本発明の第1の実施形態について、図1乃至図8Cを参照して説明する。
図1は、本実施形態のクレーン1の一例を示す。図1に示すように、クレーン1は、走行体2と、走行体2上に配置される旋回体3と、を備え、旋回体3は、走行体2に対して旋回可能である。また、旋回体3には、ブーム7の基端部が連結される。ブーム7は、その軸方向に伸縮可能であるとともに、旋回体3に対して起伏可能である。旋回体3が旋回すると、ブーム7は、旋回体3と一緒に旋回する。
旋回体3とブーム7との間には、デリックシリンダ(ブーム起伏シリンダ)8が設けられる。デリックシリンダ8を伸長又は収縮することにより、ブーム7が旋回体3に対して起状又は伏状する。ブーム7の起伏方向(図1の矢印Y1及び矢印Y2側)は、ブーム7の軸方向に対して交差する(略垂直である)。ここで、ブーム7において、ブーム7の軸方向に対して略垂直で、かつ、ブーム7の起伏方向に対して交差する(略垂直な)方向を、ブーム7の幅方向とする。
クレーン1を輸送する際には、ブーム7は、走行体2及び旋回体3とは別々に輸送される。このため、ブーム7は、デリックシリンダ8に対して着脱可能に取付けられる。
図2A及び図2Bを用いて、ブーム7とデリックシリンダ8の連結構造について説明する。本実施形態では、ブーム7には、2つのデリックシリンダ8が取付けられる。このため、ブーム7には、デリックシリンダ8との連結部11が、幅方向について両側に形成される。連結部11には、デリックシリンダ8の先端部(一端部)9が配置される。また、連結部11は、ブーム7の幅方向について外側を向く外側面15を備える。
ブーム7の連結部11には、孔17が形成され、デリックシリンダ8の先端部9には、孔19が形成される。ブーム7の孔17は、ブーム7の幅方向について連結部11を貫通している。デリックシリンダ8の孔19は、ブーム7の幅方向についてデリックシリンダ8の先端部を貫通している。孔17,19にデリックトップピン(連結ピン)21が挿入されることにより、デリックシリンダ8がブーム7の連結部11へ取付けられる。このとき、デリックシリンダ8は、孔17,19が互いに対して同軸又は略同軸になる状態で、ブーム7の連結部11に取付けられる。デリックトップピン21は、孔17,19から抜脱可能である。このため、デリックシリンダ8は、ブーム7に取外し可能に取付けられる。
デリックトップピン21は、中心軸(長手軸)Lを有し、端面23,24の間に中心軸Lに沿って延設される。デリックトップピン21が孔17,19に挿入された状態では、中心軸Lは、ブーム7の幅方向に対して平行又は略平行で、孔17,19に対して同軸又は略同軸になる。また、デリックトップピン21の端面24は、ブーム7の幅方向について内側を向く状態で配置され、デリックトップピンの端面23は、ブーム7の幅方向について外側を向く状態で配置される。
デリックトップピン21のそれぞれには、デリックトップピン着脱用シリンダ20が取付けられている。デリックトップピン着脱用シリンダ20は、ブーム7の幅方向について連結部11の間に配置される。デリックトップピン着脱用シリンダ20のそれぞれは、ブーム7の幅方向に沿って延設され、ブーム7の幅方向について伸縮する。デリックトップピン着脱用シリンダ20のそれぞれは、一端がブーム7に固定され、他端が対応するデリックトップピン21の端面24に連結されている。デリックトップピン着脱用シリンダ20のそれぞれがブーム7の幅方向について伸縮することにより、対応するデリックトップピン21が、ブーム7の幅方向についてブーム7に対して移動する。
ブーム7をデリックシリンダ8に取付ける際には、ブーム7の連結部11の内側にデリックシリンダ8の先端部9を配置し、孔17,19が互いに対して同軸又は略同軸になる状態で、デリックトップピン着脱用シリンダ20を伸張させる。これにより、デリックトップピン21はブーム7に対して幅方向について外側へ移動し、孔17,19に挿入される。デリックトップピン21が孔17,19に挿入されることにより、ブーム7がデリックシリンダ8に取付けられる。
また、ブーム7をデリックシリンダ8から取り外す際には、デリックトップピン着脱用シリンダ20を収縮させる。これにより、デリックトップピン21はブーム7に対して幅方向について内側に移動し、孔17,19から抜脱される。デリックトップピン21が孔17,19から抜脱されることにより、デリックシリンダ8とブーム7との連結が解除され、ブーム7をデリックシリンダ8から取り外すことが可能になる。
図2A及び図2Bに示すように、デリックトップピン21には、端面23から内部側に向かって、挿入空洞25が形成される。挿入空洞25は、端面23からデリックトップピン21の中心軸Lに沿って反対側の端面24へ向かって延設されている。挿入空洞25は、端面23において開口27で開口する。また、挿入空洞25は、第1の空洞延設部26、及び、第1の空洞延設部26の開口27側に連続する第2の空洞延設部28を有する。第1の空洞延設部26は、挿入空洞25において開口27とは反対側(内部側)の端部を形成する。空洞延設部26,28のそれぞれは、中心軸Lに垂直又は略垂直な断面において、略真円形状になる。ただし、第2の空洞延設部28は、第1の空洞延設部26に比べて、径が大きく、中心軸Lに垂直又は略垂直な断面積が大きい。すなわち、第2の空洞延設部28では、挿入空洞25の周方向(中心軸Lの軸回り)について全周に渡って、挿入空洞25の周壁が、第1の空洞延設部26に比べて、外周側へ凹む。
第2の空洞延設部28は、開口27と連続する。図3に示すように、開口27は、中心軸Lが通過する開口中央部(メイン開口部)31と、開口中央部31から外周側(中心軸Lから離れる側)に延設される一対の外方延出部(サブ開口部)33と、を有する。外方延出部33のそれぞれは、開口中央部31と連続する。外方延出部33は、中心軸Lの軸回りについて、すなわち、挿入空洞25の周方向について、互いに対して離れて配置される。本実施形態では、外方延出部33は、中心軸Lを挟んで互いに対して反対側に配置され、周方向について互いに対して略180°離れて配置されている。本実施形態では、開口中央部31及び外方延出部33が前述のような構成であるため、端面23に形成される挿入空洞25の開口27は、中心軸Lに交差する(略垂直な)方向に沿って延設されるカギ穴状になる。なお、図2Aでは、デリックトップピン21は、中心軸Lに平行又は略平行で、かつ、外方延出部33を通過しない断面で示され、図2Bでは、デリックトップピン21は、中心軸Lに平行又は略平行で、かつ、外方延出部33を通過する断面で示される。また、図3では、デリックトップピン21を、開口27側から視た状態で示す。
開口27の開口面積は、第1の空洞延設部26の中心軸Lに垂直又は略垂直な断面積に比べて大きく、第2の空洞延設部28の中心軸Lに垂直又は略垂直な断面積に比べて小さい。また、デリックトップピン21は、第1の空洞延設部26と第2の空洞延設部28との境界部分に係合面30を備え、第2の空洞延設部28と開口27との境界部分に係合面29を備える。そして、第2の空洞延設部28では、中心軸Lに沿う方向について係合面29,30の間に溝部35が延設される。溝部35は、挿入空洞25の周方向に沿って延設される。また、溝部35は、挿入空洞25の周方向について外方延出部33とは異なる角度範囲において全体に渡って延設される。
図4に示すように、デリックトップピン21の端面23には、デリックトップピン21の孔17,19からの抜け止めを防止するための抜け止めブラケット40が取付けられる。抜け止めブラケット40は、デリックトップピン21が孔17,19に挿通された状態で、デリックトップピン21の端面23にブーム7の外側から取付けられる。
図5及び図6は、抜け止めブラケット40の構成を示す。図5及び図6に示すように、抜け止めブラケット40は、ブラケット本体41を備える。ブラケット本体41は、中心軸Cを有し、端面42,43の間に中心軸Cに沿って延設される。また、ブラケット本体41は、中心軸Cに交差する(略垂直な)方向の一方側を向く第1の面44と、第1の面44とは反対側を向く第2の面45を備える。ここで、中心軸Cに沿う方向を抜け止めブラケット40の軸方向とする。また、中心軸Cに対して交差し(略垂直で)、かつ、第1の面44及び第2の面45が向く方向に交差する(略垂直な)方向を、抜け止めブラケット40の幅方向とする。なお、図5は、抜け止めブラケット40を第1の面44が向く側から視た図であり、図6は、抜け止めブラケット40を幅方向の一方側から視た図である。
ブラケット本体41は、保持可能な保持部46と、保持部46に対して端面43側(矢印C1側)に設けられる挿入部49とを備える。挿入部49は、ブラケット本体41の端面43を形成する。
保持部46は、抜け止めブラケット40の幅方向に沿って延設されている。保持部46は、2つの延出部47を備える。延出部47は、抜け止めブラケット40の幅方向について、中心軸Cを挟んで互いに対して反対側に設けられている。延出部47のそれぞれは、保持部46の端面43が位置する側の端面において、端面43側へ突出する突出部分48を備える。突出部分48は、抜け止めブラケット40の幅方向についての保持部46の両端を形成する。
挿入部49は、挿入端部51を備える。挿入端部51は、端面43を形成している。挿入端部51は、中心軸Cに沿って延設され、本実施形態では、中心軸Cを中心とする略円柱形状に形成されている。挿入端部51の径は、デリックトップピン21に設けられる第1の空洞延設部26の径に対して同一又は略同一であるか、又は、第1の空洞延設部26の径よりも僅かに小さい。
挿入部49は、中心軸Cに沿って延設される挿入本体50を備える。中心軸Cに沿う方向について挿入本体50は、保持部46と挿入端部51との間に配置される。挿入本体50の径は、挿入端部51の径以下に形成される。
また、挿入部49は、挿入本体50の外周から外周側(中心軸Cから離れる側)に延設される一対の挿入突起52を備える。挿入突起52は、中心軸Cの軸回りについて、すなわち、挿入本体50の周方向について、互いに対して離れて配置される。本実施形態では、挿入突起52は、中心軸Cを挟んで互いに対して反対側に配置され、周方向について互いに対して略180°離れて配置されている。本実施形態では、挿入部49において、挿入本体50及び挿入突起52によって形成される中心軸Cに垂直又は略垂直な断面は、中心軸Cに交差する方向(ブラケット本体41の幅方向)に沿って延設されるカギ形状になる。また、挿入突起52は、端面42側を向く第1の係合面53と、端面43側を向く第2の係合面54を備える。
挿入突起52は、挿入端部51の外周に対して外側の位置まで延設されている。このため、挿入部49を中心軸Cに沿って端面43側から視た場合には、挿入突起52の一部は、挿入端部51の外周から中心軸Cから離れる側に延出する。また、挿入突起52における挿入本体50の外周からの延出部分の断面積は、デリックトップピン21の端面23における外方延出部33の面積に対して同一又は略同一であるか、又は、外方延出部33の面積よりも僅かに小さい。
ブラケット本体41には、回り止めユニット61が取付けられている。回り止めユニット61は、中心軸Cの軸回りについて、すなわち、挿入本体50の周方向について、挿入突起52のそれぞれに対して離れて配置される。本実施形態では、回り止めユニット61は、周方向について挿入突起52のそれぞれに対して略90°離れて配置されている。
回り止めユニット61は、ブラケット本体41に固定されるケース63と、ケース63に取り付けられる回り止めピン65を備える。回り止めピン65は、ケース63の内部においてケース63によって支持されている。回り止めピン65は、ブラケット本体41の中心軸C(軸方向)に沿って延設されている。また、回り止めピン65は、抜け止めブラケット40の軸方向についてケース63及びブラケット本体41に対して移動可能に取付けられている。
回り止めピン65は、ブラケット本体41の軸方向について、ブラケット本体41の端面42が向く側の端部を形成する操作部67と、端面43が向く側の端部(端面69)を形成するピン端部68と、操作部67とピン端部68との間に軸方向に沿って延設される延設部66とを備える。操作部67では、回り止めピン65をケース63及びブラケット本体41に対して軸方向に沿って移動させる操作が行われる。
また、ケース63の内部には、バネ(弾性部材)70が配置されている。バネ70は、抜け止めブラケット40の軸方向に沿って延設されている。バネ70の一端は、ケース63の内部に接続され、バネ70の他端は、回り止めピン65のピン端部68に接続されている。回り止めピン65がケース63に対して軸方向に沿って移動することにより、バネ70が伸縮する。そして、バネ70が伸縮することにより、回り止めピン65にバネ70の弾性力が伝達される。例えば、バネ70が自然長から収縮した状態では、回り止めピン65には、バネ70の弾性力がピン端部68の端面69が向く側へ作用する。
次に、図7A〜図7C及び図8A〜図8Cを用いて、抜け止めブラケット40のデリックトップピン21への取付けにおける作業手順を説明する。クレーン1を用いて作業を行う際には、作業開始前に、ブーム7が旋回体3に連結されたデリックシリンダ8に取り付けられる。この際、デリックトップピン着脱用シリンダ20が伸張することによって、孔17,19にデリックトップピン21が挿入されることにより、ブーム7とデリックシリンダ8とが連結される。そして、デリックトップピン21には、デリックトップピン21が孔17,19から抜脱されることを防止するため、抜け止めブラケット40が取付けられる。
抜け止めブラケット40のデリックトップピン21への取付けにおいては、作業者は、抜け止めブラケット40の保持部46を保持し、抜け止めブラケット40の中心軸Cとデリックトップピン21の中心軸Lが同軸又は略同軸となる状態で、ブーム7の幅方向について外側から抜け止めブラケット40の挿入部49をデリックトップピン21の挿入空洞25に挿入する。この際、図7A及び図8Aに示すように、中心軸C,Lの軸回りについて挿入突起52のそれぞれが外方延出部33の1つと同一又は略同一の角度位置になる状態で、挿入部49が挿入空洞25に挿入される(第1の係合状態)。挿入部49は、周方向について挿入突起52が外方延出部33と同一又は略同一の角度位置になる状態でのみ、挿入空洞25に挿入可能である。
第1の係合状態では、挿入端部51は、開口27の開口中央部31及び第2の空洞延設部28を通過し、第1の空洞延設部26に挿入される。前述のように、挿入端部51の径は、第1の空洞延設部26の径に対して同一又は略同一であるか、又は、第1の空洞延設部26の径よりも僅かに小さい。このため、挿入端部51が第1の空洞延設部26に挿入された状態では、抜け止めブラケット40の中心軸Cとデリックトップピン21の中心軸Lが同軸又は略同軸となる。したがって、挿入端部51が第1の空洞延設部26に挿入されることにより、抜け止めブラケット40の中心軸Cがデリックトップピン21の中心軸Lに対して傾いた状態で取付けられることが防止され、デリックトップピン21に対する抜け止めブラケット40の姿勢が規定される。また、デリックトップピン21がブーム7の孔17に挿入され、かつ、抜け止めブラケット40の挿入部49が挿入空洞25に挿入された状態では、延出部47の突出部分48は、ブーム7の外側面15に対向し、挿入空洞25に挿入されない。
また、第1の係合状態では、挿入突起52は、開口27の外方延出部33を通過し、第2の空洞延設部28に配置される。
また、前述のようにして挿入部49が挿入空洞25に挿入される際には、回り止めユニット61が中心軸C(L)の軸回りについて外方延出部33に対して略90°離れた角度位置に位置する状態で、挿入部49が挿入空洞25に挿入される。この際、回り止めピン65のピン端部68の端面69は、挿入空洞25の縁部またはデリックトップピン21の端面23に当接する。このため、抜け止めブラケット40の挿入部49が挿入空洞25に挿入される際には、回り止めピン65は、デリックトップピン21の端面23によって、ブーム7の幅方向について外側へ押圧される。このため、挿入部49が挿入空洞25に挿入されるにつれて、回り止めピン65がケース63に対して端面42が向く側へ移動するとともに、バネ70が自然状態から収縮する。したがって、第1の係合状態では、バネ70は、自然長から収縮した状態となり、回り止めピン65には、バネ70の弾性力が作用する。
第1の係合状態では、抜け止めブラケット40は、デリックトップピン21に対して第1の角度位置に位置する。また、第1の係合状態では、抜け止めブラケット40の挿入部49は、デリックトップピン21の挿入空洞25内において、デリックトップピン21に対して中心軸C(L)に沿って移動可能である。また、第1の係合状態では、抜け止めブラケット40は、デリックトップピン21に対して中心軸C(L)の軸回りについて回転可能である。
第1の係合状態から、作業者は、挿入空洞25に挿入部49が挿入された抜け止めブラケット40を中心軸Cを中心としてデリックトップピン21に対して回動させる。このとき、抜け止めブラケット40の挿入突起52が第2の空洞延設部28内を中心軸Cの軸回りについて移動し、周方向について挿入突起52が外方延出部33から離間する(第2の係合状態)。そして、周方向について挿入突起52が外方延出部33から略90°離れた状態まで、抜け止めブラケット40をデリックトップピン21に対して回転する。図7B及び図8Bは、図7A及び図8Aに示す状態から、周方向について抜け止めブラケット40を90°回転させた状態を示す。
第2の係合状態では、抜け止めブラケット40は、デリックトップピン21に対して第1の角度位置とは異なる第2の角度位置に位置する。また、第2の係合状態では、挿入部49の挿入突起52は、外方延出部33に対して中心軸C(L)の軸回りについて略90°離れた角度位置に位置する。第2の係合状態では、挿入突起52は、溝部35において係合面29,30の間に配置される。このとき、挿入突起52の係合面53と溝部35の係合面29とが対向し、挿入突起52の係合面54と溝部35の係合面30とが対向する。
第2の係合状態では、挿入突起52が溝部35の係合面29,30に干渉することにより、抜け止めブラケット40のデリックトップピン21に対する中心軸C(L)に沿う移動が規制される。また、第2の係合状態では、抜け止めブラケット40は、デリックトップピン21に対して中心軸C(L)の軸回りについて回転可能である。
第2の係合状態では、抜け止めブラケット40のデリックトップピン21に対する中心軸C(L)に沿う移動が規制される。このため、抜け止めブラケット40がデリックトップピン21に第2の係合状態で取付けられた際に、例えばデリックトップピン着脱用シリンダ20によってデリックトップピン21をブーム7の幅方向について内側に移動させる駆動力が作用した場合には、駆動力は、デリックトップピン21を介して抜け止めブラケット40に伝達される。抜け止めブラケット40の保持部46の延出部47の突出部分48は、ブーム7の連結部11の外側面15にブーム7の幅方向について外側から当接する。これにより、抜け止めブラケット40及びデリックトップピン21の、ブーム7に対する内側への移動が規制される。
したがって、デリックトップピン21に抜け止めブラケット40が第2の係合状態で取付けられることにより、デリックトップピン21のブーム7に対する内側への移動が規制され、デリックトップピン21が孔17,19から抜脱されることが防止される。これにより、デリックシリンダ8がブーム7から意図せず取り外されることが防止され、作業の安定性が向上する。
また、図7B及び図8Bに示すように、回り止めユニット61が、中心軸Cの軸回りについて外方延出部33と同一又は略同一の角度位置に位置する状態では、回り止めピン65のピン端部68の端面69は、デリックトップピン21の端面23とは干渉しない。したがって、回り止めピン65は、デリックトップピン21に対して軸方向について移動することがデリックトップピン21の端面23によって規制されない。
本実施形態では、回り止めユニット61にはバネ70が設けられている。回り止めピン65がデリックトップピン21の端面23と当接している状態では、回り止めピン65は、バネ70の弾性力によって押圧される。前述のように、周方向について回り止めユニット61が外方延出部33と同一又は略同一の角度位置になる状態では、回り止めピン65は、デリックトップピン21に対して軸方向について移動することが、端面23によって規制されない。このため、回り止めユニット61が外方延出部33と同一又は略同一の角度位置になる状態では、図7C及び図8Cに示すように、回り止めピン65がバネ70の弾性力によってブラケット本体41に対して移動するとともに、回り止めピン65のピン端部68がデリックトップピン21の外方延出部33に挿入される。そして、ピン端部68が外方延出部33に挿入されることにより、回り止めピン65と外方延出部33とが係合する(第3の係合状態)。
第3の係合状態では、回り止めピン65のピン端部68の外周面が外方延出部33の縁に当接することにより、抜け止めブラケット40がデリックトップピン21に対して中心軸C(L)の軸回りについて回転することが規制される。したがって、抜け止めブラケット40は、デリックトップピン21に対して中心軸Cの軸回りに回転できない。これにより、挿入突起52が外方延出部33から離れた角度位置に位置し、挿入部49の挿入空洞25からの抜脱が規制される第2の角度位置から、挿入突起52が外方延出部33と同一又は略同一の角度位置に位置し、挿入突起52が外方延出部33を通って挿入空洞25から抜脱可能な第1の角度位置に、抜け止めブラケット40がデリックトップピン21に対して回転することが規制される。これにより、抜け止めブラケット40がデリックトップピン21に有効に取付けられる。そして、抜け止めブラケット40がデリックトップピン21に有効に取付けられることにより、デリックトップピン21の孔17,19からの抜脱が有効に防止される。
また、デリックシリンダ8をブーム7から取り外す際には、作業者は、回り止めピン65のピン端部68がデリックトップピン21の外方延出部33に挿入された状態(第3の係合状態)から、回り止めピン65の操作部67をケース63に対して外側へ移動させる。そして、回り止めピン65をブラケット本体41に対して外側へ移動させることにより、回り止めピン65のピン端部68を外方延出部33から引き抜く(第2の係合状態)。そして、回り止めピン65が外方延出部33から引き抜かれた状態で、抜け止めブラケット40をデリックトップピン21に対して回転させる。そして、抜け止めブラケット40の挿入突起52がデリックトップピン21の外方延出部33と同一又は略同一の角度位置に位置する状態(第1の係合状態)で、挿入部49を挿入空洞25から引き抜くことにより、抜け止めブラケット40をデリックトップピン21から取り外す。抜け止めブラケット40がデリックトップピン21から取り外された状態でデリックトップピン着脱用シリンダ20が収縮することより、デリックトップピン21がブーム7の幅方向について内側に移動し、孔17,19から抜脱される。そして、デリックトップピン21が孔17,19から抜脱されることにより、デリックシリンダ8とブーム7との連結が解除され、デリックシリンダ8をブーム7から取り外し可能になる。
また、本実施形態では、回り止めピン65は、外方延出部33から離れた角度位置となる状態では、バネ70によって押圧される状態で、ケース63に取付けられている。このため、回り止めピン65が外方延出部33と同一又は略同一の角度位置となる状態では、回り止めピン65は、バネ70からの弾性力によって押圧されることにより、開口27の外側から外方延出部33に向かって自動的に移動するとともに、自動的に外方延出部33に挿入される。これにより、作業者は、第1の係合状態において、抜け止めブラケット40を第1の角度位置から第2の角度位置にデリックトップピン21に対して回転させるだけで、デリックトップピン21の抜けが確実に防止される抜け止め構造を形成することができる。これにより、デリックトップピン21の抜け止め構造を形成する際の、作業者の手間が軽減される。
なお、バネ70は、設けられなくてもよい。この場合、作業者による操作部67での操作によって、回り止めピン65が外方延出部33に対して挿入又は抜去される。
前述のように、本実施形態では、抜け止めブラケット40がデリックトップピン21に取付けられることにより、デリックトップピン21の孔17,19からの抜け止め構造が形成される。このため、抜け止めブラケット40のみを用いて、デリックトップピン21のブーム7又はブーム起伏シリンダ8からの抜け止めを行うことができる。すなわち、ネジ、ボルト等の、抜け止めブラケット40以外の部品を用いることなく、デリックトップピン21の抜け止め構造を形成することができる。ネジ、ボルト等の離れ部品を用いずに抜け止め構造を形成することができるため、離れ部品が紛失することがない。また、抜け止め構造を形成するための作業工数が減少し、抜け止めブラケット40をデリックトップピン21に容易に取付けることができる。また、ネジ、ボルト等を用いずに抜け止め構造を形成することができるため、ネジ、ボルトによる固定部に砂等の異物が噛み込むことが防止される。
また、本実施形態の抜け止め構造では、抜け止めブラケット40がデリックトップピン21に取り付けられることにより、抜け止めブラケット40のデリックトップピン21に対する回転が防止される。このため、ブーム7に抜け止めブラケット40の回転防止のための部品を溶接等により取付けることなく、抜け止めブラケット40のデリックトップピン21に対する回転を防止することができる。これにより、抜け止めブラケット40の回転防止のためのブーム7への溶接品が不要になる。
前述の実施形態等では、クレーン(1)のブーム(7)とデリックシリンダ(8)とを連結するデリックトップピン(21)の抜け止め構造は、端面(23)を有するデリックトップピン(21)であって、前記端面(23)から内部側に向かって挿入空洞(25)が形成されるとともに、前記端面(23)での前記挿入空洞(25)の開口(27)は、開口中央部(31)と、前記開口中央部(31)と連続し、前記開口中央部(31)から外周側に延設される外方延出部(33)と、を有するデリックトップピン(21)と、前記デリックトップピン(21)の前記挿入空洞(25)に挿入可能な挿入部(49)を備える抜け止めブラケット(40)であって、前記挿入部(49)は、挿入本体(50)と、前記挿入本体(50)から外周側に突出する挿入突起(52)と、を備えるとともに、前記抜け止めブラケット(40)は、周方向について前記挿入突起(52)から離れた角度位置に設けられる回り止めピン(65)を備える抜け止めブラケット(40)と、を具備し、前記挿入本体(50)が前記開口中央部(31)と同軸又は略同軸で、かつ、前記周方向について前記挿入突起(52)が前記外方延出部(33)と同一又は略同一の角度位置になる状態でのみ、前記挿入部(49)は前記挿入空洞(25)に挿入可能であり、前記周方向について前記挿入突起(52)が前記外方延出部(33)から離間する状態まで、前記挿入空洞(25)に前記挿入部(49)が挿入された前記抜け止めブラケット(40)を回転することにより、前記抜け止めブラケット(40)の前記デリックトップピン(21)に対する軸方向についての移動が規制され、前記挿入空洞(25)に前記挿入部(49)が挿入され、かつ、前記周方向について前記回り止めピン(65)が前記外方延出部(33)と同一又は略同一の角度位置になる状態において、前記回り止めピン(65)が前記外方延出部(33)から前記挿入空洞(25)に挿入されることにより、前記抜け止めブラケット(40)の前記デリックトップピン(21)に対する前記周方向についての回転が規制される。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。