以下、実施形態に係る射出装置について添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
[一実施形態に係る射出成形機]
はじめに、図1及び図2を参照して、各実施形態に係る射出装置が搭載され得る射出成形機の全体の概略構成について説明する。具体的には、図1,2に示す射出成形機は、インライン式の射出成形機であり、図8等に示す本発明の各実施形態に係る射出装置はプリプラ式の射出装置であるが、図1,2に示すインライン式の射出成形機の射出装置に、本発明の各実施形態に係る射出装置を適用することができる。すなわち、このような適用により、本発明の各実施形態に係る射出装置を備えたプリプラ式の射出成形機が形成され得る。また、図1及び図2において、X方向、Y方向、及びZ方向は互いに垂直な方向である。具体的には、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。また、X方向は、射出成形機10の可動プラテン120や射出装置300の移動方向や型開閉方向と同一方向であり、Y方向は射出成形機10の幅方向である。尚、型締装置100が横型である場合、X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機10の幅方向である。
(射出成形機)
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図であり、図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。図1及び図2に示すように、射出成形機10は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700と、フレーム900とを有する。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1及び図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1及び図2中左方向)を後方として説明する。
型締装置100は、金型装置800の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、及び型厚調整機構180を有する。
固定プラテン110は、フレーム900に固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面には固定金型810が取付けられる。
可動プラテン120は、フレーム900に対して型開閉方向に移動自在とされる。フレーム900上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面には可動金型820が取付けられる。
固定プラテン110に対して可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型810と可動金型820とにより、金型装置800が構成される。
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレーム900上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレーム900上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。また、トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレーム900に固定され、トグルサポート130がフレーム900に対して型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレーム900に固定され、固定プラテン110がフレーム900に対して型開閉方向に移動自在とされてもよい。
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152及び第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対してピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対してピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対してクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152及び第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対して可動プラテン120が進退する。
尚、トグル機構150の構成は、図1及び図2に示す構成に限定されない。例えば図1及び図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対してクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152及び第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対して可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してもよい。
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。型閉工程では、可動プラテン120を、可動金型820が固定金型810にタッチする位置まで移動させる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、及びクロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、及び可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることにより、型締力を生じさせる。型締工程では、可動プラテン120を、可動金型820と固定金型810がタッチする位置から、所定の型締力が発生する位置まで移動させ(昇圧)、発生した型締力を維持する。尚、昇圧を開始する位置は、可動金型820と固定金型810がタッチする位置の少し手前に設定されてもよい。ここで、型締時に可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることにより、成形品が得られる。キャビティ空間801の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
型閉工程及び型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程及び型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、及び型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、及び型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、及び型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、及び型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッド151の位置(例えば型締位置)や可動プラテン120の位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などによって金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することにより型厚調整を行う、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
ねじ軸181及びねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182は、同期して回転させることができる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することにより、複数のねじナット182を個別に回転させることもできる。
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車及び駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることにより、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対して回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に固定されるが、他の固定形態であってもよい。
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対して回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることにより、間隔Lを調整することができる。
また、ねじナット182がトグルサポート130に固定され、タイバー140が固定プラテン110に対して回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることにより、間隔Lを調整することができる。
さらに、ねじナット182が固定プラテン110に固定され、タイバー140がトグルサポート130に対して回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることにより、間隔Lを調整することができる。
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、及び間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用することができる。
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることにより、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、他の構成が適用されてもよい。
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。また、タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。さらに、タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、及び型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とにより、金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設され、タイバーを介して上プラテンと連結される。タイバーは、上プラテンとトグルサポートとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本であるが、その本数は特に限定されない。
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図1及び図2において右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図1及び図2において左方向)を後方として説明する。
エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、及びエジェクタロッド230などを有する。
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してもよい。
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配設される可動部材830と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させて成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、及びエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用することができる。
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図1及び図2における左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1及び図2における右方向)を後方として説明する。
射出装置300は、フレーム900に対して進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置800に対して進退自在とされる。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図1及び図2における左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンには、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対して押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在で且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られてシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対して相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対して相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
尚、射出装置300は、スクリュ330に対して逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどであってもよい。
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてもよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどであってもよい。
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
射出装置300は、制御装置700による制御下で、充填工程、保圧工程、計量工程などを行う。
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替え(所謂、V/P切替え)が行われる。V/P切替えが行われる位置をV/P切替え位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替えが行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、及びスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン式であるが、射出装置300に替えて、後述するプリプラ式の射出装置を適用してもよい。プリプラ式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが、回転自在または回転自在で且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配設される。尚、このプリプラ式の射出装置については以下で詳説する。
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図1及び図2における左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図1及び図2における右方向)を後方として説明する。
移動装置400は、金型装置800に対して射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対してノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411及び第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し、他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して、第1ポート411及び第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向及び回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってもよいし、電動サーボモータであってもよい。
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、及びピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることにより、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることにより、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
尚、本実施形態において移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1及び図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703にて外部からの信号を受信し、出力インターフェース704にて外部に信号を送信する。
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、及び突き出し工程をこの順に有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、及び冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。型締工程の終了は型開工程の開始と一致する。尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御により、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
操作画面は、射出成形機10の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
操作装置750及び表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750及び表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
[一実施形態に係る射出装置]
次に、図1及び図2に示す、インライン式の射出成形機10の射出装置300に替えて、プリプラ式の射出成形機を構成する本発明の一実施形態に係る射出装置について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る射出装置の側面図である。射出装置500は、押出装置510と、可塑化装置550と、ノズル590と、これらの各装置を繋ぐ切替え弁570とを有する。可塑化装置550は、成形材料を加熱する可塑化シリンダ551を有し、液状の成形材料を押出装置510に供給する。押出装置510は、可塑化装置550から供給される成形材料を加熱する射出シリンダ511を有し、射出シリンダ511の前端部に配設されるノズルから金型装置内に成形材料を充填する。以下、射出装置500の各構成要素について説明する。
(スクリュ装置)
先ず、可塑化装置550について説明する。可塑化装置550は、可塑化シリンダ551、スクリュ552、プレッシャプレート553、ボールねじ機構554、押出サポート555、ガイドバー556、ガイドバーサポート557、ベース558、押出モータ559、及び計量モータ560を有する。
可塑化シリンダ551は、成形材料を加熱する加熱シリンダである。可塑化シリンダ551は、水平に配設されてよい。可塑化シリンダ551の外周には加熱源としてのヒータが取り付けられる。可塑化シリンダ551には温度センサが埋設され、温度センサによる計測信号が制御装置700に送信され、温度センサによる計測信号に基づいて制御装置700にてヒータの出力が制御される。
スクリュ552は、可塑化シリンダ551内の成形材料を混練しながら溶融させて、前方に送り出す送出部材である。スクリュ552は、可塑化シリンダ551内において進退自在で且つ回転自在に配設される。
プレッシャプレート553は、スクリュ552と共に前後に移動する可動部材であり、スクリュ552を後方から押す。プレッシャプレート553は、スクリュ552に対して同軸状に連結される不図示の駆動軸を回転自在に支持する軸受を介して保持する。駆動軸は、回転軸565とスプライン結合されており、回転軸565と共に回転し、回転軸565に対して進退自在とされる。回転軸565は、減速機561などを介して計量モータ560と連結される。計量モータ560を駆動して回転軸565を回転させることにより、スクリュ552が回転される。
ボールねじ機構554は、押出モータ559による回転運動を直線運動に変換し、この直線運動による力をプレッシャプレート553に伝達する運動変換部である。ボールねじ機構554は、スクリュ552の中心線に対して平行に配設される。複数の押出モータ559に対応して、複数のボールねじ機構554が設けられる。
複数のボールねじ機構554は、スクリュ552の中心線を中心に対称に配設されてよい。このように構成することで、複数のボールねじ機構554を同時に作動させることにより、プレッシャプレート553を前進させた際にスクリュ552を真っ直ぐに押すことが可能になる。
各ボールねじ機構554は、スクリュ552の中心線にできるだけ近くなるように配設されてよい。プレッシャプレート553における前進力の入力場所と出力場所が近くなり、プレッシャプレート553の撓みを抑制することができる。
各ボールねじ機構554は、ボールねじ軸554aと、ボールねじ軸554aと螺合するボールねじナット554bとを含む。ボールねじ軸554aはプレッシャプレート553に対して回転自在で且つ相対的に進退不能に取り付けられる。プレッシャプレート553は、ボールねじ軸554aを回転自在に支持する軸受を介して保持してよい。一方、ボールねじナット554bは、押出サポート555に対して回転不能で且つ進退不能に取り付けられる。
押出モータ559は、プレッシャプレート553に取り付けられ、ボールねじ軸554aと同軸状に連結される。押出モータ559を駆動してボールねじ軸554aを回転させながら進退させると、プレッシャプレート553と共にスクリュ552が進退させられる。尚、押出モータ559の回転は、ベルトやプーリなどを介してボールねじ軸554aに伝達されてもよい。
押出サポート555は、可塑化シリンダ551とボールねじ機構554が取り付けられる取付部材である。押出サポート555は、ベース558に固定される。ベース558には、ガイドバーサポート557も固定される。押出サポート555とガイドバーサポート557との間には、ガイドバー556が架設される。
ガイドバー556は、プレッシャプレート553を前後に案内するガイドである。プレッシャプレート553には複数のガイド孔が形成され、各ガイド孔にはガイドバー556が挿通される。ガイドバー556を挿通できるように、ガイド孔の直径は、ガイドバー556の直径よりも僅かに大きく設定されている。
図3に示すように、側方方向視において、複数のガイドバー556の間にボールねじ機構554が位置してよい。ここで、側方方向とは、前後方向及び上下方向に対して互いに垂直な方向である。側方方向は、複数のボールねじ機構554が並ぶ方向でもある。側方方向視においてボールねじ機構554の外側にガイドバー556が位置するため、ガイドバー556同士の上下方向の間隔が広くなる。従って、複数のガイドバー556によるプレッシャプレート553の支持点の間隔が上下方向に広くなる。そのため、側方方向視において、プレッシャプレート553の傾きを抑制でき、プレッシャプレート553の直進性を良好にできる。また、上記するようにボールねじ機構554をスクリュ552の中心線にできるだけ近くなるように配設するためにも、ボールねじ機構554の外側にガイドバー556が位置するのがよい。
押出サポート555、ガイドバー556、ガイドバーサポート557、及びベース558により、押出フレーム562が構成される。ベース558には上下方向に平行な回動軸が設けられる。なお、スクリュ552の交換は可塑化シリンダ551を回動させることによって可能になるが、可塑化シリンダ551の前方に型締装置が存在することから、スクリュ552を交換する作業スペースが確保し難い。そのため、ベース558において上下方向に平行な回動軸を中心に押出フレーム562を回動させ、可塑化シリンダ551を回動させることにより、スクリュ552の交換が可能になる。
計量モータ560を駆動してスクリュ552を回転させると、スクリュ552に形成される螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、可塑化シリンダ551内を前進しながら、徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ552の前方に送られ、可塑化シリンダ551の前部に蓄積されるにつれて、スクリュ552が後退させられる。
押出モータ559を駆動してスクリュ552を前進させると、スクリュ552の前方に蓄積された成形材料が可塑化シリンダ551から射出シリンダ511に供給される。プランジャ512の前方に成形材料が蓄積されるにつれて、プランジャ512が後退させられる。可塑化シリンダ551とボールねじ機構554の双方は、押出サポート555に取り付けられてよい。
押出サポート555は、可塑化シリンダ551とボールねじ機構554との間の伝熱を遮る断熱部としての不図示の冷媒流路を有する。冷媒流路は、伝熱経路の途中に設けられ、ボールねじ機構554の温度上昇を抑制する。この温度上昇の抑制により、ボールねじ軸554aとボールねじナット554bの熱変形量の差によって生じ得る隙間を介して、ボールねじ機構554から潤滑剤が流出することを抑制できる。また、ボールねじ機構554の構成部品の寸法変化も抑制することができる。これらのことにより、ボールねじ機構554の滑らかな動作が実現され、潤滑剤の使用量の低減を図ることができる。また、上記するようにボールねじ機構554をスクリュ552の中心線にできるだけ近くなるように配設する場合、ボールねじ機構554と可塑化シリンダ551との伝熱経路が短いことから、伝熱経路の途中において冷媒流路による優れた断熱性が発揮される。尚、冷媒流路には不図示の冷却装置が接続される。
冷却装置は、制御装置700により、冷媒流路に冷媒を供給するように制御される。冷媒としては、水などの液体や空気などの気体がある。冷却装置は、例えば熱交換器やポンプなどで構成され、熱交換器と冷媒流路との間で冷媒を循環させてもよい。尚、冷却装置は、熱交換器を有していない形態であってもよく、また、冷媒流路において温められた冷媒を廃棄する形態であってもよい。
制御装置700は、温度センサに対し、ボールねじ機構554の温度や可塑化シリンダ551の温度、押出サポート555の温度のうちの少なくとも1つを監視させ、温度センサによる計測結果に基づいて冷却装置を制御する。また、制御装置700により、冷却装置から供給される冷媒の流量や冷媒の温度などが調整される。冷媒の流量や冷媒の温度は、押出サポート555の温度が所定範囲内となるように調整することができ、このような制御により、押出サポート555の過冷却を制限することができ、可塑化シリンダ551の加熱効率を良好にできる。
また、押出サポート555の温度が上限温度を上回る場合は、制御装置700により、不図示の警報装置を作動することができ、可塑化シリンダ551の加熱を制限することができる。また、押出サポート555の温度が下限温度を下回る場合は、制御装置700により、警報装置を作動することができ、押出サポート555の冷却を制限することができる。
(押出装置)
次に、押出装置510について説明する。押出装置510は、射出シリンダ511、プランジャ512、プレッシャプレート513、ボールねじ機構514、射出サポート515、ガイドバー516、ガイドバーサポート517、ベース518、及び射出モータ519を有する。
射出シリンダ511は、射出される成形材料を収容して蓄積するシリンダである。射出シリンダ511の外周には加熱源としてのヒータ等の加熱器が取り付けられている。射出シリンダ511には温度センサが埋設され、温度センサによる計測信号が制御装置700に送信され、温度センサによる計測信号に基づいて制御装置700にてヒータの出力が制御される。
射出シリンダ511は、可塑化シリンダ551に対して平行に配設されてよく、水平に配設されてよい。可塑化シリンダ551は、射出シリンダ511よりも長く、射出シリンダ511よりも上方に配設されてよい。射出シリンダ511は、連結管564及び切替え弁570を介して可塑化シリンダ551と連結され、可塑化シリンダ551から切替え弁570を介して供給される成形材料を収容して蓄積する。
プランジャ512は、射出シリンダ511内において進退自在に配設される。プレッシャプレート513は、プランジャ512と共に前後に移動する可動部材である。
ボールねじ機構514は、射出モータ519による回転運動を直線運動に変換し、この直線運動による力をプレッシャプレート513に伝達する運動変換部である。ボールねじ機構514は、プランジャ512の中心線に対して平行に配設される。複数の射出モータ519に対応して、複数のボールねじ機構514が設けられる。
複数のボールねじ機構514は、プランジャ512の中心線を中心に対称に配設されてよい。このように構成することで、複数のボールねじ機構514を同時に作動させることにより、プレッシャプレート513を前進させた際にプランジャ512を真っ直ぐに押すことが可能になる。
各ボールねじ機構514は、プランジャ512の中心線にできるだけ近くなるように配設されてよい。プレッシャプレート513における前進力の入力場所と出力場所が近くなり、プレッシャプレート513の撓みを抑制することができる。
各ボールねじ機構514は、ボールねじ軸514aと、ボールねじ軸514aと螺合するボールねじナット514bとを含む。ボールねじ軸514aはプレッシャプレート513に対して回転自在で且つ相対的に進退不能に取り付けられる。プレッシャプレート513は、ボールねじ軸514aを回転自在に支持する軸受を保持してよい。一方、ボールねじナット514bは、射出サポート515に対して回転不能で且つ進退不能に取り付けられる。
射出モータ519は、プレッシャプレート513に取り付けられ、ベルトやプーリなどを介して射出モータ519の出力軸に連結される。射出モータ519を駆動してボールねじ軸514aを回転させながら進退させると、プレッシャプレート513と共にプランジャ512が進退させられる。尚、射出モータ519は、ボールねじ軸514aと同軸状に連結されてもよい。
射出サポート515は、射出シリンダ511及びボールねじ機構514が取り付けられる取付部材である。射出サポート515は、ベース518に固定される。ベース518にはガイドバーサポート517も固定される。射出サポート515とガイドバーサポート517との間には、ガイドバー516が架設される。
ガイドバー516は、プレッシャプレート513を前後に案内するガイドである。プレッシャプレート513には複数のガイド孔が形成され、各ガイド孔にはガイドバー516が挿通される。ガイド孔の直径はガイドバー516の直径よりも僅かに大きく、従ってプレッシャプレート513が傾き得る。
そこで、側方方向視において、図3に示すように、複数のガイドバー516の間にボールねじ機構514が配設される形態がよい。ここで、側方方向とは、前後方向及び上下方向に対して垂直な方向であり、複数のボールねじ機構514が並ぶ方向でもある。
側方方向視においてボールねじ機構514の外側にガイドバー516が配設されることから、ガイドバー516同士の上下方向の間隔が広くなる。従って、複数のガイドバー516によるプレッシャプレート513の支持点の間隔が上下方向に広くなる。そのため、側方方向視において、プレッシャプレート513の傾きを抑制でき、プレッシャプレート513の直進性を良好にできる。
また、図示を省略するが、上下方向視においても、複数のガイドバー516の間にボールねじ機構514が配設されるのがよい。上下方向視においてボールねじ機構514の外側にガイドバー516が配設されることから、ガイドバー516同士の側方方向の間隔が広くなる。従って、複数のガイドバー516によるプレッシャプレート513の支持点の間隔が側方方向に広くなる。そのため、上下方向視において、プレッシャプレート513の傾きを抑制でき、プレッシャプレート513の直進性を良好にできる。また、上記するようにボールねじ機構514をプランジャ512の中心線にできるだけ近くなるように配設するためにも、ボールねじ機構514の外側にガイドバー516が位置するのがよい。
射出サポート515、ガイドバー516、ガイドバーサポート517、及びベース518により、射出フレーム563が構成される。射出フレーム563は押出フレーム562よりも前方に配設される。
押出フレーム562の回動時に可塑化シリンダ551と射出モータ519との衝突を防止するために、プレッシャプレート513の側面に射出モータ519が取り付けられる形態がよい。プレッシャプレート513の上面に射出モータ519が取り付けられてもよいが、その場合、射出モータ519との衝突を防止するためには可塑化シリンダ551の位置が高くなり、射出装置500が大型化する恐れがある。
射出モータ519を駆動してプランジャ512を前進させると、プランジャ512の前方に蓄積された成形材料が射出シリンダ511の前端部に設けられるノズルから金型装置内に充填される。
射出シリンダ511とボールねじ機構514の双方は、射出サポート515に取り付けられてもよい。射出サポート515は、射出シリンダ511とボールねじ機構514との間の伝熱を遮る断熱部としての不図示の冷媒流路を有する。冷媒流路は、伝熱経路の途中に設けられ、ボールねじ機構514の温度上昇を抑制する。この温度上昇の抑制により、ボールねじ軸514aとボールねじナット514bの熱変形量の差によって生じ得る隙間を介して、ボールねじ機構514から潤滑剤が流出することを抑制できる。また、ボールねじ機構514の構成部品の寸法変化も抑制することができる。これらのことにより、ボールねじ機構514の滑らかな動作が実現され、潤滑剤の使用量の低減を図ることができる。また、上記するようにボールねじ機構514をプランジャ512の中心線にできるだけ近くなるように配設する場合、ボールねじ機構514と射出シリンダ511との伝熱経路が短いことから、伝熱経路の途中において冷媒流路による優れた断熱性が発揮される。尚、冷媒流路には不図示の冷却装置が接続される。
冷却装置は、制御装置700により、冷媒流路に冷媒を供給するように制御される。冷媒としては、水などの液体や空気などの気体がある。冷却装置は、例えば熱交換器やポンプなどで構成され、熱交換器と冷媒流路との間で冷媒を循環させてもよい。尚、冷却装置は、熱交換器を有していない形態であってもよく、また、冷媒流路において温められた冷媒を廃棄する形態であってもよい。
制御装置700は、温度センサに対し、ボールねじ機構514の温度や射出シリンダ511の温度、射出サポート515の温度のうちの少なくとも1つを監視させ、温度センサによる計測結果に基づいて冷却装置を制御する。また、制御装置700により、冷却装置から供給される冷媒の流量や冷媒の温度などが調整される。冷媒の流量や冷媒の温度は、射出サポート515の温度が所定範囲内となるように調整することができ、このような制御により、射出サポート515の過冷却を制限することができ、射出シリンダ511の加熱効率を良好にできる。
また、射出サポート515の温度が上限温度を上回る場合は、制御装置700により、不図示の警報装置を作動することができ、射出シリンダ511の加熱を制限することができる。また、射出サポート515の温度が下限温度を下回る場合は、制御装置700により、警報装置を作動することができ、射出サポート515の冷却を制限することができる。
尚、押出装置510用の冷却装置と、可塑化装置550用の冷却装置は、別々に設けられてもよいし、共通の冷却装置が用いられてもよい。
(切替え弁)
次に、図4乃至図6を参照して、プリプラ式の射出装置500を構成する切替え弁570の構成と機能について説明する。図4及び図5はそれぞれ、射出装置を形成する切替え弁の弁体の第1状態と第2状態を示す図であり、弁体577の回転中心線に対して垂直な断面図である。また、図6は、図4及び図5に直交する方向で切替え弁を切断した断面図であって、円柱状の弁体の軸心方向に沿う方向で切断した断面図である。
図4及び図5に示すように、射出装置500を構成する可塑化シリンダ551と、射出シリンダ511と、ノズル590はいずれも、成形材料の流れ方向を切替える切替え弁570に連通している。尚、可塑化シリンダ551と、その内部において進退自在で且つ回転自在なスクリュ552の構成や動作についての説明は上述の通りである。また、射出シリンダ511と、その内部において進退自在で且つ回転自在なプランジャ512の構成や動作についての説明は上述の通りである。
ノズル590は、切替え弁570から供給される成形材料を、図1及び図2に示す金型装置800に射出する。金型装置800の内部に充填された液状の成形材料が固化することにより、成形品が成形される。
切替え弁570は、弁箱571と、この弁箱571の内部において回転自在に配設される例えば円柱状の弁体577とを有する。
弁箱571は、弁体577が配設される中空572と、中空572に連通する可塑化シリンダ接続ポート573Aと、中空572に連通する射出シリンダ接続ポート573Bと、中空572に連通するノズル接続ポート573Cとを有する。可塑化シリンダ接続ポート573Aは、可塑化シリンダ551及び連結管564の内部に連通する。射出シリンダ接続ポート573Bは、射出シリンダ511の内部に連通する。ノズル接続ポート573Cは、ノズル590の内部に連通する。
図4及び図5に示すように、中空572の軸心方向(図中のY方向)に直交する断面(図中のZ方向に沿う断面)において、中空572の断面形状は円形であり、中空572内に配設されている円柱状の弁体577の断面形状も円形である。そして、弁体577の断面の直径が僅かに小さく設定されていることにより、中空572の壁面と弁体577の外周面の間には隙間Cが形成され、弁箱571内において弁体577を回転させることができる。
図6に示すように、弁箱571はさらに、中空572に連通する樹脂排出流路574を有する。中空572は円筒状をなし、中空572の軸心方向で可塑化シリンダ接続ポート573Aからずれた位置には、2つの樹脂排出流路574が間隔を置いて設けられている。そして、樹脂排出流路574が弁箱571の外周面(下面)に臨む位置には、樹脂出口575が形成されている。尚、樹脂排出流路574の数や設置位置は、図示例に限定されるものではない。
中空572に樹脂排出流路574が連通し、樹脂排出流路574が弁箱571の外周面に臨む位置に樹脂出口575が形成されていることにより、可塑化シリンダ551や射出シリンダ511から隙間Cに流れ込んだ樹脂を弁箱571の外部に排出することができる。
射出シリンダ接続ポート573Bとノズル接続ポート573Cは、例えば弁体577の回転中心線を挟んで互いに反対側に設けられる。一方、可塑化シリンダ接続ポート573Aは、例えば射出シリンダ接続ポート573Bとノズル接続ポート573Cの双方から、弁体577の外周に沿って略等距離の位置に設けられる。つまり、弁体577の回転中心線を中心に所定方向(図4及び図5では反時計回り)に、射出シリンダ接続ポート573Bと、可塑化シリンダ接続ポート573Aと、ノズル接続ポート573Cとが、この順に90°ピッチで配置される。このように、図示する弁体577を有する切替え弁570は、三方向切換え弁を構成する。
樹脂排出流路574は、中空572と弁体577との間の隙間Cにある樹脂を弁箱571の外部に自然に排出できるように、中空572から鉛直下方に延びている。樹脂排出流路574の軸線形態は、鉛直下方に延びる形態以外にも、鉛直斜め下方に延びる形態や、鉛直斜め下方に延びる形態と鉛直下方に延びる形態の組み合わせなど、多様な軸線形態がある。
弁体577が弁箱571の中空572において回転されることにより、図4に示す第1状態と図5に示す第2状態とに切り替え自在となる。
図4及び図5に示すように、弁体577は、略T字状の流路578を有する。この流路578は、弁体577の回転中心線を中心に所定方向(図4及び図5では時計回り)に90°ピッチに配置される、第1孔578A、第2孔578B、及び第3孔578Cを有する。
図4に示すように、第1状態のとき、弁体577は、第1孔578Aが可塑化シリンダ接続ポート573Aと対向して連通し、第2孔578Bが射出シリンダ接続ポート573Bと対向して連通する。すなわち、弁体577の流路578の第1孔578Aと第2孔578Bが、可塑化シリンダ接続ポート573Aと射出シリンダ接続ポート573Bとを連通する第1流路を形成する。
また、図5に示すように、第2状態のとき、弁体577は、第1孔578Aが射出シリンダ接続ポート573Bと対向して連通し、第3孔578Cがノズル接続ポート573Cと対向して連通する。すなわち、流路578の第1孔578Aと第3孔578Cが、射出シリンダ接続ポート573Bとノズル接続ポート573Cとを連通する第2流路を形成する。尚、図4及び図5において、円柱状の弁体577において、流路578と樹脂排出流路574の配設位置(弁体577における断面位置)は同じ位置であるが、双方の位置が異なっていてもよい。例えば、円柱状の弁体577において、流路578から軸心方向に所定間隔を置いた位置に例えば複数(例えば2つ)の樹脂排出流路574が形成されていてもよい。
図4及び図5に示す切替え弁570は、プリプラ式の射出装置500において一般に適用される切替え弁である。なお、図示する弁体577を有する切替え弁570は、弁箱571内で弁体577が回転自在に配設された三方向切換え弁であるが、それ以外の形態の切替え弁であってもよい。例えば、第1孔578Aと第3孔578Cとからなる直線状の流路を有する第1弁体と、第1孔578Aと第2孔578BとからなるL字状の流路を有する第2弁体とを弁箱の中空内に備えた切替え弁であってもよい。この形態の切替え弁では、例えば円筒状の中空内において第1弁体と第2弁体がスライド自在に配設され、図4に示す第1状態のときには、第2弁体が可塑化シリンダ接続ポート573Aと射出シリンダ接続ポート573Bとを連通する。また、図5に示す第2状態のときには、第2弁体に替わって第1弁体が今度は射出シリンダ接続ポート573Bとノズル接続ポート573Cとを連通する。このように複数の弁体が弁箱の中空内でスライドすることによって流路の方向を切替える切替え弁も、プリプラ式の射出装置500を構成する切替え弁570の他の態様として包含される。
また、弁箱571の所定位置には、不図示の熱電対等の温度センサとヒータ等の加熱器が内蔵されている。この温度センサによる計測信号が制御装置700に送信され、制御装置700により、可塑化シリンダ接続ポート573Aや射出シリンダ接続ポート573B等の樹脂の流路が、所定温度、例えば樹脂のガラス転移温度や溶融温度となるように加熱器が制御されている。
このように、弁箱571内で弁体577が回転自在又はスライド自在に配設されてなる、一般的な切替え弁570に対して、例えば樹脂排出流路574を介して弁箱571の外周面に流れ込んできた樹脂を除去する、樹脂除去部を備えた本発明の実施形態に係る切替え弁については、以下で詳説する。
(プリプラ式の射出装置における成形サイクル)
次に、プリプラ式の射出装置における成形サイクルについて、図7を参照して説明する。図7は、プリプラ式の射出装置における成形サイクルのシーケンス図の一例である。
図7に示すシーケンス図では、金型装置800と押出装置510に関連する工程をプランジャ位置とともに上段に示し(図中の工程A)、可塑化装置550に関連する工程をスクリュ位置とともに下段に示している(図中の工程B)。また、中段には、ノズル590の開閉を示している。ここで、ノズル開とは、図5に示すように、射出シリンダ511とノズル590が連通し、ノズル590を介して樹脂を金型装置800内に充填している状態もしくは充填可能な状態を示している。一方、ノズル閉とは、図4に示すように、可塑化シリンダ551と射出シリンダ511が連通し、ノズル590を介して樹脂を金型装置800内に充填不能な状態を示している。
図7において、成形サイクルに要する成形サイクル時間はTであり、成形サイクルが所定回数繰り返し実行されることにより、所定数の成形品が成形される。金型装置内では、一度に単数もしくは複数の成形品が成形される。
工程Aでは、型閉工程、型締工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、及び取出工程(突き出し工程)がこの順に行われる。一方、工程Bでは、計量工程と押出工程がこの順に行われる。
充填工程の終了時刻がt2、計量工程の終了時刻がt3、停止工程の終了時刻(押出開始時刻)がt4、押出工程の終了時刻がt5である。なお、型締工程は型開工程の開始まで継続して行われる。
ノズル閉の状態は、冷却工程の途中時刻から押出工程の終了時刻t5までの間であり、それ以外の時間はノズル開の状態である。
金型装置800における型閉制御、型開制御、及び取出制御、押出装置510におけるプランジャ512の充填制御や保圧制御、切替え弁570の切替え制御、可塑化装置550におけるスクリュ552の計量制御や停止制御、及び押出制御は、いずれも制御装置700によって実行される。すなわち、制御装置700の記憶媒体702には、例えば図7に示すシーケンスが格納されており、このシーケンスに従って各機器の制御を同時並行的もしくは順列的に実行する。尚、図7に示すシーケンスはあくまでも一例であり、成形サイクルタイムTや使用するプリプラ式の射出装置、この射出装置を有する射出成形機の機種等により、多様なシーケンスが存在し得る。例えば、計量工程の後半では、スクリュ552の減速工程があってもよい。
時刻t0において、ノズル590は開状態となっている。金型装置800は型閉工程にあり、押出装置510では射出シリンダ511内でプランジャ512が充填前位置(最も後退した位置)に待機している。すなわち、この状態では、ノズル590から射出シリンダ511内のプランジャ512の前方空間に亘って成形材料が満たされている。一方、時刻t0において、可塑化装置550は計量工程にある。尚、この計量工程は、一つ前の成形サイクルにおいて押出工程が終了すると同時に開始されており(前の成形サイクルの時刻t5)、この開始時刻から継続している。
工程Aでは、金型装置800において、型閉工程に次いで型締工程が実行され、型締工程は型開工程の開始まで継続して行われる。型締工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置まで前進させることにより、型締力を生じさせる。型締時に可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801が形成される。
金型装置800と押出装置510においては、時刻t1で充填工程が開始され、制御装置700によってプランジャ511が前進制御され、ノズル590を介して金型装置800内に成形材料が充填される。充填工程では、射出モータ519を駆動してプランジャ512を設定速度で前進させ、プランジャ512の前方に蓄積された液状の成形材料を、切替え弁570を介し、さらにノズル590を介して金型装置800内のキャビティ空間801に充填する。プランジャ512の位置や速度は、例えば射出モータ519に装備されているエンコーダ等を用いて検出する。エンコーダは、射出モータ519の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。プランジャ512の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替えが行われる。
工程Aにおいて、時刻t2にて充填工程から保圧工程に移行するが、プランジャ512は設定された保持圧力にて前方の成形材料を保持し続け、プランジャ512が微前進することにより保圧が完了する。この保圧が完了した位置が保圧完了位置となる。保持圧力は、例えば圧力検出器を用いて検出し、圧力検出器はその計測信号を制御装置700に送り、制御装置700にて保持圧力を継続する制御が実行される。
プランジャ512は、保持圧力による成形材料の保持を継続し、工程Aでは、保圧工程が完了した後に冷却工程に移行する。保圧工程完了時において、キャビティ空間801の入口は固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。冷却工程では、キャビティ空間801内で成形材料が冷却され、成形材料の固化が進行する。工程Aの冷却工程における時刻t4まで、プランジャ512は保圧完了位置に停止する。時刻t5にてプランジャ512の後退を一旦停止させてプランジャ512の位置を保持した後に、プランジャ512を充填前位置まで後退させる。
一方、工程Bでは、工程Aにおける保圧工程の途中時刻t3まで計量工程が実行される。計量工程では、計量モータ560を駆動してスクリュ552を回転させることにより、スクリュ552に形成されている螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、可塑化シリンダ551内を前進しながら徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ552の前方に送られ、可塑化シリンダ551の前部に蓄積されるにつれて、スクリュ552が後退させられ、時刻t3で後退限である押出前位置に到達する。
計量工程では、スクリュ552の急激な後退を制限すべく、スクリュ552に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ552に対する背圧は、例えば圧力検出器等を用いて検出する。圧力検出器は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ552が射出前位置(計量完了位置)まで後退し、スクリュ552の前方に所定量の成形材料が蓄積されることにより、計量工程が完了する。
工程Bでは、時刻t3から時刻t4に亘り、押出前位置にてスクリュ552の位置が保持される。なお、この時、スクリュ552は回転していてもよいし、回転していなくてもよい。時刻t4にて押出工程を開始する。押出工程では、押出モータ559を駆動してスクリュ552を前進させ、スクリュ552の前方に蓄積された成形材料を可塑化シリンダ551から切替え弁570を介して射出シリンダ511に供給する。押出工程において、スクリュ552が前進限である押出完了位置まで前進した後、押出完了位置にて次の成形サイクルのための計量工程が開始される時刻t5まで回転を継続する。このスクリュ552の回転により、可塑化シリンダ551内の成形材料が射出シリンダ511内に送られる。
工程Aにおいて、時刻t4以降、プランジャ512は、その前方に成形材料が蓄積されるにつれて、射出シリンダ511内で後退させられる。工程Aでは、冷却工程に続いて型開工程に移行し、金型装置800の型開が実行される。型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、取出工程に移行し、金型装置800内で成形された成形品をエジェクタ装置200が可動金型820から突き出す。
工程Bでは、工程Aにおける型開工程中に押出工程から計量工程に移行する。この押出工程は時刻t5にて完了する。時刻t5から所定時間経過後、工程Aではプランジャ512を後退させる(サックバック)。このサックバックは、例えばノズル開の確認信号がON制御された際に実行するのがよい。例えば、切替え弁570の弁体577の回転位置を検出可能なセンサを設けておき、検出された弁体577の回転位置にてノズル開もしくはノズル閉を判断することができる。
このように、プリプラ式の射出装置500を有する射出成形機では、金型装置800及び射出装置500を構成する押出装置510と、射出装置500を構成する可塑化装置550と、を構成する各機器の動作が、同時並行的かつ順列的に実行される。
なお、プリプラ式の射出装置500では、スクリュ512は成形サイクル時間Tの全般に亘り、もしくは成形サイクル時間Tの90%程度の時間に亘って回転を継続することができる。一方で、インライン式の射出装置におけるスクリュの回転時間は、成形サイクル時間Tの半分程度である。
従って、インライン式の射出装置におけるスクリュに比べて、スクリュ512の回転時間を2倍程度確保することができる。このことから、仮に同じ成形サイクル時間Tとした場合、インライン式の射出装置に比べて、プリプラ式の射出装置では、スクリュ512の径を1/2程度に小規模化することができる。また、別の観点では、スクリュ512による必要吐出量を1/2程度に低減できるため、押出モータ559のモータ容量を小さくすることができる。また、プリプラ式の射出装置500では、例えば、インライン式の射出装置では不可能な、充填工程中や保圧工程中などにおいても成形材料の可塑化を行うことができる。
[第1の実施形態に係る射出装置]
次に、図8を参照して、本発明の第1の実施形態に係る射出装置について説明する。図8は、第1の実施形態に係る射出装置の外観斜視図であって、切替え弁570の周辺を拡大した図である。図8に示す第1の実施形態に係るプリプラ式の射出装置600は、切替え弁570を構成する弁箱571のうち、円柱状の弁体577が差し込まれて回転可能に係止される対向する一対の側面571aに、樹脂除去部である加熱器610を有する。さらに、弁箱571の下面571bにおいても、樹脂除去部である加熱器610を有する。尚、図示例の切替え弁570は、弁箱571の中空572内において円柱状の弁体577が回転自在に配設された形態であるが、それ以外の形態、例えば、2つの弁体が中空内でスライド自在に配設された形態であってもよい。
弁箱571において、一対の対向する側面571aを貫通するように図中のY方向に延びる円筒状の中空572が形成されている。この中空572に対して、中空572よりも僅かに小径の円柱状の弁体577が回転自在に挿通され、側面571aから外側に突出して係合されている。尚、弁箱571には、図4及び図5に示すように、可塑化シリンダ接続ポート573Aと、射出シリンダ接続ポート573Bと、ノズル接続ポート573Cが形成され、これらが中空572に連通している。
弁箱571はさらに、中空572に連通する樹脂排出流路574を有している。具体的には、円筒状の中空572に対して、軸心方向(図中のY方向)に間隔を置いた位置において、鉛直方向(図中のZ方向)下方に延びる2つの樹脂排出流路574を有している。尚、弁箱571が中空572に連通する樹脂排出流路574を、1つ又は3以上有していてもよい。
弁箱571の可塑化シリンダ接続ポート573Aや、射出シリンダ接続ポート573B、ノズル接続ポート573Cには加圧された状態の樹脂が存在し、さらに、成形サイクルにおいて可塑化シリンダ551や射出シリンダ511から随時新たな樹脂が供給されている。一方で、弁体577の断面の直径が僅かに小さく設定されていることにより、中空572の壁面と弁体577の外周面の間には隙間Cが形成されている。
弁箱571の外部への樹脂の排出態様は、弁箱571の外周面の一つである側面571aに臨む隙間Cからの排出(図中のy1方向)や、弁箱571の外周面の一つである下面571bに臨む樹脂出口575からの排出(図中のy2方向)である。すなわち、樹脂排出流路574は、中空572と樹脂出口575を連通している。弁箱571には、不図示の熱電対等の温度センサとヒータ等の加熱器が内蔵されている。この温度センサによる計測信号が制御装置700に送信され、制御装置700により、可塑化シリンダ接続ポート573Aや射出シリンダ接続ポート573B等の樹脂の流路が、所定温度、例えば樹脂のガラス転移温度や溶融温度となるように加熱器が制御されている。
弁箱571の側面571aに臨む隙間Cや、隙間Cに連通する樹脂排出流路574を介して弁箱571の下面571bに臨む樹脂出口575から排出された樹脂は、外気に触れて冷却され、側面571aや下面571b等の外周面に固着し得る。このように弁箱571の外周面に樹脂が固着した場合、この固着した樹脂の内側にさらに排出された樹脂が供給されることにより、固着した樹脂が成長して体積を増加させていく可能性がある。そして、このように成長した樹脂が射出シリンダ511の周辺に装備されている不図示のヒータ等に接触し、発煙や炭化、ヒータの短絡等の原因となり得る。
そこで、射出シリンダ511では、弁箱571の外周面、具体的には、樹脂が外部に排出され得る側面571aと下面571bにおいて、ヒータ等からなる加熱器610を備えている。尚、図で視認できる加熱器610を備えている側面571aと対向する、反対側の側面571aにおいても、図示例のような加熱器610が装備されていて、隙間Cから排出される樹脂を溶融できるようになっている。
また、図示例のように弁箱571の側面571aと下面571bの双方に加熱器610が装備されている形態以外にも、下面571bにのみ加熱器610が装備されている形態であってもよい。すなわち、「少なくとも樹脂出口575に対応する位置」に、樹脂除去部である加熱器610が装備されていればよい。ここで、樹脂出口575に対応する位置とは、弁箱571の外周面である下面571aにおける樹脂出口575の周辺の位置の他、弁箱571の内部における樹脂出口575の周辺の位置を含む意味である。
加熱器610は、外部に排出されてきた樹脂に対して、樹脂を溶融可能な温度を提供できる機器であればその具体的な形態は限定されない。加熱器610により、弁箱571の側面571aに臨む隙間Cの周辺や、弁箱571の下面571bの樹脂出口575を含む樹脂出口575の周辺が、樹脂を溶融可能な温度にて加熱される。
加熱器610は、成形サイクルの全期間に亘って作動し、側面571aに臨む隙間Cの周辺や、樹脂排出流路574及び樹脂出口575の周辺を絶えず加熱してもよい。また、所定の成形サイクルが終了した段階で加熱器610を作動し、加熱を所定時間継続した後、加熱器610の作動が停止される制御が制御装置700にて実行されてもよい。さらには、樹脂流動がある場合や、弁体577の作動時において、加熱器610を作動してもよい。ここで、樹脂流動がある場合とは、充填工程や保圧工程、押出工程などが挙げられる。また、切替え弁570内の成形材料の圧力が所定値以上の際に、加熱器610を作動してもよい。このように、加熱器610の作動態様は様々であるが、中でも、常に加熱器610を作動させておくのが好ましい。常に加熱器610を作動させておくことにより、切替え弁570の温度変化が無くなり、成形安定性が良好になるためである。
加熱器610による加熱により、側面571aに臨む隙間Cや、隙間Cに連通する樹脂排出流路574を介して樹脂出口575から排出された樹脂は、弁箱571の外周面に固着することなく鉛直下方に垂れて排出される。尚、切替え弁570の下方位置には、垂れた樹脂を収容する樹脂回収部が備えてある。
このように、加熱器610により、弁箱571の外周面において、樹脂出口575等から排出された樹脂を除去することができる。ここで、樹脂の「除去」とは、樹脂出口575等から排出された樹脂を外周面に固着させることなく、溶融された状態に維持して垂れさせ、排出することの他にも、外周面に一旦固着した樹脂を加熱し、溶融させて垂れさせ、排出することを含んでいる。
図示する加熱器610は、弁箱571の外周面に外付けされた形態であるが、弁箱571の内部のうち、側面571aに臨む隙間Cの周辺や、樹脂出口575の周辺に内蔵された形態であってもよい。
また、上記するように、可塑化シリンダ接続ポート573A等の流路の周辺に予め内蔵されている加熱器を、樹脂出口575等の周辺の加熱に兼用させてもよい。ただし、可塑化シリンダ接続ポート573A等の流路の周辺と、樹脂排出流路574が外周面に臨む樹脂出口575の周辺との間の距離が長い場合、本来的には可塑化シリンダ接続ポート573A等の流路を加熱するための加熱器を用いて樹脂出口575の周辺を加熱しようとすると、非常に高い加熱温度を生じさせる必要がある。そして、このように高過ぎる加熱温度を生じさせた場合、弁箱571を過度に加熱し過ぎることになり得る。従って、図示例のように、可塑化シリンダ接続ポート573A等の流路の周辺に予め内蔵されている加熱器とは別の、樹脂出口575等の周辺の加熱に専用な加熱器610を装備するのがよい。
ここで、加熱器610による加熱温度について説明する。使用される成形材料には、結晶性樹脂(結晶性プラスチック)と非結晶性樹脂(非結晶性プラスチック)の双方がある。結晶性樹脂は融点を有し、非結晶性樹脂はガラス転移点を有する。尚、結晶性樹脂は融点の他にガラス転移点を有するが、樹脂を溶融させる際に適用される加熱温度として、ここでは、成形材料が結晶性樹脂の場合は融点以上の温度とし、成形材料が非結晶性樹脂の場合はガラス転移点以上の温度とする。
結晶性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、及びポリアセタール(POM)などが挙げられる。
各樹脂の融点を示すと、PETは260℃程度、PBTは230〜270℃程度、PEについては低密度PEが95〜130℃程度で高密度PEが120〜140℃程度、PPが170℃程度、PA6が230℃程度、PA66が270℃程度、POMが180℃程度である。
一方、非結晶性樹脂としては、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)などが挙げられる。
各樹脂のガラス転移点を示すと、PSは90℃程度、PVCは80℃程度、ABS樹脂は70℃程度、PMMAは100℃程度である。
[第2の実施形態に係る射出装置]
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施形態に係る射出装置について説明する。図9は、第2の実施形態に係る射出装置の外観斜視図であって、切替え弁570の周辺を拡大した図である。図9に示す第2の実施形態に係るプリプラ式の射出装置600Aは、切替え弁570を構成する弁箱571の下面571bにおいて、樹脂除去部である掻き取り器620を有している。尚、図示例は、弁箱571の下面571bにのみ掻き取り器620を装備する形態であるが、弁箱571の側面571aにも同様の掻き取り器620を装備する形態であってもよい。
弁箱571の下面571bには、例えば金属製の角パイプなどからなる側面視L字状の一対の側面フレームと、一対の側面フレームを繋ぐ横架材と、から構成されたフレーム架構621が取り付けられている。
このフレーム架構621に支持されるようにして、一対の車輪が走行自在な例えば金属製のレール622が敷設されている。
掻き取り器620は、サーボモータ623と、その駆動シャフト624の周りに装着された複数のブレード625とを有する。ブレード625は、弁箱571の下面571bに摺接するように駆動シャフト624に装着されている。
サーボモータ623の下方には不図示の一対の車輪が回転自在に装着され、これら一対の車輪がレール622に走行自在に嵌まり込んでいる。この車輪は電動式であり、例えば制御装置700に設けられている作動スイッチに連動している。作動スイッチをON制御すると、車輪が駆動し、サーボモータ623はレール622の両端を往復動することができる(図中のy3方向)。
また、作動スイッチをON制御すると、車輪の駆動に加えて、サーボモータ623が駆動シャフト624を回転させ、この回転に応じて複数のブレード625を回転させる。すなわち、複数のブレード625が、回転しながら弁箱571の下面571bの下方を中空572の軸心方向に往復動することにより、ブレード625が樹脂出口575の周辺に連続的に摺接する。
そのため、樹脂出口575の周辺に樹脂が固着している場合、ブレード625の連続的な摺接によって固着している樹脂が掻き取られ、弁箱571の外周面から固着した樹脂を除去することができる。
上記する掻き取り器620の作動は、管理者が一日の成形を終了した段階で、もしくは所定日数の成形を終了した段階で作動スイッチをON制御して実行させてもよいし、制御装置700に作動のタイミングデータを入力しておき、入力されている所定日数の成形が終了した段階で自動的に作動スイッチがON制御され、実行されてもよい。
また、掻き取り器620は、図示例の形態に何等限定されるものではなく、弁箱571の外周面に固着した樹脂を掻き取って除去できる様々な機器が含まれる。例えば、弁箱571の下面571bに格子状の走行レールが直接設置され、この走行レールに沿って移動する掻き取り刃で固着した樹脂を切断除去するような形態であってもよい。また、シリンダ機構を構成するピストンロッドに掻き取り刃を装着して掻き取り器を構成し、この掻き取り器を弁箱571の下面571bに装着してもよい。シリンダ機構を作動させ、ピストンロッドを往復動させることにより、掻き取り刃を樹脂出口575の周辺で往復動させて、固着した樹脂を除去することができる。
[第3の実施形態に係る射出装置]
次に、図10を参照して、本発明の第3の実施形態に係る射出装置について説明する。図10は、第3の実施形態に係る射出装置の外観斜視図であって、切替え弁570の周辺を拡大した図である。図10に示す第3の実施形態に係るプリプラ式の射出装置600Bは、切替え弁570を構成する弁箱571の側面571aと下面571bの表面において、樹脂除去部であるコーティング層630を有している。このコーティング層630は、樹脂を容易に剥離する剥離性を有している。
弁箱571が鋼製からなる場合、その表面には、耐荷重性を高めるために窒化処理が施され、窒化鋼が形成され得る。このような窒化鋼には、上記するPET等の樹脂が固着し易い。
そこで、樹脂が漏れ得る隙間Cを有する弁箱571の側面571aや、樹脂出口575を有する弁箱571の下面571bにおいて、樹脂剥離性を有するコーティング層630を形成する。
ここで、「コーティング層」には、弁箱571の外周面に樹脂剥離性の材料が層状にコートされる形態の他に、樹脂剥離性のフィルムが貼着された形態や、樹脂剥離性のボードが装着された形態などが含まれる。
樹脂剥離性のあるコーティング材料としては、フッ素系材料、ニッケルメッキ材料などが挙げられる。
本実施形態に係る射出装置600Bによれば、弁箱571の表面に樹脂剥離性のあるコーティング層630を形成するのみで弁箱571の外周面における樹脂の長期に亘る固着を防止することができる。すなわち、弁箱571の外周面に一時的に樹脂が固着しても、一定の大きさに成長した際に、その自重にて固着樹脂が弁箱571の外周面から容易に剥離し、除去される。
なお、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。例えば、図3において、樹脂除去部610、620が、切替え弁570のサポート部材566に取り付けられていてもよい。また、樹脂除去部610、620を、樹脂出口575と射出シリンダ511の間に設けてもよい。この形態によれば、樹脂が射出シリンダ511側に成長することを解消できる。