本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る板状ワークの分割方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る板状ワークの分割方法で用いられる切削装置の一部の構成を示す図である。図2は、実施形態1に係る板状ワークの分割方法の加工対象と図1に示された切削装置のチャックテーブルとを示す斜視図である。図3は、図2に示されたチャックテーブルの要部の断面図である。図4は、図2に示されたチャックテーブルがパッケージ基板を保持した状態の要部を示す断面図である。図5は、図1に示された切削装置の切削ブレードがパッケージ基板を切削する状態の要部を示す断面図である。
実施形態1に係る板状ワークの分割方法は、図1に示す切削装置1を用いて、図2に示す板状ワークであるパッケージ基板200を加工する方法である。
実施形態1に係る板状ワークの分割方法の加工対象のパッケージ基板200は、図1及び図2に示すように、平面形状が矩形の平板状に形成されている。パッケージ基板200は、電極板201を備え、電極板201の表面202に複数の分割予定ライン203が格子状に形成されている。パッケージ基板200は、複数の分割予定ライン203によって区画された複数の領域を備え、これらの領域それぞれにデバイスであるCSP(Chip Size Package)204が配置されている。また、パッケージ基板200は、分割予定ライン203にモールド樹脂205が充填されている。
このように、実施形態1において、板状ワークは、分割予定ライン203にモールド樹脂205が充填された所謂パッケージ基板200であり、デバイスであるCSP204は、個々にパッケージされたパッケージデバイスである。前述したように構成されたパッケージ基板200は、図1に示す切削装置1によって、分割予定ライン203に沿って切断され、複数のCSP204に分割される。また、実施形態1において、パッケージ基板200は、電極板201の各隅部に位置決め用の孔210が貫通している。
次に、パッケージ基板200をCSP204に分割する切削装置1を説明する。切削装置1は、図1に示すように、パッケージ基板200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板200の分割予定ライン203を切断する切削手段である切削ユニット20と、制御装置100と、を備える。
チャックテーブル10は、図1及び図2に示すように、矩形状に形成され、かつパッケージ基板200を保持する保持面11を備える。保持面11は、切削ユニット20の切削ブレード21を逃がすための切削ブレード21の逃げ溝12と、パッケージ基板200及びCSP204を吸引するための複数の吸引孔13とを少なくとも備える。逃げ溝12は、図3に示すように、保持面11から凹に形成され、分割予定ライン203に対応する位置に設けられている。実施形態1において、逃げ溝12は、保持面11上に重ねられるパッケージ基板200の分割予定ライン203に重なる位置に設けられて、保持面11上に格子状に配置されている。逃げ溝12は、切削ブレード21がパッケージ基板200を個々のCSP204に分割する際に、切削ブレード21の刃先が内側に侵入する。少なくとも逃げ溝12の深さ301は、チャックテーブル10の種類ごとに異なる場合がある。
吸引孔13は、図2に示すように、保持面11に開口した孔であり、CSP204に対応する位置に設けられている。吸引孔13は、保持面11上に重ねられるパッケージ基板200のCSP204に重なる位置に設けられて、保持面11の逃げ溝12で区画された領域に形成されている。また、チャックテーブル10は、図3に示すように、複数の吸引孔13と例えば真空ポンプである吸引源14とを連通する吸引経路15と、各隅部に設けられた位置決め用の貫通孔16と、各隅部に設けられかつパッケージ基板200の孔210内に侵入してパッケージ基板200を位置決めする位置決め用のピン17とを備える。
また、チャックテーブル10は、図示しない加工送りユニットによりX軸方向に移動自在で図示しない回転駆動源によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられた治具ベース30上に設置される。チャックテーブル10は、治具ベース30の位置決めピン31が貫通孔16内に侵入して、治具ベース30上に設置されるとともに、吸引経路15が治具ベース30に設けられた孔32を通して吸引源14に連通される。チャックテーブル10は、治具ベース30上に設置され、保持面11上に載置されたパッケージ基板200の孔210内にピン17が侵入し、吸引孔13が吸引源14により吸引されることで、図4に示すように、パッケージ基板200を吸引、保持する。また、チャックテーブル10は、治具ベース30から着脱自在であり、切削装置1は、複数種のチャックテーブル10のうち切削するパッケージ基板200の品番に応じたチャックテーブル10が選択されて治具ベース30に設置される。
切削ユニット20は、パッケージ基板200を切削するものである。切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板200を切削する切削ブレード21と、切削ブレード21を装着する図示しないスピンドルとを備える。
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドルは、切削ブレード21を回転させることでパッケージ基板200を切削する。スピンドルは、スピンドルハウジング22内に収容されている。切削ユニット20のスピンドル及び切削ブレード21の軸心は、X軸方向と直交するY軸方向と平行に設定されている。
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板200に対して、図示しない割り出し送りユニットによりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、図示しない切り込み送りユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、割り出し送りユニット及び切り込み送りユニットにより、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。切削ユニット20は、割り出し送りユニット及び切り込み送りユニットによりY軸方向及びZ軸方向に移動されることによって、加工送りユニットによりX軸方向に移動されるチャックテーブル10に保持されたパッケージ基板200の分割予定ライン203を切削して、パッケージ基板200を個々のCSP204に分割する。
実施形態1において、切削ユニット20は、パッケージ基板200の分割予定ライン203を切削してパッケージ基板200を個々のCSP204に分割する際に、図5に示すように、切削ブレード21の刃先を逃げ溝12内に侵入させる。なお、本明細書は、切削中の保持面11と逃げ溝12内に侵入した切削ブレード21のZ軸方向の距離を、以下、逃げ溝12への切削ブレード21の切り込み深さ302と記す。
また、切削装置1は、X軸方向位置検出ユニット40と、Y軸方向位置検出ユニット50と、Z軸方向位置検出ユニット60と、検出手段である撮像ユニット70とを備える。
X軸方向位置検出ユニット40は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。Y軸方向位置検出ユニット50は、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。Z軸方向位置検出ユニット60は、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。実施形態1において、X軸方向位置検出ユニット40及びY軸方向位置検出ユニット50は、X軸方向又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成されるが、これらに限定されない。また、実施形態1において、Z軸方向位置検出ユニット60は、切削ユニット20をZ軸方向に移動させる切り込み送りユニットの図示しないパルスモータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するが、これに限定されない。
撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板200を撮像するものであり、切削ユニット20とX軸方向に並列する位置に配設されている。実施形態1では、撮像ユニット70は、スピンドルハウジング22に取り付けられて、切削ユニット20と一体にY軸方向及びZ軸方向に移動する。撮像ユニット70は、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板200を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成される。
また、撮像ユニット70は、チャックテーブル10の逃げ溝12の位置及び幅及び深さ301を検出する検出タイミングにおいて、治具ベース30に設置されたチャックテーブル10の保持面11をCCDカメラにより撮像して、逃げ溝12の位置及び幅及び深さ301を検出する。なお、実施形態1において、検出タイミングは、治具ベース30に設置するチャックテーブル10の種類を変更した後の最初の一枚目のパッケージ基板200を切削する前と、切削ユニット20で切削するパッケージ基板200の種類を変更した後の最初の一枚目のパッケージ基板200を切削する前とであるが、本発明では、これらに限定されない。
制御装置100は、切削装置1を構成する上述した各構成要素をそれぞれ制御するものである。即ち、切削装置1は、パッケージ基板200に対する切削動作を切削装置1に実行させるものである。制御装置100は、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。また、制御装置100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット110や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニット111と接続されている。入力ユニット111は、表示ユニット110に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
制御装置100は、図1に示すように、記憶部120と、判断部121とを備える。記憶部120は、撮像ユニット70が検出したチャックテーブル10の逃げ溝12の位置、幅及び深さ301と、加工内容情報とを少なくとも記憶している。実施形態1において、加工内容情報は、少なくとも逃げ溝12への切削ブレード21の切り込み深さ302と、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切り込み深さ302との差分303(一例を図5に示す)についてのしきい値304とを含む。
しきい値304は、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削するか否かを判断するための値である。しきい値304は、0μmを超える値であって、切削ブレード21が逃げ溝12の底面18に切り込むことを防ぐための値である。即ち、実施形態1において、しきい値304は、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切り込み深さ302との差分303が図5に示すように当該しきい値304を超えていると、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを許容するための値である。しきい値304は、前述した差分303が当該しきい値304以下であると、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを禁止するための値である。しきい値304及び切り込み深さ302は、オペレータが入力ユニット111を操作することなどによって、記憶部120に記憶される。
判断部121は、検出タイミングにおいて、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切削ブレード21の切り込み深さ302との差分303が記憶部120が記憶したしきい値304を超えるか否かを判断するものである。具体的には、判断部121は、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切削ブレード21の切り込み深さ302との差分303を算出し、差分303が記憶部120が記憶したしきい値304以下である場合は、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを禁止すると判断する。
判断部121は、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを禁止すると判断すると、切削装置1の制御装置100が、図1に示す報知ユニット112にエラー信号を発信して、報知ユニット112が光と音との少なくとも一方を報知する。また、判断部121は、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切削ブレード21の切り込み深さ302との差分303を算出し、差分303が記憶部120が記憶したしきい値304を超えている場合には、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを許容する。
次に、実施形態1に係る板状ワークの分割方法、即ち切削装置1の加工動作を説明する。図6は、実施形態1に係る板状ワークの分割方法を示すフローチャートである。
板状ワークの分割方法(以下、単に分割方法と記す)は、切削装置1によって板状ワークであるパッケージ基板200を個々のCSP204に分割する分割方法である。分割方法は、図6に示すように、しきい値設定ステップST2と、加工条件設定ステップST3と、逃げ溝検出ステップST4と、判断ステップST5と、保持ステップST6と、切削ステップST7とを備える。まず、分割方法では、切削装置1のオペレータが、治具ベース30上に設置されたチャックテーブル10の逃げ溝12の深さ301を検出する検出タイミングであるか否かを判断する(ステップST1)。分割方法では、オペレータが、治具ベース30上に設置されたチャックテーブル10の逃げ溝12の深さ301を検出する検出タイミングであると判断する(ステップST1:Yes)と、しきい値設定ステップST2に進む。
しきい値設定ステップST2は、切削ブレード21が逃げ溝12の底面18に切り込むことを防ぐため、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切り込み深さ302との差分303についてのしきい値304を設定するステップである。しきい値設定ステップST2では、オペレータが、入力ユニット111を操作して、しきい値304を制御装置100に入力する。しきい値設定ステップST2では、制御装置100がしきい値304の入力を受け付けると、入力されたしきい値304を記憶部120に記憶する。
加工条件設定ステップST3は、切り込み深さ302を設定するステップである。加工条件設定ステップST3では、オペレータが、入力ユニット111を操作して、切り込み深さ302を制御装置100に入力する。加工条件設定ステップST3では、制御装置100が切り込み深さ302の入力を受け付けると、入力された切り込み深さ302を記憶部120に記憶する。また、実施形態1において、加工条件設定ステップST3では、オペレータが、入力ユニット111を操作して、しきい値304及び切り込み深さ302を除く加工内容情報を制御装置100に入力し、制御装置100が受け付けた加工内容情報を記憶部120に記憶する。分割方法は、その後、オペレータから逃げ溝検出ステップST4の開始指示があった場合に、切削装置1の制御装置100により逃げ溝検出ステップST4を実施する。
逃げ溝検出ステップST4は、治具ベース30に設置されたチャックテーブル10の逃げ溝12の位置及び幅及び深さ301を検出して、制御装置100の記憶部120に記憶させるステップである。逃げ溝検出ステップST4では、制御装置100は、加工送りユニットにより撮像ユニット70の下方にチャックテーブル10の逃げ溝12を位置付けて、撮像ユニット70に逃げ溝12の周辺を撮像させる。具体的には、逃げ溝検出ステップST4では、制御装置100は、撮像ユニット70の焦点までの距離を予め定められた所定の距離に設定した状態で、切り込み送りユニットに撮像ユニット70のZ軸方向の位置を調整させて、撮像ユニット70の焦点を保持面11に一致させて逃げ溝12の周辺を撮像させる。逃げ溝検出ステップST4では、制御装置100は、撮像ユニット70の焦点を保持面11に一致させて逃げ溝12の周辺を撮像した画像とX軸方向位置検出ユニット40及びY軸方向位置検出ユニット50の検出結果等から逃げ溝12の位置及び幅を算出し、記憶部120に記憶させるとともに、Z軸方向位置検出ユニット60の検出結果等から保持面11のZ軸方向の位置を算出して、少なくとも一時的に記憶する。
逃げ溝検出ステップST4では、制御装置100は、撮像ユニット70の焦点までの距離を予め定められた所定の距離に維持した状態で、切り込み送りユニットに撮像ユニット70のZ軸方向の位置を調整させて、撮像ユニット70の焦点を逃げ溝12の底面18に一致させて逃げ溝12の周辺を撮像させる。逃げ溝検出ステップST4では、制御装置100は、Z軸方向位置検出ユニット60の検出結果等から逃げ溝12の底面18のZ軸方向の位置を算出して、保持面11のZ軸方向の位置と逃げ溝12の底面18のZ軸方向の位置とから逃げ溝12の深さ301を算出し、記憶部120に記憶させる。制御装置100は、逃げ溝12の深さ301を記憶部120に記憶した後、判断ステップST5を実施する。
なお、実施形態1では、分割方法は、しきい値設定ステップST2と加工条件設定ステップST3と逃げ溝検出ステップST4とを順に実施したが、本発明では、判断ステップST5の前にしきい値設定ステップST2と加工条件設定ステップST3と逃げ溝検出ステップST4とを実施すれば、しきい値設定ステップST2と加工条件設定ステップST3と逃げ溝検出ステップST4とを実施する順番はどのような順番でも良い。また、本発明では、逃げ溝検出ステップST4において検出する逃げ溝12の位置、幅及び深さの数、即ち、逃げ溝検出ステップST4において撮像ユニット70が撮像するパッケージ基板200の箇所の数は、チャックテーブル10自体の製造時の寸法精度、及び求められるパッケージ基板200の加工品質によって適宜選択される。
判断ステップST5は、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切削ブレード21の切り込み深さ302との差分303がしきい値304を超えるか判断するステップである。判断ステップST5では、制御装置100の判断部121が記憶部120に記憶されている逃げ溝12の深さ301と切削ブレード21の切り込み深さ302としきい値304とを参照して、逃げ溝12の深さ301と切り込み深さ302との差分303を算出し、算出した差分303がしきい値304を超えているか否かを判定する。
制御装置100の判断部121が算出した差分303がしきい値304以下であると判定した場合(判断ステップST5:No)、制御装置100は、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを禁止すると判断する。制御装置100は、報知ユニット112にエラー信号を発信して、報知ユニット112が光と音との少なくとも一方により報知(ステップST8)して、加工条件設定ステップST3に戻る。戻った加工条件設定ステップST3では、オペレータが入力ユニット111を操作して、再度、切り込み深さ302等を入力する。
分割方法は、オペレータが治具ベース30上に設置されたチャックテーブル10の逃げ溝12の深さ301を検出する検出タイミングではないと判断した(ステップST1:No)場合、又は制御装置100の判断部121が算出した差分303がしきい値304を超えていると判定する(判断ステップST5:Yes)と、制御装置100は、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを許容すると判断して保持ステップST6に進む。
保持ステップST6は、チャックテーブル10にパッケージ基板200を保持するステップである。保持ステップST6では、制御装置100は、加工送りユニットにチャックテーブル10を切削ユニット20の下方から離れた位置までX軸方向に移動させて、チャックテーブル10のX軸方向の移動を停止する。保持ステップST6では、オペレータによりピン17と孔210とによりパッケージ基板200が位置決めされて、チャックテーブル10の保持面11上にパッケージ基板200が載置される。保持ステップST6では、制御装置100は、オペレータから切削ステップST7の開始指示が入力されると、吸引源14を駆動させて、保持面11上にパッケージ基板200を吸引保持して、切削ステップST7に進む。
切削ステップST7は、切削ブレード21でパッケージ基板200を切削するステップである。切削ステップST7では、制御装置100は、加工送りユニットによりチャックテーブル10に保持されたパッケージ基板200を撮像ユニット70の下方に位置付けて、撮像ユニット70にパッケージ基板200を撮像させて、切削ブレード21とパッケージ基板200との位置合わせを行うアライメントを実施する。切削ステップST7では、制御装置100は、アライメント結果にしたがって、チャックテーブル10を加工送りユニットによりX軸方向に移動させ、切削ユニット20を割り出し送りユニットにY軸方向に移動させるとともに、切削ユニット20を切り込み送りユニットにZ軸方向に移動させて、パッケージ基板200の各分割予定ライン203を切削する。分割方法は、チャックテーブル10に保持されたパッケージ基板200の全ての分割予定ライン203を切削すると終了する。
前述した制御装置100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御装置100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。また、制御装置100の記憶部120の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行し、入力された加工内容情報等を記憶装置に記憶することにより実現される。また、制御装置100の判断部121の機能は、演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
以上のように、実施形態1に係る分割方法は、判断ステップST5において、撮像ユニット70が検出したチャックテーブル10の逃げ溝12の深さ301と、加工条件設定ステップST3で設定された切り込み深さ302との差分303が、しきい値設定ステップST2において設定されたしきい値304を超えるか否かを判断する。実施形態1に係る分割方法は、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切り込み深さ302との差分303がしきい値304以下であると、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを禁止することで、逃げ溝12への切削ブレード21の切り込みを抑制することが出来る。その結果、実施形態1に係る分割方法は、治具ベース30上に設置されるチャックテーブル10の種類が頻繁に変更され、切削するパッケージ基板200の種類が頻繁に変更される切削装置であっても、チャックテーブル10の逃げ溝12への切削ブレード21の切り込みを抑制することが出来るという効果を奏する。
また、実施形態1に係る分割方法は、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切り込み深さ302との差分303がしきい値304以下であると、制御装置100が報知ユニット112にエラー信号を発信して、報知ユニット112が光と音との少なくとも一方により報知する。その結果、分割方法は、オペレータが、入力した加工内容情報では切削ブレード21が逃げ溝12の底面18に切り込んでしまう虞があることを認識することができる。
また、実施形態1に係る分割方法は、撮像ユニット70が検出した逃げ溝12の深さ301と切り込み深さ302との差分303がしきい値304以下であると、制御装置100が報知ユニット112にエラー信号を発信して、加工条件設定ステップST3に戻るので、オペレータが切り込み深さ302などを修正して入力することができる。
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る板状ワークの分割方法を図面に基いて説明する。図7は、実施形態2に係る板状ワークの分割方法を示すフローチャートである。図7は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
実施形態2に係る板状ワークの分割方法(以下、単に分割方法と記す)は、図7に示すように、制御装置100の判断部121が差分303がしきい値304以下であると判定した場合(判断ステップST5:No)、制御装置100は、記憶部120が記憶した切り込み深さ302を予め定められた所定値減らして、新たな切り込み深さ302として切削装置1の制御装置100の記憶部120に記憶させる加工条件再設定ステップST9を実施して、判断ステップST5に戻ること以外、実施形態1に係る分割方法と同じである。
実施形態2に係る分割方法は、実施形態1と同様に、判断ステップST5において逃げ溝12の深さ301と切り込み深さ302との差分303がしきい値304を超えるか否かを判断するので、差分303がしきい値304以下であると、治具ベース30に保持された種類のチャックテーブル10でパッケージ基板200を切削することを禁止することで逃げ溝12への切削ブレード21の切り込みを抑制することが出来る。その結果、実施形態2に係る分割方法は、治具ベース30上に設置されるチャックテーブル10の種類が頻繁に変更され、切削するパッケージ基板200の種類が頻繁に変更される切削装置であっても、チャックテーブル10の逃げ溝12への切削ブレード21の切り込みを抑制することが出来るという効果を奏する。
また、実施形態2に係る分割方法は、差分303がしきい値304以下であると、記憶部120が記憶した切り込み深さ302を予め定められた所定値減らして新たな切り込み深さ302として記憶部120に記憶させて、判断ステップST5に戻るので、切削ブレード21が逃げ溝12の底面18を切り込まない値に切り込み深さ302を設定することができる。
〔変形例1〕
本発明の実施形態1及び実施形態2の変形例1に係る板状ワークの分割方法を説明する。変形例1に係る板状ワークの分割方法(以下、単に分割方法と記す)は、板状ワークである円板状のウエーハを円盤状のチャックテーブルを用いて切削すること以外、実施形態1及び実施形態2と同じである。
ウエーハは、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハであり、表面の複数の分割予定ラインによって区画された領域にデバイスが形成されている。円盤状のチャックテーブル10は、ウエーハを保持する保持面が円形に形成され、保持面にウエーハの分割予定ラインに対応した逃げ溝と、逃げ溝で区画された領域に形成された吸引孔と、吸引孔と吸引源とを連通する吸引経路とを備える。
変形例1に係る分割方法は、実施形態1及び実施形態2と同様に、逃げ溝12への切削ブレード21の切り込みを抑制することが出来、治具ベース30上に設置されるチャックテーブル10の種類が頻繁に変更され、切削するウエーハの種類が頻繁に変更される切削装置であっても、チャックテーブル10の逃げ溝12への切削ブレード21の切り込みを抑制することが出来るという効果を奏する。
〔変形例2〕
本発明の実施形態1及び実施形態2の変形例2に係る板状ワークの分割方法を説明する。変形例2に係る板状ワークの分割方法(以下、単に分割方法と記す)は、制御装置100の判断部121が差分303がしきい値304以下であると判定した場合(判断ステップST5:No)、制御装置100が切削装置1の動作を停止すること以外、実施形態1及び実施形態2と同じである。
変形例2に係る分割方法は、実施形態1及び実施形態2と同様に、逃げ溝12への切削ブレード21の切り込みを抑制することが出来、治具ベース30上に設置されるチャックテーブル10の種類が頻繁に変更され、切削するパッケージ基板200の種類が頻繁に変更される切削装置であっても、チャックテーブル10の逃げ溝12への切削ブレード21の切り込みを抑制することが出来るという効果を奏する。
なお、前述した実施形態1、実施形態2、変形例1及び変形例2に係る板状ワークの分割方法によれば、以下の切削装置が得られる。
(付記1)
複数の分割予定ラインによって区画された複数のデバイスが形成された板状ワークの該分割予定ラインに対応する切削ブレードの逃げ溝と、該逃げ溝で区画された領域に形成された複数の吸引孔と、該複数の吸引孔と吸引源とを連通する吸引経路とを少なくとも備えて、該板状ワークを保持するチャックテーブルと、
該切削ブレードを備えた切削手段と、
該逃げ溝の位置及び幅及び深さを検出する検出手段と、
各構成要素を制御する制御装置と、
を少なくとも有する切削装置であって、
前記制御装置は、
該逃げ溝の深さと該逃げ溝への該切削ブレードの切り込み深さとの差分についてのしきい値と、該逃げ溝への該切削ブレードの切り込み深さと、を記憶する記憶部と、
該逃げ溝の深さを検出する検出タイミングにおいて、該検出手段が検出した該逃げ溝の深さと該切削ブレードの切り込み深さとの差分が該しきい値を超えるか判断する判断部とを備えることを特徴とする切削装置。
上記切削装置は、実施形態1等に係る板状ワークの分割方法と同様に、逃げ溝への切削ブレードの切り込みを抑制することが出来、設置されるチャックテーブルの種類が頻繁に変更され、切削する板状ワークの種類が頻繁に変更される切削装置であっても、チャックテーブルの逃げ溝への切削ブレードの切り込みを抑制することが出来るという効果を奏する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。