JP6905946B2 - シート材及びシート材の製造方法 - Google Patents
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Description
そのため、電子部品や家電製品を包装するためのシート材やガラス板を保護するためのシート材としてポリオレフィン系樹脂発泡シートが広く用いられている。
特に、フラットディスプレイパネルの基板となるガラス板、半導体基板、金属板などの部材を保管したりする際には、部材間に介挿させる合紙としてポリオレフィン系樹脂発泡シートが広く用いられている。
ポリオレフィン系樹脂発泡シートに帯電防止性を発揮させる方法としては、高分子型帯電防止剤と称されるポリマータイプの帯電防止剤や、低分子型帯電防止剤と称される界面活性剤をポリオレフィン系樹脂発泡シートの形成材料中に含有させる方法が知られている。
この内、界面活性剤については、シート表面にブリードアウトすることによって帯電防止性を発揮するため、保護対象物の表面に付着しやすい。
そこで、界面活性剤については、ガラス板などの表面に付着したとしても水洗などによって除去が容易であることが要望される。
例えば、近年、パネルサイズの多様化に伴い、ディスプレイ用ガラス板を梱包した状態で3ヶ月以上長期保管する機会が多くなってきている。
そのため、合紙として特許文献1に記載されている積層発泡シートを採用した場合でもガラスの表面を十分清浄な状態にすることが困難な場合がある。
そこで、本発明は、水洗後の保護対象物の表面を十分清浄な状態とすることが可能なシート材を提供し、ひいては、保護対象物が長期保管されるような場合においても保護対象物の清浄性を従来よりも向上させ得るシート材を提供することを課題としている。
そして、界面活性剤自体は水洗等によって比較的容易に除去することができるが、ブリードアウトに際して同伴される物質の中には水洗除去が容易ではないものも存在し得る。
そのため、ブリードアウトさせた界面活性剤によってポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面に帯電防止機能を有する皮膜を形成させると当該皮膜中に界面活性剤以外の低分子量化合物が混在し得る。
本発明では、界面活性剤を含む塗膜によって皮膜が形成されるため当該皮膜に水洗除去が困難な低分子量化合物が混在するおそれを低減することができる。
即ち、本発明によれば水洗後の保護対象物の表面を十分清浄な状態とすることが可能なシート材が提供され得る。
以下においては、シート材の基体がポリオレフィン系樹脂発泡シートで、該ポリオレフィン系樹脂発泡シートが押出発泡体である場合を例示する。
より詳しくは、以下においては、ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物を押出発泡させることによってシート状に形成されたポリオレフィン系樹脂発泡シートが基体として備えられているシート材をガラス板の合紙として利用する場合を例示しつつ本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態における前記ガラス板2は、プラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネルなどのフラットディスプレイパネル用のガラス板である。
本実施形態のシート材1は、図2に示すように当該シート材1の基体となるポリオレフィン系樹脂発泡シート10と、ポリオレフィン系樹脂発泡シート上に形成された塗膜とを備えている。
本実施形態のシート材1は、ポリオレフィン系樹脂発泡シート10の第1の表面に積層された第1塗膜11と、前記第1の表面とは反対面となる第2の表面に積層された第2塗膜12とを備えている。
言い換えれば、本実施形態のシート材1は、ポリオレフィン系樹脂発泡シート10の両表面上に塗膜が形成されており、第1塗膜11/ポリオレフィン系樹脂発泡シート10/第2塗膜12の3層構造を備えている。
ポリオレフィン系樹脂発泡シートを構成するポリオレフィン系樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂を1種単独で含有させる必要はなく、2種以上を含有させてもよい。
ポリオレフィン系樹脂組成物に含有させるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂が好ましい。
前記低密度ポリエチレン樹脂としては、例えば、中低圧法によって重合される直鎖低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)や、高圧法によって分子構造中に長鎖分岐が形成された低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)が挙げられる。
上記のようなMFRの低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)が好ましいのは、MFRが2g/10min未満では、後述する高分子型帯電防止剤などとの押出機中での混練性に問題が生じ、押出発泡時に破泡などが生じて良好なポリオレフィン系樹脂発泡シートを得ることが難しくなるおそれを有するためである。
また、上記のようなMFRの低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)が好ましいのは、MFRが6g/10minを超えると溶融張力が低くなりすぎて低密度のポリオレフィン系樹脂発泡シートが得られにくくなり、ダイス先端にメヤニ状の堆積物が発生しやすくなるためである。
前記高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミド、エチレン−メタクリル酸共重合体などのアイオノマー、ポリエチレングリコールメタクリレート系共重合体等の第四級アンモニウム塩、特開2001−278985号公報に記載のオレフィン系ブロックと親水性ブロックとの共重合体等が挙げられる。
なお、高分子型帯電防止剤としては、2以上の物質の混合品であっても良く、帯電防止性能の更なる向上を目的とし、前記ブロック共重合体にポリアミドを混合したもの、又は、ポリアミド系ブロックをさらに共重合させたものであってもよい。
なお、高分子型帯電防止剤は、前記ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が占める割合を70質量%以上とすることが好ましく、80質量%以上とすることがさらに好ましい。
高分子型帯電防止剤の結晶化温度が90℃以下であることが好ましいのは、結晶化温度が90℃を超えると、押出機中で結晶化が進んで分散が悪くなったり、また、押出発泡時に気泡膜が延伸される際に高分子型帯電防止剤が変形せず、塊となって帯電防止剤の分散粒子間距離が広くなって添加量に見合う帯電防止機能を発現させ難くなったりするためである。
また、MFRが前記のような範囲内であることが好ましいのは、MFRが40g/10minを超える高分子型帯電防止剤を用いるとポリオレフィン系樹脂中での分散性が低下するとともにポリオレフィン系樹脂組成物の溶融張力を低下させてしまうために低密度の発泡シートが得られなかったり、連通化したような粗大気泡を発生させたりするおそれを有するためである。
具体的には、示差走査熱量計(例えば、エス・アイ・アイナノテクノロジー社製「DSC6220」)を用い、測定容器に試料を約6.5mg充てんして、窒素ガス流量30ml/minのもと10℃/minの昇温冷却速度で30℃〜200℃の間で昇温・冷却し、冷却時の発熱ピーク温度を結晶化温度として測定することができる。
なお、発熱ピークが2つ以上現れる場合、全ピーク面積の5%以上を有する面積ピークの内、最も高温側のピークの頂点の温度を結晶化温度とする。
この発泡のための成分としては、発泡剤や気泡調整剤を挙げることができる。
なかでも、前記発泡剤としては、イソブタンとノルマルブタンとの混合ブタンが好ましい。
通常、発泡剤の添加割合がこのような範囲とされるのは、発泡剤が5質量部未満であると十分な発泡を得にくく、25質量部を超えると気泡膜が破れて良好なポリオレフィン系樹脂発泡シートが得られなくなるおそれを有するためである。
これらは単独で用いても、複数のものを併用してもよい。この気泡調整剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部あたり0.5質量部以下とすることが好ましい。
なお、ポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤との他にポリオレフィン系樹脂発泡シート10に含有される成分の割合は、10質量%以下であることが好ましく5質量%以下であることがより好ましい。
即ち、ポリオレフィン系樹脂発泡シート10を構成しているポリオレフィン系樹脂組成物におけるポリオレフィン系樹脂と高分子型帯電防止剤との合計割合は90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
なお、その他の成分の含有量が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい点については、任意成分である高分子型帯電防止剤がポリオレフィン系樹脂発泡シート10に含まれていない場合においても同じである。
このような密度を選択し得るのは、密度が70kg/m3以上では、ポリオレフィン系樹脂発泡シート10の柔軟性が不足して緩衝性が低いものとなるおそれを有するためであり、密度が小さすぎるとポリオレフィン系樹脂発泡シート10の強度が十分なものにならない結果、緩衝性が低いものとなるおそれを有するためである。
さらに、気泡膜の厚みが薄くなりすぎると、収縮が大きくなる結果、長尺なポリオレフィン系樹脂発泡シート10を作製した際に、これを一つのロールとして巻き取ることが困難になる。
したがって、ポリオレフィン系樹脂発泡シート10の密度は、10kg/m3以上とすることが好ましく、15kg/m3以上とすることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂発泡シート10の前記第1塗膜11と前記第2塗膜12とは、含有するアニオン系界面活性剤の種類や含有量が共通していても共通していなくてもよい。
前記シート材をガラス板用の合紙として表裏を気にせず用いることができる点において第1塗膜11のアニオン系界面活性剤の種類や含有量は、第2塗膜12と共通していることが好ましい。
第1塗膜11や第2塗膜12のアニオン系界面活性剤の含有量は、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
第1塗膜11及び第2塗膜12は、実質的にアニオン系界面活性剤のみで構成されていることがとりわけ好ましい。
しかも、前記第1塗膜11及び前記第2塗膜12は、上記のようなポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤としてアルキル鎖の炭素数が14以下のポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤を含む。
即ち、前記第1塗膜11及び前記第2塗膜12は、下記一般式(1)で表されるアニオン系界面活性剤を含む。
「m」は、12であるか13であるかのいずれかであることがとりわけ好ましい。
また、前記アニオン性官能基(-X)は、一般式(a2)で表される硫酸塩であることが好ましい。
さらに、上記の陽イオン(M+)としては、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオンなどの金属イオンやアンモニウムイオンが好適である。
なかでも前記陽イオン(M+)は、ナトリウムイオンであることが好ましい。
前記第1塗膜11及び前記第2塗膜12には、上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテル以外のアニオン系界面活性剤を含有させることも可能であるが、前記第1塗膜11及び前記第2塗膜12に含有されるアニオン系界面活性剤は、95質量%以上が上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。
前記第1塗膜11及び前記第2塗膜12に含有されるアニオン系界面活性剤に占める上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルの割合は98質量%以上であることが特に好ましい。
第1塗膜11及び第2塗膜12は、実質的に上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルのみで構成されていることがとりわけ好ましい。
このことによりガラス板2は異物の付着が保護され、水洗後に清浄な表面状態となり得る。
しかも、ガラス板2は、水洗後に清浄な表面状態となり得る状態が長期間にわたって持続され得る。
したがって、ガラス板2は、例えば、本実施形態のシート材1を合紙として介挿させた状態で3ヶ月以上にも及ぶ長期保管がされた後でもその表面を容易に清浄化させることができる。
したがって、本実施形態のポリオレフィン系樹脂発泡シート10を構成する前記ポリオレフィン系樹脂組成物には、必要であれば、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤などの低分子型帯電防止剤を含有させてもよいが、上記のような理由から前記ポリオレフィン系樹脂組成物への低分子型帯電防止剤の含有はできるだけ制限されることが好ましい。
具体的には、前記ポリオレフィン系樹脂組成物における低分子型帯電防止剤の含有量は、2質量%以下とされることが好ましく、1質量%以下とされることがより好ましく、実質的に含有されないことが特に好ましい。
それぞれの塗膜のポリオキシエチレンアルキルエーテル型アニオン系界面活性剤の含有量は、3mg/m2以上80mg/m2以下であることがより好ましく、4mg/m2以上50mg/m2以下であることが特に好ましい。尚、塗膜の単位面積当たりにおける界面活性剤の含有量は、次のようにして求めることができる。
シート材から一辺が約10cmの正方形の試料を切り出す。
次に、該試料を50mlの蒸留水に漬けて、23℃の室温下に40分間保管し、界面活性剤を溶出する。
得られた溶出液を、液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析計(LC/MS/MS)で測定し、標準液から得られた検量線をもとに、溶出液における界面活性剤の濃度(d(%))を算出する。
濃度(d(%))と溶出液に用いた蒸留水の量(50ml)から溶出液に含まれる界面活性剤の質量(m1(mg)=50×d)を求める。
溶出後の試料を再び50mlの蒸留水に漬けて、同様の測定を行い、溶出液に含まれる界面活性剤の質量(m2(mg))を求める。
このような測定を繰り返し、界面活性剤の溶出が検出限界以下となるまで実施し、試験片に付着していた界面活性剤の総量(M=m1+m2+・・・)を求める。
前記試料の表面積(S:上記においては、約200cm2(約100cm2×2(両面)))をできるだけ正確に測定し、先に得られた界面活性剤の総量(M)を前記表面積(S)で除して塗膜の単位面積当たりの界面活性剤量(M/S)を求めることができる。
尚、前記第1塗膜11と前記第2塗膜12とを個々に測定する必要がある場合は、試料を厚み方向中央部で切断して2枚のスライス片を作製するか、試料の片面に対する十分なふき取りを行った上で上記のような測定を行えばよい。
また、LC/MS/MSの試験条件は次の通りとすることができる。
・使用装置:
液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析計(LC/MS/MS)(型番「UHLC ACCELA」Thermo SCIENTIFIC社製)
・カラム:
Thermo製 Hypersil GOLD C18 1.9μm(2.1mmI.D.*100mmL)
・測定条件:
カラム温度(40℃),移動相(A:10mM酢酸アンモニウム/B:アセトニトリル=10/90)
・検量線作成方法:
検出する界面活性剤の標準液を濃度0.01ppm〜10ppmの間で数点作製し、同条件でLC/MS/MSにて測定し、検出されるピーク面積と標準液の濃度における検量線を作成する。
即ち、本実施形態のシート材1の製造方法は、合紙として用いられるシート材の製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂発泡シート10に前記一般式(1)で表されるアニオン系界面活性剤が含まれている塗工液を塗布する工程を実施し、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの表面に前記塗工液で形成された塗膜11,12を有する前記シート材1を製造するというものである。
そして、前記のように製造するシート材1の塗膜11,12に含まれる前記アニオン系界面活性剤の単位面積当たりの含有量は、所定の範囲内であることが好ましい。
より具体的には、前記塗工液を塗布する前記工程は、前記塗膜の単位面積当たりにおける前記アニオン系界面活性剤の含有量が3mg/m2以上100mg/m2以下となるように実施することが好ましい。
前記の通り本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂発泡シート10は、押出発泡法で製造される。
具体的には、ポリオレフィン系樹脂発泡シート10は、前記ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機の先端に装着したサーキュラーダイなどから連続的にシート状に押出発泡して押出発泡シートを作製する押出工程、押出されたシートを巻取り機により巻き取ってシートロールを作製する巻き取り工程を行って製造することができる。
前記押出工程では、冷却用マンドレルの下流側に設けたカッターで筒状の発泡体が押出方向に切断しつつ引き取られる。
本実施形態における前記押出工程では、サーキュラーダイの直径よりも径大な外径を有する冷却用マンドレルを使って2次冷却が行われる。
したがって、該2次冷却は、冷却用マンドレルの外周面を1次冷却された筒状の発泡体の内周面に摺接させることによって実施される。
該2次冷却では、1次冷却された筒状の発泡体を冷却しつつ同時に冷却用マンドレルによる拡径も行われる。
前記のように押出方向にカッターで切断された発泡体は、展開されて帯状とされた後で前記原反ロールを構成すべく巻き取られる。
前記塗膜11,12は、前記アニオン系界面活性剤を含む塗工液を用意する塗工液準備工程と、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シート10の両面に前記塗工液を塗布する塗布工程と、を実施することで形成させ得る。
該塗工液の塗布は、押出工程と並行して実施されても、押出工程が完了した後に改めて実施されてもよい。
即ち、巻取り工程で作製されるシートロールは、塗膜の形成されたシート材がロール状に巻回されたものでも、ポリオレフィン系樹脂発泡シートだけがロール状に巻回されたものでもよい。
前記塗布工程は、ロールコート、キスコート、スプレーコート、刷毛塗り、などといった一般的な方法で実施することができる。
塗工液の塗布は、必要であれば、押出し直後の円筒状の発泡体の内外に塗工液をスプレーコートするようにして行ってもよく、冷却用マンドレルでの2次冷却前に実施される1次冷却を兼ねるように実施してもよい。
このような場合、ポリオレフィン系樹脂発泡シート(円筒状の発泡体)と冷却用マンドレルとの間に生じる摩擦力の軽減を図り得る。
冷却用マンドレルで2次冷却された後のポリオレフィン系樹脂発泡シートであっても、通常、その表面温度は、常温(23℃)よりも温度が高いため、塗工液の塗布を押出工程と並行して実施する場合、塗工液の塗布をどの場所で実施しても塗工液は暖かな状態のポリオレフィン系樹脂発泡シートに塗工されることになる。
そうすると、塗膜では、アニオン系界面活性剤が分子運動し易い状態になり、親水性の官能基が表面濃化し易くなり、ガラス板に水洗除去が容易な保護膜を形成させる上で有利となる。
例えば、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの一面側のみに塗膜を形成させ、シートロールを形成させた際に塗膜が形成されていない他面側に塗工液の一部を転写させる方法を採用してもよい。
即ち、本発明は上記例示に何等限定されるものではない。
(実施例1)
日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン樹脂(商品名:「LF580」、密度:931kg/m3、MFR=4.0g/10min)100質量部に対して、三洋化成株式会社製の高分子型帯電防止剤(ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体、商品名:「ペレクトロンLMP」、結晶化温度:56℃、融点:115℃、MFR=30g/10min)4質量部、及び、三協化成社製の気泡調整剤マスターバッチ(アゾジカルボンアミド含有マスターバッチ:商品名「セルマイクMB1023」)0.15質量部の比率で配合された配合物をタンデム押出機の第一押出機(シリンダー径:φ90mm)に供給し、該押出機内での最高到達温度が210℃となるように溶融混練した。
また、該第一押出機の途中から発泡剤として混合ブタン(イソブタン/ノルマルブタン=50/50(モル比))を前記低密度ポリエチレン樹脂100質量部に対する割合が18質量部となるように圧入した。
なお、押出時の樹脂温度は116℃であった。
押出発泡された筒状発泡体は、エアーを吹き付けて冷却した後、直径が770mm、長さ650mmの冷却用マンドレル上を沿わせて冷却し、該冷却用マンドレルの後ろ側に設けたカッターで押出し方向に沿って筒状発泡体を切断して長尺帯状のポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。
この長尺帯状のポリオレフィン系樹脂発泡シートに塗膜を形成させるための塗工液として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、10%水溶液を調製した。
該ポリオレフィン系樹脂発泡シートの片面(前記筒状発泡体の状態において内周面となる側)に噴霧機によって前記塗工液をスプレーコートし、塗膜を作製した。
該塗膜を形成させた後のシート材は、巻取りスピード50m/minでロール状に巻取った。
実施例2以下については、塗布する界面活性剤種及び塗布量を表の通りに変更した。
表に示した界面活性剤の詳細は下記の通り。
なお、比較例3では、塗膜は形成させない代わりにポリオレフィン系樹脂発泡シートを押出発泡法で製造するためのポリオレフィン系樹脂組成物中に界面活性剤を含有させた。
1)アニオン系界面活性剤1(A-SSA1):
ポリオキシエチレンラウリル(C12)エーテル硫酸ナトリウム
2)アニオン系界面活性剤2(A-SSA2):
ポリオキシエチレントリデシル(C13)エーテル硫酸ナトリウム
3)アニオン系界面活性剤3(A-SSA3):
ポリオキシエチレンアルキル(C12−C14)エーテル硫酸ナトリウム
4)アニオン系界面活性剤4(A-SSA4):
ポリオキシエチレンアルキル(C16−C18)エーテル硫酸ナトリウム
5)ノニオン系界面活性剤1(N-SSA1):
ポリエチレングリコール(分子量1500)
6)ノニオン系界面活性剤2(N-SSA2):
ポリオキシアルキレントリデシルエーテル
各実施例、比較例のシート材から一辺が約10cmの正方形の試料を切り出し、試料の表面積(S≒200cm2)を正確に求めた。
次に、該試料を50mlの蒸留水に漬けて、23℃の室温下に40分間保管し、界面活性剤を溶出させた。
得られた溶出液を、液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析計(LC/MS/MS)で測定し、標準液から得られた検量線をもとに、溶出液における界面活性剤の濃度(d(%))を算出した。
濃度(d(%))と溶出液に用いた蒸留水の量(50ml)から溶出液に含まれる界面活性剤の質量(m1(mg)=50×d)を求めた。
溶出後の試料を再び50mlの蒸留水に漬けて、同様の測定を行い、溶出液に含まれる界面活性剤の質量(m2(mg))を求めた。
第1回目の溶出質量(m1)を表面積(S)で除して「第1回目溶出量」を算出するとともに第2回目の溶出質量(m2)を表面積(S)で除して「第2回目溶出量」を算出した。
なお、LC/MS/MSの試験条件は次の通りとした。
使用装置:
液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析計(LC/MS/MS)(型番「UHLC ACCELA」Thermo SCIENTIFIC社製)
カラム:
Thermo製 Hypersil GOLD C18 1.9μm(2.1mmI.D.*100mmL)
測定条件:
カラム温度(40℃),移動相(A:10mM酢酸アンモニウム/B:アセトニトリル=10/90)
検量線作成方法:
検出する界面活性剤の標準液を濃度0.01ppm〜10ppmの間で数点作製し、同条件でLC/MS/MSにて測定し、検出されるピーク面積と標準液の濃度における検量線を作成する。
実施例、比較例で得られたシート材がディスプレイ用ガラスを梱包した状態で長期間保管した際のガラス表面に清浄性を発揮させる効果を有しているかの評価を以下のようにサイクル加熱後の接触角にて判定した。
まず、合紙発泡シートを5cm×10cmの大きさに切り、これを洗浄・乾燥したガラス板(日本電気硝子株式会社製 無アルカリガラス OA−10G)の上に乗せ、前記シート材の全体に荷重が加わるように1kgの重りを乗せて、下記サイクルにて恒温恒湿槽(ISUZU製作所製、商品名「HPAV−120−40」)での加熱を行った。
シート材の加熱は、下記(1)〜(4)を1サイクルとして実施した。
(1)20℃・60%RHから60℃・90%RHまで1時間で昇温
(2)60℃・90%RHで1時間保持
(3)60℃・90%RHから20℃・60%RHまで1時間で降温
(4)20℃・60%RHで1時間保持
シート材と接していたガラス板表面における精製水の接触角を協和界面化学株式会社製、固液界面解析装置(商品名「DROP MASTER300」)によって測定した。
なお、測定は、サイクル加熱を60サイクル実施した後、120サイクル実施した後、及び、180サイクル実施した後の3通りで行った。
また、接触角は、それぞれ20点の測定を行い、その平均値によって算出した。
結果を表2に併せて示す。
Claims (4)
- 前記塗膜における前記アニオン系界面活性剤の含有量が前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの単位面積当たり3mg/m2以上100mg/m2以下である請求項1記載のシート材。
- 前記塗工液を塗布する前記工程は、前記塗膜における前記アニオン系界面活性剤の含有量が前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの単位面積当たり3mg/m2以上100mg/m2以下となるように実施する請求項3記載のシート材の製造方法。
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