以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内方とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外方とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤの要部を示す子午断面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、子午断面図で見た場合、タイヤ径方向の最も外方側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ周方向に延びる周方向溝20が複数形成されており、周方向溝20に交差するラグ溝30(図2参照)が複数形成されている。トレッド面3には、これらの複数の周方向溝20やラグ溝30によって複数の陸部10が画成されている。
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内方側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配設されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配設されている。
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内方側には、ビード部50が位置しており、ビード部50は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配設されている。即ち、ビード部50は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配設されている。一対のビード部50のそれぞれにはビードコア51が設けられており、それぞれのビードコア51のタイヤ径方向外方にはビードフィラー55が設けられている。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー55は、後述するカーカス6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外方側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
トレッド部2のタイヤ径方向内方には、ベルト層7が設けられている。ベルト層7は、例えば、4層のベルト71,72,73,74を積層した多層構造をなし、スチール、またはポリエステルやレーヨンやナイロン等の有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。また、ベルト71,72,73,74は、タイヤ周方向に対するベルトコードの繊維方向の傾斜角として定義されるベルト角度が互いに異なっており、ベルトコードの繊維方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。
このベルト層7のタイヤ径方向内方、及びサイドウォール部5のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス6が連続して設けられている。このカーカス6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配設されるビードコア51間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス6は、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部50のうち、一方のビード部50から他方のビード部50にかけて配設されており、ビードコア51及びビードフィラー55を包み込むようにビード部50でビードコア51に沿ってタイヤ幅方向外方に巻き返されている。このように配設されるカーカス6のカーカスプライは、スチール材から成るカーカスコードであるスチールコードが用いられ、複数のスチールコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成されている。即ち、カーカス6は、スチールカーカス材を使用して構成されている。
また、カーカス6の内方側、或いは、当該カーカス6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス6に沿って形成されている。
図2は、図1のA−A矢視図である。トレッド面3に形成される周方向溝20としては、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配設され、タイヤ周方向に延びる一対の内側周方向溝21と、タイヤ幅方向において一対の内側周方向溝21のそれぞれの外側に配設され、タイヤ周方向に延びる一対の外側周方向溝25とが設けられている。つまり、内側周方向溝21は、2本の内側周方向溝21がタイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に配設され、外側周方向溝25は、2本の外側周方向溝25がタイヤ幅方向において2本の内側周方向溝21を挟んで2本の内側周方向溝21のタイヤ幅方向における両側に配設されている。これらの内側周方向溝21と外側周方向溝25とは、それぞれタイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に繰り返し振幅しており、即ち、内側周方向溝21と外側周方向溝25とは、共にジグザグ状に形成されている。
なお、内側周方向溝21は、溝幅が6mm以上15mm以下の範囲内になっており、溝深さが10mm以上18mm以下の範囲内になっている。また、外側周方向溝25は、溝幅が4mm以上12mm以下の範囲内になっており、溝深さが6mm以上18mm以下の範囲内になっている。また、内側周方向溝21と外側周方向溝25とは、外側周方向溝25の溝幅W2(図4参照)よりも、内側周方向溝21の溝幅W1(図4参照)の方が大きくなっている。詳しくは、内側周方向溝21と外側周方向溝25とは、内側周方向溝21の溝幅W1と外側周方向溝25の溝幅W2との関係が0.5≦(W2/W1)≦0.9になっており、即ち、(W2/W1)が0.5以上0.9以下となる関係になっている。また、内側周方向溝21の溝幅W1と外側周方向溝25の溝幅W2との関係は、好ましくは0.6≦(W2/W1)≦0.8の範囲内であるのが好ましい。
トレッド面3には、周方向溝20の他に、タイヤ幅方向に延びるラグ溝30が複数設けられている。ラグ溝30としては、センターラグ溝31と中間ラグ溝35とショルダーラグ溝36とが設けられている。このうち、センターラグ溝31は、タイヤ幅方向における一対の内側周方向溝21同士の間に配設されて、両端が一対の内側周方向溝21に接続されるラグ溝30になっている。また、中間ラグ溝35は、タイヤ幅方向において隣り合う内側周方向溝21と外側周方向溝25との間に配設され、両端が内側周方向溝21と外側周方向溝25とに接続されるラグ溝30になっている。また、ショルダーラグ溝36は、外側周方向溝25のタイヤ幅方向における外側に配設され、一端が外側周方向溝25に接続されるラグ溝30になっている。これらのセンターラグ溝31、中間ラグ溝35、ショルダーラグ溝36は、それぞれ複数がタイヤ周方向に並んで設けられている。また、センターラグ溝31、中間ラグ溝35、ショルダーラグ溝36のタイヤ周方向におけるピッチと、内側周方向溝21及び外側周方向溝25のタイヤ幅方向への振幅のタイヤ周方向におけるピッチは、同じ大きさになっている。
なお、センターラグ溝31は、溝幅が4mm以上9mm以下の範囲内になっており、溝深さが9mm以上18mm以下の範囲内になっている。また、中間ラグ溝35は、溝幅が4mm以上9mm以下の範囲内になっており、溝深さが2mm以上16mm以下の範囲内になっている。また、ショルダーラグ溝36は、溝幅が4mm以上16mm以下の範囲内になっており、溝深さが2mm以上16mm以下の範囲内になっている。
センターラグ溝31と中間ラグ溝35とは、共通の内側周方向溝21に接続されるが、内側周方向溝21に接続される部分のタイヤ周方向における位置が、センターラグ溝31と中間ラグ溝35とで異なっている。同様に、中間ラグ溝35とショルダーラグ溝36とは、共通の外側周方向溝25に接続されるが、外側周方向溝25に接続される部分のタイヤ周方向における位置が、中間ラグ溝35とショルダーラグ溝36とで異なっている。
トレッド面3に形成される陸部10は、これらの複数のラグ溝30と複数の周方向溝20とにより、センターブロック11と中間ブロック12とショルダーブロック13とが画成されている。このうち、センターブロック11は、隣り合うセンターラグ溝31と一対の内側周方向溝21とにより画成される陸部10になっており、これにより、センターブロック11は、タイヤ赤道面CL上に位置している。また、中間ブロック12は、隣り合う内側周方向溝21及び外側周方向溝25と、隣り合う中間ラグ溝35とにより画成される陸部10になっている。また、ショルダーブロック13は、タイヤ幅方向における外側周方向溝25の外側に設けられ、隣り合うショルダーラグ溝36により区画されると共にタイヤ幅方向における内側部分が外側周方向溝25によって区画される陸部10になっている。即ち、ショルダーブロック13は、外側周方向溝25とショルダーラグ溝36とにより画成される。これらのセンターブロック11、中間ブロック12、ショルダーブロック13は、それぞれ複数がタイヤ周方向に並んで設けられている。
これらの陸部10のうち、センターブロック11及び中間ブロック12には、センターブロック11または中間ブロック12を分割する細溝60が形成されている。即ち、センターブロック11には、センターブロック11を分割する細溝60であるセンター細溝61が形成されており、中間ブロック12には、中間ブロック12を分割する細溝60である中間細溝68が形成されている。細溝60は、溝幅が1.0mm以上2.5mm以下の範囲内になっており、溝深さが1.0mm以上2.5mm以下の範囲内になっている。
また、中間ブロック12とショルダーブロック13とには、一端が外側周方向溝25に接続され、他端が中間ブロック12内またはショルダーブロック13内で終端する切欠き部45が形成されている。即ち、中間ブロック12には、一端が外側周方向溝25に接続され、他端が中間ブロック12内で終端する切欠き部45である中間切欠き部46が形成されている。また、ショルダーブロック13には、一端が外側周方向溝25に接続され、他端がショルダーブロック13内で終端する切欠き部45であるショルダー切欠き部47が形成されている。
図3は、図2のB部詳細図である。陸部10を区画するラグ溝30のうち、センターラグ溝31は、複数の位置で屈曲することにより、タイヤ周方向に延びる周方向延在部33と、タイヤ幅方向に延びる幅方向延在部34とを有している。具体的には、1つのセンターラグ溝31は、屈曲する部分である屈曲部32を2箇所有しており、2箇所の屈曲部32で屈曲することによりクランク状の形状で形成されている。センターラグ溝31は、この2箇所の屈曲部32に挟まれた位置が、周方向延在部33として形成されている。周方向延在部33は、タイヤ赤道面CL上に形成されており、タイヤ周方向に対して所定の範囲内でタイヤ幅方向に傾斜している。タイヤ周方向に対する周方向延在部33の傾斜角度は、0°以上15°以下の範囲内になっている。なお、周方向延在部33は、全ての部分がタイヤ赤道面CL上に位置していなくてもよく、一部の位置がタイヤ赤道面CL上に位置し、他の部分はタイヤ赤道面CL上に位置していなくてもよい。
また、幅方向延在部34は、周方向延在部33の端部からタイヤ幅方向に延びることにより、周方向延在部33の端部と内側周方向溝21、即ち、屈曲部32と内側周方向溝21とを接続している。詳しくは、幅方向延在部34は、各センターラグ溝31の2箇所に設けられており、2箇所の幅方向延在部34は、互いに異なる屈曲部32と、一対の内側周方向溝21における異なる内側周方向溝21とを接続している。その際に、幅方向延在部34は、内側周方向溝21における、タイヤ幅方向内側に向かって凸となって屈曲する位置と、屈曲部32とを接続している。
また、2箇所の幅方向延在部34は、それぞれタイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ周方向における同じ方向に傾斜している。詳しくは、幅方向延在部34は、当該幅方向延在部34と共に屈曲部32を構成する周方向延在部33が、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜する側と同じ側に、周方向延在部33の傾斜角度とは異なる角度で傾斜している。また、1つのセンターラグ溝31が有する2箇所の幅方向延在部34の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度は、ほぼ同じ角度になっている。
また、センターブロック11におけるセンターラグ溝31の屈曲部32の劣角側の位置には、トレッド面3から凹むことにより形成される屈曲部凹部40が設けられている。この屈曲部凹部40は、屈曲部32を構成する周方向延在部33と幅方向延在部34との双方に接続されており、周方向延在部33及び幅方向延在部34から連続して、トレッド面3から凹んで形成されている。屈曲部凹部40は、センターブロック11における屈曲部32の劣角側の部分に施される面取りにより形成されており、屈曲部凹部40の深さ方向に見た場合に、屈曲部32を1つの角とし、周方向延在部33に接続される部分と幅方向延在部34に接続される部分とをそれぞれ辺とする略三角形の形状で形成されている。
つまり、屈曲部凹部40は、トレッド面3における屈曲部32の劣角側の部分が、屈曲部32から所定の大きさで周方向延在部33と幅方向延在部34との間にかけて除去されることにより構成されている。本実施形態では、屈曲部凹部40は、周方向延在部33に接続される部分と幅方向延在部34に接続される部分とが等しい長さで形成されている。なお、屈曲部凹部40は、トレッド面3からの深さが、1mm以上8mm以下の範囲内で形成されており、センターラグ溝31の溝深さの10%以上50%以下の範囲内で形成されている。
さらに、センターラグ溝31は、幅方向延在部34の延長線上に設けられると共に、一端が屈曲部32に接続され、他端がセンターブロック11内で終端するセンター切欠き部38を有している。このセンター切欠き部38は、溝幅が幅方向延在部34の溝幅と同じ大きさで、溝深さが幅方向延在部34の溝深さと同じ深さとなる溝状の形状で形成されている。このため、換言すると、幅方向延在部34とセンター切欠き部38と周方向延在部33とは、幅方向延在部34とセンター切欠き部38とからなる1つの溝の途中に、周方向延在部33の端部が接続された形態で構成されている。
また、センター切欠き部38は、センターラグ溝31が有する2箇所の幅方向延在部34のそれぞれの延長線上に設けられているため、1つのセンターラグ溝31は、センター切欠き部38も2箇所に有している。2箇所のセンター切欠き部38は、幅方向延在部34の延長線の方向において屈曲部32から延びる方向が互いに反対方向になっており、このため、2箇所のセンター切欠き部38は、タイヤ幅方向における位置が互いに異なっている。
これらのように、センターラグ溝31の屈曲部32に接続されるセンター切欠き部38は、幅方向延在部34の形成方向に沿った方向の長さELが、タイヤ幅方向におけるセンターブロック11の幅Wの10%以上20%以下の範囲内で形成されている。この場合におけるセンター切欠き部38の長さELは、屈曲部32を構成する周方向延在部33と幅方向延在部34とにおける、優角側の辺同士の接続部分から、センター切欠き部38の延在方向における長さになっている。
また、センター切欠き部38と屈曲部凹部40とは、共通の屈曲部32に接続される屈曲部凹部40の開口面積A1とセンター切欠き部38の開口面積A2との関係が3≦(A2/A1)≦6になっており、即ち、(A2/A1)が3以上6以下となる関係になっている。
センターブロック11に形成されるセンター細溝61は、センターブロック11をタイヤ周方向に分割する幅方向細溝62と、センターブロック11をタイヤ幅方向に分割する周方向細溝63とを有している。このうち、幅方向細溝62は、一端がセンターラグ溝31に接続され、他端が内側周方向溝21に接続されている。詳しくは、幅方向細溝62は、センターラグ溝31のセンター切欠き部38と内側周方向溝21との間に位置し、センターラグ溝31の幅方向延在部34と略平行に形成されている。つまり、幅方向細溝62は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、幅方向延在部34のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向と同じ方向になり、タイヤ幅方向に対する傾斜角度が、幅方向延在部34のタイヤ幅方向に対する傾斜角度とほぼ同じ大きさとなって、タイヤ周方向に傾斜している。
幅方向細溝62は、このようにセンター切欠き部38と内側周方向溝21との間に位置して幅方向延在部34に略平行に形成されることにより、双方の間にかけて延び、両端がセンター切欠き部38と内側周方向溝21とに接続されている。その際に、幅方向細溝62は、内側周方向溝21における、タイヤ幅方向外側に凸となって屈曲する位置に接続されている。また、幅方向細溝62は、このように両端がセンターラグ溝31と内側周方向溝21とに接続されることにより、センターブロック11を、幅方向細溝62の溝幅方向における一方側の領域と他方側の領域とに分割しており、即ち、センターブロック11をタイヤ周方向に分割している。
なお、幅方向細溝62は、必ずしもタイヤ幅方向に対して傾斜していなくてもよく、タイヤ幅方向に沿って延びて形成されていてもよい。幅方向細溝62は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度α1が、90°±20°の範囲内、即ち、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度α1が、70°以上110°以下の範囲内になっていればよく、好ましくは、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度α1が、90°±15°の範囲内で形成されていればよい。換言すると、幅方向細溝62は、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜角度が、0°以上20°以下の範囲内で形成されていればよい。
1つのセンターブロック11は、タイヤ周方向に隣り合う2つのセンターラグ溝31がそれぞれ2つずつ有する幅方向延在部34、即ち4つの幅方向延在部34のうち、互いに他方のセンターラグ溝31が位置する側の反対側に位置する2つの幅方向延在部34によって、タイヤ周方向における位置が区画されている。このため、1つのセンターブロック11のタイヤ周方向における範囲内には、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝31が有する、合計4つの幅方向延在部34のうち、他方のセンターラグ溝31寄りに位置する2つの幅方向延在部34が位置している。幅方向細溝62は、センターブロック11のタイヤ周方向における範囲内に位置する2つの幅方向延在部34の延長線上に設けられるセンター切欠き部38と内側周方向溝21との間に位置するため、幅方向細溝62は、1つのセンターブロック11に2つが設けられている。
また、センター細溝61が有する周方向細溝63は、複数の位置で屈曲し、隣り合うセンターラグ溝31に両端が接続されている。詳しくは、周方向細溝63は、2箇所の屈曲部64を有しており、この2箇所の屈曲部64で屈曲することにより、クランク状に形成されている。クランク状の周方向細溝63において、屈曲部64と周方向細溝63の端部との間の部分は、タイヤ周方向に延びる周方向部65として形成されており、2箇所の屈曲部64同士の間の部分は、タイヤ幅方向に延びる幅方向部66として形成されている。このうち、周方向部65は、幅方向部66の長さ方向における両側の2箇所に設けられており、2箇所の周方向部65は、幅方向部66における異なる端部から、タイヤ周方向における互いに反対方向に延びている。このため、2箇所の周方向部65は、タイヤ幅方向における位置が互いに異なる位置に形成されている。
2箇所の周方向部65は、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝31同士の、それぞれのセンター切欠き部38に接続されている。つまり、1つのセンターラグ溝31が有する2箇所のセンター切欠き部38は、タイヤ幅方向における位置が互いに異なっている。また、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝31がそれぞれ有する2箇所のセンター切欠き部38のうち、タイヤ周方向において互いに他方のセンターラグ溝31が位置する側に位置するセンター切欠き部38同士も、タイヤ幅方向における位置が互いに異なっている。
タイヤ幅方向における位置が互いに異なる位置に形成され、幅方向部66からタイヤ周方向において互いに反対方向に延びる2箇所の周方向部65は、タイヤ幅方向における位置が、幅方向部66側からそれぞれの周方向部65が向かう方向側に位置するセンター切欠き部38が配設される、タイヤ幅方向における範囲内に位置している。2箇所の周方向部65は、タイヤ幅方向における位置が、このようにセンター切欠き部38が配設されるタイヤ幅方向における範囲内に位置して、センター切欠き部38に接続されることにより、隣り合うセンターラグ溝31のそれぞれのセンター切欠き部38に接続されている。これにより、周方向細溝63は、隣り合うセンターラグ溝31のセンター切欠き部38に両端が接続されている。また、周方向細溝63は、このように両端が、隣り合うセンターラグ溝31にそれぞれ接続されることにより、センターブロック11を、周方向細溝63の溝幅方向における一方側の領域と他方側の領域とに分割しており、即ち、センターブロック11をタイヤ幅方向に分割している。
つまり、センターブロック11は、2つの幅方向細溝62により、タイヤ周方向に並ぶ3つの小ブロック11aに分割され、さらに、3つの小ブロック11aのうち、タイヤ周方向における中央に位置する小ブロック11aが、周方向細溝63によって2つの小ブロック11aにタイヤ幅方向に分割されている。これにより、1つのセンターブロック11は、4つの小ブロック11aに分割されている。幅方向細溝62と周方向細溝63とからなるセンター細溝61により分割されたセンターブロック11の4つの小ブロック11aは、面積が同程度の大きさになっており、4つの小ブロック11aは、相対的な面積の比率が互いに±20%の範囲内になっている。つまり、4つの小ブロック11aは、面積が最も大きい小ブロック11aの面積と、面積が最も小さい小ブロック11aの面積との比率が、他方に対して±20%の範囲内になっている。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向における両側がセンターラグ溝31によって区画されるセンターブロック11とセンターラグ溝31とセンター細溝61とが主に含まれる領域であるセンター領域CA内の接地面積比率が、30%以上70%以下の範囲内で形成されている。この場合におけるセンター領域CAは、タイヤ幅方向におけるセンターブロック11の中心であるセンターブロック中心BCを中心とし、センターブロック11のタイヤ幅方向における幅Wの10%の領域になっている。即ち、センター領域CAは、センターブロック中心BCからタイヤ幅方向における両側に、タイヤ幅方向におけるセンターブロック11の幅Wのそれぞれ5%となる範囲の領域になっている。
また、この場合におけるセンターブロック中心BCは、センターブロック11のタイヤ幅方向における両側で、タイヤ幅方向において最も外方側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における中心となる位置をいう。本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センターブロック中心BCは、タイヤ赤道面CL上に位置しており、センターブロック中心BCは、タイヤ幅方向における位置がタイヤ赤道面CLの位置と同じ位置になっている。また、センターブロック11の幅Wは、センターブロック11のタイヤ幅方向における両側で、タイヤ幅方向において最も外方側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における距離になっている。
また、接地面積比率は、センター領域CAの面積に対する、実際に接地するトレッド面3の面積をいう。センターラグ溝31が有する周方向延在部33は、センター領域CA内に位置している。実際に空気入りタイヤ1が接地する際には、空気入りタイヤ1はタイヤ周方向上におけるいずれかの位置が接地し、接地面積比率は接地する部分ごとに異なるが、いずれの位置が接地した場合においても、センター領域CA内の接地面積比率は、30%以上70%以下の範囲内になっている。また、センター領域CA内の接地面積比率は、好ましくは40%以上60%以下の範囲内であるのが好ましい。
また、センターブロック11は、タイヤ幅方向における幅Wが、トレッド展開幅TWの20%以上40%以下の範囲内で形成されている。この場合におけるトレッド展開幅TWは、空気入りタイヤ1を規定リムにリム組みして規定内圧で空気入りタイヤ1内に空気を充填し、荷重を加えない無負荷状態のときの、トレッド部2の展開図におけるタイヤ幅方向の両端の直線距離をいう。
なお、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、センターブロック11のタイヤ幅方向における幅Wは、好ましくはトレッド展開幅TWの25%以上35%以下の範囲内であるのが好ましい。
また、センターブロック11は、タイヤ周方向における長さLとタイヤ幅方向における幅Wとの比率が、0.9≦(L/W)≦1.1の範囲内となって形成されている。つまり、センターブロック11は、タイヤ周方向における長さLが、タイヤ幅方向における幅Wに対して0.9倍以上1.1倍以下となる形状で形成されている。この場合におけるセンターブロック11の長さLは、センターブロック11における、タイヤ周方向において最も離間している部分同士のタイヤ周方向における距離になっている。
また、センターブロック11は、面積が中間ブロック12やショルダーブロック13の面積よりも大きくなっている。換言すると、中間ブロック12やショルダーブロック13は、センターブロック11よりも面積が小さくなっており、例えば、ショルダーブロック13は、面積が、センターブロック11の面積の40%以上60%未満の範囲内となって形成されている。なお、センターブロック11の面積に対するショルダーブロック13の面積は、45%以上55%以下であるのが好ましい。また、中間ブロック12は、面積が、センターブロック11の面積の55%以上75%以下の範囲内となって形成されている。
センターブロック11は、タイヤ幅方向における幅Wが、ベルト層7のタイヤ幅方向における最大幅である最大ベルト幅BWの25%以上45%以下の範囲内となって形成されている。ここでいう最大ベルト幅BWは、ベルト層7を構成する複数のベルト71,72,73,74のタイヤ幅方向両側のそれぞれの端部において、タイヤ幅方向における位置が最も外方側に位置する端部同士のタイヤ幅方向における距離になっている。また、最大ベルト幅BWに対するセンターブロック11のタイヤ幅方向における幅Wは、好ましくは30%以上40%以下の範囲内であるのが好ましい。
図4は、図2のC部詳細図である。隣り合う内側周方向溝21と外側周方向溝25との間に配設される中間ラグ溝35は、内側周方向溝21における、タイヤ幅方向外側に凸となって屈曲する位置に一端が接続され、外側周方向溝25における、タイヤ幅方向内側に凸となって屈曲する位置に他端が接続されている。また、ショルダーラグ溝36は、タイヤ幅方向における内側の端部が、外側周方向溝25における、タイヤ幅方向外側に凸となって屈曲する位置に接続されている。
また、中間ブロック12に形成される切欠き部45である中間切欠き部46は、外側周方向溝25における中間切欠き部46が接続される側の反対側に接続されるショルダーラグ溝36の延長線上に設けられている。この中間切欠き部46は、ショルダーラグ溝36の延在方向における長さMLが、外側周方向溝25の溝幅W2の150%以上300%以下の範囲内で形成されている。
また、ショルダーブロック13に形成される切欠き部45であるショルダー切欠き部47は、外側周方向溝25におけるショルダー切欠き部47が接続される側の反対側に接続される中間ラグ溝35の延長線上に設けられている。このショルダー切欠き部47は、中間ラグ溝35の延在方向における長さSLが、外側周方向溝25の溝幅W2の100%以上300%以下の範囲内で形成されている。
また、中間ラグ溝35とショルダーラグ溝36とは、共にタイヤ幅方向に対して、タイヤ周方向に傾斜しており、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向は、センターラグ溝31が有する幅方向延在部34の、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向の反対方向になっている。詳しくは、中間ラグ溝35は、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜角度が、0°以上15°以下の範囲内で形成されている。換言すると、中間ラグ溝35は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度β1が、75°以上105°以下の範囲内で形成されており、即ち、中間ラグ溝35は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度β1が90°±15°の範囲内で形成されている。なお、タイヤ周方向に対する中間ラグ溝35の傾斜角度β1は、好ましくは90°±10°の範囲内であるのが好ましい。
また、ショルダーラグ溝36は、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、中間ラグ溝35のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向と同じ方向になっている。これらの中間ラグ溝35とショルダーラグ溝36とは、中間ラグ溝35の、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度β1と、ショルダーラグ溝36の、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度β2と、の関係が、0°≦|β2−β1|≦10°の範囲内となって形成されている。
中間ブロック12に形成される中間細溝68は、一端が内側周方向溝21に接続され、他端が中間切欠き部46に接続されている。詳しくは、中間細溝68は、内側周方向溝21と中間切欠き部46との間に位置し、中間切欠き部46と同様にショルダーラグ溝36の延長線上に、ショルダーラグ溝36や中間ラグ溝35と略平行に形成されている。つまり、中間細溝68は、タイヤ幅方向に延びつつ、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、中間ラグ溝35のタイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向と同じ方向になり、タイヤ幅方向に対する傾斜角度が、中間ラグ溝35のタイヤ幅方向に対する傾斜角度とほぼ同じ大きさとなって、タイヤ周方向に傾斜している。
中間細溝68は、このように内側周方向溝21と中間切欠き部46との間に位置して中間ラグ溝35に略平行に形成されることにより、双方の間にかけて延び、両端が内側周方向溝21と中間切欠き部46とに接続されている。その際に、中間細溝68は、内側周方向溝21における、タイヤ幅方向内側に凸となって屈曲する位置に接続されている。また、中間細溝68は、このように両端が内側周方向溝21と中間切欠き部46とに接続されることにより、中間ブロック12を、中間細溝68の溝幅方向における一方側の領域と他方側の領域とに分割しており、即ち、中間ブロック12をタイヤ周方向に分割している。
つまり、中間ブロック12は、中間細溝68により、タイヤ周方向に並ぶ2つの小ブロック12aに分割されている。中間細溝68により分割された中間ブロック12の2つの小ブロック12aは、面積が同程度の大きさになっており、2つの小ブロック12aは、相対的な面積の比率が他方に対して互いに±8%の範囲内になっている。
なお、中間細溝68は、必ずしもタイヤ幅方向に対して傾斜していなくてもよく、タイヤ幅方向に沿って延びて形成されていてもよい。中間細溝68は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度α2が、90°±20°の範囲内、即ち、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度α2が、70°以上110°以下の範囲内になっていればよく、好ましくは、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度α2が、90°±15°の範囲内で形成されていればよい。換言すると、中間細溝68は、タイヤ幅方向に対するタイヤ周方向への傾斜角度が、0°以上20°以下の範囲内で形成されていればよい。
これらのように構成される本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、用途が重荷重用空気入りタイヤになっている。この空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、リムホイールにリム組みしてインフレートした状態で車両に装着する。リムホイールにリム組みした状態の空気入りタイヤ1は、例えばトラックやバス等の大型の車両に装着して使用される。
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、トレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。このため、空気入りタイヤ1の接地領域における接地面積は、車両の走行時における操縦安定性に対して重要な要素となる。一方で、雪道を走行する際には、周方向溝20やラグ溝30での雪柱せん断力やエッジ効果を多用して走行するため、接地領域における溝面積も重要な要素になる。
本実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センターブロック11には、センターブロック11を分割するセンター細溝61が形成され、中間ブロック12には、中間ブロック12を分割する中間細溝68が形成されているため、これらの細溝60によってもエッジ効果を確保することができる。また、中間ブロック12には中間切欠き部46が形成され、ショルダーブロック13にはショルダー切欠き部47が形成されているため、周方向溝20やラグ溝30のみでなく、これらの切欠き部45によっても雪柱せん断力を確保することができる。これらにより、雪道を走行する際における接地面と雪面との間の抵抗を、細溝60でのエッジ効果や切欠き部45での雪柱せん断力によって確保することができるため、雪道を走行する際における操縦安定性を向上させることができる。
また、トラックやバス等の大型の車両では、貨物の積載状態によって車両の総重量が大きく変化し、これに伴い、空気入りタイヤ1に作用する荷重も大きく変化する。空気入りタイヤ1に作用する荷重が大きく変化した場合、空気入りタイヤ1の接地領域の形状が変化し、荷重が大きくなるに従って接地領域が大きくなる。つまり、空気入りタイヤ1に作用する荷重が大きくなるに従って、空気入りタイヤ1の接地領域は、タイヤ幅方向とタイヤ周方向とのいずれの方向にも大きくなる。
しかし、トレッド面3のタイヤ幅方向における中心付近、即ち、トレッド面3におけるタイヤ赤道面CL付近は、空気入りタイヤ1に作用する荷重の大きさに関わらず、車両の走行時に接地する。本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面CLの両側に内側周方向溝21が配設されてタイヤ赤道面CL上にセンターブロック11が位置することにより、タイヤ赤道面CL付近の接地面積が確保されている。これにより、空気入りタイヤ1に作用する荷重の大きさに関わらず、乾燥した路面を走行する際における操縦安定性を確保することができる。
また、センターラグ溝31は、複数の位置で屈曲しているため、センターラグ溝31の容積やエッジの長さを確保することができ、雪道を走行する際におけるタイヤ赤道面CL付近での雪柱せん断力やエッジ効果を確保することができる。このため、空気入りタイヤ1に作用する荷重の大きさに関わらず、雪道を走行する際における接地面と雪面との間の抵抗を、継続的に確保することができ、雪道を走行する際における操縦安定性を向上させることができる。
さらに、トレッド面3は、センター領域CA内の接地面積比率が30%以上70%以下であるため、空気入りタイヤ1に作用する荷重の大きさに関わらず、乾燥した路面を走行する際における接地面積を確保することができ、且つ、雪道を走行する際における雪面と接地面との間の抵抗を確保することができる。つまり、センター領域CA内の接地面積比率が30%未満の場合は、荷重が小さい場合における接地面積が小さくなるため、操縦安定性の確保が困難になり、センター領域CA内の接地面積比率が70%を超える場合は、荷重が小さい場合における溝面積が小さくなるため、接地面と雪面との間の抵抗の確保が困難になる。これに対し、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、センター領域CA内の接地面積比率が30%以上70%以下の範囲内で形成されているため、空気入りタイヤ1に作用する荷重が小さい場合における接地面積を確保しつつ、接地面と雪面との間の抵抗を確保することができる。これらの結果、ドライ性能とスノー性能とを向上させることができる。また、貨物の積載状態に関わらず、即ち、空車や積車に関わらず、ドライ性能とスノー性能とを共に向上させることができ、特に、空車時のドライ性能とスノー性能とを向上させることができる。
また、センター細溝61が有する幅方向細溝62と、中間細溝68とは、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が90°±20°の範囲内であるため、より確実にタイヤ周方向に対するエッジ成分を向上させることができ、即ち、タイヤ回転方向に対するエッジ成分を向上させることができる。つまり、幅方向細溝62や中間細溝68の、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が90°±20°を超える場合は、タイヤ幅方向に対する幅方向細溝62や中間細溝68の角度が大き過ぎるため、幅方向細溝62や中間細溝68のエッジ効果を、タイヤ回転方向に対して効果的に発揮し難くなる可能性がある。これに対し、幅方向細溝62や中間細溝68の、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が90°±20°の範囲内である場合は、幅方向細溝62や中間細溝68のエッジ効果を、タイヤ回転方向に対してより確実に発揮することができる。これにより、雪道を走行する際における接地面と雪面との間の抵抗をより確実に向上させることができるため、いわゆるスノートラクション性能をより確実に向上させることができる。この結果、より確実にスノー性能を向上させることができる。
また、センター細溝61が有する幅方向細溝62は、一端がセンターラグ溝31に接続され、他端が内側周方向溝21に接続されるため、センターブロック11の面積を大幅に小さくすることなく、センターラグ溝31の幅方向延在部34のエッジ効果と同じ方向のエッジ効果を向上させることができる。これにより、接地面積を確保することができるため、乾燥した路面を走行する際における操縦安定性を確保しつつ、スノートラクション性能を確保することができる。この結果、より確実にドライ性能とスノー性能とを向上させることができる。
また、センター細溝61が有する周方向細溝63は、複数の位置で屈曲し、隣り合うセンターラグ溝31に両端が接続されるため、センターブロック11の面積を大幅に小さくすることなく、タイヤ幅方向とタイヤ周方向とのいずれの方向についても、エッジ効果を向上させることができる。これにより、接地面積を確保することができるため、乾燥した路面を走行する際における操縦安定性を確保しつつ、スノートラクション性能を確保することができ、さらに、雪上での旋回性能を確保することができるため、雪道を走行する際における操縦安定性を向上させることができる。この結果、より確実にドライ性能とスノー性能とを向上させることができる。
また、センター細溝61が有する周方向細溝63は、隣り合うセンターラグ溝31のセンター切欠き部38に両端が接続されるため、センターブロック11の剛性の低下を抑えつつ、エッジ成分を増加させることができる。つまり、周方向細溝63が、例えば、センターラグ溝31が有する幅方向延在部34の長さ方向における中央付近の位置に接続された場合、センターブロック11に大きな荷重が作用した際に、幅方向延在部34における周方向細溝63が接続されている位置の両側で、センターブロック11が変形し易くなる。即ち、センターブロック11における幅方向延在部34が形成されている位置付近は、センターブロック11に大きな荷重が作用した際に、比較的大きな応力が発生し易くなっているが、幅方向延在部34に周方向細溝63が接続された場合には、さらに大きな応力が発生し易くなり、センターブロック11が変形し易くなる。この場合、センターブロック11のブロック剛性が低下することになるため、乾燥した路面を走行する際における操縦安定性が低下する可能性がある。
一方、センター切欠き部38は、幅方向延在部34の端部に配設されているため、センターブロック11に大きな荷重が作用した場合でも、センター切欠き部38が設けられている付近では、大きな応力は発生し難くなっている。このため、センター切欠き部38に周方向細溝63を接続しても、センターブロック11に大きな荷重が作用した際におけるセンター切欠き部38付近の応力は大きくなり難いため、センター切欠き部38付近の変形は小さくなる。これにより、センターブロック11のブロック剛性を確保することができるため、乾燥した路面を走行する際における操縦安定性を確保することができる。従って、乾燥した路面を走行する際における操縦安定性を確保しつつ、エッジ成分を増加させることによって雪道を走行する際における操縦安定性を向上させることができる。この結果、より確実にドライ性能とスノー性能とを向上させることができる。
また、細溝60は、溝幅が1.0mm以上2.5mm以下の範囲内であるため、センターブロック11や中間ブロック12の接地面積と細溝60での排雪性とを、共に確保することができる。つまり、細溝60の溝幅が1.0mm未満である場合は、溝幅が狭過ぎるため、細溝60での排雪性を確保するのが困難になり、スノー性能を向上させるのが困難になる可能性がある。また、細溝60の溝幅が2.5mmを超える場合は、溝幅が広過ぎるため、センターブロック11や中間ブロック12の接地面積が小さくなり、ドライ性能を向上させるのが困難になる可能性がある。これに対し、細溝60の溝幅が1.0mm以上2.5mm以下の範囲内である場合は、センターブロック11や中間ブロック12の接地面積を確保しつつ、細溝60での排雪性を確保することができる。この結果、より確実にドライ性能とスノー性能とを向上させることができる。
また、細溝60は、溝深さが1.0mm以上2.5mm以下の範囲内であるため、センターブロック11や中間ブロック12のブロック剛性と細溝60での排雪性とを、共に確保することができる。つまり、細溝60の溝深さが1.0mm未満である場合は、溝深さが浅過ぎるため、細溝60での排雪性を確保するのが困難になり、スノー性能を向上させるのが困難になる可能性がある。また、細溝60の溝深さが2.5mmを超える場合は、溝深さが深過ぎるため、センターブロック11や中間ブロック12のブロック剛性が低くなり、ドライ性能を向上させるのが困難になる可能性がある。これに対し、細溝60の溝深さが1.0mm以上2.5mm以下の範囲内である場合は、センターブロック11や中間ブロック12のブロック剛性を確保しつつ、細溝60での排雪性を確保することができる。この結果、より確実にドライ性能とスノー性能とを向上させることができる。
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1を重荷重用空気入りタイヤとして用いることにより、貨物の積載状態により空気入りタイヤ1に作用する荷重が大きく変化する場合でも、荷重の大きさに関わらず、ドライ性能とスノー性能とを共に向上させることができる。この結果、本実施形態に係る空気入りタイヤ1をトラックやバス等の大型の車両に装着した場合における車両の走行性能を向上させることができる。
なお、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター細溝61が有する周方向細溝63は、端部がセンターラグ溝31のセンター切欠き部38に接続されているが、周方向細溝63は、センター切欠き部38以外に接続されていてもよい。周方向細溝63は、例えばセンターラグ溝31の幅方向延在部34に接続されていてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター細溝61が有する周方向細溝63は、2箇所の屈曲部64で屈曲することによりクランク状に形成されているが、周方向細溝63は、クランク状以外の形状で形成されていてもよい。周方向細溝63は、例えば、タイヤ周方向に延びる直線状の形状で形成されていてもよく、また、タイヤ周方向に延びつつタイヤ幅方向に振幅するジグザグ状、或いは波状の形状で形成されていてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター細溝61が有する周方向細溝63は、タイヤ周方向に隣り合うセンターラグ溝31同士の間に1本が設けられているが、周方向細溝63は、センターラグ溝31同士の間に複数が設けられていてもよい。周方向細溝63は、センターブロック11をタイヤ幅方向に分割することができれば、配設される位置や数、形状は問わない。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター細溝61が有する幅方向細溝62は、一端がセンターラグ溝31に接続され、他端が内側周方向溝21に接続されているが、幅方向細溝62は、これ以外の位置に接続されていてもよい。幅方向細溝62は、例えば、両端が、それぞれ異なる内側周方向溝21に接続されていてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、センター細溝61が有する幅方向細溝62は、1つのセンターブロック11に2本が設けられているが、幅方向細溝62は、1つのセンターブロック11に1本が設けられていてもよく、または3本以上が設けられていてもよい。幅方向細溝62は、センターブロック11をタイヤ周方向に分割することができれば、配設される位置や数、形状は問わない。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、中間細溝68は、1つの中間ブロック12に1本が設けられているが、中間細溝68は、1つの中間ブロック12に複数が設けられていてもよい。また、中間細溝68は、中間ブロック12をタイヤ周方向に分割するように設けられているが、中間細溝68は、中間ブロック12をタイヤ周方向に分割するのみでなく、中間ブロック12をタイヤ幅方向にも分割するように設けられていてもよい。中間細溝68は、中間ブロック12を複数の小ブロック12aに分割することができれば、配設される位置や数、形状は問わない。
〔実施例〕
図5A、図5Bは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、乾燥した路面での加速性能であるドライ加速性能についての試験と、雪上での加速性能であるスノー加速性能についての試験とについて行った。
これらの性能評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが275/80R22.5サイズでロードインデックスが151Jの空気入りタイヤ1をJATMAで規定される規定リムのリムホイールにリム組みし、空気圧をJATMAで規定される最大空気圧に調整し、2−Dの試験車両(トラクターヘッド)に装着してテスト走行をすることにより行った。
各試験項目の評価方法は、ドライ加速性能については、ドライ路面での5〜40km/hの速度区間の加速度を測定し、平均加速度を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほどドライ加速性能が優れていることを示している。スノー加速性能については、圧雪路面での5〜20km/hの速度区間の加速度を測定し、平均加速度を、後述する従来例を100とする指数で表すことによって評価した。数値が大きいほどスノー加速性能が優れていることを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例1〜4の空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜6の10種類の空気入りタイヤ1について行った。これらの空気入りタイヤ1は、センターラグ溝31が屈曲しているか否か、周方向溝20がタイヤ幅方向に振幅しているか否か、センター領域CA内の接地面積比、中間切欠き部46及びショルダー切欠き部47の有無や、センター細溝61及び中間細溝68の有無がそれぞれ異なって形成されている。このうち、従来例1〜4の空気入りタイヤ1は、センターラグ溝31または周方向溝20がストレートになっている、またはセンター領域CA内の接地面積比が30%以上70%以下の範囲内に無い、または中間切欠き部46、ショルダー切欠き部47、センター細溝61、中間細溝68の少なくともいずれかが設けられない形態になっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜6は、センターラグ溝31が屈曲し、周方向溝20が振幅しており、センター領域CA内の接地面積比が30%以上70%以下の範囲内になっており、中間切欠き部46、ショルダー切欠き部47、センター細溝61、中間細溝68を全て備えている。さらに、実施例1〜6に係る空気入りタイヤ1は、センター細溝61が有する幅方向細溝62の傾斜角度α1や、中間細溝68の傾斜角度α2、細溝60の溝幅及び溝深さが、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図5A、図5Bに示すように、実施例1〜6の空気入りタイヤ1は、従来例1〜4に対して、ドライ加速性能とスノー加速性能とが共に向上することが分かった。つまり、実施例1〜6に係る空気入りタイヤ1は、ドライ性能とスノー性能とを共に向上させることができる。