JP2021093289A - 非水電解質蓄電素子、その使用方法及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質蓄電素子、その使用方法及びその製造方法 Download PDF

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哲志 星野
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Abstract

【課題】出力性能に優れ、充放電サイクルにおける容量維持率も高い非水電解質蓄電素子、並びにこのような非水電解質蓄電素子の使用方法及び製造方法を提供すること。【解決手段】α−NaFeO2構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極を備え、上記リチウム遷移金属複合酸化物がニッケル及びマンガンを含み、上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属に対するリチウムの含有量が、モル比で1.0を超え、上記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたエックス線回折図において20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在し、上記リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積が4mm3/g以上である非水電解質蓄電素子。【選択図】図1

Description

本発明は、非水電解質蓄電素子、その使用方法及びその製造方法に関する。
リチウム二次電池に代表される非水電解質蓄電素子は、近年ますます用途が拡大され、各種正極活物質の開発が求められている。従来、非水電解質蓄電素子用の正極活物質として、α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が検討され、LiCoOを用いた非水電解質二次電池が広く実用化されている。リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属(Me)として、地球資源として豊富なマンガンを用い、リチウム遷移金属複合酸化物を構成する遷移金属に対するリチウムのモル比(Li/Me)がほぼ1である、いわゆるLiMeO型活物質を用いた非水電解質二次電池も実用化されている。
一方、近年、α−NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物の中でも、遷移金属に対するリチウムのモル比(Li/Me)が1を超える、いわゆるリチウム過剰型活物質が開発されている(特許文献1、2)。このようなリチウム過剰型活物質を用いた非水電解質蓄電素子は、LiMeO型活物質に比べて大きい放電容量を有することなどから注目されている。
リチウム過剰型活物質を正極に用いた従来の非水電解質蓄電素子においては、上記のような効果を発揮させるため、一般的に正極電位が4.5V vs.Li/Li以上に至るまでの初期充放電を経て製造される。特許文献1では、リチウム過剰型活物質を正極に用い、ケイ素と炭素とを負極に用いた非水電解質二次電池の初期充放電の際に、正極電位が4.60V vs.Li/Liに至るまで充電が行われている。特許文献2では、リチウム過剰型活物質を正極に用い、黒鉛を負極に用いた非水電解質二次電池の初期充放電の際に、電圧が4.7Vに至るまで、すなわち正極電位が4.8V vs.Li/Liに至るまで充電が行われている。
特開2012−104335号公報 特開2013−191390号公報
従来のリチウム過剰型活物質を正極に用いた非水電解質蓄電素子は、出力性能が十分ではないという不都合を有する。また、非水電解質蓄電素子には、充放電サイクルにおける容量維持率が高いことが望まれる。
本発明の目的は、出力性能が優れ、充放電サイクルにおける容量維持率も高い非水電解質蓄電素子、並びにこのような非水電解質蓄電素子の使用方法及び製造方法を提供することである。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、α−NaFeO構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極を備え、上記リチウム遷移金属複合酸化物がニッケル及びマンガンを含み、上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属に対するリチウムの含有量が、モル比で1.0を超え、上記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたエックス線回折図において20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在し、上記リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積が4mm/g以上である非水電解質蓄電素子である。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の使用方法は、正極電位が4.5V vs.Li/Li未満の範囲で充電することを備える、本発明の一態様の非水電解質蓄電素子の使用方法である。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極電位が4.5V vs.Li/Li未満の範囲で初期充放電を行うことを備える、本発明の一態様の非水電解質蓄電素子の製造方法である。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、出力性能が優れ、充放電サイクルにおける容量維持率も高い。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の使用方法によれば、非水電解質蓄電素子を優れた出力性能で、かつ充放電を繰り返しても高い容量維持率を保って使用することができる。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法によれば、出力性能が優れ、充放電サイクルにおける容量維持率も高い非水電解質蓄電素子を製造することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を示す外観斜視図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置を示す概略図である。
初めに、本明細書によって開示される非水電解質蓄電素子、その使用方法及びその製造方法の概要について説明する。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、α−NaFeO構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極を備え、上記リチウム遷移金属複合酸化物がニッケル及びマンガンを含み、上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属に対するリチウムの含有量が、モル比で1.0を超え、上記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたエックス線回折図において20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在し、上記リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積が4mm/g以上である非水電解質蓄電素子である。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、出力性能が優れる。このような効果が生じる理由は定かではないが、以下のことが推測される。当該非水電解質蓄電素子の正極に備わるリチウム遷移金属複合酸化物は、エックス線回折図において回折角2θが20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在するリチウム遷移金属複合酸化物である。合成された充放電前のリチウム過剰型活物質(α−NaFeO構造を有し、遷移金属に対するリチウムの含有量がモル比で1.0を超えるリチウム遷移金属複合酸化物)に対するエックス線回折図においては、Li[Li1/3Mn2/3]O型の単斜晶に現れる20°以上22°以下の範囲の回折ピークが存在する。リチウム過剰型活物質が用いられた従来の非水電解質蓄電素子においては、リチウム過剰型活物質を活性化させるために、上述のように正極電位が4.5V vs.Li/Li以上に至るまでの初期充放電が行われる(以降、「正極電位が4.5V vs.Li/Li以上に至る充電により、リチウム過剰型活物質が活性化されること」を高電位化成ともいう。)。上記20°以上22°以下の範囲の回折ピークは、正極電位が4.5V vs.Li/Li以上に至る充電を行うと、結晶中のリチウム脱離に伴って結晶の対称性が変化することにより消失する。すなわち、20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在するということは、正極電位が4.5V vs.Li/Li以上に至る充電がなされていないことを意味する。正極電位が4.5V vs.Li/Li以上に至る充電がなされた場合、結晶中の遷移金属サイトに存在する遷移金属イオンがリチウムサイトに移動するいわゆるカチオンミキシングが生じることで、出力性能が低下すると考えられる。これに対し、正極電位が4.5V vs.Li/Li以上に至る充電がなされておらず、20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在する場合、上記カチオンミキシングの発生が抑えられており、出力性能が優れたものとなると推測される。さらに、当該非水電解質蓄電素子の正極に備わるリチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積は4mm/g以上であり表面積が大きいことから、出力性能が優れたものとなると推測される。
また、本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子は、充放電サイクルにおける容量維持率も高い。この理由も定かではないが、以下の理由が推測される。従来の非水電解質蓄電素子においては、充放電の際の副反応により、充放電に寄与するリチウムイオンを負極が消費することが、容量維持率が低下する原因の一つと推測される。リチウム過剰型活物質が用いられた従来の非水電解質蓄電素子においては、上述のように正極電位が4.5V vs.Li/Li以上に至るまでの初期充放電により高電位化成がなされる。これに対し、上記のような高電位化成がなされていないリチウム過剰型活物質を有する非水電解質蓄電素子においては、使用時の充放電の繰り返しに伴い、徐々にリチウム過剰型活物質が活性化され、充放電の際にリチウム過剰型活物質から脱離するリチウムイオンが徐々に増加することができると推測される(以降、「使用時の充放電の繰り返し等に伴い、徐々にリチウム過剰型活物質が活性化されること」を経時化成ともいう。)。このため、当該非水電解質蓄電素子によれば、充放電サイクルにおける負極によるリチウムイオンの消費を、正極のリチウム過剰型活物質からの補充により補うことができるため、容量維持率が高いと推測される。
なお、本明細書におけるリチウム遷移金属複合酸化物の組成比は、次の方法により完全放電状態としたときの組成比をいう。まず、非水電解質蓄電素子を、0.05Cの電流で通常使用時の充電終止電圧となるまで定電流充電し、満充電状態とする。30分の休止後、0.05Cの電流で通常使用時の下限電圧まで定電流放電する。解体し、正極を取り出し、金属リチウム電極を対極とした試験電池を組み立て、正極合剤1gあたり10mAの電流値で、正極電位が2.0V vs.Li/Liとなるまで定電流放電を行い、正極を完全放電状態に調整する。再解体し、正極を取り出す。ジメチルカーボネートを用いて、取り出した正極に付着した非水電解質を十分に洗浄し、室温にて一昼夜乾燥後、正極活物質のリチウム遷移金属複合酸化物を採取する。採取したリチウム遷移金属複合酸化物を測定に供する。非水電解質蓄電素子の解体から測定までの作業は露点−60℃以下のアルゴン雰囲気中で行う。ここで、通常使用時とは、当該非水電解質蓄電素子について推奨され、又は指定される充放電条件を採用して当該非水電解質蓄電素子を使用する場合であり、当該非水電解質蓄電素子のための充電器が用意されている場合は、その充電器を適用して当該非水電解質蓄電素子を使用する場合をいう。
また、リチウム遷移金属複合酸化物に対するエックス線回折測定は、上記方法により完全放電状態としたリチウム遷移金属複合酸化物に対して行う。具体的には、エックス線回折測定は、エックス回折装置(Rigaku社の「MiniFlex II」)を用いた粉末エックス線回折測定によって、線源はCuKα線、管電圧は30kV、管電流は15mAとして行う。このとき、回折エックス線は、厚さ30μmのKβフィルターを通り、高速一次元検出器(D/teX Ultra 2)にて検出される。また、サンプリング幅は0.02°、スキャンスピードは5°/min、発散スリット幅は0.625°、受光スリット幅は13mm(OPEN)、散乱スリット幅は8mmとする。
リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積及び後述するピーク微分細孔容積は、窒素ガス吸着法を用いた吸着等温線からBJH法で求める値とする。具体的には、全細孔容積及びピーク微分細孔容積は以下の方法により測定する。被測定試料(リチウム遷移金属複合酸化物)の粉体1.00gを測定用のサンプル管に入れ、120℃にて12時間真空乾燥することで、測定試料中の水分を十分に除去する。次に、液体窒素を用いた窒素ガス吸着法により、相対圧力P/P0(P0=約770mmHg)が0から1の範囲内で吸着側及び脱離側の等温線を測定する。そして、脱離側の等温線を用いてBJH法により計算することにより細孔分布を評価し、全細孔容積及びピーク微分細孔容積を求める。
本発明の一態様に係る非水電解質蓄電素子においては、通常使用時の充電終止電圧における正極電位が4.5V vs.Li/Li未満であることが好ましい。通常使用時の充電終止電圧における正極電位が4.5V vs.Li/Li未満であることにより、多数回の充放電の繰り返しに伴って、経時化成が徐々に進行するため、容量維持率をより高めることができる。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の使用方法は、正極電位が4.5V vs.Li/Li未満の範囲で充電することを備える、本発明の一態様の非水電解質蓄電素子の使用方法である。
当該使用方法によれば、カチオンミキシングが抑制され、また全細孔容積が大きいリチウム過剰型活物質が正極活物質として用いられているため、非水電解質蓄電素子を優れた出力性能で使用することができる。また、当該使用方法によれば、非水電解質蓄電素子を高い容量維持率で使用することができる。
本発明の他の一態様に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極電位が4.5V vs.Li/Li未満の範囲で初期充放電を行うことを備える、本発明の一態様の非水電解質蓄電素子の製造方法である。
当該製造方法によれば、カチオンミキシングが抑制され、また全細孔容積が大きいリチウム過剰型活物質が正極活物質として用いられているため、優れた出力性能を有する非水電解質蓄電素子を製造することができる。また、当該製造方法によれば、充放電サイクルにおける容量維持率が高い非水電解質蓄電素子を製造することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子、その使用方法及びその製造方法について詳説する。
<非水電解質蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質を有する。正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回により交互に重畳された電極体を形成する。この電極体は容器に収納され、この容器内に非水電解質が充填される。非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、容器としては、通常用いられる公知の金属容器、樹脂容器等を用いることができる。以下、非水電解質蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明する。
(正極)
正極は、正極基材、及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極活物質層を有する。
正極基材は、導電性を有する。「導電性」を有するとは、JIS−H−0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10Ω・cm以下であることを意味し、「非導電性」とは、上記体積抵抗率が10Ω・cm超であることを意味する。正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H−4000(2014年)に規定されるA1085、A3003等が例示できる。
正極基材の平均厚さとしては、5μm以上50μm以下が好ましく、10μm以上40μm以下がより好ましい。正極基材の平均厚さを上記下限以上とすることで、正極基材の強度を高めることができる。正極基材の平均厚さが上記上限以下とすることで、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
「平均厚さ」とは、任意の10点において測定した厚さの平均値をいう。他の部材等に対して「平均厚さ」を用いる場合にも同様に定義される。
中間層は、正極基材と正極活物質層との間に配される層である。中間層の構成は特に限定されず、例えば、樹脂バインダ及び導電性を有する粒子を含む。中間層は、例えば、炭素粒子等の導電性を有する粒子を含むことで正極基材と正極活物質層との接触抵抗を低減する。
正極活物質層は、正極活物質を含む正極合剤の層である。正極活物質層(正極合剤)は、正極活物質の他、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいてよい。
正極活物質は、α−NaFeO構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む。上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)の含有量のモル比(Li/Me)は、1.0を超える。このリチウム遷移金属複合酸化物は、いわゆるリチウム過剰型活物質である。また、上記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたエックス線回折図においては、回折角2θが20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在する。
上記リチウム遷移金属複合酸化物に含まれる遷移金属(Me)は、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)を含む。この遷移金属は、さらにコバルト(Co)を含むことが好ましい場合がある。この遷移金属は、実質的にNi及びMnからなるか、実質的にNi、Mn及びCoからなることが好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物は、Li1+α(NiβCoγMnδ1−α(0<α<1、0<β<1、0≦γ<1、0<δ<1、β+γ+δ=1)で表されるものであってよい。
上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に対するリチウム(Li)のモル比、すなわち(1+α)/(1−α)は、1.05以上1.5以下が好ましく、1.1以上1.4以下がより好ましく、1.2以上1.35以下がさらに好ましい場合もある。(1+α)/(1−α)を上記下限以上とすることで、充放電サイクルにおける容量維持率をより高めることができる。また、(1+α)/(1−α)を上記上限以下とすることで、出力性能をより高めることができる。なお、リチウム遷移金属複合酸化物における各元素のモル比(物質量比)は、原子数比に等しい。
上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に占めるNiのモル比(Ni/Me)、すなわちβは、例えば0.1以上0.8以下であってよく、0.2以上0.7以下が好ましく、0.3以上0.6以下がより好ましい。Ni/Meを上記下限以上とすることで、出力性能、エネルギー密度等を高めることができる。Ni/Meを上記上限以下とすることで、容量維持率等をより高めることができる。
上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に占めるCoのモル比(Co/Me)、すなわちγは、例えば0以上0.6以下であってよく、0.1以上0.3以下であってもよい。Co/Meを上記下限以上とすることで、出力性能、エネルギー密度等を高めることができる。一方、Co/Meを上記上限以下とすることで、十分な容量維持率を発揮しつつ、原料コストを抑えることなどができる。
上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属(Me)に占めるMnのモル比(Mn/Me)、すなわちδは、例えば0.1以上0.8以下であってよく、0.3以上0.7以下が好ましく、0.35以上0.6以下がより好ましい。Mn/Meを上記下限以上とすることで、経時化成の作用が高まり、容量維持率を高めることができる。Mn/Meを上記上限以下とすることで、出力性能、エネルギー密度等を高めることができる。
上記リチウム遷移金属複合酸化物は、本発明の効果が奏される範囲で他の遷移金属等が含まれていてもよく、不純物として他の遷移金属等が混入していてもよい。また、上記リチウム遷移金属複合酸化物は、他の金属酸化物(例えば、アルミナ等)等で被覆されていてもよい。
上記リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積の下限は、4mm/gであり、10mm/g、15mm/g、20mm/g、25mm/g又は30mm/gが好ましい場合もある。リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積が上記下限以上であることで、出力性能がより向上する傾向にある。一方、この全細孔容積の上限は、例えば100mm/gであり、50mm/gが好ましく、40mm/g、35mm/g、30mm/g又は25mm/gがより好ましい場合もある。リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積が上記上限以下であることで、充放電サイクルにおける容量維持率が高まる傾向にある。上記全細孔容積は、上記いずれかの下限値以上かつ上記いずれかの上限値以下であってよい。
上記リチウム遷移金属複合酸化物のピーク微分細孔容積は特に限定されず、0.01mm/(g・nm)以上2mm/(g・nm)以下であってよく、0.02mm/(g・nm)以上0.5mm/(g・nm)以下が好ましく、0.3mm/(g・nm)以下がより好ましい。ピーク微分細孔容積がこのように比較的小さい場合、比較的密度の高いリチウム遷移金属複合酸化物となり、非水電解質蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。ピーク微分細孔容積が例えば0.5mm/(g・nm)以下のリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば前駆体として後述する水酸化物前駆体を用いることで得ることができる。
上記リチウム遷移金属複合酸化物は、通常、金属元素(Li、Ni、Mn等)を目的とするリチウム遷移金属複合酸化物の組成どおりに含有する原料を調製し、これを焼成することによって得ることができる。目的とする組成のリチウム遷移金属複合酸化物を作製するにあたり、Li、Ni、Mn等のそれぞれの塩を混合し、焼成するいわゆる「固相法」や、あらかじめNi、Mn等を一粒子中に存在させた共沈前駆体を作製しておき、これにLi塩を混合し、焼成する「共沈法」が知られている。これらの方法のうち、各元素が均一性高く分布した目的物を得ることが容易な共沈法が好ましい。以下、共沈法について詳説する。
共沈法により得られる前駆体としては、一般的に水酸化物前駆体と炭酸塩前駆体とが挙げられる。中でも、水酸化物前駆体を製造する方法が、溶液のpH及び反応時間等を制御することにより、最終的に全細孔容積が4mm/g以上であるリチウム遷移金属複合酸化物が得られやすいため好ましい。
水酸化物前駆体を製造する場合、アルカリ性を保った反応槽に、遷移金属(Me)を含有する溶液と共に、アルカリ金属水酸化物(中和剤)、錯化剤、及び還元剤を含有するアルカリ溶液を加えて、遷移金属水酸化物を共沈させることが好ましい。錯化剤としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等を用いることができる。還元剤としては、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等を用いることができる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等を用いることができる。
前駆体を作製するにあたって、Mnは酸化されやすいため、例えばNi、Co及びMnが2価の状態で均一に分布した前駆体を作製することは容易では無く、Ni、Co及びMnの原子レベルでの均一な混合は不十分なものとなりやすい。従って、前駆体に存在するMnの酸化を抑制するために、溶液中の溶存酸素を除去することが好ましい。溶存酸素を除去する方法としては、酸素を含まないガスを用いてバブリングする方法が挙げられる。酸素を含まないガスとしては、限定されるものではないが、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。
溶液中でNi、Mn等を含有する化合物を共沈させて前駆体を作製する際の溶液のpHは限定されるものではないが、前駆体を水酸化物前駆体として作製しようとする場合には、9から11、より好ましくは9.5から10.5とすることが好ましい。水酸化物前駆体を作製する際にこのような範囲にpHを制御することで、全細孔容積が4mm/g以上であるリチウム遷移金属複合酸化物が得られやすい傾向にある。
前駆体の原料に関し、Ni化合物としては、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。Co化合物としては、硫酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト等が挙げられる。Mn化合物としては、酸化マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン等が挙げられる。
原料水溶液の滴下速度は、生成する前駆体の1粒子内における元素分布の均一性に影響を与える。好ましい滴下速度については、反応槽の大きさ、攪拌条件、pH、反応温度等にも影響されるが、30cm/min以下が好ましい。出力性能、放電容量等を向上させるためには、滴下速度は10cm/min以下がより好ましく、5cm/min以下が最も好ましい。滴下速度の下限としては、例えば0.1cm/minである。
反応槽内にNH等の錯化剤が存在し、かつ一定の対流条件を適用した場合、原料水溶液の滴下終了後、さらに攪拌を続けることにより、粒子の自転及び攪拌槽内における公転が促進され、この過程で、粒子同士が衝突しつつ、粒子が段階的に同心円球状に成長する。すなわち、共沈前駆体は、反応槽内に原料水溶液が滴下された際の金属錯体形成反応、及び金属錯体が反応槽内の滞留中に生じる沈殿形成反応という2段階での反応を経て形成される。ここで、原料水溶液の滴下終了後、さらに攪拌を続ける時間、すなわち反応時間を適切に調整することにより、最終的に得られるリチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積を調整することができる。
原料水溶液滴下終了後の好ましい攪拌継続時間、すなわち反応時間については、反応槽の大きさ、攪拌条件、pH、反応温度等にも影響されるが、全細孔容積が4mm/g以上であるリチウム遷移金属複合酸化物を得るためには、20時間以下が好ましく、15時間以下がより好ましい。一方、粒子を均一な球状粒子として十分に成長させるためには、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
上記方法にて得られた前駆体とLi化合物とを混合し、焼成することにより、リチウム遷移金属複合酸化物が得られる。Li化合物としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム等を使用することができる。また、これらのLi化合物と共に、焼結助剤としてLiF、LiSO又はLiPOを使用することができる。これらの焼結助剤の添加比率は、Li化合物の総量に対して1から10mol%とすることが好ましい。なお、Li化合物の総量は、焼成中にLi化合物の一部が消失することを見込んで、1から5mol%程度過剰に仕込むことが好ましい。
焼成温度としては、750℃以上1,000℃以下が好ましい。焼成温度を上記下限以上とすることで、焼結度が高いリチウム遷移金属複合酸化物粒子を得ることができ、充放電サイクル性能を向上させることができる。一方、焼成温度を上記上限以下とすることで、層状α−NaFeO構造から岩塩型立方晶構造へと構造変化が起きることなどによって放電性能が低下することを抑制することができる。
正極活物質には、上記リチウム遷移金属複合酸化物以外の他の正極活物質が含まれていてもよい。上記正極活物質に占める上記リチウム遷移金属複合酸化物の含有量は例えば50質量%以上であってよいが、70質量%超が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上がよりさらに好ましく、実質的に100質量%であってもよい。正極活物質に占める上記リチウム遷移金属複合酸化物の含有割合を高めることで、出力性能及び容量維持率をより高めることができる。
上記リチウム遷移金属複合酸化物以外の他の正極活物質としては、リチウムイオン二次電池等に通常用いられる公知の正極活物質の中から適宜選択できる。上記正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。例えば、上述したLiMeO型活物質、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。
正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。ここで、「平均粒径」とは、JIS−Z−8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS−Z−8819−2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
正極活物質等の粒子を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
正極活物質層(正極合剤)における正極活物質の含有量としては、70質量%以上98質量%以下が好ましく、80質量%以上97質量%以下がより好ましく、90質量%以上96質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記範囲とすることで、二次電池の電気容量を大きくすることができる。
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、黒鉛;ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;金属;導電性セラミックス等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが好ましい。
正極活物質層(正極合剤)における導電剤の含有量としては、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上5質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記範囲とすることで、二次電池の電気容量を大きくすることができる。
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
正極活物質層(正極合剤)におけるバインダの含有量としては、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上5質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記範囲とすることで、活物質を安定して保持することができる。
増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、アルミナシリケイト等が挙げられる。
正極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
(負極)
負極は、負極基材、及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極活物質層を有する。負極の中間層の構成は特に限定されず、正極の中間層と同様の構成とすることができる。
負極基材は、導電性を有する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
負極基材の平均厚さとしては、3μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。負極基材の平均厚さを上記下限以上とすることで、負極基材の強度を高めることができる。負極基材の平均厚さを上記上限以下とすることで、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
負極活物質層は、負極活物質を含む負極合剤の層である。負極活物質層(負極合剤)は、負極活物質の他、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含んでいてよい。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層と同様のものを用いることができる。負極活物質層におけるこれらの各任意成分の含有量は、正極活物質層におけるこれらの含有量として記載した範囲とすることができる。
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO2、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。負極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、エックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてエックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
ここで、黒鉛及び非黒鉛質炭素を定義する「放電状態」とは、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態をいう。開回路状態での金属Li対極の電位は、Liの酸化還元電位とほぼ等しいため、上記単極電池における開回路電圧は、Liの酸化還元電位に対する炭素材料を含む負極の電位とほぼ同等である。つまり、上記単極電池における開回路電圧が0.7V以上であることは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されていることを意味する。
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
より容量維持率の高い二次電池とするためなどには、負極活物質としては、炭素材料が好ましく、黒鉛がより好ましい。負極活物質として炭素材料を用いる場合、全負極活物質に占める炭素材料の含有量としては、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよく、実質的に100質量%であってよい。
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1nm以上100μm以下とすることができる。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、活物質層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び粉級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。
負極活物質層(負極合剤)における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
負極活物質層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の材質としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの材質の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、大気下で500℃にて質量減少が5%以下であるものが好ましく、大気下で800℃にて質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、二次電池の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
(非水電解質)
非水電解質としては、公知の非水電解質の中から適宜選択できる。非水電解質には、非水電解液を用いてもよい。非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩とを含む。
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。例えば、フッ素化された化合物(フッ素化環状カーボネート、フッ素化鎖状カーボネート等)を用いることで、正極電位が高電位に至る使用条件下でも十分に使用できる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもEC、PC及びFECが好ましい。
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネート(MFEC)、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMC及びMFECが好ましい。
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPFがより好ましい。
非水電解液における電解質塩の含有量は、0.1mol/dm以上2.5mol/dm以下であると好ましく、0.3mol/dm以上2.0mol/dm以下であるとより好ましく、0.5mol/dm以上1.7mol/dm以下であるとさらに好ましく、0.7mol/dm以上1.5mol/dm以下であると特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解液のイオン伝導度を高めることができる。
非水電解液は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えばビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン)、4−メチルスルホニルオキシメチル−2,2−ジオキソ−1,3,2−ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
非水電解液に含まれる添加剤の含有量は、非水電解液全体の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。添加剤の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又はサイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃以上25℃以下)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及び酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質等が挙げられる。
硫化物固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の場合、例えば、LiS−P系等が挙げられる。硫化物固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiI−LiS−P、Li10Ge−P12等が挙げられる。
(通常使用時の充電終止電圧における正極電位)
当該二次電池(非水電解質蓄電素子)において、通常使用時の充電終止電圧における正極電位(正極到達電位)は特に限定されないが、4.5V vs.Li/Li未満が好ましく、4.45V vs.Li/Li未満がより好ましく、4.4V vs.Li/Li以下がさらに好ましい場合もある。通常使用時の充電終止電圧における正極電位を上記上限以下とすることで、多数回の充放電の繰り返しに伴って、経時化成が徐々に進行するため、容量維持率を高めることができる。
当該二次電池において、通常使用時の充電終止電圧における正極電位は4.3V vs.Li/Li超が好ましく、4.35V vs.Li/Li以上がより好ましく、4.4V vs.Li/Li以上がさらに好ましい場合もある。通常使用時の充電終止電圧における正極電位を上記下限以上とすることで、通常の充電の際に十分に経時化成が進行するため、容量維持率を高めることができる。また、充電上限電位を高めることで、放電容量を大きくし、エネルギー密度、出力性能等を高めることができる。
当該二次電池における通常使用時の充電終止電圧における正極電位は、上記したいずれかの上限と上記したいずれかの下限との範囲内としてよい。
(用途)
当該二次電池の用途は特に限定されず、従来公知の二次電池と同様の用途に用いることができる。当該二次電池は、経時化成が生じることにより容量維持率を高めることができていると推測されるため、充電するときは、通常所定の充電終止電圧(所定の充電終止電位)に至るまで充電される、すなわちSOC(充電状態)が100%になるまで充電される用途に当該二次電池を特に好適に適用することができる。このような用途としては、例えば携帯用電子機器(携帯電話、ノート型パソコン、タブレット端末等)、電気玩具、電気シェーバー、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッドカー(PHEV)等の電源用途を挙げることができる。
<非水電解質蓄電素子の使用方法>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子の使用方法は、特に限定されないが以下の方法が好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子の使用方法は、当該非水電解質蓄電素子を、正極電位(正極到達電位)が4.5V vs.Li/Li未満の範囲で充電することを備える。このように使用することで、充電に伴って徐々に経時化成がなされるため、リチウム過剰型活物質を正極に用いた非水電解質蓄電素子を高い容量維持率で使用することができる。
この充電における正極電位(正極到達電位)の上限は、4.45V vs.Li/Li未満がより好ましい。また、この充電における正極電位の下限は、4.3V vs.Li/Li超が好ましく、4.35V vs.Li/Li以上がより好ましく、4.4V vs.Li/Li以上がさらに好ましい場合もある。
この使用方法は、充電における正極電位(正極到達電位)を上記のようにすること以外は、従来公知の非水電解質蓄電素子の使用方法と同様であってよい。
<非水電解質蓄電素子の製造方法>
本発明の一実施形態に係る非水電解質蓄電素子の製造方法は、正極と負極と非水電解質とを備える未充放電非水電解質蓄電素子を組み立てること、及びこの未充放電非水電解質蓄電素子を初期充放電することを備える。この初期充放電において、正極電位(正極到達電位)が4.5V vs.Li/Li未満の範囲で初期充放電を行う。このような製造方法によれば、初期充放電において高電位化成がなされないため、充放電サイクルにおける容量維持率が高い非水電解質蓄電素子を製造することができる。
なお、当該製造方法において、初期充放電は積極的にリチウム過剰型活物質の活性化を行わせるものではなく、例えば容量の確認等のためになされるものであってよい。すなわち、初期充放電とは、単に、非水電解質蓄電素子(未充放電非水電解質蓄電素子)を組み立てた後に初めて行われる充放電である。初期充放電における充放電の回数は1回又は2回であってもよく、3回以上であってもよい。
初期充放電における正極電位(正極到達電位)の上限は、4.45V vs.Li/Li未満であってよく、4.4V vs.Li/Li以下であってもよい。一方、初期充放電における正極電位の下限は特に限定されず、例えば4.3V vs.Li/Li超であってよく、4.35V vs.Li/Li以上又は4.4V vs.Li/Li以上であってもよい。
正極と負極と非水電解質とを備える未充放電非水電解質蓄電素子を組み立てることは、例えば、電極体を準備することと、非水電解質を準備することと、電極体及び非水電解質を容器に収容することとを備える。電極体を準備することは、正極を準備することと、負極を準備することと、正極及び負極を、セパレータを介して積層又は巻回することにより電極体を形成することとを備える。
正極を準備することは、正極基材に直接又は中間層を介して、正極合剤ペーストを塗布し、乾燥させることにより行うことができる。上記正極合剤ペーストには、正極活物質等、正極活物質層(正極合剤)を構成する各成分、及び分散媒が含まれる。正極活物質には、上記リチウム遷移金属複合酸化物(リチウム過剰型活物質)が含まれる。リチウム遷移金属複合酸化物の製造方法は、上述したとおりである。
負極を準備することは、例えば負極基材に直接又は中間層を介して、負極合剤ペーストを塗布し、乾燥させることにより行うことができる。上記負極合剤ペーストには、負極活物質等、負極活物質層(負極合剤)を構成する各成分、及び分散媒が含まれる。
<その他の実施形態>
本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
また、上記実施の形態においては、非水電解質蓄電素子が非水電解質二次電池である形態を中心に説明したが、その他の非水電解質蓄電素子であってもよい。その他の非水電解質蓄電素子としては、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。
図1に、本発明に係る非水電解質蓄電素子の一実施形態である矩形状の非水電解質蓄電素子1(非水電解質二次電池)の概略図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解質蓄電素子1は、電極体2が容器3に収納されている。電極体2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して巻回されることにより形成されている。正極は、正極リード41を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード51を介して負極端子5と電気的に接続されている。
本発明に係る非水電解質蓄電素子の構成については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の非水電解質蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解質蓄電素子1を備えている。上記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(リチウム遷移金属複合酸化物の作製)
硫酸ニッケル6水和物315.4g、硫酸コバルト7水和物170.4g、及び硫酸マンガン5水和物535.7gを秤量した。これらの全量をイオン交換水4dmに溶解させ、Ni:Co:Mnのモル比が30:15:55となる1.0mol/dmの硫酸塩水溶液を作製した。次に、5dmの反応槽に2dmのイオン交換水を注ぎ、窒素ガスを30minバブリングさせることにより、イオン交換水中に含まれる酸素を除去した。反応槽の温度は50℃(±2℃)に設定し、攪拌モーターを備えたパドル翼を用いて反応槽内を1,500rpmの回転速度で攪拌しながら、反応槽内に対流が十分おこるように設定した。上記硫酸塩水溶液を1.5cm/minの速度で反応槽に滴下した。ここで、滴下の開始から終了までの間、4.0mol/dmの水酸化ナトリウム、1.25mol/dmのアンモニア、及び0.1mol/dmのヒドラジンを含む混合アルカリ溶液を適宜滴下することにより、反応槽中のpHが常に10.0(±0.1)を保つように制御すると共に、反応液の一部をオーバーフローにより排出することにより、反応液の総量が常に2dmを超えないように制御した。上記硫酸水溶液の滴下開始10時間経過後から2時間の間に排出した反応液を採取し、室温で12時間以上静置した。すなわち、反応時間が10から12時間の間の反応液を採取した。これを濾別、洗浄、乾燥し、水酸化物前駆体を得た。
得られた水酸化物前駆体2.315gに、水酸化リチウム1水和物1.214gを加え、瑪瑙製自動乳鉢を用いてよく混合し、Li/(Ni、Co、Mn)のモル比(Li/Me)が1.10となるように混合粉体を調製した。ペレット成型機を用いて、6MPaの圧力で成型し、直径25mmのペレットとした。ペレット成型に供した混合粉体の量は、想定する最終生成物の質量が2.5gとなるように換算して決定した。上記ペレット1個を全長約100mmのアルミナ製ボートに載置し、箱型電気炉(型番:AMF20)に設置し、空気雰囲気中、常圧下、常温から900℃まで10時間かけて昇温し、900℃で5時間焼成した。上記箱型電気炉の内部寸法は、縦10cm、幅20cm、奥行き30cmであり、幅方向20cm間隔に電熱線が入っていた。焼成後、ヒーターのスイッチを切り、アルミナ製ボートを炉内に置いたまま自然放冷した。この結果、炉の温度は5時間後には約200℃程度にまで低下するが、その後の降温速度はやや緩やかであった。一昼夜経過後、炉の温度が100℃以下となっていることを確認してから、ペレットを取り出し、粒径を揃えるために、瑪瑙製乳鉢で軽くほぐした。
このようにして、リチウム遷移金属複合酸化物(Ni:Co:Mn=30:15:55、Li/Me=1.10)を作製した。得られたリチウム遷移金属複合酸化物について、エックス線回折装置(Rigaku社製、型名:MiniFlex II)を用いて粉末エックス線回折測定を行った。得られたリチウム遷移金属複合酸化物は、α−NaFeO構造を有すること、及びエックス線回折図において20°以上22°以下の範囲に回折ピークがあることを確認した。また、エックス線回折図において、回折角2θが17°以上19°以下の範囲内の強度の最大値と最小値との差分(I18)に対する回折角2θが20°以上22°以下の範囲内の強度の最大値と最小値との差分(I21)の比(I21/I18)は、0.020であった。
得られたリチウム遷移金属複合酸化物について、上述した方法にて全細孔容積を測定したところ、20mm/gであった。また、上述した方法にてピーク微分細孔容積を測定したところ、0.08mm/(g・nm)であった。
(正極の作製)
質量比で、正極活物質である上記リチウム遷移金属複合酸化物:アセチレンブラック(AB):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)=90:5:5の割合(固形物換算)で含み、N−メチルピロリドン(NMP)を分散媒とする正極合剤ペーストを作製した。この正極合剤ペーストを正極基材としてのアルミニウム箔(厚み15μm)に塗布し、乾燥させて、正極を得た。
(負極の作製)
質量比で、負極活物質である黒鉛:スチレンブタジエンゴム(SBR):カルボキシメチルセルロース(CMC)=96:3.2:0.8の割合(固形分換算)で含み、水を分散媒とする負極合剤ペーストを作製した。この負極合剤ペーストを負極基材としての銅箔(厚み10μm)に塗布し、乾燥させて、負極を得た。
(試験電池の組み立て)
上記正極及び上記負極を用いた試験電池(非水電解質蓄電素子)を組み立てた。なお、非水電解質として、EC(エチレンカーボネート)とEMC(エチルメチルカーボネート)とジメチルカーボネート(DMC)を体積比30:35:35で混合した非水溶媒に、電解質塩としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)が1.0mol/dmの含有量となるように溶解させた溶液を用い、セパレータとしてポリオレフィン製微多孔膜を用いた。
(初期充放電)
得られた初期充放電前の非水電解質蓄電素子(未充放電非水電解質蓄電素子)に対して、25℃の下、以下の要領にて初期充放電を行った。充電電流0.1C、充電終止電圧4.3V(正極到達電位4.4V vs.Li/Li)で定電流定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値が0.02Cに減衰した時点とした。その後、放電電流0.1C、放電終止電圧2.5Vとした定電流放電を行った。充電後には10分間の休止期間を設けた。以上の手順により、実施例1の非水電解質蓄電素子を得た。
[実施例2から17、比較例1から9]
目的とするリチウム遷移金属複合酸化物におけるNi、Co及びMnのモル比(Ni:Co:Mn)並びに遷移金属に対するリチウムのモル比(Li/Me)が表1の値となるように、硫酸ニッケル6水和物、硫酸コバルト7水和物及び硫酸マンガン5水和物の使用量、並びに水酸化物前駆体及び水酸化リチウム1水和物の使用量を調整したことと、硫酸水溶液の滴下開始から反応液の採取を開始するまでの経過時間を表1に記載の時間としたことと、初期充放電時の正極到達電位を表1に記載の電位としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2から17及び比較例1から9の各非水電解質蓄電素子を得た。
各実施例及び比較例において得られたリチウム遷移金属複合酸化物について、上述した方法にて全細孔容積を測定した。測定結果を表1に示す。また、各非水電解質蓄電素子について、別途、初期充放電後の状態で、上述した方法に基づいて完全放電状態の正極活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)を取り出し、エックス線回折測定を行い、20°以上22°以下の範囲における回折ピークの有無を確認した。結果を表1に示す。
(充放電サイクル試験)
初期の放電容量を確認した各非水電解質蓄電素子について、45℃の下、以下の要領で充放電サイクル試験を行った。充電電流1.0C、充電終止電圧4.3V(正極到達電位4.4V vs.Li/Li)で定電流定電圧充電を行った。充電終止条件は、電流値が0.05Cに減衰した時点とした。その後、放電電流1.0C、放電終止電圧2.5Vとした定電流放電を行った。充電後及び放電後にはそれぞれ10分間の休止期間を設けた。この充放電を100サイクル実施した。
1サイクル目の放電容量に対する100サイクル目の放電容量を容量維持率として求めた。得られた容量維持率を表1に示す。
(出力性能)
得られた各非水電解質蓄電素子について、上記と同様に初期充放電を行った。その後、25℃にて、電流1.0Cの定電流充電を行い、SOCを50%にした後、25℃にて電流0.2C、0.5C、1.0Cの順で、30秒間ずつ放電した。各放電電流における電流と放電開始後10秒目の電圧との関係をプロットし、3点のプロットから最小二乗法によるフィッティングを行って得られた直線を放電終止電圧である2.5Vまで外挿したときの電流値を算出し、電圧値との積から出力を算出した。得られた出力を表1に示す。
Figure 2021093289
表1に示されるように、リチウム過剰型活物質ではなく、エックス線回折図において20°以上22°以下の範囲の回折ピークが存在しないリチウム遷移金属複合酸化物を用いた比較例1、9の非水電解質蓄電素子においては、充放電サイクル後の容量維持率が低かった。全細孔容積が4mm/g未満であるリチウム過剰型活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)を用いた比較例2から7の各非水電解質蓄電素子は、充放電サイクル後の容量維持率は高いものの、出力が小さかった。また、初期充放電時の正極到達電位が4.7V vs.Li/Liであり、エックス線回折図において20°以上22°以下の範囲の回折ピークが消失した比較例8の非水電解質蓄電素子は、充放電サイクル後の容量維持率が低く、出力も小さかった。これらに対し、全細孔容積が4mm/g以上であり、エックス線回折図において20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在するリチウム過剰型活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)を用いた実施例1から17の非水電解質蓄電素子においては、出力が大きく、また、充放電サイクル後の容量維持率も高い結果となった。
また、実施例8から15及び比較例3から7の対比などから、硫酸水溶液の滴下開始から反応液の採取を開始するまでの経過時間(反応時間)を短くすることで、全細孔容積が大きいリチウム過剰型活物質(リチウム遷移金属複合酸化物)が得られることがわかる。
なお、比較例1、9の対比からわかるように、リチウム過剰型ではないLiMeO型活物質を用いた場合は、全細孔容積を大きくしても出力は大きくならなかった。全細孔容積を大きくすることで出力性能が高まるという効果は、リチウム過剰型活物質の場合に生じる特有の効果であると推測される。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車、産業用等の電源として使用される非水電解質蓄電素子等に適用できる。
1 非水電解質蓄電素子
2 電極体
3 容器
4 正極端子
41 正極リード
5 負極端子
51 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (4)

  1. α−NaFeO構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物を含有する正極を備え、
    上記リチウム遷移金属複合酸化物がニッケル及びマンガンを含み、
    上記リチウム遷移金属複合酸化物における遷移金属に対するリチウムの含有量が、モル比で1.0を超え、
    上記リチウム遷移金属複合酸化物のCuKα線を用いたエックス線回折図において20°以上22°以下の範囲に回折ピークが存在し、
    上記リチウム遷移金属複合酸化物の全細孔容積が4mm/g以上である非水電解質蓄電素子。
  2. 通常使用時の充電終止電圧における正極電位が4.5V vs.Li/Li未満である請求項1に記載の非水電解質蓄電素子。
  3. 正極電位が4.5V vs.Li/Li未満の範囲で充電することを備える請求項1又は請求項2に記載の非水電解質蓄電素子の使用方法。
  4. 正極電位が4.5V vs.Li/Li未満の範囲で初期充放電を行うことを備える請求項1又は請求項2に記載の非水電解質蓄電素子の製造方法。
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