用化されている。LiCoOの放電容量は120~130mAh/g程度である。前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属(Me)として、地球資源として豊富なMnを用い、前記リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属に対するLiのモル比Li/Meがほぼ1であり、遷移金属中のMnのモル比Mn/Meが0.5以下であるいわゆる「LiMeO型」活物質を用いた非水電解質二次電池も実用化されている。例えば、LiNi1/2Mn1/2やLiNi1/3Co1/3Mn1/3を含有する正極活物質の放電容量は150~180mAh/gである。
一般に、これらのいわゆる「LiMeO型」活物質を用いた非水電解質二次電池に対して採用される充電電圧は、約4.3Vであり、このときの正極の最大到達電位は約4.4V(vs.Li/Li)である。これは、これ以上充電電圧を高くしても、より多くの放電容量が取りだせないためである。
非水電解質二次電池には、誤って過充電がされた場合においても安全性が確保されることが規格によって定められている。非水電解質二次電池の安全性を向上させる技術としては、非水電解質(電解液)に特定の添加剤を適用する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、「非水電解質を備える非水電解質二次電池であって、前記非水電解質は、下記一般式(1)で表されるハロゲン化芳香族化合物と、下記一般式(2)で表される含窒素ヘテロ環式化合物とを含む、非水電解質二次電池。」(請求項1)が記載されている。
そして、実施例には、「正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3」を用いて作製した正極板(段落[0063])と、「負極活物質としてグラファイト(黒鉛)」を用いて作製した負極板(段落[0064])と、「エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=30:70(体積比)の混合溶媒にLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させ、一般式(1)で表されるハロゲン化芳香族化合物である2-フルオロトルエン(オルトフルオロトルエン)及び一般式(2)で表される含窒素ヘテロ環式化合物である3-メチル-2-オキサゾリドンをそれぞれ非水電解質に対して、5.0質量%及び4.0質量%添加することにより」調整した非水電解質(段落[0066])を備えた非水電解質二次電池について、過充電試験を行ったこと(段落[0069]、[0070])が記載されている。
一方、近年、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の中でも、遷移金属(Me)中のMnのモル比Mn/Meが0.5を超え、遷移金属(Me)に対するLiのモル比Li/Meが1を超えるいわゆる「リチウム過剰型」活物質が知られている。この活物質は、電池を組立てて、最初に行う充電過程において、4.5~5.0V(vs.Li/Li)の電位範囲内に、充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察されるという特徴があり、上記平坦な領域が観察される充電過程が終了するまで充電を行うことにより、以降の充電電位をそれほど貴としなくても、「LiMeO型」活物質に比べて高い放電容量を有することから、注目されている(特許文献2参照)。
特許文献2には、「α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の固溶体を含むリチウム二次電池用活物質であって、前記固溶体が含有するLi,Co,Ni及びMnの組成比が、Li1+(1/3)xCo1-x-yNi(1/2)yMn(2/3)x+(1/2)y(x+y≦1、0≦y、1-x-y=z)を満たし、・・・で表され、かつ、X線回折測定による(003)面と(104)面の回折ピークの強度比が、充放電前においてI(003)/I(104)≧1.56であり、放電末においてI(003)/I(104)>1でああり、4.3V(vs.Li/Li)を超え4.8V以下(vs.Li/Li)の正極電位範囲に充電電気量に対して出現する電位変化が比較的平坦な領域に少なくとも至る初期充電を行う工程を経た場合に、4.3V(vs.Li/Li)以下の電位領域において放電可能な電気量が177mAh/g以上となることを特徴とするリチウム二次電池用活物質。」(請求項3)が記載されている。
そして、段落[0062]には、「本発明に係るリチウム二次電池用活物質を用い、使用時において、充電時の正極の最大到達電位が4.3V(vs.Li/Li)以下となるような充電方法を採用しても、充分な放電容量を取り出すことのできるリチウム二次電池を製造するためには、次に述べる、本発明に係るリチウム二次電池用活物質に特徴的な挙動を考慮した充電工程を該リチウム二次電池の製造工程中に設けることが重要である。即ち、本発明に係るリチウム二次電池用活物質を正極に用いて定電流充電を続けると、正極電位4.3V~4.8Vの範囲に、電位変化が比較的平坦な領域が比較的長い期間に亘って観察される。・・・ここで採用した充電条件は、電流0.1ItA、電圧(正極電位)4.5V(vs.Li/Li)の定電流定電圧充電であるが、充電電圧をさらに高く設定しても、この比較的長い期間に亘る電位平坦領域は、xの値が1/3以下の材料を用いた場合にはほとんど観察されない。逆に、xの値が2/3を超える材料では、電位変化が比較的平坦な領域が観察される場合であっても短いものとなる。また、従来のLi[Co1-2xNiMn]O(0≦x≦1/2)系材料でもこの挙動は観察されない。この挙動は、本発明に係るリチウム二次電池用活物質に特徴的なものである。」と記載されている。
また、「LiMeO型」活物質と「リチウム過剰型」活物質を混合して正極活物質として用いることも知られている(特許文献3及び4参照)。
特許文献3には、「α-NaFeO構造を有し、遷移金属Me1としてCo、Ni及びMnを含有し、1<モル比Li/Me1<1.5、モル比Mn/Me1>0.5であるリチウム遷移金属複合酸化物Aと、組成式LiMe2O(但し、Me2はCo、Ni及びMnを含む遷移金属、0<モル比Mn/Me2≦0.5)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物Bの混合物を活物質とするリチウム二次電池用混合活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物Aを前記混合物中に50~85質量%含有し、前記リチウム遷移金属複合酸化物Aは、平均粒子径が前記リチウム遷移金属複合酸化物Bの平均粒子径よりも小さく、かつ、窒素ガス吸着法を用いた吸着等温線からBJH法で求めた微分細孔容積が最大値を示す細孔径が30~40nmの範囲で、ピーク微分細孔容積が0.85mm/(g・nm)以上であることを特徴とするリチウム二次電池用混合活物質。」(請求項1)が記載されている。
そして、実施例に係る混合活物質を用いた正極と、金属リチウムを用いた負極を有する二次電池(段落[0119])について、「25℃の下、初期充放電工程に供した。充電は、電流0.1CmA、電圧4.6Vの定電流定電圧充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1CmA、終止電圧2.0Vの定電流放電とした。この充放電を2サイクル行った。」と記載されている。
特許文献4には、「組成式LixNiaMnbc2(1.09<x<1.20、0.21<a<0.42、0.42<b<0.63、0≦c≦0.02、x+a+b+c=2.0、MはCo、V、Mo、W、Zr、Nb、Ti、Al、Fe、Mg、Cu等の少なくともいずれかの元素)で表される第一の正極活物質粒子と、組成式LiM’O2(0.9≦y≦1.1、M’はNiまたはCoの少なくともいずれかを含む一種類以上の金属元素)で表わされる第二の正極活物質粒子とを含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。」(請求項1)が記載されている。
そして、実施例に係る正極材料を用いた正極と、金属リチウムを用いた負極(段落[0038])を有する試作電池について、「充放電試験をした。充電は定電流定電圧充電(CC-CVモード)とし、上限電圧は4.5Vとした。放電は定電流放電(CCモード)とし、下限電圧は3.0Vとした。」(段落[0040])と記載されている。
特開2016-46125号公報 特許第4877660号公報 特開2016-119288号公報 特開2016-62788号公報
非水電解質二次電池には、上記のように、誤って過充電がされた場合においても安全性が確保されることが規格(例えば自動車用電池に対して「GB/T(中国勧奨国家標準)」)によって定められている。安全性が向上したことを評価する方法としては、充電制御回路が壊れた場合を想定し、満充電状態(SOC100%)を超えてさらに電流を強制的に印加したときに、電極電位の急上昇が観察されたSOCを記録する方法がある。より高いSOCに至るまで、電極電位の急上昇が観察されない場合、安全性が向上したと評価される。
特許文献1には、「LiMeO型」活物質を正極に用い、非水電解質に特定の添加剤を加えることにより過充電による安全性の向上を図ることが示されている。しかし、このような添加剤は、電池性能の低下をもたらすという問題がある。
特許文献2には、「リチウム過剰型」活物質を正極に用い、また、特許文献3,4には、「LiMeO型」活物質と「リチウム過剰型」活物質を混合して正極活物質に用い、金属リチウムに対する初期充電電位を4.5V以上とすることにより、放電容量等を向上させることが示されている。しかし、過充電時の安全性については示すところがない。
本発明は、非水電解質二次電池の安全性をより向上させることを目的とする。
本発明の一側面は、正極、負極及び非水電解質を備える非水電解質二次電池であって、前記正極は、活物質として、α-NaFeO構造を有し、一般式 LiMe1O(Me1はNi、Co及びMnを含む遷移金属元素)で表される第一のリチウム遷移金属複合酸化物と、α-NaFeO構造を有し、一般式 Li1+αMe21-α(0<α、Me2はNi及びMn、又はNi、Mn及びCoを含む遷移金属元素)で表される第二のリチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記活物質は、CuKα線を用いたエックス線回折図において、21°付近に回折ピークが観察される、非水電解質二次電池である。
本発明の他の一側面は、正極、負極及び非水電解質を備える非水電解質二次電池であって、前記正極は、活物質として、α-NaFeO構造を有し、一般式 LiMe1O(Me1はNi、Co及びMnを含む遷移金属元素)で表される第一のリチウム遷移金属複合酸化物と、α-NaFeO構造を有し、一般式 Li1+αMe21-α(0<α、Me2はNi及びMn、又はNi、Mn及びCoを含む遷移金属元素)で表される第二のリチウム遷移金属複合酸化物を含み、正極電位が5.0V(vs.Li/Li)に至る充電を行ったとき、4.5~5.0V(vs.Li/Li)の正極電位範囲内に、充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察される、非水電解質二次電池である。
本発明の別の側面は、上記非水電解質二次電池の製造方法であって、初期充放電工程を4.5V(vs.Li/Li)未満で行う、非水電解質二次電池の製造方法である。
本発明によれば、誤って過充電された場合でも、より安全性が向上した非水電解質二次電池、及びその製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係る正極活物質のエックス線回折図 本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池を過充電した後の正極活物質のエックス線回折図 本発明の比較例に係る正極活物質のエックス線回折図 本発明の実施形態及び比較例に係る正極の過充電時の充電電気量に対する電位変化を示す図 「LiMeO型」及び「リチウム過剰型」活物質を4.5V(vs.Li/Li+)未満の正極電位範囲で充放電した場合に観察される充電電気量に対する電位変化を示す図 「LiMeO型」及び「リチウム過剰型」活物質を4.5V(vs.Li/Li+)以上の正極電位範囲で初期充放電した場合に観察される充電電気量に対する電位変化を示す図 本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池における「充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域」を説明する図 本発明の一態様に係る非水電解質二次電池の一実施形態を示す斜視図 本発明の一態様に係る非水電解質二次電池を複数個備えた蓄電装置を示す概略図
本発明の構成及び作用効果について、技術思想を交えて説明する。但し、作用機構については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、後述の実施形態又は実施例は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
本発明者は、いわゆる「LiMeO型」活物質を正極に用い、充電中の正極の最大到達電位を4.45V(vs.Li/Li+)以下とする充電条件を採用して使用することを前提とした電池において、いわゆる「リチウム過剰型」活物質を正極に混合することで、電池の充電状態(SOC)を100%を超えて故意に高くしていったときの発熱反応が、より高いSOCにおいて観察される効果が奏されることを見出し、本発明に至った。
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係る非水電解質二次電池は、正極の活物質として、以下に示す第一のリチウム遷移金属複合酸化物と、第二のリチウム遷移金属複合酸化物を含み、前記活物質は、CuKα線を用いたエックス線回折図において、21°付近に回折ピークが観察される、非水電解質二次電池である。
本実施形態に係る非水電解質二次電池は、正極の活物質として、以下に示す第一のリチウム遷移金属複合酸化物と、第二のリチウム遷移金属複合酸化物を含み、正極電位が5.0V(vs.Li/Li)に至る充電を行ったとき、4.5~5.0V(vs.Li/Li)の正極電位範囲内に、充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察される正極を備えた、非水電解質二次電池であるということもできる。
さらに、本実施形態に係る非水電解質二次電池は、上記の正極と、非水溶媒にフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む非水電解質とを組み合わせる態様を含む。この態様により、安全性がより向上し、かつ、充放電サイクル後の内部抵抗を低く維持された非水電解質二次電池とすることができる。
以下、本実施形態について、詳述する。
<第一のリチウム遷移金属複合酸化物>
第一のリチウム遷移金属複合酸化物は、一般式LiMe1O(M1はNi、Co及びMnを含む遷移金属元素)で表されるいわゆる「LiMeO型」活物質である。この活物質においては、LiがLiサイトに専ら位置し、理論的にLi/Me1=1であるから、典型的には、組成式LiNiCoMn(a+b+c=1)で表される。ただし、LiMe1Oは、合成時のLi原料の仕込み量をLi/Me1>1とするといった工程を経た場合、定量分析学的にはLi/Me1>1となることがあり、また、電気化学的に酸化(充電)させた場合、定量分析学的にはLi/Me1<1となることがある。しかしながら、LiMe1Oで表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、Li/Me1が1と等しくない場合であっても、実質的にリチウム過剰型リチウム遷移金属複合酸化物のようにLiの一部が遷移金属サイトに位置するものではないから、第二のリチウム遷移金属複合酸化物であるリチウム過剰型活物質とは区別できる。
遷移金属元素Me1に対するNiのモル比Ni/Me1、すなわちaは、非水電解質二次電池の充放電サイクル性能を向上させるために、0.3以上0.6以下とすることが好ましい。
遷移金属元素Me1に対するCoのモル比Co/Me1、すなわちbは、活物質粒子の導電性を高めるために、0.1以上0.4以下とすることが好ましい。
遷移金属元素Me1に対するMnのモル比Mn/Me1、すなわちcは、充放電サイクル性能を向上させるために、0.5以下とすることが好ましい。また、材料コストの観点から、0.2以上とすることが好ましい。
なお、本実施形態に係る第一のリチウム遷移金属複合酸化物は、本発明の効果を損なわない範囲で、Na,K等のアルカリ金属、Mg,Ca等のアルカリ土類金属、Fe等の3d遷移金属に代表される遷移金属など少量の他の金属を含有することを排除するものではない。
本実施形態に係る第一のリチウム遷移金属複合酸化物は、α-NaFeO構造を有している。合成後(充放電前)及び充放電後の上記リチウム遷移金属複合酸化物は、ともにR3-mに帰属される。なお、「R3-m」は本来「R3m」の「3」の上にバー「-」を施して表記すべきものである。
<第二のリチウム遷移金属複合酸化物>
本実施形態に係る第二のリチウム遷移金属複合酸化物は、一般式Li1+αMe21-α(0<α、Me2はNi及びMn、又はNi、Mn及びCoを含む遷移金属元素)で表されるいわゆる「リチウム過剰型」活物質である。典型的には、Li1+α(NiβCoγMnδ1-α(β+γ+δ=1)と表すことができる。過充電時の安全性を高めるために、遷移金属元素Me2に対するLiのモル比Li/Me2、すなわち(1+α)/(1-α)は1.1以上であることが好ましく、1.15以上であることがより好ましい。放電容量の低下を抑制するためには、Li/Me2は1.35以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましい。
遷移金属元素Me2に対するMnのモル比Mn/Me2、すなわちδは、層状構造の安定化の観点から、0.5を超えることが好ましい。また、充放電容量の観点から、Mn/Me2は0.7以下であることが好ましく、0.65以下であることがより好ましい。
遷移金属元素Meに対するNiのモル比Ni/Me2、すなわちβは、非水電解質二次電池の充放電サイクル性能を向上させるために、0.2以上0.5以下とすることが好ましい。
遷移金属元素Me2に対するCoのモル比Co/Me2、すなわちγは、活物質粒子の導電性を高めるが、材料コストを削減するために、0.0以上0.3以下とすることが好ましい。
なお、本実施形態に係る第二のリチウム遷移金属複合酸化物も、本発明の効果を損なわない範囲で、Na,K等のアルカリ金属、Mg,Ca等のアルカリ土類金属、Fe等の3d遷移金属に代表される遷移金属など少量の他の金属を含有することを排除するものではない。
本実施形態に係る第二のリチウム遷移金属複合酸化物は、α-NaFeO構造を有している。合成後(充放電前)の上記リチウム遷移金属複合酸化物は、空間群P312に帰属されると共に、CuKα管球を用いたエックス線回折図上、2θ=21°付近に超格子ピーク(Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶に見られるピーク)が確認される。ところが、一度でも4.5V(vs.Li/Li+)付近を超えた充電を行うと、結晶中のLiの脱離に伴って結晶の対称性が変化することにより、この超格子ピークが消失して、上記リチウム遷移金属複合酸化物は空間群R3-mに帰属されるようになる。ここで、P312は、R3-mにおける3a、3b、6cサイトの原子位置を細分化した結晶構造モデルであり、R3-mにおける原子配置に秩序性が認められるときに該P312モデルが採用される。
第二のリチウム遷移金属複合酸化物である「リチウム過剰型」活物質は、正極電位が5.0V(vs.Li/Li)に至る充電を行うと、4.5~5.0V(vs.Li/Li)の正極電位範囲内に、充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察される。ところが、上記平坦な領域が観察される充電過程が終了するまでの充電を一度でも行った場合は、その後、5.0V(vs.Li/Li+)に至る充電を行っても、当該平坦な領域は再現されることはない。
<正極活物質>
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いる正極活物質は、前記第一のリチウム遷移金属複合酸化物及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物を含む。
この正極活物質は、CuKα線を用いてエックス線回折を行った場合、エックス線回折図において、21°付近に回折ピークが観察されるか、又は、4.5V(vs.Li/Li+)以上の正極電位範囲にした場合、充電電気量に対して電位変化の比較的平坦な領域が出現することで確認することができる。
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いる正極活物質や、本実施形態に係る非水電解質二次電池が備える正極に含まれる活物質に対するエックス線回折測定、及び、CuKα線を用いたエックス線回折図において、21°付近に回折ピークが観察されることの確認は、以下のとおりの手順及び条件により、行う。
測定に供する試料は、電極作製前の活物質粉末であれば、そのまま測定に供する。電池を解体して取り出した電極から試料を採取する場合には、電池を解体する前に、次の手順によって電池を放電状態とする。まず、0.1Cの電流で、正極の電位が4.3V(vs.Li/Li)となる電池電圧まで定電流充電を行い、同じ電池電圧にて、電流値が0.01Cに減少するまで定電圧充電を行い、充電末状態とする。30分の休止後、0.1Cの電流で、正極の電位が2.0V(vs.Li/Li)となる電池電圧に至るまで定電流放電を行い、放電末状態とする。金属リチウム電極を負極に用いた電池であれば、当該電池を放電末状態又は充電末状態とした後に電池を解体して電極を取り出せばよいが、金属リチウム電極を負極に用いた電池でない場合は、正極電位を正確に制御するため、電池を解体して電極を取り出した後に、金属リチウム電極を対極とした電池を組立ててから、上記の手順に沿って、放電末状態に調整する。電池の解体から測定までの作業は露点-60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。取り出した正極板は、ジメチルカーボネートを用いて電極に付着した非水電解質を十分に洗浄し室温にて一昼夜の乾燥後、アルミニウム箔集電体上の合剤を採取する。採取した合剤をめのう乳鉢で軽くほぐし、エックス線回折測定用試料ホルダーに配置して測定に供する。
図1は、後述する実施例1-7に係る非水電解質二次電池について、通常使用時(4.45V(vs.Li/Li+)充電をSOC100%と規定)の放電末状態における正極について、上記の手順で測定したエックス線回折図である。図1では、21°付近に回折ピークが観察されている。
これに対して、図2は、実施例1-7に係る非水電解質二次電池に対して、正極電位が5.0V(vs.Li/Li+)に至るまでSOC202%に相当する過充電を行った後の放電末状態における正極について、上記の手順で測定したエックス線回折図である。ここでは、21°付近の回折ピークは消失している。
図3は、後述する比較例1-3に係る非水電解質二次電池について、通常使用時(4.60V(vs.Li/Li+)充電をSOC100%と規定)の放電末状態における正極について、上記の手順で測定したエックス線回折図である。即ち、比較例1-3では、通常使用時において、すでに21°付近の回折ピークは消失している。
図4は、上記の実施例1-7及び比較例1-3に係る非水電解質二次電池について、それぞれの通常使用時の満充電状態から、正極電位が5.0V(vs.Li/Li+)に至る過充電を行った場合の充電カーブを示している。実施例1-7においては、SOCが200%付近で正極電位が急激に上昇するまで、比較的平坦な充電カーブを有するが、比較例1-3においては、SOCが100%を超えるとすぐに急激な正極電位の上昇が生じている。
図5、図6を用いて、本発明の作用機構の原理を説明する。図5及び図6は、いずれも、第一のリチウム遷移金属複合酸化物(NCMと表記)、及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物(LRと表記)をそれぞれ単独で正極活物質として用いた正極を備えた非水電解質二次電池を組立て、最初に行う充放電正極の電位変化を示している。但し、図5は、充電時の正極の最大到達電位は4.45V(vs.Li/Li+)であり、図6は、充電時の正極の最大到達電位は4.55V(vs.Li/Li+)である。
第一のリチウム遷移金属複合酸化物を単独で正極活物質として用いた非水電解質二次電池は、最大電位4.5V(vs.Li/Li+)未満で充電される場合(図5参照)も、4.5V(vs.Li/Li+)以上で充電される場合(図6参照)も、充電電気量に対して電位が漸増し、電位変化が平坦な領域が出現することがなく、充電電位を4.5V(vs.Li/Li+)以上としても、放電容量は高々210mAh/g程度である。
これに対して、第二のリチウム遷移金属複合酸化物を単独で正極活物質として用いた非水電解質二次電池は、4.5V(vs.Li/Li)以上の正極電位範囲にした場合、4.5~5.0V(vs.Li/Li)の電位範囲内に、充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察され(図6参照)、上記平坦な領域が観察される充電過程が終了するまで充電を行うことで、300mAh/g程度の放電容量が得られる。一方、最大電位4.5V(vs.Li/Li+)未満の充電を行った場合は、放電容量が、第一のリチウム遷移金属複合酸化物を単独で正極活物質として用いた非水電解質二次電池を下回る(図5参照)。
本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池は、第一のリチウム遷移金属複合酸化物及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物を混合して正極活物質として用いるが、初期充放電工程において、上記平坦な領域が観察される充電過程が終了するまでの充電が行われることなく電池が完成される。さらに、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池は、上記平坦な領域が観察される充電過程が終了するまでの充電が行われることがない充電条件下で使用される。従って、本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池は、製造段階から使用時に至るまで、一度も上記平坦な領域が観察される充電過程が終了するまでの充電がされていないから、過充電がされた場合、4.5~5.0V(vs.Li/Li)の正極電位範囲内に、充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察される。本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池は、上記で説明した挙動を利用することによって、通常使用時の満充電状態であるSOC100%を超える過充電状態で、より高いSOCに至るまで電極電位の急上昇を抑制することができ、過充電に対する安全性を向上させることができる。
本実施形態に係る非水電解質二次電池において、過充電に対する安全性の点から、正極活物質に占める第二のリチウム遷移金属複合酸化物の比は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
一方、放電容量に関しては、最大電位が例えば4.5V(vs.Li/Li+)未満の充放電を行う電池に用いる場合、第一のリチウム遷移金属複合酸化物の方が第二のリチウム遷移金属複合酸化物より放電容量が高い(図5参照)。
したがって、放電容量を高めるためには、正極活物質に占める第一のリチウム遷移金属複合酸化物の比は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
すなわち、第一のリチウム遷移金属複合酸化物と第二のリチウム遷移金属複合酸化物との混合比は、20:80~80:20であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましく、50:50~70:30であることが特に好ましい。
ここで、正極が、「正極電位が5.0V(vs.Li/Li)に至る充電を行ったとき、4.5~5.0V(vs.Li/Li)の正極電位範囲内に、充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察される」ことは、より具体的には、「非水電解質二次電池を0.1Cの電流で4.5V(vs.Li/Li)から5.0V(vs.Li/Li)まで定電流充電を行ったときのdSOC/dVの値の最大値が70以上を示すこと」で判断する。前記dSOC/dVの値の最大値は、90以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。dSOC/dVは、横軸を充電深度(SOC)とし、縦軸を電位(V(vs.Li/Li))としてプロットした通常の充電曲線の横軸と縦軸を逆転させてカーブの傾きを取る(微分する)ことに相当する(図7参照)。なお、SOC100%の状態は、確認しようとする電池を通常使用時の充電条件に従って充電を行ったときの満充電状態に相当する。なお、本願明細書において、通常使用時とは、当該非水電解質二次電池について推奨され、又は指定される充放電条件を採用して当該非水電解質二次電池を使用する場合であり、当該非水電解質二次電池のための充電器が用意されている場合は、その充電器を適用して当該非水電解質二次電池を使用する場合をいう。
<第一及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物の前駆体の製造方法>
次に、本実施形態に係る非水電解質二次電池用活物質に用いる第一及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物の前駆体を製造する方法について説明する。
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物は、基本的に、活物質を構成する金属元素(Li,Ni,Co,Mn)を目的とする活物質(酸化物)の組成どおりに含有する原料を調製し、これを焼成することによって得ることができる。
目的とする組成の複合酸化物を作製するにあたり、Li,Ni,Co,Mnのそれぞれの塩を混合・焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめNi,Co,Mnを一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合・焼成する「共沈法」が知られている。「固相法」による合成過程では、特にMnはNi,Coに対して均一に固溶しにくいため、各元素が一粒子中に均一に分布した試料を得ることは困難である。これまで文献などにおいては固相法によってNiやCoの一部にMnを固溶(LiNi1-xMnなど)しようという試みが多数なされているが、「共沈法」を選択する方が原子レベルで均一相を得ることが容易である。そこで、後述する実施例においては、「共沈法」を採用した。
本実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物の前駆体の製造方法においては、Ni、Co及びMnを含有する原料水溶液を滴下し、溶液中でNi、Co及びMnを含有する化合物を共沈させて前駆体を作製することが好ましい。
共沈前駆体を作製するにあたって、Ni,Co,MnのうちMnは酸化されやすく、Ni,Co,Mnが2価の状態で均一に分布した共沈前駆体を作製することが容易ではないため、Ni,Co,Mnの原子レベルでの均一な混合は不十分なものとなりやすい。したがって、本発明においては、共沈前駆体に分布して存在するMnの酸化を抑制するために、溶存酸素を除去することが好ましい。溶存酸素を除去する方法としては、酸素を含まないガスをバブリングする方法が挙げられる。酸素を含まないガスとしては、限定されるものではないが、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素(CO)等を用いることができる。
溶液中でNi、Co及びMnを含有する化合物を共沈させて前駆体を作製する工程におけるpHは限定されるものではないが、前記共沈前駆体を共沈水酸化物前駆体として作製しようとする場合には、10.5~14とすることができる。タップ密度を大きくするためには、pHを制御することが好ましい。pHを11.5以下とすることにより、タップ密度を1.00g/cm以上とすることができ、高率放電性能を向上させることができる。さらに、pHを11.0以下とすることにより、粒子成長速度を促進できるので、原料水溶液滴下終了後の撹拌継続時間を短縮できる。
また、前記共沈前駆体を共沈炭酸塩前駆体として作製しようとする場合には、7.5~11とすることができる。pHを9.4以下とすることにより、タップ密度を1.25g/cm以上とすることができ、高率放電性能を向上させることができる。さらに、pHを8.0以下とすることにより、粒子成長速度を促進できるので、原料水溶液滴下終了後の撹拌継続時間を短縮できる。
前記共沈前駆体の原料は、Ni化合物としては、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル等を、Co化合物としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト等を、Mn化合物としては酸化マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン等を一例として挙げることができる。
前記原料水溶液の滴下速度は、生成する共沈前駆体の1粒子内における元素分布の均一性に大きく影響を与える。好ましい滴下速度については、反応槽の大きさ、攪拌条件、pH、反応温度等にも影響されるが、30mL/min以下が好ましい。放電容量を向上させるためには、滴下速度は10mL/min以下がより好ましく、5mL/min以下が最も好ましい。
また、反応槽内にNH等の錯化剤が存在し、かつ一定の対流条件を適用した場合、前記原料水溶液の滴下終了後、さらに攪拌を続けることにより、粒子の自転及び攪拌槽内における公転が促進され、この過程で、粒子同士が衝突しつつ、粒子が段階的に同心円球状に成長する。即ち、共沈前駆体は、反応槽内に原料水溶液が滴下された際の金属錯体形成反応、及び、前記金属錯体が反応槽内の滞留中に生じる沈殿形成反応という2段階での反応を経て形成される。したがって、前記原料水溶液の滴下終了後、さらに攪拌を続ける時間を適切に選択することにより、目的とする粒子径を備えた共沈前駆体を得ることができる。
原料水溶液滴下終了後の好ましい攪拌継続時間については、反応槽の大きさ、攪拌条件、pH、反応温度等にも影響されるが、粒子を均一な球状粒子として成長させるために0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。また、粒子径が大きくなりすぎることで電池の低SOC領域における出力性能が充分でないものとなる虞を低減させるため、30時間以下が好ましく、25時間以下がより好ましく、20時間以下が最も好ましい。
<第一及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法>
本実施形態に係る第一及び第二の非水電解質二次電池用活物質の製造方法は、前記共沈前駆体とLi化合物とを混合し、焼成する方法であることが好ましい。
Li化合物として通常使用されている水酸化リチウム、炭酸リチウムと共に、焼結助剤としてLiF、LiSO、又はLiPOを使用してもよい。これらの焼結助剤の添加比率は、Li化合物の総量に対して1~10mol%とすることが好ましい。なお、Li化合物の総量は、焼成中にLi化合物の一部が消失することを見込んで、1~5%程度過剰に仕込むことが好ましい。
焼成温度は、活物質の可逆容量に影響を与える。
焼成温度が低すぎると、結晶化が十分に進まず、電極特性が低下する傾向がある。本発明の一態様においては、焼成温度は900℃以上とすることが好ましい。900℃以上とすることにより、焼結度が高い活物質粒子を得ることができ、充放電サイクル性能を向上させることができる。
一方、焼成温度が高すぎると層状α-NaFeO構造から岩塩型立方晶構造へと構造変化がおこり、充放電反応中における活物質中のリチウムイオン移動に不利な状態となり、放電性能が低下する。本発明において、焼成温度は1000℃以下とすることが好ましい。1000℃以下とすることにより、充放電サイクル性能を向上させることができる。
したがって、本発明の一態様に係るリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極活物質を作製する場合、充放電サイクル性能を向上させるために、焼成温度は900~1000℃とすることが好ましい。
<負極材料>
本実施形態に係る電池の負極材料としては、限定されるものではなく、リチウムイオンを放出あるいは吸蔵することのできる形態のものであればどれを選択してもよい。例えば、Li[Li1/3Ti5/3]Oに代表されるスピネル型結晶構造を有するチタン酸リチウム等のチタン系材料、SiやSb,Sn系などの合金系材料、リチウム金属、リチウム合金(リチウム-シリコン,リチウム-アルミニウム,リチウム-鉛,リチウム-スズ,リチウム-アルミニウム-スズ,リチウム-ガリウム,及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)、リチウム複合酸化物(リチウム-チタン)、酸化珪素の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト,ハードカーボン,低温焼成炭素,非晶質カーボン等)等が挙げられる。
<正極・負極>
正極活物質、及び負極材料は、平均粒子サイズが100μm以下の粉体であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解質二次電池の高出力特性を向上する目的で15μm以下であることが好ましく、充放電サイクル性能を維持するためには10μm以上であることが好ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
以上、正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極材料について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種又はそれらの混合物として含ませることができる。
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。導電剤の添加量は、正極又は負極の総質量に対して0.1質量%~50質量%が好ましく、特に0.5質量%~30質量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1~0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVDF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR),フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種又は2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極又は負極の総質量に対して1~50質量%が好ましく、特に2~30質量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極又は負極の総質量に対して添加量は30質量%以下が好ましい。
正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極材料)、及びその他の材料を混練し合剤とし、N-メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、又は圧着して50℃~250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
集電体としては、Al箔、Cu箔等の集電箔を用いることができる。正極の集電箔としてはAl箔が好ましく、負極の集電箔としてはCu箔が好ましい。集電箔の厚みは10~30μmが好ましい。また、合剤層の厚みはプレス後において、40~150μm(集電箔厚みを除く)が好ましい。
<非水電解質>
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池に用いる非水電解質は、限定されるものではなく、一般にリチウム電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水電解質に用いる非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状炭酸エステル類又はそれらのフッ化物;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフラン又はその誘導体;1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソラン又はその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトン又はその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。
これらの中では、特に非水溶媒がフッ素化環状炭酸エステルであるFECを含む非水電解質を用いることが好ましい。第一のリチウム遷移金属複合酸化物及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極と、非水溶媒にFECを含む非水電解質とを組み合わせることにより、安全性がより向上し、かつ、充放電サイクル後の内部抵抗が低く維持された非水電解質二次電池を得ることができる。
本願明細書において、内部抵抗の測定は次の条件で行う。測定に先立ち、通常使用時の条件にて充電末状態とする。次に、0.2Cの電流で端子間の閉回路電圧が通常使用時に到達することが予定されている電圧まで定電流放電を行った後、開回路とし、2h以上放置する。以上の操作によって、非水電解液電池を放電末状態とする。1kHzの交流(AC)を印加する方式のインピーダンスメータを用いて正負極端子間の抵抗値を測定する。過充電された非水電解液電池や過放電された非水電解液電池を測定対象としてはならない。
非水電解質に用いる電解質塩としては、例えば、LiClO4,LiBF4,LiAsF6,LiPF6,LiSCN,LiBr,LiI,Li2SO4,Li210Cl10,NaClO4,NaI,NaSCN,NaBr,KClO4,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)又はカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF3SO3,LiN(CF3SO22,LiN(C25SO22,LiN(CF3SO2)(C49SO2),LiC(CF3SO23,LiC(C25SO23,(CH34NBF4,(CH34NBr,(C254NClO4,(C254NI,(C374NBr,(n-C494NClO4,(n-C494NI,(C254N-maleate,(C254N-benzoate,(C254N-phthalate,ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
さらに、LiPF6又はLiBF4と、LiN(C25SO22のようなパーフルオロアルキル基を有するリチウム塩とを混合して用いることにより、さらに電解質の粘度を下げることができるので、低温特性をさらに高めることができ、また、自己放電を抑制することができ、より望ましい。
また、非水電解質として常温溶融塩やイオン液体を用いてもよい。
非水電解質における電解質塩の濃度としては、高い電池特性を有する非水電解質二次電池を確実に得るために、0.1mol/L~5mol/Lが好ましく、さらに好ましくは、0.5mol/L~2.5mol/Lである。
<セパレータ>
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いるセパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質二次電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン,ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン共重合体、フッ化ビニリデン-プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。
また、セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。非水電解質を上記のようにゲル状態で用いると、漏液を防止する効果がある点で好ましい。
さらに、セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解質の保液性が向上するため望ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、前記フィルムの微孔内に電解質を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
前記親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアナート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。該モノマーは、ラジカル開始剤を併用して加熱や紫外線(UV)を用いたり、電子線(EB)等の活性光線等を用いて架橋反応を行わせることが可能である。
その他の電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
<非水電解質二次電池>
本実施形態に係る非水電解質二次電池を図8に示す。図8は、矩形状の非水電解質二次電池の容器内部を透視した斜視図である。電極群2が収納された電池容器3内に非水電解質(電解液)を注入することにより非水電解質二次電池1が組み立てられる。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本実施形態に係る非水電解質二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。
本実施形態に係る非水電解質二次電池は、「LiMeO型」活物質と、「リチウム過剰型」活物質を含む正極を用い、「リチウム過剰型」活物質に対して通常行われる、4.5~5.0V(vs.Li/Li+)の正極電位範囲内に観察される上記平坦な領域が観察される充電過程が終了するまでの充電過程を一度も経ないで製造、及び使用される。
本実施形態に係る非水電解質二次電池が、上記平坦な領域が観察される充電過程が終了するまでの充電がされた履歴を有しないことは、上記のように、電池から正極を取り出し、CuKα線を用いてエックス線回折を行い、エックス線回折図において、21°付近に回折ピークが観察されること、又は、金属Liを対極として0.1Cの電流で4.5V(vs.Li/Li+)から5V(vs.Li/Li+)まで定電流充電を行い、dSOC/dVの最大値が70以上を示す(充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察される)ことにより確認することができる。
本実施形態の非水電解質二次電池は、電池を複数個集合した蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一例を図9に示す。図9において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
(実施例1-1)
<第一のリチウム遷移金属複合酸化物の作製>
硫酸ニッケル6水和物350.6g、硫酸コバルト7水和物375.0g、硫酸マンガン5水和物321.6gを秤量し、これらの全量をイオン交換水4Lに溶解させ、Ni:Co:Mnのモル比が1:1:1となる1.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。次に、5Lの反応槽にイオン交換水2Lを注ぎ、Arガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中に含まれる酸素を除去した。反応槽の温度は50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を1500rpmの回転速度で攪拌しながら、反応層内に対流が十分おこるように設定した。前記硫酸塩水溶液を3mL/minの速度で反応槽に滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、4.0Mの水酸化ナトリウム、0.5Mのアンモニア水、及び0.5Mのヒドラジンからなる混合アルカリ溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に11.0(±0.1)を保つように制御すると共に、反応液の一部をオーバーフローにより排出することにより、反応液の総量が常に2Lを超えないように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3時間継続した。攪拌の停止後、室温で12時間以上静置した。
次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した水酸化物前駆体粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、80℃にて20時間乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、水酸化物前駆体を作製した。
前記水酸化物前駆体1.898gに、水酸化リチウム1水和物0.896gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いてよく混合し、Li:(Ni,Co,Mn)のモル比が1:1となるように混合粉体を調製した。ペレット成型機を用いて、6MPaの圧力で成型し、直径25mmのペレットとした。ペレット成型に供した混合粉体の量は、想定する最終生成物の質量が2gとなるように換算して決定した。前記ペレット1個を全長約100mmのアルミナ製ボートに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から900℃まで10時間かけて昇温し、900℃で5時間焼成した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製ボートを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、炉の温度は5時間後には約200℃程度にまで低下するが、その後の降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、リチウム遷移金属複合酸化物LiNi1/3Co1/3Mn1/3を作製した。
<第二のリチウム遷移金属複合酸化物の作製>
硫酸ニッケル6水和物315.6g、硫酸コバルト7水和物168.7g、硫酸マンガン5水和物530.6gを秤量し、これらの全量をイオン交換水4Lに溶解させ、Ni:Co:Mnのモル比が30:15:55となる1.0Mの硫酸塩水溶液を作製した。
次に、5Lの反応槽にイオン交換水2Lを注ぎ、Arガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中に含まれる酸素を除去した。反応槽の温度は50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を1500rpmの回転速度で攪拌しながら、反応層内に対流が十分おこるように設定した。前記硫酸塩水溶液を3mL/minの速度で反応槽に滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、4.0Mの水酸化ナトリウム、0.5Mのアンモニア水、及び0.2Mのヒドラジンからなる混合アルカリ溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に9.8(±0.1)を保つように制御すると共に、反応液の一部をオーバーフローにより排出することにより、反応液の総量が常に2Lを超えないように制御した。滴下終了後、反応槽内の攪拌をさらに3時間継続した。攪拌の停止後、室温で12時間以上静置した。
次に、吸引ろ過装置を用いて、反応槽内に生成した水酸化物前駆体粒子を分離し、さらにイオン交換水を用いて粒子に付着しているナトリウムイオンを洗浄除去し、電気炉を用いて、空気雰囲気中、常圧下、80℃にて20時間乾燥させた。その後、粒径を揃えるために、瑪瑙製自動乳鉢で数分間粉砕した。このようにして、水酸化物前駆体を作製した。
前記水酸化物前駆体1.852gに、水酸化リチウム1水和物0.971gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いてよく混合し、Li:(Ni,Co,Mn)のモル比が110:100となるように混合粉体を調製した。ペレット成型機を用いて、6MPaの圧力で成型し、直径25mmのペレットとした。ペレット成型に供した混合粉体の量は、想定する最終生成物の質量が2gとなるように換算して決定した。前記ペレット1個を全長約100mmのアルミナ製ボートに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から900℃まで10時間かけて昇温し、900℃で5時間焼成した。前記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っている。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製ボートを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、炉の温度は5時間後には約200℃程度にまで低下するが、その後の降温速度はやや緩やかである。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製乳鉢で軽くほぐした。
このようにして、リチウム遷移金属複合酸化物Li 1.05 (Ni0.30Co0.15Mn0.55 0.95 を作製した。
<結晶構造の確認>
上記の第一及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物について、エックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を用いて粉末エックス線回折測定を行った。第一及び第二のリチウム遷移金属複合酸化物は、α-NaFeO構造を有することを確認した。
<正極の作製>
第一のリチウム遷移金属複合酸化物70質量部に対して、第二のリチウム遷移金属複合酸化物30質量部を含む実施例1-1に係る活物質を作製した。
N-メチルピロリドンを分散媒とし、実施例1-1に係る活物質、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)が質量比90:5:5の割合で混練分散されている塗布用ペーストを作製した。該塗布ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔集電体の片方の面に塗布し、実施例1-1に係る正極を作製した。なお、後述する全ての実施例、及び比較例に係る非水電解質二次電池同士で試験条件が同一になるように、一定面積当たりに塗布されている活物質の質量及び塗布厚みを統一した。
<負極の作製>
金属リチウム箔をニッケル集電体に配置して、負極を作製した。該金属リチウムの量は、上記正極板と組み合わせたときに電池の容量が負極によって制限されないように調整した。
<非水電解質二次電池の組立>
実施例1-1に係る正極を用いて、以下の手順で非水電解質二次電池を組み立てた。
非水電解質として、エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)/ジメチルカーボネート(DMC)が体積比6:7:7である混合溶媒に濃度が1mol/LとなるようにLiPFを溶解させた溶液を用いた。セパレータとして、ポリアクリレートで表面改質したポリプロピレン製の微孔膜を用いた。外装体には、ポリエチレンテレフタレート(15μm)/アルミニウム箔(50μm)/金属接着性ポリプロピレンフィルム(50μm)からなる金属樹脂複合フィルムを用いた。実施例1-1に係る正極、及び前記負極を、前記セパレータを介して、正極端子及び負極端子の開放端部が外部露出するように前記外装体に収納し、前記金属樹脂複合フィルムの内面同士が向かい合った融着代を注液孔となる部分を除いて気密封止し、前記非水電解質を注液後、注液孔を封止して、非水電解質二次電池を組み立てた。
<初期充放電工程>
組み立てた非水電解質二次電池を、25℃の下、初期充放電工程に供した。充電は、電流0.1C、電圧4.45V(vs.Li/Li+)の定電流定電圧(CCCV)充電とし、充電終止条件は電流値が1/6に減衰した時点とした。放電は、電流0.1C、終止電圧2.0V(vs.Li/Li+)の定電流放電とした。この充放電を2サイクル行った。ここで、充電後及び放電後にそれぞれ30分の休止過程を設け、放電容量を確認した。
以上の製造工程を経て、実施例1-1に係る非水電解質二次電池を完成した。
(実施例1-2~1-9)
第一のリチウム遷移金属複合酸化物として、実施例1-1における第一のリチウム遷移金属複合酸化物を用いた(以下、実施例1-1における第一のリチウム遷移金属複合酸化物を「NCM」という。)。
前記実施例1-1における第二のリチウム遷移金属複合酸化物の作製工程において、水酸化物前駆体におけるLiに対する遷移金属元素Me2(Ni:Co:Mn=30:15:55)のモル比Li/Me2を、1.1からそれぞれ1.15,1.2,1.25,1.3,1.35,1.4,1.45,1.5に変更して、それぞれ、第二のリチウム遷移金属複合酸化物を作製した(以下、第二のリチウム遷移金属複合酸化物を「LR」という。)。
上記のNCM70質量部に対して、上記のLRをそれぞれ30質量部含む実施例1-2~1-9に係る正極活物質を作製した以外は実施例1-1と同様にして、非水電解質二次電池の組立及び初期充放電を行い、実施例1-2~1-9に係る非水電解質二次電池を完成した。
(比較例1-1)
実施例1-1に係るNCMを単独で正極活物質として用いた以外は実施例1-1と同様にして、非水電解質二次電池の組立及び初期充放電を行い、比較例1-1に係る非水電解質二次電池を完成した。
<過充電時の安全性確認試験>
上記のようにして完成した非水電解質二次電池を用いて、電圧の上限を設けずに電流0.1Cの定電流(CC)充電を行い、充電電気量に対する正極電位の急上昇が観察されたSOC(%)を記録した。ここで、4.45V(vs.Li/Li+)の定電流定電圧(CCCV)充電を行ったときの充電深度をSOC100%とした。
実施例1-1~1-9、及び比較例1-1に係る非水電解質二次電池の放電容量、安全性確認試験におけるSOC(%)、及びdSOC/dV最大値を表1に示す。
なお、以下の表1~3において、SOC遅延効果は、dSOC/dV最大値が100以上の場合を「◎」とし、70以上の場合を「〇」とし、70未満の場合を「×」とした。
Figure 0007205051000001
表1によると、活物質としてNCMを単独で用いた正極を備えた比較例1-1に係る非水電解質二次電池は、安全性確認試験において、133%のSOCで正極電位が急激に上昇している。これに対して、活物質としてNCM及びLRを含む正極を備えた実施例1-1~1-9に係る非水電解質二次電池は、安全性確認試験における正極電位が急激に上昇するSOCが175%以上であり、比較例1-1に比べて安全性が向上していることがわかる。
ここで、比較例1-1に係る非水電解質二次電池は、dSOC/dV最大値が70未満である。即ち、比較例1-1における正極は、5.0V(vs.Li/Li+)に至る充電を行ったとき、4.5~5.0V(vs.Li/Li+)の正極電位範囲内に、充電電気量に対する電位変化の比較的平坦な領域を有しない。これに対して、実施例1-1~1-9に係る非水電解質二次電池は、dSOC/dV最大値が70を超えている。即ち、実施例1-1~1-9における正極は、5.0V(vs.Li/Li+)に至る充電を行ったとき、4.5~5.0V(vs.Li/Li+)の正極電位範囲内に、充電電気量に対して比較的平坦な領域を有している。
なお、放電容量は、Li/Me2比が1.2で最大となり、同比が1.2を超えると容量が低減する傾向にあることがわかる。
(実施例1-10、比較例1-2、1-3)
実施例1-3に係る非水電解質二次電池と同様の正極活物質を用い、初期充放電工程における定電流定電圧(CCCV)充電の電圧を、それぞれ4.50V、4.55V、4.60V(いずれもvs.Li/Li+)とした以外は実施例1-3と同様にして、実施例1-10、及び比較例1-2、1-3に係る非水電解質二次電池を完成し、放電容量を確認した。
次に、実施例1-10、及び比較例1-2、1-3に係る非水電解質二次電池に対して、それぞれの初期充放電工程における定電流定電圧(CCCV)で採用した電圧で充電を行ったときの充電深度をSOC100%として、実施例1-3と同様に過充電時の安全性確認試験を行った。
実施例1-10、及び比較例1-2、1-3に係る非水電解質二次電池の放電容量、安全性確認試験によるSOC(%)、及びdSOC/dV最大値を、実施例1-3及び比較例1-1とともに表2に示す。
Figure 0007205051000002
表2によると、初期充放電工程を4.5V(vs.Li/Li+)で行った実施例1-10に係る非水電解質二次電池も、安全性確認試験における正極電位が急激に上昇するSOCが比較例1-1に比べて向上しており、安全性が向上していることがわかる。ところが、実施例1-10と同じ正極活物質を用い、初期充放電工程を4.55V及び4.60Vで行った比較例1-2、1-3に係る非水電解質二次電池では、安全性確認試験における正極電位が急激に上昇するSOCが比較例1-1に比べて下回っており、安全性が向上していない。
ここで、実施例1-10に係る非水電解質二次電池は、dSOC/dV最大値が70以上である。即ち、実施例1-10における5.0V(vs.Li/Li+)に至る充電を行ったとき、4.5~5.0V(vs.Li/Li+)の正極電位範囲内に、充電電気量に対して比較的平坦な領域を有している。これに対して、比較例1-2、1-3に係る非水電解質二次電池は、放電容量は高いものの、dSOC/dV最大値が70未満である。即ち、比較例1-2、1-3の電池における正極は、5.0V(vs.Li/Li+)に至る充電を行ったとき、4.5~5.0V(vs.Li/Li+)の正極電位範囲内に、充電電気量に対する電位変化の比較的平坦な領域を有していない。
(実施例1-11、1-12)
実施例1-3におけるNCMとLR(Li/Me2=1.2)の質量比を、70:30からそれぞれ50:50及び30:70に変更した以外は、実施例1-3と同様にして実施例1-11及び実施例1-12に係る非水電解質二次電池を完成した。
実施例1-11、1-12に係る非水電解質二次電池の初期放電容量、及び安全性確認試験によるSOC(%)を、実施例1-3とともに表3に示す。
Figure 0007205051000003
表3によると、第一のリチウム遷移金属複合酸化物と第二のリチウム遷移金属複合酸化物の質量比を50:50とした正極を備えた実施例1-11に係る非水電解質二次電池や、前記質量比を30:70とした正極を備えた実施例1-12に係る非水電解質二次電池も、安全性確認試験における正極電位が急激に上昇するSOCが比較例1-1に比べて向上しており、安全性が向上していることがわかる。また、放電容量の低下も抑制されていることがわかる。
実施例1-1~1-12に係る非水電解質二次電池については、別途、過充電時の安全性確認試験を行う前の状態で、前述した手順及び条件に基づいて放電末状態の正極を取り出し、エックス線回折測定を行ったところ、正極活物質は、CuKα線を用いたエックス線回折図において、21°付近に回折ピークが観察されることを確認した。比較例1-2,1-3に係る非水電解質二次電池についても、同様のエックス線回折測定を行ったが、21°付近の回折ピークは観察されなかった。
次に挙げる例は、非水電解質が、非水溶媒にFECを含むことにより、充放電サイクル後の内部抵抗に与える影響を確認するためのものである。このため、FECを含まない非水電解質を用いた実施例をここでは「参考例」と表記する。
(実施例2-1
NCM80質量部に対して、Liに対する遷移金属元素Me2(Ni:Co:Mn=20:20:60)のモル比Li/Me2が1.43であるLRを20質量部含む正極活物質を作製し、実施例1と同様にして正極を作製した。
(負極の作製)
負極活物質として黒鉛、バインダーとしてスチレン-ブタジエン-ゴム及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、分散媒に水を用いて負極合材ペーストを作製した。なお、負極活物質とバインダーとCMCの質量比率は97:2:1とした。この負極合材ペーストを負極基材である銅箔の片面に塗布し、100℃で乾燥することにより、負極を得た。
非水電解質としてFEC/EMCが体積比10:90である混合溶媒を用いた。前記の正極、負極及び非水電解質を用い、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を組み立てた。
組み立てた非水電解質二次電池の初期充放電を、25℃の下、電流0.1C、電圧4.25Vの定電流定電圧(CCCV)充電(電流値が1/6に減衰した時点で充電終止)、及び電流0.1C、終止電圧2.0Vの定電流放電で行い、実施例2-1に係る非水電解質二次電池を完成した。
この電池の充電時における正極の電位は、黒鉛負極の電位が約0.1V(vs.Li/Li)であるから、約4.35V(vs.Li/Li)である。
(実施例2-1
非水電解質としてFECと3,3,3-トリフルオロプロピレン酸メチル(FMP)が体積比10:90である混合溶媒を用いた以外は、実施例2-1と同様にして実施例2-1に係る非水電解質二次電池を完成した。
(参考例2-1)
非水電解質としてECとEMCが体積比30:70である混合溶媒を用いた以外は、実施例2-1と同様にして比較例2-1に係る非水電解質二次電池を完成した。
(実施例2-2,2-2、参考例2-2)
正極活物質のNCMとLRの質量比を、50:50とした以外は実施例2-1、2-1、及び参考例2-1と同様にして、それぞれ実施例2-2,2-2、及び参考例2-2に係る非水電解質二次電池を完成した。
(実施例2-3,参考例2-3)
正極化物質のNCMとLRの質量比を、70:30とした以外は、実施例2-1及び参考例2-1と同様にして、実施例2-3及び参考例2-3に係る非水電解質二次電池を完成した。
(比較例2-1~2-3)
NCMを単独で正極活物質として用いた以外は実施例2-1,2-1、及び参考例2-1と同様にして、比較例2-1~2-3に係る非水電解質二次電池を完成した。
上記の実施例、参考例、比較例の各電池に対して、4.25V(正極電位は約4.35V(vs.Li/Li))の定電流定電圧(CCCV)充電を行ったときの充電深度をSOC100%とした以外は、実施例1と同様の過充電時の安全性確認試験を行い、SOC(%)、及びdSOC/dV最大値を求めた。
また、この過充電時の安全性確認試験を行う前の電池に対して、充放電サイクル試験として、45℃の下で、電流0.1C、電圧4.25VのCCCV充電(電流値が1/6に減衰するまで)、及び電流0.1C、終止電圧2.0Vの定電流放電を50サイクル行い、上記した条件にて試験後の電池の内部抵抗を測定した。
また、非水電解質の組成のみが異なる各電池間で、FECを含有しない非水電解質を用いた参考例に係る電池において測定された上記内部抵抗の値を100としたときの、各実施例に係る電池の内部抵抗の比を「抵抗率(%)」として求めた。
これらの結果を以下の表4に示す。
Figure 0007205051000004
表4からは、NCMとLRを正極活物質に含む正極を有する実施例及び参考例に係る電池は、4.5V(vs.Li/Li)未満の電位で使用されると、表1~3と同じく、過充電に対する安全性が高いという効果を有することがわかる。また、LRを含む正極とFECを含む非水電解質を組み合わせた実施例2-1~2-3に係る電池は、FECを含まない非水電解質と組み合わせた参考例2-1~2-3に係る電池に対して、充放電を50サイクル繰り返した後の電池の内部抵抗が小さい、すなわち、非水電解質に含まれるFECは充放電サイクル後の内部抵抗を低く維持する効果を有することがわかる。
一方、LRを含まない正極とFECを含む非水電解質を組み合わせた比較例2-1,2-2に係る電池は、FECを含まない非水電解質を組み合わせた比較例2-3に係る電池よりも50サイクル後の内部抵抗が大きいから、LRを含まない正極を有する比較例の電池では、FECの含有による内部抵抗を低く維持するという効果を有しないことがわかる。
(実施例2-4,2-5、参考例2-4,2-5)
初期充放電工程における充電を、電圧4.35V(正極電位は約4.45V(vs.Li/Li))の定電流定電圧(CCCV)充電とした以外は実施例2-2,2-3、及び参考例2-2,2-3と同様にして、それぞれ、実施例2-4,2-5及び参考例2-4,2-5に係る電池を完成した。
(比較例2-4,2-5)
初期充放電工程における充電を、電圧4.6V(正極電位は約4.7V(vs.Li/Li))の定電流定電圧(CCCV)充電とした以外は実施例2-4、及び参考例2-4と同様にして、それぞれ、比較例2-4,2-5に係る電池を完成した。
上記の実施例2-4,2-5、参考例2-4,2-5、比較例2-4,2-5に係る非水電解質二次電池について、実施例2-1と同様の充放電サイクル試験を行い、50サイクル後の内部抵抗を測定した。また、非水電解質の組成のみが異なる各電池間で、FECを含有しない非水電解質を用いた参考例に係る電池において測定された上記内部抵抗の値を100としたときの、各実施例に係る電池の内部抵抗の比を「抵抗率(%)」として求めた。結果を以下の表5に示す。
Figure 0007205051000005
表5によると、初期充放電工程を4.5V(vs.Li/Li)以上の電位で行った比較例2-4,2-5に係る電池では、4.5V(vs.Li/Li)未満で行った実施例2-4,2-5、及び参考例2-4,2-5に係る電池と比べて、50サイクル後の抵抗が大きく、中でも非水電解質にFECを含有する比較例2-4の抵抗がより大きいことがわかる。
これに対して、初期充放電工程を4.5V(vs.Li/Li)未満の4.35V(正極電位は約4.45V(vs.Li/Li))で行った実施例及び参考例では、FECを含む非水電解質を用いた実施例2-4,2-5に係る電池が、FECを含まない非水電解質を用いた参考例2-4、2-5に係る電池と比べて、50サイクル後の抵抗が低い値に維持されていることがわかる。これは、表4に示した、初期充放電工程を4.25V(正極電位は約4.35V(vs.Li/Li))で行った場合の、FECを含まない非水電解質を用いた参考例2-2,2-3に対するFECを含む非水電解質を用いた実施例2-2,2-3に係る電池の効果と同様である。また、NCMとLRを正極活物質に含む正極を有する実施例及び参考例に係る電池は、4.5V(vs.Li/Li)未満の電位で使用されると、実施例1の場合と同じく、過充電に対する安全性が高いという効果を有することがわかる。
また、表4と表5とから、初期充放電工程における充電電圧の条件のみが相違する電池の組を抽出し、各組の充電電圧が4.25Vの電池に対する充電電圧が4.35Vの電池の抵抗率(表4、表5の抵抗率とは基準が異なる。)を求めると、以下の表6のようになる。
Figure 0007205051000006
表6からは、FECを含まない非水電解質を用いた参考例2-2~2-5に係る電池は、初期充放電工程における充電電圧が4.25V(参考例2-2,2-3)から4.35V(参考例2-4,2-5)へ上昇すると、50サイクル後の抵抗値が1.5~3倍程度大きくなるが、FECを含む非水電解質を用いた実施例2-2,2-3~2-5に係る電池では、充電電圧が4.25V(実施例2-2,2-3)から4.35V(実施例2-4,2-5)へ上昇しても、50サイクル後の抵抗値が高々3割程度しか大きくなっていないことがわかる。
(実施例2-6)
非水電解質の溶媒に、FEC/EMCの体積比が5:95である混合溶媒を用いた以外は、実施例2-2と同様にして、実施例2-6に係る非水電解質二次電池を完成した。
(実施例2-7)
非水電解質の溶媒に、FEC/EMCの体積比が20:80である混合溶媒を用いた以外は、実施例2-2と同様にして、実施例2-7に係る非水電解質二次電池を完成した。
実施例2-6,2-7に係る非水電解質二次電池の50サイクル後の抵抗を測定し、FECを含まない参考例2-2の抵抗に対する各実施例の抵抗の割合を抵抗率として求めた。結果を、FEC/EMCの体積比が10:90である実施例2-2,及びFECを含まない参考例2-2とともに、以下の表7に示す。
Figure 0007205051000007
表6から、非水電解質の溶媒に含まれるFECは、少なくとも体積比5~20%の範囲で、充放電サイクル後の抵抗を低く維持する効果を有意に奏していることがわかる。
本発明に係る非水電解質二次電池は、誤って過充電された場合においても高い安全性を有する。したがって、この非水電解質二次電池は、高い安全性、充放電サイクル性能が要求されるハイブリッド自動車(HEV)用、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)用、電気自動車(EV)用の電池として、有用性が高い。
1 非水電解質二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (7)

  1. 正極、負極及び非水電解質を備える非水電解質二次電池であって、
    前記正極は、活物質として、
    α-NaFeO構造を有し、
    一般式 LiMe1O(Me1はNi、Co及びMnを含む遷移金属元素)で表される第一のリチウム遷移金属複合酸化物と、
    α-NaFeO構造を有し、
    一般式 Li1+αMe21-α(0<α、Me2はNi及びMn、又はNi、Mn及びCoを含む遷移金属元素)で表される第二のリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    前記活物質に占める第二のリチウム遷移金属複合酸化物の比は、20質量%以上であり、
    前記活物質は、CuKα線を用いたエックス線回折図において、21°付近に回折ピークが観察される、初期充放電後の非水電解質二次電池。
  2. 正極、負極及び非水電解質を備える非水電解質二次電池であって、
    前記正極は、活物質として、
    α-NaFeO構造を有し、
    一般式 LiMe1O(Me1はNi、Co及びMnを含む遷移金属元素)で表される第一のリチウム遷移金属複合酸化物と、
    α-NaFeO構造を有し、
    一般式 Li1+αMe21-α(0<α、Me2はNi及びMn、又はNi、Mn及びCoを含む遷移金属元素)で表される第二のリチウム遷移金属複合酸化物を含み、
    前記活物質に占める第二のリチウム遷移金属複合酸化物の比は、20質量%以上であり、
    正極電位が5.0V(vs.Li/Li)に至る充電を行ったとき、4.5~5.0V(vs.Li/Li)の正極電位範囲内に、充電電気量に対して電位変化が比較的平坦な領域が観察される、初期充放電後の非水電解質二次電池。
  3. 前記第一のリチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属(Me1)に対するMnのモル比が、Mn/Me1≦0.5である請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記第二のリチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属(Me2)に対するMnのモル比が、0.5<Mn/Me2である請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  5. 前記第二のリチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属(Me2)に対するLiのモル比が、Li/Me2≦1.35である請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  6. 前記非水電解質は、非水溶媒にフルオロエチレンカーボネートを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池の製造方法であって、初期充放電工程を正極電位が4.5V(vs.Li/Li)未満の電位で行う、非水電解質二次電池の製造方法。
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