JP2016117921A - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Siを0.8〜3.5質量%含有する素地鋼板を焼鈍したときに、焼鈍後の酸洗時間を短縮でき、生産性を向上できる鋼板、およびその製造方法を提供する。【解決手段】Siを0.8〜3.5質量%含有する素地鋼板を焼鈍して得られる鋼板であり、前記鋼板表面から深さ0.2μm以上の領域であって、前記素地鋼板の炭素濃度に対して90%以下の炭素濃度になっている領域を脱炭層としたとき、この脱炭層の厚みが0.5μm以下である鋼板。【選択図】図2

Description

本発明は、Siを0.8〜3.5質量%を含有する素地鋼板を焼鈍して得られる鋼板、およびその製造方法に関する。
近年、自動車を軽量化するために、構造部材には引張強度が590MPa以上の高強度鋼板の適用が拡大しており、この鋼板は電着塗装が施された後、所定形状に成形される。鋼板の引張強度が高くなると成形性が悪くなるため、強度と伸びをバランス良く向上させて成形性を高める元素として、Siが添加される。しかしSiは易酸化性元素であるため、Siを積極的に添加すると熱間圧延後や冷間圧延後に機械的特性を得るために焼鈍したときに、鋼板表面にSi酸化膜が形成されやすくなる。鋼板表面にSi酸化膜が形成されると、電着塗装の塗膜密着性を向上させるために事前に形成される化成処理皮膜が鋼板表面に均一に形成されにくくなり、塗膜密着性が劣化する。そこで焼鈍後は酸洗などを行い、Si酸化膜を除去する必要がある。Si酸化膜が厚くなるほど酸洗時間が長くなるため、生産性が低下する。
Siの含有量が多い場合でも優れた化成処理性を有する高強度鋼板およびその製造方法が、特許文献1に開示されている。この文献に開示されている製造方法では、Siを0.01〜0.50質量%含有する鋼板を連続焼鈍する際に、焼鈍炉内での鋼板最高到達温度を600℃以上750℃以下とし、雰囲気中の露点を−10℃以上としている。このように連続焼鈍の条件を制御することによって、鋼板表面100μm以内の内部にSiなどの易酸化性元素の酸化物を適量存在させ、焼鈍後の化成処理性を劣化させる鋼中Si等の鋼板表層における選択的表面酸化を抑制する。
特開2014−40652号公報
上記特許文献1では、Siを0.01〜0.50質量%含有する鋼板を対象としているが、成形性の更なる向上のために、Siを一層添加することが望まれる。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、上記特許文献1に記載の鋼板に含まれるSi量よりも多く、Siを0.8〜3.5質量%含有する素地鋼板を焼鈍したときに、焼鈍後の酸洗時間を短縮でき、生産性を向上できる鋼板、およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る鋼板は、Siを0.8〜3.5質量%含有する素地鋼板を焼鈍して得られる鋼板であり、前記鋼板表面から深さ0.2μm以上の領域であって、前記素地鋼板の炭素濃度に対して90%以下の炭素濃度になっている領域を脱炭層としたとき、この脱炭層の厚みが0.5μm以下である点に要旨を有する。
前記素地鋼板は、更に、他の元素として、質量%で、C:0.08〜0.25%、およびMn:1〜3.5%を含有し、残部が鉄および不可避不純物であればよい。
前記素地鋼板は、更に、他の元素として、質量%で、Al:0%超、0.2%以下、Cr:0%超、2%以下、Ni:0%超、0.5%以下、Cu:0%超、0.5%以下、Ti:0%超、0.3%以下、Mo:0%超、1%以下、およびB:0%超、0.02%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。
本発明に係る上記鋼板は、例えば、上記素地鋼板を、炭化水素ガスおよび一酸化炭素ガスよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する還元性雰囲気で焼鈍することにより製造できる。
本発明によれば、焼鈍したときに鋼板の表層部に脱炭層が形成されるのを防止しているため、焼鈍後の鋼板表面に形成されるSi酸化膜を薄くできる。その結果、焼鈍後の酸洗時間を短縮でき、鋼板の生産性を向上できる。
図1は、実施例の表2に示したNo.1について、鋼板表面から深さ方向に測定したC濃度プロファイルを示すグラフである。 図2は、実施例の表2に示したNo.2について、鋼板表面から深さ方向に測定したC濃度のプロファイルを示すグラフである。 図3は、実施例の表2に示したNo.1について、鋼板表面から深さ方向に測定したSi濃度とO濃度のプロファイルを示すグラフである。 図4は、実施例の表2に示したNo.2について、鋼板表面から深さ方向に測定したSi濃度とO濃度のプロファイルを示すグラフである。
本発明者らは、焼鈍後の酸洗時間を短縮し、鋼板の生産性を向上するために、鋭意検討を重ねてきた。その結果、焼鈍時に鋼板の表面に形成されるSi酸化膜を薄くすれば、酸洗時間を短くすることができるとの知見に基づき、Si酸化膜を薄くするには、焼鈍時に鋼板の表層部が脱炭されるのを防止すれば良いことを見出し、本発明を完成した。
即ち、800℃以上の高温に加熱されても鉄の酸化が起こらないように、通常、水素を数体積%含有する還元性雰囲気で焼鈍するが、雰囲気中には、少なからず酸素ガスが混入し、この酸素ガスにより鋼板中の炭素が酸化されることがある。炭素が酸化すると、一酸化炭素ガスまたは二酸化炭素ガスとして逃散し、鋼板の表層部には炭素濃度が素地鋼板の炭素濃度よりも低下した脱炭層が形成される。脱炭層では、炭素濃度は低下しているため、金属組織のうちオーステナイトの一部はフェライトに変態する。
一方、雰囲気中に含まれる酸素ガスによって鋼板表面に存在するSiも酸化され、Si酸化膜を形成する。Si酸化膜が形成されるには、鋼板内部のSiが鋼板表面に拡散している必要がある。Siの拡散速度は、オーステナイト中よりもフェライト中の方が大きいと考えられるため、上述したように、鋼板の表層部に脱炭層が形成され、金属組織に占めるフェライト分率が高くなると、鋼板表面へのSiの拡散が促進される。その結果、Si酸化膜が形成されやすくなる。Si酸化膜が厚くなると酸洗に時間がかかり、鋼板の生産性が低下する。
そこで本発明者らは、焼鈍中に鋼板の表層部に脱炭層が形成されるのを防止すれば、Si酸化膜の形成が抑制され、焼鈍後の酸洗時間を短縮でき、鋼板の生産性を向上できると考えた。そして、炭化水素ガスまたは一酸化炭素ガスよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する還元性雰囲気で焼鈍すれば、焼鈍中の脱炭反応を抑制できることを見出した。なお、工具鋼のように、表面を硬化する目的で行われる通常のガス浸炭は、所定の温度で、例えば、数時間加熱して行われるが、本発明では、表面の硬化は目的としていないため、焼鈍雰囲気を上述したように調整する以外は、加熱温度、加熱時間など、通常の焼鈍条件を採用すればよく、この点でガス浸炭とは相違している。
以下、本発明について詳述する。
本発明に係る鋼板は、Siを0.8〜3.5質量%含有する素地鋼板を焼鈍して得られるものであり、素地鋼板の成分組成については後で詳述する。
焼鈍して得られる本発明の鋼板は、表面から深さ0.2μm以上の領域であって、上記素地鋼板の炭素濃度に対して90%以下の炭素濃度になっている領域を脱炭層としたとき、この脱炭層の厚みが0.5μm以下であるところに特徴がある。上記脱炭層の厚みが0.5μmを超えると、鋼板の表層部におけるフェライト分率が増大し、Siが拡散し易くなり、Si酸化膜が形成されやすくなる。その結果、焼鈍後の酸洗時間が長くなる。従って、本発明では、上記脱炭層の厚みは0.5μm以下とする。上記脱炭層の厚みは、好ましくは0.4μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下、特に好ましくは0.2μm以下である。上記脱炭層の厚みは、できるだけ薄い方がよい。
上記脱炭層の厚みは、鋼板表面から深さ0.2μm以上の領域におけるC濃度プロファイルを測定することによって求めることができる。C濃度プロファイルの測定領域を鋼板表面から深さ0.2μm以上としたのは、鋼板表面から深さ0.2μm未満の領域では、コンタミネーションによるCのピークが認められるからである。
上記C濃度プロファイルは、例えば、グロー放電発光分析装置(Glow discharge optical emission spectrometry;GD−OES)を用いて測定すればよい。例えば、上記GD−OESを用い、鋼板表面からの深さが0.2μm位置から板厚方向に向かって、例えば、0.5〜10nm間隔でC濃度を測定し、測定した結果に基づいて、C量が一定になっている領域を素地鋼板と判断し、素地鋼板の平均炭素濃度を算出する。算出した素地鋼板の平均炭素濃度に対して90%以下の炭素濃度になっている領域を脱炭層と判断し、この脱炭層の厚みを測定すればよい。
上記素地鋼板に含まれるSi量の平均値に対してSi量が2倍以上に濃化している領域であって、素地鋼板に含まれるO量の平均値よりもOが濃化している領域をSi酸化膜としたとき、本発明の鋼板は、Si酸化膜の厚みが、例えば、0.017μm以下であることが好ましい。Si酸化膜の厚みを0.017μm以下とすることにより酸洗時間を一段と短縮できる。
Si酸化膜の厚みを0.017μm以下とするには、上述したように、上記脱炭層の厚みを0.5μm以下に制御すればよい。
上記Si量は、上記GD−OESを用いて測定したSi濃度プロファイルに基づいて求めればよく、上記Si酸化膜の厚みは、Si濃度とO濃度プロファイルの測定結果に基づいて求めればよい。
次に、本発明で用いる素地鋼板の成分組成について説明する。
上記素地鋼板は、Siを0.8〜3.5質量%含有する。Siは、鋼板の強度と伸びをバランス良く向上し、鋼板のプレス成形性を高める元素である。また、Siは、置換型固溶体強化元素であり、鋼板の硬質化に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるために、Siは0.8%以上含有させる必要がある。Siは、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.2%以上である。しかし、Siを過剰に含有すると靭性が劣化するため、上限は3.5%とする。Siは、好ましくは2.5%以下、より好ましくは1.8%以下である。
上記素地鋼板の他の成分組成は特に限定されず、自動車用の鋼板として用いられる公知の鋼板に含まれる合金元素を含有していればよい。
強度を確保し、適正な機械的特性を付与するには、例えば、質量%で、C:0.08〜0.25%、Mn:1〜3.5%含有していることが好ましい。
Cは、鋼板の強度を確保するために有用な元素である。Cは0.08%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.1%以上である。しかしCが過剰になると強度が高くなりすぎて遅れ破壊性が悪化するため、0.25%以下とすることが好ましい。Cは、より好ましくは0.21%以下である。
MnもCと同様、鋼板の強度を確保するために有用な元素である。Mnは1%以上含有させることが好ましく、より好ましくは1.5%以上、更に好ましくは2.0%以上である。しかしMnを多量に含有させると偏析が顕著になり、加工性が低下し、更には溶接性も劣化し易くなる。従ってMnは3.5%以下とすることが好ましい。Mnは、より好ましくは3.0%以下、更に好ましくは2.5%以下である。
上記素地鋼板の残部は、鉄および不可避不純物であればよい。不可避不純物のなかでも、Sは0%超、0.01%以下、Pは0%超、0.1%以下であることが好ましい。
Sを過剰に含有すると硫化物系介在物が増大して鋼板の靱性が劣化するため、0.01%以下とすることが好ましい。Sは、より好ましくは0.008%以下、更に好ましくは0.005%以下である。なお、Sを0%とすることは工業的に困難である。
Pを過剰に含有すると、溶接性および化成処理性が劣化するため、0.1%以下とすることが好ましい。Pは、より好ましくは0.05%以下、更に好ましくは0.01%以下である。なお、Pを0%とすることは、工業的に困難である。
上記素地鋼板は、更に、他の元素として、Al:0%超、0.2%以下、Cr:0%超、2%以下、Ni:0%超、0.5%以下、Cu:0%超、0.5%以下、Ti:0%超、0.3%以下、Mo:0%超、1%以下、およびB:0%超、0.02%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
Alは、脱酸剤として作用する元素である。しかし過剰に含有すると延性の低下や鋼の脆化を招くため、0.2%以下とすることが好ましい。Al量は、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0.05%以下である。下限は特に限定されず、0%超であればよい。
Crは、鋼板の強度を向上させる元素である。しかし過剰に含有してもその効果は飽和し、また加工性が劣化するため、2%以下とすることが好ましい。Cr量は、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1%以下である。下限は特に限定されず、0%超であればよい。
Niは、鋼板の耐食性を向上させる元素である。しかしNiは高価な元素であり、多量に添加するとコスト高となるため、0.5%以下とすることが好ましい。Ni量は、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.1%以下である。下限は特に限定されず、0%超であればよい。
Cuは、Niと同様、鋼板の耐食性を向上させる元素である。しかし過剰に含有すると、熱間圧延時に疵や割れが発生することがあるため、0.5%以下とすることが好ましい。Cu量は、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.15%以下である。下限は特に限定されず、0%超であればよい。
Tiは、結晶粒を微細化し、靭性を損なうことなく鋼板の強度を向上させるのに有効な元素である。しかし過剰に含有させてもその効果は飽和し、コスト高となるため、0.3%以下とすることが好ましい。Ti量は、より好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.1%以下である。下限は特に限定されず、0%超であればよい。
Moは、鋼板の焼入性を高め、強度を向上させる元素である。しかし過剰に含有させてもその効果は飽和し、コスト高となるため、1%以下とすることが好ましい。Mo量は、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.3%以下である。下限は特に限定されず、0%超であればよい。
Bは、Moと同様、鋼板の焼入性を高め、強度を向上させる元素である。また、Bは、粒界を強化して耐遅れ破壊性を向上させるのにも寄与する元素である。しかし過剰に含有すると熱間加工性が劣化するため、0.02%以下とすることが好ましい。B量は、より好ましくは0.01%以下、更に好ましくは0.005%以下である。下限は特に限定されず、0%超であればよい。
次に、本発明に係る鋼板を製造する方法について説明する。
本発明の鋼板は、上記素地鋼板を炭化水素ガスおよび一酸化炭素ガスよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する還元性雰囲気で焼鈍することによって製造できる。焼鈍雰囲気に、炭化水素ガスおよび一酸化炭素ガスよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることにより、鋼板の表層部に脱炭層が形成されるのを抑制できる。
上記炭化水素ガスとしては、例えば、炭素原子数が5以下の低級炭化水素ガスを用いることができる。低級炭化水素ガスとしては、メタン(CH4)、エタン(C26)、プロパン(C38)、ブタン(C410)などのパラフィン系炭化水素ガス、エチレン(C24)、プロピレン(C36)、ブチレン(C48)などのオレフィン系炭化水素ガスを用いることができる。
焼鈍時の雰囲気に占める炭化水素ガスは、例えば、1〜20体積%であることが好ましい。炭化水素ガスの割合を1体積%以上とすることによって、脱炭抑制効果が充分に発揮される。炭化水素ガスの割合は、より好ましくは3体積%以上、更に好ましくは5体積%以上である。しかし、炭化水素ガスの割合が20体積%を超えると、水素による鋼板の還元作用が弱まり、清浄な表面が得られにくくなる。従って炭化水素ガスの割合は、20体積%以下が好ましく、より好ましくは18体積%以下、更に好ましくは15体積%以下である。
焼鈍時の雰囲気に占める一酸化炭素ガスは、例えば、5〜40体積%であることが好ましい。脱炭を安定して抑制し、また過剰な浸炭を抑制するには、より好ましくは10〜20体積%である。
焼鈍時の雰囲気は、還元性にするために、例えば、水素ガスを含有している。
焼鈍時の雰囲気に占める水素ガスは、例えば、1〜20体積%であることが好ましい。水素ガスの割合を1体積%以上とすることによって、鋼板表面におけるCやSiの酸化を防止できる。水素ガスの割合は、より好ましくは2体積%以上であり、更に好ましくは2.5体積%以上である。しかし、水素を過剰に含有させてもその効果は飽和するため、水素ガスの割合は、20体積%以下であることが好ましく、より好ましくは15体積%以下、更に好ましくは10体積%以下である。
焼鈍時の雰囲気の残部は、不活性ガスであればよい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスを用いることができる。
焼鈍時の加熱温度は特に限定されず、公知の条件を採用でき、例えば、750〜950℃とすればよい。加熱温度は、より好ましくは780℃以上、更に好ましくは800℃以上であり、より好ましくは940℃以下、更に好ましくは930℃以下である。
上記素地鋼板としては、公知の条件で製造された熱延鋼板または冷延鋼板を用いればよい。即ち、上記成分組成を満足する鋼材を熱間圧延した後、表面に形成されたスケールを除去するために酸洗や機械的研磨して得られた熱延鋼板や、この熱延鋼板を冷間圧延して得られた冷延鋼板を素地鋼板として用いることができる。
上記素地鋼板を焼鈍した後は、酸洗してから化成処理および塗装を施し、例えば、自動車用の鋼板、特に自動車の構造用の鋼板として用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
素地鋼板を種々の条件で焼鈍した後、酸洗および化成処理を行った。
素地鋼板は次の手順で製造した。即ち、下記表1に示した成分組成を有し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼を溶製し、スラブとした。表1において「−」は検出限界以下を意味する。得られたスラブを熱間圧延して板厚が3.2mmの熱延鋼板を製造した。得られた熱延鋼板を冷間圧延し、板厚が1.4mmの冷延鋼板を製造し、これを素地鋼板として用いた。
素地鋼板を加熱炉に装入し、下記表2、表3に示す板温(℃)に加熱して焼鈍を行った。加熱炉としては、赤外線管状炉を用いた。加熱炉内の雰囲気は、H2ガスを3体積%含有し、残部がN2ガスである還元性の混合ガス雰囲気(以下、3%H2−N2と表記することがある。)とするか、この混合ガスに、メタンガス(CH4ガス)を1体積%または15体積%、あるいはブタンガス(C410ガス)を1体積%または15体積%含有させた雰囲気とした。加熱炉内の雰囲気ガス組成を下記表2、表3に示す。
加熱後は、炉を開放し、下記表2、表3に示した成分組成のガスを流しながら冷却した。
焼鈍して得られた鋼板の表層部を、GD−OESを用いて鋼板の最表面から深さ方向に向かって0.6nm間隔で元素濃度のプロファイルを測定した。GD−OESは、株式会社リガク社製のグロー放電発光分析装置「GDA750」を用いた。濃度プロファイルは、C、Si、およびOについて測定した。
C濃度プロファイルを測定した結果の一例を図1、図2に示す。図1は、下記表2に示したNo.1についてC濃度プロファイルを測定した結果を示している。図2は、下記表2に示したNo.2についてC濃度プロファイルを測定した結果を示している。C濃度プロファイルを測定した結果に基づいて、素地鋼板の炭素濃度の平均値を求め、この平均値を図1、図2に直線1として示した。また、上記平均値に対して90%の炭素濃度となる値を算出し、この値を図1、図2に直線2として示した。
鋼板表面から深さ0.2μm以上の領域であって、素地鋼板の炭素濃度に対して90%以下の炭素濃度になっている領域を脱炭層としたとき、この脱炭層の厚みを測定した。図1、図2において、矢印3で示した範囲が、脱炭層の厚みを意味している。測定結果を下記表2、表3に示す。なお、冷間圧延後、焼鈍前の素地鋼板について、同様にC濃度プロファイルを測定した結果、焼鈍前には脱炭層が形成されていないことを確認した。
次に、Si濃度とO濃度のプロファイルを測定した結果の一例を図3、図4に示す。図3は、下記表2に示したNo.1についてSi濃度とO濃度のプロファイルを測定した結果を示している。図4は、下記表2に示したNo.2についてSi濃度とO濃度のプロファイルを測定した結果を示している。
Si濃度のプロファイルを測定した結果に基づいて、素地鋼板に含まれるSi量の平均値を求め、この平均値を図3、図4に直線4として示した。また、上記平均値に対してSi量が2倍となる値を算出し、この値を図3、図4に直線5として示した。また、OがSiと同様に表面に濃化していることを確認することによって、鋼板表層部のSiは酸化膜として存在していると判断した。
Si量が2倍以上に濃化している領域をSi酸化膜とし、このSi酸化膜の厚みを測定した。図3、図4において、矢印6で示した範囲が、Si酸化膜の厚みを意味している。測定結果を下記表2、表3に示す。
次に、焼鈍して得られた鋼板を酸洗し、乾燥してから化成処理を行った。上記酸洗は、80℃に加熱した15%塩酸に所定時間浸漬した後、イオン交換水で洗浄して行った。
上記化成処理は、日本パーカライジング株式会社製の塗装下地用化成剤「パルボンドL3065(PB−L3065)」を用い、35℃で120秒間浸漬した。
化成処理後における鋼板の表面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)で観察し、観察視野面積に対して、化成処理した皮膜の結晶が付着していない面積の割合を測定した。観察視野は100μm×100μmとし、観察視野数は3視野とし、3視野における上記面積の割合の平均値を求めた。
鋼板の表面を化成処理皮膜が完全に覆い、化成処理皮膜が付着していない面積率が0%の場合を合格と評価し、鋼板の表面の一部が化成処理皮膜で覆われておらず、化成処理皮膜が付着していない面積率が0%を超えた場合を不合格と評価した。
化成処理皮膜が付着していない面積率が0%となった鋼板を集め、各鋼板を酸洗したときの時間を比較し、酸洗時間が最も短いものを必要酸洗時間とし、この結果を下記表2、表3に示す。
また、下記表2、表3には、必要酸洗時間の短縮効果を評価した結果を示した。No.2〜5における必要酸洗時間の短縮効果は、鋼種および焼鈍時の板温が同じであるNo.1における必要酸洗時間との差として求めた。同様に、No.7〜10についてはNo.6との差、No.12〜15についてはNo.11との差、No.17〜20についてはNo.16との差、No.22〜25についてはNo.21との差、No.27〜30についてはNo.26との差、No.32〜35についてはNo.31との差、No.37〜40についてはNo.36との差、No.42〜45についてはNo.41との差、No.47〜50についてはNo.46との差、No.52、53についてはNo.51との差、No.55、56についてはNo.54との差、をそれぞれ求めた。
Figure 2016117921
Figure 2016117921
Figure 2016117921
表2、表3から次のように考察できる。No.2〜5、7〜10、12〜15、17〜20、22〜25、27〜30、32〜35、37〜40、42〜45、47〜50、52、53、55、56は、いずれも本発明で規定する要件を満足する例であり、Siを0.8〜3.5質量%含有する素地鋼板を、炭化水素ガスを含有する還元性雰囲気で焼鈍しているため、鋼板表面から深さ0.2μm以上の領域に形成される脱炭層の厚みを0.5μm以下に制御できている。その結果、No.2〜5はNo.1よりも必要酸洗時間が短縮できていることが分かる。同様に、No.7〜10はNo.6よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.12〜15はNo.11よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.17〜20はNo.16よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.22〜25はNo.21よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.27〜30はNo.26よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.32〜35はNo.31よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.37〜40はNo.36よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.42〜45はNo.41よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.47〜50はNo.46よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.52、53はNo.51よりも必要酸洗時間が短縮できている。No.55、56はNo.54よりも必要酸洗時間が短縮できている。

Claims (4)

  1. Siを0.8〜3.5質量%含有する素地鋼板を焼鈍して得られる鋼板であり、
    前記鋼板表面から深さ0.2μm以上の領域であって、前記素地鋼板の炭素濃度に対して90%以下の炭素濃度になっている領域を脱炭層としたとき、この脱炭層の厚みが0.5μm以下であることを特徴とする鋼板。
  2. 前記素地鋼板は、更に、他の元素として、
    質量%で、
    C :0.08〜0.25%、および
    Mn:1〜3.5%を含有し、
    残部が鉄および不可避不純物からなる請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記素地鋼板は、更に、他の元素として、
    質量%で、
    Al:0%超、0.2%以下、
    Cr:0%超、2%以下、
    Ni:0%超、0.5%以下、
    Cu:0%超、0.5%以下、
    Ti:0%超、0.3%以下、
    Mo:0%超、1%以下、および
    B :0%超、0.02%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼板の製造方法であって、
    前記素地鋼板を、炭化水素ガスおよび一酸化炭素ガスよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する還元性雰囲気で焼鈍することを特徴とする鋼板の製造方法。
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