以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用空調装置1の斜視図である。この車両用空調装置1は、図示しないが自動車の車室の前端部に配設されているインストルメントパネルの内部に収容されている。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとするが、これは使用時や組み付け時の方向を限定するものではない。また、この実施形態では車両用空調装置1が車両に搭載された状態であると仮定して前後左右を定義する。
車両用空調装置1は、図示しない送風ユニットを備えている。この送風ユニットは、車室外の空気と車室内の空気とを導入して空調用空気として送風することができるように構成された周知のものであり、図示しないが、遠心式ファンや内外気切替ダンパ等を有している。また、この実施形態の送風ユニットは、車室外の空気を送風する外気導入モードと、車室内の空気を送風する内気循環モードと、車室外の空気及び車室内の空気を区別して同時に送風する内外気2層流モードとに切替可能に構成されている。内外気2層流モードに切替可能な構成であってもよいし、内外気2層流モードがない構成であってもよい。
車両用空調装置1は、送風ユニットから送風される空調用空気が導入されるケーシング2と、ケーシング2の内部に収容される冷却用熱交換器3及び加熱用熱交換器4と、温度調節ダンパ5と、デフロスタダンパ6と、ベントダンパ7と、ヒートダンパ8とを備えている。
図1~図4に示すように、ケーシング2は、前後方向の中間部において分割可能に構成されている。空調ケーシング10の前側部分は、上下方向の中間部において分割可能に構成されていて、上側ケーシング構成部材11と、下側ケーシング構成部材12とを有している。図5及び図6にも示すように、空調ケーシング10の後側部分は、左右方向の中間部において分割可能に構成されていて、右側ケーシング構成部材(第1ケーシング構成部材)13と、左側ケーシング構成部材(第2ケーシング構成部材)14とを有している。後述するが、左右方向は、デフロスタダンパ6の回動軸6aと、ベントダンパ7の回動軸7aと、ヒートダンパ8の回動軸8aの軸方向であり、従って、空調ケーシング10の後側部分はダンパ6、7、8の回動軸方向に分割されることになる。
左側ケーシング構成部材14の右側は略全体が開放された開放側である。また、右側ケーシング構成部材13の左側は略全体が開放された開放側である。左側ケーシング構成部材14の開放側と、右側ケーシング構成部材13の開放側とが合わされて一体化されることによって空調ケーシング10の後側部分が構成されている。また、上側ケーシング構成部材11、下側ケーシング構成部材12、右側ケーシング構成部材13及び左側ケーシング構成部材14は樹脂材からなるものであり、互いに締結部材等によって締結されて一体化されている。
図7に示すように、上側ケーシング構成部材11及び下側ケーシング構成部材12の内部には、冷却用熱交換器3及び温度調節ダンパ5が収容されている。右側ケーシング構成部材13及び左側ケーシング構成部材14の内部には、加熱用熱交換器4、デフロスタダンパ6、ベントダンパ7及びヒートダンパ8が収容されている。さらに、右側ケーシング構成部材13及び左側ケーシング構成部材14の内部には、電気式ヒータ9が収容されている。電気式ヒータ9は省略してもよい。
図1及び図2に示すように、ケーシング2の前側部分の右側壁部には、空調用空気を該ケーシング2内に導入するための空気導入口2aが形成されている。この空気導入口2aは上下方向に長い形状となっており、ケーシング2の上部近傍から下部近傍に亘って開口している。空気導入口2aには、送風ユニットの空気吹出部(図示せず)が接続されるようになっている。
図1や図5に示すように、ケーシング2の後側部分の上壁部には、空気導入口2aよりも前側にデフロスタ吹出開口部2bが形成されている。デフロスタ吹出開口部2bは、右側ケーシング構成部材13の上壁部と、左側ケーシング構成部材14の上壁部とにそれぞれ形成されている。デフロスタ吹出開口部2bの右縁部は、右側ケーシング構成部材13の右端部近傍に位置しており、また、デフロスタ吹出開口部2bの左縁部は、左側ケーシング構成部材14の左端部近傍に位置している。デフロスタ吹出開口部2bは、インストルメントパネルの前端部に形成されたデフロスタ開口部(図示せず)にデフロスタダクト(図示せず)を介して接続されている。デフロスタ開口部は、自動車のフロントガラスの内面に空調風を供給するためのものである。
ケーシング2の後側部分の上壁部には、デフロスタ吹出開口部2bよりも後側にベント吹出開口部2cが形成されている。ベント吹出開口部2cは、センタ吹出口2eと、左側吹出口2fと、右側吹出口2gとで構成されているが、これら以外の開口部を備えていてもよい。左側吹出口2fは、左側ケーシング構成部材14の上壁部に形成されている。右側吹出口2gは、右側ケーシング構成部材13の上壁部に形成されている。センタ吹出口2eは、左側ケーシング構成部材14の上壁部から右側ケーシング構成部材13の上壁部に亘って形成されている。左側吹出口2fと右側吹出口2gとは同じ形状とされている。センタ吹出口2eは、左側吹出口2fよりも左右方向に長く形成されており、左側吹出口2fの開口面積よりも大きな開口面積を有している。この実施形態では、ベントダンパ7がベント吹出開口部2cを閉じた位置にあるときに、ケーシング2内の空調風が左側吹出口2f及び右側吹出口2gに若干量だけ洩れ出すように構成されている。
右側ケーシング構成部材13の上壁部には、右側吹出口(第1吹出口)2gとセンタ吹出口(第2吹出口)2eとが左右方向、即ち後述するベントダンパ7の回動軸7a方向に並ぶように形成されることになる。図5にも示すように、右側ケーシング構成部材13には、ベント吹出開口部2cを右側吹出口2gとセンタ吹出口2eとに仕切るための右側仕切部13aが設けられている。右側仕切部13aは、ケーシング2の内方へ突出しかつベントダンパ7の回動軸7aの周方向に長く延びる板部で構成されており、ケーシング2の本体部分に対して一体成形されている。この右側仕切部13aの突出方向先端縁部は、ベントダンパ7の回動軸7aを中心とした円弧状に延びている。
また、右側仕切部13aは、右側ケーシング構成部材13の上壁部から後壁部まで前後方向に連続して延びている。右側仕切部13aの始点部を、該右側仕切部13aの前端部とすることができ、また、右側仕切部13aの終点部を、該右側仕切部13aの後端部(下端部)とすることができる。右側仕切部13aは、始点部が最も左側に位置し、終点部が最も右側に位置するように、上方ないし後方から見たときに全体が傾斜している。
また、左側ケーシング構成部材14には、ベント吹出開口部2cを左側吹出口2fとセンタ吹出口2eとに仕切る左側仕切部14aが設けられている。左側仕切部14aも右側仕切部13aと同様に、ケーシング2の内方へ突出しかつベントダンパ7の回動軸7aの周方向に延びる板部で構成されている。この左側仕切部14aの突出方向先端縁部も、ベントダンパ7の回動軸7aを中心とした円弧状に延びている。
また、左側仕切部14aの始点部を、該左側仕切部14aの前端部とし、また、左側仕切部14aの終点部を、該左側仕切部14aの後端部(下端部)とすることができる。左側仕切部14aは、始点部が最も右側に位置し、終点部が最も左側に位置するように、上方ないし後方から見たときに全体が傾斜している。したがって、右側仕切部13aと左側仕切部14aとは、始点部同士が最も接近する一方、終点同士が最も離れることになる。
左側吹出口2fは、インストルメントパネルの左側に形成されたサイドベント開口部(図示せず)に、左側ベントダクト(図示せず)を介して接続されている。右側吹出口2gは、インストルメントパネルの右側に形成されたサイドベント開口部(図示せず)に、右側ベントダクト(図示せず)を介して接続されている。センタ吹出口2eは、インストルメントパネルの左右方向中央部に形成されたサイドベント開口部(図示せず)に、センタベントダクト(図示せず)を介して接続されている。サイドベント開口部及びセンタベント開口部は、乗員の上半身に向けて空調風を供給するためのものである。尚、ベント吹出開口部2cの形成箇所は、ケーシング2の上側、即ち、上下方向中央部よりも上であればよい。
図1~図3に示すように、ケーシング2の下側には、ヒート吹出開口部2dが形成されている。ヒート吹出開口部2dには、ヒートダクト(図示せず)が接続されている。ヒートダクトは、乗員の足下近傍に空調風を供給するためのものである。ヒート吹出開口部2dは、前席乗員用の開口部と後席乗員用の開口部とを含むことができる。
デフロスタダンパ6は、デフロスタ吹出開口部2bを開閉するためのものであり、左右方向に延びる回動軸6aと、回動軸6aの径方向に延びる閉塞板部6bとを有しており、閉塞板部6bは回動軸6aと一体に回転可能になっている。回動軸6aは、ケーシング2の左右両側壁部に回動可能に支持されている。閉塞板部6bは、デフロスタ吹出開口部2bをケーシング2の内側から覆うことができる大きさに形成されており、回動軸6aと一体に回動することによって図7に示すようにデフロスタ吹出開口部2bを閉塞する位置(閉位置)に配置される。また、図示しないが、閉位置にある閉塞板部6bが下方へ向けて回動するように回動軸6aを回動させると、閉塞板部6bがデフロスタ吹出開口部2bを開く位置(開位置)に切り替えられる。尚、閉塞板部6bは開位置と閉位置との間で停止させることもできる。
ヒートダンパ8は、ヒート吹出開口部2dを開閉するためのものであり、デフロスタダンパ6と同様に回動軸8aと閉塞板部8bとを有している。閉塞板部8bは、回動軸8aと一体に回動することによって図7に実線で示すようにヒート吹出開口部2dを閉塞する位置(閉位置)に配置される。また、図示しないが、閉位置にある閉塞板部8bが上方へ向けて回動するように回動軸6aを回動させると、閉塞板部8bがヒート吹出開口部2dを開く位置(開位置)に切り替えられる。尚、閉塞板部8bは開位置と閉位置との間で停止させることもできる。
ベントダンパ7は、ベント吹出開口部2cを開閉するためのものであり、デフロスタダンパ6と同様に回動軸7aと閉塞板部7bとを有している。図8A、図8Bに示すように、回動軸7aと閉塞板部7bとは樹脂材により一体成形されるとともに、右側ケーシング構成部材13の内方から左側ケーシング構成部材14の内方に亘って連続する1部品で構成されている。すなわち、回動軸7aの右側ケーシング構成部材13側の端部(右端部)は、右側ケーシング構成部材13の右側壁部に形成された右側軸受孔(第1軸受孔)13bによって回動可能に支持され、また、回動軸7aの左側ケーシング構成部材14側の端部(左端部)は、左側ケーシング構成部材14の左側壁部に形成された左側軸受孔(第2軸受孔)14bによって回動可能に支持されており、回動軸7aは左右方向に連続している。右側軸受孔13bは、右側ケーシング構成部材13の右側壁部を左右方向に貫通するように形成され、また、左側軸受孔14bは、左側ケーシング構成部材14の左側壁部を左右方向に貫通するように形成されている。右側軸受孔13bと左側軸受孔14bとは、左右方向に延びる同一直線を共通の軸線として有している。回動軸7aの左端部は、左側軸受孔14bからケーシング2の外方へ突出し、また、回動軸7aの右端部は、右側軸受孔13bからケーシング2の外方へ突出している。
閉塞板部7bは、回動軸7aから径方向に離れて配置され、当該回動軸7aと平行に延びる本体板部7cと、本体板部7cの右縁部から回動軸7aまで延び、当該回動軸7aと一体化された右側板部7dと、本体板部7cの左縁部から回動軸7aまで延び、当該回動軸7aと一体化された左側板部7eとを有している。本体板部7cは、左右方向に連続している。
閉塞板部7bは、ベント吹出開口部2cをケーシング2の内側から覆うことができる大きさに形成されており、回動軸7aと一体に回動することによって図7に示すようにベント吹出開口部2cを開く位置(開位置)と、ベント吹出開口部2cを閉じる位置(閉位置)とに切り替えられるとともに、途中で停止させることもできる。
ベントダンパ7の閉塞板部7bが閉位置にあるときには、右側仕切部13a及び左側仕切部14aの突出方向先端縁部が、閉塞板部7bにおける回動軸7aの径方向外側の面と対向するように位置付けられるようになっている。つまり、右側仕切部13a及び左側仕切部14aは、閉位置にある閉塞板部7bにおける径方向外側の面と対向するように設けられている。
図5等に示すように、閉塞板部7bは、径方向外方へ突出する右側突出板部70と、左側突出板部71とを有している。右側突出板部70は、閉塞板部7bの左右方向中央部よりも右寄りに位置しており、突出方向先端縁部は、回動軸7aを中心とする円弧状に形成されている。右側突出板部70は、ベントダンパ7が回動軸7a方向に移動して右側ケーシング構成部材13へ開放側から挿入されたとき、右側仕切部13aよりも左側に位置するように配置されている。また、右側突出板部70は、右側仕切部13aに沿うように、径方向から見たときに回動軸7aの周方向に対して傾斜している。すなわち、図9に示すように、開位置にあるベントダンパ7を後側から見たとき、右側突出板部70の上端部が最も左に位置し、下端部が最も右に位置するように、右側突出板部70が形成されている。
図5等に示すように、左側突出板部71は、閉塞板部7bの左右方向中央部よりも左寄りに位置しており、突出方向先端縁部は、回動軸7aを中心とする円弧状に形成されている。左側突出板部71は、ベントダンパ7が回動軸7a方向に移動して左側ケーシング構成部材14へ開放側から挿入されたとき、左側仕切部14aよりも右側に位置するように配置されている。また、左側突出板部71は、左側仕切部14aに沿うように、径方向から見たときに回動軸7aの周方向に対して傾斜している。すなわち、図9に示すように、開位置にあるベントダンパ7を後側から見たとき、左側突出板部71の上端部が最も右に位置し、下端部が最も左に位置するように、左側突出板部71が形成されている。
右側突出板部70の突出方向先端縁部には、回動軸7a及び閉塞板部7bを構成する樹脂材よりも軟質な弾性材からなる板状の右側シール部材72が設けられている。この弾性材は、弾性変形可能な部材であればよく、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。右側シール部材72は、右側突出板部70から回動軸7aの径方向外方へ突出し、右側突出板部70の突出方向先端縁部に沿って回動軸7aの周方向に連続して延びている。
右側突出板部70が右側仕切部13aよりも左側に位置するように配置されているので、右側シール部材72も、右側仕切部13aよりも左側に位置するように配置される。右側シール部材72は、その突出方向先端部に近づくほど右側仕切部13a側に位置するように形成されている。これにより、右側シール部材72の先端側が右側仕切部13aに対して右側ケーシング構成部材13の開放側から押し当てられることになる。つまり、図8Aに示すように、ベントダンパ7が正規の組付位置にあり、かつ、閉位置にあるときには、右側シール部材72の先端側が右側仕切部13aに対して左側から押し当てられるように、右側シール部材72の位置及び形状が設定されている。
また、上述したように、右側シール部材72が設けられている右側突出板部70は回動軸7aの径方向から見たときに周方向に対して傾斜しているので、右側シール部材72も右側突出板部70と同様に回動軸7aの径方向から見たときに傾斜することになる。したがって、図8Aに示す閉位置のベントダンパ7を図8Bに示すように開位置にすると、右側シール部材72の先端側が右側仕切部13aから左方向に離れるように相対移動することになる。
また、左側突出板部71の突出方向先端縁部には、右側シール部材72と同様な左側シール部材73が設けられている。この左側シール部材73は、左側突出板部71から回動軸7aの径方向外方へ突出し、左側突出板部71の突出方向先端縁部に沿って回動軸7aの周方向に連続して延びている。
左側突出板部71が左側仕切部14aよりも右側に位置するように配置されているので、左側シール部材73も、左側仕切部14aよりも右側に位置するように配置される。左側シール部材73は、その突出方向先端部に近づくほど左側仕切部14a側に位置するように形成されている。これにより、左側シール部材73の先端側が左側仕切部14aに対して左側ケーシング構成部材14の開放側から押し当てられることになる。つまり、図8Aに示すように、ベントダンパ7が正規の組付位置にあり、かつ、閉位置にあるときには、左側シール部材73の先端側が左側仕切部14aに対して右側から押し当てられるように、左側シール部材73の位置及び形状が設定されている。
上述したように、左側シール部材73が設けられている左側突出板部71は回動軸7aの径方向から見たときに周方向に対して傾斜しているので、左側シール部材73も左側突出板部71と同様に回動軸7aの径方向から見たときに傾斜することになる。したがって、図8Aに示す閉位置のベントダンパ7を図8Bに示すように開位置にすると、左側シール部材73の先端側が左側仕切部14aから右方向に離れるように相対移動することになる。
閉塞板部7bの周縁部には、ケーシング2の内面に接触する板状の周縁シール部材75が突出するように設けられている。周縁シール部材75は、右側シール部材72及び左側シール部材73と同様な材料で構成されている。周縁シール部材75がケーシング2の内面に接触することにより、ケーシング2の内面と閉塞板部7bの周縁部との間がシールされる。
右側シール部材72及び左側シール部材73は、閉塞板部7bとは別体に成形した後、閉塞板部7bに取り付けるようにしてもよいし、いわゆる2色成形法を利用して閉塞板部7bに一体成形することもできる。右側シール部材72及び左側シール部材73を閉塞板部7bとは別体に成形する場合、右側シール部材72及び左側シール部材73を閉塞板部7bに嵌合または圧入することによって組み付けることができる他、接着によって組み付けるようにしてもよい。2色成形法を利用する場合、回動軸7aと閉塞板部7bとを硬質樹脂材で一体成形した後、右側突出板部70の縁部に右側シール部材72を一体成形し、左側突出板部71の縁部に左側シール部材73を一体成形するようにすればよい。周縁シール部材75も同様である。周縁シール部材75は、右側シール部材72及び左側シール部材73と連続しているが、周縁シール部材75と、右側シール部材72及び左側シール部材73とは別体にしてもよい。周縁シール部材75の肉厚と、右側シール部材72及び左側シール部材73の肉厚とは同程度に設定することができる。周縁シール部材75と、右側シール部材72及び左側シール部材73は、突出方向先端に近づけば近づくほど薄く形成することができる。また、周縁シール部材75と、右側シール部材72及び左側シール部材73は、リップ状のシール部材であってもよい。
尚、デフロスタダンパ6、ベントダンパ7及びヒートダンパ8の構造は上述した構造に限られるものではなく、いわゆるバタフライタイプのダンパやロータリーダンパ等を用いることもできる。また、デフロスタ吹出開口部2b、ベント吹出開口部2c及びヒート吹出開口部2dの形成位置は、車両の構造等に応じて変更することも可能である。
デフロスタダンパ6、ベントダンパ7及びヒートダンパ8は、図示しないアクチュエータと、リンク機構A(図1等に示す)によって連動するようになっている。そして、図7に実線で示すように、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出開口部2bを閉じ、ヒートダンパ8がヒート吹出開口部2dを閉じて、ベントダンパ7がベント吹出開口部2cを開く開閉状態にあるときには、吹出モードがベントモードとなり、空調風の殆どがベント吹出開口部2cから吹き出す。吹出モードはベントモード以外にもデフロスタモード、ヒートモード、バイレベルモード、デフヒートモード等に切り替えることができるようになっている。デフロスタモードは、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出開口部2bを開き、ヒートダンパ8がヒート吹出開口部2dを閉じて、ベントダンパ7がベント吹出開口部2cを閉じるモードである。ヒートモードは、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出開口部2bを閉じ、ヒートダンパ8がヒート吹出開口部2dを開いて、ベントダンパ7がベント吹出開口部2cを閉じるモードである。バイレベルモードは、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出開口部2bを閉じ、ヒートダンパ8がヒート吹出開口部2dを開いて、ベントダンパ7がベント吹出開口部2cを開くモードである。デフヒートモードは、デフロスタダンパ6がデフロスタ吹出開口部2bを開き、ヒートダンパ8がヒート吹出開口部2dを開いて、ベントダンパ7がベント吹出開口部2cを閉じるモードである。
ケーシング2の内部の前側には、前側仕切板20が配設されている。前側仕切板20は、ケーシング2の内部の上下方向略中央部に配設されてケーシング2の前壁内面から後方へ向かって延びている。前側仕切板20の配設位置は、ヒート吹出開口部2dの形成位置よりも高く、ベント吹出開口部2c及びデフロスタ吹出開口部2bの形成位置よりも低く設定されている。
前側仕切板20により、ケーシング2の内部の前側が上下に2つに仕切られ、前側仕切板20よりも上側の空間と下側の空間とにそれぞれ空調用空気が送風されるようになっている。送風ユニットが内外気2層流モードにあるときには、外気が前側仕切板20よりも上側の空間に送風され、内気が前側仕切板20よりも下側の空間に送風されるようになっている。前側仕切板20の後端部は、冷却用熱交換器3の空気流れ方向上流側の面に接近している。
冷却用熱交換器3は、ケーシング2の内部において前側仕切板20の後側に配設されている。冷却用熱交換器3は、例えばヒートポンプの冷媒蒸発器等で構成することができるものであり、上部ヘッダタンク3a及び下部ヘッダタンク3bと、これらヘッダタンク3a、3bの間に設けられるコア3cとを有している。上部ヘッダタンク3a及び下部ヘッダタンク3bは、ケーシング2の上壁部及び下壁部にそれぞれ保持されている。コア3cは上下方向に延びる複数のチューブやフィン等からなるものである。空調用空気は、コア3cを通過して前側から後側へ向けて流れるようになっており、このときに空調用空気が熱媒体と熱交換して冷却される。
加熱用熱交換器4は、ケーシング2の内部において冷却用熱交換器3から後側に離れて配設されている。加熱用熱交換器4は、例えば車両に搭載されているエンジンの冷却水が循環するヒータコア等で構成することができるものであり、上部ヘッダタンク4a及び下部ヘッダタンク4bと、これらヘッダタンク4a、4bの間に設けられるコア4cとを有している。コア4cは上下方向に延びる複数のチューブやフィン等からなるものである。空調用空気は、コア4cを通過して前側から後側へ向けて流れるようになっており、このときに空調用空気が熱媒体と熱交換して加熱される。
この実施形態では、空気導入口2aがケーシング2の前側に形成され、デフロスタ吹出開口部2b、ベント吹出開口部2c及びヒート吹出開口部2dがケーシング2の後側に形成されているので、空気導入口2aから導入された空調用空気はケーシング2の内部で後側へ向けて流れることになる。従って、加熱用熱交換器4は、冷却用熱交換器3の空気流れ方向下流側に収容されることになり、冷却用熱交換器3を通過した空気を加熱するものである。
加熱用熱交換器4の上下寸法は、冷却用熱交換器3の上下寸法よりも短く設定されている。そして、加熱用熱交換器4は、ケーシング2の上壁部から下に離れ、かつ、ケーシング2の下壁部から上に離れた部位に位置付けられ、該ケーシング2の内部に形成された上部保持部21によって上部ヘッダタンク4aが保持されるとともに、該ケーシング2の内部に形成された下部保持部22によって下部ヘッダタンク4bが保持される。
加熱用熱交換器4と冷却用熱交換器3との間には、後述する温度調節ダンパ5を配設するためのスペースが設けられている。この温度調節ダンパ5は、いわゆるルーバーダンパであることから前後方向の寸法を短くすることができるので、温度調節ダンパ5を配設するためのスペースは小さくて済み、その結果、ケーシング2を小型化することができる。
ケーシング2の内部には、冷却用熱交換器3が配設される冷風生成通路R1と、加熱用熱交換器4が配設される温風生成通路R2と、上側及び下側バイパス通路R3、R4と、エアミックス空間R5とが形成されている。冷風生成通路R1は、その上流端が空気導入口2aに接続され、後側へ向かって延びている。冷風生成通路R1は、冷却用熱交換器3によって冷風を生成する通路である。温風生成通路R2は、その上流端が冷風生成通路R1の下流端の上下方向中間部に接続され、後側へ向かって延びている。温風生成通路R2は、加熱用熱交換器4によって温風を生成する通路である。
上側及び下側バイパス通路R3、R4は、加熱用熱交換器4の上方及び下方にそれぞれ形成されている。具体的には、上側バイパス通路R3は、ケーシング2の上壁部と上部保持部21との間に形成される一方、下側バイパス通路R4は、ケーシング2の下壁部と下部保持部22との間に形成される。上側及び下側バイパス通路R3、R4は、冷却用熱交換器3を通過した空気を、加熱用熱交換器4をバイパスさせて下流側、即ち後側へ流すための通路である。上側バイパス通路R3は、その上流端が冷風生成通路R1の下流端の上部に接続され、後側へ向かって延びている。下側バイパス通路R4は、その上流端が冷風生成通路R1の下流端の下部に接続され、後側へ向かって延びている。つまり、上側及び下側バイパス通路R3、R4の間に温風生成通路R2が位置している。
エアミックス空間R5は、ケーシング2の内部において最後部に形成されている。エアミックス空間R5の下部には、温風生成通路R2の下流端が連通している。また、エアミックス空間R5には、上側及び下側バイパス通路R3、R4の下流端が連通している。温風生成通路R2及び上側及び下側バイパス通路R3、R4からエアミックス空間R5に流入した空気が該エアミックス空間R5内で混合するようになっている。また、エアミックス空間R5は、デフロスタ吹出開口部2b、ベント吹出開口部2c及びヒート吹出開口部2dに連通している。つまり、上側及び下側バイパス通路R3、R4は、エアミックス空間R5を介してベント吹出開口部2cに連通することになる。
次に、温度調節ダンパ5の構造について説明する。温度調節ダンパ5は、図7に示すように、冷却用熱交換器3と加熱用熱交換器4との間に配設されて空調風の温度を調節するためのものである。温度調節ダンパ5は、複数の温風通路開閉用板状部材52を備えており、上側バイパス通路R3の上流側と、下側バイパス通路R4の上流側と、温風生成通路R2の上流側とにそれぞれ配設されている。温風通路開閉用板状部材52は連動するようになっており、上側バイパス通路R3及び下側バイパス通路R4を開きかつ温風生成通路R2を閉じる回動位置(フルコールド状態)と、上側バイパス通路R3及び下側バイパス通路R4を閉じかつ温風生成通路R2を開く回動位置(フルホット状態)との間で回動し、任意の回動位置で停止させることが可能になっている。図7に示す状態はフルコールド状態である。
また、温風通路開閉用板状部材52の左端部には、アクチュエータ(図示せず)が連結されている。温風通路開閉用板状部材52をアクチュエータによって回動させることで空調風の温度を変更することができる。
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の動作について説明する。吹出モードがベントモードである場合には、殆どの場合、上側及び下側バイパス通路R3、R4を全開にしたフルコールド状態もしくは上側及び下側バイパス通路R3、R4を全開に近い開度にする。そして、送風ユニットから送風された空調用空気は、空気導入口2aからケーシング2の内部に導入された後、冷却用熱交換器3を通過してから上側及び下側バイパス通路R3、R4に流入する。
また、フルホット状態では、上側及び下側バイパス通路R3、R4には殆ど冷風が流れることはなく、冷風は加熱用熱交換器4を通過して加熱された後、エアミックス空間R5に流入し、吹出モードに応じて車室に供給される。
また、中間域では、上側及び下側バイパス通路R3、R4及び温風生成通路R2に冷風が流入した後、エアミックス空間R5に流入して混合される。これにより、所望温度の空調風が得られ、吹出モードに応じて車室に供給される。エアミックス空間R5に流入する冷風量及び温風量を変えて空調風の温度を調節することができる。
また、車両用空調装置1の製造時、ベントダンパ7をケーシング2に組み付ける際には、右側ケーシング構成部材13と左側ケーシング構成部材14とを分割した状態でベントダンパ7を右側ケーシング構成部材13の開放側から回動軸7a方向に挿入し、その後、右側ケーシング構成部材13の開放側と左側ケーシング構成部材14の開放側とを合わせて一体化することができる。
このとき、右側ケーシング構成部材13には、右側仕切部13aがベントダンパ7の閉塞板部7bと対向するように設けられている。一方、ベントダンパ7の右側シール部材72は、右側仕切部13aに対して右側ケーシング構成部材13の開放側、即ちベントダンパ7の右側ケーシング構成部材13への組み付け方向から押し当てられるものなので、ベントダンパ7がどのような回動角度であっても、組み付け時に右側シール部材72が、右側仕切部13aに引っ掛かるようなことはなく、右側仕切部13aに押し付けられる。よって、組み付け後に右側シール部材72形状が所期の形状になる。
尚、ベントダンパ7を左側ケーシング構成部材14に挿入した後、右側ケーシング構成部材13の開放側と左側ケーシング構成部材14の開放側とを合わせるようにしてもよい。この場合も同様に、左側シール部材73形状が所期の形状になる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、ベントダンパ7の右側シール部材72を右側ケーシング構成部材13の右側仕切部13aに対して当該右側ケーシング構成部材13の開放側から押し当てるようにしたので、ベントダンパ7をケーシング2へ組み付ける時に右側シール部材72がケーシング2の一部に引っ掛からなくなり、シール不良及び組み付け不良の発生を抑制することができる。
また、右側シール部材72が回動軸7aの周方向に延びる板状をなしているので、右側シール部材72を右側仕切部13aの長手方向の広い範囲に押し当てることができ、シール性を高めることができる。このとき、閉塞板部7bに樹脂製の右側突出板部70を設け、この右側突出板部70の先端部に右側シール部材72を設けたので、右側シール部材72を右側突出板部70に対して狙いどおりに押し付けることができる。
また、ベントダンパ7が閉位置にあるときには右側仕切部13aと閉塞板部7bとの間を確実にシールすることができる一方、ベントダンパ7が開位置にあるときにはセンタ吹出口2e及び右側吹出口2gへの空気の流れが右側シール部材72によって阻害されないように当該シール部材72を配置することができる。
また、1部品からなるベントダンパ7を右側ケーシング構成部材13及び左側ケーシング構成部材14によって回動可能に支持することができる。
尚、上述した作用効果は左側シール部材73でも同様に奏することができるものである。
(実施形態2)
図13は、本発明の実施形態2に係るものである。実施形態2では、ケーシング2が中間プレート100を有している点と、ベントダンパ7が左右に分割されている点とで実施形態1と異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
ケーシング2は、当該ケーシング2内における左右方向(ベントダンパ7の回動軸7a方向)の中間部に設けられる中間プレート100を有している。この中間プレート100は上下方向及び前後方向に延びており、中間プレート100によりケーシング2内が左側空間と右側空間とに区画されている。左側空間を流通する空気の温度と、右側空間を流通する空気の温度とを個別に調整可能となるように、図示しないエアミックスダンパが左側空間及び右側空間にそれぞれ配設されている。
ベントダンパ7は、中間プレート100に対応するように、回動軸7a方向中間部で分割された第1ダンパ構成部材7Aと第2ダンパ構成部材7Bとを有している。第1ダンパ構成部材7Aは、回動軸7aと閉塞板部7bとを有するとともに、右側突出板部70及び右側シール部材72を有している。また、第2ダンパ構成部材7Bは、回動軸7aと閉塞板部7bとを有するとともに、左側突出板部71及び左側シール部材73を有している。第1ダンパ構成部材7Aの回動軸7a及び第2ダンパ構成部材7Bの回動軸7aは、中間プレート100に形成された軸受孔100aによって回動可能に支持されている。軸受孔100aは、中間プレート100を左右方向に貫通するように形成されている。
この実施形態2においても、実施形態1と同様に、シール不良及び組み付け不良の発生を抑制することができる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。