JP6905525B2 - 金属コーティングされたブースタハウジングを有する空圧式ブレーキブースタ - Google Patents

Description

本発明は、油圧式の自動車ブレーキ装置のための空圧式ブレーキブースタにあって、請求項１の上位概念の特徴を有する空圧式ブレーキブースタに関する。

このようなキブースタは広汎に普及していて、公知である。通常、ブレーキブースタのハウジングは、厚さの薄いハウジングシェルを２つ有し、これらのハウジングシェルは相互に結合されているか、又は相互に連接されている。ハウジングシェル間、及びにブースタハウジングの更なる部位において、充填材が設置されており、この充填材はブレーキ作動時に力動的に運用される。通常、ハウジングシェルは、安価で、変形容易な、但し錆び易い鋼薄板を深絞りして製造され、および腐食から保護する必要がある。

いわゆる電気泳動塗装（ＫＴＬ）は、腐食保護技術として公知である。つまりは、触媒作用による浸漬法によって、深絞りされて、浄化されたハウジングシェルに施された塗装層の事である。このようなペイント塗装は、最大粗さ高さＲｚ≒６，３及び平均粗さＲａ≒１，２という面粗度で、比較的滑らかな表面を呈している。

周知のブレーキブースタにおいて、とりわけ充填材を力動的に利用するためには、機能上決定的で且つ、長期に亘って確実な封止状態を確保する一連の予防策が講じられる必要がある。つまり、例えばローリングダイヤフラムにおいては、堅固な充填パッドが設けられる必要がある。この充填パッドは、ハウジングシェル内の公差の小さい特殊形状内に（つまりシーリングシート内に）、挟持される。これによって、運転中の「ボタン外し」と呼ばれるはみ出し現象が回避されることになる。また、取付け時における不本意な固着や、その事に起因する位置取りにおける失敗を回避するために、ローリングダイヤフラムは取付け前にタルクといった中間材で予加工される必要がある。ただし運転中に、滑らかに塗装されたハウジングシェル間のダイヤフラムは、この中間材に起因して、はみ出てくる危険が高まる。

また、ブレーキブースタを組み立てる際、とりわけ充填材の取付け時には、作業に細心の注意が払われなくてはならない。というのも、衝突や引掻き傷といった力学的作用によって、塗装層が損傷して、封止域内で所々にヒビ割れが生じたり、腐食が助長されたりして、塗装層が鋼薄板から剥がれてしまう危険があるのである。このような場合、空気漏れの可能性が生じ、延いてはブースタ力の減少に繋がり得るので、その防止策が講じられなければならない。

よって、改良型ブレーキブースタ製作による、持続性豊かな密封性向上及び、充填材取付け作業の簡略化を主眼とする課題が、ここに提起されるのである。

本課題は、本発明請求項１の特徴を組み合わせて作製されるブレーキブースタが解決し得る。図と明細を含む従属請求項が、本発明の更なる実施形態および有利な発展形態を提示する。

下記、図を用いて、本発明の詳細と利点を細部にわたって解説する。その際、標準的ブレーキブースタにおける既知の特徴や機能については大部分を省略し、本発明に関する詳細のみを詳述することとする。

その詳述中、本発明シングルブレーキブースタの実施形態の横断面 本発明の図１の実施形態における封止部の拡大図 （ａ）によって周知型及び（ｂ）によって本発明実施形態の封止域基本構成を概略表示 本発明タンデムブレーキブースタの封止部を拡大図

図１において、空圧式ブレーキブースタ１は、厚さの薄いブースタハウジング２を有している。ブースタハウジング２は、鋼薄板から深絞り加工されたハウジングシェル３及び４を有する。これらハウジングシェルは、径方向外縁において、互いに接続されている。接続は、多くの場合、当該端部を曲げる、若しくは外方に突設する、又は端部周囲のハウジングシェルの１体に設けられた連結金具によって、若しくはもう一方のハウジングシェルに着設されたフランジにより行われる。

ブースタ力は、空圧式ブレーキブースタ１内で、負圧室８及び作動室９間の圧力差によって生成される。そのために、まずは負圧室８及び作動室９において負圧が生み出され、その負圧は、圧力差生成用の作動室９において、必要に応じて完全、又は部分的に、ブレーキブースタ１周囲の大気圧に同化される。当該圧力差は、壁１８の面に作用する。壁１８は部材１１に接合していて、及びこれと共に線状滑動可能にブースタハウジング２内に収容されている。部材１１は、提示の実施形態においてカプセル状の制御ハウジングとして形成され、ブースタハウジング２に固定された柔軟なシール材１０に滑合している。シール材１０は、周囲の大気に対して作動室９を封止している。部材１１は摩擦しながら摺動するで、各摺動方向へのトラクション力Ｆはシール材１０に作用する。このトラクション力が、ブースタハウジング２内の定位置にあるシール材を引っ張り出そうとする。

負圧室８は、エラストマーのローリングダイヤフラム６によって、作動室９に対して空気圧的に画成されている。ローリングダイヤフラム６は、壁１８に領域的に着設している。ローリングダイヤフラム６は径方向外縁において、形状適合された充填パッド７を有していて、充填パッド７は充填材５‘としてハウジングシェル３及び４の間に挟持されている。ブースタ運転時に、圧力差に拠ってローリングダイヤフラムが負圧室に向かって引っ張られて、これにより充填パッド７にはブースタハウジング２内方向へトラクション力Ｆ‘がかかる。

図２では、トラクション力Ｆ‘の負荷によって充填パッド７がはみ出ることのないように、ハウジングシェル３及び４の間には、環状スリット１７が設けられ、そのスリット幅が充填パッド７の厚さより狭くなっているようハウジングシェル３及び４は形成されている。

ブレーキを最大限に掛けた時などに、ローリングダイヤフラム６への強度の動的負荷は、相応して高いトラクション力Ｆ‘へと通じ得る。この場合、柔軟な充填材５‘は、圧縮されて環状スリット１７に引き込まれる。この際、充填材５‘の当接域における滑らかな表面及び、ローリングダイヤフラムに設置された中間材１６（図３ａ参照）が固着性を低減し、及びに充填材５‘のはみ出しを助長する。

図３では、図３ａによって、周知のブレーキブースタ１の問題性が明らかとなる。鋼薄板１３上に施されたペイント塗装１４は、粗さ最大高さがＲｚ≒６、３で、粗さ平均がＲａ≒１、２という面粗度で、比較的滑らかな表面を呈している。その上、充填材５‘のエラストマー材は、中間材１６の層に覆われている。前記中間材はエラストマー材着接面の吸着性を著しく低減して、取付け作業などの簡略化に役立つ。というのも、充填パッド７などは、このことで、適合する形状で、より容易に、ハウジングシェル３内の所定位置に摺動し得えて、位置取りにおける失敗の危険性が低減されるからである。但し、ハウジングシェル３及び充填材５‘間の固着性は全体として減少する。その結果として、充填パッド７は、比較的太く、形成される必要があり、且つハウジングシェル３及び４は比較的小さい公差範囲内で形成されなくてはならない。強いトラクション力Ｆ‘に耐えるためである。

図３ｂが示す本発明に係る実施形態において、ハウジングシェル３はペイント塗装１４の代わりに、金属コーティング１５を有している。金属コーティング１５は、ペイント塗装１４とは異なり、ハウジングシェル３の設置前に鋼薄板１３上に施され、技術上の理由から、ペイント塗装１４に比べて、高い面粗度を有している。充填材５‘のハウジングシェル３との当接域においては、金属コーティング１５の比較的高い粗面性が、より堅固な接合のために利用される。面圧縮作用により組み立てられた形態において、表面先端のギザギザが充填材５‘の材料に食い込んで、ハウジングシェル３及び充填材５‘は、より堅固に接合する。こうしてトラクション力Ｆ‘の大部分が、ハウジングシェル３及び４中に流れて、充填パッド７が環状スリット１７からはみ出る可能性は減少する。

また、面圧縮を不要とする更に高い面粗度が、エラストマー材の当接面に対する固着性を否応にも低下させ、自然と取付け作業が軽減され、且つ確実なものとなり、中間材１６が完全に不要となるか、又は少なくとも、その必要量が著しく削減され得る。

つまり、ハウジングシェル３及び４は、比較的広い公差範囲内で、簡素な道具及び工程によって、比較的安価に製造されることが可能となる。さらに充填パッド７は、より小さく形成され得る。

ハウジングシェル３及び４は、充填材５及び５‘の当接域だけでなく、金属コーティング１５が全体に施されることが望ましい。つまり、本発明の改良型ハウジングシェル３及び４は、より容易に製造され、その事に附帯して、ハウジングシェル３及び４の腐食保護も金属コーティング１５によって施され、追加塗装する必要もない。

亜鉛による、又は亜鉛を含む金属コーティングは、その表面の特徴と腐食保護効果に基づき、目指す目的に総じて適っている。とりわけ望ましい金属コーティングとしては、亜鉛以外にも、アルミニウムやマグネシウムを含む合金も適していて、アルミニウム３，５％とマグネシウム３％という比率が望ましい。この種の合金は、特段に高度の腐食保護性及び著しい力学的抵抗力を長期に亘り呈する。

このようなコーティングは、浸漬溶融法において、ハウジングシェル３及び４生成のために設けられた鋼薄板１３上に施されて、否応無く且つ後加工せずに、およそ９，５の領域における最大粗さ高さＲｚと、およそ１，８の領域における平均粗さＲａという面粗度を呈する。この面粗度は、通常のペイント塗装１４に比べると、より高いものではあるものの、確実な封止が脅かされる程のものではなく、本発明の意義における最適値範囲内とどまる程度のものである。

発案の金属コーティングを採用することで、更に予想外の利点が生まれる。

鋼薄板１３は予めコーティングされた状態で、深絞りされ、ハウジングシェル３及び４のため、深絞りされ得る。とりわけ、油に代わる乾式不動体化といった適当な予加工をハウジングシェル３及び４表面に施す場合、ブレーキブースタ１の更なる組み立て作業において、脱脂や洗浄といった後加工を施す必要はない。よって全般として、顕著に一層安価な工程が実現される。

加えて、発案の金属コーティング１５は、電気メッキの金属コーティングに比べて、より低い摩擦係数を呈して、深絞りがより容易となる。

貫通や穿孔によって生じる切断へりは、直接、製造時に当該ツールによって表面から否応無く引き延ばされた金属コーティング１５に覆われて、且つそれによって耐食加工される。

ペイント塗装１４に関しては、製造時、取付け時、及び運転中に、塗装層が部分的に損傷を被って、鋼薄板１３が、その部分において保護されずに、腐食してしまう危険がある。この事は、板金変形、連結金具の歪み、引掻き傷というような力学的作用に起因して、折曲疲労を伴うへり部で、へり部の塗装不足時に、無塗装部といった塗装欠陥によって、起こり得る。

金属コーティング１５をハウジングシェル３及び４全体に施すことによって、亜鉛塩が形成されることで、亀裂及び割れ目は自動的に閉ざされる。これによって、本発明に係るブレーキブースタ１の持続的な腐食保護が向上し、恒久的外観が保持される。

図４中には、タンデム構造ブレーキブースタ１の本発明使用例が示されている。タンデム−ブレーキブースタ１は、負圧室８及び８‘、２つの作動室９及び９‘並びに２つのローリングダイヤフラム６及び６‘をそれぞれ２ずつ有していて、負圧室及び作動室の空圧分離及び大気に対する封止が充填材５‘及び５‘‘によって確立している。

こうしてハウジングシェル３及び４の間に、隔壁１２が設置されていて、充填材５‘‘がハウジングシェル３及び４と隔壁１２の間において、ハウジングシェル３及び４に封着し、また充填材５‘は隔壁１２及びハウジングシェル４に封着している。

本発明の隔壁１２は、充填材（５‘、５‘‘）との当接域に金属コーティング１５が施されており、本発明の更に望ましい実施形態においては、隔壁１２全体が金属コーティング１５で覆われている。

１ ブレーキブースタ
２ ブースタハウジング
３ ハウジングシェル
４ ハウジングシェル
５ 充填材
６ ローリングダイヤフラム
７ 充填パッド
８ 負圧室
９ 作動室
１０ シール材
１１ 部材
１２ 隔壁
１３ 鋼薄板
１４ ペイント塗装
１５ 金属コーティング
１６ 中間材
１７ 環状スリット
１８ 壁
Ｆ トラクション力

Claims (10)

1. 鋼薄板から成る少なくとも２つのハウジングシェル（３、４）を有するブースタハウジング（２）を有している空圧式ブレーキブースタ（１）であって、ブレーキブースタ（１）周囲の大気からの封止のために、ブースタハウジング（２）に封着している柔軟な充填材（５、５‘）を少なくとも１つ有しているブレーキブースタ（１）において、少なくとも１つの充填材（５、５‘）との当接域で、ブースタハウジング（２）が、平均粗さＲａ＞１．２という面粗度の金属コーティング１５を有することを特徴とする空圧式ブレーキブースタ（１）。
2. 金属コーティング１５が、亜鉛を含むことを特徴とする請求項１に記載のブレーキブースタ（１）。
3. 金属コーティング１５が、アルミニウムを含むことを特徴とする請求項２に記載のブレーキブースタ（１）。
4. 金属コーティング１５が、マグネシウムを含むことを特徴とする請求項２に記載のブレーキブースタ（１）。
5. 金属コーティング１５が、浸漬溶融法により施されることを特徴する請求項１に記載のブレーキブースタ（１）。
6. 少なくとも１つのハウジングシェル（３、４）が、完全に金属コーティング１５により覆われていることを特徴とする請求項１に記載のブレーキブースタ（１）。
7. 複数のハウジングシェル（３、４）間で、充填材（５‘）が封止しつつ、挟持されて配置されている請求項６に記載のブレーキブースタ（１）。
8. 充填材（５‘）は、エラストマーのローリングダイヤフラム（６）の径方向外縁に適合した充填パッド（７）として形成されていて、ブースタハウジング（２）内では、ローリングダイヤフラム（６）が、少なくとも１つの負圧室（８）を作動室（９）に対して画成しているという構成の請求項１に記載のブレーキブースタ（１）。
9. 充填材（５）は、ブースタハウジング（２）に設置された密封用シール材（１０）として、線状滑動可能な部材（１１）に対して形成されているという構成の請求項１に記載のブレーキブースタ（１）。
10. 複数のハウジングシェル（３、４）の間に、隔壁（１２）が配置されていて、ハウジングシェル（３）及び隔壁（１２）の間、並びに隔壁（１２）及びハウジングシェル（４）の間に、それぞれ充填材（５‘、５‘‘）が配置されていて、充填材（５‘、５‘‘）との当接域において、隔壁（１２）が粗さ平均Ｒａ＞１．２という面粗度の金属コーティング１５を有しているという構成の請求項１に記載のブレーキブースタ（１）。

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