JP6222040B2 - 化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車の骨格部材や補強部材等に供して好適な、化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保全(大気汚染の防止、温暖化の防止等)の観点から、様々な技術が検討されている。たとえば自動車では、燃費の改善が求められており、その一環として車体の軽量化が重要な課題となっている。一方で、衝突したときに乗員を保護するという観点から、車体の強度を向上させる必要がある。
そこで、自動車の燃費改善のための軽量化と安全性向上のための高強度化を両立させるために、引張強さ(TS)780MPa以上の高強度冷延鋼板が車体の骨格部材や補強部材等に使用されるようになってきている。このような高強度冷延鋼板を使用すれば、高強度であるが故に車体の変形や破壊を抑制して安全性を向上でき、かつ車体を構成する部材の厚みを減少させて軽量化を達成することができる。
一方で、自動車の車体の骨格部材や補強部材はプレス加工によって成形されるため、その素材である冷延鋼板には加工性に優れることが要求される。一般に、冷延鋼板の高強度化には、合金元素の添加(固溶強化)、結晶粒の微細化およびマルテンサイト相の生成(変態強化)等が有効である。しかしながら、通常、強度が増加するにつれて加工性は劣化する。
上記した合金元素の中でもSiは、加工性の劣化を抑制しつつ強度を高める作用を有する元素である。このため、Si含有量を増加させることにより、冷延鋼板の高強度化と加工性改善の両立が期待できる。
しかしながら、Siは容易に酸化される元素であることから、Si含有量が多くなり過ぎると、熱間圧延や、通常の冷延鋼板の製造工程で実施される焼鈍においては、還元雰囲気とはいえ、Siは冷延鋼板の表層近傍に濃化して酸化することになる。その結果、Siを主体とする酸化物が冷延鋼板を被覆することになるので、焼鈍の後で施される化成処理において、化成結晶の生成が阻害され、化成処理性が劣化するという問題があった。
この化成処理性は、強度と加工性を向上した冷延鋼板(以下、高加工性高強度冷延鋼板という。)を自動車の車体の骨格部材や補強部材として使用するために要求される重要な特性である。そのため、Si含有量を増加させた高加工性高強度冷延鋼板の化成処理性を改善する技術が種々検討されている。
たとえば特許文献1には、高加工性高強度冷延鋼板の表面に生成する酸化物のSi/Mn比を1以下に制御することにより、化成処理性に悪影響を及ぼすSi酸化物の比率を低下させ、これによって、化成処理性を改善する技術が開示されている。
また、特許文献2〜4には、高加工性高強度冷延鋼板の表面に生成する酸化物のSi/Mn比を制御することに加え、酸化物の性状(すなわち寸法、分散密度および被覆率)を制御することによって、化成処理性を改善する技術が開示されている。
これらの技術はいずれも、焼鈍条件を規定することによって、高加工性高強度冷延鋼板の表面に生成する酸化物の組成や性状を制御し、化成処理性を改善しようとするものである。
さらに、高加工性高強度冷延鋼板の表面に生成する酸化物を除去もしくは破壊する技術も検討されている。
特許文献5には、連続焼鈍後、塩酸や硝酸、弗酸からなる混酸水溶液で鋼板表面を1μm以上除去することによって、化成処理性を改善する技術が開示されている。
特開平4−276060号公報 特開2005−187863号公報 特開2005−290440号公報 特開2006−283130号公報 特開2009−221586号公報
しかしながら、特許文献1〜4の技術では、表面に生成する酸化物のSi/Mn比を適正な範囲に制御するために、必然的に高加工性高強度冷延鋼板のSi含有量とMn含有量が制約を受ける。そのため、高加工性高強度冷延鋼板の加工性や強度が十分に向上しない。さらに、酸化物の組成や性状は焼鈍条件(たとえば露点,水素濃度等)の影響を受け易いので、化成処理性も十分に向上しない。
また、特許文献5の技術では、引張強さ:780MPa以上、および強度−延性バランス:TS×El≧18000MPa・%以上を両立する特性が得られるものの、時として、鋼板の板厚方向の機械特性、特に硬さにばらつきが生じることがあり、これにより、所望の機械特性が安定して得られないという問題があった。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、高強度、高加工性は言うまでもなく、板厚方向の機械特性、特に硬さが均一であり、かつ化成処理性にも優れた高加工性高強度冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
なお、本発明において、「化成処理性に優れた」とは、市販の化成処理薬剤を用いて、浴温:43℃、処理時間:120秒の条件で鋼板の表面に化成処理を行った後、その鋼板表面を走査型電子顕微鏡にて500倍で5視野観察し、面積率95%以上の均一な化成結晶が5視野全てにおいて生成していることをいう。
また、「高加工性高強度」とは、引張強さTSが780MPa以上、TSと伸び(EL)のバランスであるTS×ELが18000MPa・%以上となることをいう。
発明者らは、C、SiおよびMnの含有量を種々変化させるともに、種々の合金元素を含有させた鋼を用いて、上記の問題を解決すべく、鋭意検討を重ねた。その結果、Si含有量を適正範囲に制御した上で、適正量のSbを含有させることにより、生産性や歩留りの低下を招くことなく、鋼板の高強度化と加工性の改善を両立でき、さらには化成処理性も向上できるとの知見を得た。さらに、冷間圧延に先立ち、熱延板を適正な条件で焼鈍することで、鋼板の板厚方向の組織が改質され、これによって、硬さを含む板厚方向の機械特性のばらつきが大幅に軽減されるとの知見を得た。
ここで、適正量のSbを含有させることによって、化成処理性を向上できる理由については必ずしも明らかではないが、発明者らは次のように考えている。
すなわち、Siの酸化は、鋼板表面へHOあるいはOガスが化学吸着し、この吸着ガス中のO(酸素)原子とSi原子が反応することによって、進行する。Sbは、各種ガスの化学吸着を抑制する性質を有しており、また鋼中では表面に偏析し易い元素である。従って、Sbのこのような特性によって、鋼板表面におけるO(酸素)原子とSi原子との反応が阻害され、結果として、Siの酸化が抑制されるためと考えている。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
[1]成分組成として、質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0.8〜3.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.10%以下、
S:0.01%以下、
Al:0.01〜0.1%、
N:0.008%以下および
Sb:0.02〜0.10%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、引張強さTSが780MPa以上、TSと伸びEL(%)の積TS×ELが18000MPa・%以上で、板厚方向の硬さばらつきΔHvが20以下であることを特徴とする化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板。
[2]さらに、成分組成として、質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.2%およびB:0.0001〜0.005%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板。
[3]さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%およびV:0.005〜0.05%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の成分組成からなるスラブを加熱後、仕上げ圧延温度800〜1000℃で熱間圧延し、500℃以上Ac1点以下の温度域で1〜10時間保持する焼鈍処理を施した後、圧下率20%以上で冷間圧延を施し、次いで、露点:−35℃以下の雰囲気中にて、750〜900℃の温度域で60秒以上保持する焼鈍処理をさらに施した後、30℃/秒以上の平均冷却速度で300℃以下まで冷却後、焼戻しを行うことを特徴とする化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板の製造方法。
本発明によれば、生産性や歩留りを低下させることなく、優れた化成処理性を有し、さらには板厚方向の硬さばらつきが小さな高加工性高強度冷延鋼板を得ることができる。本発明により得られる高加工性高強度冷延鋼板は、自動車の車体の骨格部材や補強部材として使用するのに好適であり、自動車の軽量化と衝突安全性向上とを両立して、自動車車体の高性能化に大きく貢献する。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、各元素の含有量の単位は、特に断りがない限り質量%を意味するものとする。
C:0.05〜0.30%
Cは、鋼板の強度を高める作用を有する重要な元素である。所望する引張強さ(780MPa以上)を得るためには、C含有量を0.05%以上とする必要がある。好ましくは0.10%超である。一方、C含有量が0.30%を超えると、溶接性が著しく劣化する。したがって、C含有量は0.30%以下とする。なお、特に良好な溶接性が求められる場合、C含有量は0.20%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.15%以下である。
Si:0.8〜3.0%
Siは、固溶強化によって強度の向上に寄与する重要な元素であり、加工性の劣化を抑制しつつ、強度を高める作用を有する。所望する引張強さや加工性を得るためには、Si含有量を0.8%以上とする必要がある。一方、Si含有量が3.0%を超えると、強度を向上する効果が飽和するだけでなく、加工性も劣化する。したがって、Si含有量は0.8〜3.0%の範囲とする。好ましくは1.0〜2.0%の範囲である。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは、固溶強化によって強度の向上に寄与するとともに、オーステナイト相の焼入れ性を高める元素であり、強度の安定化に有効に寄与する。所望する引張強度を安定して得るためには、Mn含有量を1.0%以上とする必要がある。一方、Mn含有量が3.0%を超えると、加工性が劣化する。したがって、Mn含有量は1.0〜3.0%の範囲とする。好ましくは1.5〜2.5%の範囲である。
P:0.10%以下
Pは、強度を向上する作用を有するので、要求される強度に応じて添加する。しかしながら、P含有量が0.10%を超えると、溶接性が劣化する。したがって、P含有量は0.10%以下とする。特に良好な溶接性が求められる場合、P含有量は0.05%以下とすることが好ましい。
S:0.01%以下
Sは、鋼板中に介在物として存在し、加工性、特に伸びフランジ性を劣化させる。このため、Sは可能な限り低減する必要がある。S含有量が0.01%を超えると、伸びフランジ性に対する悪影響が顕著になる。したがって、S含有量は0.01%以下とする。特に良好な伸びフランジ性が求められる場合、S含有量は0.005%以下とすることが好ましい。
Al:0.01〜0.1%
Alは、脱酸元素として溶製段階で添加され、溶鋼の清浄度を高める元素である。また、鋼板の組織を微細化する作用も有する。Al含有量が0.01%未満では、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が0.1%を超えると、鋼板の表面性状が劣化する。したがって、Al含有量は0.01〜0.1%の範囲とする。好ましくは0.015%以上である。
N:0.008%以下
Nは、鋼板に混入する不純物である。N含有量が0.008%を超えると、強度のバラツキが発生する。したがって、N含有量は0.008%以下とする。好ましくは0.005%以下である。
Sb:0.02〜0.10%
Sbは、本発明において最も重要な添加元素である。Sbは、鋼板表面に偏析し易く、また外部からのHOまたはOガスの化学吸着を抑制するので、鋼板表面における吸着ガス中のO(酸素)原子とSi原子との反応を阻害し、Siの酸化を抑制することができる。Sb含有量が0.02%未満の場合、上記の効果が十分でなく、Siを主体とした酸化物が鋼板表面に形成されるため、化成処理性が低下する。一方、Sb含有量が0.10%を超えると、加工性が劣化する。したがって、Sb含有量は0.02〜0.10%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.05%の範囲である。
基本成分については以上のとおりである。本発明では、その他にも、以下に述べる成分を必要に応じて適宜含有させることができる。
Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.2%およびB:0.0001〜0.005%のうちから選ばれる1種または2種以上
Cr、MoおよびBは、オーステナイト相の焼入れ性を高める作用を有する元素であり、必要に応じて添加することができる。このような効果を得るためには、Crは0.01%以上、Moは0.01%以上、Bは0.0001%以上をそれぞれ添加することが好ましい。一方、Crは1.0%、Moは0.2%、Bは0.005%をそれぞれ超えて添加されると、鋼板の加工性が劣化する。しかも、Cr、MoおよびBといった高価な元素を多量に使用することによって、鋼板の製造コストも上昇する。したがってCr、MoおよびBを添加する場合、それぞれCr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.2%、B:0.0001〜0.005%の範囲とすることが好ましい。
Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%およびV:0.005〜0.05%のうちから選ばれる1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、鋼板中で炭化物を形成し、析出強化によって鋼板の強度を高める作用を有する。このような効果を得るためには、Ti、NbおよびVはそれぞれ0.005%以上を添加することが好ましい。一方、Ti、NbおよびVがそれぞれ0.05%を超えて添加されると、鋼板の加工性が劣化する。しかも、Ti、NbおよびVといった高価な元素を多量に使用することによって、鋼板の製造コストも上昇する。したがってTi、NbおよびVを添加する場合、それぞれTi:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%、V:0.005〜0.05%の範囲とすることが好ましい。
本発明の鋼板において、上記以外の成分は、Feおよび不可避的不純物である。なお、不可避的不純物としては、Zn、Co、Sn等が挙げられ、これらの元素の含有量は、Zn:0.01%以下、Co:0.1%以下、Sn:0.1%以下とすることが好ましい。
本発明で目標とする鋼板の機械特性は次の通りである。
板厚方向の硬さばらつきΔHv:20以下
本発明では、板厚方向の硬さばらつきΔHvを20以下とすることが極めて重要である。板厚方向の硬さばらつきΔHvが20を超える場合、引張特性などの機械特性が安定して得られないからである。好ましくは板厚方向の硬さばらつきΔHvが15以下である。
ここで、板厚方向の硬さばらつきΔHvを20以下とするには、冷間圧延に先立って行う焼鈍処理が特に重要である。この焼鈍処理については、後述する製造条件において、詳しく説明する。
次に、本発明の製造方法について説明する。
まず、上記の成分組成を有する溶鋼を、連続鋳造法、造塊・分塊圧延法または薄スラブ鋳造法により、スラブとする。なお、スラブを製造するにあたっては、マクロ偏析を防止するため、連続鋳造法を採用することが好ましい。
スラブ加熱温度:1000〜1300℃
ついで、得られたスラブを一旦室温まで冷却して加熱炉に装入する、あるいは冷却せずに温片のまま加熱炉に装入する等の方法で、スラブを加熱する。スラブ加熱温度が1000℃未満では、スラブの変形抵抗が大きいので、熱間圧延に支障を来たす場合がある。一方、スラブ加熱温度が1300℃を超えると、スケールロスが増加する。したがって、スラブ加熱温度は1000〜1300℃の範囲とすることが好ましい。
また、スラブを再加熱せず、鋳造後、そのまま熱間圧延を行う直送圧延も適用できる。直送圧延を行う場合も、上記と同じ理由から、スラブの温度は1000〜1300℃の範囲とすることが好ましい。
仕上げ圧延温度:800〜1000℃
次いで、上記のように加熱されたスラブに、熱間圧延を施す。この熱間圧延では、必要に応じて粗圧延を行った後、仕上げ圧延を行う。仕上げ圧延温度が800℃未満では、熱延鋼板の組織が不均一になり、後工程の冷間圧延時やプレス加工時における加工性が劣化する。一方、仕上げ圧延温度が1000℃を超えると、スケールの巻込みに起因する表面疵が発生し易くなる。したがって、仕上げ圧延温度は800〜1000℃の範囲とする。
巻取り温度:650℃以下
上記のように熱間圧延を施した熱延鋼板をコイルに巻取る。この巻取り温度が650℃を超えると、巻取りの後でスケールが発生し、酸洗の負荷が増大する。したがって、巻取り温度は650℃以下とすることが好ましい。
その後、通常は冷間圧延に供する。しかしながら本発明では、この冷間圧延に先立ち、以下の条件で焼鈍処理を施す。本発明においては、この焼鈍処理が特に重要な工程である。
焼鈍処理条件:500℃以上Ac1点以下の温度域で1〜10時間保持
冷間圧延に先立ち、適正な条件で焼鈍処理を行うことにより、鋼板の板厚方向の組織が改質されて、板厚方向の機械特性、特に板厚方向の硬さばらつきΔHvを大幅に抑制することができる。
焼鈍処理における保持温度が500℃に満たない場合、または保持時間が1時間に満たない場合、熱延板組織中の硬質相(パーライト、ベイナイト)の軟化が不十分なため、冷間圧延後の連続焼鈍過程において再結晶が不均一に進行し、焼鈍後の組織も不均一となり、板厚方向の硬さばらつきΔHvを抑制することができない。一方、保持温度がAc1点を超える場合、焼鈍後の冷却過程で硬質相(パーライト、ベイナイト)が再生してしまい、冷間圧延および連続焼鈍後の組織が不均一となり、板厚方向の硬さばらつきΔHvを抑制することができない。また、保持時間が10時間を超える場合、硬質相(パーライト、ベイナイト)中の炭化物が粗大化し過ぎてしまい、連続焼鈍過程での炭化物の溶解が不均一に進行するため、連続焼鈍後の組織が不均一となり、板厚方向の硬さばらつきΔHvを抑制することができない。従って、焼鈍処理における保持温度は500℃以上Ac1点以下、保持時間は1〜10時間の範囲とする。好ましくは保持温度:600℃以上700℃以下、保持時間:3〜10時間の範囲である。
本発明では、上記したように、冷間圧延に先立って、適正な焼鈍処理を施すことにより、熱延板組織中の硬質相(パーライト、ベイナイト)を軟質化させ、冷間圧延後の連続焼鈍過程において再結晶が均一に進行し、組織が均一化するように、鋼組織が改質され、その結果、板厚方向の機械特性のばらつきが解消されるのである。
なお、この焼鈍処理は、熱延鋼板の表面の酸化スケールを酸洗により除去した後に行うことが好ましい。酸洗条件は特に制限されるものではなく、常法に従えば良い。
冷間圧延の圧下率:20%以上
ついで、得られた熱延鋼板に、酸洗を施してスケールを除去した後、冷間圧延を施す。冷間圧延では、得られる冷延鋼板の表面の平坦度や組織の均一性を確保する観点から、圧下率を20%以上とする必要がある。一方、操業性の観点から、圧下率は80%以下とすることが好ましい。
なお、熱延鋼板のスケールが極めて少ない場合は、酸洗を省略して、冷間圧延を行っても良い。
かくして得られた冷延鋼板に、以下に示す条件で焼鈍処理を施す。なお、焼鈍は、生産性向上の観点から、連続焼鈍設備を用いることが好ましい。
露点:−35℃以下
焼鈍時の雰囲気露点が−35℃を超えると、Sbを添加しても、冷延鋼板の表面にSi酸化物が生成し、化成処理および電着塗装を施した高加工性高強度冷延鋼板の耐食性が劣化する場合がある。したがって、焼鈍時の露点は−35℃以下とする必要がある。好ましくは−40℃以下である。
保持温度:750〜900℃
焼鈍時の保持温度が750℃未満では、十分に再結晶が起こらず、加工性が低下するおそれがある。一方、900℃を超えると、組織が粗大化し、強度と加工性のバランスが崩れる。したがって、焼鈍時の保持温度は750〜900℃の範囲とする。
保持時間:60秒以上
焼鈍時の保持時間が60秒未満では、再結晶が不均一になる。したがって、焼鈍の保持時間は60秒以上とする。好ましくは120秒以上である。なお、保持時間の上限は600秒程度で十分である。
冷却条件:30℃/秒以上の平均冷却速度で300℃以下まで冷却
上記の焼鈍が終了した後、得られた冷延鋼板を、30℃/秒以上の平均冷却速度で300℃以下まで冷却する。平均冷却速度が30℃/秒未満では、十分な強度を得るために、合金元素を多量に添加する必要があり、高加工性高強度冷延鋼板の製造コストの上昇を招く。また、冷却停止温度が300℃を超えると、十分な強度が得られなくなる。
焼戻し条件:100〜450℃の温度域に1〜30分保持
さらに、鋼板の加工性を向上させるため、上記の冷却後、再加熱し、焼戻しを行う。焼戻し条件としては、100〜450℃の温度域にて1〜30分保持する焼戻しを行うことが好ましい。保持温度が100℃未満では、延性が不十分となり、鋼板の加工性を向上することができない。一方、保持温度が450℃を超えると、強度が不十分となる。また、保持時間が1分未満であると、延性が不十分となり、鋼板の加工性を向上することができない。一方、保持時間が30分を超えると強度が不十分となる。
表1に示す成分のスラブを連続鋳造によって製造し、1250℃に再加熱した後、仕上げ圧延温度:850℃の条件で圧延して厚さ3.0mmの熱延鋼板とし、600℃でコイルに巻き取った。
Figure 0006222040
なお、表1中の鋼種A、B、D〜H、K〜Rは、本発明で規定する成分組成範囲を満足する適合鋼であり、鋼種CはSi含有量が、鋼種I、JはSb含有量がそれぞれ、本発明で規定する成分組成範囲を外れる比較鋼である。
ついで、得られた熱延鋼板を酸洗した後、還元ガス雰囲気中にて、表2に示す条件で焼鈍処理を行ったのち、冷間圧延して厚さ1.6mm(圧下率:約46.7%)の冷延鋼板とした。その後、冷延鋼板に、表2に示す条件で連続焼鈍、ついで冷却を行ったのち、保持温度:150〜400℃、保持時間:1〜20分となる条件で焼戻しを行い、高加工性高強度冷延鋼板を得た。
また、表2中のAc1点は次式により求めた。
Ac1=723−10.7[%Mn]−16.9[%Ni]+29.1[%Si]+16.9[%Cr]
ただし、[%M]は、M元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合は0とする。
そして、得られた高加工性高強度冷延鋼板の機械的性質および化成処理性を評価した。評価結果を表2に示す。なお、評価方法は以下の通りである。
(1)機械的性質
高加工性高強度冷延鋼板の圧延方向に直交する方向を長軸としてJIS規格5号試験片を採取し、JIS Z 2241(2011年)の規定に準拠して引張試験を行った。得られた引張強さと伸びを、表2にそれぞれTSおよびELとして示す。また、加工性を示す指標として、TS×ELの値を表2に示す。なお、TS×ELの値が18000MPa・%以上であれば、加工性は良好と言える。
(2)板厚方向の硬さばらつき(ΔHv)
板厚方向の硬さばらつきは、鋼板の板厚方向に0.1mmピッチで全板厚にわたり断面硬さを測定し、得られた断面硬さの最大値と最小値の差をΔHvとして評価した。ここで、断面硬さは、サンプルの切断面を研磨後、ビッカース硬さ試験機を用いて、JIS Z 2244(2009年)に準拠した硬さ試験を行うことにより求めた。なお、試験力は0.98Nとした。ΔHvは20以下を合格とした。
(3)化成処理性
市販の化成処理薬剤(日本パーカライジング株式会社製パルボンドPB−L3020)を用いて、浴温:43℃、処理時間:120秒の条件で高加工性高強度冷延鋼板の化成処理を行った後、その高加工性高強度冷延鋼板の表面を走査型電子顕微鏡にて500倍で5視野観察し、面積率95%以上の均一な化成結晶が5視野全てにおいて生成しているものを良好(○)とし、面積率5%超えの隙間が1視野でも認められるものを不良(×)として評価した。なお、ここでいう隙間とは、均一な化成結晶が生成していない箇所のことを指す。
Figure 0006222040
表2から明らかなように、発明例はいずれも、引張強さ(TS)が780MPa以上であり、またTS×ELの値も18000MPa・%以上であり、かつ板厚方向の硬さばらつき(ΔHv)が20以下であることから、板厚方向の硬さばらつきがなく、優れた強度と加工性に優れていることがわかる。また、化成処理性も良好であった。
一方、Si含有量が下限に満たない比較例No.3は、TS×ELの値が18000MPa・%未満となり、加工性に劣っていた。
また、Sbが添加されていない比較例No.16は、化成処理性に劣っていた。
さらに、Sb含有量が上限を超える比較例No.17は、TS×ELの値が18000MPa・%未満となり、加工性に劣っていた。
また、焼鈍時の保持温度または保持時間が適正範囲外となる比較例No.9及び10は、TS×ELの値が18000MPa・%未満となり、加工性に劣っていた。
さらに、平均冷却速度または冷却停止温度が適正範囲外となる比較例No.12及び13は、引張強さ(TS)が780MPaに満たず、またTS×ELの値が18000MPa・%未満となり、加工性に劣っていた。
また、冷間圧延前の焼鈍処理条件が適正範囲外となる比較例No.22、23、24及び25は、板厚方向の硬さばらつきΔHvが20を超えており加工性に劣っていた。

Claims (4)

  1. 成分組成として、質量%で、
    C:0.05〜0.30%、
    Si:0.8〜1.4%、
    Mn:1.0〜3.0%、
    P:0.10%以下、
    S:0.01%以下、
    Al:0.01〜0.1%、
    N:0.008%以下および
    Sb:0.02〜0.10%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、引張強さTSが780MPa以上、TSと伸びEL(%)の積TS×ELが18000MPa・%以上で、板厚方向の硬さばらつきΔHvが20以下であることを特徴とする化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板。
  2. さらに、成分組成として、質量%で、Cr:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜0.2%およびB:0.0001〜0.005%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板。
  3. さらに、成分組成として、質量%で、Ti:0.005〜0.05%、Nb:0.005〜0.05%およびV:0.005〜0.05%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成からなるスラブを加熱後、仕上げ圧延温度800〜1000℃で熱間圧延し、500℃以上Ac1点以下の温度域で1〜10時間保持する焼鈍処理を施した後、圧下率20%以上で冷間圧延を施し、次いで、露点:−35℃以下の雰囲気中にて、750〜900℃の温度域で60秒以上保持する焼鈍処理をさらに施した後、30℃/秒以上の平均冷却速度で300℃以下まで冷却後、焼戻しを行うことを特徴とする化成処理性に優れた高加工性高強度冷延鋼板の製造方法。
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