JP6908957B2 - セルロースナノファイバー分散液の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明において、α−セルロース含有率60%〜99質量%のパルプを用いるのが好ましい。α−セルロース含有率60質量%未満の純度の場合はセルロースの持つ高強度・耐熱性・高剛性・高耐衝撃性・高酸素バリア性などの特性を十分に引き出せないほか、着色による品質の劣化や熱によるガスの発生などの問題を生じる。従ってα−セルロース含有率は60質量%以上であることが好ましい。一方、99質量%以上のものを用いた場合、繊維同士が水素結合により強く結びついているため、繊維をナノレベルに解繊することが困難になる。
本願発明において使用可能な、カルボキシル基を有する化合物は、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸などのカルボン酸である。さらに、カルボン酸を脱水縮合させたカルボン酸無水物、これらのカルボン酸の水和物、又は、金属塩等も本願発明においては、カルボキシル基を有する化合物として使用することができる。これらから選択される化合物を1種類のみ用いてもよいし、少なくとも2種類の化合物を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物によって、α−セルロース分子が有するヒドロキシル基の一部をカルボキシ基に化学修飾する。これにより、セルロース繊維間の結合力が弱まり、解繊性が向上する。
これらの化合物のうち、工業的に利用が可能であり、融点の観点からは、無水マレイン酸がより好ましい。
α−セルロース中にカルボキシル基を導入する方法(エステル化)としては、パルプ原料にカルボキシル基を有する化合物を乗せ、パルプ原料及びカルボキシル基を有する化合物全体に熱を加え、前記化合物を融解させ、パルプ原料に染み込ませる。このときの処理温度は、エステル化及びカルボキシル基を有する化合物の融点から、50℃以上250℃以下であることが好ましい。また、α−セルロースの熱分解の観点からは、300℃に以下にすることが好ましい。さらには、経済性の観点からは、80〜170℃にすると、より好ましい。
パルプ原料をエステル化(以下、エステル化パルプという。)した後には、未反応のカルボキシル基を有する化合物を洗浄除去するため、エステル化パルプを純水や有機溶媒(例えば、アセトン等)により洗浄する洗浄工程を実施する。洗浄の方法としては、特には限定されないが、例えば、エステル化パルプを有機溶剤、純水の順で各数回ずつそれぞれの溶剤へ分散、ろ過を繰り返すことで洗浄を行う。このとき、濾液のpHは6以上9以下であることが好ましく、6.5以上8.0以下であることがより好ましく、7.0であることがさらに好ましい。濾液のpHが前記下限値以下であれば、未反応のカルボキシル基を有する化合物が残存している可能性がある。また、pHが9を超えていると、カルボキシル基を有する化合物との反応が未反応である可能性があるからである。
アルカリ処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、前記洗浄工程を実施した後のエステル化パルプにアルカリ溶液を滴下する方法が挙げられる。より具体的には、アルカリ溶液をエステル化パルプ分散液中に滴下し、前記分散液のpHを9以上14以下とすることが好ましく、10以上14以下であることがより好ましく、11以上14以下であることがさらに好ましい。前記分散液のpHが前記下限値以上であれば、CNF分散液中のCNFの収率がより高くなる。しかし、pHが14を超えると、アルカリ溶液の取り扱い性が低下する。アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液の温度は、0〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。
また、アルカリ溶液のうちでは、汎用性が高いことから、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及びアンモニア水溶液が特に好ましい。
解繊処理は、図1に示した水中対向衝突法を用いて行う。これは、水に懸濁したパルプをチャンバー(図1:107)内で相対する二つのノズル(図1:108a,108b)に導入し、これらのノズルから一点に向かって噴射、衝突させる手法である。図1に示される装置は液体循環型となっており、タンク(図1:109)、プランジャ(図1:110)、対向する二つのノズル(図4:108a,108b)、必要に応じて熱交換器(図1:111)を備え、水中に分散させた微粒子を二つのノズルに導入し高圧下で合い対するノズル(図1:108a,108b)から噴射して水中で対向衝突させる。
多糖スラリ供給経路3は多糖スラリ供給部であり多糖スラリを貯留するタンク7、ポンプ8を循環路9に配置してなり、一方、第2の液状媒体供給経路4はタンク10、ポンプ11、熱交換器12、プランジャ13を循環路である液状媒体供給経路4に配置してなる。
非多糖スラリーをチャンバー2を介して第2の液状媒体供給経路4を循環させる。具体的にはポンプ11を用いてタンク10内の非多糖スラリを熱交換器12、プランジャ13を通過させて液状媒体供給経路4内を循環させる。一方、多糖スラリーをチャンバー2を介して多糖スラリ供給経路3内を循環させる。具体的にはポンプ8を用いてタンク7内の多糖スラリをビニルホース、ゴムホース等を用いて形成された循環路9内を循環させる。
以上のプロセスを反復する過程で多糖スラリ供給経路3内を循環してチャンバー2内を流通する多糖スラリ及び第2の液状媒体供給経路4を循環する非多糖スラリ中の多糖が徐々に解繊されて、用途に応じた解繊度合いの均一性の高いセルロースナノ繊維が得られる。
市販のフーリエ変換赤外分光光度計を用いて、カルボキシル基がセルロースへ導入されたことを確認することができる。また、得られたIRスペクトル中のカルボニルのピーク(1700cm-1付近)強度により、カルボニル基の導入の程度を確認する。
本発明のCNF分散液は、CNFが水中に均一に分散しており、肉眼で観察した場合にその外観は、透明な液である。CNF分散液の透明度は、波長660nmの光の透過率を分光光度計で測定することにより表すことができる。本発明のCNF分散液の濃度0.1%における波長660nmにおける透過率は、95%以上、好ましくは98%以上である。
走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を適宜選択し、繊維長を観察・測定する。繊維長は、得られた写真から20本以上を選択し、測定する。
平均繊維長の測定方法と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を適宜選択し、CNFを観察・測定する。繊維長は、得られた写真から20本以上を選択し、測定する。
(実施例1)
所定時間経過後、アセトン、純水の順で各数回ずつそれぞれの溶剤へ分散、ろ過を繰り返すことで洗浄を行い、濾液のpHが7になるまで純水での洗浄を行った。洗浄終了後、1M NaOHを反応分散液へ添加してpH11とした。その後、pHが7になるまで純水で洗浄を繰り返した。
次いで、洗浄後の分散液を0.1%濃度に調製した無水マレイン酸化パルプの水分散液をノズル径120μm、噴射圧200MPaで、パス数1,3,5,10,15,20,25,30,60パスの条件で水中対抗衝突法(以下、ACC処理という)により解繊して、マレイン酸化CNF分散液を得た。
(比較例1)
さらに、実施例1の広葉樹由来マレイン酸化CNF分散液(30パス)の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。その結果をそれぞれ図6に示す。
(実施例2)
(比較例2)
(実施例3)
(比較例3)
カルボキシル基導入工程後のエステル化パルプについて、FT-IRを用いて測定した。測定条件は、スキャン回数16回、波数範囲400〜4000cm-1とした。得られたIRスペクトルから竹パルプ含水率0%、反応時間1時間を基準として、各種パルプにおけるカルボニル強度の比率を算出した。結果を表1に示す。
また、竹由来パルプ含水率18%と含水率46.8%のIRスペクトル結果を比較するとカルボキシル基の導入量は、含水率46.8%の方が大きいことが分かった。
Claims (3)
- 水混合液にした多糖に対し、50〜400MPa程度の高圧水を衝突させ、解繊処理して得られるCNF分散液の製造方法であって、
前記解繊処理の前に、α−セルロース含有率60〜99質量%であって、含水量が10〜51%であるパルプに、前記パルプ中のα−セルロース固形分量100質量部に対するカルボキシル基を有する化合物の質量割合が、10〜500質量部である2つ以上のカルボキシル基を有する化合物により、カルボキシル基を導入するカルボキシル基導入工程と、
前記カルボキシル基導入工程後のパルプを洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程後のパルプをアルカリ溶液で処理するアルカリ処理工程と、
前記アルカリ処理工程後のパルプを洗浄する洗浄工程とを有することを特徴とするCNF分散液の製造方法。 - 請求項1に記載のパルプは、シート形状又はマット形状であることを特徴とする請求項1に記載のCNF分散液の製造方法。
- 前記洗浄工程後のパルプは、パルプ懸濁液であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCNF分散液の製造方法。
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