以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
[1.現金自動預払機及び紙幣入出金機の構成]
図1に外観を示すように、現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関等に設置され、利用者(すなわち金融機関等の顧客)との間で入金取引や出金取引等の現金に関する取引を行うようになっている。
筐体2は、その前側に顧客が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に顧客応対部3が設けられている。顧客応対部3は、カード入出口4、入出金口5、操作表示部6、テンキー7、及びレシート発行口8が設けられており、顧客との間で現金や通帳等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行うようになっている。
カード入出口4は、キャッシュカード等の各種カードが挿入または排出される部分である。カード入出口4の筐体内側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。入出金口5は、顧客により入金する紙幣が投入されると共に、顧客へ出金する紙幣が排出される部分である。また入出金口5は、シャッタを駆動することにより開放又は閉塞するようになっている。
操作表示部6は、取引に際して操作画面を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、取引の種類の選択、暗証番号や取引金額等を入力するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルとなっている。テンキー7は、「0」〜「9」の数字等の入力を受け付ける物理キーであり、暗証番号や取引金額等の入力操作時に用いられる。レシート発行口8は、取引処理の終了時に取引内容等を印字したレシートを発行する部分である。因みにレシート発行口8の奥側には、レシートに取引内容等を印字するレシート処理部(図示せず)が設けられている。
以下では、現金自動預払機1のうち顧客が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、前側に対峙した顧客から見て上下左右を、それぞれ上側、下側、左側及び右側と定義して説明する。
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9や、紙幣に関する種々の処理を行う紙幣入出金機10等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
紙幣入出金機10は、図2に側面図を示すように、後側が開放された直方体形状の筐体11の内部に、紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。尚、現金自動預払機1は、筐体2の後側が開閉可能な扉となっており、この扉を開くことで、外部から紙幣入出金機10へのアクセスが可能となっている。
紙幣入出金機10は、大きく分けて、筐体11における上下方向のほぼ中央よりも上側部分を占める上部ユニット10Uと、その下側部分を占める下部ユニット10Lとにより構成されている。
上部ユニット10Uには、全体を統括制御する紙幣制御部12、顧客との間で紙幣を授受する入出金部13、図中太線で示す搬送路14に沿って紙幣を各部へ搬送する搬送部15、紙幣を鑑別する鑑別部16及び紙幣を一時的に収納する一時保留部17が設けられている。上部ユニット10Uは、前後方向にスライド可能となっていて、筐体11の内部に収納された状態から、筐体11の後側に引き出すことができるようになっている。
一方、下部ユニット10Lは、直方体形状の金庫筐体20により覆われていて、この金庫筐体20の内部に、5個の紙幣カセット21(21A〜21E)及びリジェクトカセット22を、後側から順に並ぶようにして着脱可能に保持している。さらに下部ユニット10Lは、5個の紙幣カセット21(21A〜21E)及びリジェクトカセット22を、前後方向にスライド可能に保持していて、これら5個の紙幣カセット21(21A〜21E)及びリジェクトカセット22を、金庫筐体20の内部に収納された状態から、金庫筐体20の後側(つまり筐体11の後側)に引き出すことができるようになっている。
さらに、金庫筐体20の上面には、金庫筐体20内部に収納された5個の紙幣カセット21(21A〜21E)及びリジェクトカセット22のそれぞれの上面と対向する位置に受渡搬送部23(23A〜23F)が配置されている。また、上部ユニット10Uの搬送部15には、複数の受渡搬送部23(23A〜23F)のそれぞれに向かって延びる搬送路が形成されている。現金自動預払機1は、この受渡搬送部23(23A〜23F)を介して、上部ユニット10Uの搬送部15と、下部ユニット10Lの紙幣カセット21(21A〜21F)及びリジェクトカセット22との間で紙幣を受け渡すようになっている。
ここで、上部ユニット10Uについてさらに詳しく説明する。上部ユニット10Uの紙幣制御部12は、図示しないCPUと、ROM、RAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部とにより構成され、CPUが記憶部から各種プログラムを読み出して実行することにより、取引に関する種々の処理を行う。
入出金部13は、上部ユニット10U内部の前側上部に位置している。この入出金部13は、紙幣を収容する収容器13Aと、収容器13A内に収容された紙幣を1枚ずつ分離して搬送部15へ繰り出すとともに、搬送部15から送られてくる紙幣を収容器13A内に集積して収容する紙幣集積繰出装置13Bが設けられている。また、上部ユニット10Uは、収容器13Aの上方をシャッタ13Cにより開放又は閉塞する。シャッタ13Cは、筐体2に設けられた入出金口5(図1)のシャッタと連動して開放又は閉塞する。
搬送部15は、上部ユニット10U内部の下端部分に位置している。この搬送部15は、図示しないローラやベルト等により、搬送路14に沿って紙幣を搬送する。尚、搬送部15は、例えば、紙幣の短手方向を搬送方向とする向きで紙幣を搬送するようになっている。搬送路14は、図3に示すように、上部ユニット10Uの前側に位置していて前後方向に延びる直線状の前側搬送路14Aと、後側に位置していて前後方向に延びる直線状の後側搬送路14Bと、これらの間に位置する3ウェイ切替部30と、前側搬送路14A及び後側搬送路14Bから分岐して各部へと延びる複数の搬送路14C〜14Jとで構成されている。3ウェイ切替部30は、前側搬送路14Aと、後側搬送路14Bと、一時保留部17へと延びる搬送路14Dとの間で、紙幣の搬送経路を3通りに切り替えることができるようになっている。また、前側搬送路14A及び後側搬送路14Bの分岐箇所には、切替部(図中三角形で示す部分)が設けられていて、紙幣制御部12は、各切替部と3ウェイ切替部30の動作を制御することで、紙幣の搬送先を切り替えるようになっている。また、搬送部15は、前側搬送路14A及び後側搬送路14B上に数枚程度の紙幣を貯留できるようにもなっている。
鑑別部16(図2及び図3)は、前側搬送路14A上に設けられている。この鑑別部16は、内部に厚みセンサ、イメージセンサ及び磁気センサといった複数種類のセンサが組み込まれており、各センサにより各紙幣から種々の情報を読み取り、得られた情報(以下これを読取情報と呼ぶ)を紙幣制御部12(図2)へ供給する。
これに応じて紙幣制御部12は、各紙幣の状態を判定し、当該紙幣が正常であり受入可能であるか、或いは異常であり利用者に返却すべきであるかを決定する。具体的に紙幣制御部12は、得られた読取情報を基に、各紙幣における搬送状態並びに金種や損傷の程度、或いは真偽等を判定し、このときの判定結果を基に各紙幣の搬送先を決定して、搬送部15における搬送動作を制御する。
一時保留部17(図2)は、上部ユニット10U内部の中央に設けられていて、例えばテープエスクロ方式を採用している。すなわち、一時保留部17は、円筒状のドラムの周側面に紙幣をテープと共に巻き付けることで当該紙幣を一時的に貯留し、またこの周側面から当該テープを引き剥がすことで紙幣を繰り出す。
つづいて、下部ユニット10Lについてさらに詳しく説明する。下部ユニット10Lの紙幣カセット21(21A〜21E)は、何れも同様に構成されており、上下方向に長い直方体状に形成されている。また、紙幣カセット21(21A〜21E)には、内部に紙幣を集積して収納するとともに、内部に集積された紙幣を外部へ繰り出す紙幣集積繰出装置31(31A〜31E)が設けられている。各紙幣カセット21(21A〜21E)は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。紙幣カセット21(21A〜21E)は、鑑別部16及び紙幣制御部12により損傷の程度が小さく再利用が可能であると判定された紙幣が、その金種に応じて搬送部15から受渡搬送部23A〜23Eを介して搬送されてくると、当該紙幣を内部に集積して収納する。また紙幣カセット21(21A〜21E)は、紙幣制御部12から紙幣を繰り出す指示を受け付けると、集積している紙幣を1枚ずつ分離して繰り出し、受渡搬送部23A〜23Eを介して搬送部15へ引き渡す。
リジェクトカセット22は、上下方向に長い直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する空間を有している。このリジェクトカセット22は、鑑別部16及び紙幣制御部12により損傷の程度が大きく再利用すべきで無いと判定された紙幣が搬送部15から受渡搬送部23Fを介して搬送されてくると、当該紙幣を内部に収納する。
[2.入金処理及び出金処理]
次に、現金自動預払機1により利用者(金融機関の顧客)との間で入金取引及び出金取引が行われる場合における、紙幣入出金機10内での入金処理及び出金処理について説明する。
[2−1.入金処理]
紙幣入出金機10は、入金処理において、紙幣制御部12の制御に基づき、入金された紙幣の金種等を鑑別して、紙幣を適切な収納箇所へ収納するようになっている。具体的に紙幣制御部12は、例えば顧客により操作表示部6(図1)を介して入金処理を開始する旨の操作入力を受け付けると、入金処理を開始し、顧客により入出金部13に投入された紙幣を1枚ずつに分離して、鑑別部16へと搬送する。
ここで、紙幣制御部12は、鑑別部16による鑑別結果に基づき、各紙幣における損傷の程度や金種、或いは真偽を判断する。次に紙幣制御部12は、各紙幣について、正常な紙幣として認識できた場合は以降の処理を継続できる入金受入紙幣であると判断し、正常な紙幣として認識できない場合は、一度顧客に返却すべき入金リジェクト紙幣であると判断する。さらに紙幣制御部12は、入金受入紙幣のうち、再利用可能な紙幣については金種ごとの各紙幣カセット21(21A〜21E)を、損傷などにより再利用不可能な紙幣についてはリジェクトカセット22を、それぞれ最終的な搬送先として決定し、記憶しておく。
続いて紙幣制御部12は、入金受入紙幣については一時保留部17へ搬送して収納させ、入金リジェクト紙幣については後側搬送路14Bへ搬送して後側搬送路14B上に貯留させる。その後、紙幣制御部12は、入出金部13から全ての紙幣を取り込み終えると、後側搬送路14B上に入金リジェクト紙幣が貯留されていれば、これを入出金部13に搬送して顧客に返却した後、必要に応じて再投入させる。
一方、後側搬送路14B上に入金リジェクト紙幣が貯留されていなければ、紙幣制御部12は、入出金部13から取り込んだ紙幣の金種及び枚数の集計結果を基に入金額を算出すると共に、所定の操作指示画面を操作表示部6に表示し、この入金額を顧客に提示すると共に入金処理を継続するか否かを顧客に選択させる。ここで、顧客により入金処理の中止が指示された場合、紙幣制御部12は、一時保留部17に保留している全ての紙幣を入出金部13へ搬送して顧客に返却する。
一方で、顧客により入金処理の継続が指示された場合、紙幣制御部12は、一時保留部17に収納している紙幣(入金受入紙幣)を順次繰り出して、先に記憶した紙幣毎の搬送先に搬送する。すなわち、紙幣制御部12は、一時保留部17に収納している入金受入紙幣のうち、再利用可能な紙幣については、金種ごとに分類して各紙幣カセット21(21A〜21E)に収納させ、また再利用不可能な紙幣についてはリジェクトカセット22に収納させる。
[2−2.出金処理]
紙幣入出金機10は、出金処理において、紙幣制御部12の制御に基づき、指定された金額に応じた金種及び枚数の紙幣を出金するようになっている。以下では、搬送部15の後側搬送路14Bと接続される紙幣カセット21A〜21Dに収納されている紙幣を出金する場合を例に説明する。
具体的に紙幣制御部12は、例えば顧客により操作表示部6(図1)を介して出金額を含む所定の操作入力を受け付けると、出金額に応じた紙幣の金種及び枚数を決定する。続いて紙幣制御部12は、決定した金種及び枚数に応じて、各紙幣カセット21内に収納されている紙幣を順次繰り出して、鑑別部16へと搬送する。紙幣制御部12は、鑑別部16による鑑別結果に基づき、走行状態に問題の無い紙幣については入出金部13へと搬送する一方で、例えば重送のように搬送状態に問題の有る紙幣についてはリジェクトカセット22へと搬送して収納する。その後、紙幣制御部12は、出金額に応じた全ての紙幣を入出金部13へ搬送し終えると、入出金部13に収容している紙幣を顧客に取り出させる。
[3.紙幣集積繰出装置の構成]
次に、紙幣カセット21(21A〜21E)に設けられた紙幣集積繰出装置31(31A〜31E)の構成について説明する。尚、紙幣カセット21A〜21Eには、それぞれ同一構成の紙幣集積繰出装置31A〜31Eが設けられている為、ここでは、一例として、紙幣カセット21Aに設けられている紙幣集積繰出装置31Aの構成について説明することとする。
図4に、紙幣集積繰出装置31Aを左側から見た側面図を示し、図5に、紙幣集積繰出装置31Aを前側から見た前面図を示す。尚、図4、図5は、紙幣集積繰出装置31Aの一部を省略した図となっている。
これら図4、図5に示すように、紙幣集積繰出装置31Aは、紙幣BLを上下方向に集積して収納する紙幣収納空間40の上部に設けられている。紙幣集積繰出装置31Aは、搬送路14J(図3)と接続されるカセット内搬送路41と、カセット内搬送路41上を通過する紙幣BLを検知する紙幣検知センサ42と、紙幣収納空間40に紙幣BLを放出するフィードローラ43及びリバースローラ44と、放出された紙幣BLと衝突し、その衝撃を吸収するビルストッパ45と、放出された紙幣BLの後端を叩く第1の羽根車46及び第2の羽根車47と、放出された紙幣BLが載置される上下方向に可動するステージ48と、ステージ48に載置された紙幣BLの上面位置を制御する為の上面センサ49と、放出された紙幣BLの短手方向を整列させる為のフロントガイド50及びリアガイド51と、放出された紙幣BLの長手方向を整列させる為のサイドガイド52とを有している。
さらに、紙幣集積繰出装置31Aは、ステージ48に載置された紙幣BLをフィードローラ43に送り出すピッカローラ53と、ピッカローラ53を保持するピッカアーム54と、ピッカローラ53を駆動させる駆動ベルト55とを有している。
カセット内搬送路41は、紙幣収納空間40上部の後側(つまりリアガイド51の上部)に位置する紙幣入出口60から後方へ延びる搬送路であり、このカセット内搬送路41上に、カセット内搬送路41上を通過する紙幣を検知する紙幣検知センサ42が設けられている。また、紙幣収納空間40の上部には、ステージ48上に載置された最上位の紙幣BLの上面位置を検知する上面センサ49が設けられている。これら紙幣検知センサ42及び上面センサ49は、例えば紙幣BLを光学的に検知する光学センサである。
フィードローラ43とリバースローラ44は、カセット内搬送路41と紙幣入出口60との接続箇所に設けられていて、カセット内搬送路41を挟んでフィードローラ43を上側、リバースローラ44を下側として対向配置されている。フィードローラ43とリバースローラ44は、それぞれ左右方向に延びるシャフト61、62に固定されていて、シャフト61、62とともに矢印A、Bに示す方向に回転することにより、カセット内搬送路41に沿って搬送されてくる紙幣BLを間に挟んで紙幣収納空間40へと放出するようになっている。また、フィードローラ43は、放出時とは逆方向に回転することで、ピッカローラ53により紙幣収納空間40から送り出されてくる紙幣BLをリバースローラ44との間に挟んでカセット内搬送路41へと搬送するようにもなっている。
尚、図5に示すように、フィードローラ43は、シャフト61に2個設けられ、シャフト62には、それぞれのフィードローラ43の下側に1個ずつ計2個のリバースローラ44が設けられている。また、フィードローラ43の外周には、外周を1周する溝が回転軸方向に間隔を空けて2個設けられ、一方のリバースローラ44には、外周を1周する溝が1個設けられている。そして、フィードローラ43とリバースローラ44は、互いの溝の位置が回転軸方向にずれるようにして入れ子状に対向配置されている。
また、フィードローラ43の回転軸となるシャフト61には、ピッカアーム54の後端がシャフト61の回転を受けないように取り付けられている。ピッカローラ53は、左右方向に延びるシャフト63に固定されていて、このシャフト63が、ピッカアーム54の前端に回転可能に支持されている。駆動ベルト55は、フィードローラ43の回転軸となるシャフト61に設けられた歯付プーリ(図示せず)と、ピッカローラ53の回転軸となるシャフト63に設けられた歯付プーリ(図示せず)とに掛け渡された環状のベルトであり、フィードローラ43の回転を、ピッカローラ53に伝達するようになっている。ピッカローラ53は、紙幣収納空間40の上端に位置していて、ステージ48が上方に可動してステージ48に載置された最上位の紙幣BLが押し付けられると、フィードローラ43とともに回転することで、これをフィードローラ43に送り出すようになっている。
ビルストッパ45は、紙幣入出口60と対向するように紙幣収納空間40上部の前側(つまりフロントガイド50の上部)に設けられている。このビルストッパ45は、フィードローラ43及びリバースローラ44により紙幣収納空間40へ放出された紙幣BLを受け止めることで、その衝撃を吸収するようになっている。尚、フロントガイド50は、紙幣カセット21の前側に設けられた開閉可能な扉64に取り付けられていて、この扉64を開くことで、紙幣収納空間40の内部にアクセスできるようになっている。
第1の羽根車46と第2の羽根車47は、リバースローラ44の回転軸となるシャフト62に取り付けられていて、それぞれ外周面から放射状に延びる舌片46A、47Aを有している。尚、リアガイド51の上部には、第1の羽根車46及び第2の羽根車47のそれぞれの舌片46A、47Aを、紙幣収納空間40内に入り込ませる為の溝又は孔(図示せず)が設けられている。尚、詳しくは後述するが、第1の羽根車46及び第2の羽根車47は、この孔又は溝を通して、シャフト62から取り外したりシャフト62に取り付けたりできるようになっている。これら第1の羽根車46及び第2の羽根車47は、フィードローラ43及びリバースローラ44により紙幣収納空間40へ放出された紙幣BLの後端を舌片46A、47Aにより上から叩くことで、放出された紙幣BLをステージ48上に押さえ付けるようにして集積していくようになっている。
尚、図5に示すように、シャフト62には、2個のリバースローラ44のそれぞれの外側に2個ずつ計4個の第1の羽根車46が設けられている。さらに、このシャフト62には、2個のリバースローラ44のそれぞれの外側に1個ずつ計2個の第2の羽根車47が、それぞれ2個の第1の羽根車46の間に設けられている。これら複数の第1の羽根車46及び第2の羽根車47は、現金自動預払機1が取り扱う紙幣のうち、長手方向の長さが最も短い紙幣の長手方向の長さの範囲内に配置されるようになっている。
さらに、紙幣集積繰出装置31Aは、図6に斜視図を示すように、第1の羽根車46と第2の羽根車47を、それぞれ異なる回転速度で回転させる羽根車機構70を有している。ここで、この羽根車機構70の構成について詳しく説明する。
羽根車機構70は、第1の羽根車46と、第2の羽根車47と、第1の羽根車46及び第2の羽根車47が取り付けられるシャフト62と、シャフト62と平行に対向配置されるカウンタシャフト71と、モータ72と、モータ72の回転をシャフト62に伝達する為のギア73、74と、シャフト62の回転をカウンタシャフト71に伝達する為の駆動ギア75、76と、カウンタシャフト71の回転を第2の羽根車47に伝達する為のアイドルギア77及び羽根車ギア78とを有している。
ギア74は、モータ72の回転軸に接続されたギア73を介してモータ72の回転をシャフト62に伝達するギアであり、ワンウェイクラッチ(図示せず)を介してシャフト62に取り付けられている。このギア74は、ワンウェイクラッチにより、図中矢印Bで示す方向(図5に示す矢印Bと同一方向)の回転のみをシャフト62に伝達するようになっている。
駆動ギア75は、シャフト62に固定されていて、カウンタシャフト71に固定された駆動ギア76と噛み合うことで、シャフト62の回転をカウンタシャフト71に伝達するようになっている。つまり、カウンタシャフト71は、シャフト62から駆動力を受けて回転するようになっている。
第1の羽根車46と第2の羽根車47は、それぞれ外周面の所定範囲内(例えば半周内)に、外周面から放射状に突出する複数枚(例えば4枚)の舌片46A、47Aを有している。第1の羽根車46は、シャフト62に固定されていてシャフト62と一体に回転する。第2の羽根車47は、シャフト62に回転可能に支持されている羽根車ギア78に固定されている。アイドルギア77は、カウンタシャフト71に固定されていて、羽根車ギア78と噛み合うことで、カウンタシャフト71の回転を羽根車ギア78に固定された第2の羽根車47に伝達するようになっている。つまり、第2の羽根車47は、カウンタシャフト71から駆動力を受けて回転するようになっている。
この羽根車機構70は、第2の羽根車47の回転速度が第1の羽根車46の回転速度の例えば2倍となるように、羽根車ギア78、駆動ギア75、76及びアイドルギア77のギア比が決定されている。このようにして、羽根車機構70は、第1の羽根車46と第2の羽根車47を、それぞれ異なる回転速度で回転させるようになっている。
[4.紙幣集積繰出装置の動作]
次に、上述した紙幣集積繰出装置31Aの動作について説明する。ここではまず、図4を用いて、紙幣収納空間40に紙幣BLを集積するときの集積動作について説明する。紙幣集積繰出装置31Aは、紙幣集積時、ステージ48を最上位の紙幣BLが上面センサ49に検知される位置に待機させ、フィードローラ43を図中矢印Aで示す方向に回転させる。また、このとき紙幣集積繰出装置31Aは、シャフト62とともに第1の羽根車46及びリバースローラ44を図中矢印Bで示す方向に回転させる。またこのとき、シャフト62から駆動力を受けてカウンタシャフト71(図4では省略)が回転することにより、第2の羽根車47も図中矢印Bで示す方向に回転する。そして、紙幣集積繰出装置31Aは、第1の羽根車46の舌片46Aと、第2の羽根車47の舌片47Aを、シャフト62の全周に渡って展開させる。
この状態で、カセット内搬送路41に沿って紙幣BLが搬送されてくると、紙幣集積繰出装置31Aは、搬送されてきた紙幣BLをフィードローラ43とリバースローラ44との間に挟持して、これらの回転により紙幣収納空間40へ放出する。紙幣収納空間40へ放出された紙幣BLは、前端がビルストッパ45に衝突して落下する。このとき、この紙幣BLは、後端を第1の羽根車46の舌片46A及び第2の羽根車47の舌片47Aにより叩かれ、ステージ48上に押さえ付けられるようにして集積される。
紙幣BLの集積が終了すると、紙幣集積繰出装置31Aは、第1の羽根車46と第2の羽根車47をそれぞれ矢印Bで示す方向に回転させて、図7に示すように、第1の羽根車46の舌片46Aと第2の羽根車47の舌片47Aの両方を紙幣収納空間40の外側に退避させる。尚、このときの第1の羽根車46と第2の羽根車47の位置を退避位置と呼ぶ。
次に、図7を用いて、紙幣収納空間40に集積されている紙幣BLを繰り出すときの繰出動作について説明する。紙幣集積繰出装置31Aは、紙幣繰出時、第1の羽根車46と第2の羽根車47を退避位置に退避させた状態で、ステージ48を上昇させて最上位の紙幣BLをピッカローラ53に当接させる。ここで、紙幣集積繰出装置31Aは、フィードローラ43を図中矢印Cで示す方向(矢印Aとは逆方向)に回転させる。すると、フィードローラ43の回転が駆動ベルト55を介してピッカローラ53へと伝達され、ピッカローラ53も同一方向に回転する。これにより、ステージ48上の最上位の紙幣BLがフィードローラ43側へ送り出される。
このとき、シャフト62には、ワンウェイクラッチによりモータ72の回転が伝達されず、第1の羽根車46、第2の羽根車47、リバースローラ44は回転しない。ゆえに、フィードローラ43側へ送り出された紙幣BLは、フィードローラ43の回転により、フィードローラ43とリバースローラ44との間を1枚ずつ通過するようにしてカセット内搬送路41へと繰り出される。
[5.羽根車の構成、及び羽根車の取付方法及び取外方法]
次に、第1の羽根車46と第2の羽根車47の構成、及びこれらの取付方法及び取外方法について、さらに詳しく説明する。まず、シャフト62に固定される第1の羽根車46の構成と交換の仕方について説明する。図8に分解側面図を示すように、第1の羽根車46は、舌片部46Bと、シャフト62に固定される部分となる羽根車ボス46Cとで構成されている。
羽根車ボス46Cは、例えばプラスチックなどの樹脂材料で形成され、シャフト62の径とほぼ同径の孔80が設けられた略円筒状部材の外周の一部に孔80と繋がる(つまり内周面80Aと繋がる)開口部81が形成された断面略C字形状となっている。羽根車ボス46Cの開口部81は、孔80から離れるほど広くなる末広がり形状であり、内側の最も狭い部分が、シャフト62の径より若干狭くなっている。この羽根車ボス46Cは、開口部81の最も狭い部分をシャフト62の径より大きくなるまで広げることができ、且つその状態から自然と元の形状に戻る程度の弾性を有している。
また、この羽根車ボス46Cは、内周面80Aの開口部81と対向する位置に径方向内側に延びる突起部82が設けられている。尚、シャフト62には、軸方向と直交する方向(これを軸直交方向と呼ぶ)に貫通する孔62Aが形成されていて、羽根車ボス46Cの突起部82は、この孔62Aに嵌合可能な大きさとなっている。さらに、この羽根車ボス46Cは、軸方向の長さ(すなわち左右方向の長さ)が、舌片46Aの幅(すなわち左右方向の長さ)よりも長くなっていて、軸方向の一面に溝部83が形成されている。この溝部83は、略C字形状の溝83Aとこの溝83Aから放射状に延びる複数の溝83Bとで構成され、その深さ(すなわち軸方向の長さであり左右方向の長さ)が舌片部46Bの幅(左右方向の長さ)と同程度になっている。
一方、舌片部46Bは、ゴムなどの弾性材料で形成され、略C字形状の基部84と、この基部84から放射状に延びる複数の舌片46Aとで構成されている。この舌片部46Bは、基部84と各舌片46Aの根本部分が、羽根車ボス46Cの溝部83に嵌入されることで、羽根車ボス46Cに固定されるようになっている。
ここで、このような構成の第1の羽根車46の取付方法について、図9を用いて説明する。第1の羽根車46をシャフト62に取り付ける場合、図9(A)に示すように、羽根車ボス46Cの開口部81を、シャフト62の孔62Aに対向させた状態で、第1の羽根車46をシャフト62に対して軸直交方向に押し込んでいく。すると、図9(B)に示すように、羽根車ボス46Cの開口部81が広がっていき、開口部81がシャフト62の径より大きくなった時点で、図9(C)に示すように、シャフト62が羽根車ボス46Cの孔80に入り込んで嵌合され、開口部81が元の大きさに戻る。またこのとき、シャフト62の孔62Aに羽根車ボス46Cの突起部82が嵌合されることにより、第1の羽根車46がシャフト62に対して軸方向及び回転方向にズレないよう固定される。
紙幣カセット21では、このようにして、第1の羽根車46を取り付けるようになっている。つづけて、第1の羽根車46の取外方法について説明する。第1の羽根車46を取り外す場合、まず、図10に示すように、紙幣制御部12の制御により、第1の羽根車46と第2の羽根車47を回転させて、舌片46Aと舌片47Aの両方を紙幣収納空間40に入り込ませた状態にする。尚、このときの第1の羽根車46と第2の羽根車47の回転位置を取外位置と呼ぶ。そのうえで、紙幣カセット21を下部ユニット10Lから取り外して、さらに図10に示すように、紙幣カセット21の前側の扉64を開く。これにより、紙幣収納空間40の内部にアクセス可能な状態となる。
ここで、紙幣収納空間40に入り込んでいる第1の羽根車46の舌片46Aを指または冶具でつまんでシャフト62の軸直交方向(図中矢印Fで示す方向)に引っ張っていく。すると、図9(B)に示すように、羽根車ボス46Cの開口部81が広がっていき、開口部81がシャフト62の径より大きくなった時点で、シャフト62から第1の羽根車46が外れる。そして、この第1の羽根車46を、リアガイド51に設けられた、第1の羽根車46の舌片46Aを紙幣収納空間40内に入り込ませる為の溝又は孔を介して取り出すことで、紙幣カセット21から取り外す。紙幣カセット21では、このようにして第1の羽根車46を取り外すことができるようになっている。そして、例えば、摩耗した舌片46Aを羽根車ボス46Cから取り外して新しい舌片46Aに交換した後、この新しい第1の羽根車46を、上述した取付方法でシャフト62に取り付けることで、第1の羽根車46の交換が完了する。
次に、羽根車ギア78に固定される第2の羽根車47の構成について説明する。図11に分解側面図を示すように、第2の羽根車47は、舌片部47Bと、羽根車ギア78に固定される部分となる羽根車ボス47Cとで構成されている。
ここで、羽根車ギア78の構成を図12に斜視図として示す。羽根車ギア78は、例えばプラスチックなどの樹脂材料で形成され、シャフト62の径とほぼ同径の孔90が設けられた略円筒状の形状を有している。この羽根車ギア78は、外周全体のうち、軸方向の一面側となる部分78Aにギア歯91が形成され、軸方向の他面側となる部分78Bに外周面から径方向外側に突出する凸部92が形成されている。凸部92は、羽根車ギア78の外周面に垂設された直方体形状であり、図11に示すように、軸方向から見て四角形となっている。羽根車ギア78は、この凸部92が設けられた略円筒状の部分78Bに、第2の羽根車47の羽根車ボス47Cを固定するようになっている。ゆえにこの部分78Bを、以下、羽根車固定部78Bと呼ぶ。
一方、羽根車ボス47Cは、例えばプラスチックなどの樹脂材料で形成され、羽根車固定部78Bの外径とほぼ同径の孔100が設けられた略円筒状部材の外周の一部に孔100と繋がる(つまり内周面100Aと繋がる)開口部101が形成された断面略C字形状となっている。羽根車ボス47Cの開口部101は、孔100から離れるほど広くなる末広がり形状であり、内側の最も狭い部分が、羽根車固定部78Bの外径より若干狭くなっている。この羽根車ボス47Cは、開口部101の最も狭い部分を羽根車固定部78Bの外径より大きくなるまで広げることができ、且つその状態から自然と元の形状に戻る程度の弾性を有している。
また、この羽根車ボス47Cは、内周面100Aの開口部101近傍(回転方向上流側)に、羽根車ボス47Cの軸方向に延びる溝状の凹部102が形成されている。この凹部102は、羽根車固定部78Bの凸部92と嵌合する部分であり、図13に拡大図を示すように、図中矢印Bで示す第2の羽根車47の回転方向の下流側に位置する壁面102Aと、この壁面102Aと対向する(つまり壁面102Aよりも回転方向の上流側に位置する)傾斜面102Bと、壁面102Aと傾斜面102Bとを繋ぐ底面102Cとで形成されている。壁面102Aは、羽根車ボス47Cの内周面100Aに対して直交(もしくはほぼ直交)する面となっていて、底面102Cは、この壁面102Aと直交(もしくはほぼ直交)する面となっている。また、傾斜面102Bは、羽根車ボス47Cの内周面100Aから底面102Cに向かって傾斜する面となっている。別の言い方をすると、傾斜面102Bは、羽根車ボス47Cの内周面100Aに近づくほど壁面102Aから離れていくように傾斜する面となっている。この凹部102は、図14に示すように、壁面102Aが羽根車固定部78Bの凸部92と当接するようにして凸部92と嵌合するようになっている。つまり、凹部102の壁面102Aは、凸部92と当接する当接面となっている。羽根車ボス47Cは、羽根車ギア78が図中矢印Bで示す方向に回転すると、壁面102Aが凸部92から図中矢印Bで示す回転方向への力を受けることで、回転するようになっている。
さらに、この羽根車ボス47Cは、図11に示すように、軸方向の長さ(すなわち左右方向の長さ)が舌片47Aの幅(すなわち左右方向の長さ)よりも長くなっていて、軸方向の一面に溝部103が形成されている。この溝部103は、略C字形状の溝103Aとこの溝103Aから放射状に延びる複数の溝103Bとで構成され、その深さ(すなわち軸方向の長さであり左右方向の長さ)が舌片47Aの幅(左右方向の長さ)と同程度になっている。
一方、舌片部47Bは、舌片部46Bと同様、ゴムなどの弾性材料で形成され、略C字形状の基部104と、この基部104から放射状に延びる複数の舌片47Aとで構成されている。この舌片部47Bは、基部104と各舌片47Aの根本部分が、羽根車ボス47Cの溝部103に嵌入されることで、羽根車ボス47Cに固定されるようになっている。
ここで、このような構成の第2の羽根車47の取付方法について、図15を用いて説明する。第2の羽根車47をシャフト62に支持されている羽根車ギア78の羽根車固定部78Bに取り付ける場合、図15(A)に示すように、羽根車ボス47Cの開口部101を、羽根車固定部78Bの凸部92と対向させた状態で、第2の羽根車47を羽根車固定部78Bに対して軸直交方向に押し込みながら、凸部92の位置と凹部102の位置が合うように第2の羽根車47を回転させて角度を調整していく。すると、図15(B)に示すように、羽根車ボス47Cの開口部101が広がっていき、開口部101が羽根車固定部78Bの外径より大きくなった時点で、図15(C)に示すように、羽根車固定部78Bが羽根車ボス47Cの孔100に入り込んで嵌合され、開口部81が元の大きさに戻る。またこのとき、羽根車固定部78Bの凸部92が羽根車ボス46Cの凹部102に嵌合されることにより、第2の羽根車47が羽根車ギア78に対して回転方向にズレないよう固定される。尚、このとき、第2の羽根車47と羽根車ギア78は、例えば、シャフト62に取り付けられた規制部材(図示せず)により、軸方向にズレないようシャフト62に回転可能に支持される。
紙幣カセット21では、このようにして、第2の羽根車47を取り付けるようになっている。つづけて、第2の羽根車47の取外方法について説明する。第2の羽根車47を取り外す場合、第1の羽根車46を取り外す場合と同様、図10に示すように、紙幣制御部12の制御により、第1の羽根車46と第2の羽根車47を取外位置に回転させる。そのうえで、紙幣カセット21を下部ユニット10Lから取り外して、さらに紙幣カセット21の前側の扉64を開く。これにより、紙幣収納空間40の内部にアクセス可能な状態となる。
ここで、紙幣収納空間40に入り込んでいる第2の羽根車47の舌片47Aを指又は冶具でつまんで第2の羽根車47を図中矢印Bで示す方向に回転させながら、シャフト62の軸直交方向(図中矢印Fで示す方向)に引っ張っていく。すると、図16に示すように、羽根車固定部78Bの凸部92の回転方向とは逆側の角が、羽根車ボス47Cの凹部102の傾斜面102Bを滑りながら、羽根車ボス47Cの開口部101が広がっていき、開口部101が羽根車固定部78Bの外径より大きくなった時点で、羽根車ギア78から第2の羽根車47が外れる。そして、この第2の羽根車47を、リアガイド51に設けられた、第2の羽根車47の舌片47Aを紙幣収納空間40内に入り込ませる為の溝又は孔を介して取り出すことで、紙幣カセット21から取り外す。
このように、第2の羽根車47を羽根車ギア78から取り外す場合、凸部92の角が凹部102の傾斜面102Bを滑るようにして凸部92が凹部102から外れる為、例えば、傾斜面102Bの代わりに壁面102Aと平行な壁面を有する凹部(図示せず)から凸部92を外す場合と比べて、より少ない力で簡単に凸部92を凹部102から外すことができ、これにより、第2の羽根車47を羽根車ギア78から容易に取り外すことができるようになっている。
そして、この第2の羽根車47を、紙幣カセット21から取り出す。紙幣カセット21では、このようにして第2の羽根車47を取り外すことができるようになっている。そして、例えば、摩耗した舌片47Aを羽根車ボス47Cから取り外して新しい舌片47Aに交換した後、この新しい第2の羽根車47を、上述した取付方法で羽根車固定部78Bに取り付けることで、第2の羽根車47の交換が完了する。
[6.まとめと効果]
ここまで説明したように、紙幣入出金機10は、第1の羽根車46の羽根車ボス46Cの外周の一部に孔80と繋がる開口部81を設け、さらにこの開口部81をシャフト62の径より大きくなるまで広げることができ、且つその状態から自然と元の形状に戻る程度の弾性を、羽根車ボス46Cに持たせるようにした。こうすることで、紙幣入出金機10では、第1の羽根車46を、シャフト62に対して軸直交方向に引っ張ったり押し込んだりして容易に着脱することができる。
同様に、紙幣入出金機10は、第2の羽根車47の羽根車ボス47Cの外周の一部に孔100と繋がる開口部101を設け、さらにこの開口部101を羽根車ギア78の羽根車固定部78Bの外径より大きくなるまで広げることができ、且つその状態から自然と元の形状に戻る程度の弾性を、羽根車ボス47Cに持たせるようにした。こうすることで、紙幣入出金機10では、第2の羽根車47を、羽根車ギア78に対して軸直交方向に引っ張ったり押し込んだりして容易に着脱することができる。
さらに、紙幣入出金機10では、第1の羽根車46の羽根車ボス46Cの内周に径方向内側に延びる突起部82を設け、第1の羽根車46をシャフト62に取り付けた際に、この突起部82が、シャフト62に形成された軸直交方向に延びる孔62Aに嵌合するようにした。こうすることで、紙幣入出金機10では、第1の羽根車46を、シャフト62に対して回転方向にズレないよう固定することができる。
さらに、紙幣入出金機10では、第2の羽根車47の羽根車ボス47Cの内周に凹部102を設け、第2の羽根車47を羽根車ギア78の羽根車固定部78Bに取り付けた際に、この凹部102に、羽根車固定部78Bの外周に突設された凸部92が嵌合するようにした。こうすることで、紙幣入出金機10では、第2の羽根車47を、羽根車ギア78に対して回転方向にズレないよう固定することができる。
換言すると、紙幣入出金機10では、シャフト62に直接取り付けることのできない第2の羽根車47については、シャフト62に回転可能に支持される羽根車ギア78に対して容易に着脱することができ、且つ回転方向にズレないよう固定することができる。
ところで、図17に示すように、紙幣カセット21の紙幣収納空間40に紙幣BLを集積する紙幣集積時、第1の羽根車46と第2の羽根車47は、それぞれ異なる回転速度で回転する為、これらの回転速度と、カセット内搬送路41を通る紙幣BLの搬送速度との間に差が生じる。この結果、第1の羽根車46及び第2の羽根車47に対して、例えば、舌片46A及び舌片47Aが図中矢印G方向(後方)に引っ張られるような負荷がかかることがある。また、紙幣集積時、舌片46A及び舌片47Aがステージ48上に集積されている最上位の紙幣BLの後端を叩く為、このとき、第1の羽根車46及び第2の羽根車47に対して、舌片46A及び舌片47Aが図中矢印H方向(上方)に押し戻されるような負荷がかかる。
このような場合でも、紙幣入出金機10では、第1の羽根車46の突起部82がシャフト62の孔62Aに嵌合していることにより、第1の羽根車46がシャフト62に対して回転方向にズレてしまうことを防ぐことができ、且つ第2の羽根車47の凹部102に羽根車ギア78の凸部92が嵌合していて凹部102の壁面102Aに凸部92が当接していることにより、第2の羽根車47が羽根車ギア78に対して回転方向にズレてしまうことを防ぐことができる。
このように紙幣入出金機10では、第1の羽根車46及び第2の羽根車47を、シャフト62の軸直交方向に着脱することができるので、紙幣カセット21からシャフト62を取り外すことなく、シャフト62から容易に第1の羽根車46及び第2の羽根車47を取り外して交換できる。そのうえで、紙幣入出金機10では、第1の羽根車46をシャフト62に対して回転方向にズレないように固定することができ、第2の羽根車47を、羽根車ギア78に対して回転方向にズレないように固定することができる。
[7.他の実施の形態]
[7−1.他の実施の形態1]
尚、上述した実施の形態では、第1の羽根車46の羽根車ボス46Cの内周面に突起部82を設け、この突起部82を、シャフト62に形成された孔62Aに嵌合するようにした。これに限らず、図18に示すように、シャフト62の外周面に凸部200を設け、第1の羽根車46の羽根車ボス46Cの内周面に突起部82の代わりに凹部201を設け、第2の羽根車47と同様にして、シャフト62の凸部200を、第1の羽根車46の凹部201に嵌合するようにしてもよい。
[7−2.他の実施の形態2]
さらに、上述した実施の形態では、第1の羽根車46として、舌片46Aと羽根車ボス46Cとが別部品で構成される羽根車を用いたが、これに限らず、舌片46Aと羽根車ボス46Cとが一体成形された羽根車を用いてもよい。また、上述した実施の形態では、第2の羽根車47として、舌片47Aと羽根車ボス47Cとが別部品で構成される羽根車を用いたが、これに限らず、舌片47Aと羽根車ボス47Cとが一体成形された羽根車を用いてもよい。
[7−3.他の実施の形態3]
さらに、上述した実施の形態では、羽根車ギア78の羽根車固定部78Bの外周面に1個の凸部92を設けるとともに、第2の羽根車47の羽根車ボス47Cの内周面80Aに、この凸部92と嵌合する1個の凹部102を設けるようにしたが、これに限らず、羽根車固定部78Bの外周面に複数の凸部92を設けるとともに、羽根車ボス47Cの内周面80Aに複数の凸部92のそれぞれと嵌合する複数の凹部102を設けるようにしてもよい。具体的には、羽根車固定部78Bの外周面に、周方向に間隔を空けて2個の凸部92を設けるとともに、羽根車ボス47Cの内周面80Aに、周方向に間隔を空けて2個の凹部102を設けるなどしてもよい。
また、上述した実施の形態では、羽根車ボス47Cの内周面100Aの開口部101近傍(回転方向上流側)に、凹部102を設けるようにしたが、これに限らず、羽根車ボス47Cの内周面100Aの他の位置に凹部102を設けるようにしてもよい。また、羽根車ボス47Cの内周面100Aの開口部101と対向する位置に凹部102を設ける場合、例えば、図19に示すように、凹部102の形状を凸部92と同一形状にしてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、羽根車固定部78Bに設けられた凸部92を直方体形状としたが、これに限らず、羽根車ボス47Cの回転方向のズレを防止できれば他の形状であってもよい。例えば、凸部92を円柱状としてもよい。また、このような凸部92の側面形状に合わせて、例えば、羽根車ボス47Cに設けられた凹部102の壁面102Aと傾斜面102Bとをそれぞれ平面ではなく曲面にしてもよい。つまり、凹部102についても、羽根車ボス47Cの回転方向のズレを防止できれば上述した実施の形態とは異なる形状であってもよい。さらに、例えば、凸部92の回転方向とは逆側の角を、傾斜面102Bを滑り易くする為にR形状としてもよい(つまり角に丸みを持たせてもよい)。
さらに、上述した実施の形態では、凹部102を、壁面102A、傾斜面102B及び底面102Cの3面で形成される溝状としたが、これに限らず、凹部102を、例えば、これら3面と、羽根車ボス47Cの軸方向の一端側と他端側に位置する2つの壁面との5面で形成される孔状としてもよい。この場合、羽根車固定部78Bに設けられる凸部92を、この凹部102に嵌合できる形状とする。このようにすれば、凹部102に凸部92が嵌合したときに、第2の羽根車47が羽根車ギア78に対して回転方向だけでなく軸方向にもズレないよう固定することができる。
[7−4.他の実施の形態4]
さらに、上述した実施の形態では、制御部12の制御により、第1の羽根車46と第2の羽根車47を回転させて、舌片46Aと舌片47Aの両方を紙幣収納空間40に入り込ませた状態にしてから、紙幣カセット21を下部ユニット10Lから取り外して、紙幣カセット21の前側の扉64を開き、第1の羽根車46と第2の羽根車47を取り外すようにした。これに限らず、第1の羽根車46と第2の羽根車47はそのままに、紙幣カセット21を下部ユニット10Lから取り外して、紙幣カセット21の前側の扉64を開き、リバースローラ44や羽根車機構70のギア部分などを手動で回転させることで、第1の羽根車46と第2の羽根車47を手動で回転させて、舌片46Aと舌片47Aの両方を紙幣収納空間40に入り込ませた状態にしてから、第1の羽根車46と第2の羽根車47を取り外すようにしてもよい。
[7−5.他の実施の形態5]
さらに、上述した実施の形態では、4個の第1の羽根車46と2個の第2の羽根車47を有する紙幣集積繰出装置31に本発明を適用したが、これに限らず、第1の羽根車46と第2の羽根車47をそれぞれ1個以上有する紙幣集積繰出装置であれば、適用することができる。また、第1の羽根車46と第2の羽根車47のうちのどちらか一方のみを有する紙幣集積繰出装置に適用してもよい。さらに、上述した実施の形態では、紙幣カセット21に設けられた紙幣集積繰出装置31に本発明を適用したが、例えば、入出金部13に設けられた紙幣集積繰出装置13Bも羽根車で紙幣を叩く構成であるならば、この紙幣集積繰出装置13Bに本発明を適用してもよい。つまり、本発明は、羽根車で媒体を叩く機構を備える装置であれば、様々な装置に適用することができる。
[7−6.他の実施の形態6]
さらに、上述した各実施の形態では、本発明を、媒体処理装置及び媒体収納部としての紙幣カセット21(21A〜21E)及び入出金部13に適用したが、これに限らず、羽根車で媒体を叩く機構を有する媒体処理装置及び媒体収納部であれば、紙幣カセット21(21A〜21E)及び入出金部13とは異なる媒体処理装置及び媒体収納部にも適用できる。例えば、紙幣以外の媒体(例えば小切手、切符、チケットなどの紙葉類)を扱う媒体処理装置及び媒体収納部にも適用できる。さらに、上述した各実施の形態では、本発明を、自動取引装置としての現金自動預払機1に適用したが、これに限らず、羽根車で媒体を叩く機構を有する媒体収納部を備えるものであれば、現金自動預払機1とは異なる自動取引装置にも適用できる。例えば、紙幣以外の媒体(例えば小切手、切符、チケットなど)を扱う自動取引装置にも適用できる。
[7−7.他の実施の形態7]
さらに、上述した各実施の形態では、第1の羽根車の具体例として、第1のボスとしての羽根車ボス46C、及び第1の舌片としての舌片46Aを有する第1の羽根車46を用いたが、これに限らず、第1のボスと第1の舌片とを有するものであれば、第1の羽根車46とは異なる構成の羽根車を用いてもよい。さらに、上述した各実施の形態では、第2の羽根車の具体例として、第2のボスとしての羽根車ボス47C、及び第2の舌片としての舌片47Aを有する第2の羽根車47を用いたが、これに限らず、第2のボスと第2の舌片とを有するものであれば、第2の羽根車47とは異なる構成の羽根車を用いてもよい。例えば、第1の羽根車、第2の羽根車として、舌片の数が3本以下、もしくは5本以上の羽根車を用いてもよいし、外周面の半周未満の範囲内に舌片が設けられた羽根車や、外周面の半周を超える範囲内に舌片が設けられた羽根車を用いてもよい。さらに、上述した各実施の形態では、シャフト部の具体例として、シャフト62及び羽根車固定部78Bを用いたが、これに限らず、シャフトとシャフトに形成された凸部とを有するもの、もしくはシャフトとシャフトに支持される羽根車固定部とを有するものであれば、シャフト62及び羽根車固定部78Bとは異なるシャフト部を用いてもよい。
[7−8.他の実施の形態8]
さらに、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と他の実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。