以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本実施形態に係るオフセット輪転印刷機は、連続紙(被印刷体)をロール状に巻いたロール紙をセットする連続紙供給ユニット(図示せず)と、連続紙供給ユニットから供給される連続紙の両面にオフセット印刷を施す複数の印刷ユニット2a,2bと、オフセット印刷後の連続紙を断裁して個々の枚葉状シートを形成すると共に、一枚の枚葉状シート又は複数の枚葉状シートからなる枚葉状シート群を折り畳んで折丁を形成する折機(図示せず)と、折機により形成された折丁を更に二つ折りする等の所定の処理を行い集積する後処理機構(図示せず)と、各構成の各種制御を実行する一又は複数の制御部(図示せず)と、各種設定情報を入力するための設定入力部60(図8参照)とを備えている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、連続紙供給ユニット、折機、後処理機構、制御部及び設定入力部60は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
上段印刷ユニット2a及び下段印刷ユニット2bは、それぞれ、図1に示すように、多数のインキ供給ローラーを有する一対のインキ供給装置4と、湿し水を供給する一対の湿し水供給装置5と、刷版7A〜7Dが装着される一対の版胴6と、印刷用ブランケット(図示せず)が装着される一対のブランケット胴8と、操作側の版胴6に近接して配置された刷版自動着脱装置10とを備えている。また、上段印刷ユニット2a及び下段印刷ユニット2bは、共通の構成として、各構成の各種制御を実行する印刷制御部40(図12参照)を備えている。各印刷ユニット2a,2bは、従来の印刷ユニットと同様に、インキ供給装置4から供給されたインキが版胴6の刷版7A〜7Dを介してブランケット胴8の印刷用ブランケットに供給され、印刷用ブランケットが走行する連続紙(被印刷体)と所定の圧力で接触することにより、連続紙に刷版の内容(文字や画像等)が転写されるよう構成されている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、インキ供給装置4、湿し水供給装置5及びブランケット胴8は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
版胴6は、円柱状に形成された印刷胴であり、図2に示すように、両端部にそれぞれ設けられた取付け軸6aと、4頁分の刷版7A〜7Dを軸方向に並べて装着可能な刷版装着領域Rを有する周面と、軸方向に沿って延びる刷版装着溝6bと、刷版装着溝6bに連続する内部空間である収容部(図示せず)と、刷版装着領域Rよりも端部側にそれぞれ形成された操作開口部6cとを有している。本実施形態において、版胴6は、その周面が、新聞1頁の横方向の長さの4倍に略等しい軸方向の長さ(W)と、新聞1頁の縦方向の長さと略等しい周方向の長さ(L)とを有する、所謂4(W)×1(L)型の版胴である。
版胴6は、図2に示すように、両端部の取付け軸6aが軸受け(図示せず)を介して一対のフレームF,Fに取り付けられ、一方の取付け軸6aに接続された回転駆動手段(図示せず)により所定の速度で回転駆動されるよう構成されている。刷版装着溝6bには、刷版7A〜7Dの位置決めを行うためのレジスターピン(図示せず)が刷版7A〜7D毎に設けられている。収容部には、刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bを刷版装着溝6b内に引き込むことで、刷版7A〜7Dを版胴6の周面に巻き付けるよう構成された刷版締め付け機構50が埋設されている。操作開口部6cは、刷版締め付け機構50の第1〜第4操作機構52a〜52dを操作するための開口である。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、版胴6は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
刷版7A〜7Dは、新聞1頁に相当する大きさを有する可撓性の金属製薄板材から形成されており、従来の刷版110と同様に、版胴6の刷版装着溝6bの一方側のエッジ部(咥え側エッジ部)に係止可能な咥え側端部7aと、刷版締め付け機構50によって刷版装着溝6b内に引き込まれるよう構成された咥え尻側端部7bとを有している(図5等参照)。刷版7A〜7Dの咥え側端部7a及び咥え尻側端部7bには、それぞれ、版胴6のレジスターピンに嵌合可能な切欠き部(図示せず)が形成されており、これら切欠き部をレジスターピンに嵌合させることにより、刷版7A〜7Dの位置決めを行うよう構成されている。なお、本実施形態に係るオフセット輪転印刷機において、刷版7A〜7Dは、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その説明を省略する。
刷版締め付け機構50は、4つの角変位軸(図示せず)が同軸となるように軸方向に沿って連結されることにより構成された係止バー部材(図示せず)と、係止バー部材の各角変位軸を独立して回転させる4つの操作機構(第1〜第4操作機構52a〜52d)とを備える所謂ロックアップ式版締め装置である。刷版締め付け機構50は、種々の公知のものを任意に用いることができるため、その詳細な説明を省略するが、概略的には、以下の構成を備えている。
4つの角変位軸は、それぞれ、新聞1頁の横方向の長さに略等しい軸方向の長さを有しており、刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bがそれぞれ係止可能に構成されている。また、4つの角変位軸は、それぞれ異なる操作機構(第1〜第4操作機構52a〜52d)と接続されており、接続された操作機構を操作することにより、軸を中心としてそれぞれ独立して刷版7A〜7Dを牽引又は緩める方向に軸回転(角変位)するよう構成されている。
第1〜第4操作機構52a〜52dは、図2に示すように、それぞれ、対応する角変位軸を操作するための操作レバー54を備えている。操作レバー54は、揺動することにより、刷版7A〜7Dを版胴6の外周面上に締め付ける装着位置と、係止バー部材と刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bとの係合が解除される解除位置との間において、対応する角変位軸を角変位させるよう構成されている。具体的には、各操作レバー54は、各操作レバー54の先端部側が下方(版胴6の径方向内側)に押し下げられることにより、対応する角変位軸を締めつけ方向に回転させ、刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bを係止バー部材により版胴6の内部に引き込むよう構成されている(図9(f)参照)。また、各操作レバー54は、対応する角変位軸が装着位置に到達した際にロックされるよう構成されている。さらに、各操作レバー54は、ロック状態において基端部側が下方(版胴6の径方向内側)に押し下げられることにより、ロックが解除され、これにより、対応する角変位軸を締めつけ方向とは反対の方向に回転させ、係止バー部材と刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bとの係合を解除するよう構成されている(図10(f)参照)。
刷版自動着脱装置10は、図1に示すように、版胴6が後述する版掛位置(刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを係止させることが可能となる位置)に停止した状態における、刷版装着溝6bと整合する位置に設けられており、版胴6に対して刷版7A〜7Dを自動で装着させることが可能で、かつ、版胴6から刷版7A〜7Dを自動で取り外すことが可能に構成されている。具体的には、刷版自動着脱装置10は、図2及び図3に示すように、左右一対のブラケット14を介して一対のフレームF,F間に懸架された固定ベース部材12と、版胴6に対して進退可能な状態で固定ベース部材12に取り付けられた複数(本実施形態では4つ)の刷版押さえ機構20a〜20d及び刷版着脱操作機構30a〜30dと、固定ベース部材12の前面を覆うように取り付けられた前部カバー16(図4等参照)とを備えている。なお、図2及び図3では、説明を容易にするため、前部カバー16並びに後述するガードブラケット26及びガード部材27を取り除いた状態の刷版自動着脱装置10を示している。
固定ベース部材12は、図2及び図3に示すように、版胴6の軸方向の長さと略等しい長さを有する長尺部材であり、その一端部がブラケット14を介して一方のフレームFに固定され、他端部がブラケット14を介して他方のフレームFに固定されている。固定ベース部材12は、図4及び図5に示すように、上面部及び背面部を有する断面逆L字状に形成されている。固定ベース部材12の背面部の内面(正面)には、図2及び図3に示すように、刷版押さえ機構20a〜20d毎に複数(本実施形態では2つずつ)の直動ガイド13が取り付けられている。各直動ガイド13は、固定ベース部材12の背面部の内面(正面)に固定されたリニアブッシュ13aと、刷版押さえ機構20a〜20dの後述する可動ベース部材24に固定されたシャフト13bとからなり、固定ベース部材12に対する各可動ベース部材24の進退移動をガイドするよう構成されている。なお、図4及び図5は、図2及び図3に示す向きを正面とした場合における、刷版押さえ機構20a〜20dを側面方向から見た状態を示す概略図である。また、図4及び図5では、刷版押さえ機構20aのみを図示しているが、他の刷版押さえ機構20b〜20dも同様の構成を有している。
前部カバー16は、図4及び図5に示すように、固定ベース部材12の上面の前端縁部から下方に向けて延在して設けられた薄板部材であり、固定ベース部材12に取り付けられた刷版押さえ機構20a〜20dの前面を覆い隠すよう構成されている。これら固定ベース部材12及び前部カバー16並びに後述する可動ベース部材24及びガードブラケット26は、種々の材質のものを任意に採用可能であるが、アルミニウム製のものを採用することが、剛性を維持しつつ軽量化を図ることができ、メンテナンス時における取り外しの容易化を図ることができることから、好ましい。
刷版押さえ機構20a〜20dは、図2及び図3に示すように、刷版7A〜7Dと1対1で対応するように軸方向に分割(本実施形態では4分割)して設けられており、これら複数(本実施形態では4つ)の刷版押さえ機構20a〜20dがそれぞれ独立して動作するよう構成されている。
刷版押さえ機構20a〜20dは、図2〜図5に示すように、それぞれ、固定ベース部材12の上面部の内面(下面)に取り付けられたエアーシリンダー22と、エアーシリンダー22のシリンダーロッド23の先端に取り付けられた可動ベース部材24と、可動ベース部材24に固定されたガードブラケット26(図4及び図5参照)と、ガードブラケット26に取り付けられたガード部材27(図4及び図5参照)と、可動ベース部材24に取り付けられた複数の押さえコロ部材28a,28bとを備えている。
エアーシリンダー22は、図2〜図5に示すように、シリンダーロッド23の進退動作によって可動ベース部材24を版胴6に対して進退移動させるよう構成されている。本実施形態に係る刷版押さえ機構20a〜20dは、図4(a)に示すように、シリンダーロッド23が後退した状態において、エアー配管(図示せず)等を含め、前部カバー16の内側に隠れるよう構成されている。なお、本実施形態において、エアーシリンダー22は、種々の公知のものを任意に用いることが可能であるため、その説明を省略する。また、可動ベース部材24を版胴6に対して進退移動させることが可能な構成であれば、エアーシリンダーでなくても良い。
各可動ベース部材24は、図2及び図3に示すように、各刷版7A〜7Dの横方向の長さと略等しい長さを有する長尺な薄板部材からなり、1枚の刷版7A〜7Dに対して1つ設けられている。また、各可動ベース部材24は、その上面が各エアーシリンダー22のシリンダーロッド23の先端に連結されており、シリンダーロッド23の進退に伴って、版胴6に対して接近又は離間するよう構成されている。各可動ベース部材24の下面には、図4及び図5に示すように、その前端縁部に、下方に向けて突出するようにガードブラケット26が取り付けられると共に、ガードブラケット26よりも後方側の領域に、複数の押さえコロ部材28a,28bが取り付けられている。
ここで、図2は、刷版押さえ機構20a〜20dの全てのシリンダーロッド23が後退し、可動ベース部材24が版胴6から離間した状態、すなわち、全ての刷版押さえ機構20a〜20dが版胴6から離間した「脱」状態となり、作業者が手動で刷版7A〜7Dを刷版装着溝6bに係止させること又は刷版装着溝6bから取り外すことが可能となった状態を示している。また、図3は、1つの刷版押さえ機構20aのみが版胴6に対する刷版7Aの押し付け状態(「着」状態)を維持し、他の3つの刷版押さえ機構20b〜20dが「脱」状態となった状態を示している。なお、本実施形態に係る刷版押さえ機構20a〜20dは、既述のとおり、互いに独立して動作可能であることから、図2及び図3に示す「着」状態及び「脱」状態の組み合わせの他に、例えば4つの刷版押さえ機構20a〜20dのうちの2つが「着」状態で他の2つが「脱」状態の態様等、版替えを行う刷版7A〜7Dに応じて様々な「着」状態及び「脱」状態の組み合わせ(本実施形態では全16通り)を実現することが可能である。
複数の押さえコロ部材28a,28bは、図2及び図3に示すように、可動ベース部材24の長手方向の略中央に配された1つの中央押さえコロ部材28aと、中央押さえコロ部材28aを中心として長手方向に離間して配された2つの周辺押さえコロ部材28bとから構成されている。中央押さえコロ部材28a及び周辺押さえコロ部材28bは、互いに等しい径を有しており、可動ベース部材24が版胴6の周面に接近した状態(前進位置)において、均一な押さえ付け力で版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付けることが可能に構成されている。2つの周辺押さえコロ部材28bは、図4及び図5に示すように、互いに回転軸が同軸となるよう、版胴6の軸方向に沿って整列して配置されている。一方、中央押さえコロ部材28aは、2つの周辺押さえコロ部材28bよりも、版胴6の順方向の上流側に微小距離x(例えば、1〜5mm)だけ位置をずらして配されている。なお、押さえコロ部材28a,28bとしては、例えば、直径25mmの円筒状のウレタン製ローラーを好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。また、中央押さえコロ部材28a及び周辺押さえコロ部材28bの位置及び数は、必要に応じて、任意の数及び位置に変更することが可能である。
本実施形態に係る刷版押さえ機構20a〜20dは、このように、中央押さえコロ部材28aが周辺押さえコロ部材28bよりも版胴6の順方向の上流側に位置をずらして配されていることにより、図5(a)〜図5(c)に示すように、周辺押さえコロ部材28bに先行して、中央押さえコロ部材28aによって刷版7A〜7Dの横方向の略中央部を押圧することが可能となる。これにより、中央押さえコロ部材28aによって刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bの近傍を刷版装着溝6bに向けて押圧し、版胴6のレジスターピンに対する咥え尻側端部7bの嵌合をスムーズかつ確実に行うことが可能となる。また、中央押さえコロ部材28a及び周辺押さえコロ部材28bによって均一な押さえ付け力で版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付けた状態において、中央押さえコロ部材28aから各周辺押さえコロ部材28bに向かう方向、すなわち、刷版7A〜7Dの横方向の中央部から両端部に向かう方向に向けて刷版7A〜7Dに押さえ付け力を付与することが可能となるため、刷版7A〜7Dの装着精度をより一層向上させることが可能となる。
ガードブラケット26は、可動ベース部材24の長手方向の長さと略等しい長さを有する長尺な薄板部材からなり、図4及び図5に示すように、複数の押さえコロ部材28a,28bよりも前面側において、可動ベース部材24の下面に取り付けられている。このガードブラケット26は、版胴6に対する刷版7A〜7Dの着脱時に、誤って指等を版胴6と押さえコロ部材28a,28bとの間に巻き込まないようにするためのフィンガーガードとして機能するよう構成されている。また、ガード部材27は、ガードブラケット26の長手方向の長さと略等しい長さを有する長尺な薄板部材からなり、ガードブラケット26の下端縁部に取り付けられている。このガード部材27は、ガードブラケット26よりも柔軟な材料、例えばポリアミド等の樹脂材料等から形成されており、版胴6に対する刷版7A〜7Dの着脱時に、ガードブラケット26に刷版7A〜7Dが直接接触して損傷しないようにするためのガードとして機能するよう構成されている。
本実施形態に係る刷版押さえ機構20a〜20dは、以上の構成を備えることにより、例えば図4及び図5に示すように、版胴6に対する刷版7A〜7Dの装着時において、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aが係止された状態で順方向に回転する版胴6に対して、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7A〜7Dを押し付けるよう構成されている。また、本実施形態に係る刷版押さえ機構20a〜20dは、例えば図5(c)に示すように、刷版装着溝6bに到達した刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bを中央押さえコロ部材28aによって刷版装着溝6bに押し込むことで、咥え尻側端部7bに形成された切欠き部(図示せず)をレジスターピンに嵌合させるよう構成されている。さらに、本実施形態に係る刷版押さえ機構20a〜20dは、版胴6からの刷版7A〜7Dの取り外し時においても、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aが係止された状態で逆方向に回転する版胴6に対して、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7A〜7Dを押し付け、刷版7A〜7Dのばたつきを抑制するよう構成されている。
刷版着脱操作機構30a〜30dは、図2及び図3に示すように、第1〜第4操作機構52a〜52dと整合する位置にそれぞれ1つずつ設けられている。本実施形態では、第1及び第2操作機構52a,52bと整合する位置に配された2つの刷版着脱操作機構30a,30bは、1つのブラケット32を介して固定ベース部材12の長手方向の一方側の端部近傍に取り付けられており、第3及び第4操作機構52c,52dと整合する位置に配された2つの刷版着脱操作機構30c,30dは、1つのブラケット32を介して固定ベース部材12の長手方向の他方側の端部近傍に取り付けられている。
刷版着脱操作機構30a〜30dは、図2及び図6に示すように、それぞれ、ブラケット32に取り付けられたエアーシリンダー34と、エアーシリンダー34のシリンダーロッド36の先端に取り付けられたレバー押圧部材38とを備えている。
エアーシリンダー34は、図6に示すように、シリンダーロッド36の進退動作によってレバー押圧部材38を版胴6に対して進退移動させるよう構成されている。なお、図6(a)は、シリンダーロッド36が後退した状態、すなわち、レバー押圧部材38が版胴6から離間した状態を示しており、図6(b)は、シリンダーロッド36が前進した状態、すなわち、レバー押圧部材38が版胴6に接近した状態を示している。なお、本実施形態において、エアーシリンダー34は、種々の公知のものを任意に用いることが可能であるため、その説明を省略する。また、レバー押圧部材38を版胴6に対して進退移動させることが可能な構成であれば、エアーシリンダーでなくても良い。
レバー押圧部材38は、図6に示すように、その上面がエアーシリンダー34のシリンダーロッド36の先端に連結されている。レバー押圧部材38の下面には、下方(版胴6に向かう方向)に向けて突出した突出部が形成されている。
本実施形態に係る刷版着脱操作機構30a〜30dは、以上の構成を備えることにより、図6に示すように、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aが係止され、刷版装着溝6b内に咥え尻側端部7bが押し込まれた状態の版胴6に対してレバー押圧部材38が前進し、対応する操作機構(第1〜第4操作機構52a〜52d)の操作レバー54の先端部側を下方(版胴6の径方向内側)に押し下げることにより、対応する角変位軸を締め付け方向に回転させ、版胴6の周面に刷版7A〜7Dを自動で装着させるよう構成されている。また、本実施形態に係る刷版着脱操作機構30a〜30dは、図7に示すように、刷版7A〜7Dが装着された状態の版胴6に対してレバー押圧部材38が前進し、対応する操作機構(第1〜第4操作機構52a〜52d)の操作レバー54の基端部側を下方(版胴6の径方向内側)に押し下げることにより、操作レバー54のロックを解除し、ロックが解除された角変位軸を締め付け方向とは反対の方向に回転させ、これにより、刷版締め付け機構50の係止バー部材と刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bとの係合を解除するよう構成されている。
印刷制御部40は、本実施形態ではPLC(Programmable Logic Controller)であり、版胴6の回転制御と、刷版押さえ機構20a〜20d及び刷版着脱操作機構30a〜30dの動作制御とを含む、種々の印刷制御を実行可能に構成されている。
印刷制御部40は、版胴6の回転動作に合わせて、各刷版押さえ機構20a〜20d及び各刷版着脱操作機構30a〜30dを適宜のタイミングで独立して動作させるよう構成されている。すなわち、印刷制御部40は、版胴6の取付け軸6a上、または取付け軸6aに接続された回転駆動手段(例えば、サーボモーター等)に設けられた回転位置検出器(例えば、エンコーダー等)により検出された版胴6の回転動作の情報(回転速度や回転位置等)を基に、版胴6を各刷版着脱工程における所定の停止位置に正確に停止させるよう構成されている。また、版胴6の回転動作の情報に基づいて、版胴6の回転動作に合わせて、各刷版押さえ機構20a〜20d及び各刷版着脱操作機構30a〜30dを適宜のタイミングで独立して動作させるよう構成されている。
ここで、下段印刷ユニット2bの一対のフレームF,F間には、図1に示すように、版掛位置釦(図示せず)と、版掛準備釦(図示せず)と、版掛釦(図示せず)と、版取外釦(図示せず)とが配された操作部3が設けられている。印刷制御部40は、これらの釦が作業者によって押下されるか、又は、設定入力部60から後述する実行指示を受け付けた際に、版胴6及び刷版自動着脱装置10を自動で動作させるよう構成されている。また、操作部3には、上段印刷ユニット2a及び下段印刷ユニット2bにそれぞれ設けられている各刷版押さえ機構20a〜20d及び各刷版着脱操作機構30a〜30dの中から動作させる刷版押さえ機構20a〜20d及び刷版着脱操作機構30a〜30dを選択するための面選択釦(図示せず)が更に配されている。
具体的には、印刷制御部40は、版掛位置釦が押下された際に、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを係止させることが可能となる位置(版掛位置)に到達するまで版胴6を順方向に回転させるよう構成されている(図8参照)。
印刷制御部40は、作業者が刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に係止させた後、版掛準備釦が押下された際に、「脱」状態となっている刷版押さえ機構20a〜20dを版胴6に対して前進させ、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付けるよう構成されている(図9(a)参照)。なお、「着」状態となっている刷版押さえ機構20a〜20dについては、既に版胴6の周面に圧接されているため、版掛準備釦が押下されても動作しない。
印刷制御部40は、刷版押さえ機構20a〜20dにより版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付けた状態において、版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の先端部が刷版着脱操作機構30a〜30dのレバー押圧部材38の突出部と整合する位置(締め付け位置)に到達するまで版胴6を順方向に回転させるよう構成されている(図9(d)参照)。また、印刷制御部40は、版胴6が締め付け位置にて停止した状態において、「脱」状態となっていた刷版押さえ機構20a〜20dに対応する刷版着脱操作機構30a〜30dを版胴6に対して前進させ、レバー押圧部材38の突出部によって版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の先端部を押し下げることで、版胴6に対して刷版7A〜7Dを装着させるよう構成されている(図9(f)参照)。なお、このとき、「着」状態となっていた刷版押さえ機構20a〜20dに対応する刷版着脱操作機構30a〜30dは動作しない。さらに、印刷制御部40は、版胴6に対する刷版7A〜7Dの装着が完了した後に、各刷版押さえ機構20a〜20d及び各刷版着脱操作機構30a〜30dを版胴6から後退させるよう構成されている(図9(g)及び図9(h)参照)
印刷制御部40は、版取外釦が押下された際、又は、設定入力部60から後述する実行指示を受け付けた際に、版胴6及び刷版自動着脱装置10に版外し動作を実行させるよう構成されている。
すなわち、印刷制御部40は、まず、版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の基端部が刷版着脱操作機構30a〜30dのレバー押圧部材38の突出部と整合する位置(咥え尻取り外し位置)に到達するまで版胴6を順方向に回転させるよう構成されている(図10(b)参照)。
また、印刷制御部40は、版胴6が咥え尻取り外し位置にて停止した状態において、刷版押さえ機構20a〜20dを版胴6に対して前進させ、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付けるよう構成されている(図10(c)参照)。
さらに、印刷制御部40は、版替えの対象となる刷版7A〜7Dに対応する刷版着脱操作機構30a〜30dを版胴6に対して前進させ、レバー押圧部材38の突出部によって版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の基端部を押し下げ、操作レバー54のロックを解除することで、刷版締め付け機構50の係止バー部材と版替えの対象となる刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bとの係合を解除するよう構成されている(図10(f)参照)。なお、このとき、版替えの対象とならない刷版7A〜7Dに対応する刷版着脱操作機構30a〜30dについては、動作しない。
またさらに、印刷制御部40は、係止バー部材と咥え尻側端部7bとの係合が解除された後に、前進していた刷版着脱操作機構30a〜30dを版胴6から後退させるよう構成されている(図11(b)参照)。また、印刷制御部40は、刷版着脱操作機構30a〜30dが後退した後に、作業者が刷版装着溝6bの咥え側エッジ部から刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを取り外すことが可能となる位置(咥え取り外し位置)に到達するまで版胴6を逆方向に回転させるよう構成されている(図11(c)及び図11(d)参照)。さらに、印刷制御部40は、版胴6が咥え取り外し位置にて停止した状態において、版替えの対象となる刷版7A〜7Dに対応する刷版押さえ機構20a〜20dを版胴6から後退させるよう構成されている(図11(e)参照)。なお、このとき、版替えの対象とならない刷版7A〜7Dに対応する刷版押さえ機構20a〜20dについては、後退せず、「着」状態が維持される。
印刷制御部40は、以上の構成により、版胴6に対して任意の刷版7A〜7Dを自動で装着及び脱離させる(取り外す)ことが可能に構成されている。
また、印刷制御部40は、図12に示すように、上流システム64からプリセットされた版替え情報(替面情報)と、設定入力部60及び折部制御部62を介して入力された作業者からの実行指示とに基づいて、版替えが必要な刷版7A〜7Dに対応する刷版押さえ機構20a〜20d及び刷版着脱操作機構30a〜30dのみを独立して動作させ、上述した刷版7A〜7Dの取り外し動作を、版替えが必要な刷版7A〜7Dのみに対して自動実行するよう構成されている。
ここで、上流システム64は、CTP(Computer to Plate)サーバ等から取得した情報を印刷パターン毎に登録して、オフセット輪転印刷機の各部に最適な印刷準備データとしてプリセットすることが可能に構成された所謂新聞製作制御システムである。具体的には、上流システム64は、事前に、又は、先行して行われる印刷(前印刷銘柄)の印刷開始時若しくは刷了時に、CTPサーバから次に行われる印刷(次印刷銘柄)の版替え情報を受信すると共に、前印刷銘柄の刷了後に、版替え情報に基づいて、各印刷制御部40に対して刷版7A〜7Dの版替え情報をプリセットするよう構成されている。また、設定入力部60は、例えば、折機に設けられるタッチパネル式の折部グラフィックパネルであり、任意の刷版7A〜7Dを一括で自動的に取り外すための一括版外し画面(図示せず)を含む種々の操作画面を表示可能に構成されている。一括版外し画面は、版外しを実行する版胴6を選択可能に構成されており、また、選択した版胴6に対する版外しを実行するための実行ボタンが設けられている。なお、設定入力部60は、折部グラフィックパネルに限定されず、例えば印刷ユニット2a,2bに設けられる印刷部グラフィックパネル等であるとしても良い。また、折部制御部62は、本実施形態ではPLCであるが、これに限定されるものではない。
このように構成された刷版自動着脱装置10によれば、上流システム64からプリセットされた版替え情報を利用して、設定入力部60を介した遠隔操作によって、版胴6毎に、4つの刷版7A〜7Dのうち版替えが必要な刷版のみを各刷版押さえ機構20a〜20d及び各刷版着脱操作機構30a〜30dによって自動で取り外すことが可能となる。これにより、作業者が設定入力部60による操作を終えてから各印刷ユニット2a,2bに移動する間に刷版の自動取り外しが並行して実行され、各印刷ユニット2a,2bに到着した作業者が直ちに版替え作業に着手することが可能となるため、作業効率の向上及び作業時間の短縮を図ることができる。また、版替えが必要な刷版を一見して識別することが可能となるため、版替えに関する人為的なミスを低減させることができる。さらに、版替えが不要な刷版については、強固な装着状態を維持することが可能となることから、版胴6に対する刷版7A〜7Dの密着性を保つことが可能となる。
ここで、印刷制御部40における版胴6の回転制御について、図13を用いて説明する。まず、作業者による操作部3の操作が行われるか、又は、設定入力部60からの実行指示により、印刷制御部40は、版替えの対象となる版胴6について、各印刷ユニット2a,2b全体との連動制御から単動制御に切り替えた上で、版胴6を緩動速度(クローリング速度)v1にて回転させる。次に、印刷制御部40は、版胴6が所定の停止位置手前のある一定の位置に接近したことを回転位置検出器により検出した際に、版胴6を停止寸前速度v2に一旦減速させ、その速度をしばらく保った後に版胴6を停止させる。このような印刷制御部40によれば、版胴6を緩動速度v1から一気に減速して停止させるのではなく、停止寸前速度v2に一旦減速させ、その速度をしばらく保った後に版胴6を停止させることにより、慣性モーメントの影響による版胴6の停止位置のばらつきを最小限にすることができるため、版胴6を所定の各停止位置に正確に停止させることが可能となる。これにより、刷版自動着脱装置10を正常に作動させることが可能となる。
次に、本実施形態に係る刷版自動着脱装置10を用いて刷版7A〜7Dを版胴6に自動で装着する方法について、図8及び図9を用いて説明し、版胴6から刷版7A〜7Dを自動で取り外す方法について、図10及び図11を用いて説明する。なお、図8〜図11においては、刷版押さえ機構20a、刷版着脱操作機構30a及び刷版7Aのみを図示しているが、刷版押さえ機構20b〜20d、刷版着脱操作機構30b〜30d及び刷版7B〜7Dにおいても同様である。
まず、刷版自動着脱装置10の作動に先立ち、作業者によって、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを係止させる作業が行われる(版掛準備工程)。具体的には、作業者によって操作部3の版掛位置釦が押下されることで、図8(a)〜図8(d)に示すように、版胴6が版掛位置(刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを係止させることが可能となる位置)まで順方向に回転する。そして、版胴6が版掛位置において停止した状態において、作業者によって、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aが係止される。なお、図8(a)は、版掛位置に向けて版胴6が順方向に回転している状態における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図8(b)は、同状態における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。また、図8(c)は、版掛位置において刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aが係止された状態における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図8(d)は、同状態における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
次に、作業者によって版掛準備釦が押下されることで、図9(a)に示すように、「脱」状態となっている刷版押さえ機構20a〜20dが版胴6に対して前進し、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付ける(刷版押さえ機構前進工程)。なお、図9(a)は、刷版押さえ機構前進工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図9(b)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
次に、作業者によって版掛釦が押下されることで、図9(c)及び図9(d)に示すように、版胴6が締め付け位置(操作レバー54の先端部がレバー押圧部材38の突出部と整合する位置)まで順方向に略1回転する(版掛工程)。そして、このように刷版押さえ機構20a〜20dが版胴6に対して前進した状態において版胴6が略1回転することにより、図5(a)〜図5(c)に示すように、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7A〜7Dを版胴6に対して均一に押さえ付けた状態で、版胴6の周面に刷版7A〜7Dが巻き付けられると共に、中央押さえコロ部材28aによって刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bが刷版装着溝6bに押し込まれ、咥え尻側端部7bの切欠き部がレジスターピンに嵌合される。なお、図9(c)は、版掛工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図9(d)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
版胴6が締め付け位置にて停止した後に、図9(f)に示すように、刷版着脱操作機構30a〜30dが版胴6に対して前進し、レバー押圧部材38の突出部によって版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の先端部が押し下げられる(版装着工程)。これにより、対応する角変位軸が締めつけ方向に回転し、刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bが版胴6の内部に引き込まれることで、版胴6の周面に刷版7A〜7Dが装着される。なお、図9(e)は、版装着工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図9(f)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
版胴6に対する刷版7A〜7Dの装着が完了した後に、図9(g)及び図9(h)に示すように、刷版押さえ機構20a〜20d及び刷版着脱操作機構30a〜30dが版胴6から後退する(刷版自動着脱装置後退工程)。これにより、刷版7A〜7Dの装着に関する刷版自動着脱装置10の一連の動作が終了する。なお、図9(g)は、刷版自動着脱装置後退工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図9(h)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
所定の印刷が完了した後に、作業者によって版取外釦が押下されるか、設定入力部60を介して実行指示が出力されることで、版替えの対象となる刷版7A〜7Dのみを版胴6から自動で取り外す処理が実行される。具体的には、まず、図10(a)及び図10(b)に示すように、版胴6が咥え尻取り外し位置(操作レバー54の基端部がレバー押圧部材38の突出部と整合する位置)に到達するまで順方向に回転する。なお、図10(a)は、咥え尻取り外し位置に向けて版胴6が順方向に回転している状態における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図10(b)は、同状態における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
版胴6が咥え尻取り外し位置にて停止した後に、図10(c)に示すように、刷版自動着脱装置10の刷版押さえ機構20a〜20dが版胴6に対して前進し、複数の押さえコロ部材28a,28bによって版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付ける(刷版押さえ機構前進工程)。なお、図10(c)は、刷版押さえ機構前進工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図10(d)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
刷版押さえ機構20a〜20dが前進した後に、図10(f)に示すように、版替えの対象となる刷版7A〜7Dに対応する刷版着脱操作機構30a〜30dのみが版胴6に対して前進し、レバー押圧部材38の突出部によって版胴6の刷版締め付け機構50の操作レバー54の基端部が押し下げられる(ロック解除工程)。これにより、操作レバー54のロックが解除され、対応する角変位軸が締めつけ方向とは反対の方向に回転することで、係止バー部材と版替えの対象となる刷版7A〜7Dの咥え尻側端部7bとの係合が解除される。なお、図10(e)は、ロック解除工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図10(f)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
係止バー部材と咥え尻側端部7bとの係合が解除された後に、図11(b)に示すように、前進していた刷版着脱操作機構30a〜30dが版胴6から後退する(刷版着脱操作機構後退工程)。また、刷版着脱操作機構30a〜30dが後退した後に、図11(c)及び図11(d)に示すように、版胴6が咥え取り外し位置(刷版装着溝6bのエッジ部から刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを取り外すことが可能となる位置)に到達するまで逆方向に回転する(逆方向回転工程)。そして、版胴6が咥え取り外し位置にて停止した状態において、版替えの対象となる刷版7A〜7Dに対応する刷版押さえ機構20a〜20dのみが版胴6から後退する(刷版押さえ機構後退工程)。これにより、作業者が刷版装着溝6bの咥え側エッジ部から版替えの対象となる刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを取り外すことが可能となり、刷版7A〜7Dの取り外しに関する刷版自動着脱装置10の一連の動作が終了する。なお、図11(a)は、刷版着脱操作機構後退工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図11(b)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。また、図11(c)は、逆方向回転工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図11(d)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。さらに、図11(e)は、刷版押さえ機構後退工程における刷版押さえ機構20a〜20dを示し、図11(f)は、同工程における刷版着脱操作機構30a〜30dを示している。
以上説明したとおり、本実施形態に係る刷版自動着脱装置10は、軸方向に沿って延びる刷版装着溝6bを有する版胴6に対して複数の刷版7A〜7Dを着脱させる刷版自動着脱装置10であって、版胴6の周面に対して互いに独立して進退可能に構成された複数の刷版押さえ機構20a〜20dを備え、複数の刷版押さえ機構20a〜20dは、それぞれ、版胴6の軸方向と平行な回転軸を中心として版胴6の周方向に沿って回転可能に構成され、かつ、版胴6の周面に向けて前進した前進位置において版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付け可能に構成された複数の押さえコロ部材28a,28bを有しており、複数の刷版押さえ機構20a〜20dは、版胴6に対する刷版7A〜7Dの装着時及び取り外し時において、互いに独立して、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aが係止された状態で回転する版胴6に対して、複数の押さえコロ部材28a,28bによって刷版7A〜7Dを押し付けるよう構成されている。
このような刷版自動着脱装置10によれば、複数の刷版押さえ機構20a〜20dがそれぞれ独立して動作可能に構成されていることにより、刷版押さえ機構毎に刷版の装着及び取り外し作業を実行することが可能となるため、作業員の作業負担を最小限に抑えつつ、版胴6に対する刷版7A〜7Dの装着精度を向上させることが可能となる。すなわち、例えば刷版押さえ機構20a〜20dを刷版7A〜7Dと1対1となるよう設けた場合には、1頁ずつ独立して刷版7A〜7Dの装着作業を実行することが可能となるため、刷版7A〜7Dの咥え側端部7aと版胴6の咥え側エッジ部とが確実に密着した最適な状態で、全ての刷版7A〜7Dを版胴6に装着させることができる。また、版替えが必要な刷版7A〜7Dのみを自動で取り外すことが可能となるため、版替えに関する人為的なミスを低減させることができると共に、版替えが不要な刷版については装着状態を維持し、版胴6に対する刷版7A〜7Dの密着性を保つことが可能となる。さらに、複数の押さえコロ部材28a,28bによって均一な押さえ付け力で版胴6の周面に刷版7A〜7Dを押さえ付けることが可能となるため、刷版7A〜7Dの自動装着時においては、各刷版7A〜7Dを版胴6の周方向に対して真っすぐ巻き付けることが可能となり、また、刷版7A〜7Dの自動取り外し時においては、各刷版7A〜7Dのばたつきを抑制することが可能となる。
また、特許文献1の刷版自動装着装置は、水着けローラー120を刷版110に圧接させるものであることから、刷版110に意図せぬ汚れが付着するおそれがあるという問題がある。これに対し、刷版自動着脱装置10は、特許文献1の刷版自動装着装置のような水着けローラー120ではなく、独立して動作可能な複数の刷版押さえ機構20a〜20dによって刷版7A〜7Dを押さえ付けるものであるから、このような問題が生じないという利点がある。
さらに、本実施形態に係る刷版自動着脱装置10は、上述したとおり、プリセットされた版替え情報に基づいて、版替えが必要な刷版7A〜7Dに対応する刷版押さえ機構20a〜20dのみが独立して動作するよう構成されている。このように構成された刷版自動着脱装置10によれば、版替えスケジュールに沿って、版替えが必要な刷版7A〜7Dのみを自動で取り外すことが可能となるため、版替えに関する人為的なミスを更に低減させることができる。
また、本実施形態に係る刷版自動着脱装置10は、上述したとおり、刷版押さえ機構20a〜20dが、刷版装着溝6bに刷版7A〜7Dを係止させることが可能な版掛位置に版胴6が位置する状態における、版胴6の刷版装着溝6bと整合する位置に設けられている。このように構成された刷版自動着脱装置10によれば、咥え側端部7aが版胴6の咥え側エッジ部に係止され、作業者の手でサポートされた状態の刷版7A〜7Dを、刷版装着溝6bの近傍において刷版押さえ機構20a〜20dによって押さえ付けることが可能となるため、刷版7A〜7Dの咥え側端部7aと版胴6の咥え側エッジ部との高い密着性を維持した状態で刷版7A〜7Dの装着を実行することが可能となる。
さらに、本実施形態に係る刷版自動着脱装置10は、刷版締め付け機構50の操作レバー54毎に設けられ、対応する操作レバー54を他の操作レバー54から独立して操作可能な刷版着脱操作機構30a〜30dを備えている。このような刷版自動着脱装置10によれば、版胴6に対する刷版7A〜7Dの巻き付け及び刷版装着溝6b内への咥え尻側端部7bの挿入に加え、刷版締め付け機構50による刷版7A〜7Dの締め付け及び該締め付けの解除も自動で行うことが可能となる。すなわち、本実施形態に係る刷版自動着脱装置10によれば、刷版装着溝6bの咥え側エッジ部に刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを引っ掛ける作業及び刷版装着溝6bの咥え側エッジ部から刷版7A〜7Dの咥え側端部7aを取り外す作業以外の作業について、全て自動で行うことが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態における説明では、版胴6が、所謂4(W)×1(L)型の版胴であるものとして説明したが、これに限定されず、例えば所謂4(W)×2(L)型の版胴等、種々の版胴を用いることが可能である。また、刷版7A〜7Dが、新聞1頁に相当する大きさを有し、版胴6の軸方向に沿って4枚並べて装着されるものとして説明したが、これに限定されず、例えば新聞2頁に相当する大きさを有する刷版等、種々の刷版を用いることが可能である。
また、刷版自動着脱装置10は、上述した実施形態に係る構成に限定されず、版胴6の周面に対して互いに独立して進退可能に構成された複数の刷版押さえ機構20a〜20dを備える構成であれば、種々の構成を採用することが可能である。
さらに、上述した実施形態では、刷版押さえ機構20a〜20dが刷版7A〜7Dと1対1となるよう設けられるものとして説明したが、これに限定されず、例えば、複数(例えば2つ)の刷版に対して1つの刷版押さえ機構が設けられる構成や、1つの刷版に対して複数(例えば2つ)の刷版押さえ機構が設けられる構成であっても良い。
上述した実施形態では、版取外釦が押下された際、又は、設定入力部60から実行指示を受け付けた際に、版胴6及び刷版自動着脱装置10に版外し動作を実行させるものとして説明したが、これに限定されず、印刷作業の完了時に、プリセットされた版替え情報に基づいて版胴6及び刷版自動着脱装置10が自動で作動し、版替えの対象となる刷版7A〜7Dを版胴6から取り外す処理が実行される構成としても良いし、印刷作業の完了時に全ての刷版7A〜7Dが自動で取り外される構成としても良い。
上記のような変形例が本発明の範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。