JP6896202B1 - 硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤とを反応槽内で混合し、前記固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーを得ること、前記錯体スラリーを冷却装置を備える中間槽に移し冷却することを含む、硫化物固体電解質の製造方法である。

Description

本発明は、硫化物固体電解質の製造方法に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。従来、このような用途に用いられる電池において可燃性の有機溶媒を含む電解液が用いられていたが、電池を全固体化することで、電池内に可燃性の有機溶媒を用いず、安全装置の簡素化が図れ、製造コスト、生産性に優れることから、電解液を固体電解質層に換えた全固体電池の開発が行われている。
固体電解質層に用いられる固体電解質の製造方法としては、固相法と液相法に大別されるが、近年、全固体電池の実用化に向けて、汎用性及び応用性に加えて、簡便に固体電解質を量産し得る方法として、液相法が注目されている。液相法には、固体電解質材料の溶液を用いる均一法、また完全に溶解させず固液共存の懸濁液(スラリー)を用いる不均一法がある。
液相法では、固体電解質原料の錯化剤溶液(またはスラリー)を作成し、溶液を乾燥して錯体結晶を得た後に、該錯体結晶を焼成して、別結晶の固体電解質が得られる(特許文献1参照)。特に均一な固体電解質を得るには、電解質を溶媒に完全に溶解させた溶液状態を経由する均一法にメリットがあるとされている(非特許文献1参照)。また、このような方法は、固体電解質の分野に限らず、太陽電池の製造方法でも検討されている(特許文献2参照)。
国際公開第2018/054709号パンフレット 特表2015−526884号公報
J.Jpn.Soc.Colour Mater.,89〔9〕,300−305(2016)
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、量産規模の製造においてイオン伝導度の低下を抑制し、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤とを反応槽内で混合し、前記固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーを得ること、前記錯体スラリーを冷却装置を備える中間槽に移し冷却することを含む、硫化物固体電解質の製造方法により当該課題を解決できることを見出した。
本発明によれば、製造過程でスラリーを用いる不均一法を採用しても特定成分の分離によるイオン伝導度の低下を抑制し、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る製造方法を提供することができる。
本実施形態の製造方法の好ましい形態の一例を説明するフロー図である。 本実施形態の製造方法の好ましい形態の一例を説明するフロー図である。 本実施形態の製造方法で用いられる装置の好ましい形態の一例を説明するフロー図である。 参考例1、実施例1及び比較例1で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトルである。 実施例で用いた固体電解質原料、参考例1及び2の非晶性及び結晶性のLiPSのX線回折スペクトルである。 参考例1で得られた錯体、非晶性硫化物固体電解質及び結晶性硫化物固体電解質のX線回折スペクトルである。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」、「〜」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。
(本発明に至るために本発明者らが得た知見)
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
液相法においては、原料の溶解により均一な分散を図っているため、溶解できる製造条件の検討がなされてきたが、多成分の原料を用いる硫化物固体電解質の合成では、錯化剤溶液またはスラリーの各成分を分離せずに均一に溶解し、合成することが難しかった。本出願人らは、固液共存の不均一法において種々の錯化剤等を用いた検討を進めてきているが、一般的な傾向として、量産規模になると、固体電解質のイオン伝導度が低下する傾向になることが分かってきた。
本発明者らは、イオン伝導度が低下する傾向について鋭意検討したところ、特に、固液共存の不均一法では、固体電解質原料として好ましく用いられる、例えば臭化リチウム、ヨウ化リチウム等に由来するハロゲン元素、リチウム元素等の特定成分(以下、単に「特定成分」と称することがある。)の分離が生じやすいことが分かってきた。当該特定成分が分離すると、所望の化合物構造が得られないため、固体電解質のイオン伝導性が低下することがある。さらに、量産規模になると、固体電解質原料等を含むスラリーの混合工程等の一連の製造工程を通じて、各成分の分散状態を保持し、また特定成分の分離を抑制し、所望の結晶構造等を有するイオン伝導度が高い硫化物固体電解質を得ることは困難である。
既述ように、硫化物固体電解質の製造において、高いイオン伝導度を得るには、上記特定成分を錯体から分離させることなく保持することが肝要であり、そのため本実施形態の製造方法では錯化剤が用いられている。他方、錯化剤を使用していても、錯体がスラリーの状態で保持されると、当該錯体より特定成分が経時的に分離してしまい、イオン伝導度が低下することも分かってきた。錯体がスラリーの状態で保持されるという状況は、ラボレベルでの固体電解質の作製においても生じる場合があるが、今後量産規模での製造になると、製造調整、機器の不具合等により錯体をスラリーの状態で保持する状況が長期化することで、イオン伝導度の低下を招来する可能性も十分に想定される。本実施形態の製造方法では、錯体スラリーを冷却保存することにより、錯体からの特定成分の分離を極力抑制し、高いイオン伝導度を得ることを可能とした。
よって、本実施形態の製造方法は、より高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る場合はもちろんのこと、硫化物固体電解質の製造過程において、錯体スラリーを作製した後、例えば後述する乾燥すること、加熱すること等を12時間以内、6時間以内、1時間以内等の短時間内に行えない、すなわち錯体を錯体スラリーの状態で長時間保持するような状況となる場合にも対応でき、有効な製造方法であるといえる。
また、冷却保存することについては、上記特定成分を錯体内にとどまらせ、分離を抑制できる理由は、錯体において錯化剤中のヘテロ元素を介して繋がるPS構造等の構造体のリチウム元素とハロゲン化リチウム等のリチウム元素の結合力が維持され、錯体スラリーにおける錯化剤を介した集合体の化学的安定性が維持されることによるものと考えられるが、その詳細な機構は不明である。所定の温度範囲において完全に溶解するか、全く溶解しないのであれば、溶解度の影響はない(例えば、特許文献2)。
しかし、本実施形態の錯体スラリーは、固液共存であるため、溶解度が異なる錯体の各成分が、溶解して又は溶解せずに、スラリーに含まれることとなる。溶解度は温度によって変化するため、錯体スラリーの温度を一定に保つことが錯体スラリーの溶解の状態を維持するには望ましいと考えるのが一般的である。しかも、錯体スラリーを長時間保持した際の目視観察では、冷却保存の有無に関わらず何ら変化は見られなかった。そのため、錯体スラリーの化学的安定性に関する問題を見出すことは困難であった。
しかしながら、驚くべきことに本実施形態の製造方法においては、所定の元素と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーを単に冷却保存するという簡易な操作を行うことにより、当該錯体スラリーにおける錯化剤を介した集合体の化学的安定性が得られ、特定成分、とりわけ分離しやすい臭化リチウムに由来する臭素元素、リチウム元素の分離を抑制することができ、より高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られるという特異な効果が得られるに至った。
〔硫化物固体電解質の製造方法〕
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤とを反応槽内で混合し、前記固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーを得ること、前記錯体スラリーを冷却装置を備える中間槽に移し冷却することを含む、ことを特徴とするものである。
「スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物系固体電解質の製造方法」は、本実施形態の製造方法において、固体電解質原料を完全に溶解させない溶媒を用い、固液共存のスラリーを用いる、液相法における不均一法が採用されることを意味するものである。なお、本実施形態において、当該スラリーとしては、主に固体電解質原料を含むスラリー、後述する錯体を含む錯体スラリー等が存在し得るが、例えば固体電解質原料、錯体、及び当該原料が一部反応して得られる硫化物固体電解質から得らばれる少なくとも一種を含むスラリーも存在し得る。いずれのスラリーが存在するとしても、スラリーが存在する時点で、本実施形態の製造方法が液相法における不均一法が採用されることにかわりはない。
本明細書において、「硫化物固体電解質」とは、少なくとも硫黄元素を含有し、窒素雰囲気下25℃で固体を維持する電解質を意味する。本実施形態の製造方法により得られる硫化物固体電解質は、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含み、リチウム元素に起因するイオン伝導度を有する固体電解質である。
「硫化物固体電解質」には、結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質と、非晶性硫化物固体電解質と、の両方が含まれる。本明細書において、結晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンに、硫化物固体電解質由来のピークが観測される固体電解質であって、これらにおいて固体電解質の原料由来のピークの有無は問わない材料である。すなわち、結晶性硫化物固体電解質は、硫化物固体電解質に由来する結晶構造を含み、その一部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であってもよい、ものである。そして、結晶性硫化物固体電解質は、上記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶性硫化物固体電解質が含まれていてもよいものである。したがって、結晶性硫化物固体電解質には、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。
また、本明細書において、非晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンが実質的に材料由来のピーク以外のピークが観測されないハローパターンであるもののことであり、硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものであることを意味する。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法には、好ましくは、固体電解質原料としてLiPS等の固体電解質を用いるか否か、また溶媒を用いるか否か、によって以下の四種の実施形態が含まれる。これら四種の実施形態の好ましい形態の一例を図1(実施形態A及びB)及び2(実施形態C及びD)に示す。すなわち、本実施形態の製造方法には、(実施形態A)硫化リチウム及び五硫化ニリン等の原料と錯化剤とを用いる製造方法;(実施形態B)電解質主構造であるLiPS等の固体電解質を原料として含み、錯化剤を用いる製造方法;(実施形態C)上記の実施形態Aにおいて、硫化リチウム等の原料と錯化剤に溶媒を加える製造方法;(実施形態D)上記実施形態Bにおいて、原料となるLiPS等の固体電解質と錯化剤に溶媒を加える製造方法;が好ましく含まれる。
以下、実施形態A〜Dの順に説明する。
(実施形態A)
図1に示すように、実施形態Aは、スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤とを反応槽内で混合することを含むことを特徴とする本実施形態の製造方法において、固体電解質原料として硫化リチウム及び五硫化二リン等のリチウム元素、硫黄元素及びリン元素を含む原料と、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン元素を含む原料と、を用いる形態である。固体電解質原料と錯化剤とを反応槽内で混合することにより、通常、固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーが得られ、それを冷却することを経て硫化物固体電解質が得られる。また、本実施形態Aにおいて、好ましくは冷却して保存した後、乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の工程が含まれる。
本実施形態の製造方法は、錯体を粉砕することを含み、錯体スラリーに含まれる錯体が、該粉砕した錯体を含むものであることが好ましい。また、冷却して保存することは、粉砕の後、加熱することを含む場合は粉砕の後、加熱までに行われること、すなわち、該粉砕は混合の際(混合と同時に)、又は混合の後であって冷却して保存する前に行われること、が好ましい。
以下実施形態Aから説明をするが、「本実施形態の」と記載するものは、他の実施形態でも適用し得る事柄である。
(固体電解質原料)
本実施形態で用いられる固体電解質原料は、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含むものであり、具体的にはこれらの元素の少なくとも一種を含む原料から選ばれる少なくとも一種以上の原料が用いられる。
固体電解質原料に含まれる、例えばリチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素の少なくとも一種を含む原料(化合物)としては、硫化リチウム;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン;各種フッ化リン(PF、PF)、各種塩化リン(PCl、PCl、PCl)、各種臭化リン(PBr、PBr)、各種ヨウ化リン(PI、P)等のハロゲン化リン;フッ化チオホスホリル(PSF)、塩化チオホスホリル(PSCl)、臭化チオホスホリル(PSBr)、ヨウ化チオホスホリル(PSI)、二塩化フッ化チオホスホリル(PSClF)、二臭化フッ化チオホスホリル(PSBrF)等のハロゲン化チオホスホリル;などの上記四種の元素から選ばれる少なくとも二種の元素からなる原料、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、好ましくは臭素(Br)、ヨウ素(I)が代表的に挙げられる。
上記以外の原料として用い得るものとしては、例えば、上記四種の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含み、かつ該四種の元素以外の元素を含む原料、より具体的には、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の硫化アルカリ金属;硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム、硫化ホウ素、硫化ガリウム、硫化スズ(SnS、SnS)、硫化アルミニウム、硫化亜鉛等の硫化金属;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のリン酸化合物;ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウム等のリチウム以外のアルカリ金属のハロゲン化物;ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ケイ素、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化セレン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化テルル、ハロゲン化ビスマス等のハロゲン化金属;オキシ塩化リン(POCl)、オキシ臭化リン(POBr)等のオキシハロゲン化リン;などが挙げられる。
固体電解質原料としては、所望の結晶構造を得るために適した原料を上記の中から適宜選択すればよく、より容易に高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る観点から、原料としては、上記の中でも、硫化リチウム、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウムが好ましい。
原料の組み合わせとしては、例えば、硫化リチウム、五硫化二リン等のリチウム元素、硫黄元素、リン元素を含む原料とハロゲン化リチウム等のハロゲン元素を含む原料との組み合わせ、硫化リチウム、五硫化二リン等のリチウム元素、硫黄元素、リン元素を含む原料とハロゲン単体等のハロゲン元素を含む原料との組み合わせが好ましく挙げられ、ハロゲン化リチウムとしては臭化リチウム、ヨウ化リチウムが好ましく、ハロゲン単体としては塩素、臭素及びヨウ素が好ましく、臭素及びヨウ素がより好ましい。
実施形態Aで用いられる硫化リチウムは、粒子であることが好ましい。
硫化リチウム粒子の平均粒径(D50)は、10μm以上2000μm以下であることが好ましく、30μm以上1500μm以下であることがより好ましく、50μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。また、上記の原料として例示したもののうち固体の原料については、上記硫化リチウム粒子と同じ程度の平均粒径を有するものが好ましい、すなわち上記硫化リチウム粒子の平均粒径と同じ範囲内にあるものが好ましい。
原料として、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムを用いる場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの合計に対する硫化リチウムの割合は、より高い化学的安定性、及びより高いイオン伝導度を得る観点から、70〜80mol%が好ましく、72〜78mol%がより好ましく、74〜76mol%が更に好ましい。
硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウム、必要に応じて用いられる他の原料を用いる場合の、これらの合計に対する硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量は、60〜100mol%が好ましく、65〜90mol%がより好ましく、70〜80mol%が更に好ましい。
また、ハロゲン化リチウムとして、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを組み合わせて用いる場合、イオン伝導度を向上させる観点から、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、1〜99mol%が好ましく、20〜90mol%がより好ましく、40〜80mol%が更に好ましく、45〜65mol%が特に好ましい。
原料としてハロゲン単体を用いる場合であって、硫化リチウム、五硫化二リンを用いる場合、ハロゲン単体のモル数と同モル数の硫化リチウムを除いた硫化リチウム及び五硫化二リンの合計モル数に対する、ハロゲン単体のモル数と同モル数の硫化リチウムとを除いた硫化リチウムのモル数の割合は、60〜90%の範囲内であることが好ましく、65〜85%の範囲内であることがより好ましく、68〜82%の範囲内であることが更に好ましく、72〜78%の範囲内であることが更により好ましく、73〜77%の範囲内であることが特に好ましい。これらの割合であれば、より高いイオン伝導度が得られるからである。また、これと同様の観点から、硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とを用いる場合、硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体との合計量に対するハロゲン単体の含有量は、1〜50mol%が好ましく、2〜40mol%がより好ましく、3〜25mol%が更に好ましく、3〜15mol%が更により好ましい。
硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とハロゲン化リチウムとを用いる場合には、これらの合計量に対するハロゲン単体の含有量(αmol%)、及びハロゲン化リチウムの含有量(βmol%)は、下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましく、下記式(4)を満たすことが更に好ましく、下記式(5)を満たすことが更により好ましい。
2≦2α+β≦100…(2)
4≦2α+β≦80 …(3)
6≦2α+β≦50 …(4)
6≦2α+β≦30 …(5)
二種のハロゲン単体としてを用いる場合には、一方のハロゲン元素の物質中のモル数をA1とし、もう一方のハロゲン元素の物質中のモル数をA2とすると、A1:A2が1〜99:99〜1が好ましく、10:90〜90:10であることがより好ましく、20:80〜80:20が更に好ましく、30:70〜70:30が更により好ましい。
また、二種のハロゲン単体が、臭素とヨウ素である場合、臭素のモル数をB1とし、ヨウ素のモル数をB2とすると、B1:B2が1〜99:99〜1が好ましく、15:85〜90:10であることがより好ましく、20:80〜80:20が更に好ましく、30:70〜75:25が更により好ましく、35:65〜75:25が特に好ましい。
(錯化剤)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法では、錯化剤を用いる。本明細書において、錯化剤とは、リチウム元素と錯体形成することが可能な物質であり、上記固体電解質原料に含まれるリチウム元素を含む硫化物、ハロゲン化物等と作用して錯体の形成を促進させる性状を有するものであることを意味する。よって、錯化剤を用いないと、錯体が形成しにくくなるため、特定成分の分離を抑制できず、高いイオン伝導度が得られなくなる。
錯化剤としては、上記性状を有するものであれば特に制限なく用いることができ、特にリチウム元素との親和性が高い元素、例えば窒素元素、酸素元素、塩素元素等のヘテロ元素を含む化合物が好ましく、これらのヘテロ元素を含む基を有する化合物がより好ましく挙げられる。これらのヘテロ元素、該へテロ元素を含む基は、リチウムと配位(結合)し得るからである。
錯化剤は、その分子中のヘテロ元素がリチウム元素との親和性が高く、本実施形態の製造方法により得られる硫化物固体電解質に主構造として存在する代表的にはPS構造を含むLiPS等のリチウムを含む構造体、またハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料と結合した集合体を形成しやすい性状を有するものと考えられる。本実施形態において、「固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体」は、これらの構造体、集合体を総称するものであり、好ましくは、錯化剤、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素により形成される。そのため、上記固体電解質原料と、錯化剤とを混合することにより、PS構造等のリチウムを含む構造体あるいは錯化剤を介した集合体、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料あるいは錯化剤を介した集合体が満遍なく存在することとなり、ハロゲン元素がより分散して定着した錯体が得られるので、特定成分の分離によるイオン伝導度の低下を抑制することができ、結果としてイオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られるものと考えられる。
したがって、分子中に少なくとも二つの配位(結合)可能なヘテロ元素を有することが好ましく、分子中に少なくとも二つヘテロ元素を含む基を有することがより好ましい。分子中に少なくとも二つのヘテロ元素を含む基を有することで、PS構造を含むLiPS等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とを、分子中の少なくとも二つのヘテロ元素を介して結合させることができるので、錯体中でハロゲン元素がより分散して定着するため、これらの特定成分の分離によるイオン伝導度の低下を抑制することができ、その結果、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られることとなる。また、ヘテロ元素の中でも、窒素元素が好ましく、窒素元素を含む基としてはアミノ基が好ましい、すなわち錯化剤としてはアミン化合物が好ましい。
アミン化合物としては、分子中にアミノ基を有するものであれば、錯体の形成を促進し得るので特に制限はないが、分子中に少なくとも二つのアミノ基を有する化合物が好ましい。このような構造を有することで、PS構造を含むLiPS等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とを、分子中の少なくとも二つの窒素元素で介して結合させることができるので、錯体中でハロゲン元素がより分散して定着するため、その結果、イオン伝導度の高い硫化物固体電解質が得られることとなる。
このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、芳香族アミン等のアミン化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン等の脂肪族一級ジアミン;N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルジアミノプロパン、N,N’−ジエチルジアミノプロパン等の脂肪族二級ジアミン;N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラエチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノヘキサン等の脂肪族三級ジアミン;などの脂肪族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。ここで、本明細書における例示において、例えばジアミノブタンであれば、特に断りがない限り、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン等のアミノ基の位置に関する異性体の他、ブタンについては直鎖状、分岐状の異性体等の、全ての異性体が含まれるものとする。
脂肪族アミンの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族アミン中の脂肪族炭化水素基の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
脂環式アミンとしては、シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の脂環式一級ジアミン;ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式二級ジアミン;N,N,N’,N’−テトラメチル−シクロヘキサンジアミン、ビス(エチルメチルアミノ)シクロヘキサン等の脂環式三級ジアミン;などの脂環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられ、また、複素環式アミンとしては、イソホロンジアミン等の複素環式一級ジアミン;ピペラジン、ジピペリジルプロパン等の複素環式二級ジアミン;N,N−ジメチルピペラジン、ビスメチルピペリジルプロパン等の複素環式三級ジアミン;などの複素環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
脂環式アミン、複素環式アミンの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
また、芳香族アミンとしては、フェニルジアミン、トリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族一級ジアミン;N−メチルフェニレンジアミン、N,N’−ジメチルフェニレンジアミン、N,N’−ビスメチルフェニルフェニレンジアミン、N,N’−ジメチルナフタレンジアミン、N−ナフチルエチレンジアミン等の芳香族二級ジアミン;N,N−ジメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルナフタレンジアミン等の芳香族三級ジアミン;などの芳香族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
芳香族アミンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
本実施形態で用いられるアミン化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
なお、具体例としてジアミンを例示したが、本実施形態で用いられ得るアミン化合物としては、ジアミンに限らないことは言うまでもなく、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、上記脂肪族ジアミン等の各種ジアミンに対応する脂肪族モノアミン、またピペリジン、メチルピペリジン、テトラメチルピペリジン等のピペリジン化合物、ピリジン、ピコリン等のピリジン化合物、モルホリン、メチルモルホリン、チオモルホリン等のモルホリン化合物、イミダゾール、メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、上記脂環式ジアミンに対応するモノアミン等の脂環式モノアミン、上記複素環式ジアミンに対応する複素環式モノアミン、上記芳香族ジアミンに対応する芳香族モノアミン等のモノアミンの他、例えば、ジエチレントリアミン、N,N’,N’’−トリメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’−ビス[(ジメチルアミノ)エチル]−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアミノ基を3つ以上有するポリアミンも用いることができる。
上記の中でも、より高いイオン伝導度を得る観点から、アミノ基として第三級アミノ基を有する三級アミンであることが好ましく、二つの第三級アミノ基を有する三級ジアミンであることがより好ましく、二つの第三級アミノ基を両末端に有する三級ジアミンが更に好ましく、第三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンがより更に好ましい。上記のアミン化合物において、三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンとしては、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパン、テトラエチルジアミノプロパンが好ましく、入手の容易性等も考慮すると、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパンが好ましい。
アミン化合物以外の他の錯化剤としては、例えば、酸素元素、塩素元素等のハロゲン元素等のヘテロ元素を含む基を有する化合物は、リチウム元素との親和性が高く、上記のアミン化合物以外の他の錯化剤として挙げられる。また、ヘテロ元素として窒素元素を含む、アミノ基以外の基、例えばニトロ基、アミド基等の基を有する化合物も、これと同様の効果が得られる。
上記の他の錯化剤としては、例えばエタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ジメチルホルムアミド等のアルデヒド系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン等のハロゲン元素含有芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等の炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等が挙げられる。これらの中でも、エーテル系溶媒が好ましく、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランがより好ましく、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルが更に好ましい。
(混合)
図1のフロー図に示されるように、固体電解質原料と錯化剤とを反応槽内で混合することで、固体電解質原料と錯化剤とにより形成される、上記錯体を含む錯体スラリーを得る。本実施形態において固体電解質原料と錯化剤とを混合する際の形態は、固体電解質原料が固体を含んでおり、錯化剤は液状であるため、通常液状の錯化剤中に固体の固体電解質原料が存在するスラリー状の形態で混合する。
固体電解質原料は、錯化剤の量1L、後述する溶媒を使用する場合は錯化剤と溶媒との合計量1Lに対して、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上、更に好ましくは30g以上、より更に好ましくは45g以上であり、上限として好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下、更に好ましくは300g以下、より更に好ましくは250g以下である。固体電解質原料の含有量が上記範囲内であると、固体電解質原料が混合しやすくなり、固体電解質原料の分散状態が向上し、原料同士の反応が促進するため、効率的に錯体、更には固体電解質が得られやすくなる。
固体電解質原料と錯化剤との混合の方法には特に制限はなく、反応槽内で固体電解質原料と錯化剤を混合できる装置に、固体電解質原料に含まれる少なくとも一種の原料(化合物)及び錯化剤を投入して混合すればよい。例えば、図3に示されるような反応槽内に、錯化剤を供給し、撹拌翼を作動させた後に、固体電解質原料を徐々に加えていくと、原料の良好な混合状態が得られ、原料の分散性が向上して錯体が得られやすくなるため、好ましい。
また、原料としてハロゲン単体を用いる場合、原料が固体ではない場合があり、具体的には常温常圧下において、フッ素及び塩素は気体、臭素は液体となる。例えば、原料が液体の場合は他の固体の原料とは別に錯化剤とともに反応槽内に供給すればよく、また原料が気体の場合は、錯化剤に固体電解質原料を加えたものに吹き込むように供給すればよい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、固体電解質原料と錯化剤とを反応槽内で混合することを含むことを特徴としており、例えば図3に示されるような、撹拌機を有する反応槽を用いて混合すればよく、ボールミル、ビーズミル等の媒体式粉砕機等の、一般に粉砕機と称される固体原料の粉砕を目的として用いられる機器を用いない方法でも製造できる。本実施形態の製造方法では、固体電解質原料と錯化剤とを単に反応槽内で混合するだけで、固体電解質原料と錯化剤とによる錯体を形成することができ、これを必要に応じて乾燥、加熱等をすることにより、硫化物固体電解質が得られる。
固体電解質原料と錯化剤とを混合する装置としては、例えば反応槽内に撹拌翼を備える機械撹拌式混合機が挙げられる。機械撹拌式混合機は、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられ、固体電解質原料と錯化剤との混合物中の原料の均一性を高めて効率的に均質な錯体を得ることにより、より高いイオン伝導度を得る観点から、高速撹拌型混合機が好ましく用いられる。また、高速撹拌型混合機としては、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機等が挙げられ、どちらのタイプの混合機を用いてもよい。
機械撹拌式混合機において用いられる撹拌翼の形状としては、ブレード型、アーム型、リボン型、多段ブレード型、二連アーム型、ショベル型、二軸羽型、フラット羽根型、C型羽根型等が挙げられ、固体電解質原料と錯化剤との混合物中の原料の均一性を高めて効率的に均質な錯体を得ることにより、より高いイオン伝導度を得る観点から、ショベル型、フラット羽根型、C型羽根型等が好ましい。
固体電解質原料と錯化剤とを混合する際の温度条件としては、特に制限はなく、例えば−30〜100℃、好ましくは−10〜50℃、より好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)である。また混合時間は、0.1〜150時間程度、より均一に混合し、より高いイオン伝導度を得る観点から、好ましくは0.3〜120時間、より好ましくは0.5〜100時間、更に好ましくは0.8〜80時間である。よって、反応槽は、必要に応じて反応槽内の流体を加熱するための加熱手段を備えていてもよい。
固体電解質原料と錯化剤とを反応槽内で混合することで、上記の原料に含まれるリチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素と錯化剤との作用により、これらの元素が錯化剤を介して及び/又は介さずに直接互いに結合した錯体が得られる。すなわち、本実施形態の製造方法において、固体電解質原料と錯化剤とを混合して得られる錯体は、錯化剤、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素により形成されるものであり、上記の固体電解質原料と錯化剤とを混合することにより、錯体を含有する錯体スラリーが得られることとなる。本実施形態において、得られる錯体は、液体である錯化剤に対して完全に溶解するものではなく、固体である錯体を含むスラリーが得られる。したがって、本実施形態の製造方法は、いわゆる液相法における不均一系に相当する。なお、当該スラリーは錯体を含む錯体スラリーと称し得るものであるが、錯体を形成しなかった固体電解質原料、錯化剤等、あるいは固体電解質原料の一部が反応して得られる固体電解質も含まれるものと考えられる。
(錯体)
錯体は、既述のように、錯化剤、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素により形成されるものである。また、錯体はX線回折測定においてX線回折パターンに、原料由来のピークとは異なるピークが観測される、という特徴を有していることから、好ましくは、典型的には、リチウム元素と、他の元素とが、錯化剤を介して及び/又は介さずに直接結合した錯体構造を有するものと考えらえる。単に固体電解質原料のみを混合しただけでは、原料由来のピークが観測されるだけのはずである。しかし、固体電解質原料と錯化剤とを混合することにより、原料由来のピークとは異なるピークが観測されることから、これらの混合により得られる錯体は、固体電解質原料に含まれる原料自体とは明らかに異なる構造を有するものである。このことは実施例において具体的に確認されている。図4〜6には、硫化リチウム等の各原料、錯体及び硫化物固体電解質のX線回折パターンの測定例が示されている。図6のX線回折パターンから、錯体が所定の結晶構造を有していることがわかる。また、その回折パターンは、図5に示した硫化リチウム等のいずれの原料の回折パターンを含むものではなく、錯体が原料とは異なる結晶構造を有していることがわかる。
また、錯体は、結晶性硫化物固体電解質とも異なる構造を有するものであることを特徴とするものである。このことも実施例において具体的に確認されている。図4には結晶性硫化物固体電解質のX線回折パターンも示されており、錯体の回折パターンと異なることがわかる。なお、錯体は所定の結晶構造を有しており、ブロードなパターンを有する非晶性固体電解質とも異なる。
以上の結果から、錯体は、錯化剤、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素により形成されており、典型的には、リチウム元素と、他の元素とが、錯化剤を介して及び/又は介さずに直接結合した錯体構造を形成しているものと推認される。
ここで、錯化剤が錯体を形成していることは、例えば、ガスクロマトグラフィー分析によって確認することができる。具体的には、錯体の粉末をメタノールに溶解させ、得られたメタノール溶液のガスクロマトグラフィー分析を行うことで錯体に含まれる錯化剤を定量することができる。
錯体中の錯化剤の含有量は、錯化剤の分子量により異なるが、通常10質量%以上70質量%以下程度、好ましくは15質量%以上65質量%以下である。
本実施形態において、ハロゲン元素を含む錯体を形成することが、イオン伝導度の向上の点で、好ましい。錯化剤を用いることにより、PS構造等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とが、錯化剤を介して結合(配位)し、ハロゲン元素がより分散して定着した錯体が得られやすくなり、これらの特定成分が分離することなく、イオン伝導度の低下を抑制することができるため、高いイオン伝導度が得られる。
錯体中のハロゲン元素が錯体構造を構成していることは、錯体スラリーの固液分離を行っても所定量のハロゲン元素が錯体に含まれていることによって確認できる。錯体を構成しないハロゲン元素は、錯体を構成するハロゲン元素に比べて容易に溶出し、固液分離の液体中に排出されるからである。また、錯体又は硫化物固体電解質のICP分析(誘導結合プラズマ発光分光分析)による組成分析により、該錯体又は硫化物固体電解質中のハロゲン元素の割合が、原料により供給したハロゲン元素の割合と比べて顕著に低下していないこと、によって確認することもできる。
錯体に留まるハロゲン元素の量は、仕込み組成に対して30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。錯体に留まるハロゲン元素の量の上限は100質量%である。
(冷却すること)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、上記錯体スラリーを冷却装置を備える中間槽に移し冷却すること(以下、冷却する際には実質的に保存も伴うことから、単に「冷却」と称するとともに、「冷却保存」とも称することがある。)、を含む。本冷却保存を行わないと、固体電解質原料として好ましく用いられる、例えば臭化リチウム、ヨウ化リチウム等に由来するハロゲン元素、リチウム元素等のイオン伝導度の発現及び向上に寄与する特定成分が錯体内にとどまらずに分離し、得られる硫化物固体電解質のイオン伝導度が低下することとなる。
既述ように、硫化物固体電解質の製造において、高いイオン伝導度を得るには、特定成分を錯体から分離させることなく保持することが肝要であり、そのため本実施形態の製造方法では錯化剤が用いられている。他方、錯化剤を使用していても、錯体がスラリーの状態で保持されると、当該錯体より特定成分が経時的に分離してしまい、イオン伝導度が低下することが分かってきた。錯体がスラリーの状態で保持されるという状況は、ラボレベルでの固体電解質の作製においても生じる場合があるが、今後量産規模での製造になると、製造調整、機器の不具合等により錯体をスラリーの状態で保持する状況が長期化することで、イオン伝導度の低下を招来する可能性も十分に想定される。本実施形態の製造方法では、錯体スラリーを冷却保存することにより、錯体からの特定成分の分離を極力抑制し、高いイオン伝導度を得ることを可能とした。
よって、本実施形態の製造方法は、より高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る場合はもちろんのこと、硫化物固体電解質の製造過程において、錯体スラリーを作製した後、例えば後述する乾燥すること、加熱すること等を12時間以内、6時間以内、1時間以内等の短時間内に行えない、すなわち錯体を錯体スラリーの状態で長時間保持するような状況となる場合にも対応でき、有効な製造方法であるといえる。
冷却保存することにより、上記特定成分を錯体内にとどまらせ、分離を抑制できる理由については、錯体において錯化剤中のヘテロ元素を介して繋がるPS構造等の構造体のリチウム元素とハロゲン化リチウム等のリチウム元素の結合力が維持され、錯体スラリーにおける錯化剤を介した集合体の化学的安定性が維持されることによるものと考えられるが、その詳細な機構は不明である。所定の温度範囲において完全に溶解するか、全く溶解しないのであれば、溶解度の影響はない(例えば、特許文献2)。しかし、本実施形態の錯体スラリーは、固液共存であるため、溶解度が異なる錯体の各成分が、溶解して又は溶解せずに、スラリーに含まれることとなる。溶解度は温度によって変化するため、錯体スラリーの温度を一定に保つことが錯体スラリーの溶解の状態を維持するには望ましいと考えるのが一般的である。しかも、錯体スラリーを長時間保持した際の目視観察では、冷却保存の有無に関わらず何ら変化は見られなかった。そのため、錯体スラリーの化学的安定性に関する問題を見出すことは困難であった。しかしながら、驚くべきことに本実施形態の製造方法においては、所定の元素と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーを単に冷却保存するという簡易な操作を行うことにより、当該錯体スラリーにおける錯化剤を介した集合体の化学的安定性が得られ、特定成分、とりわけ分離しやすい臭化リチウムに由来する臭素元素、リチウム元素の分離を抑制することができ、より高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られるという特異な効果が得られるに至った。
冷却保存することは、図3に示されるように、錯体スラリーが得られる上記混合の後に行えばよく、後述する乾燥をする場合は、乾燥する前に行えばよい。後述する錯体を粉砕する場合、粉砕することの後に行うことが好ましい。錯体スラリーについて、後述する加熱をする場合、冷却保存することは、粉砕の後、加熱までに行うことが好ましく、後述する乾燥をする場合は、粉砕の後、乾燥までに行うことが好ましい。また、後述する乾燥、加熱を行う場合、通常乾燥を先に行うため、冷却保存することは、粉砕の後、乾燥までに行うことが好ましい。よって、本実施形態において、冷却保存することは、粉砕の後、錯体スラリーを乾燥、または加熱するまでに行われることが好ましい。このようなタイミングで冷却保存することにより、より効率的に特定成分を錯体内にとどまらせることができ、分離によるイオン伝導度の低下を抑制し、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られやすくなる。
図3に示されるフローでは、反応槽内で混合により得られた錯体スラリーを、冷却装置を備える中間槽に移送して冷却保存する態様が示されている。
冷却保存を行う中間槽としては、例えば図3に示されるように、中間槽に冷却装置としてその外壁に水冷ジャケット等の冷却ジャケットを備えるものを用いればよく、冷却ジャケットの媒体は、所望の冷却温度に応じて適宜決定すればよい。
より均一に冷却するため、図3に示されるように、中間槽には混合機(撹拌機)が備えられていてもよく、混合機としては、例えば上記の反応槽が備え得るものとして例示した各混合機から適宜選択して用いればよい。
また、中間槽は、図3に示されるように上記混合を行う反応槽とは別の槽として設けてもよいし、装置の簡略化を図る観点、また錯体スラリーの移送の手間を省く観点から、中間槽は、上記混合を行う反応槽に冷却装置を備えたものを用いることにより、代用することも可能である。
本実施形態において、冷却保存の温度条件としては、室温(23℃)未満とすることが好ましく、より好ましくは20℃以下、更に好ましくは15度以下、より更に好ましくは10℃以下であり、下限としては特に制限はないが、好ましくは−15℃以上、より好ましくは−10℃以上、更に好ましくは−5℃以上、より更に好ましくは0℃以上である。上記温度条件とすると、より効率的に、特定成分を錯体内にとどまらせ、分離によるイオン伝導度の低下を抑制し、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られやすくなる。
また、冷却保存時間としては、硫化物固体電解質の製造過程において、錯体スラリーの状態で保持する時間に応じて決定されるが、極力特定成分の分離を抑制する観点から、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは12時間以上である。また冷却保存時間の上限も、錯体スラリーの状態で保持する時間に応じて決定され、特に制限はないが、例えば240時間以下程度であれば特定成分の分離について、極めて優れた抑制効果が得られ、当該抑制効果の向上の観点から、好ましくは72時間以下、より好ましくは60時間以下、更に好ましくは48時間以下、より更に好ましくは36時間以下である。
(粉砕すること)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、さらに上記錯体を粉砕することを含むことが好ましい。錯体を粉砕することで、イオン伝導度の低下を抑制しながら粒径の小さい硫化物固体電解質が得られる。
本実施形態における錯体の粉砕は、いわゆる固相法のメカニカルミリングと異なり、機械的応力によって非晶性又は結晶性硫化物固体電解質を得るものではない。上記のとおり錯体は錯化剤を含んでおり、PS構造等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とが、錯化剤を介して結合(配位)している。そして、錯体を粉砕すると、上記の結合(配位)、及び分散が維持されたまま、錯体の微粒が得られると考えられる。この錯体を熱処理すると、錯化剤が除去されると同時に錯化剤を介して結合(配位)していた成分が結びつき、結晶性硫化物固体電解質への反応が容易に起こる。そのため、通常の固体電解質の合成で見られるような粒子同士の凝集による大きな粒成長が生じにくく、容易に微粒化することができる。
また、全固体電池の性能及び製造等の観点から、硫化物固体電解質の粒径は小さいことが望ましいが、ビーズミル等を用いた粉砕によって硫化物固体電解質を微粒化することは容易ではない。例えば溶媒を用いる湿式粉砕により、ある程度の微粒化が可能であるが、溶媒により硫化物固体電解質が劣化しやすく、また、粉砕中の凝集が起こりやすいため、粉砕に過大な負荷がかかるという問題がある。一方、溶媒を用いずに乾式粉砕を行ってもサブミクロンまで微粒化することは困難である。このような状況下、錯体の粉砕を行うという容易な処理により、全固体電池の性能を向上させ、また製造効率を向上させることができることは、大きなメリットとなり得る。
さらに、粉砕に伴う攪拌混合によって、PS構造等のリチウムを含む構造体あるいは錯化剤を介した集合体、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料あるいは錯化剤を介した集合体を満遍なく存在させやすくなり、ハロゲン元素がより分散して定着した錯体が得られるので、結果として、微粒化とともに、高いイオン伝導度が得られるという効果が発揮されやすくなる。
錯体の粉砕に用いる粉砕機としては、粒子を粉砕できるものであれば特に制限なく、例えば、粉砕媒体を用いた媒体式粉砕機を用いることができる。媒体式粉砕機の中でも、錯体が、主に錯化剤、溶媒等の液体を伴う、主にスラリー状態であることを考慮すると、湿式粉砕に対応できる湿式粉砕機であることが好ましい。
湿式粉砕機としては、湿式ビーズミル、湿式ボールミル、湿式振動ミル等が代表的に挙げられ、粉砕操作の条件を自由に調整でき、より小さい粒径のものに対応しやすい点で、ビーズを粉砕メディアとして用いる湿式ビーズミルが好ましい。また、乾式ビーズミル、乾式ボールミル、乾式振動ミル等の乾式媒体式粉砕機、ジェットミル等の乾式非媒体粉砕機等の乾式粉砕機を用いることもできる。
また、粉砕機で粉砕する錯体は、通常固体電解質原料と錯化剤とを混合して得られる混合物として供給され、主にスラリー状態で供給される、すなわち粉砕機で粉砕する対象物は、主に錯体を含有する錯体スラリーとなる。よって、本実施形態で用いられる粉砕機は、錯体スラリーを、必要に応じて循環させる循環運転が可能である、流通式の粉砕機であることが好ましい。より具体的には、特開2010−140893号公報に記載されているような、スラリーを粉砕する粉砕機(粉砕混合機)と、温度保持槽(反応槽)との間で循環させるような形態の粉砕機を用いることが好ましい。
上記粉砕機で用いられるビーズのサイズは、所望の粒径、処理量等に応じて適宜選択すればよく、例えばビーズの直径として、0.05mmφ以上5.0mmφ以下程度とすればよく、好ましくは0.1mmφ以上3.0mmφ以下、より好ましくは0.3mmφ以上1.5mmφ以下である。
錯体の粉砕に用いる粉砕機としては、超音波を用いて対象物を粉砕し得る機械、例えば超音波粉砕機、超音波ホモジナイザー、プローブ超音波粉砕機等と称される機械を用いることができる。
この場合、超音波の周波数等の諸条件は、所望の錯体の平均粒径等に応じて適宜選択すればよく、周波数は、例えば1kHz以上100kHz以下程度とすればよく、より効率的に錯体を粉砕する観点から、好ましくは3kHz以上50kHz以下、より好ましくは5kHz以上40kHz以下、更に好ましくは10kHz以上30kHz以下である。
また、超音波粉砕機が有する出力としては、通常500〜16,000W程度であればよく、好ましくは600〜10,000W、より好ましくは750〜5,000W、更に好ましくは900〜1,500Wである。
粉砕することにより得られる錯体の平均粒径(D50)は、所望に応じて適宜決定されるものであるが、通常0.01μm以上50μm以下であり、好ましくは0.03μm以上5μm以下、より好ましくは0.05μm以上3μm以下である。このような平均粒径とすることで、例えば平均粒径1μm以下という小さい粒径の要望があった場合には、対応することが可能となる。
粉砕する時間としては、通常0.1時間以上100時間以内であり、効率的に粒径を所望のサイズとする観点から、好ましくは0.3時間以上72時間以下、より好ましくは0.5時間以上48時間以下、更に好ましくは0.8時間以上24時間以下である。
粉砕することは、錯体を粉砕できれば、どのタイミングで行ってもよく、より効率的に粒径を所望のサイズとする観点、またより効率的に特定成分を錯体内にとどまらせ、分離によるイオン伝導度の低下を抑制し、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る観点から、冷却保存の前、例えば上記混合の際に(上記混合と同時に)、上記混合の後に行うことが好ましく、上記混合の後に行うことがより好ましい。
なお、後述する乾燥を行う場合、粉砕することは、乾燥の後に行うこともできる。この場合、本製造方法において用い得る粉砕機として例示した上記の粉砕機の中でも、乾式粉砕機のいずれかを用いることが好ましい。その他、粉砕条件等の粉砕に関する事項は、錯体スラリーの粉砕と同じであり、また粉砕により得られる錯体の平均粒径も上記と同様である。
(乾燥すること)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む、すなわち、乾燥、加熱、又は乾燥及び加熱の処理をする構成を含む。本実施形態の製造方法において、当該スラリーは、好ましくは錯体スラリーである。よって、本実施形態の製造方法は、錯体スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含むことが好ましい。
スラリーが錯体スラリーである場合、当該一の処理をする構成を含むことにより錯体の粉末が得られる。例えば、結晶性の硫化物固体電解質を得る場合は、好ましくは後述する加熱を行うこととなるが、事前に乾燥することにより、効率的に加熱することを行うことが可能となる。なお、乾燥と、その後の加熱とを同一工程で行ってもよい。
乾燥を行う装置としては、特に制限なく採用することができ、例えばホットプレート、真空加熱乾燥装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉、また工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等が挙げられる。
乾燥は、錯体スラリーを、残存する錯化剤(錯体内に取り込まれない錯化剤)の種類に応じた温度で行うことができる。例えば、錯化剤の沸点以上の温度で行うことができる。また、通常5〜100℃、好ましくは10〜85℃、より好ましくは15〜70℃、より更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)で真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、錯化剤を揮発させて行うことができる。
また、乾燥は、錯体スラリーをガラスフィルター等を用いたろ過、デカンテーションによる固液分離、また遠心分離機等を用いた固液分離により行ってもよい。本実施形態においては、固液分離を行った後、上記の温度条件による乾燥を行ってもよい。
固液分離は、具体的には、錯体スラリーを容器に移し、錯体スラリーが沈殿した後に、上澄みとなる錯化剤、溶媒を除去するデカンテーション、また例えばポアサイズが10〜200μm程度、好ましくは20〜150μmのガラスフィルターを用いたろ過が容易である。
(加熱すること)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、錯体を加熱することを含み得る。加熱は、錯体スラリーを加熱してもよいし、上記乾燥を行う場合は錯体の粉末を加熱してもよい。また、錯体は上記粉砕により粉砕されたものであってもよい。
錯体を加熱することにより、錯体中の錯化剤を除去し、かつリチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む非晶性硫化物固体電解質を得ることもできるし、更に結晶性硫化物固体電解質を得ることもできる。
ここで、錯体中の錯化剤が除去されることについては、X線回折パターン、ガスクロマトグラフィー分析等の結果から錯化剤が錯体を形成していることが明らかであることに加え、錯体を加熱することで錯化剤を除去して得られた硫化物固体電解質が、錯化剤を用いずに従来の方法により得られた固体電解質とX線回折パターンが同じであることにより裏づけされる。
本実施形態の製造方法において、硫化物固体電解質は、錯体を加熱することにより、該錯体中の錯化剤を除去して得られ、硫化物固体電解質中の錯化剤は少ないほど好ましいものであるが、固体電解質の性能を害さない程度に錯化剤が含まれていてもよい。硫化物固体電解質中の錯化剤の含有量は、通常10質量%以下となっていればよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
本実施形態の製造方法において、結晶性硫化物固体電解質を得るには、錯体を加熱して直接得ることもできるし、また錯体を加熱して非晶性硫化物固体電解質を得た後、該非晶性硫化物固体電解質を加熱して得ることもできる。すなわち、本実施形態の製造方法によれば、非晶性硫化物固体電解質を製造することもできる。
従来、イオン伝導度が高い結晶性固体電解質、例えば後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する固体電解質を得るには、メカニカルミリング等の機械的粉砕処理、その他溶融急冷処理等により非晶性固体電解質を作製した後に該非晶性固体電解質を加熱して得ることを要していた。しかし、本実施形態の製造方法では、機械的粉砕処理、その他溶融急冷処理等を行わない方法によってもチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する結晶性固体電解質が得られる点で、従来のメカニカルミリング処理等による製造方法に比べて優位であるといえる。
本実施形態の製造方法において、非晶性硫化物固体電解質を得るか、結晶性硫化物固体電解質を得るか、さらには非晶性硫化物固体電解質を得てから結晶性硫化物固体電解質を得るか、錯体から直接結晶性硫化物固体電解質を得るかは、所望に応じて適宜選択されるものであり、加熱温度、加熱時間等により調整することが可能である。
錯体の加熱温度は、例えば、非晶性硫化物固体電解質を得る場合、該非晶性硫化物固体電解質(又は錯体)を加熱して得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、具体的には、該非晶性硫化物固体電解質(又は錯体)を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは20℃以下の範囲とすればよく、下限としては特に制限はないが、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度−40℃以上程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に非晶性硫化物固体電解質が得られる。非晶性硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、135℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、125℃以下が更に好ましく、下限としては特に制限はないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。
また、非晶性硫化物固体電解質を加熱して、又は錯体から直接結晶性硫化物固体電解質を得る場合、結晶性硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、非晶性硫化物固体電解質を得るための上記加熱温度よりも高いことが好ましく、具体的には、該非晶性硫化物固体電解質(又は錯体)を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度(当該温度を「結晶化温度」と称することがある。)を起点に、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上の範囲とすればよく、上限としては特に制限はないが、40℃以下程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に結晶性硫化物固体電解質が得られる。結晶性硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、上限としては特に制限はないが、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
加熱時間は、所望の非晶性硫化物固体電解質、結晶性硫化物固体電解質が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
また、加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、または減圧雰囲気(特に真空中)で行なうことが好ましい。結晶性硫化物固体電解質の劣化(例えば、酸化)を防止できるからである。加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
(非晶性硫化物固体電解質)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる非晶性硫化物固体電解質としては、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含んでおり、代表的なものとしては、例えば、LiS−P−LiI、LiS−P−LiCl、LiS−P−LiBr、LiS−P−LiI−LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質;更に酸素元素、珪素元素等の他の元素を含む、例えば、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS−P−LiI等の固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、LiS−P−LiI、LiS−P−LiCl、LiS−P−LiBr、LiS−P−LiI−LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質が好ましい。
非晶性硫化物固体電解質を構成する元素の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
本実施形態の製造方法において得られる非晶性硫化物固体電解質が、少なくともLiS−Pを有するものである場合、LiSとPとのモル比は、より高いイオン伝導度を得る観点から、65〜85:15〜35が好ましく、70〜80:20〜30がより好ましく、72〜78:22〜28が更に好ましい。
本実施形態の製造方法において得られる非晶性硫化物固体電解質が、例えば、LiS−P−LiI−LiBrである場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量の合計は、60〜95mol%が好ましく、65〜90mol%がより好ましく、70〜85mol%が更に好ましい。また、臭化リチウムとヨウ化リチウムとの合計に対する臭化リチウムの割合は、1〜99mol%が好ましく、20〜90mol%がより好ましく、40〜80mol%が更に好ましく、45〜65mol%が特に好ましい。
本実施形態の製造方法において得られる非晶性硫化物固体電解質において、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素の配合比(モル比)は、1.0〜1.8:1.0〜2.0:0.1〜0.8:0.01〜0.6が好ましく、1.1〜1.7:1.2〜1.8:0.2〜0.6:0.05〜0.5がより好ましく、1.2〜1.6:1.3〜1.7:0.25〜0.5:0.08〜0.4が更に好ましい。また、ハロゲン元素として、臭素及びヨウ素を併用する場合、リチウム元素、硫黄元素、リン元素、臭素、及びヨウ素の配合比(モル比)は、1.0〜1.8:1.0〜2.0:0.1〜0.8:0.01〜0.3:0.01〜0.3が好ましく、1.1〜1.7:1.2〜1.8:0.2〜0.6:0.02〜0.25:0.02〜0.25がより好ましく、1.2〜1.6:1.3〜1.7:0.25〜0.5:0.03〜0.2:0.03〜0.2がより好ましく、1.35〜1.45:1.4〜1.7:0.3〜0.45:0.04〜0.18:0.04〜0.18が更に好ましい。リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素の配合比(モル比)を上記範囲内とすることにより、後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する、より高いイオン伝導度の硫化物固体電解質が得られやすくなる。
また、非晶性硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の非晶性硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm〜500μm、0.1〜200μmの範囲内を例示できる。
(結晶性固体電解質)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスであってもよく、その結晶構造としては、LiPS結晶構造、Li結晶構造、LiPS結晶構造、Li11結晶構造、2θ=20.2°近傍及び23.6°近傍にピークを有する結晶構造(例えば、特開2013−16423号公報)等が挙げられる。
また、Li4−xGe1−x系チオリシコンリージョンII(thio−LISICON Region II)型結晶構造(Kannoら、Journal of The Electrochemical Society,148(7)A742−746(2001)参照)、Li4−xGe1−x系チオリシコンリージョンII(thio−LISICON Region II)型と類似の結晶構造(Solid State Ionics,177(2006),2721−2725参照)等も挙げられる。
本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質の結晶構造は、より高いイオン伝導度が得られる点で、上記の中でもチオリシコンリージョンII型結晶構造であることが好ましい。ここで、「チオリシコンリージョンII型結晶構造」は、Li4−xGe1−x系チオリシコンリージョンII(thio−LISICON Region II)型結晶構造、Li4−xGe1−x系チオリシコンリージョンII(thio−LISICON Region II)型と類似の結晶構造のいずれかであることを示す。また、本実施形態の製造方法で得られる結晶性硫化物固体電解質は、上記チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであってもよいし、主結晶として有するものであってもよいが、より高いイオン伝導度を得る観点から、主結晶として有するものであることが好ましい。本明細書において、「主結晶として有する」とは、結晶構造のうち対象となる結晶構造の割合が80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、より高いイオン伝導度を得る観点から、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。
CuKα線を用いたX線回折測定において、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.5°、18.3°、26.1°、27.3°、30.0°付近に現れ、Li結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=16.9°、27.1°、32.5°付近に現れ、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=15.3°、25.2°、29.6°、31.0°付近に現れ、Li11結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.8°、18.5°、19.7°、21.8°、23.7°、25.9°、29.6°、30.0°付近に現れ、Li4−xGe1−x系チオリシコンリージョンII(thio−LISICON Region II)型結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.1°、23.9°、29.5°付近に現れ、Li4−xGe1−x系チオリシコンリージョンII(thio−LISICON Region II)型と類似の結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.2、23.6°付近に現れる。
上記したとおり、本実施形態においてチオリシコンリージョンII型結晶構造が得られる場合には、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。図4に本実施形態の製造方法により得られた結晶性硫化物固体電解質のX線回折測定例を示す。また、図5に結晶性LiPS(β-LiPS)のX線回折測定例を示す。図4及び図5から把握されるように、本実施形態の製造方法により得られた硫化物固体電解質は、結晶性LiPSに見られる2θ=17.5°、26.1°の回折ピークを有しないか、有している場合であってもチオリシコンリージョンII型結晶構造の回折ピークに比べて極めて小さいピークが検出される程度である。
上記のLiPSの構造骨格を有し、Pの一部をSiで置換してなる組成式Li7−x1−ySi及びLi7+x1−ySi(xは−0.6〜0.6、yは0.1〜0.6)で示される結晶構造は、立方晶又は斜方晶、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。上記の組成式Li7−x−2yPS6−x−yCl(0.8≦x≦1.7、0<y≦−0.25x+0.5)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。また、上記の組成式Li7−xPS6−xHa(HaはClもしくはBr、xが好ましくは0.2〜1.8)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。
なお、以上の各結晶構造のピーク位置については、±1.0°の範囲内で前後していてもよい。
結晶性硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の結晶性硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm〜500μm、0.1〜200μmの範囲内を例示できる。
(実施形態B)
次に実施形態Bについて説明する。
実施形態Bは、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤と、を混合することを含むことを特徴とする本実施形態の製造方法において、固体電解質原料としてLiPS等の固体電解質、例えば好ましくは非晶性LiPS、結晶性LiPS等を含む原料と錯化剤とを用いる形態である。上記実施形態Aでは、本実施形態の製造方法によって得られる硫化物固体電解質に主構造として存在するLiPS等のリチウムを含む構造体を、硫化リチウム等の原料同士の反応により合成しつつ錯体を形成するため、上記構造体の構成比率が小さいものとなりやすいと考えられる。
そこで、実施形態Bでは、先に上記構造体を含む固体電解質を製造する等して用意し、これを固体電解質原料として使用する。これにより、固体電解質原料として用いる上記構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とが、錯化剤を介して結合(配位)し、ハロゲン元素が分散して定着した錯体が、より得られやすくなる。その結果、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られることとなる。また、副次的な効果として、硫化水素の発生を抑制することもできる。
実施形態Bで用いられ得るリチウム元素、硫黄元素及びリン元素を含む固体電解質原料としては、より高いイオン伝導度を得る観点から、分子構造としてPS構造を有する非晶性固体電解質、または結晶性固体電解質等、好ましくは非晶性LiPS、結晶性LiPSが挙げられる。また、硫化水素の発生を抑制することを考慮すると、P構造を含まない非晶性固体電解質、または結晶性固体電解質が好ましい。これらの固体電解質は、例えばメカニカルミリング法、スラリー法、溶融急冷法等の従来より存在する製造方法により製造したものを用いることができ、市販品を用いることもできる。
また、この場合、リチウム元素、硫黄元素及びリン元素を含む固体電解質は、非晶性固体電解質であることが好ましい。錯体中のハロゲン元素の分散性が向上し、ハロゲン元素と固体電解質中のリチウム元素、硫黄元素及びリン元素との結合が生じやすくなり、結果としてより高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得ることができる。
実施形態Bにおいて、固体電解質原料の合計に対するPS構造を有する非晶性固体電解質等の含有量は、60〜100mol%が好ましく、65〜90mol%がより好ましく、70〜80mol%が更に好ましい。
PS構造を有する非晶性固体電解質等とハロゲン単体とを用いる場合、PS構造を有する非晶性固体電解質等に対するハロゲン単体の含有量は、1〜50mol%が好ましく、2〜40mol%がより好ましく、3〜25mol%が更に好ましく、3〜15mol%が更により好ましい。
その他、ハロゲン単体とハロゲン化リチウムとを用いる場合、二種のハロゲン単体を用いる場合については、実施形態Aと同様である。
実施形態Bにおいて、上記の原料以外については、例えば、錯化剤、混合、冷却保存、乾燥、加熱、非晶性固体電解質、結晶性固体電解質等については、上記実施形態Aで説明したものと同じである。
また、実施形態Bにおいて、錯体を粉砕することが好ましいこと、粉砕することに用いられる粉砕機、混合することの後、又は乾燥することの後に粉砕を行い得ること、粉砕することに関する諸条件等についても、上記実施形態Aと同じである。
(実施形態C及びD)
図2のフロー図に示されるように、実施形態C及びDは、上記の実施形態A及びBにおける固体電解質原料及び錯化剤に、溶媒を加えた点でそれぞれ異なる。実施形態C及びDは、固液共存の不均一法であり、実施形態A及びBでは、液体である錯化剤中において、固体である電解質前駆体が形成される。このとき、錯体が錯化剤に溶解しやすいものであると、成分の分離が生じる場合がある。実施形態C及びDでは、錯体が溶解しない溶媒を使用することで、錯体中の成分の溶出を抑えることができる。
(溶媒)
実施形態C及びDの硫化物固体電解質の製造方法では、固体電解質原料と錯化剤に、錯体が溶解しない溶媒を加えて、固体電解質原料と錯化剤と錯体が溶解しない溶媒とを混合する。溶媒を用いて固体電解質原料と錯化剤とを混合することで、上記の錯化剤を用いることによる効果、すなわちリチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素と作用した錯体の形成が促進され、PS構造等のリチウムを含む構造体あるいは錯化剤を介した集合体、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料あるいは錯化剤を介した集合体を満遍なく存在させやすくなり、ハロゲン元素がより分散して定着した錯体が得られるので、結果として高いイオン伝導度が得られるという効果が発揮されやすくなる。
本実施形態の製造方法は、いわゆる不均一法であり、錯体は、液体である錯化剤に対して完全に溶解せず析出することが好ましい。実施形態C及びDでは、溶媒を加えることによって錯体の溶解性を調整することができる。特にハロゲン元素は錯体から分離しやすいため、溶媒を加えることによってハロゲン元素の分離を抑えて所望の錯体が得られる。その結果、ハロゲン等の成分が分散した錯体を経て、高いイオン伝導度を有する結晶性硫化物固体電解質が得られる。
このような性状を有する溶媒としては、溶解度パラメータが10以下の溶媒が好ましく挙げられる。本明細書において、溶解度パラメータは、各種文献、例えば「化学便覧」(平成16年発行、改定5版、丸善株式会社)等に記載されており、以下の数式(1)により算出される値δ((cal/cm1/2)であり、ヒルデブランドパラメータ、SP値とも称される。
Figure 0006896202

(数式(1)中、ΔHはモル発熱であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Vはモル体積である。)
溶解度パラメータが10以下の溶媒を用いることにより、上記の錯化剤に比べて相対的にハロゲン元素、ハロゲン化リチウム等のハロゲン元素を含む固体電解質原料、更には錯体を構成するハロゲン元素を含む成分(例えば、ハロゲン化リチウムと錯化剤とが結合した集合体)等を溶解しにくい性状を有することとなり、錯体内にハロゲン元素を定着させやすくなり、得られる錯体、更には硫化物固体電解質中に良好な分散状態でハロゲン元素が存在することとなり、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られやすくなる。すなわち、本実施形態で用いられる溶媒は、錯体を溶解しない性状を有することが好ましい。これと同様の観点から、溶媒の溶解度パラメータは、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。
実施形態C及びDの製造方法で用いられる溶媒としては、より具体的には、固体電解質の製造において従来より用いられてきた溶媒を広く採用することが可能であり、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の炭化水素溶媒;アルコール系溶媒、エステル系溶媒、アルデヒド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等の炭素原子を含む溶媒;等が挙げられ、これらの中から、好ましくは溶解度パラメータが上記範囲であるものから、適宜選択して用いればよい。
より具体的には、ヘキサン(7.3)、ペンタン(7.0)、2−エチルヘキサン、ヘプタン(7.4)、オクタン(7.5)、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン(8.2)、メチルシクロヘキサン(7.8)等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン(8.8)、キシレン(8.8)、メシチレン、エチルベンゼン(8.8)、tert−ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン(9.5)、クロロトルエン(8.8)、ブロモベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;エタノール(12.7)、ブタノール(11.4)等のアルコール系溶媒;酢酸エチル(9.1)、酢酸ブチル(8.5)等のエステル系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド(10.3)、ジメチルホルムアミド(12.1)等のアルデヒド系溶媒、アセトン(9.9)、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル(7.4)、ジイソプロピルエーテル(6.9)、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(9.1)、ジメトキシエタン(7.3)、シクロペンチルメチルエーテル(8.4)、tert−ブチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトニトリル(11.9)、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等の炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等が挙げられる。なお、上記例示における括弧内の数値はSP値である。
これらの溶媒の中でも、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、より安定して高いイオン伝導度を得る観点から、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、アニソールがより好ましく、メチルシクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルが更に好ましく、メチルシクロヘキサン、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルがより更に好ましく、特にメチルシクロヘキサンが好ましい。本実施形態で用いられる溶媒は、好ましくは上記例示した有機溶媒であり、上記の錯化剤と異なる有機溶媒である。本実施形態においては、これらの溶媒を単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
溶媒を用いる場合、上記の原料含有物中の原料の含有量は、錯化剤及び溶媒の合計量1Lに対するものとすればよい。
実施形態C及びDにおける乾燥は、錯体スラリーを、残存する錯化剤(錯体内に取り込まれない錯化剤)及び溶媒の種類に応じた温度で行うことができる。例えば、錯化剤又は溶媒の沸点以上の温度で行うことができ、通常5〜100℃、好ましくは10〜85℃、より好ましくは15〜70℃、より更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)で真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、錯化剤及び溶媒を揮発させて行うことができる。また、実施形態C及びDにおける加熱では、電解質前駆体中に溶媒が残存している場合は、溶媒も除去されることとなる。
ただし、溶媒は錯体を形成する錯化剤と異なり、錯体を形成しにくくなる。したがって、錯体中に残存し得る溶媒は、通常3質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
実施形態Cにおいて、上記の溶媒に関する点以外については、例えば、錯化剤、混合、冷却保存、乾燥、加熱、非晶性固体電解質、結晶性固体電解質等については、上記実施形態Aで説明したものと同じである。また実施形態Dにおいても、上記の溶媒に関する点以外については、上記実施形態Bと同じである。
また、実施形態C及びDにおいて、錯体を粉砕することが好ましいこと、粉砕することに用いられる粉砕機、混合することの後、又は乾燥することの後に粉砕を行い得ること、粉砕することに関する諸条件等についても、上記実施形態Aと同じである。
本実施形態の製造方法により得られる硫化物固体電解質は、イオン伝導度が高く、優れた電池性能を有しているため、電池に好適に用いられる。伝導種としてリチウム元素を採用した場合、特に好適である。本実施形態の製造方法により得られる硫化物固体電解質は、正極層に用いてもよく、負極層に用いてもよく、電解質層に用いてもよい。なお、各層は、公知の方法により製造することができる。
〔正極合材、負極合材〕
例えば、正極層、負極層に用いる場合には、錯体スラリーに、正極活物質、負極活物質をそれぞれ分散させて混合し、乾燥させることで、活物質表面に錯体が付着させ、さらに上記の実施形態と同様に、錯体を加熱することで非晶質硫化物固体電解質又は結晶性硫化物固体電解質となる。このときに活物質とともに加熱することで活物質表面に硫化物固体電解質が付着した正極合材、または負極合材が得られる。
正極活物質としては、負極活物質との関係で、本実施形態においてイオン伝導度を発現させる元素として好ましく採用されるリチウム元素に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な正極活物質としては、酸化物系正極活物質、硫化物系正極活物質等が挙げられる。
酸化物系正極活物質としてはLMO(マンガン酸リチウム)、LCO(コバルト酸リチウム)、NMC(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、NCA(ニッケルコバルトアルミ酸リチウム)、LNCO(ニッケルコバルト酸リチウム)、オリビン型化合物(LiMeNPO、Me=Fe、Co、Ni、Mn)等のリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましく挙げられる。
硫化物系正極活物質としては、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni)等が挙げられる。
また、上記正極活物質の他、セレン化ニオブ(NbSe)等も使用可能である。
本実施形態において、正極活物質は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
負極活物質としては、本実施形態においてイオン伝導度を発現させる元素として好ましく採用される元素、好ましくはリチウム元素と合金を形成し得る金属、その酸化物、当該金属とリチウム元素との合金等の、好ましくはリチウム元素に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な負極活物質としては、電池分野において負極活物質として公知のものを制限なく採用することができる。
このような負極活物質としては、例えば、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属リチウム又は金属リチウムと合金を形成し得る金属、これら金属の酸化物、またこれら金属と金属リチウムとの合金等が挙げられる。
本実施形態で用いられる電極活物質は、その表面がコーティングされた、被覆層を有するものであってもよい。
被覆層を形成する材料としては、本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質においてイオン伝導度を発現する元素、好ましくはリチウム元素の窒化物、酸化物、又はこれらの複合物等のイオン伝導体が挙げられる。具体的には、窒化リチウム(LiN)、LiGeOを主構造とする、例えばLi4−2xZnGeO等のリシコン型結晶構造を有する伝導体、LiPO型の骨格構造を有する例えばLi4−xGe1−x等のチオリシコン型結晶構造を有する伝導体、La2/3−xLi3xTiO等のペロブスカイト型結晶構造を有する伝導体、LiTi(PO等のNASICON型結晶構造を有する伝導体等が挙げられる。
また、LiTi3−y(0<y<3)、LiTi12(LTO)等のチタン酸リチウム、LiNbO、LiTaO等の周期表の第5族に属する金属の金属酸リチウム、またLiO−B−P系、LiO−B−ZnO系、LiO−Al−SiO−P−TiO系等の酸化物系の伝導体等が挙げられる。
被覆層を有する電極活物質は、例えば電極活物質の表面に、被覆層を形成する材料を構成する各種元素を含む溶液を付着させ、付着後の電極活物質を好ましくは200℃以上400℃以下で焼成することにより得られる。
ここで、各種元素を含む溶液としては、例えばリチウムエトキシド、チタンイソプロポキシド、ニオブイソプロポキシド、タンタルイソプロポキシド等の各種金属のアルコキシドを含む溶液を用いればよい。この場合、溶媒としては、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を用いればよい。
また、上記の付着は、浸漬、スプレーコーティング等により行えばよい。
焼成温度としては、製造効率及び電池性能の向上の観点から、上記200℃以上400℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以上390℃以下であり、焼成時間としては、通常1分〜10時間程度であり、好ましくは10分〜4時間である。
被覆層の被覆率としては、電極活物質の表面積を基準として好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは100%、すなわち全面が被覆されていることが好ましい。また、被覆層の厚さは、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、上限として好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下である。
被覆層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、被覆層の厚さを測定することができ、被覆率は、被覆層の厚さと、元素分析値、BET表面積と、から算出することができる。
また、上記電池は、正極層、電解質層及び負極層の他に集電体を使用することが好ましく、集電体は公知のものを用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、上記の固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
(参考例1)
1Lの撹拌翼付き反応槽に、窒素雰囲気下で硫化リチウム13.19g、五硫化二リン21.26g、臭化リチウム4.15g及びヨウ化リチウム6.40gを導入した。これに、錯化剤としてテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)100mL、溶媒としてメチルシクロヘキサン800mLを加えて、撹拌翼を作動させて、攪拌による混合を行った。循環運転可能なビーズミル(「スターミルLMZ015(型番)」、アシザワ・ファインテック株式会社製)に、ジルコニアボール(直径:0.5mmφ)を456g(粉砕室に対するビーズ充填率:80%)を仕込み、上記反応槽と粉砕室との間を、ポンプ流量:550mL/min、周速:8m/s、ミルジャケット温度:20℃の条件で循環させながら、60分の粉砕を行い、錯体スラリーを得た。
次いで、得られた錯体スラリーを、直ちに真空下で室温(23℃)で乾燥し、粉末の錯体を得た。次いで、錯体の粉末を真空下で120℃で加熱を2時間行い、非晶性固体電解質を得た。更に、非晶性固体電解質を真空下で200℃で加熱を2時間行い、結晶性固体電解質を得た。
参考例1で得られた結晶性硫化物固体電解質について、X線回折(XRD)装置(「D2 Phaser(商品名)」、ブルカージャパン株式会社製)を用いて粉末X線回折(XRD)測定を行った。そのX線回折スペクトルを図4に示す。また参考例1で得られた錯体、非晶性硫化物固体電解質についても同様の方法で粉末X線回折(XRD)測定を行い、そのX線回折スペクトルを上記結晶性硫化物固体電解質のX線回折スペクトルとともに図6に示す。図4及び6より、参考例1で得られた結晶性硫化物固体電解質は、後述する実施例1と同様に主に2θ=20.2°、23.6°に結晶化ピークが検出されて、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであった。また、得られた結晶性硫化物固体電解質について、イオン伝導度を測定したところ、4.1(mS/cm)であった。
本実施例において、イオン伝導度の測定は、以下のようにして行った。
得られた結晶性硫化物固体電解質から、直径10mm(断面積S:0.785cm)、高さ(L)0.1〜0.3cmの円形ペレットを成形して試料とした。その試料の上下から電極端子を取り、25℃において交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:5MHz〜0.5Hz、振幅:10mV)、Cole−Coleプロットを得た。高周波側領域に観測される円弧の右端付近で、−Z’’(Ω)が最小となる点での実数部Z’(Ω)を電解質のバルク抵抗R(Ω)とし、以下式に従い、イオン伝導度σ(S/cm)を計算した。
R=ρ(L/S)
σ=1/ρ
(参考例2)
1Lの撹拌翼付き反応槽に、窒素雰囲気下で硫化リチウム15.3g、五硫化二リン24.7gを添加した。撹拌翼を作動させた後、予め−20℃に冷却したテトラヒドロフラン400mLを容器に導入した。室温(23℃)まで自然昇温させた後、72時間撹拌を継続し、得られた反応液スラリーをガラスフィルター(ポアサイズ:40〜100μm)に投入して固形分を得た後、固形分を90℃で乾燥させることにより、白色粉末としてLiPS(純度:90質量%)を38g得た。得られた粉末について、X線回折(XRD)装置(SmartLab装置、(株)リガク製)を用いて粉末X線回折(XRD)測定を行ったところ、ハローパターンを示し、非晶性のLiPSであることが確認された。
(参考例3)
参考例2で得られた白色粉末LiPSを、180℃で真空乾燥を2時間行うことで、β−LiPS(結晶性)を得た。
固体電解質原料として用いた参考例2の非晶性のLiPS、硫化リチウム、五硫化二リン、臭化リチウム及びヨウ化リチウム、さらに参考例3のβ−LiPS(結晶性)について、粉末X線回折(XRD)測定を行った。そのX線回折スペクトルを図5に示す。
(実施例1)
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、冷蔵庫(設定温度:−5℃)にて1日冷却保存した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質について、参考例1と同様にして粉末X線回折(XRD)測定を行った。そのX線回折スペクトルを図4に示す。また、得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
(実施例2)
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、冷蔵庫(設定温度:−5℃)にて2日冷却保存した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
(実施例3)
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、反応槽のジャケットに冷媒を循環させて、反応槽内の温度を10℃に保ちながら1日冷却保存した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
(実施例4)
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、反応槽のジャケットに冷媒を循環させて、反応槽内の温度を10℃に保ちながら2日冷却保存した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
(比較例1)
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、室温(23℃)下で1日保管した以外は、参考例と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質について、参考例1と同様にして粉末X線回折(XRD)測定を行った。そのX線回折スペクトルを図4に示す。また、得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
(比較例2)
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、室温(23℃)下で2日保管した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
Figure 0006896202
第1表に示されるように、本実施形態の製造方法によれば、錯体スラリーの状態で長時間保持しても、錯体スラリーを調製した後、直ちに乾燥、加熱等を行った参考例で得られた硫化物固体電解質と同様に、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られることが確認された。一方、錯体スラリーを冷却保存せずに長時間保持した比較例1及び2では、イオン伝導度が著しく低下することが確認された。
図4より、参考例1、実施例1及び比較例1で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトルについて、いずれの例の硫化物固体電解質も、主に2θ=20.2°、23.6°に結晶化ピークが検出されて、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであることが確認された。
また、比較例1で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトルでは、2θ=28.1°に臭化リチウムに由来する結晶化ピークが検出されている。これは、冷却保存せずに錯体スラリーを長時間保持したことにより、臭化リチウムが錯体より分離し、硫化物固体電解質内に取り込まれなかったため、得られた硫化物固体電解質はチオリシコンリージョンII型結晶構造を有しているにもかかわらず、イオン伝導度が参考例1、実施例に比べて低下したと考えられる。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法によれば、イオン伝導度が高く、電池性能に優れる硫化物固体電解質を製造することができる。本実施形態の製造方法により得られる硫化物固体電解質は、電池に、とりわけ、パソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等に用いられる電池に好適に用いられる。

Claims (13)

  1. スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤とを反応槽内で混合し、前記固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーを得ること、前記錯体スラリーを冷却装置を備える中間槽に移し冷却することを含む、硫化物固体電解質の製造方法。
  2. 更に前記錯体を粉砕することを含み、前記錯体スラリーが前記粉砕した錯体を含むものである請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  3. 前記冷却することが、前記粉砕の後、前記錯体スラリーを乾燥、または加熱するまでに行われる請求項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  4. 前記冷却することが、前記錯体スラリーを23℃未満に保持することにより行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  5. 前記混合が、前記固体電解質原料と、前記錯化剤と、前記錯体を溶解しない溶媒と、を混合する請求項1〜4のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  6. 前記溶媒が、溶解度パラメータ10以下である請求項5に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  7. 前記錯化剤が、第三級アミノ基を有する化合物を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
  8. 前記錯化剤が、二つの第三級アミノ基を有する脂肪族三級ジアミンを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
  9. 前記脂肪族三級ジアミンが、テトラメチルエチレンジアミン及びテトラメチルジアミノプロパンから選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  10. 前記固体電解質原料が、硫化リチウム及び五硫化二リンを含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  11. 前記固体電解質原料が、非晶性LiPS又は結晶性LiPSを含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  12. 前記固体電解質原料が、臭化リチウムを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  13. 前記硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
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