本実施形態の説明に先立ち、本願発明者が検討した事項について説明する。
図1は、その検討に使用した撮像素子の断面図である。
この撮像素子1は、赤外イメージセンサであって、撮像チップ2とこれに接合した回路チップ3とを有する。
このうち、撮像チップ2は、光Lが入射する化合物半導体の共通コンタクト膜4を備えており、その共通コンタクト膜4の表面に複数の赤外光検出素子5が設けられる。
共通コンタクト膜4は、例えばn+型のGaSb膜であって、各々の赤外光検出素子5の上面側を同一の電位に維持するように機能する。
また、各々の赤外光検出素子5は、共通コンタクト膜4を介して光Lに含まれる赤外光を受光し、その赤外光の強度に応じたキャリアを生成する。このような赤外光検出素子5としては、例えばInAs層とGaSb層とを交互に複数積層してなるT2SL(Type II Super Lattice)センサがある。
更に、各々の赤外光検出素子5の下面にはn+型のInAs膜等の素子コンタクト膜6が設けられており、その素子コンタクト膜6の下面には素子電極7が設けられる。なお、隣接する赤外光検出素子5の間には酸化シリコン膜等の絶縁膜8が埋め込まれる。
一方、回路チップ3は、シリコン基板10とその上に形成された多層配線層11とを有する。
多層配線層11は、配線12と絶縁膜13とを交互に積層してなり、その最上層には読出電極15が設けられる。
そして、その読出電極15と前述の素子電極7の各々にはインジウムのバンプ16が接合されており、これにより撮像チップ2と回路チップ3とが機械的かつ電気的に接続される。
なお、撮像チップ2と回路チップ3との間には、これらの接続強度を補強するためのアンダーフィル樹脂17が充填される。
このような撮像素子1においては、共通コンタクト膜4から入射した光Lに含まれる赤外光が各赤外光検出素子5によって検知され、その赤外光の強度に応じた量のキャリアが各赤外光検出素子5において生成される。
そして、そのキャリアを赤外光検出素子5ごとに読み出す読み出し回路をシリコン基板10に形成しておくことで、その読み出し回路を用いて赤外画像を得ることができる。このようにキャリアの読み出し回路を備えた回路チップ3はROIC(Read Out Integrated Circuit)とも呼ばれる。
ところで、この撮像素子1は、上記のように赤外画像を取得する赤外イメージセンサであるが、その撮像素子1に可視画像を取得してそれを赤外画像に重ね合わせる機能を付加することにより、これらの画像から様々な有益な情報を得ることができる。
撮像装置1に可視画像を取得する機能を付加するには、シリコン基板10の表面10aにCMOSイメージセンサを形成し、Lに含まれる可視光をそのCMOSイメージセンサで検知すればよいと考えられる。
しかしながら、共通コンタクト層4や各赤外光検出素子5の材料であるInAs、GaSb、InGaAs、及びGaAsSb等の化合物半導体はバンドギャップが狭く可視光を吸収してしまうため、シリコン基板10に可視光が到達できず、CMOSイメージセンサで可視光を検知できない。
これを回避するために、シリコン基板10の裏面10bにCMOSイメージセンサを形成し、裏面10b側からから光Mを導入することも考えられる。そのようなCMOSイメージセンサは裏面照射型CMOSイメージセンサとも呼ばれる。
このような構造によれば、光Mが共通コンタクト層4や各赤外光検出素子5によって遮られることがないため、裏面10bのCMOSイメージセンサで可視画像を取得することができる。
また、シリコン基板10は赤外光を透過するため、光Mに含まれる赤外光の一部は各赤外光検出素子5に入射する。
しかしながら、光Mに含まれる赤外光の大部分は読出電極15、バンプ16、及び素子電極7によって遮られたり散乱されたりするため、各赤外光検出素子5で赤外光を検出するのが困難となる。
以下に、可視光と赤外光の両方を容易に検出することができる本実施形態に係る撮像素子について説明する。
(第1実施形態)
本実施形態に係る撮像素子についてその製造工程を追いながら説明する。
図2〜図22は、本実施形態に係る撮像素子の製造途中の断面図である。
まず、図2に示すように、画素領域Iと周辺領域IIとを備えた厚さが600μm〜650μm程度のp型のシリコン基板20を用意する。
そして、シリコン基板20の相対する第1の主面20aと第2の主面20bのうち、第2の主面20b側に複数の画素21を形成する。
点線円内に示すように、各々の画素21には、第1のリセットトランジスタRT1とこれに隣接した可視光検出素子PDVRとが形成される。
第1のリセットトランジスタRT1は、シリコン基板20の表面の上にゲート絶縁膜22を介してゲート電極24を備え、そのゲート電極24の横には絶縁性サイドウォール26が形成される。
更に、ゲート電極24と絶縁性サイドウォール26とをマスクにしてシリコン基板20にn型不純物をイオン注入することにより、ゲート電極24の横のシリコン基板20にn型ソースドレイン領域28が形成される。
一方、可視光検出素子PDVRは、可視光を検出する第2の光検出素子の一例であって、ゲート電極24の横に形成されたn型拡散領域29とp型拡散領域30とを有する。そして、n型拡散領域29とp型拡散領域30とのpn接合に可視光が入射することにより、その可視光の強度に応じた量のキャリアが発生する。
一つの画素21における可視光検出素子PDVRの個数は特に限定されないが、この例ではカラーの可視画像を得るために赤、青、緑の各々に対応した三つの可視光検出素子PDVRを一つの画素21に設ける。なお、白黒の可視画像を得るには一つの画素に一つの可視光検出素子PDVRのみを設ければよい。
また、上記の第1のリセットトランジスタRT1は、可視光検出素子PDVRに蓄積されるキャリアを読み出す読み出し回路の一部である。その読み出し回路を形成する他のトランジスタも本工程において作製される。
次に、図3に示すように、シリコン基板20の第2の主面20bに層間絶縁膜31として酸化シリコン膜を形成し、更にその層間絶縁膜31に配線33を埋め込む。その配線33として、例えばスパッタ法やめっき法により銅膜を形成してそれをデュアルダマシン法により加工する。なお、銅膜に代えてアルミニウム膜で配線33を形成してもよい。この場合はドライエッチング法によりアルミニウム膜を加工する。また、層間絶縁膜31は第2の絶縁膜の一例である。
そして、層間絶縁膜31と配線33とをこの順に交互に複数積層した後、最上層の層間絶縁膜31に読出電極35を形成する。
なお、読出電極35は第1の電極の一例である。その読出電極35の形成方法は特に限定されない。この例では最上層の層間絶縁膜31に配線溝とビアを形成した後、その配線溝とビアにスパッタ法やめっき法でバリアメタル膜と銅膜を形成する。そして、層間絶縁膜31の上面の不要なバリアメタル膜と銅膜とをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法で除去するデュアルダマシン法により、配線溝にバリアメタル膜と銅膜とを読出電極35として残す。
次いで、図4に示すように、上記のCMP法で平坦化された最上層の層間絶縁膜31と読出電極35の各々の上に、スピンコート法によりポリマの固体電解質液を塗布することにより、厚さが0.1μm〜1.0μm程度の第1の固体電解質膜37を形成する。
なお、スピンコート法に代えてディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、及びブレードコート法のいずれかで第1の固体電解質膜37を形成してもよい。
その後に、基板温度を200℃とする条件で第1の固体電解質膜37を30分程度ベークし、第1の固体電解質膜37から溶媒成分を蒸発させる。
なお、第1の固体電解質膜37に代えて、抵抗変化型メモリの材料である遷移金属酸化物の絶縁膜を形成してもよい。そのような絶縁膜としては、例えば酸化タンタル膜や酸化ハフニウム膜がある。
以上により、シリコン基板20に対する処理を終える。
そのシリコン基板20は、可視光を検出するための複数の画素21を有しているものの、赤外光を検出する機能は備えていない。
そこで、本実施形態では、以下のようにしてシリコン基板20とは別に化合物半導体基板に赤外光を検出するための光検出素子を形成する。
まず、図5に示すように、化合物半導体基板40としてGaSb基板を用意し、その上にMBE(Molecular Beam Epitaxy)法によりバッファ膜41としてGaSb膜を1μm程度の厚さにエピタキシャル成長させる。
そして、バッファ膜41のGaSbと格子整合するInAs0.91Sb0.09膜をMBE法で1μm程度の厚さにエピタキシャル成長させ、そのInAs0.91Sb0.09膜をエッチングストッパ膜42とする。なお、以下ではInAs0.91Sb0.09膜を単にInAsSb膜と呼ぶ。
次いで、図6に示すように、エッチングストッパ膜42の上にp型の共通コンタクト膜43としてp+型のGaSb膜をMBE法で1μm程度の厚さにエピタキシャル成長させる。
共通コンタクト膜43にドープするp型不純物とその濃度は特に限定されないが、この例ではp型不純物としてベリリウムを1×1018cm-3程度の濃度にドープする。
次に、図7に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、共通コンタクト膜43の上に厚さが1.8nm程度のInAs膜と厚さが2.2nm程度のp型のGaSb膜とをMBE法で交互に複数積層し、これらの化合物半導体膜の積層膜をp型超格子層44とする。
そのGaSb膜にドープするp型不純物は特に限定されない。本実施形態では、例えばベリリウムを5×1017cm-3程度の濃度にドープする。
そして、そのp型超格子層44の上に、検知対象の赤外光を吸収してキャリアを生成する意図的なドーピングを行わないnid(not intentionally doped)型超格子層45をMBE法で2μm程度の厚さに形成する。そのようなnid型超格子層45として、例えば1.8nm程度のInAs膜と厚さが2.2nm程度のGaSb膜とをMBE法で交互に複数積層する。
更に、nid型超格子層45の上に、厚さが1.8nm程度のn型のInAs膜と厚さが2.2nm程度のGaSb膜とをMBE法で交互に複数積層し、これらの化合物半導体膜の積層膜をn型超格子層46とする。
そのInAs膜にドープするn型不純物として、例えばシリコンを5×1017cm-3程度の濃度にドープする。
続いて、図8に示すように、n型超格子層46の上に、n型不純物としてシリコンが1×1018cm-3程度の濃度にドープされたn+型のInAs膜をMBE法で30nm程度の厚さに形成し、そのInAs膜をn型の素子コンタクト膜47とする。
そして、素子コンタクト膜47の上にハードマスク50としてCVD法により窒化シリコン膜を500nm程度の厚さに形成し、更にそのハードマスク50をパターニングして一画素に対応した複数の島状とする。
次に、図9に示すように、ハードマスク50をマスクにしながら素子コンタクト膜47からp型超格子層44までをRIE(Reactive Ion Etching)によりドライエッチングする。そのドライエッチングで使用するエッチングガスとしては、例えばBCl3ガスとArガスとの混合ガスがある。
これにより、画素領域Iに残された各膜44〜47を複数の赤外光検出素子PDIRとすると共に、周辺領域IIに残された各膜44〜47をダミーパターン51とする。
このうち、赤外光検出素子PDIRは、第1の光検出素子の一例であって、波長が1μm〜5μm程度の赤外光を検出するT2SLセンサである。
なお、T2SLセンサに代えて、QWIP(Quantum Well Infrared Photodetector)、QDIP(Quantum Dot Infrared Photodetector)、及びMCT(Mercury Cadmium Telluride)のいずれかのセンサを赤外光検出素子PDIRとして形成してもよい。更に、InGaAsやInSb等の化合物半導体を材料としたPINフォトダイオードを赤外光検出素子PDIRとして形成してもよい。
また、ダミーパターン51は、赤外光検出素子PDIRと高さ位置hと材料とが同一のパターンである。
更に、赤外光検出素子PDIRとダミーパターン51の各々の平面形状は、いずれも一辺の長さが数μm〜30μm程度の正方形状である。
その後に、ハードマスク50をウエットエッチングして除去する。
続いて、図10に示すように、共通コンタクト膜43、赤外光検出素子PDIR、及びダミーパターン51の各々の上に保護絶縁膜52としてCVD法により窒化シリコン膜と酸化シリコン膜とをこの順に形成する。
保護絶縁膜52は、第3の絶縁膜の一例であって、外部雰囲気から赤外光検出素子PDIRを保護する役割を担う。その保護絶縁膜52の材料や厚さは特に限定されない。この例は窒化シリコン膜を100nm程度の厚さに形成し、酸化シリコン膜を1μm程度の厚さに形成する。更に、保護絶縁膜52の上面をCMP法で平坦化してもよい。
そして、図11に示すように、RIE法により保護絶縁膜52をパターニングすることにより、赤外光検出素子PDIRの各々の上に素子コンタクト膜47に至る深さの第1のホール52aを形成する。
また、そのパターニングにおいては、ダミーパターン51の横の保護絶縁膜52に、共通コンタクト膜43に至る深さの第2のホール52bが形成される。
次に、図12に示すように、保護絶縁膜52の上と各ホール52a、52bの内部にスパッタ法で厚さが50nm程度のチタンの密着膜57と厚さが200nm程度のルテニウムの不活性金属膜58とをこの順に形成する。
その後に、密着膜57と不活性金属膜58とをRIEでパターニングすることにより、画素領域Iにおける各膜57、58を素子電極55にし、かつ周辺領域IIにおけるこれらの膜57、58を局所配線56とする。
そのRIEで使用するエッチングガスは特に限定されない。例えば、不活性金属膜58に対するエッチングガスとしては酸素ガスがあり、密着膜57に対するエッチングガスとしては塩素ガスがある。
素子電極55は、第1の電極の一例であって、第1のホール52aにおいてその下の素子コンタクト膜47と接続される。
一方、局所配線56は、第2のホール52bにおいてその下の共通コンタクト膜43に接続され、更にダミーパターン51上の保護絶縁膜52の上面52xに延在する。
なお、このように素子電極55と局所配線56は同一の工程で形成されるため、これらの高さ位置Hは同一となる。
次いで、図13に示すように、保護絶縁膜52、素子電極55、及び局所配線56の各々の上にスピンコート法によりポリマの固体電解質液を塗布することにより、厚さが0.1μm〜1μm程度の第2の固体電解質膜57を形成する。
なお、スピンコート法に代えてディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、及びブレードコート法のいずれかで第2の固体電解質膜57を形成してもよい。
そして、基板温度を200℃とする条件で第2の固体電解質膜57を30分程度ベークし、第2の固体電解質膜57から溶媒成分を蒸発させる。
なお、第2の固体電解質膜57に代えて、抵抗変化型メモリの材料である酸化タンタル膜や酸化ハフニウム膜等の遷移金属酸化物の絶縁膜を形成してもよい。
ここまでの工程により、化合物半導体基板40に対する処理を終える。
これ以降は、前述のシリコン基板20と化合物半導体基板40とを貼り合わせる工程に移る。
まず、シリコン基板20と化合物半導体基板40の各々をダイシングして個片化した後に、図14に示すように、画素領域Iにおける読出電極35と素子電極55とを対向させる。また、周辺領域IIにおいては、局所配線56と読出電極35とを対向させる。
なお、本工程の前に第1の固体電解質膜37と第2の固体電解質57の各々の表面に予めアルゴンプラズマを照射することによりこれらの表面を活性化しておく。
次に、図15に示すように、フリップチップボンダ等を用いて室温で化合物半導体基板40とシリコン基板20とを貼り合わせる。これにより、第1の固体電解質膜37と第2の固体電解質57とが密着し、これらの固体電解質膜37、57が中間絶縁膜60となる。なお、中間絶縁膜60は第1の絶縁膜の一例である。
このとき、前述のように各固体電解質膜37、57の表面をアルゴンプラズマにより活性化しておいたことで、各固体電解質膜37、58同士の密着強度が高まる。
なお、このようにシリコン基板20と化合物半導体基板40とを貼り合わせた後においては、化合物半導体基板40がなくても赤外光検出素子PDIRの各々がシリコン基板20で支持されるため、化合物半導体基板40は不要となる。
そこで、次の工程では、図16に示すように、研削やCMP法により化合物半導体基板40とバッファ膜41とを除去する。なお、研削やCMP法を途中まで行い、その後にウエットエッチングで化合物半導体基板40とバッファ膜41を除去してもよい。
その後に、図17に示すように、エッチングストッパ膜42をウエットエッチングして除去することにより共通コンタクト膜43を表出させる。
この状態ではシリコン基板20によって赤外光検出素子PDIRや共通コンタクト膜43が支持されることになる。
但し、赤外光検出素子PDIRの材料である化合物半導体の熱膨張率はシリコン基板20のそれと比較して小さいため、この状態では化合物半導体との熱膨張率の差によってシリコン基板20が反り、赤外光検出素子PDIRにクラックが生じるおそれがある。
そこで、次の工程では、図18に示すように、シリコン基板20と同じシリコンを材料とする支持基板61を共通コンタクト膜43に固定する。固定の方法は特に限定されない。例えば、可視光と赤外光に対する吸収が少ない接着剤で支持基板61と共通コンタクト層43とを接着してもよい。
これにより、シリコン基板20が反ろうとするのを支持基板61で抑制することができるため、反りに起因して赤外光検出素子PDIRにクラックが生じるのを防止することができる。
特に、この例のように支持基板61の材料としてシリコンを採用すると、支持基板61とシリコン基板20の各々の熱膨張率が同じになる。その結果、支持基板61とシリコン基板20の各々の反りが相殺し合うようになるため、各基板20、61が一層反り難くなる。
なお、シリコン基板20の反りに起因して赤外光検出素子PDIRに作用する応力は、ポリマを材料とする柔軟な中間絶縁膜60によってある程度緩和される。これにより赤外光検出素子PDIRにクラックが生じるおそれがない場合には支持基板61は不要である。
このように赤外光検出素子PDIRにクラックが生じるおそれがない程度に応力を緩和するには、中間絶縁膜60の材料や膜厚を適宜選択することにより、中間絶縁膜60のヤング率を10GPa以下とすればよい。
次いで、図19に示すように、例えばCMP法でシリコン基板20の第1の主面20aを研磨してシリコン基板20の厚さを2μm〜8μm程度の厚さまで薄くする。
これにより、第1の主面20aから入射した可視光が可視光検出素子PDVR(図2参照)に到達するようになり、第1の主面20aが可視光検出素子PDVRで可視画像を撮像するための撮像面となる。このように配線33とは反対側の第1の主面20aが撮像面となるCMOSイメージセンサは、裏面照射型CMOSイメージセンサと呼ばれる。
続いて、図20に示すように、シリコン基板20の第1の主面20aに、当該主面20aに表出しているシリコンを外部雰囲気から保護するための透明な保護膜59としてCVD法により酸化シリコン膜を形成する。
次に、図21に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、赤色の色素を含有した感光性樹脂を保護膜59の上に塗布し、それを露光、現像することにより、画素21の上方に赤フィルタ62Rを形成する。これと同様にして画素21の上方に青フィルタ62Bと緑フィルタ62Gを形成する。
前述のように画素21には赤、青、緑の各々の光に対応した三つの可視光検出素子PDVR(図2参照)が設けられており、フィルタ62R、62B、62Gにより分解された各色の可視光が三つの可視光検出素子PDVRの各々に入射する。
但し、カラーの可視画像を得る必要がない場合には、各フィルタ62R、62B、62Gを形成しなくてもよい。
次に、各フィルタ62R、62B、62Gの各々の上にマイクロレンズ63を形成する。マイクロレンズ63は、その焦点が第1の主面20aに位置する凸レンズであって、例えば感光性樹脂を現像してパターニングした後にそれを加熱して半球状に溶融することで形成される。
次に、図22に示す断面構造を得るまでの工程について説明する。
まず、画素領域Iにおける読出電極35に正電圧を印加することにより、読出電極35の材料である銅のイオンを中間絶縁膜60に溶出させる。その銅イオンは、各電極35、55間の電位差によって中間絶縁膜60の中を読出電極35から素子電極55に向かって移動し、素子電極55において還元されて金属銅に戻る。そして、このような反応が繰り返すことで金属銅がフィラメント状に成長して導電性フィラメント64となる。
画素領域Iにおいては、その導電性フィラメント64が読出電極35から素子電極55に延びるように線状に形成され、これにより読出電極35と素子電極55とが電気的に接続される。
なお、素子電極55の最上層には不活性金属膜58(図12参照)が形成されているが、その不活性金属膜58の材料であるルテニウムは銅よりも安定であるため本工程では中間絶縁膜60に溶出しない。
一方、周辺領域IIにおいては、読出電極35と局所配線56との間に電位差を与えることによりこれらの間に導電性フィラメント64を形成し、その導電性フィラメント64で読出電極35と局所配線56とを電気的に接続する。
このとき、本実施形態では上記のように周辺領域IIにダミーパターン51を設けたため、局所配線56がその上の読出電極35に近づくようになり、これらの間に導電性フィラメント64を形成するのが容易となる。
導電性フィラメント64の形成はフォーミングとも呼ばれ、例えば各電極35、55の間や読出電極35と局所配線56との間に1V〜5V程度の電位差を与えることによりフォーミングを行う。
そのフォーミングにより導電性フィラメント64を簡単に形成するには、中間絶縁膜60の厚さを5μm以下に薄くすることにより銅イオンの移動距離を短くするのが好ましい。但し、中間絶縁膜60が薄すぎると中間絶縁膜60にリーク電流のパスが発生するため、10nm以上の厚さに中間絶縁膜60を形成するのが好ましい。
なお、第1の固体電解質膜37(図14参照)や第2の固体電解質膜57として遷移金属酸化物の絶縁膜を形成した場合には、このフォーミングによって各電極35、55間の中間絶縁膜60にフィラメント状の酸素欠損が生じる。このように酸素欠損が生じた部分の中間絶縁膜60は導電性を示すため、これにより導電性フィラメント64が形成されることになる。
以上により、本実施形態に係る撮像素子70の基本構造が完成する。
実使用下においては、シリコン基板20に形成された読み出し回路が、周辺領域IIの局所配線56と導電性フィラメント64を介して共通コンタクト層43を接地電位にし、各赤外光検出素子PDIRの各々の下面を接地する。
また、画素領域Iにおいては、シリコン基板20に形成された読み出し回路が、各電極35、55と導電性フィラメント64を介して各赤外光検出素子PDIRの素子コンタクト層47に正電位を与える。これにより、各赤外光検出素子PDIRにはpn接合に対する逆バイアス電圧が印加されることになる。
次に、その撮像素子70の動作について説明する。
図23は、本実施形態に係る撮像素子70の動作について説明するための断面図である。
この撮像素子70においては、シリコン基板20の第1の主面20aに光Lが入射することで、その光Lに含まれる可視光L1が可視光検出素子PDVR(図2参照)において検出される。このとき、本実施形態では図19の工程でシリコン基板20の厚さを薄くしたため、可視光L1がシリコン基板20を透過して可視光検出素子PDVRに到達しやすくなる。
一方、光Lに含まれる赤外光L2は、シリコン基板20を透過して第2の主面20bから出射し、上記のように逆バイアス電圧が印加されている赤外光検出素子PDIRにおいて検出される。
なお、中間絶縁膜60の材料であるポリマの固体電解質は赤外光を透過するため、中間絶縁膜60によって赤外光L2が減衰することは殆どない。また、層間絶縁膜31の材料である酸化シリコンは波長が5μm以下の中赤外光を透過するため、本実施形態に係る撮像素子70は近赤外〜中赤外光を検出するのに特に適している。
但し、赤外光L2が配線33や各電極35、55で遮られてしまうと、赤外光検出素子PDIRに入射する赤外光L2が少なくなり、赤外光検出素子PDIRで効率的に赤外光L2を検出できなくなる。
そこで、本実施形態では、赤外光検出素子PDIRの縁部71寄りに配線33と各電極35、55とを寄せることにより、配線33や各電極35、55によって赤外光L2が遮られないようにし、赤外光検出素子PDIRが赤外光L2を効率的に検出できるようにする。
図24(a)は、素子電極55とその周囲の平面図である。
図24(a)に示すように、この例では、素子電極55の平面形状を縁部71に沿ったリング状とすることにより、縁部71に素子電極55を寄せる。
これにより、リング状の素子電極55の内側を通る赤外光L2の量が多くなり、赤外光検出素子PDIRが赤外光L2を受光する面積を増やすことができる。
一方、図24(b)は、読出電極35とその周囲の平面図である。
図24(b)に示すように、読出電極35も縁部71に沿ったリング状である。これにより、平面視で縁部71に読出電極35が寄せられると共に、読出電極35の内側を通る赤外光L2の量を多くすることができる。
以上説明した本実施形態によれば、図23に示したように、読出電極35と素子電極55とを接続するためのバンプを設けず、導電性フィラメント64によりこれらの電極35、55を接続する。
導電性フィラメント64の幅は数nm〜10nm程度と極めて細いため、赤外光L2の大部分が導電性フィラメント64で遮られずに赤外光検出素子PDIRに至るようになり、赤外光検出素子PDIRにおいて赤外光L2を検出するのが容易となる。
しかも、その導電性フィラメント64は、図22の工程で各電極35、55の間に電位差を与えて読出電極35から素子電極55に向けて銅イオンを移動させることにより形成される。そのため、各電極35、55が基板横方向に位置ずれしていても、各電極35、55がオーバーラップしている部分の間の電位差によって銅イオンが素子電極55に到達することができ、各電極35、55同士を導電性フィラメント64で接続することが可能となる。
更に、本実施形態ではシリコン基板20側から光Lを取り込むため、可視光L1が赤外光検出素子PDIR等に含まれる化合物半導体で減衰せず、シリコン基板20に形成された可視光検出素子PDVR(図2参照)で可視光L1を検出するのが容易となる。
次に、この撮像素子70の等価回路について説明する。
その等価回路は、可視光検出素子PDVRと赤外光検出素子PDIRの各々の読み出し回路をそれぞれ個別に設けるか、またはこれらの光検出素子PDVR、PDIRで読み出し回路を共有するかに応じて以下の二例がある。
・第1例
本例では、可視光検出素子PDVRと赤外光検出素子PDIRの各々の読み出し回路をそれぞれ個別に設ける。
図25(a)、(b)は、第1例に係る撮像素子70の等価回路図である。
このうち、図25(a)は、可視光検出素子PDVRの読み出し回路を含む等価回路図である。そして、図25(b)は、赤外光検出素子PDIRの読み出し回路を含む等価回路図である。
図25(a)に示すように、可視光検出素子PDVRには、第1のリセットトランジスタRT1、第1の増幅トランジスタSF1、及び第1のスイッチSW1を含む読み出し回路が接続される。
このうち、第1のスイッチSW1は、第1のトランジスタTR1と第2のトランジスタTR2とを接続点P1において直列接続してなる。
この読み出し回路は、CMOSプロセスによって可視光検出素子PDVRと共にシリコン基板20に形成される。
読み出しに際しては、第1のリセットトランジスタRT1をオフ状態にし、かつ第1のトランジスタTR1と第2のトランジスタTR2をオン状態にする。これにより、可視光検出素子PDVRに蓄積されたキャリアの量の応じた電圧が第1の増幅トランジスタSF1のゲートに印加され、そのキャリアの量に応じた第1の読み出し電流Iout1が接続点P1から出力される。
なお、可視光検出素子PDVRに蓄積されたキャリアをリセットするには、第1のリセットトランジスタRT1をオン状態にして可視光検出素子PDVRのカソードに正の電源電圧Vddを印加すればよい。
一方、図25(b)に示すように、赤外光検出素子PDIRには、転送トランジスタT、キャパシタC、第2のリセットトランジスタRT2、第2の増幅トランジスタSF2、及び第2のスイッチSW2を含む読み出し回路が接続される。
この読み出し回路は、CMOSプロセスによってシリコン基板20に形成され、前述の導電性フィラメント64等を介して赤外光検出素子PDIRと電気的に接続される。
このうち、第2のスイッチSW2は、第3のトランジスタTR3と第4のトランジスタTR4とを接続点P2において直列接続してなる。
読み出しに際しては、第2のリセットトランジスタRT2をオフ状態にしながら転送トランジスタTをオン状態にすることにより、赤外光検出素子PDIRで生成したキャリアをキャパシタCに蓄積する。
これにより、蓄積したキャリアによってキャパシタCに生じた電圧が第2の増幅トランジスタSF2のゲート電極に印加される。この状態で第3のトランジスタTR3と第4のトランジスタTR4をオン状態にすることにより、赤外光検出素子PDIRに蓄積されたキャリアの量の応じた第2の読み出し電流Iout2が接続点P2から出力される。
また、キャパシタCに蓄積されたキャリアをリセットするには、転送トランジスタTをオフ状態にしながら、第2のリセットトランジスタRT2をオン状態にすればよい。
なお、第2の読み出し電流Iout2を読み出す際に、図22の工程で導電性フィラメント64を形成したときと逆の極性の電圧を各電極35、55に印加すると導電性フィラメント64が消失するおそれがある。そのため、第2の読み出し電流Iout2を読み出す際には、導電性フィラメント64を形成したときと同じ極性の電圧を各電極35、55に印加し、導電性フィラメント64が消失しないようにするのが好ましい。これについては後述の第2例でも同様である。
・第2例
本例では、可視光検出素子PDVRと赤外光検出素子PDIRの各々の読み出し回路を共有する。
図26は、第2例に係る撮像素子70の等価回路図である。
なお、図26において、図25(a)、(b)で説明したのと同じ要素はこれらの図におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
図26に示すように、本例では、図25(a)、(b)で説明した各光検出素子PDVR、PDIRの読み出し回路同士を第3のスイッチSW3と第4のスイッチSW4とを介して接続する。
そして、これらのスイッチSW3、SW4の接続点P3には、第5のトランジスタTR5と第6のトランジスタTR6とを接続点P4で直列接続してなる第5のスイッチSW5が接続される。
読み出しに際しては、第5のトランジスタTR5と第6のトランジスタTR6をオン状態にする。これにより、接続点P4から第3の読み出し電流Iout3が出力される。
第3の読み出し電流Iout3の大きさは、各スイッチSW3、SW4の開閉状態に応じて各光検出素子PDVR、PDIRのいずれか一方の読み出し電流となったり、これらの読み出し電流を合成した電流に等しくなったりする。
例えば、各スイッチSW3、SW4を同時にオン状態にすると、各光検出素子PDVR、PDIRのそれぞれの読み出し電流Iout1、Iout2を合成した電流に第3の読み出し電流Iout3が等しくなる。
この場合、第3の読み出し電流Iout3の大きさは、各光検出素子PDVR、PDIRの各々が受光した光を反映した値となるため、可視画像と赤外画像との合成画像を第3の読み出し電流Iout3から得ることができる。
一方、第3のスイッチSW3をオン状態にし、かつ第4のスイッチSW4をオフ状態にすることで、可視光検出素子PDVRの第1の読み出し電流Iout1に第3の読み出し電流Iout3が等しくなり、その第3の読み出し電流Iout3に基づいて可視画像を得ることができる。
これとは逆に、第4のスイッチSW4をオン状態にし、かつ第3のスイッチSW3をオフ状態にすることで、赤外光検出素子PDIRの第2の読み出し電流Iout2に第3の読み出し電流Iout3が等しくなり、その第3の読み出し電流Iout3に基づいて赤外画像を得ることができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態で説明した撮像素子を備えた撮像装置について説明する。
図27は、本実施形態に係る撮像装置の構成図である。
なお、図27において、第1実施形態で説明したのと同じ要素には第1実施形態におけるのと同じ符号を付し、以下ではその説明を省略する。
この撮像装置100は、赤外画像と可視画像とを撮像することが可能な装置であって、撮像レンズ101と検出器102とを有する。
このうち、撮像レンズ101は、可視光と赤外光の両方を透過するレンズであって、その焦点面に検出器102が設けられる。そのような撮像レンズ101の材料としては、例えばZnSe、ZnS、CaF2、及びMgF2がある。
また、検出器102は、可視画像と赤外画像を取得するデバイスであり、第1実施形態で説明した撮像素子70を備える。
その撮像素子70の前面には、撮像レンズ101から入射した光を断続的に遮断するシャッタ103が設けられる。
検出器102には冷却器105が接続されており、実使用下においてはその冷却器105により撮像素子70が冷却される。これにより、検出器102自身が発する赤外光を低減でき、かつ撮像素子70で発生する暗電流が減ることでノイズが減少するため、撮像素子70により鮮明な赤外画像を得ることができる。
なお、検出器102の冷却温度は温度センサ104により監視されており、その監視結果に基づいて冷却器105が撮像素子70の冷却温度を所定値に維持する。
また、検出器102の動作は制御部106により制御される。制御部106による制御の対象としては、例えば、撮像素子70から第1〜第3の読み出し電流Iout1〜Iout3(図25〜図26参照)を読み出すタイミングがある。
また、検出器102の後段には補正部108が設けられる。補正部108は、撮像素子70から出力される第1〜第3の読み出し電流Iout1〜Iout3に対して画素ごとに感度補正等の補正を行い、その補正を加味した画像信号を出力する。
その画像信号は、後段の表示部109と記憶部110に出力される。
表示部109は、例えば液晶ディスプレイであって、画像信号に基づいて可視画像、赤外画像、及びこれらの合成画像のいずれかを表示する。また、記憶部110は、画像信号を記録するフラッシュメモリやハードディスク等である。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態で説明した撮像素子70を検出器102に設ける。
その撮像素子70においては、前述のように導電性フィラメント64(図23参照)の幅が狭いため、導電性フィラメント64により赤外光が遮られることがない。そのため、本実施形態に係る撮像装置100においても赤外光を効率的に検知することができ、鮮明な赤外画像と可視画像とを得ることが可能となる。
以上説明した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 赤外光を検出する複数の第1の光検出素子と、
複数の前記第1の光検出素子の各々の上に形成された複数の第1の電極と、
複数の前記第1の電極の各々の上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に形成され、複数の前記第1の電極の各々に相対する複数の第2の電極と、
前記第2の電極から前記第1の電極に延びるように前記第1の絶縁膜に形成された導電性フィラメントと、
複数の前記第2の電極の各々の上に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に設けられ、前記赤外光を含む光が入射する第1の主面と、前記赤外光が出射する第2の主面とを備えたシリコン基板と、
前記シリコン基板に設けられ、前記光に含まれる可視光を検出する複数の第2の光検出素子と、
を有する撮像素子。
(付記2) 前記第1の電極と前記第2の電極の各々は、前記第1の光検出素子の縁部寄りに設けられたことを特徴とする付記1に記載の撮像素子。
(付記3) 前記第2の絶縁膜の上に設けられた配線を更に有し、
前記配線が前記第1の光検出素子の縁部寄りに設けられたことを特徴とする付記1に記載の撮像素子。
(付記4) 複数の前記第1の光検出素子の各々に固定された支持基板を更に有することを特徴とする付記1乃至付記3のいずれかに記載の撮像素子。
(付記5) 前記支持基板の材料はシリコンであることを特徴とする付記4に記載の撮像素子。
(付記6) 前記支持基板の上に設けられたコンタクト膜を更に有し、
複数の前記第1の光検出素子の各々が、前記コンタクト膜の上に形成されたことを特徴とする付記4に記載の撮像素子。
(付記7) 前記コンタクト膜の上に形成されたダミーパターンと、
前記コンタクト膜、前記ダミーパターン、及び複数の前記第1の光検出素子の各々を覆う第3の絶縁膜と、
前記ダミーパターンの横の前記第3の絶縁膜に形成され、前記コンタクト膜に至る深さのホールと、
前記第3の絶縁膜の上に形成され、前記ホールから前記ダミーパターンの上に延び、かつ、複数の前記第2の電極のうちの一に相対する配線とを有し、
互いに相対する前記配線と前記第2の電極との間に前記導電性フィラメントが形成されたことを特徴とする付記6に記載の撮像素子。
(付記8) 撮像レンズと、
前記撮像レンズの後段に設けられた撮像素子とを有し、
前記撮像素子は、
赤外光を検出する複数の第1の光検出素子と、
複数の前記第1の光検出素子の各々の上に形成された複数の第1の電極と、
複数の前記第1の電極の各々の上に形成された第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に形成され、複数の前記第1の電極の各々に相対する複数の第2の電極と、
前記第2の電極から前記第1の電極に延びるように前記第1の絶縁膜に形成された導電性フィラメントと、
複数の前記第2の電極の各々の上に形成された第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に設けられ、前記赤外光を含む光が入射する第1の主面と、前記赤外光が出射する第2の主面とを備えたシリコン基板と、
前記シリコン基板に設けられ、前記光に含まれる可視光を検出する複数の第2の光検出素子とを有する撮像装置。