以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1を示すものである。車両用空調装置1は、例えば自動車の車室内に設けられているインストルメントパネル(図示せず)の内部に収容された状態で車体に取り付けられるようになっている。車両用空調装置1は、図示しないが送風ユニットを備えている。送風ユニットは、車室内の空気と車室外の空気とのうち、一方を選択して導入し、送風ユニットが有する送風機によって送風するように構成されている。送風ユニットは、車幅方向の一方側に配設することができる。
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。また、この実施形態では車両用空調装置1を車両に搭載した状態であると仮定して前後左右を定義する。
(車両用空調装置の概略構造)
図2に示すように、車両用空調装置1は、空調用空気を冷却する冷却用熱交換器2と、空調用空気を加熱する加熱用熱交換器3及び電気ヒータ4と、冷却用熱交換器2により冷却された冷風と加熱用熱交換器3及び電気ヒータ4により加熱された温風との混合比を決定する上側エアミックスダンパ5及び下側エアミックスダンパ6と、冷却用熱交換器2、加熱用熱交換器3、電気ヒータ4及びエアミックスダンパ5、6を収容する空調ケーシング10(図1等に示す)とを備えている。
図1にも示すように、空調ケーシング10は、前後方向の中間部において分割可能に構成されている。空調ケーシング10の前側部分は、上下方向の中間部において分割可能に構成されていて、上側ケーシング構成部材11と、下側ケーシング構成部材12とを有している。空調ケーシング10の後側部分は、左右方向の中間部において分割可能に構成されていて、右側ケーシング構成部材13と、左側ケーシング構成部材14とを有している。上側ケーシング構成部材11、下側ケーシング構成部材12、右側ケーシング構成部材13及び左側ケーシング構成部材14は樹脂材からなるものであり、互いに締結部材等によって締結されて一体化されている。
図2に示すように、上側ケーシング構成部材11及び下側ケーシング構成部材12の内部に冷却用熱交換器2が収容されている。右側ケーシング構成部材13及び左側ケーシング構成部材14の内部に加熱用熱交換器3、電気ヒータ4及びエアミックスダンパ5、6が収容されている。
また、車両用空調装置1は、デフロスタダンパ20、ベントダンパ21、ヒートダンパ22及び後席ベント用ダンパ23を有しており、デフロスタダンパ20、ベントダンパ21、ヒートダンパ22及び後席ベント用ダンパ23は右側ケーシング構成部材13及び左側ケーシング構成部材14の内部に収容されている。デフロスタダンパ20、ベントダンパ21、ヒートダンパ22及び後席ベント用ダンパ23は調和空気の吹出方向を切り替えるための吹出方向切替ダンパである。つまり、車両用空調装置1は、上側エアミックスダンパ5及び下側エアミックスダンパ6によって決定された混合比となるように温風及び冷風を混合して調和空気を生成し、生成された調和空気を、デフロスタダンパ20、ベントダンパ21、ヒートダンパ22及び後席ベント用ダンパ23の動作に応じて車室の各部に供給するように構成されている。
図1等に示すように、空調ケーシング10の上壁部(上部)には、調和空気が吹き出すデフロスタ吹出口25が形成されている。このデフロスタ吹出口25は左右方向に長い形状となっている。デフロスタ吹出口25から吹き出す調和空気は、車両のフロントガラス(図示せず)の内面に向けて供給される。デフロスタ吹出口25には、デフロスタダクト(図示せず)を接続することができる。
空調ケーシング10の上壁部におけるデフロスタ吹出口25よりも後側には、左側ベント吹出口26aと、右側ベント吹出口26bと、センターベント吹出口26cとが形成されている。左側ベント吹出口26aは、空調ケーシング10の左側部分に開口しており、左側ベント吹出口26aから吹き出す調和空気は、前席の左側に着座している乗員の上半身に向けて供給される。右側ベント吹出口26bは、空調ケーシング10の右側部分に開口しており、右側ベント吹出口26bから吹き出す調和空気は、前席の右側に着座している乗員の上半身に向けて供給される。センターベント吹出口26cは、空調ケーシング10の上部における車幅方向中央部、即ち、左側ベント吹出口26aと、右側ベント吹出口26bとの間に開口している。センターベント吹出口26cから吹き出す調和空気は、主に前席に着座している乗員の上半身に向けて供給される。左側ベント吹出口26a、右側ベント吹出口26b及びセンターベント吹出口26cには、ベントダクト(図示せず)を接続することができる。
図2に示すように、空調ケーシング10の後壁部には、上下方向の中間部にヒート吹出口27が形成されている。ヒート吹出口27から吹き出す調和空気は、乗員の足下近傍に供給される。ヒート吹出口27から吹き出す調和空気を前席乗員の足下近傍だけでなく、後席乗員の足下近傍にも供給することができる。ヒート吹出口27には、ヒートダクト(図示せず)を接続することができる。
空調ケーシング10の後壁部におけるヒート吹出口27よりも下側には、後席用吹出口28が形成されている。後席用吹出口28から吹き出す調和空気は、後席に着座している乗員(後席乗員)の例えば上半身に供給される。後席用吹出口28は左右方向に長い形状とされており、空調ケーシング10の左右方向中央部に位置している。後席用吹出口28には、後席近傍まで延びる後席用ダクト(図示せず)を接続することができる。
空調ケーシング10の内部には、冷却用熱交換器2が配置される冷却用熱交換器配置通路30と、温風通路31と、上側冷風通路32と、下側冷風通路33と、デフロスタ通路34と、ベント通路35と、ヒート通路36と、後席用通路37とが形成されている。冷却用熱交換器配置通路30は、図示しない送風機により送風された空調用空気を冷却用熱交換器2に送るための空気通路である。
また、図3に示すように、空調ケーシング10の右側壁部の前部には、空調用空気を導入するための空気導入口24が形成されている。空気導入口24は上下方向に長い形状とされている。空気導入口24には、送風ユニットが接続されている。また、この空気導入口24は、冷却用熱交換器配置通路30と連通している。
冷却用熱交換器配置通路30は、空調ケーシング10の内部において前部に形成されている。この冷却用熱交換器配置通路30の上流端には空気導入口24が連通しており、送風ユニットから送風された空調用空気は全量が冷却用熱交換器配置通路30に導入されるようになっている。冷却用熱交換器配置通路30の縦断面は、空調ケーシング10の上部から下部に亘るとともに、空調ケーシング10の左側から右側に亘っており、広い断面となっている。
冷却用熱交換器配置通路30に配置されている冷却用熱交換器2は、冷凍サイクルの蒸発器(エバポレータ)で構成されている。冷却用熱交換器配置通路30は、空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。冷却用熱交換器配置通路30の上部は上側ケーシング構成部材11に保持される一方、冷却用熱交換器配置通路30の下部は下側ケーシング構成部材12に保持されている。冷却用熱交換器配置通路30には減圧弁(図示せず)を経て減圧された冷媒が流入するようになっており、この冷媒と空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が冷却されるようになっている。空調用空気の冷却時に発生した凝縮水は、下側ケーシング構成部材12に形成されたドレン部(図示せず)から空調ケーシング10の外部に排出されるようになっている。
温風通路31は、加熱用熱交換器3により加熱された温風が流通する通路であり、この実施形態では電気ヒータ4によって加熱された温風も流通するようになっている。温風通路31は、空調ケーシング10の内部において上下方向中間部に形成されており、前後方向に延びている。温風通路31の縦断面は、冷却用熱交換器配置通路30の縦断面よりも狭く設定されている。
温風通路31の上流端は、冷却用熱交換器配置通路30の下流端における上下方向中間部に連通するようになっている。温風通路31には、加熱用熱交換器3及び電気ヒータ4が配置されている。加熱用熱交換器3は、車両に搭載されたエンジン(図示せず)の冷却水が流れるヒータコアで構成されている。加熱用熱交換器3を流れるエンジンの冷却水と空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が加熱されるようになっている。また、電気ヒータ4は、例えば車両のバッテリ(図示せず)等から電力を供給することによって発熱する発熱素子(図示せず)を有しており、この発熱素子が発した熱によって空調用空気が加熱されるようになっている。尚、電気ヒータ4は、省略してもよい。また、加熱用熱交換器3の代わりに、電気ヒータ4を用いてもよいし、冷媒を凝縮する冷媒凝縮器を用いてもよい。また、これら熱源は任意に組み合わせて用いることができ、例えば、冷媒凝縮器と電気ヒータ4とを併用することもできる。電気自動車の場合には、エンジンが無いので、冷媒凝縮器や電気ヒータ4を使用することができる。
上側冷風通路32は、空調ケーシング10の内部において温風通路31の上方に設けられている。上側冷風通路32は、前後方向に延びており、上流端は冷却用熱交換器配置通路30の下流端における上部に連通している。
下側冷風通路33は、空調ケーシング10の内部において温風通路31の下方に設けられている。下側冷風通路33は、前後方向に延びており、上流端は冷却用熱交換器配置通路30の下流端における下部に連通している。下側冷風通路33は、空調ケーシング10の底壁部に沿って後方へ延びた後、上方へ屈曲している。
上側冷風通路32及び下側冷風通路33には、冷却用熱交換器2により冷却された冷風が流通する。上側冷風通路32及び下側冷風通路33を流通した冷風は、温風通路31をバイパスして流れることになる。
デフロスタ通路34は、空調ケーシング10の内部において上側冷風通路32の上方に設けられ、上下方向に延びている。デフロスタ通路34の上流端(下端部)は、上側冷風通路32の上流端近傍に位置している。デフロスタ通路34の下流端(上端部)は、デフロスタ吹出口25に接続されている。
ベント通路35は、空調ケーシング10の内部において上側冷風通路32の上方に設けられ、上下方向に延びている。ベント通路35の上流端(下端部)は、上側冷風通路32の上流端近傍に位置している。ベント通路35の下流端(上端部)は、左側ベント吹出口26aと、右側ベント吹出口26bと、センターベント吹出口26cとに接続されている。
後席用通路37は、空調ケーシング10の下部に設けられており、後席乗員へ調和空気を供給するための通路である。後席用通路37は前後方向に延びている。後席用通路37の上流端(前端部)は、下側冷風通路33の下流端近傍に位置している。後席用通路37の下流端(後端部)は、後席用吹出口28に接続されている。
ヒート通路36は、空調ケーシング10の内部において上側冷風通路32の下方であって、かつ、下側冷風通路33の上方に設けられている。つまり、ヒート通路36は、後席用通路37の上方に設けられている。そして、ヒート通路36は、乗員の足下近傍へ調和空気を供給するためのものである。
空調ケーシング10の内部には、加熱用熱交換器3よりも前側に離れた部分に、上下方向に延びる中間縦壁部10bが形成されている。また、空調ケーシング10の内部には、中間縦壁部10bから上側に離れた部分に、上下方向に延びる上側縦壁部10cが形成されている。さらに、空調ケーシング10の内部には、中間縦壁部10bから下側に離れた部分に、上下方向に延びる下側縦壁部10dが形成されている。
そして、上側縦壁部10cの下端部と中間縦壁部10bの上端部との間には上側開口部10eが形成され、また、下側縦壁部10dの上端部と中間縦壁部10bの下端部との間には下側開口部10fが形成されている。上側エアミックスダンパ5は、上側開口部10e内で動作し、冷却用熱交換器配置通路30から上側冷風通路32に流入する冷風量と、冷却用熱交換器配置通路30から温風通路31の上側に流入する冷風量との比率を変更する。
すなわち、上側エアミックスダンパ5は、左右方向に延びる回動軸5aと、回動軸5aの径方向に延びる板部5bとを有している。回動軸5aは空調ケーシング10の左側壁部及び右側壁部に対して回動可能に支持されている。上側エアミックスダンパ5が回動軸5a周りに上方へいっぱいまで回動すると、冷却用熱交換器配置通路30から上側冷風通路32に流入する冷風量が0となり、冷却用熱交換器配置通路30の冷風は上側開口部10eから温風通路31の上側に流入する。一方、上側エアミックスダンパ5が回動軸5a周りに下方へいっぱいまで回動すると、冷却用熱交換器配置通路30から温風通路31に流入する冷風量が0となり、冷却用熱交換器配置通路30の冷風は上側開口部10eから上側冷風通路32に流入する。
上側エアミックスダンパ5が中間の回動位置にあるときには、冷却用熱交換器配置通路30の冷風は上側開口部10eから上側冷風通路32及び温風通路31の両方に流入する。上側エアミックスダンパ5の回動位置によって上側冷風通路32に流入する冷風量と、温風通路31に流入して加熱されることになる冷風量との比率が変更される。つまり、上側エアミックスダンパ5は、冷却用熱交換器2により冷却された冷風と、加熱用熱交換器3(及び電気ヒータ4)により加熱された温風との混合比を決定するためのものである。
また、下側エアミックスダンパ6は、下側開口部10f内で動作し、冷却用熱交換器配置通路30から下側冷風通路33に流入する冷風量と、冷却用熱交換器配置通路30から温風通路31の下側に流入する冷風量との比率を変更する。
すなわち、下側エアミックスダンパ6は、左右方向に延びる回動軸6aと、回動軸6aの径方向に延びる板部6bとを有している。回動軸6aは空調ケーシング10の左側壁部及び右側壁部に対して回動可能に支持されている。下側エアミックスダンパ6が回動軸6a周りに下方へいっぱいまで回動すると、冷却用熱交換器配置通路30から下側冷風通路33に流入する冷風量が0となり、冷却用熱交換器配置通路30の冷風は下側開口部10fから温風通路31の下側に流入する。一方、下側エアミックスダンパ6が回動軸6a周りに上方へいっぱいまで回動すると、冷却用熱交換器配置通路30から温風通路31に流入する冷風量が0となり、冷却用熱交換器配置通路30の冷風は下側開口部10fから下側冷風通路33に流入する。
下側エアミックスダンパ6が中間の回動位置にあるときには、冷却用熱交換器配置通路30の冷風は下側開口部10fから下側冷風通路33及び温風通路31の両方に流入する。下側エアミックスダンパ6の回動位置によって下側冷風通路33に流入する冷風量と、温風通路31に流入して加熱されることになる冷風量との比率が変更される。つまり、下側エアミックスダンパ6は、冷却用熱交換器2により冷却された冷風と、加熱用熱交換器3(及び電気ヒータ4)により加熱された温風との混合比を決定するためのものである。
デフロスタ通路34には、デフロスタ通路34を開閉するためのデフロスタダンパ20が配設されている。デフロスタダンパ20は、左右方向に延びる回動軸20aと、回動軸20aの径方向に延びる板部20bとを有している。回動軸20aは空調ケーシング10の左側壁部及び右側壁部に対して回動可能に支持されている。デフロスタダンパ20が回動軸20a周りに回動することによってデフロスタ通路34が開閉される。
ベント通路35には、ベント通路35を開閉するためのベントダンパ21が配設されている。ベントダンパ21は、左右方向に延びる回動軸21aと、回動軸21aから径方向に離れた状態で該回動軸21aに支持される板部21bとを有している。回動軸21aは空調ケーシング10の左側壁部及び右側壁部に対して回動可能に支持されている。ベントダンパ21が回動軸21a周りに回動することによってベント通路35が開閉される。
ヒート通路36には、ヒート通路36を開閉するためのヒートダンパ22が配設されている。ヒートダンパ22は、左右方向に延びる回動軸22aと、回動軸22aの径方向に延びる板部22bとを有している。回動軸22aは空調ケーシング10の左側壁部及び右側壁部に対して回動可能に支持されている。ヒートダンパ22が回動軸22a周りに回動することによってヒート通路36が開閉される。
後席用通路37には、後席用通路37を開閉するための後席ベント用ダンパ23が配設されている。後席ベント用ダンパ23は、左右方向に延びる回動軸23aと、回動軸23aから径方向に延びる板部23bとを有している。回動軸23aは空調ケーシング10の左側壁部及び右側壁部に対して回動可能に支持されている。後席ベント用ダンパ23が回動軸23a周りに回動することによって後席用通路37が開閉される。
また、図3に示すように、車両用空調装置1は中間プレート60を備えている。中間プレート60は、空調ケーシング10の内部を左側と右側とに区画するための部材であり、空調ケーシング10の内部において前後方向及び上下方向に延びている。空調ケーシング10の内部において中間プレート60よりも右側の空間は、車室の右側領域に供給する調和空気を生成する空間となり、空調ケーシング10の内部において中間プレート60よりも左側の空間は、車室の左側領域に供給する調和空気を生成する空間となる。つまり、中間プレート60を設けることで、左右独立温度コントロールタイプの車両用空調装置1にすることができる。尚、中間プレート60は省略してもよい。
(空調ケーシングの前側部分の詳細構造)
次に、上記空調ケーシング10の前側部分の構造について詳しく説明する。図3に示すように、空調ケーシング10の前側部分(上側ケーシング構成部材11と下側ケーシング構成部材12とで構成されている部分)の前面には、空調ケーシング10の後側部分(右側ケーシング構成部材13と左側ケーシング構成部材14とで構成されている部分)に接続される接続口10aが形成されている。
すなわち、空調ケーシング10の前側部分は、空気導入口(開口部)24が形成された部分を通る水平な分割面(図2に仮想線Sで示す)により、上側ケーシング構成部材(第1ケーシング構成部材)11と下側ケーシング構成部材(第2ケーシング構成部材)12とに分割されている。この分割面Sは、接続口10aが形成された部分も通るように位置している。分割面Sは仮想面である。尚、図2では仕切板70、上側ケーシング構成部材11及び下側ケーシング構成部材12の形状を単純化している。
空調ケーシング10の前側部分の内部には、冷却用熱交換器配置通路30を仕切るための仕切板70が配設されている。仕切板70は、冷却用熱交換器配置通路30の上下方向中間部に位置付けられており、分割面Sに沿うように、左右方向及び前後方向に延びている。この仕切板70により冷却用熱交換器配置通路30が上側通路30aと下側通路30bとに分けられることになる。
図4〜図6に示すように、上側ケーシング構成部材11は、下方に開放するように形成されている。上側ケーシング構成部材11の後壁部11fには、接続口10aの上側部分を形成する前側切欠部11aが形成されている。上側ケーシング構成部材11の右側壁部には、右側へ延びる上側ダクト構成部11bが下方へ開放するように形成されている。この上側ダクト構成部11bの右端面には、空気導入口24の上側部分を形成する右側切欠部11cが形成されている。また、上側ケーシング構成部材11の左側壁部には、車体に固定される取付脚部7が形成されている。
上側ケーシング構成部材11の前壁部11dの上端面には、下方へ突出する複数のピン部(ストッパ部)11e、11e、…が左右方向に互いに間隔をあけて形成されている。ピン部11e、11e、…は、前壁部11dの左端部近傍及び右端部近傍と、左右方向中間部にも形成されている。また、上側ケーシング構成部材11の後壁部11fの上端面には、下方へ突出するピン部(ストッパ部)11gが形成されている。ピン部11gは、後壁部11fの右端部近傍に形成されている。
また、図9、図10に示すように、下側ケーシング構成部材11は、上方に開放するように形成されている。この下側ケーシング構成部材11の上方への開放部分と、上側ケーシング構成部材11の下方への開放部分とが合わさることによって冷却用熱交換器配置通路30が形成されるようになっている。
下側ケーシング構成部材12の後壁部12fには、接続口10aの下側部分を形成する前側切欠部12aが形成されている。下側ケーシング構成部材12の前側切欠部12aと、上側ケーシング構成部材11の前側切欠部11aとが合わさることによって接続口10aが形成される。下側ケーシング構成部材12の右側壁部には、右側へ延びる下側ダクト構成部12bが上方へ開放するように形成されている。下側ケーシング構成部材12の下側ダクト構成部12bと、上側ケーシング構成部材11の上側ダクト構成部11bとが合わさるようになっている。
下側ダクト構成部12bの右端面には、空気導入口24の下側部分を形成する右側切欠部12cが形成されている。下側ケーシング構成部材12の右側切欠部12cと、上側ケーシング構成部材11の右側切欠部11cとが合わさることによって空気導入口24が形成される。また、下側ケーシング構成部材12の右側には、車体に固定される取付脚部8が形成されている。
下側ケーシング構成部材12の前壁部12dの上端面には、冷却用熱交換器配置通路30側に開放するように前側凹条部12eが形成されている。この前側凹条部12eは、左右方向に長く延びている。上側ケーシング構成部材11と下側ケーシング構成部材12とを組み合わせると、前側凹条部12eによって空調ケーシング10の内面には、冷却用熱交換器配置通路30側に開放する前側溝15(図3、図19及び図20に示す)が左右方向に延びるように形成される。この前側溝15には、仕切板70の前縁部が挿入される。
また、下側ケーシング構成部材12の後壁部12fの上端面には、冷却用熱交換器配置通路30側に開放するように後側凹条部12hが形成されている。この後側凹条部12hは、左右方向に長く延びている。上側ケーシング構成部材11と下側ケーシング構成部材12とを組み合わせると、後側凹条部12hによって空調ケーシング10の内面には、冷却用熱交換器配置通路30側に開放する後側溝16(図19及び図20に示す)が左右方向に延びるように形成される。この後側溝16には、仕切板70の後縁部が挿入される。
仕切板70は、図3に示すように、空調ケーシング10の空気導入口24から空調ケーシング10の前側部分の内部に差し込まれた状態で該空調ケーシング10に取り付けられるようになっている。つまり、空調ケーシング10の空気導入口24は、上側ケーシング構成部材11と下側ケーシング構成部材12とが組み合わされた状態で、仕切板70を空調ケーシング10内部に差し込み可能に形成されている。また、仕切板70は、上側ケーシング構成部材11と下側ケーシング構成部材12とによって厚み方向に挟持されている。
すなわち、図13に示すように、仕切板70の前後方向の寸法は、差し込み方向を基準としたときの先端側(左側)が最も短く設定され、基端側(右側)が最も長く設定されている。仕切板70の前後方向の寸法が最も長い部分を空気導入口24に差し込むことができるように、空気導入口24の開口幅(前後方向の寸法)が、仕切板70の前後方向の最大寸法よりも長めに設定されている。尚、仕切板70は板状であることから、上下方向の寸法は空気導入口24の上下方向の寸法よりも大幅に短い。
仕切板70の前縁部は、空調ケーシング10の内面に沿うように延びている。一方、仕切板70の後縁部は、冷却用熱交換器2の空気流れ方向上流側の面に沿うように延びている。従って、仕切板70よりも上側の空間30aを流れる空調用空気が冷却用熱交換器2の上側を通過し、仕切板70よりも下側の空間30bを流れる空調用空気が冷却用熱交換器2の下側を通過することになる。
仕切板70の前縁部及び左縁部には、上側ケーシング構成部材11の前壁部11dのピン部11eに係合するフック状の前側係合部71、71、…が設けられている。前側係合部71は、左側に開放するように形成されており、ピン部11eが左側から前側係合部71に押し付けられると、前側係合部71の開口幅が拡大するように前側係合部71が弾性変形し、ピン部11eが前側係合部71に完全に挿入されると、前側係合部71の形状が復元してピン部11eが前側係合部71から離脱し難くなる。これにより、前側係合部71がピン部11eに係合した状態になる。また、前側係合部71がピン部11eに係合すると、仕切板70はそれ以上、差し込み方向には移動しなくなる。つまり、ピン部11eは、空調ケーシング10内部へ差し込まれた仕切板70に当接して該仕切板70の差し込み量を所定量にするためのストッパ部である。
また、仕切板70の後縁部の右側には、上側ケーシング構成部材11の後壁部11fのピン部11gに係合するフック状の後側係合部72が設けられている。後側係合部72は、左側に開放するように形成されており、ピン部11gが左側から後側係合部72に押し付けられると、後側係合部72の開口幅が拡大するように後側係合部72が弾性変形し、後側係合部72がピン部11gに係合した状態になる。また、後側係合部72がピン部11gに係合すると、仕切板70はそれ以上、差し込み方向には移動しなくなる。
また、仕切板70には、前側縦板部73と後側縦板部74とが設けられている。前側縦板部73は仕切板70の左端部から右端部まで連続して延びている。後側縦板部74は仕切板70の右端部から左右方向中間部まで延びている。
次に、仕切板70の組み付け方法について説明する。まず、図3に示すように、上側ケーシング構成部材11と下側ケーシング構成部材12とを組み合わせて空調ケーシング10の前側部分を構成しておく。その後、仕切板70を空調ケーシング10の前側部分の右側に位置付けた後、左側へ移動させていき、空気導入口24から空調ケーシング10内部へ差し込む。このとき、空調ケーシング10の前側部分の内面には、前側に前側溝15が形成され、後側に後側溝16が形成されているので、仕切板70の前縁部を前側溝15に挿入し、後縁部を後側溝16に挿入する。前側溝15及び後側溝16は、共に左右方向、即ち、仕切板70の空調ケーシング10内部への差し込み方向に延びているので仕切板70が前側溝15及び後側溝16によって差し込み方向に案内される。
仕切板70の差し込み量が所定量になったら仕切板70の前側係合部71、71、…がピン部11eに当接して係合するとともに、後側係合部72がピン部11gに当接して係合する。これにより、仕切板70が差し込み方向へ移動しなくなるとともに、反差し込み方向(右側)への移動も阻止されて、空調ケーシング10に固定される。
尚、機種によっては仕切板70が不要の場合がある。仕切板70が不要である場合には、上側ケーシング構成部材11と下側ケーシング構成部材12とを組み合わせて空調ケーシング10の前側部分を構成するだけとし、仕切板70を差し込まなければよい。
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、仕切板70が必要な機種であっても必要でない機種であっても、空調ケーシング10自体を作り分ける必要はなく、空調ケーシング10を組み立てた後の工程のみ変えれば済む。よって、生産ラインの編成自由度が向上する。
尚、上記実施形態では、仕切板70を空気導入口24から空調ケーシング10内部へ差し込むようにしているが、これに限らず、空気導入口24以外の開口部を空調ケーシング10に形成し、この開口部から仕切板70を差し込むようにしてもよい。また、仕切板70を差し込むことが可能な開口部の形状は上述した形状に限られるものではなく、例えば水平方向に長い形状であってもよい。また、仕切板70を差し込むことが可能な開口部は、空調ケーシング10の左側等に開口していてもよい。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。