JP6900143B2 - 耐浸炭性及び耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents

耐浸炭性及び耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、特に高温強度や耐酸化性が必要な自動車排気系部材に使用することに最適な耐熱性ステンレス鋼において、特に耐浸炭性及び耐酸化性に優れた、浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関するものである。また、都市ガス、メタン、天然ガス、プロパン、灯油、ガソリン等の炭化水素系燃料を水素に改質する際に使用される改質器、熱交換器などの燃料電池高温部材に使用することに最適なフェライト系ステンレス鋼において、特に耐浸炭性及び耐酸化性に優れた、浸炭性を有する雰囲気となる燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関するものである。
自動車の排気マニホールド、フロントパイプ及びセンターパイプなどの排気系部材は、エンジンから排出される高温の排気ガスを通すため、排気部材を構成する材料には耐酸化性、高温強度、熱疲労特性など多様な特性が要求される。
従来、自動車排気部材には鋳鉄が使用されるのが一般的であったが、排ガス規制の強化、エンジン性能の向上、車体軽量化などの観点から、ステンレス鋼製の排気マニホールドが使用されるようになった。排気ガス温度は、車種によって異なり、近年では750〜850℃程度が多いが、更に高温に達する場合もある。このような温度域で長時間使用される環境において高い高温強度、耐酸化性を有する材料が要望されている。
ステンレス鋼の中でオーステナイト系ステンレス鋼は、耐熱性や加工性に優れているが、熱膨張係数が大きいために、排気マニホールドのように加熱・冷却を繰り返し受ける部材に適用した場合、熱疲労破壊が生じやすい。
フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて熱膨張係数が小さいため、熱疲労特性に優れている。また、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、高価なNiをほとんど含有しないため材料コストも安く、汎用的に使用されている。但し、フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、高温強度が低いために、高温強度を向上させる技術が開発されてきた。
例えば、SUS430J1L(Nb添加鋼)、Nb−Si添加鋼、SUS444(Nb−Mo添加鋼)があり、Nb添加を基本に、Si、Moの添加によって高温強度を向上させるものであった。しかし、様々なエンジンの仕様に応じて、これらのフェライト系ステンレス鋼に、更に、低コスト化、高温強度向上、付加価値の追加が要望されている。
低コストの観点からは、低Cr化、低Nb化もしくはNb無添加、低Mo化もしくはMo無添加、高C化、高N化等が考えられる。
Cr、Nb、Moは高温強度の観点から重要な元素であるが、高価な元素でもある。また、Nbは生産の9割がブラジルであり、供給偏在性が高いため、資源リスクが高いという問題もある。Cr、Nb及びMoをエンジン仕様に合わせて適正な量まで低減する、もしくは、安価な元素で代替することによって、低コスト化が図れる。
C及びNは成型性、耐食性、高温強度の観点から低減することが求められる元素であるが、低減に従い加速度的に精錬コストが増大する。また、一定以上のC及びNの低減には特殊な設備が必要となることや、生産性を著しく損なうこともある。そのため、生産体制に応じたC及びNの低減に留めることによって、コスト増大の回避が図れる。
高温強度向上の観点からは、Nb、Si、Mo以外にも種々の添加元素が検討されてきた。特許文献1〜4には、Cuの固溶強化、Cuの析出物(ε−Cu相)による析出強化を利用したCu添加技術も開示されている。Cu添加により、更なる高温強度向上、もしくは、高価な高温強度向上元素の代替が図れる。
付加価値の追加の観点からは、例えば耐食性向上として、Ni添加、Ti添加等が考えられる。また、Niは高温強度や靭性を向上するために添加されることもある。Tiは耐粒界腐食性や深絞り性を向上するために添加されることもある。
しかし、上記の低コスト化、高温強度向上、付加価値の追加を目的とした、低Cr化、低Nb化もしくはNb無添加、低Mo化もしくはMo無添加、高C化、高N化、Cu添加、Ni添加及びTiの過剰添加は、いずれも耐酸化性を低下させるという問題がある。耐酸化性とは、異常酸化を起こさず酸化増量が少ないことと、耐スケール剥離性が良好であるという2点である。
ステンレス鋼を加熱した場合、表面にはCrやAlを含む酸化物からなる保護性の高いスケールが生成する。保護性の高いスケールの維持に必要なCrやAlの消費に対し、母材からのCrやAlの供給が不足すると、Feが酸化される。この時、生成されるFeを多量に含む酸化物は、酸化速度が非常に大きい。そのため、酸化が急速に進み、著しく母材を侵食してしまう。これを異常酸化という。
また、異常酸化を起こさない良好なスケールを形成できても、例えば自動車排気系などの冷却過程でスケールが剥離してしまえば問題である。スケールが剥離してしまうと、加熱時に雰囲気中の酸素が鋼素地に触れてしまい、酸化が急速に進む。スケールの修復が健全にできなければ、異常酸化の原因となりえる。また、剥離したスケールが飛散すると、下流機器のエロージョンや、堆積による流路閉塞などの問題を引き起こす可能性がある。
自動車の排気系部材におけるスケール剥離は、鋼素地と酸化物の熱膨張差が大きい場合や、加熱・冷却の繰り返しによって生じることが多く、熱応力が主因子であると考えられている。フェライト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、スケールとの熱膨張差が小さいため、耐スケール剥離性で優位である。
耐酸化性を向上するための種々の技術や、何らかの効果を得るために添加した元素によって低下した耐酸化性を改善するための技術も検討されている。例えば、Cu添加による耐酸化性の低減を補うことを目的としていると考えられる技術を以下に紹介する。
特許文献5には、Siの増量、Mnの増量及びMn/Si比を調整することで、異常酸化抑制とスケール密着性を改善する技術を開示している。Siの増量は、Cr23を主体とする酸化物を表層に形成するため、異常酸化を抑制すると考えられている。Mnの増量は、Cr23を主体とする酸化物と鋼素地との中間の熱膨張率を有するMnを含むスピネル系の酸化物を生成し、鋼素地との熱膨張差を緩和するため、スケール密着性を改善すると考えられている。更に、Siの増量により耐スケール剥離性が低下し、Mnの増量により酸化増量が多くなっても、Mn/Si比の調整により異常酸化抑制と耐スケール剥離性の改善ができる。しかし、スケールの特徴と異常酸化との関係性の開示はなく、また、大気中における耐酸化性を評価しており、自動車の排ガス雰囲気を想定して評価していない。また、Alを積極的に活用した技術ではない。
特許文献6には、Cu添加により異常酸化が増える原因が推測されている。Cuはオーステナイト形成元素であり、酸化の進行に伴う、表層部のCr低下により、表層部のみフェライト相からオーステナイト相へ相変態することを助長する。オーステナイト相は、フェライト相に比べてCr拡散が遅いため、オーステナイト相が表層部となることで、母材からスケールへのCr供給が阻害される。これにより、表層部はCr欠乏となり、耐酸化性が劣化すると推定している。このことから、フェライト形成元素とオーステナイト形成元素を相互調整し、オーステナイト相を抑制することで、異常酸化を抑制する技術を開示している。しかし、スケールの特徴と異常酸化との関係性の開示はなく、また、大気中における耐酸化性を評価しており、自動車の排ガス雰囲気を想定して評価していない。また、Alを積極的に活用した技術ではない。
特許文献7には、Cu濃度が質量濃度で0.8〜1.6%の範囲内において、V濃度を質量濃度で0.15〜0.60%とすることで耐酸化性を改善する技術を開示している。しかし、VNの析出を利用することで高温強度を向上する技術でもあり、N濃度が質量%で0.15〜0.40%である。そのため、窒化物を形成しやすいTi、Zr、Taを添加することができない。また、スケールの特徴と異常酸化との関係性の開示はなく、また、大気中における耐酸化性を評価しており、自動車の排ガス雰囲気を想定して評価していない。また、Alを積極的に活用した技術ではない。
特許文献8には、Cu濃度が質量濃度で1.0%以下の範囲内において、Si濃度を質量濃度で0.40%以上、Al濃度を質量濃度で0.20%以上、かつSi≧Alを同時に満たすことで、鋼板表面に緻密なSi酸化物層が連続的に生成し、外部からの酸素侵入を抑制するとともに、Si酸化物層を通過して内部に侵入してきた一部の酸素もAlと結びついて酸化物を形成し、FeやCrの酸化を抑制することで、耐酸化性を改善する技術を開示している。しかし、大気中における耐酸化性を評価しており、自動車の排ガス雰囲気を想定して評価していない。また、Alを活用した技術ではあるが、AlはSi酸化物の補助的役割である。そのため、スケール中、又は、スケールと母材の界面に多量にAlを含むスケールを活用した技術ではなく、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAlの特徴と異常酸化との関係性の開示はない。
特許文献9及び10には、Cu濃度が質量濃度で0.8〜1.5%の範囲内において、SiとMnの成分バランスを調整し、鋼素地表層のCu濃化を最終焼鈍及び酸洗で調整することで耐酸化性及び耐スケール剥離性を改善する技術を開示している。しかし、スケールの特徴と異常酸化との関係性の開示はなく、また、大気中における耐酸化性を評価しており、自動車の排ガス雰囲気を想定して評価していない。また、Alを積極的に活用した技術ではない。
特許文献11には、Al濃度を質量濃度で1.4%以上、かつAl濃度/Cr濃度≧0.14を同時に満たすことで、緻密で安定なAl23が生成し、耐酸化性を改善する技術を開示している。しかし、板厚と異常酸化の関係性の開示はなく、また、大気中における耐酸化性を評価しており、自動車の排ガス雰囲気を想定して評価していない。
特開2008−189974号公報 特開2009−120893号公報 特開2009−120894号公報 特開2011−190468号公報 特許第2896077号公報 特開2009−235555号公報 特許第5239643号公報 特開2012−102376号公報 特開2013−189709号公報 特開2013−227659号公報 国際公開WO2014/050016号
特許文献5〜10の添加元素による耐酸化性の低下を改善する技術は、Alを活用した技術ではなく、スケールの特徴と異常酸化との関係性の開示がないものが大半である。また、Alを補助的に活用した技術はあるものの、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAlの特徴と異常酸化との関係性の開示はない。また、Alを積極的に活用した技術もあるものの、板厚と異常酸化の関係性の開示はない。また、いずれも大気中における耐酸化性を評価しており、自動車の排ガス雰囲気を想定して評価していない。
本発明者は、自動車の排ガスを想定した様々な雰囲気組成において耐酸化性を検討する中で、浸炭性を有する排ガス雰囲気においては、耐酸化性が低下することを見出した。更に、低コスト化、高温強度向上、付加価値の追加を目的とし、低Cr化、低Nb化もしくはNb無添加、低Mo化もしくはMo無添加、高C化、高N化、Cu添加、Ni添加及びTiの過剰添加のいずれかを実施している場合、この耐酸化性の低下が顕著になることも見出した。つまり、浸炭性を有する雰囲気においては、耐酸化性に加えて、耐浸炭性も有する必要があることを見出した。
浸炭性を有する雰囲気とは、雰囲気中のC活量が鋼中のC活量より大きい雰囲気であり、例えば、雰囲気中に一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスを含み、雰囲気に含まれる酸素が全て一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスと反応しても一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスが残存する組成の雰囲気である。浸炭反応は一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスのCが乖離し鋼中に浸入する反応である。また、雰囲気中に多量の二酸化炭素を含み、酸化に使用される酸素源として二酸化炭素が使用されると想定される雰囲気でも浸炭性があると考えられる。二酸化炭素が酸化に使用される場合は、二酸化炭素のCが乖離し鋼中に侵入する、もしくは、二酸化炭素の酸素が酸化で使用され一酸化炭素が生成し、一酸化炭素のCが乖離し鋼中に侵入すると考えられる。
従来の自動車排気系部材においては、耐浸炭性が要求されることはなかった。しかし、自動車排気系には、今後、高温化や薄肉化が求められる。高温化することで、浸炭や酸化といった化学反応の速度が大きくなり、高い浸炭性及び酸化性となると考えられる。また、薄肉化することで、鋼中のC濃度が上昇しやすくなること、耐酸化性維持に必要なCrやAlの総量が少なくなること、物温が上昇し易くなることで、高い浸炭性及び酸化性となると考えられる。
また、低コスト化、高温強度向上、付加価値の追加を目的とし、低Cr化、低Nb化もしくはNb無添加、低Mo化もしくはMo無添加、高C化、高N化、Cu添加、Ni添加及びTiの過剰添加のいずれかの実施により耐酸化性が低下している場合、浸炭による更なる耐酸化性の低下は致命的となると考えられる。
つまり、今後、自動車排気系に求められる高温化や薄肉化のニーズに対応することや、低コスト化、高温強度向上、付加価値の追加を目的とした材料の成分変更に対応することで、初めて高い浸炭性雰囲気となる用途があることが見出された。
浸炭性を有する雰囲気中において、フェライト系ステンレス鋼の耐酸化性が低下するメカニズムの詳細は必ずしも明確になっているわけではないが、以下のように考えられる。
浸炭性を有する雰囲気中でフェライト系ステンレス鋼を加熱した際、母材表面にスケールとしてCrやAlを含む酸化物からなる保護性の高いスケールが健全に形成されれば、浸炭から保護されると考えられている。しかし、スケール中の亀裂、ボイド、空孔などを介して一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスがスケールを透過し母材と直接接触した場合、浸炭が発生する可能性がある。浸炭により母材内にCr炭化物が形成すれば、Crを主体とした酸化物からなるスケールで保護性を得ている場合であれば、スケール維持に必要なCrが消費されてしまうので、異常酸化が起きやすくなると考えられる。また、Alを主体とした酸化物からなるスケールで保護性を得ている場合においても、Alの酸化を促進する効果を有するCrが消費されてしまうので、異常酸化が起きやすくなると考えられる。また、浸炭によりCr炭化物が形成しなくても母材内のCの濃度が上昇すれば、Cはオーステナイト形成元素であるため、母材表層部がフェライト相からオーステナイト相に変態することが促進されると考えられる。オーステナイト相が形成されると、フェライト相よりCrやAlが拡散し難くなるため、異常酸化が起きやすくなると考えられる。
また、CrやAlは保護性の高いスケールを構成する元素であるため、CrやAlを低減することで耐酸化性は低下する。また、CrはAlの酸化を促進する効果もあるため、Alを含むスケールで保護性を得ていても、Crの低減で耐酸化性は低減する。更に、Cr、Nb、Moはフェライト形成元素であるため、低減によりオーステナイト相が形成しやすくなる。C、N、Cu、Niはオーステナイト形成元素であるため、添加及び増加によりオーステナイト相が形成しやすくなる。そのため、低Cr化、低Nb化もしくはNb無添加、低Mo化もしくはMo無添加、高C化、高N化、Cu添加、Ni添加は、浸炭性を有する雰囲気中においては、浸炭によるオーステナイト形成を促進することになり、耐酸化性の低下が顕著となると考えられる。また、Tiの過剰添加は、スケール中のボイドや空孔などを増加することで、酸化速度を上昇させ、CrやAlの消費を増やし、また、一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスがスケールを透過し易くなり、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性の低下が顕著となると考えられる。
また、浸炭性を有する雰囲気は酸素分圧の低い雰囲気でもある。酸素分圧が低い雰囲気では、酸素解離圧の小さい酸化物を形成する元素が酸化し易くなるため、浸炭性を有する雰囲気と大気中で形成されるスケールは異なってくる。そのため、浸炭性を有する雰囲気と大気中で耐酸化性向上に有効な添加元素、または、添加元素の影響代は異なると考えられる。しかし、浸炭性を有する雰囲気で形成されるスケール及び、そのスケールの構造の耐酸化性に及ぼす影響に関する検討はないのが現状である。
以上の検討により、自動車排気系部材の耐酸化性向上のための従来知見は、大気中における耐酸化性の評価から得た知見であり、自動車排気系部材が浸炭性を有する排ガス雰囲気に曝される可能性を考慮した技術ではなかった。
また、今後、自動車排気系が高温化や薄肉化する場合や、低コスト化、高温強度向上、付加価値の追加を目的とし、低Cr化、低Nb化もしくはNb無添加、低Mo化もしくはMo無添加、高C化、高N化、Cu添加、Ni添加及びTiの過剰添加のいずれかを実施する場合、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性が顕著に低下するという新たな課題があることが分かった。
つまり、耐酸化性に加えて、今まで考慮していなかった耐浸炭性を考慮した新たな用途の鋼を開発する必要があり、また、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性向上技術を開発する必要があった。
本発明は、耐浸炭性及び耐酸化性に優れた、浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を提供するものである。
また、同様に浸炭性を有する高温環境となる、都市ガス、メタン、天然ガス、プロパン、灯油、ガソリン等の炭化水素系燃料を水素に改質する際に使用される改質器、熱交換器などの燃料電池高温部材として使用される、耐浸炭性及び耐酸化性に優れた、浸炭性を有する雰囲気となる燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法も提供する。
発明者らは、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性の評価を行っている過程において、Nb又はTiが一定量以上含まれる条件下において、Alを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成し、結果としてスケールが薄くなっていることが、耐浸炭性及び耐酸化性を改善し、更に、長期使用においてこのスケールを維持するためにはある程度の板厚を確保することも必要であることを見出した。更に、各種成分の影響を鋭意検討した結果、耐浸炭性及び耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を発明した。
上記課題を解決するために、発明者らはフェライト系ステンレス鋼が浸炭性を有する雰囲気で形成するスケールの特徴を800℃、100時間の熱処理で評価し、その鋼が形成するスケールの特徴と850℃における浸炭性を有する雰囲気に曝されるフェライト系ステンレス鋼の耐酸化性との関係について詳細に検討を行った。更に、発明者らは浸炭性を有する雰囲気中において形成されたスケールの長期使用を考慮した上での保護性について、当該スケール付きのフェライト系ステンレス鋼板を大気中において950℃の熱処理を行い、スケール成長の加速を模擬することで詳細に検討を行った。その結果、下記(i)式、(ii)式及び(iii)式を満足し、更に、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で800℃に加熱し100時間継続した後で室温まで冷却したとき、ステンレス鋼板の表面に、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成することを特徴とすることフェライト系ステンレス鋼が、耐浸炭性及び耐酸化性に優れ、更に、長期使用を考慮した上での保護性を有することが分かった。
Cr+5Si+6Nb+2Ti+4Al−22.5≧0 ・・・式(i)
Nb+Ti≧0.05 ・・・式(ii)
t+0.42logAl―0.54≧0 ・・・式(iii)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味する。
また、浸炭性を有する雰囲気中においてフェライト系ステンレス鋼板に形成されたスケールが、長期使用後においても、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成しており、酸化増量が1.00mg/cm2以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼が、耐浸炭性及び耐酸化性に優れ、更に、長期使用を考慮した上での保護性を有することが分かった。なお、酸化増量が1.00mg/cm2以下はスケール厚みで6μm以下に相当する。
上述の浸炭性を有する雰囲気中における耐浸炭性及び耐酸化性の改善のメカニズムについては必ずしも明確になっているわけではないが、以下のように考えられる。
CrやAlを含む酸化物からなる保護性の高いスケールは一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスといった浸炭性ガスを基本的には透過しにくいが、MnやFeを多量に含む酸化物からなる保護性の低いスケールがスケール中に占める割合が高い場合や、CrやAlを含む酸化物からなるスケールに僅かなボイドや亀裂が存在することで、浸炭性ガスが母材まで透過してしまうと考えられる。浸炭により母材表層部がフェライト相からオーステナイト相に変態すると、母材からスケールへのCrやAlの供給能が低下するため、浸炭は耐酸化性を低下させると考えられる。ここで、Alを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成する場合、基本的にはスケールの成長は抑制され、スケールは薄くなる。スケールの成長が抑制されるということは、CrやAlの消費が抑制されることになる。また、酸化物は緻密な程酸化速度が低くなる傾向であるため、Alを多量に含むスケール又は、スケールと母材の間のAl濃化層は緻密な酸化物層であると考えられる。緻密な酸化物層が形成されることで、浸炭性ガスの母材への浸入が抑制されると考えられる。
一方、スケールと母材の間にAlの濃化層が形成される場合でも、スケールが厚い場合がある。この場合は、Alの濃化層が層状ではなく、斑状に形成されている可能性があり、浸炭性ガスの母材への浸入抑制効果は小さいと考えられる。また、スケールが厚い場合は、Crを主体とした酸化物で耐酸化性を確保している可能性が高く、斑状のAlの濃化物が母材からスケールへのCrの供給を遮り、耐酸化性を低下させることがあると考えられる。
また、スケールは厚くなる程、剥離し易くなる。そのため、スケールがAlを多量に含むスケールになる、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層が形成することで、スケールが薄くなる場合、スケールは剥離し難くなり、耐スケール剥離性の観点からも耐酸化性が向上すると考えられる。
つまり、Alを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成し、かつ、薄いスケールとなることが、CrやAlの消費及び浸炭性ガスの浸入を抑制し、耐浸炭性及び耐酸化性を改善すると考えられる。
また、耐浸炭性及び耐酸化性を改善する元素としてAl、Cr、Si、Nb、Tiがある。Alは、Alを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成することに直接的に必要な元素である。また、Alを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成することで、スケール成長は抑制され、スケール厚は薄くなる。また、Cr、SiはAlの酸化を促進する元素であり、Alの効果を増幅すると考えられる。つまり、Al、Cr、SiはいずれもAlを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成することを促進すし、これらのスケールで浸炭性ガスの浸入を抑制することで耐浸炭性及び耐酸化性を改善すると考えられる。ただし、酸化初期のスケールを形成するまでの間や、スケール中に発生した亀裂やボイドを修復する間は、スケールによる浸炭性ガスの浸入抑制が期待できない。この間に著しい浸炭が起これば、Alを多量に含むスケール、又は、スケールと母材の間のAlの濃化層の形成や修復は困難となることが考えられる。しかし、NbやTiを添加していれば、NbやTiが浸入してきたCと結合することで、Cを無害化やCの拡散速度を低減し、浸炭を緩和すると考えられる。つまり、NbやTiは、スケールの形成時や損傷したスケールの修復時に発生する可能性のある著しい浸炭を抑制することで、Alを多量に含むスケール、又は、スケールと母材の間のAlの濃化層を形成及び修復することを補助し、耐浸炭性及び耐酸化性を改善すると考えられる。
以上のような効果の検討の結果、耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を発明するに至った。本発明において「耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板」とは、耐浸炭性及び耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板であって、浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系用、又は浸炭性を有する雰囲気となる燃料改質器用として用いられるフェライト系ステンレス鋼板を意味する。
すなわち、上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 質量%で、
C:0.02%以下、
N:0.02%以下、
Si:0.05%以上、3.0%以下、
Mn:0.05%以上、2.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.01%以下、
Cr:12.0%以上、25.0%以下、
Ni:0.01%以上、2.0%以下、
Al:0.25%超、6.0%以下
V:0.01%以上、0.20%以下、
B:0.0002%以上、0.0050%以下、
Nb:0.60%未満
Ti:0.40%以下、
を含有し、質量%にて更に、
Cu:0.01%以上、2.0%以下、
Mo:0.01%以上、2.0%以下、
の1種または2種を含有し、
Cr:14.5%未満、
Mo:0.50%未満、
の1種または2種を満足し、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(i)式、(ii)式及び(iii)式を満たす組成及び板厚を有するステンレス鋼板の表面に、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを有することを特徴とする耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
Cr+5Si+6Nb+2Ti+4Al−22.5≧0 ・・・式(i)
Nb+Ti≧0.05 ・・・式(ii)
t+0.42logAl―0.54≧0 ・・・式(iii)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味し、tは板厚(mm)を意味する
(2) 質量%にて、更に
Ca:0.0002%以上、0.0030%以下、
Zr:0.01%以上、0.30%以下、
Y:0.001%以上、0.20%以下、
Hf:0.001%以上、1.0%以下、
REM:0.001%以上、0.20%以下、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1に記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
)質量%にて、更に
W:0.01%以上、5.0%以下、
Sn:0.002%以上、1.0%以下、
Mg:0.0002%以上、0.0030%以下、
Co:0.01%以上、0.30%以下、
Sb:0.005%以上、0.50%以下、
Bi:0.001%以上、1.0%以下、
Ta:0.001%以上、1.0%以下、
Ga:0.0002%以上、0.30%以下、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
) 質量%で、
C:0.02%以下、
N:0.02%以下、
Si:0.05%以上、3.0%以下、
Mn:0.05%以上、2.0%以下、
P:0.04%以下、
S:0.01%以下、
Cr:12.0%以上、25.0%以下、
Ni:0.01%以上、2.0%以下、
Al:0.25%超、6.0%以下
V:0.01%以上、0.20%以下、
B:0.0002%以上、0.0050%以下、
Nb:0.60%未満
Ti:0.40%以下、
を含有し、質量%にて更に、
Cu:0.01%以上、2.0%以下、
Mo:0.01%以上、2.0%以下、
の1種または2種を含有し、
Cr:14.5%未満、
Mo:0.50%未満、
の1種または2種を満足し、
残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(i)式、(ii)式及び(iii)式を満たす組成及び板厚を有し、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で800℃に加熱し100時間継続した後で室温まで冷却したとき、ステンレス鋼板の表面に、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成することを特徴とする耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
Cr+5Si+6Nb+2Ti+4Al−22.5≧0 ・・・式(i)
Nb+Ti≧0.05 ・・・式(ii)
t+0.42logAl―0.54≧0 ・・・式(iii)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味し、tは板厚(mm)を意味する
(5) 質量%にて、更に
Ca:0.0002%以上、0.0030%以下、
Zr:0.01%以上、0.30%以下、
Y:0.001%以上、0.20%以下、
Hf:0.001%以上、1.0%以下、
REM:0.001%以上、0.20%以下、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(4)に記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
)質量%にて、更に
W:0.01%以上、5.0%以下、
Sn:0.002%以上、1.0%以下、
Mg:0.0002%以上、0.0030%以下、
Co:0.01%以上、0.30%以下、
Sb:0.005%以上、0.50%以下、
Bi:0.001%以上、1.0%以下、
Ta:0.001%以上、1.0%以下、
Ga:0.0002%以上、0.30%以下、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする(4)又は(5)に記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
(7)水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で850℃に加熱し200時間継続した後で室温まで冷却したときの酸化増量が0.50mg/cm2以下であり、かつ、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で850℃に加熱し200時間継続した後で室温まで冷却したスケール付きのフェライト系ステンレス鋼板を大気950℃に加熱し200時間継続した後で室温まで冷却したときの酸化増量が1.00mg/cm2以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
(8)雰囲気中に含まれる一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスが、雰囲気中に含まれる酸素と全て反応しても、1体積%以上の一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスが残存する組成の浸炭性雰囲気または、雰囲気中の酸素が1体積%以下であり、かつ、酸素の10倍以上の体積の二酸化炭素を含む浸炭性雰囲気に曝される可能性のある自動車排気系部材または燃料電池高温部材として用いることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
また、上記本発明で、下限の規定をしないものについては、不可避的不純物レベルまで含むことを示す。
本発明によれば、耐浸炭性及び耐酸化性に優れた、浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、酸化環境が過酷となり、浸炭による耐酸化性の低下を抑制することが重要になる場合においても優れた耐浸炭性及び耐酸化性を付与できることから、酸化環境が苛酷となる高温化及び薄肉化などに対応することもできる。
また、本発明によれば、低Cr化、低Nb化もしくはNb無添加、低Mo化もしくはMo無添加、高C化、高N化、Cu添加、Ni添加及びTiの過剰添加のいずれかを実施する場合においても優れた耐浸炭性及び耐酸化性を付与できることから、自動車排気系部材に適用することにより、低コスト化、高温強度向上、耐食性などの付加価値の追加ができ、環境対策や部品の低コスト化などに大きな効果が得られる。
また、同様に浸炭性を有する高温環境となる、都市ガス、メタン、天然ガス、プロパン、灯油、ガソリン等の炭化水素系燃料を水素に改質する際に使用される改質器、熱交換器などの燃料電池高温部材として使用される耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法も提供できる。
表1の本発明例1〜12及び比較例13〜22について、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気中における850℃、200時間の連続酸化試験における耐酸化性の評価に及ぼす、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気中における800℃、100時間の連続酸化後のスケールの厚み及び、スケール中、又は、スケールと母材の界面のAl濃度の影響を示した図である。
本発明を実施するための形態と限定条件について詳細に説明する。なお、本発明において特に注記のない場合、元素含有量等で記載する%は質量%を意味する。発明者らは、フェライト系ステンレス鋼の高温特性を調査している過程において、わずかな成分の違いで浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性が大きく異なることを見出した。
Figure 0006900143
(試験1)
先ず、表1の本発明例1〜12及び比較例13〜22が浸炭性を有する雰囲気中において形成するスケールを調査するために、板厚1.5mmの試験片を用いて、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気中における800℃、100時間の連続酸化試験を実施した。この酸化条件ではいずれも異常酸化せず、正常酸化時のスケールを評価できる。
上記浸炭性を有する雰囲気中で形成したスケールの厚み及びスケール中、又は、スケールと母材の界面のAl濃度は、グロー放電発光分析(GDS)により評価した。スケールの厚みはO濃度が5質量%以下となるまでの深さとした。また、O濃度がほぼ0質量%となるまでの深さの間におけるAl濃度の最大値をスケール中、又は、スケールと母材の界面のAl濃度とした。
Figure 0006900143
(試験2)
更に、上記試験1で評価したスケールを形成することができる表1の本発明例1〜12及び比較例13〜22の浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を評価するために、表1の本発明例1〜12及び比較例13〜22について、板厚1.5mmの試験片を用いて、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気中における850℃、200時間の連続酸化試験を実施した。酸化試験に用いる試験片は全面#600研磨仕上げを施したものを使用した。なお、剥離したスケールも含む酸化試験片の重量増加の値を酸化試験片の表面積の値で除した値を酸化増量として評価した。
上記試験2における酸化増量測定結果を表2に示す。上記試験2における酸化増量が、0.50mg/cm2より大きい表1の比較例13〜22は、表面にFeを多量に含む酸化物からなるノジュールを形成しており、異常酸化していた。一方、表1の本発明例1〜12は同様のノジュールは観察されなかった。このことから、酸化増量が0.50mg/cm2以下の場合、異常酸化状態に該当せず、良好な耐酸化性を示し、正常酸化していると判定した。
(試験3)
更に、試験2で形成されたスケールの長期使用を考慮した上での保護性を評価するために、表1の本発明例1〜12について、0.39〜1.25mmの板厚の試験片を用いて、試験2のスケールが付いた状態で、大気における950℃、200時間の連続酸化試験を実施した。つまり、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気中における850℃、200時間の連続酸化試験の後に、続けて大気における950℃、200時間の連続酸化試験を実施した。なお、950℃、200時間といった条件は、850℃に換算すると約1600時間の酸化処理相当になる。
Figure 0006900143
上記試験3における酸化増量及びスケール剥離量の測定結果を表3に示す。上記試験3における酸化増量が、1.00mg/cm2より大きい表3の比較例M〜Qは、表面にFeを多量に含む酸化物からなるノジュールを形成しており、異常酸化していた。一方、表3の本発明例A〜Lは同様のノジュールは観察されなかった。このことから、酸化増量が1.00mg/cm2以下の場合、異常酸化状態に該当せず、良好な耐酸化性を示し、正常酸化していると判定した。
前述のように、Alを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成する場合、基本的にはスケールの成長は抑制され、スケールは薄くなる。スケールの成長が抑制されるということは、CrやAlの消費が抑制されることになる。また、酸化物は緻密な程酸化速度が低くなる傾向であるため、Alを多量に含むスケール又は、スケールと母材の間のAl濃化層は緻密な酸化物層であると考えられる。緻密な酸化物層が形成されることで、浸炭性ガスの母材への浸入が抑制されると考えられる。つまり、Alを多量に含むスケールを形成、又は、スケールと母材の間にAlの濃化層を形成し、かつ、薄いスケールとなることが、CrやAlの消費及び浸炭性ガスの浸入を抑制し、耐浸炭性及び耐酸化性を改善すると考えられる。
そこで発明者らは、上記試験2の浸炭性を有する雰囲気中における酸化増量が0.50mg/cm2以下となり優れた耐酸化性を有するための条件を鋭意検討し、試験1酸化後のスケール厚みとスケール中又はスケールと母材界面のAl濃度に着目し、試験2の酸化増量に及ぼす影響について評価を行った。結果を図1に示す。この結果、上記試験1でステンレス鋼の表面に、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成することを特徴とすることが耐浸炭性を改善し、更に耐酸化性を改善することが分かった。
更に、発明者らは、上記試験1でステンレス鋼の表面に、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成する条件を鋭意検討した。耐酸化性に効果を有する元素としてCr、Si、Alに着目し、炭化物を形成しやすい元素としてNb、Tiに着目し、それら元素が耐酸化性に及ぼす影響について広汎に調査を行った。その結果、下記(i)式及び(ii)式を満足するとともに、各元素含有量を後述の本発明含有量範囲とすることにより、試験1でステンレス鋼の表面に形成されるスケールにおいて、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足することが判明した。これにより、耐浸炭性を改善し、更に耐酸化性を改善するために必要であるスケールを形成することが分かった。
Cr+5Si+6Nb+2Ti+4Al−22.5≧0 ・・・式(i)
Nb+Ti≧0.05 ・・・式(ii)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味する。また、式(i)の各元素に付された係数は、多数の実験結果について重回帰分析を行った結果として導かれた数値である。
表1、2において、本発明例1〜12については、各元素含有量が後述の本発明含有量範囲にあり、かつ上記(i)式及び(ii)式を満足しており、試験1でステンレス鋼の表面に形成されるスケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を実現し、試験2での酸化増量が少なく、良好な耐酸化性を実現していることがわかる。
更に、発明者らは、上記試験3の酸化増量が1.00mg/cm2以下となりスケールの長期使用を考慮した上での保護性を有するための条件を鋭意検討した。長期間にわたって耐酸化性を維持するためには、母材から十分なAlが供給される必要があり、母材のAl濃度が高いほど、そして板厚が厚いほど有利であると考えられる。そこで、板厚tとAl含有量が、試験3の酸化増量に及ぼす影響を評価した。その結果、下記(iii)式を満足することを特徴とすることが耐浸炭性を改善し、更に耐酸化性を改善することが分かった。
t+0.42logAl―0.54≧0 ・・・式(iii)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味する。
表3において、本発明例A〜Lについては、各元素含有量が後述の本発明含有量範囲にあり、かつ上記(i)式、(ii)式、(iii)式を満足しており、試験3での酸化増量が少なく、長期使用時においても良好な耐酸化性を実現していることがわかる。
なお、発明者らは、表2の本発明例1〜12、及び、表3の本発明例A〜Lについては、上記試験2及び試験3の酸化後のスケールを、上記試験1と同様にグロー放電発光分析(GDS)を用いて評価し、いずれもスケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を維持していることを確認した。また、いずれのスケール厚みも、上記試験2及び試験3の正常酸化の判定基準である0.50mg/cm2及び1.00mg/cm2以下に相当する3μm以下及び6μm以下となっていることを確認した。
更に、個々の元素の効果についても検討を進め、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を発明した。
以下、本発明における各組成を限定した理由について説明する。
(C:0.02%以下)
Cは、成形性と耐食性を劣化させ、高温強度の低下をもたらす。したがって、0.02%以下、好ましくは0.015%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.001%とするのが望ましい。また、Cは過度でなくとも低減に従い加速度的に精錬コストが増大する。また、一定以上のCの低減には特殊な設備が必要となることや、生産性を著しく損なうこともある。そのため、低コスト化を図るためにCの低減の緩和が望まれる場合がある。しかし、Cはオーステナイト形成元素であり、酸化の進行に伴い、表層部のCr又はAlが低下した場合、表層部のみフェライト相からオーステナイト相へ相変態することを助長する。浸炭性を有する雰囲気中においては、鋼中のCに加えて、浸炭により更にCが増加するため、表層部のフェライト相からオーステナイト相へ相変態することが助長される。同様にNもオーステナイト形成元素であり同様の効果がある。そのため従来は、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を考慮すると、C+Nを0.020%超とすることは難しかった。それに対して、本発明の規定の範囲内であれば、C+Nを0.020%超とすることも可能である。
(N:0.02%以下)
NはCと同様、成形性と耐食性を劣化させ、高温強度の低下をもたらす。したがって、0.02%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.003%とするのが望ましい。また、Nは過度でなくとも低減に従い加速度的に精錬コストが増大する。また、一定以上のNの低減には特殊な設備が必要となることや、生産性を著しく損なうこともある。そのため、低コスト化を図るためにNの低減の緩和が望まれる場合がある。しかし、Nはオーステナイト形成元素であり、酸化の進行に伴う表層部のCrやAlの低下により、表層部のみフェライト相からオーステナイト相へ相変態することを助長する。浸炭性を有する雰囲気中においては、浸炭により表層部のフェライト相からオーステナイト相へ相変態することが助長されているので、N低減の緩和による耐酸化性の劣化は大きい。同様にCもオーステナイト形成元素であり同様の効果がある。そのため従来は、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を考慮すると、C+Nを0.020%超とすることは難しかった。それに対して、本発明の規定の範囲内であれば、C+Nを0.020%超とすることも可能である。
(Si:0.05%以上、3.0%以下)
Siは、脱酸剤として添加される元素であるとともに、耐浸炭性及び耐酸化性に優れた多量にAlを含む薄いスケールを形成するのに重要な元素であり、耐酸化性を維持するためには0.05%以上の添加を必要とする。しかし、過度の添加は加工性を低下させる。したがって、3.0%以下とする。更に、過度の低減は耐酸化性の低下に加え、脱酸不良やコスト増加を招き、過度の添加による加工性の低下を更に考慮すると、下限は0.10%とすることが望ましく、上限は1.8%が望ましい。より望ましくは、0.20%超〜1.2%未満の範囲である。
(Mn:0.05%以上、2.0%以下)
Mnは、脱酸剤として添加される元素であるとともに、固溶強化による高温強度向上に対しても効果がある元素である。しかし、過度の添加は常温の均一伸びを低下させる。したがって、0.05〜2.0%とする。更に、過度の低減はコスト増加を招き、また、過度の添加はMnSを形成して耐食性が低下することを考慮すると、下限は0.10%とすることが望ましく、上限は1.50%が望ましい。より望ましくは、0.20%超〜1.20%未満の範囲である。
(P:0.04%以下)
Pは、製鋼精錬時に主として原料から混入してくる不純物であり、含有量が高くなると、靭性や溶接性が低下するため、その含有量は少ないほど良い。したがって、0.04%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.01%とするのが望ましい。
(S:0.01%以下)
Sは、製鋼精錬時に主として原料から混入してくる不純物であり、耐食性を劣化させるため、その含有量は少ないほど良い。したがって、0.01%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.0003%とするのが望ましい。
(Cr:12.0%以上、25.0%以下)
Crは、耐浸炭性及び耐酸化性に優れた多量にAlを含む薄いスケールを形成するのに重要な元素であり、耐酸化性を維持するためには12.0%以上の添加を必要とする。しかし、25.0%超では加工性が低下するとともに靭性の劣化をもたらすため、12.0〜25.0%とする。更に、耐酸化性に加え、高温強度、高温疲労特性や製造コストを考慮すると、下限は12.5%とすることが望ましく、上限は20%が望ましい。更に望ましくは、13.0%超〜18.0%未満である。また、Crは高価な元素であるため、低コスト化を図るために極力低減することが望まれる場合がある。しかし従来は、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性に特に重要な元素であり、14.5%未満とすることは難しかった。それに対して、本発明の規定の範囲内であれば、Crを14.5%未満とすることも可能である。さらに、低コスト化に加え、加工性の向上も考慮して、Crを14.0%未満とすることも可能である。
(Ni:0.01%以上、2.0%以下)
Niは耐食性を向上させる元素であるとともに、高温強度及び靭性を向上させる効果もある。しかし、過度な添加は成型性を低下させる。したがって、0.01〜2.0%とする。更に、Niは高価であることを考慮すると、上限は1.0%が望ましい。更に望ましくは、0.50%未満である。また、Niの耐食性向上効果は大きく、耐食性という付加価値を追加する上では有効的な活用が望まれる場合がある。しかし、Niはオーステナイト形成元素であり、酸化の進行に伴う表層部のCr低下により、表層部のみフェライト相からオーステナイト相へ相変態することを助長する。浸炭性を有する雰囲気中においては、浸炭により表層部のフェライト相からオーステナイト相へ相変態することが助長されているので、Ni添加による耐酸化性の劣化は大きい。同様にCuもオーステナイト形成元素であり、Niのオーステナイト形成能はCuの約2倍である。そのため従来鋼では、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を考慮すると、Cu+2Niを0.30%超とすることは難しかった。それに対して、本発明の規定の範囲内であれば、Cu+2Niを0.30%超とすることも可能である。さらに、これら元素の効果を積極的に活用するために、Cu+2Niを1.00%超とすることも可能である。
(Al:0.25%超、6.0%以下)
Alは、脱酸元素として添加される元素であるとともに、耐浸炭性及び耐酸化性に優れた多量にAlを含む薄いスケールを形成するのに重要な元素であり、耐酸化性を維持するためには0.25%超の添加を必要とする。しかし、過度の添加は硬質化して均一伸びを著しく低下させる他、靭性が著しく低下する。したがって、6.0%以下とする。また、固溶強化元素として高温強度向上に有用であるので、下限は0.35%が望ましい。更に望ましくは1.0%超である。また、過度の添加は溶接性を低下させるため、上限は4.8%が望ましい。更に望ましくは3.5%未満である。
(V:0.01%以上、0.20%以下)
Vは、微細な炭窒化物を形成し、析出強化作用が生じて高温強度向上に寄与する。しかし、過度の添加は析出物を粗大化して高温強度が低下し、熱疲労寿命は低下してしまう。したがって、0.01〜0.20%とする。
(B:0.0002%以上、0.0050%以下)
Bは、高温強度や熱疲労特性を向上させる元素である。しかし、過度の添加は熱間加工性や鋼表面の表面性状を低下させる。したがって、0.0002〜0.0050%とする。
本発明は、Nb:1.0%以下、Ti:0.40%以下の1種または2種を含有するとともに、前記式(ii)を満足する。
(Nb:1.00%以下)
Nbは、固溶強化及び析出物微細化強化により高温強度を向上させるとともに、CやNを炭窒化物として固定し、耐食性、耐粒界腐食性を向上させる。しかし、過度な添加は均一伸びを低下させ、穴拡げ性が劣化する。したがって、1.00%以下とする。更に、製造性を考慮すると、上限は0.60%未満が望ましい。また、NbとTiは、スケール形成初期やスケール修復時といった耐浸炭性が低下している時期において、浸炭を遅延する効果を有する重要な元素である。この浸炭遅延効果を得るためには、NbとTiの合計の下限を0.05%とする必要がある。望ましくは、0.07%超である。また、Nbは高価な元素であり、また、生産の9割がブラジルであり、供給偏在性が高いため、資源リスクが高く、低コスト化を図るために低減もしくは無添加とすることが望まれる場合がある。しかし、浸炭遅延効果だけであれば、Tiのみでも担保できるが、Nbは、フェライト形成元素として、酸化の進行に伴う母材表層部のCr又はAlの低下及び僅かな浸炭による母材表層部のフェライト相からオーステナイト相への相変態を抑制する効果も有し、耐酸化性を向上する役割は大きい。そのため従来は、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を考慮すると、Nbを0.35%未満もしくは無添加とすることは難しかった。それに対して、本発明の規定の範囲内であれば、Nbを0.35%未満もしくは無添加とすることも可能である。
(Ti:0.40%以下)
Tiは、C,N,Sと結合して耐食性、耐粒界腐食性、深絞り性の指標となるr値を向上させる元素である。しかし、多量のTiは固溶Ti量が増加して均一伸びを低下させる。したがって、0.40%以下とする。更に、粗大なTi系析出物を形成し、穴拡げ加工時の割れの起点になり、穴拡げ性を劣化させることを考慮すると、上限は0.30%が望ましい。また、上記で説明した通り、Tiは浸炭遅延効果を有する重要な元素であり、NbとTiの合計の下限を0.05%とする必要がある。望ましくは、NbとTiの合計の下限は0.07%超である。但し、浸炭遅延効果はNbのみでも担保できるため、Tiを無添加とすることは可能である。更に、表面疵の発生を考慮すると、上限は0.25%未満が更に望ましい。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、下限は0.001%とするのが望ましい。また、Tiの耐食性向上効果は大きく、耐食性という付加価値を追加する上では有効的な活用が望まれる場合がある。しかし、過度に添加すると、酸化速度を上昇させ、CrやAlの消費を増やす、もしくは、スケール中のボイドや空孔などを増加することにより一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスがスケールを透過し易くすることで、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性が低下する。そのため従来は、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を考慮すると、Tiを0.20%超とすることは難しかった。それに対して、本発明の規定の範囲内であれば、Tiを0.20%超とすることも可能である。
(Nb+Ti≧0.05 ・・・式(ii))
前述のように、前記式(i)を満たすとともに、Nb、Tiの一方又は両方を含有して上記(ii)を満たすことにより、酸化処理後のステンレス鋼の表面に、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成し、耐浸炭性を改善し、更に耐酸化性を改善することができる。
加えて、本発明では、Cu、Moの1種または2種を添加することにより、特性を更に向上させることができる。
(Cu:0.01%以上、2.0%以下)
Cuは、耐食性向上に有効な元素であり、必要に応じて0.01%以上添加する。また、Cuは高温強度を向上する元素であり、Cr、Nb、Moの代替もしくは、Cr、Nb、Moを利用した上で更なる高温強度向上を図るために有効的な活用が望まれる場合がある。高温強度はε−Cuが析出することによる析出硬化作用により向上される。しかし、過度な添加は熱間加工性を低下させる。したがって、2.0%以下とする。また、過度な添加はプレス成型性を低下させることを考慮すると、上限は1.50%が望ましい。更に望ましくは、1.30%未満である。また、Cuはオーステナイト形成元素であり、酸化の進行に伴う表層部のCr低下により、表層部のみフェライト相からオーステナイト相へ相変態することを助長する。浸炭性を有する雰囲気中においては、浸炭により表層部のフェライト相からオーステナイト相へ相変態することが助長されているので、Cu添加による耐酸化性の劣化は大きい。同様にNiもオーステナイト形成元素であり、Niのオーステナイト形成能はCuの約2倍である。そのため従来は、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を考慮すると、Cu+2Niを0.30%超とすることは難しかった。それに対して、本発明の規定の範囲内であれば、Cu+2Niを0.30%超とすることも可能である。さらに、これら元素の効果を積極的に活用するために、Cu+2Niを1.00%超とすることも可能である。Cu含有量を0.01%以上とすると好ましい。
(Mo:0.01%以上、2.00%以下)
Moは、耐食性を向上させるとともに、固溶強化による高温強度向上に対して有効であり、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、過度な添加は成型性を低下させる。したがって、2.00%以下とする。更に、製造性を考慮すると、上限は1.50%未満が望ましい。また、Moは高価な元素であるため、低コスト化を図るために低減もしくは無添加とすることが望まれる場合がある。しかし、Moはフェライト形成元素であり、酸化の進行に伴う表層部のCr低下により、表層部のみフェライト相からオーステナイト相へ相変態することを抑制する。浸炭性を有する雰囲気中においては、浸炭により表層部のフェライト相からオーステナイト相へ相変態することが助長されているので、Mo添加による耐酸化性の改善は大きい。そのため従来は、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を考慮すると、Moを0.50%未満もしくは無添加とすることは難しかった。それに対して、本発明の規定の範囲内であれば、Moを0.50%未満もしくは無添加とすることも可能である。Mo含有量を0.01%以上とすると好ましい。
加えて、本発明では、Ca、Zr、Y、Hf、REMの1種または2種以上を添加することにより、特性を更に向上させることができる。
(Ca:0.0002%以上、0.0030%以下)
Caは、脱硫のために必要に応じて添加される。この作用は0.0002%未満では発現しないため、下限を0.0002%とする。しかし、過度の添加は水溶性の介在物であるCaSの生成により耐食性を低下させるため、上限を0.0030%とする。また、Caは耐酸化性を向上する元素でもある。
(Zr:0.01%以上、0.30%以下)
Zrは、耐食性、耐粒界腐食性、高温強度を向上するため、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、過度の添加は加工性、製造性を低下させるため、上限を0.30%とする。また、Zrは耐酸化性を向上する元素でもある。
(Y:0.001%以上、0.20%以下)
Yは、鋼の清浄度を向上し、耐銹性、熱間加工性を向上するため、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度の添加は合金コストの上昇と製造性をの低下に繋がるため、上限を0.20%とする。また、Yは耐酸化性を向上する元素でもある。
(Hf:0.001%以上、1.0%以下)
Hfは耐食性、耐粒界腐食性、高温強度を向上するため、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度の添加は加工性、製造性を低下させるため、上限を1.0%とする。また、Hfは耐酸化性を向上する元素でもある。
(REM:0.001%以上、0.20%以下)
REM(希土類元素)は、鋼の清浄度を向上し、耐銹性、熱間加工性を向上するため、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度の添加は合金コストの上昇と製造性の低下に繋がるため、上限を0.20%とする。また、REMは耐酸化性を向上する元素でもある。REMは、一般的な定義に従う。スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。単独で添加しても良いし、混合物であっても良い。
加えて、本発明では、W、Sn、Mg、Co、Sb、Bi、Ta、Gaの1種または2種以上を添加することにより、特性を更に向上させることができる。
(W:0.01%以上、5.0%以下)
Wは、耐食性と高温強度を向上するため、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、過度の添加は靭性、製造性を低下させるため、上限を5.0%とする。
(Sn:0.002%以上、1.0%以下)
Snは、耐食性と高温強度を向上するため、必要に応じて0.002%以上添加する。しかし、過度の添加は靭性、製造性を低下させるため、上限を1.0%とする。
(Mg:0.0002%以上、0.0030%以下)
Mgは、脱酸元素として添加させる場合がある他、スラブの組織を微細化させ、成型性向上に利用できるため、必要に応じて0.0002%以上添加する。しかし、過度の添加は耐食性、溶接性、表面品質を低下させるため、上限を0.0030%とする。
(Co:0.01%以上、0.30%以下)
Coは、高温強度を向上するため、必要に応じて0.01%以上添加する。しかし、過度の添加は靭性、製造性を低下させるため、上限を0.30%とする。
(Sb:0.005%以上、0.50%以下)
Sbは、高温強度を向上するため、必要に応じて0.005%以上添加する。しかし、過度の添加は溶接性、靭性を低下させるため、上限を0.50%とする。
(Bi:0.001%以上、1.0%以下)
Biは、冷間圧延時に発生するローピングを抑制し、製造性を向上するため、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度の添加は熱間加工性を低下させるため、上限を1.0%とする。
(Ta:0.001%以上、1.0%以下)
Taは、高温強度を向上するため、必要に応じて0.001%以上添加する。しかし、過度の添加は靭性、製造性を低下させるため、上限を1.0%とする。
(Ga:0.0002%以上、0.30%以下)
Gaは、耐食性と耐水素脆化特性を向上するため、必要に応じて0.0002%以上添加する。しかし、過度の添加は加工性を低下させるため、上限を0.30%とする。
更に、浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性の指標は、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で850℃に加熱し200時間継続した後で室温まで冷却したときの酸化増量とした。この値が、0.50mg/cm2以下の場合、異常酸化状態に該当せず、良好な浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性を示しているとした。なお、酸化増量が0.50mg/cm2以下はスケール厚みで3μm以下に相当する。
また、浸炭性を有する雰囲気中において形成されたスケールの長期使用を考慮した上での保護性の指標は、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中における850℃、200時間の連続酸化試験の後に、続けて大気における950℃、200時間の連続酸化試験を実施した後で室温まで冷却したときの酸化増量とした。この酸化増量の値が、1.00mg/cm2以下の場合、異常酸化に該当せず、良好なスケールの長期使用を考慮した上での保護性を示しているとした。なお、酸化増量が1.00mg/cm2以下はスケール厚みで6μm以下に相当する。
次に、本発明における浸炭性を有する雰囲気について説明する。
本発明における浸炭性を有する雰囲気とは、雰囲気中のC活量が鋼中のC活量より大きい雰囲気であり、例えば、雰囲気中に一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスを含み、雰囲気に含まれる酸素が全て一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスと反応しても一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスが残存する組成の雰囲気である。また、雰囲気中に多量の二酸化炭素を含み、酸化に使用される酸素源として二酸化炭素が使用されると想定される雰囲気も浸炭性を有する雰囲気である。
更に、雰囲気中の一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスが酸素と反応している間は浸炭が緩やかになっていると考えられるので、酸素量が少ない方がその反応時間もしくは頻度が短くなり浸炭が発生する可能性は高くなると考えられる。また、二酸化炭素による浸炭の場合は、酸素が酸化に使用され鋼材表面の狭い範囲において酸素が欠乏することで二酸化炭素が酸化に使用され始め、それに伴い浸炭が発生すると考えられる。つまり、酸素量が少ない方が二酸化炭素による酸化及び浸炭が発生する可能性が高くなると考えられる。したがって、本発明における浸炭性を有する雰囲気は、一酸化炭素及び炭化水素系ガスを合計で1体積%以上且つ酸素が1体積%以下を含み、一酸化炭素及び炭化水素系ガスの合計量が酸素量の2倍以上を含む雰囲気もしくは、二酸化炭素が5%以上且つ酸素が1体積%を含む雰囲気と解釈することが望ましい。
更に、雰囲気中の一酸化炭素及び炭化水素系ガスの合計量と酸素量の乖離が大きいほど、一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスと酸素の反応と一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスによる浸炭反応が平行して同時に発生し易くなると考えられる。また、二酸化炭素量が多いほど、酸素による酸化と二酸化炭素による酸化が平行して同時に発生し易くなると考えられる。したがって、本発明における浸炭性を有する雰囲気は、一酸化炭素及び炭化水素系ガスを合計で2体積%以上且つ酸素が1体積%以下を含み、一酸化炭素及び炭化水素系ガスの合計が酸素の5倍以上を含む雰囲気もしくは、二酸化炭素が10%以上且つ酸素が1体積%を含む雰囲気と解釈することが更に望ましい。
次に、本発明における耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法について説明する。
本発明の鋼板の製造方法については、フェライト系ステンレス鋼を製造する一般的な工程を採用できる。一般に、転炉又は電気炉で溶鋼とし、AOD炉やVOD炉などで精練して、連続鋳造法又は造塊法で鋼片とした後、熱間圧延−熱延板の焼鈍−酸洗−冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗の工程を経て製造される。必要に応じて、熱延板の焼鈍を省略してもよいし、冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗を繰り返し行ってもよい。これら各工程の条件は一般的条件で良く、例えば熱延加熱温度1000〜1300℃、熱延板焼鈍温度900〜1200℃、冷延板焼鈍温度800〜1200℃等で行うことができる。但し、本発明は製造条件を特徴とするものではなく、その製造条件は限定されるものではない。そのため、製造された鋼が本発明の効果が得られる限りにおいて、熱延条件、熱延板厚、熱延板焼鈍の有無、冷延条件、熱延板及び冷延板焼鈍温度、雰囲気などは適宜選択することができる。
また、仕上酸洗前の処理は一般的な処理を行って良く、例えば、ショットブラストや研削ブラシなどの機械的処理や、溶融ソルト処理や中性塩電解処理などの化学的処理を行うことができる。また、冷延・焼鈍後に調質圧延やテンションレベラーを付与しても構わない。更に、製品板厚についても、要求部材厚に応じて選択すれば良い。また、この鋼板を素材として電気抵抗溶接、TIG溶接、レーザー溶接などの通常の排気系部材用ステンレス鋼管の製造方法によって溶接管として製造しても良い。
前記式(i)、式(ii)を含めて本発明で規定する成分を含有するフェライト系ステンレス鋼板とすれば、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で800℃に加熱し100時間継続した後で室温まで冷却することにより、ステンレス鋼板の表面に、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成することができる。
次に、浸炭性を有する雰囲気中での使用について説明する。
フェライト系ステンレス鋼板を浸炭性を有する雰囲気中で使用する場合、その雰囲気中において鋼板の表面に、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成することが優れた耐浸炭性及び耐酸化性を有するために必要である。
この優れた耐浸炭性及び耐酸化性を有するために必要であるスケールは上記本発明に規定する成分を有するフェライト系ステンレス鋼を用い、浸炭性を有する雰囲気中においてステンレス鋼の表面に形成される。浸炭性を有する雰囲気中とは、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素系ガスのいずれか1種または2種以上と水蒸気を含む雰囲気中であり、600〜1000℃の範囲で熱処理することにより、本発明のフェライト系ステンレス鋼の表面に形成される。また、浸炭性を有する雰囲気には窒素、水素、アルゴン、窒素酸化物、硫黄酸化物などのその他ガスを含んでも良い。
また、優れた耐浸炭性及び耐酸化性を有するために必要であるスケールは予め浸炭性を有する雰囲気中において鋼板に形成していても良いが、最終製品のシステム運転初期の試運転等で形成しても良いし、ユーザーが実運転する中で浸炭性を有する雰囲気になった時に形成しても良い。但し、運転中において形成されたスケールの構造を確認することはできない。そのため、最終製品を構成する鋼板が優れた耐浸炭性及び耐酸化性を有するために必要であるスケールを形成し得るか評価する必要がある。
優れた耐浸炭性及び耐酸化性を有するために必要であるスケールを形成し得るか評価する方法としては、フェライト系ステンレス鋼板を浸炭性を有する雰囲気中で熱処理を行い、形成されたスケールを評価すると良い。
優れた耐浸炭性及び耐酸化性を有するために必要であるスケールを形成し得るか評価する際に使用する熱処理条件は限定されるものではないが、雰囲気は浸炭性を有し、酸化源として水蒸気が含まれていれば良い。浸炭性を有するには、雰囲気中のC活量が鋼中のC活量より大きければ良い。例えば、雰囲気中に一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスを含み、雰囲気に含まれる酸素が全て一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスと反応しても1体積%程度以上の一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスが残存する組成の雰囲気であれば良い。また、雰囲気中のC活量の目安としては、熱処理温度において0.00001以上あれば良い。例えば、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気中で800℃に加熱し100時間の熱処理を実施すれば良い。
優れた耐浸炭性及び耐酸化性を有するために必要であるスケールを形成し得るか評価する際のスケールの評価方法はグロー放電発光分析(GDS)を用いる。具体的な評価方法については、上記試験1と同様に実施すると良い。
水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気中で800℃に加熱し100時間の熱処理後のスケールを評価した場合は、鋼板の表面に、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成するフェライト系ステンレス鋼板であって、更に、上記規定の鋼成分を有し、下記(i)式、(ii)式及び(iii)式を満足することで、優れた耐浸炭性及び耐酸化性を有し、更に、長期使用を考慮した上でも保護性に優れるフェライト系ステンレス鋼板として、浸炭性を有する雰囲気となる可能性のある環境で使用できる。
Cr+5Si+6Nb+2Ti+4Al−22.5≧0 ・・・式(i)
Nb+Ti≧0.05 ・・・式(ii)
t+0.42logAl―0.54≧0 ・・・式(iii)
但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味する。
なお、800℃、100時間より明らかに高温長時間の酸化処理後のスケールを評価する場合や、長期使用後のスケールを評価する場合は、スケールの厚みは6μm以下であれば良い。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
前記表1に示す成分組成を有する供試材(本発明鋼1〜12,比較鋼13〜22)を真空溶解炉で溶製して30kgインゴットに鋳造した。得られたインゴットは厚さ4.5mmの熱延鋼板とした。熱間圧延の加熱条件は、1200℃であった。熱延板焼鈍は、1000℃とした。アルミナブラストで脱スケール処理した後、冷間圧延にて2.0mmの厚さの板とし、1100℃保持の仕上焼鈍を実施した。このようにして得られた冷延焼鈍板から、厚さ2.0mm×幅20mm×長さ25mmの試験片を採取し、全面#600研磨仕上げを施したものを、酸化試験に使用した。
(試験1)
先ず、表1の本発明例1〜12及び比較例13〜22に浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケールを調査した。浸炭性を有する雰囲気中でスケールを形成するための酸化試験には、雰囲気制御可能である管状炉を使用した。試験片を炉内に設置した後、窒素雰囲気で800℃まで昇温した。その後、雰囲気を、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素の混合雰囲気に切り替え、800℃で100時間保持した。その後、窒素雰囲気に切り替え室温まで冷却した。
上記浸炭性を有する雰囲気中で形成したスケールの厚み及びスケール中、又は、スケールと母材の界面のAl濃度は、グロー放電発光分析(GDS)により評価した。スケールの厚みはO濃度が5質量%以下となるまでの深さとした。また、O濃度がほぼ0質量%となるまでの深さの間におけるAl濃度の最大値をスケール中、又は、スケールと母材の界面のAl濃度とした。
浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケールの厚みと、スケール中、又は、スケールと母材の界面のAl濃度の評価結果を前記表2に示す。
(試験2)
次に、上記試験1で評価した表2に示されるスケールを形成することができる表1の本発明例1〜12及び比較例13〜22の耐浸炭性及び耐酸化性を評価した。本評価のための酸化試験には、試験1と同じ雰囲気制御可能である管状炉を使用した。試験片を炉内に設置した後、窒素雰囲気で850℃まで昇温した。その後、雰囲気を、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気に切り替え、850℃で200時間保持した。その後、窒素雰囲気に切り替え室温まで冷却した。この酸化試験では酸化後試験片のスケールが剥離することはほぼないが、スケールが剥離した場合は、剥離したスケールも回収し、剥離したスケールも含む酸化後試験片の重量増加の値を試験片の表面積の値で除した値を酸化増量とした。このような、浸炭性を有する雰囲気中、850℃、200時間の連続酸化試験における酸化増量を用いて、耐浸炭性及び耐酸化性を評価した。酸化増量が0.50mg/cm2以下であれば、耐酸化性は良好とし、浸炭による酸化の促進もなかったと考えられるので、耐浸炭性も良好とした。
本発明例1〜12については、上記試験2の酸化後のスケールを、上記試験1と同様にグロー放電発光分析(GDS)を用いて評価し、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を維持しているかを確認した。また、スケール厚みが、上記試験2の正常酸化の判定基準である0.50mg/cm2及以下に相当する3μm以下となっているかを確認した。
浸炭性を有する雰囲気中、850℃、200時間の連続酸化試験における酸化増量の測定結果を表2に示す。
本発明例1〜12は、成分組成、試験1の浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケールの厚み及び、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が本発明の規定の範囲内であり、更に、(i)式及び(ii)式を満足しており、試験2の浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性が良好である。
比較例13、14、15は、それぞれCr、Si、Alが適正範囲の下限を外れており、比較例13、14、は試験1のスケールの厚みが2μm超、比較例15は試験1のスケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15質量%未満であり、試験2の浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性が不十分である。
比較例16は個別の成分組成は適正範囲内であるが(ii)式が適正範囲外であってその点で成分組成が外れており、試験1のスケールの厚みが2μm超であり、試験2の浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性が不十分である。
比較例17〜22は個別の成分組成は適正範囲内であるが(i)式が適正範囲外であってその点で成分組成が外れており、試験1のスケールの厚みが2μm超、又は、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15質量%未満であり、試験2の浸炭性を有する雰囲気中における耐酸化性が不十分である。
なお、本発明例1〜12は、試験2の酸化後のスケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を維持しており、スケール厚が、試験2の正常酸化の判定基準である0.50mg/cm2以下に相当する3μm以下であった。また、本発明例1〜12については金属露出面が顕著となるようなスケール剥離はなく、耐スケール剥離性にも優れていた。
(試験3)
更に、上記試験2で耐浸炭性及び耐酸化性が良好であると評価された、表1の本発明例1〜12について、浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケールの長期使用を考慮した上での保護性を評価した。本評価には、表1の本発明鋼1〜12の0.39〜1.25mm×幅20mm×長さ25mmの試験片を用いた。試験片厚みについては、厚さ2.0mmの試験片を研削することで調整した。本評価は、浸炭性を有する雰囲気中の酸化試験と大気中の酸化試験を連続で実施する試験とした。浸炭性を有する雰囲気中の酸化試験には、試験1及び試験2と同じ雰囲気制御可能である管状炉を使用した。試験片を炉内に設置した後、窒素雰囲気で850℃まで昇温した。その後、雰囲気を、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である浸炭性を有する雰囲気に切り替え、850℃で200時間保持した。その後、窒素雰囲気に切り替え室温まで冷却した。この浸炭性を有する雰囲気中の酸化後試験片を用いて、続けて大気中の酸化試験を実施した。大気中の酸化試験には静止大気中での熱処理を行うマッフル炉を使用した。浸炭性を有する雰囲気中の酸化後試験片を炉内に設置した後、950℃まで昇温した。その後、950℃で200時間保持した後、室温まで冷却した。酸化後冷却過程においてスケールが剥離した場合は、剥離したスケールも回収し、剥離したスケールも含む酸化後試験片の重量増加の値を試験片の表面積の値で除した値を酸化増量とした。このような、浸炭性を有する雰囲気中、850℃、200時間の連続酸化試験と、大気中、950℃、200時間の連続酸化試験を連続で行う試験における酸化増量を用いて、浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケールの長期使用を考慮した上での保護性を評価した。酸化増量を1.00mg/cm2以下を良好とした。
本発明例A〜Lについては、上記試験3の酸化後のスケールを、上記試験1と同様にグロー放電発光分析(GDS)を用いて評価し、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を維持しているかを確認した。また、スケール厚みが、上記試験3の正常酸化の判定基準である1.00mg/cm2及以下に相当する6μm以下となっているかを確認した。
浸炭性を有する雰囲気中、850℃、200時間の連続酸化試験と、大気中、950℃、200時間の連続酸化試験を連続で行う試験における酸化増量の測定結果を前記表3に示す。
また、本発明例A〜Lは、(i)式、(ii)式及び(iii)式を満足しており、試験3の浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケールの長期使用を考慮した上での保護性が良好である。
比較例M〜Uは、(iii)式が適正範囲の下限を外れており、試験3の浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケールの長期使用を考慮した上での保護性が不十分である。
なお、本発明例A〜Lは、試験3の酸化後のスケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を維持しており、スケール厚が、試験3の正常酸化の判定基準である1.00mg/cm2以下に相当する6μm以下であった。また、本発明例A〜Lについては金属露出面が顕著となるようなスケール剥離はなく、耐スケール剥離性にも優れていた。
これらから明らかなように、本発明で規定する個別の成分組成を有し、(i)式及び(ii)式を満足して本発明の成分組成を具備し、浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上、かつ、(iii)式を満足する本発明例は、比較例に比べて浸炭性を有する雰囲気中、850℃、200時間の連続酸化試験における酸化増量が非常に少なく、耐浸炭性及び耐酸化性に優れており、更に、浸炭性を有する雰囲気中、850℃、200時間の連続酸化試験と、大気中、950℃、200時間の連続酸化試験を連続で行う試験における酸化増量が非常に少なく、浸炭性を有する雰囲気中において形成されるスケールの長期使用を考慮した上での保護性に優れていることがわかる。
以上から、本願発明が極めて優れた特性を有することは明らかである。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C:0.02%以下、
    N:0.02%以下、
    Si:0.05%以上、3.0%以下、
    Mn:0.05%以上、2.0%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.01%以下、
    Cr:12.0%以上、25.0%以下、
    Ni:0.01%以上、2.0%以下、
    Al:0.25%超、6.0%以下
    V:0.01%以上、0.20%以下、
    B:0.0002%以上、0.0050%以下、
    Nb:0.60%未満、
    Ti:0.40%以下、
    を含有し、質量%にて更に、
    Cu:0.01%以上、2.0%以下、
    Mo:0.01%以上、2.0%以下、
    の1種または2種を含有し、
    Cr:14.5%未満、
    Mo:0.50%未満、
    の1種または2種を満足し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(i)式、(ii)式及び(iii)式を満たす組成及び板厚を有するステンレス鋼板の表面に、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを有することを特徴とする耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
    Cr+5Si+6Nb+2Ti+4Al−22.5≧0 ・・・式(i)
    Nb+Ti≧0.05 ・・・式(ii)
    t+0.42logAl―0.54≧0 ・・・式(iii)
    但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味し、tは板厚(mm)を意味する。
  2. 質量%にて、更に
    Ca:0.0002%以上、0.0030%以下、
    Zr:0.01%以上、0.30%以下、
    Y:0.001%以上、0.20%以下、
    Hf:0.001%以上、1.0%以下、
    REM:0.001%以上、0.20%以下、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 質量%にて、更に
    W:0.01%以上、5.0%以下、
    Sn:0.002%以上、1.0%以下、
    Mg:0.0002%以上、0.0030%以下、
    Co:0.01%以上、0.30%以下、
    Sb:0.005%以上、0.50%以下、
    Bi:0.001%以上、1.0%以下、
    Ta:0.001%以上、1.0%以下、
    Ga:0.0002%以上、0.30%以下、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
  4. 質量%で、
    C:0.02%以下、
    N:0.02%以下、
    Si:0.05%以上、3.0%以下、
    Mn:0.05%以上、2.0%以下、
    P:0.04%以下、
    S:0.01%以下、
    Cr:12.0%以上、25.0%以下、
    Ni:0.01%以上、2.0%以下、
    Al:0.25%超、6.0%以下
    V:0.01%以上、0.20%以下、
    B:0.0002%以上、0.0050%以下、
    Nb:0.60%未満、
    Ti:0.40%以下、
    を含有し、質量%にて更に、
    Cu:0.01%以上、2.0%以下、
    Mo:0.01%以上、2.0%以下、
    の1種または2種を含有し、
    Cr:14.5%未満、
    Mo:0.50%未満、
    の1種または2種を満足し、
    残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(i)式、(ii)式及び(iii)式を満たす組成及び板厚を有し、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で800℃に加熱し100時間継続した後で室温まで冷却したとき、ステンレス鋼板の表面に、スケールの厚みが2μm以下、スケール中、又は、スケールと母材の界面におけるAl濃度が15%以上を満足するスケールを形成することを特徴とする耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
    Cr+5Si+6Nb+2Ti+4Al−22.5≧0 ・・・式(i)
    Nb+Ti≧0.05 ・・・式(ii)
    t+0.42logAl―0.54≧0 ・・・式(iii)
    但し、式中の元素記号は、当該元素の含有量(質量%)を意味し、tは板厚(mm)を意味する。
  5. 質量%にて、更に
    Ca:0.0002%以上、0.0030%以下、
    Zr:0.01%以上、0.30%以下、
    Y:0.001%以上、0.20%以下、
    Hf:0.001%以上、1.0%以下、
    REM:0.001%以上、0.20%以下、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
  6. 質量%にて、更に
    W:0.01%以上、5.0%以下、
    Sn:0.002%以上、1.0%以下、
    Mg:0.0002%以上、0.0030%以下、
    Co:0.01%以上、0.30%以下、
    Sb:0.005%以上、0.50%以下、
    Bi:0.001%以上、1.0%以下、
    Ta:0.001%以上、1.0%以下、
    Ga:0.0002%以上、0.30%以下、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
  7. 水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で850℃に加熱し200時間継続した後で室温まで冷却したときの酸化増量が0.50mg/cm2以下であり、かつ、水蒸気が10体積%、二酸化炭素が10体積%、一酸化炭素が10体積%、残りが窒素である雰囲気中で850℃に加熱し200時間継続した後で室温まで冷却したスケール付きのフェライト系ステンレス鋼板を大気950℃に加熱し200時間継続した後で室温まで冷却したときの酸化増量が1.00mg/cm2以下であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
  8. 雰囲気中に含まれる一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスが、雰囲気中に含まれる酸素と全て反応しても、1体積%以上の一酸化炭素もしくは炭化水素系ガスが残存する組成の浸炭性雰囲気または、雰囲気中の酸素が1体積%以下であり、かつ、酸素の10倍以上の体積の二酸化炭素を含む浸炭性雰囲気に曝される可能性のある自動車排気系部材または燃料電池高温部材として用いることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の耐浸炭性及び耐酸化性に優れた浸炭性を有する雰囲気となる自動車排気系又は燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼板。
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