以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内方とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外方とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、子午断面図で見た場合、タイヤ径方向の最も外方側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向主溝20が複数形成されており、周方向主溝20に交差するラグ溝30(図2参照)が複数形成されている。トレッド面3には、これらの複数の周方向主溝20やラグ溝30によって複数の陸部10が画成されている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内方側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配設されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内方側には、ビード部50が位置しており、ビード部50は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されている。即ち、ビード部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配設されている。一対のビード部50のそれぞれにはビードコア51が設けられており、それぞれのビードコア51のタイヤ径方向外方にはビードフィラー55が設けられている。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー55は、後述するカーカス6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外方側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
トレッド部2のタイヤ径方向内方には、ベルト層7が設けられている。ベルト層7は、例えば、4層のベルト7a,7b,7c,7dを積層した多層構造をなし、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。また、ベルト7a,7b,7c,7dは、タイヤ周方向に対するベルトコードのタイヤ幅方向の傾斜角として定義されるベルト角度が互いに異なっており、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。
このベルト層7のタイヤ径方向内方、及びサイドウォール部5のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス6が連続して設けられている。このカーカス6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア51間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス6は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部50のうち、一方のビード部50から他方のビード部50にかけて配設されており、ビードコア51及びビードフィラー55を包み込むようにビード部50でビードコア51に沿ってタイヤ幅方向外方に巻き返されている。このように配設されるカーカス6のカーカスプライは、スチール材から成るカーカスコードであるスチールコードが用いられ、複数のスチールコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。即ち、カーカス6は、スチールカーカス材を使用して構成されている。
また、カーカス6の内方側、或いは、当該カーカス6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス6に沿って形成されている。
図2は、図1のA−A矢視図である。トレッド面3に形成される周方向主溝20としては、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配設され、タイヤ周方向に延びる一対の内側周方向主溝21と、タイヤ幅方向において一対の内側周方向主溝21のそれぞれの外側に配設され、溝幅が内側周方向主溝21の溝幅よりも狭く、タイヤ周方向に延びる一対の外側周方向主溝25とが設けられている。つまり、内側周方向主溝21は、2本の内側周方向主溝21がタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配設され、外側周方向主溝25は、2本の外側周方向主溝25がタイヤ幅方向において2本の内側周方向主溝21を挟んで2本の内側周方向主溝21のタイヤ幅方向における両側に配設されている。これらの内側周方向主溝21と外側周方向主溝25とは、それぞれタイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し振幅しており、即ち、内側周方向主溝21と外側周方向主溝25とは、共にジグザグ状に形成されている。
なお、内側周方向主溝21は、溝幅が6mm以上15mm以下の範囲内になっており、溝深さが10mm以上18mm以下の範囲内になっている。また、外側周方向主溝25は、溝幅が4mm以上12mm以下の範囲内になっており、溝深さが6mm以上18mm以下の範囲内になっている。
トレッド面3には、周方向主溝20の他に、タイヤ幅方向に延びるラグ溝30が複数設けられている。ラグ溝30としては、センターラグ溝31と中間ラグ溝41とショルダーラグ溝42とが設けられている。このうち、センターラグ溝31は、タイヤ幅方向における一対の内側周方向主溝21同士の間に配設されて、両端が一対の内側周方向主溝21に接続されるラグ溝30になっている。また、中間ラグ溝41は、タイヤ幅方向において隣り合う内側周方向主溝21と外側周方向主溝25との間に配設され、両端が内側周方向主溝21と外側周方向主溝25とに接続されるラグ溝30になっている。また、ショルダーラグ溝42は、外側周方向主溝25のタイヤ幅方向における外側に配設され、一端が外側周方向主溝25に接続されるラグ溝30になっている。これらのセンターラグ溝31、中間ラグ溝41、ショルダーラグ溝42は、それぞれ複数がタイヤ周方向に並んで設けられている。また、センターラグ溝31、中間ラグ溝41、ショルダーラグ溝42のタイヤ周方向におけるピッチと、内側周方向主溝21及び外側周方向主溝25のタイヤ幅方向への振幅のタイヤ周方向におけるピッチは、同じ大きさになっている。
なお、センターラグ溝31は、溝幅が4mm以上9mm以下の範囲内になっており、溝深さが9mm以上18mm以下の範囲内になっている。また、中間ラグ溝41は、溝幅が4mm以上9mm以下の範囲内になっており、溝深さが2mm以上16mm以下の範囲内になっている。また、ショルダーラグ溝42は、溝幅が4mm以上16mm以下の範囲内になっており、溝深さが2mm以上16mm以下の範囲内になっている。
センターラグ溝31と中間ラグ溝41とは、共通の内側周方向主溝21に接続されるが、内側周方向主溝21に接続される部分のタイヤ周方向における位置が、センターラグ溝31と中間ラグ溝41とで異なっている。同様に、中間ラグ溝41とショルダーラグ溝42とは、共通の外側周方向主溝25に接続されるが、外側周方向主溝25に接続される部分のタイヤ周方向における位置が、中間ラグ溝41とショルダーラグ溝42とで異なっている。
トレッド面3に形成される陸部10は、これらの複数のラグ溝30と複数の周方向主溝20とにより、センターブロック11と中間ブロック12とショルダーブロック13とが画成されている。このうち、センターブロック11は、隣り合うセンターラグ溝31と一対の内側周方向主溝21とにより画成される陸部10になっており、これにより、センターブロック11は、タイヤ赤道面CL上に位置している。また、中間ブロック12は、隣り合う内側周方向主溝21及び外側周方向主溝25と、隣り合う中間ラグ溝41とにより画成される陸部10になっている。また、ショルダーブロック13は、タイヤ幅方向における外側周方向主溝25の外側に設けられ、隣り合うショルダーラグ溝42により区画されると共にタイヤ幅方向における内側部分が外側周方向主溝25によって区画される陸部10になっている。即ち、ショルダーブロック13は、外側周方向主溝25とショルダーラグ溝42とにより画成される。これらのセンターブロック11、中間ブロック12、ショルダーブロック13は、それぞれ複数がタイヤ周方向に並んで設けられている。
また、中間ブロック12とショルダーブロック13とには、一端が外側周方向主溝25に接続され、他端が中間ブロック12内またはショルダーブロック13内で終端する切欠き部45が形成されている。即ち、中間ブロック12には、一端が外側周方向主溝25に接続され、他端が中間ブロック12内で終端する切欠き部45である中間切欠き部46が形成されている。また、ショルダーブロック13には、一端が外側周方向主溝25に接続され、他端がショルダーブロック13内で終端する切欠き部45であるショルダー切欠き部47が形成されている。
図3は、図2のB部詳細図である。陸部10を区画するラグ溝30のうち、センターラグ溝31は、複数の位置で屈曲することにより、タイヤ周方向に延びる周方向延在部33と、タイヤ幅方向に延びる幅方向延在部34とを有している。この場合における周方向延在部33は、センターラグ溝31における、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が45°以下となって形成される部分をいい、幅方向延在部34は、センターラグ溝31における、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が45°を超えて形成される部分をいう。
具体的には、1つのセンターラグ溝31は、屈曲する部分である屈曲部32を2箇所有しており、2箇所の屈曲部32で屈曲することによりクランク状の形状で形成されている。また、センターラグ溝31は、トレッド面3への開口部のエッジ部35、即ち、溝幅方向の両側のエッジ部35が、共にセンターブロック11内で終端せずに、一対の内側周方向主溝21同士の間に亘って形成されている。つまり、センターラグ溝31は、センターブロック11内に突出してセンターブロック11内で終端する突き出し部を有しておらず、突き出し部を有することなく、クランク状の形状で一対の内側周方向主溝21同士の間に亘って形成されている。
クランク状のセンターラグ溝31は、2箇所の屈曲部32に挟まれた位置が、周方向延在部33として形成されている。周方向延在部33は、タイヤ赤道面CL上に形成されており、タイヤ周方向に対して所定の範囲内でタイヤ幅方向に傾斜している。タイヤ周方向に対する周方向延在部33の傾斜角度は、0°以上15°以下の範囲内になっている。なお、周方向延在部33は、全ての部分がタイヤ赤道面CL上に位置していなくてもよく、一部の位置がタイヤ赤道面CL上に位置し、他の部分はタイヤ赤道面CL上に位置していなくてもよい。
また、幅方向延在部34は、周方向延在部33の端部からタイヤ幅方向に延びることにより、周方向延在部33の端部と内側周方向主溝21、即ち、屈曲部32と内側周方向主溝21とを接続している。詳しくは、幅方向延在部34は、各センターラグ溝31の2箇所に設けられており、2箇所の幅方向延在部34は、互いに異なる屈曲部32と、一対の内側周方向主溝21における異なる内側周方向主溝21とを接続している。その際に、幅方向延在部34は、内側周方向主溝21における、タイヤ幅方向内側に向かって凸となって屈曲する位置と、屈曲部32とを接続している。
また、2箇所の幅方向延在部34は、それぞれタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向における同じ方向に傾斜している。詳しくは、幅方向延在部34は、当該幅方向延在部34と共に屈曲部32を構成する周方向延在部33が、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜する側と同じ側に、周方向延在部33の傾斜角度とは異なる角度で傾斜している。また、1つのセンターラグ溝31が有する2箇所の幅方向延在部34の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度は、ほぼ同じ角度になっている。
また、センターブロック11におけるセンターラグ溝31の屈曲部32の劣角側の位置には、トレッド面3から凹むことにより形成される屈曲部凹部36が設けられている。この屈曲部凹部36は、屈曲部32を構成する周方向延在部33と幅方向延在部34との双方に接続されており、周方向延在部33及び幅方向延在部34から連続して、トレッド面3から凹んで形成されている。屈曲部凹部36は、センターブロック11における屈曲部32の劣角側の部分に施される面取りにより形成されており、屈曲部凹部36の深さ方向に見た場合に、屈曲部32を1つの角とし、周方向延在部33に接続される部分と幅方向延在部34に接続される部分とをそれぞれ辺とする略三角形の形状で形成されている。
つまり、屈曲部凹部36は、トレッド面3における屈曲部32の劣角側の部分が、屈曲部32から所定の大きさで周方向延在部33と幅方向延在部34との間にかけて除去されることにより構成されている。本実施形態では、屈曲部凹部36は、周方向延在部33に接続される部分と幅方向延在部34に接続される部分とが等しい長さで形成されている。なお、屈曲部凹部36は、トレッド面3からの深さが、1mm以上8mm以下の範囲内で形成されており、センターラグ溝31の溝深さの10%以上50%以下の範囲内で形成されている。
また、センターブロック11は、タイヤ幅方向における最大幅BWが、トレッド展開幅TWに対して、0.2≦(BW/TW)≦0.5の範囲内になっている、即ち、センターブロック11は、タイヤ幅方向における最大幅BWが、トレッド展開幅TWの20%以上50%以下の範囲内となって形成されている。この場合におけるトレッド展開幅TWは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして規定内圧で空気入りタイヤ1内に空気を充填し、荷重を加えない無負荷状態のときの、トレッド部2の展開図におけるタイヤ幅方向の両端の直線距離をいう。
なお、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、センターブロック11のタイヤ幅方向における最大幅BWは、トレッド展開幅TWの30%以上40%以下の範囲内であるのが好ましい。
図4は、図2のB部詳細図であり、センターラグ溝の角度とラップ領域についての説明図である。センターラグ溝31は、屈曲部32の劣角の角度αが、50°以上90°以下の範囲内となって形成されている。つまり、センターラグ溝31は、屈曲部32で交わる周方向延在部33と幅方向延在部34との、それぞれの溝幅の中心線同士の相対的な角度αが、50°以上90°以下の範囲内になっている。なお、このセンターラグ溝31の屈曲部32の劣角の角度αは、60°以上80°以下の範囲内であるのが好ましい。
また、センターブロック11は、センターブロック11を画成するセンターラグ溝31がクランク状の形状で形成されることにより、タイヤ周方向に隣り合うセンターブロック11同士でタイヤ周方向における位置が同じ位置になる領域であるラップ領域16を有している。つまり、センターブロック11は、センターラグ溝31がクランク状の形状で形成されるため、タイヤ周方向における端部が、タイヤ周方向に凹凸を有して形成されており、タイヤ周方向に凸となる部分は、突出部15として形成されている。
また、タイヤ周方向において隣り合うセンターブロック11同士は、対向する突出部15同士のタイヤ幅方向における位置が異なる位置になり、突出部15同士の少なくとも一部のタイヤ周方向における位置が、同じ位置となって配設されている。このように、タイヤ周方向において隣り合うセンターブロック11同士における、タイヤ周方向における位置が同じ位置になる領域が、ラップ領域16となっている。ラップ領域16は、タイヤ周方向における長さRLが、センターブロック11のタイヤ周方向における長さBLに対して、0.1≦(RL/BL)≦0.4の範囲内になっている。
図5は、図2のC部詳細図である。それぞれタイヤ周方向に延びる内側周方向主溝21と外側周方向主溝25とは、外側周方向主溝25の溝幅W2よりも、内側周方向主溝21の溝幅W1の方が大きくなっている。詳しくは、内側周方向主溝21と外側周方向主溝25とは、内側周方向主溝21の溝幅W1と外側周方向主溝25の溝幅W2との関係が0.55≦(W2/W1)≦0.75の範囲内になっており、即ち、(W2/W1)が0.55以上0.75以下となる関係になっている。なお、この内側周方向主溝21の溝幅W1と外側周方向主溝25の溝幅W2との関係は、0.60≦(W2/W1)≦0.70の範囲内であるのが好ましい。
また、隣り合う内側周方向主溝21と外側周方向主溝25との間に配設される中間ラグ溝41は、内側周方向主溝21における、タイヤ幅方向外側に凸となって屈曲する位置に一端が接続され、外側周方向主溝25における、タイヤ幅方向内側に凸となって屈曲する位置に他端が接続されている。また、ショルダーラグ溝42は、タイヤ幅方向における内側の端部が、外側周方向主溝25における、タイヤ幅方向外側に凸となって屈曲する位置に接続されている。
これらの中間ラグ溝41とショルダーラグ溝42とは、共にタイヤ幅方向に対して、タイヤ周方向に傾斜している。中間ラグ溝41とショルダーラグ溝42との、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向は、センターラグ溝31が有する幅方向延在部34の、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向の反対方向になっている。即ち、中間ラグ溝41とショルダーラグ溝42とは、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が同じ方向になっている。
また、中間ブロック12に形成される切欠き部45である中間切欠き部46は、外側周方向主溝25における中間切欠き部46が接続される側の反対側に接続されるショルダーラグ溝42の延長線上に設けられている。また、ショルダーブロック13に形成される切欠き部45であるショルダー切欠き部47は、外側周方向主溝25におけるショルダー切欠き部47が接続される側の反対側に接続される中間ラグ溝41の延長線上に設けられている。
また、センターブロック11は、接地面積が中間ブロック12やショルダーブロック13の接地面積よりも大きくなっている。換言すると、中間ブロック12やショルダーブロック13は、センターブロック11よりも接地面積が小さくなっており、例えば、中間ブロック12は、接地面積が、センターブロック11の接地面積の0.55倍以上0.75倍以下の範囲内となって形成されている。なお、センターブロック11の接地面積に対する中間ブロック12の接地面積は、0.60倍以上0.70倍以下であるのが好ましい。また、ショルダーブロック13は、接地面積が、センターブロック11の接地面積の0.50倍以上0.60倍以下の範囲内となって形成されている。なお、センターブロック11の接地面積に対するショルダーブロック13の接地面積は、0.52倍以上0.58倍以下であるのが好ましい。
これらのように構成される本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、用途が重荷重用空気入りタイヤになっている。この空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で車両に装着する。リムホイールにリム組みした状態の空気入りタイヤ1は、例えばトラックやバス等の大型の車両に装着して使用される。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。このため、空気入りタイヤ1の接地領域における接地面積は、車両の走行時における操縦安定性に対して重要な要素となる。
本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、中間ブロック12の接地面積が、センターブロック11の接地面積の0.55倍以上0.75倍以下の範囲内となっており、ショルダーブロック13の接地面積が、センターブロック11の接地面積の0.50倍以上0.60倍以下の範囲内になっている。このため、乾燥した路面での操縦安定性や、耐偏摩耗性を向上させることができる。
つまり、空気入りタイヤ1は、トレッド面3のタイヤ幅方向における中心付近、即ち、トレッド面3におけるタイヤ赤道面CL付近の接地荷重が大きくなり易くなっているため、この大きな接地荷重を受けるために、センターブロック11の接地面積は、中間ブロック12やショルダーブロック13の接地面積よりも大きい方が好ましい。このため、中間ブロック12の接地面積がセンターブロック11の接地面積の0.75倍を超えていたり、ショルダーブロック13の接地面積がセンターブロック11の接地面積の0.60倍を超えていたりする場合は、タイヤ赤道面CL付近の接地荷重に対して適切なセンターブロック11の接地面積を確保できなくなる。この場合、センターブロック11の剛性が低くなるため、乾燥した路面の走行時における直進走行付近の操縦安定性を確保できなくなる。また、センターブロック11は、中間ブロック12やショルダーブロック13と比較して大きな荷重を受け易いため、センターブロック11の剛性が低い場合は、中間ブロック12やショルダーブロック13よりも摩耗し易くなり、偏摩耗が発生する。
一方で、中間ブロック12の接地面積がセンターブロック11の接地面積の0.55倍未満であったり、ショルダーブロック13の接地面積がセンターブロック11の接地面積の0.50倍未満であったりする場合は、中間ブロック12やショルダーブロック13の接地面積が小さ過ぎるため、中間ブロック12やショルダーブロック13の剛性が低くなり過ぎることになる。この場合、接地領域におけるタイヤ幅方向の端部寄りの位置に作用する荷重を、適切に受けることができなくなり、これにより、乾燥した路面の走行時における旋回時の操縦安定性を確保できなくなる。また、中間ブロック12やショルダーブロック13の剛性が低すぎる場合は、中間ブロック12やショルダーブロック13は、センターブロック11よりも摩耗し易くなり、偏摩耗が発生する。
これに対し、中間ブロック12の接地面積がセンターブロック11の接地面積の0.55倍以上0.75倍以下の範囲内で、ショルダーブロック13の接地面積がセンターブロック11の接地面積の0.50倍以上0.60倍以下の範囲内である場合は、センターブロック11、中間ブロック12、ショルダーブロック13のいずれかも、タイヤ幅方向における配置位置に応じた剛性を確保することができる。つまり、センターブロック11、中間ブロック12、ショルダーブロック13のいずれかも、車両走行時にトレッド面3への作用の仕方が変化する接地荷重に応じた剛性を確保することができる。これにより、乾燥した路面の走行時における操縦安定性を向上させることができ、また、偏摩耗を抑制することができる。
また、濡れた路面の走行時には、トレッド面3と路面との間の水を、周方向主溝20やラグ溝30等の溝によって排水しながら走行する。即ち、トレッド面3の路面との間の水が、周方向主溝20やラグ溝30等の溝内に流れ込むことにより、トレッド面3と路面との間の水は、双方の間から排出される。これにより、トレッド面3は路面に接地し易くなり、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、濡れた路面を走行する際における操縦安定性を確保することができる。
一方、溝に入り込んだ水は、溝に沿って溝内を流れることにより、トレッド面3の接地領域の外に排出される。例えば、ラグ溝30内の水は、ラグ溝30が接続される周方向主溝20に流れ、周方向主溝20に沿ってタイヤ周方向に移動することにより、接地領域の外に排出される。ラグ溝30内の水は、このように周方向主溝20に流れることにより排水されるが、センターブロック11を画成するセンターラグ溝31は、エッジ部35がセンターブロック11内で終端せずに一対の内側周方向主溝21同士の間に亘って形成されている。即ち、センターラグ溝31は、センターブロック11内で終端する突き出し部を有することなく、両端が内側周方向主溝21に接続されている。
このため、センターラグ溝31内に入り込んだ水は、突き出し部で滞留することなく、センターラグ溝31に沿って内側周方向主溝21に流れることができ、センターブロック11と路面との間の水を排出することができる。これにより、トレッド面3におけるタイヤ赤道面CL付近の水を効果的に排水することができ、車両の走行時に接地し易い、タイヤ赤道面CL付近の領域であるセンター領域の水を効果的に排水することができる。従って、トレッド面3のセンター領域が接地し易くなるため、濡れた路面を走行する際における操縦安定性を向上させることができる。これらの結果、ドライ性能と耐偏摩耗性とを向上させると共に、ウェット性能を向上させることができる。
また、内側周方向主溝21と外側周方向主溝25とは、内側周方向主溝21の溝幅W1と外側周方向主溝25の溝幅W2との関係が0.55≦(W2/W1)≦0.75の範囲内であるため、より確実にドライ性能とウェット性能とを向上させることができる。つまり、(W2/W1)<0.55である場合は、内側周方向主溝21の溝幅W1が大き過ぎるため、センターブロック11の接地面積が小さくなる等、センター領域の接地面積を確保し難くなる可能性がある。この場合、センターブロック11の剛性を確保し難くなり、乾いた路面での操縦安定性を向上させ難くなる可能性がある。また、(W2/W1)>0.75である場合は、内側周方向主溝21の溝幅W1が小さ過ぎるため、センターブロック11と路面との間の水を排水し難くなる等、センター領域の排水性を確保し難くなる可能性がある。この場合、濡れた路面での操縦安定性を向上させ難くなる可能性がある。これに対し、内側周方向主溝21の溝幅W1と外側周方向主溝25の溝幅W2との関係が、0.55≦(W2/W1)≦0.75の範囲内である場合は、より確実にセンターブロック11の剛性を確保しつつ、センター領域の排水性を確保することができる。この結果、より確実にドライ性能とウェット性能とを向上させることができる。
また、中間ブロック12には中間切欠き部46が形成され、ショルダーブロック13にはショルダー切欠き部47が形成されているため、これらの切欠き部45によってエッジ成分を増加させることができる。これにより、濡れた路面の走行時に、中間切欠き部46とショルダー切欠き部47とのエッジ効果により、路面に対するトレッド面3の摩擦力を増加させることができる。この結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
また、センターラグ溝31は、2箇所の屈曲部32を有しているため、センターラグ溝31によって画成する、センターラグ溝31のタイヤ周方向の両側に位置するセンターブロック11同士が、ラップ領域16を有している。つまり、ラップ領域16は、タイヤ周方向において隣り合うセンターブロック11の突出部15同士によって構成されるが、双方の突出部15は、それぞれのセンターブロック11の蹴り出し側端部17(図4参照)、または踏み込み側端部18(図4参照)を有している。このため、タイヤ周方向において隣り合うセンターブロック11の突出部15同士が、ラップ領域16を構成することにより、タイヤ周方向において隣り合うセンターブロック11同士では、一方のセンターブロック11の蹴り出し側端部17と、他方のセンターブロック11の踏み込み側端部18とが、それぞれ相手側のセンターブロック11のタイヤ周方向における中心寄りの位置に位置する状態になる。これにより、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1を装着して車両の走行時に、タイヤ回転方向において隣り合うセンターブロック11同士では、タイヤ回転方向における前側に位置するセンターブロック11の蹴り出し側端部17が路面から離れる前に、タイヤ回転方向における後ろ側に位置するセンターブロック11の踏み込み側端部18が路面に接地することになる。これにより、センターブロック11のヒール&トウ摩耗を抑制することができる。
つまり、一般的に、ヒール&トウ摩耗は、車両の走行時に、蹴り出し側端部17が路面から離れる際に、路面に対して滑ることにより摩耗し、踏み込み側端部18よりも蹴り出し側端部17の方が、より多く摩耗することによって発生する。これに対し、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、タイヤ回転方向における前側に位置するセンターブロック11の蹴り出し側端部17が路面から離れる前に、タイヤ回転方向における後ろ側に位置するセンターブロック11の踏み込み側端部18が路面に接地する。このため、タイヤ回転方向における前側に位置するセンターブロック11の蹴り出し側端部17が路面から離れる際に、滑りが発生し難くなり、摩耗し難くなる。このため、センターブロック11は、蹴り出し側端部17と踏み込み側端部18とで、摩耗に進行速度が同程度になり、ヒール&トウ摩耗が発生し難くなる。この結果、より確実に耐偏摩耗性を向上させることができる。
〔実施形態2〕
実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、トレッド面3に細溝60が形成される点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図6は、実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド面の平面図である。実施形態2に係る空気入りタイヤ1では、陸部10に細溝60が形成されている。細溝60は、溝深さが1.0mm以上3.0mm以下で、溝幅が1.0mm以上3mm以下の範囲内になっている。細溝60としては、センターブロック11に形成されるセンター細溝61と、中間ブロック12に形成される中間細溝68とが設けられている。このうち、センター細溝61は、両端が一対の内側周方向主溝21に接続され、2箇所以上の屈曲部62を有しており、センター細溝61の両端は、それぞれ内側周方向主溝21における、タイヤ幅方向外側に凸となって屈曲する位置に接続されている。また、センター細溝61が有する屈曲部62は、具体的には、各センター細溝61の4箇所に形成されており、4箇所の屈曲部62は、交互に反対方向に屈曲している。
これにより、センター細溝61は、一方の端部から他方の端部に向けて、階段状の形状で形成されており、4箇所の屈曲部62で屈曲することにより、センター細溝61は、タイヤ周方向に延びる周方向延在部63と、タイヤ幅方向に延びる幅方向延在部64とを有している。つまり、センター細溝61は、タイヤ幅方向における両端側に位置して内側周方向主溝21に接続される2本の幅方向延在部64と、2本の幅方向延在部64同士の間に位置する1本の幅方向延在部64との3本の幅方向延在部64を有しており、タイヤ幅方向に隣接する幅方向延在部64同士を、周方向延在部63で接続する形状で形成されている。幅方向延在部64と周方向延在部63との接続部分が、屈曲部62になっている。
なお、この場合における周方向延在部63は、センター細溝61における、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が45°以下となって形成される部分をいい、幅方向延在部64は、センター細溝61における、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が45°を超えて形成される部分をいう。
また、センター細溝61は、内側周方向主溝21への接続部と屈曲部62との間の範囲が、センターラグ溝31における同じ内側周方向主溝21への接続部と屈曲部32との間の範囲に対して、略平行に形成されている。即ち、センター細溝61は、内側周方向主溝21に接続される幅方向延在部64と、センターラグ溝31における、同じ内側周方向主溝21に接続される幅方向延在部34に対して、略平行に形成されている。なお、この場合における略平行とは、相対的な角度が5°以下となる状態をいう。
また、中間ブロック12に形成される中間細溝68は、一端が内側周方向主溝21に接続され、他端が中間切欠き部46に接続されており、内側周方向主溝21に接続される側の端部は、内側周方向主溝21における、タイヤ幅方向内側に凸となって屈曲する位置に接続されている。詳しくは、中間細溝68は、内側周方向主溝21と中間切欠き部46との間に位置し、中間切欠き部46と同様にショルダーラグ溝42の延長線上に、ショルダーラグ溝42や中間ラグ溝41と略平行に形成されている。つまり、中間細溝68は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、中間ラグ溝41のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向と同じ方向になり、タイヤ幅方向に対する傾斜角度が、中間ラグ溝41のタイヤ幅方向に対する傾斜角度とほぼ同じ大きさとなって、タイヤ周方向に傾斜している。
また、センター細溝61と中間細溝68とは、それぞれセンターブロック11と中間ブロック12とを分割している。つまり、センター細溝61は、センターブロック11を2つの領域70にタイヤ周方向に分割しており、中間細溝68は、中間切欠き部46とにより中間ブロック12を2つの領域75にタイヤ周方向に分割している。センターブロック11と中間ブロック12とは、センター細溝61によって分割された2つの領域70の面積と、中間細溝68によって分割された2つの領域75の面積とが、所定の関係を有している。
詳しくは、センターブロック11における、センター細溝61によって分割された2つの領域70である第1領域71と第2領域72とのうち、面積が小さい側の領域70の面積をSc1とし、面積が大きい側の領域70の面積をSc2とする。また、中間ブロック12における、中間細溝68と中間切欠き部46とによって分割された2つの領域75である第1領域76と第2領域77とのうち、面積が小さい側の領域75の面積をSm1とし、面積が大きい側の領域75の面積をSm2とする。この場合に、センターブロック11と中間ブロック12とは、0.55≦(Sm1/Sc1)≦0.75の範囲内で、且つ、0.50≦(Sm2/Sc2)≦0.70の範囲内となって形成されている。
本実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、中間ブロック12に中間細溝68が形成されるため、中間細溝68によってエッジ成分を増加させることができる。これにより、濡れた路面の走行時に、中間細溝68のエッジ効果により、路面に対するトレッド面3の摩擦力を増加させることができる。この結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
また、センター細溝61がセンターブロック11に形成されているため、センター細溝61によってエッジ成分を増加させることができる。これにより、濡れた路面の走行時に、センター細溝61のエッジ効果により、路面に対するトレッド面3の摩擦力を増加させることができる。また、センター細溝61は2箇所以上の屈曲部62を有し、これにより周方向延在部63と幅方向延在部64とを有しているため、複数の方向に対してエッジ効果を発揮することができ、複数の方向の摩擦力を増加させることができる。この結果、より確実にウェット性能を向上させることができる。
また、センター細溝61の屈曲部62は4箇所であるため、センターラグ溝31が屈曲している場合でも、センター細溝61がセンターラグ溝31に対して近くなり過ぎることを抑制することができる。つまり、センターラグ溝31とセンター細溝61との双方が屈曲部32、62を有する場合、双方の屈曲部32、62の位置によっては、センターラグ溝31とセンター細溝61との距離が近すぎる部分が発生する可能性がある。この場合、センターブロック11は、センターラグ溝31とセンター細溝61との距離が近い部分の剛性が低くなるため、乾燥した路面での操縦安定性を確保し難くなったり、剛性が低い部分で偏摩耗が発生し易くなったりする可能性がある。
これに対し、本実施形態2では、センター細溝61の屈曲部62は4箇所であるため、それぞれの屈曲部62の位置を、センターラグ溝31の形状に応じて適宜設定することにより、センター細溝61の形状を、センターラグ溝31に対して近くなり過ぎる部分が発生しない形状にすることができる。これにより、センターブロック11において、剛性が低い部分が発生することを抑制することができるため、より確実に、乾燥した路面での操縦安定性を確保したり、偏摩耗の発生を抑制したりすることができる。この結果、より確実にドライ性能と耐偏摩耗性とを向上させることができる。
また、センター細溝61によって2つの領域70に分割されるセンターブロック11と、中間細溝68によって2つの領域75に分割される中間ブロック12とは、各領域70、75の面積が、0.55≦(Sm1/Sc1)≦0.75の範囲内で、且つ、0.50≦(Sm2/Sc2)≦0.70の範囲内であるため、分割された領域70、75同士の間で、所定の関係の面積比を維持することができる。これにより、細溝60により分割された領域70、75が、面積比が大きくなり過ぎることに起因して剛性差が大きくなり過ぎ、偏摩耗が発生することを抑制することができる。この結果、細溝60によって向上させるウェット性能と、耐偏摩耗性とを両立することができる。
なお、上述した実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、センターラグ溝31は、2箇所の屈曲部32で屈曲することによりクランク状に形成されているが、センターラグ溝31は、クランク状以外の形状で形成されていてもよい。センターラグ溝31は、2箇所以上の屈曲部32を有していればよい。センターラグ溝31は、2箇所以上の屈曲部32を有することにより、複数の方向に対してエッジ効果を発揮することができ、ウェット性能を向上させることができる。
また、上述した実施形態2に係る空気入りタイヤ1では、センター細溝61は4箇所の屈曲部62が設けられているが、センター細溝61の屈曲部62は、4箇所以外でもよい。図7は、実施形態2に係る空気入りタイヤの変形例であり、センター細溝の屈曲部が2箇所の場合の説明図である。センター細溝61の屈曲部62は、図7に示すように2箇所であってもよい。即ち、センター細溝61は、センターラグ溝31と同様にクランク状に形成されていてもよい。センター細溝61は、タイヤ周方向において隣り合うセンターラグ溝31同士の間隔が大きい場合など、センター細溝61とセンターラグ溝31との距離を確保できる場合には、屈曲部62は4箇所以外でもよい。また、センターラグ溝31の屈曲部32は、角部として形成されていなくてもよく、例えば、図7に示すように、曲線状、或いは円弧状に形成されていてもよい。
また、上述した実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、センターブロック11と中間ブロック12とに細溝60が形成されているが、細溝60は、これ以外の形態で設けられていてもよい。細溝60は、センターブロック11と中間ブロック12とショルダーブロック13との、少なくともいずれかの1つのブロックに設けられることにより、エッジ成分を増加させることができ、ウェット性能を向上させることができる。
〔実施例〕
図8A〜図8Cは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例及び比較例の空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、乾燥した路面での加速性能であるドライ加速性能についての試験と、濡れた路面での加速性能であるウェット加速性能についての試験と、耐偏摩耗性についての試験とについて行った。
これらの性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが275/80R22.5サイズでロードインデックスが151Jの空気入りタイヤ1をJATMAで規定される規定リムのリムホイールにリム組みし、空気圧をJATMAで規定される最大空気圧に調整し、2−Dの試験車両(トラクターヘッド)に装着してテスト走行をすることにより行った。
各試験項目の評価方法は、ドライ加速性能については、ドライ路面での5〜40km/hの速度区間の加速度を測定し、平均加速度を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほどドライ加速性能が優れていることを示している。ウェット加速性能については、ウェット路面での5〜20km/hの速度区間の加速度を測定し、平均加速度を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほどウェット加速性能が優れていることを示している。耐偏摩耗性については、市場モニターで50,000km走行後のヒール&トウ摩耗の摩耗量、つまり、ブロックの蹴り出し側と踏み込み側との摩耗量の差を測定し、測定した摩耗量の差を、後述する従来例を100とする指数で表示した。この数値が大きいほどヒール&トウ摩耗の摩耗量が少なく、耐偏摩耗性に優れていることを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜15と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例の17種類の空気入りタイヤについて行った。これらの空気入りタイヤ1のうち、従来例の空気入りタイヤは、内側周方向主溝21よりも外側周方向主溝25の方が溝幅が広く、センターラグ溝31は、センターブロック11内で終端する突き出し部を有している。また、比較例の空気入りタイヤは、外側周方向主溝25よりも内側周方向主溝21の方が溝幅が広く、センターラグ溝31は、センターブロック11内で終端する突き出し部を有していないものの、中間ブロック12の接地面積が、センターブロック11の接地面積の0.55倍未満になっており、また、ショルダーブロック13の接地面積が、センターブロック11の接地面積の0.60倍よりも大きくなっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜15は、外側周方向主溝25よりも内側周方向主溝21の方が溝幅が広く、センターラグ溝31は、センターブロック11内で終端する突き出し部を有しておらず、中間ブロック12の接地面積が、センターブロック11の接地面積の0.55倍以上0.75倍以下になっており、ショルダーブロック13の接地面積が、センターブロック11の接地面積の0.50倍以上0.60倍以下になっている。さらに、実施例1〜15に係る空気入りタイヤ1は、内側周方向主溝21の溝幅W1に対する外側周方向主溝25の溝幅W2、外側周方向主溝25に接続される切欠き部45の有無、内側周方向主溝21に接続されるセンター細溝61の有無、センター細溝61の2箇所以上の屈曲部62の有無、内側周方向主溝21と中間切欠き部46に接続される中間細溝68の有無、センター細溝61と中間細溝68とによって分割されるセンターブロック11と中間ブロック12の領域70、71の面積比(Sm1/Sc1)、(Sm2/Sc2)が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図8A〜図8Cに示すように、実施例1〜15の空気入りタイヤ1は、従来例や比較例に対して、ドライ加速性能と耐偏摩耗性とウェット加速性能とが、全て向上することが分かった。つまり、実施例1〜15に係る空気入りタイヤ1は、ドライ性能と耐偏摩耗性とを向上させると共に、ウェット性能を向上させることができる。