JP6896202B1 - 硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
液相法では、固体電解質原料の錯化剤溶液(またはスラリー)を作成し、溶液を乾燥して錯体結晶を得た後に、該錯体結晶を焼成して、別結晶の固体電解質が得られる(特許文献1参照)。特に均一な固体電解質を得るには、電解質を溶媒に完全に溶解させた溶液状態を経由する均一法にメリットがあるとされている(非特許文献1参照)。また、このような方法は、固体電解質の分野に限らず、太陽電池の製造方法でも検討されている(特許文献2参照)。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
液相法においては、原料の溶解により均一な分散を図っているため、溶解できる製造条件の検討がなされてきたが、多成分の原料を用いる硫化物固体電解質の合成では、錯化剤溶液またはスラリーの各成分を分離せずに均一に溶解し、合成することが難しかった。本出願人らは、固液共存の不均一法において種々の錯化剤等を用いた検討を進めてきているが、一般的な傾向として、量産規模になると、固体電解質のイオン伝導度が低下する傾向になることが分かってきた。
よって、本実施形態の製造方法は、より高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る場合はもちろんのこと、硫化物固体電解質の製造過程において、錯体スラリーを作製した後、例えば後述する乾燥すること、加熱すること等を12時間以内、6時間以内、1時間以内等の短時間内に行えない、すなわち錯体を錯体スラリーの状態で長時間保持するような状況となる場合にも対応でき、有効な製造方法であるといえる。
しかし、本実施形態の錯体スラリーは、固液共存であるため、溶解度が異なる錯体の各成分が、溶解して又は溶解せずに、スラリーに含まれることとなる。溶解度は温度によって変化するため、錯体スラリーの温度を一定に保つことが錯体スラリーの溶解の状態を維持するには望ましいと考えるのが一般的である。しかも、錯体スラリーを長時間保持した際の目視観察では、冷却保存の有無に関わらず何ら変化は見られなかった。そのため、錯体スラリーの化学的安定性に関する問題を見出すことは困難であった。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤とを反応槽内で混合し、前記固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーを得ること、前記錯体スラリーを冷却装置を備える中間槽に移し冷却することを含む、ことを特徴とするものである。
「スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物系固体電解質の製造方法」は、本実施形態の製造方法において、固体電解質原料を完全に溶解させない溶媒を用い、固液共存のスラリーを用いる、液相法における不均一法が採用されることを意味するものである。なお、本実施形態において、当該スラリーとしては、主に固体電解質原料を含むスラリー、後述する錯体を含む錯体スラリー等が存在し得るが、例えば固体電解質原料、錯体、及び当該原料が一部反応して得られる硫化物固体電解質から得らばれる少なくとも一種を含むスラリーも存在し得る。いずれのスラリーが存在するとしても、スラリーが存在する時点で、本実施形態の製造方法が液相法における不均一法が採用されることにかわりはない。
また、本明細書において、非晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンが実質的に材料由来のピーク以外のピークが観測されないハローパターンであるもののことであり、硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものであることを意味する。
図1に示すように、実施形態Aは、スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤とを反応槽内で混合することを含むことを特徴とする本実施形態の製造方法において、固体電解質原料として硫化リチウム及び五硫化二リン等のリチウム元素、硫黄元素及びリン元素を含む原料と、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン元素を含む原料と、を用いる形態である。固体電解質原料と錯化剤とを反応槽内で混合することにより、通常、固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーが得られ、それを冷却することを経て硫化物固体電解質が得られる。また、本実施形態Aにおいて、好ましくは冷却して保存した後、乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の工程が含まれる。
本実施形態の製造方法は、錯体を粉砕することを含み、錯体スラリーに含まれる錯体が、該粉砕した錯体を含むものであることが好ましい。また、冷却して保存することは、粉砕の後、加熱することを含む場合は粉砕の後、加熱までに行われること、すなわち、該粉砕は混合の際(混合と同時に)、又は混合の後であって冷却して保存する前に行われること、が好ましい。
以下実施形態Aから説明をするが、「本実施形態の」と記載するものは、他の実施形態でも適用し得る事柄である。
本実施形態で用いられる固体電解質原料は、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含むものであり、具体的にはこれらの元素の少なくとも一種を含む原料から選ばれる少なくとも一種以上の原料が用いられる。
固体電解質原料に含まれる、例えばリチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素の少なくとも一種を含む原料(化合物)としては、硫化リチウム;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;三硫化二リン(P2S3)、五硫化二リン(P2S5)等の硫化リン;各種フッ化リン(PF3、PF5)、各種塩化リン(PCl3、PCl5、P2Cl4)、各種臭化リン(PBr3、PBr5)、各種ヨウ化リン(PI3、P2I4)等のハロゲン化リン;フッ化チオホスホリル(PSF3)、塩化チオホスホリル(PSCl3)、臭化チオホスホリル(PSBr3)、ヨウ化チオホスホリル(PSI3)、二塩化フッ化チオホスホリル(PSCl2F)、二臭化フッ化チオホスホリル(PSBr2F)等のハロゲン化チオホスホリル;などの上記四種の元素から選ばれる少なくとも二種の元素からなる原料、フッ素(F2)、塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)等のハロゲン単体、好ましくは臭素(Br2)、ヨウ素(I2)が代表的に挙げられる。
原料の組み合わせとしては、例えば、硫化リチウム、五硫化二リン等のリチウム元素、硫黄元素、リン元素を含む原料とハロゲン化リチウム等のハロゲン元素を含む原料との組み合わせ、硫化リチウム、五硫化二リン等のリチウム元素、硫黄元素、リン元素を含む原料とハロゲン単体等のハロゲン元素を含む原料との組み合わせが好ましく挙げられ、ハロゲン化リチウムとしては臭化リチウム、ヨウ化リチウムが好ましく、ハロゲン単体としては塩素、臭素及びヨウ素が好ましく、臭素及びヨウ素がより好ましい。
硫化リチウム粒子の平均粒径(D50)は、10μm以上2000μm以下であることが好ましく、30μm以上1500μm以下であることがより好ましく、50μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。また、上記の原料として例示したもののうち固体の原料については、上記硫化リチウム粒子と同じ程度の平均粒径を有するものが好ましい、すなわち上記硫化リチウム粒子の平均粒径と同じ範囲内にあるものが好ましい。
硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウム、必要に応じて用いられる他の原料を用いる場合の、これらの合計に対する硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量は、60〜100mol%が好ましく、65〜90mol%がより好ましく、70〜80mol%が更に好ましい。
また、ハロゲン化リチウムとして、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを組み合わせて用いる場合、イオン伝導度を向上させる観点から、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、1〜99mol%が好ましく、20〜90mol%がより好ましく、40〜80mol%が更に好ましく、45〜65mol%が特に好ましい。
2≦2α+β≦100…(2)
4≦2α+β≦80 …(3)
6≦2α+β≦50 …(4)
6≦2α+β≦30 …(5)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法では、錯化剤を用いる。本明細書において、錯化剤とは、リチウム元素と錯体形成することが可能な物質であり、上記固体電解質原料に含まれるリチウム元素を含む硫化物、ハロゲン化物等と作用して錯体の形成を促進させる性状を有するものであることを意味する。よって、錯化剤を用いないと、錯体が形成しにくくなるため、特定成分の分離を抑制できず、高いイオン伝導度が得られなくなる。
脂肪族アミンの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族アミン中の脂肪族炭化水素基の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
脂環式アミン、複素環式アミンの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
芳香族アミンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
なお、具体例としてジアミンを例示したが、本実施形態で用いられ得るアミン化合物としては、ジアミンに限らないことは言うまでもなく、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、上記脂肪族ジアミン等の各種ジアミンに対応する脂肪族モノアミン、またピペリジン、メチルピペリジン、テトラメチルピペリジン等のピペリジン化合物、ピリジン、ピコリン等のピリジン化合物、モルホリン、メチルモルホリン、チオモルホリン等のモルホリン化合物、イミダゾール、メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、上記脂環式ジアミンに対応するモノアミン等の脂環式モノアミン、上記複素環式ジアミンに対応する複素環式モノアミン、上記芳香族ジアミンに対応する芳香族モノアミン等のモノアミンの他、例えば、ジエチレントリアミン、N,N’,N’’−トリメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’−ビス[(ジメチルアミノ)エチル]−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアミノ基を3つ以上有するポリアミンも用いることができる。
図1のフロー図に示されるように、固体電解質原料と錯化剤とを反応槽内で混合することで、固体電解質原料と錯化剤とにより形成される、上記錯体を含む錯体スラリーを得る。本実施形態において固体電解質原料と錯化剤とを混合する際の形態は、固体電解質原料が固体を含んでおり、錯化剤は液状であるため、通常液状の錯化剤中に固体の固体電解質原料が存在するスラリー状の形態で混合する。
また、原料としてハロゲン単体を用いる場合、原料が固体ではない場合があり、具体的には常温常圧下において、フッ素及び塩素は気体、臭素は液体となる。例えば、原料が液体の場合は他の固体の原料とは別に錯化剤とともに反応槽内に供給すればよく、また原料が気体の場合は、錯化剤に固体電解質原料を加えたものに吹き込むように供給すればよい。
錯体は、既述のように、錯化剤、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素により形成されるものである。また、錯体はX線回折測定においてX線回折パターンに、原料由来のピークとは異なるピークが観測される、という特徴を有していることから、好ましくは、典型的には、リチウム元素と、他の元素とが、錯化剤を介して及び/又は介さずに直接結合した錯体構造を有するものと考えらえる。単に固体電解質原料のみを混合しただけでは、原料由来のピークが観測されるだけのはずである。しかし、固体電解質原料と錯化剤とを混合することにより、原料由来のピークとは異なるピークが観測されることから、これらの混合により得られる錯体は、固体電解質原料に含まれる原料自体とは明らかに異なる構造を有するものである。このことは実施例において具体的に確認されている。図4〜6には、硫化リチウム等の各原料、錯体及び硫化物固体電解質のX線回折パターンの測定例が示されている。図6のX線回折パターンから、錯体が所定の結晶構造を有していることがわかる。また、その回折パターンは、図5に示した硫化リチウム等のいずれの原料の回折パターンを含むものではなく、錯体が原料とは異なる結晶構造を有していることがわかる。
ここで、錯化剤が錯体を形成していることは、例えば、ガスクロマトグラフィー分析によって確認することができる。具体的には、錯体の粉末をメタノールに溶解させ、得られたメタノール溶液のガスクロマトグラフィー分析を行うことで錯体に含まれる錯化剤を定量することができる。
錯体中の錯化剤の含有量は、錯化剤の分子量により異なるが、通常10質量%以上70質量%以下程度、好ましくは15質量%以上65質量%以下である。
錯体に留まるハロゲン元素の量は、仕込み組成に対して30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。錯体に留まるハロゲン元素の量の上限は100質量%である。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、上記錯体スラリーを冷却装置を備える中間槽に移し冷却すること(以下、冷却する際には実質的に保存も伴うことから、単に「冷却」と称するとともに、「冷却保存」とも称することがある。)、を含む。本冷却保存を行わないと、固体電解質原料として好ましく用いられる、例えば臭化リチウム、ヨウ化リチウム等に由来するハロゲン元素、リチウム元素等のイオン伝導度の発現及び向上に寄与する特定成分が錯体内にとどまらずに分離し、得られる硫化物固体電解質のイオン伝導度が低下することとなる。
よって、本実施形態の製造方法は、より高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る場合はもちろんのこと、硫化物固体電解質の製造過程において、錯体スラリーを作製した後、例えば後述する乾燥すること、加熱すること等を12時間以内、6時間以内、1時間以内等の短時間内に行えない、すなわち錯体を錯体スラリーの状態で長時間保持するような状況となる場合にも対応でき、有効な製造方法であるといえる。
冷却保存を行う中間槽としては、例えば図3に示されるように、中間槽に冷却装置としてその外壁に水冷ジャケット等の冷却ジャケットを備えるものを用いればよく、冷却ジャケットの媒体は、所望の冷却温度に応じて適宜決定すればよい。
また、中間槽は、図3に示されるように上記混合を行う反応槽とは別の槽として設けてもよいし、装置の簡略化を図る観点、また錯体スラリーの移送の手間を省く観点から、中間槽は、上記混合を行う反応槽に冷却装置を備えたものを用いることにより、代用することも可能である。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、さらに上記錯体を粉砕することを含むことが好ましい。錯体を粉砕することで、イオン伝導度の低下を抑制しながら粒径の小さい硫化物固体電解質が得られる。
本実施形態における錯体の粉砕は、いわゆる固相法のメカニカルミリングと異なり、機械的応力によって非晶性又は結晶性硫化物固体電解質を得るものではない。上記のとおり錯体は錯化剤を含んでおり、PS4構造等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とが、錯化剤を介して結合(配位)している。そして、錯体を粉砕すると、上記の結合(配位)、及び分散が維持されたまま、錯体の微粒が得られると考えられる。この錯体を熱処理すると、錯化剤が除去されると同時に錯化剤を介して結合(配位)していた成分が結びつき、結晶性硫化物固体電解質への反応が容易に起こる。そのため、通常の固体電解質の合成で見られるような粒子同士の凝集による大きな粒成長が生じにくく、容易に微粒化することができる。
湿式粉砕機としては、湿式ビーズミル、湿式ボールミル、湿式振動ミル等が代表的に挙げられ、粉砕操作の条件を自由に調整でき、より小さい粒径のものに対応しやすい点で、ビーズを粉砕メディアとして用いる湿式ビーズミルが好ましい。また、乾式ビーズミル、乾式ボールミル、乾式振動ミル等の乾式媒体式粉砕機、ジェットミル等の乾式非媒体粉砕機等の乾式粉砕機を用いることもできる。
この場合、超音波の周波数等の諸条件は、所望の錯体の平均粒径等に応じて適宜選択すればよく、周波数は、例えば1kHz以上100kHz以下程度とすればよく、より効率的に錯体を粉砕する観点から、好ましくは3kHz以上50kHz以下、より好ましくは5kHz以上40kHz以下、更に好ましくは10kHz以上30kHz以下である。
また、超音波粉砕機が有する出力としては、通常500〜16,000W程度であればよく、好ましくは600〜10,000W、より好ましくは750〜5,000W、更に好ましくは900〜1,500Wである。
なお、後述する乾燥を行う場合、粉砕することは、乾燥の後に行うこともできる。この場合、本製造方法において用い得る粉砕機として例示した上記の粉砕機の中でも、乾式粉砕機のいずれかを用いることが好ましい。その他、粉砕条件等の粉砕に関する事項は、錯体スラリーの粉砕と同じであり、また粉砕により得られる錯体の平均粒径も上記と同様である。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む、すなわち、乾燥、加熱、又は乾燥及び加熱の処理をする構成を含む。本実施形態の製造方法において、当該スラリーは、好ましくは錯体スラリーである。よって、本実施形態の製造方法は、錯体スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含むことが好ましい。
スラリーが錯体スラリーである場合、当該一の処理をする構成を含むことにより錯体の粉末が得られる。例えば、結晶性の硫化物固体電解質を得る場合は、好ましくは後述する加熱を行うこととなるが、事前に乾燥することにより、効率的に加熱することを行うことが可能となる。なお、乾燥と、その後の加熱とを同一工程で行ってもよい。
固液分離は、具体的には、錯体スラリーを容器に移し、錯体スラリーが沈殿した後に、上澄みとなる錯化剤、溶媒を除去するデカンテーション、また例えばポアサイズが10〜200μm程度、好ましくは20〜150μmのガラスフィルターを用いたろ過が容易である。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、錯体を加熱することを含み得る。加熱は、錯体スラリーを加熱してもよいし、上記乾燥を行う場合は錯体の粉末を加熱してもよい。また、錯体は上記粉砕により粉砕されたものであってもよい。
錯体を加熱することにより、錯体中の錯化剤を除去し、かつリチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む非晶性硫化物固体電解質を得ることもできるし、更に結晶性硫化物固体電解質を得ることもできる。
ここで、錯体中の錯化剤が除去されることについては、X線回折パターン、ガスクロマトグラフィー分析等の結果から錯化剤が錯体を形成していることが明らかであることに加え、錯体を加熱することで錯化剤を除去して得られた硫化物固体電解質が、錯化剤を用いずに従来の方法により得られた固体電解質とX線回折パターンが同じであることにより裏づけされる。
従来、イオン伝導度が高い結晶性固体電解質、例えば後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する固体電解質を得るには、メカニカルミリング等の機械的粉砕処理、その他溶融急冷処理等により非晶性固体電解質を作製した後に該非晶性固体電解質を加熱して得ることを要していた。しかし、本実施形態の製造方法では、機械的粉砕処理、その他溶融急冷処理等を行わない方法によってもチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する結晶性固体電解質が得られる点で、従来のメカニカルミリング処理等による製造方法に比べて優位であるといえる。
錯体の加熱温度は、例えば、非晶性硫化物固体電解質を得る場合、該非晶性硫化物固体電解質(又は錯体)を加熱して得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、具体的には、該非晶性硫化物固体電解質(又は錯体)を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは20℃以下の範囲とすればよく、下限としては特に制限はないが、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度−40℃以上程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に非晶性硫化物固体電解質が得られる。非晶性硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、135℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、125℃以下が更に好ましく、下限としては特に制限はないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる非晶性硫化物固体電解質としては、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含んでおり、代表的なものとしては、例えば、Li2S−P2S5−LiI、Li2S−P2S5−LiCl、Li2S−P2S5−LiBr、Li2S−P2S5−LiI−LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質;更に酸素元素、珪素元素等の他の元素を含む、例えば、Li2S−P2S5−Li2O−LiI、Li2S−SiS2−P2S5−LiI等の固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、Li2S−P2S5−LiI、Li2S−P2S5−LiCl、Li2S−P2S5−LiBr、Li2S−P2S5−LiI−LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質が好ましい。
非晶性硫化物固体電解質を構成する元素の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
本実施形態の製造方法において得られる非晶性硫化物固体電解質が、例えば、Li2S−P2S5−LiI−LiBrである場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量の合計は、60〜95mol%が好ましく、65〜90mol%がより好ましく、70〜85mol%が更に好ましい。また、臭化リチウムとヨウ化リチウムとの合計に対する臭化リチウムの割合は、1〜99mol%が好ましく、20〜90mol%がより好ましく、40〜80mol%が更に好ましく、45〜65mol%が特に好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスであってもよく、その結晶構造としては、Li3PS4結晶構造、Li4P2S6結晶構造、Li7PS6結晶構造、Li7P3S11結晶構造、2θ=20.2°近傍及び23.6°近傍にピークを有する結晶構造(例えば、特開2013−16423号公報)等が挙げられる。
本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質の結晶構造は、より高いイオン伝導度が得られる点で、上記の中でもチオリシコンリージョンII型結晶構造であることが好ましい。ここで、「チオリシコンリージョンII型結晶構造」は、Li4−xGe1−xPxS4系チオリシコンリージョンII(thio−LISICON Region II)型結晶構造、Li4−xGe1−xPxS4系チオリシコンリージョンII(thio−LISICON Region II)型と類似の結晶構造のいずれかであることを示す。また、本実施形態の製造方法で得られる結晶性硫化物固体電解質は、上記チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであってもよいし、主結晶として有するものであってもよいが、より高いイオン伝導度を得る観点から、主結晶として有するものであることが好ましい。本明細書において、「主結晶として有する」とは、結晶構造のうち対象となる結晶構造の割合が80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、より高いイオン伝導度を得る観点から、結晶性Li3PS4(β-Li3PS4)を含まないものであることが好ましい。
なお、以上の各結晶構造のピーク位置については、±1.0°の範囲内で前後していてもよい。
次に実施形態Bについて説明する。
実施形態Bは、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤と、を混合することを含むことを特徴とする本実施形態の製造方法において、固体電解質原料としてLi3PS4等の固体電解質、例えば好ましくは非晶性Li3PS4、結晶性Li3PS4等を含む原料と錯化剤とを用いる形態である。上記実施形態Aでは、本実施形態の製造方法によって得られる硫化物固体電解質に主構造として存在するLi3PS4等のリチウムを含む構造体を、硫化リチウム等の原料同士の反応により合成しつつ錯体を形成するため、上記構造体の構成比率が小さいものとなりやすいと考えられる。
そこで、実施形態Bでは、先に上記構造体を含む固体電解質を製造する等して用意し、これを固体電解質原料として使用する。これにより、固体電解質原料として用いる上記構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とが、錯化剤を介して結合(配位)し、ハロゲン元素が分散して定着した錯体が、より得られやすくなる。その結果、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られることとなる。また、副次的な効果として、硫化水素の発生を抑制することもできる。
また、この場合、リチウム元素、硫黄元素及びリン元素を含む固体電解質は、非晶性固体電解質であることが好ましい。錯体中のハロゲン元素の分散性が向上し、ハロゲン元素と固体電解質中のリチウム元素、硫黄元素及びリン元素との結合が生じやすくなり、結果としてより高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得ることができる。
また、実施形態Bにおいて、錯体を粉砕することが好ましいこと、粉砕することに用いられる粉砕機、混合することの後、又は乾燥することの後に粉砕を行い得ること、粉砕することに関する諸条件等についても、上記実施形態Aと同じである。
図2のフロー図に示されるように、実施形態C及びDは、上記の実施形態A及びBにおける固体電解質原料及び錯化剤に、溶媒を加えた点でそれぞれ異なる。実施形態C及びDは、固液共存の不均一法であり、実施形態A及びBでは、液体である錯化剤中において、固体である電解質前駆体が形成される。このとき、錯体が錯化剤に溶解しやすいものであると、成分の分離が生じる場合がある。実施形態C及びDでは、錯体が溶解しない溶媒を使用することで、錯体中の成分の溶出を抑えることができる。
実施形態C及びDの硫化物固体電解質の製造方法では、固体電解質原料と錯化剤に、錯体が溶解しない溶媒を加えて、固体電解質原料と錯化剤と錯体が溶解しない溶媒とを混合する。溶媒を用いて固体電解質原料と錯化剤とを混合することで、上記の錯化剤を用いることによる効果、すなわちリチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素と作用した錯体の形成が促進され、PS4構造等のリチウムを含む構造体あるいは錯化剤を介した集合体、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料あるいは錯化剤を介した集合体を満遍なく存在させやすくなり、ハロゲン元素がより分散して定着した錯体が得られるので、結果として高いイオン伝導度が得られるという効果が発揮されやすくなる。
ただし、溶媒は錯体を形成する錯化剤と異なり、錯体を形成しにくくなる。したがって、錯体中に残存し得る溶媒は、通常3質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。
また、実施形態C及びDにおいて、錯体を粉砕することが好ましいこと、粉砕することに用いられる粉砕機、混合することの後、又は乾燥することの後に粉砕を行い得ること、粉砕することに関する諸条件等についても、上記実施形態Aと同じである。
例えば、正極層、負極層に用いる場合には、錯体スラリーに、正極活物質、負極活物質をそれぞれ分散させて混合し、乾燥させることで、活物質表面に錯体が付着させ、さらに上記の実施形態と同様に、錯体を加熱することで非晶質硫化物固体電解質又は結晶性硫化物固体電解質となる。このときに活物質とともに加熱することで活物質表面に硫化物固体電解質が付着した正極合材、または負極合材が得られる。
硫化物系正極活物質としては、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni3S2)等が挙げられる。
また、上記正極活物質の他、セレン化ニオブ(NbSe3)等も使用可能である。
本実施形態において、正極活物質は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
このような負極活物質としては、例えば、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属リチウム又は金属リチウムと合金を形成し得る金属、これら金属の酸化物、またこれら金属と金属リチウムとの合金等が挙げられる。
被覆層を形成する材料としては、本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質においてイオン伝導度を発現する元素、好ましくはリチウム元素の窒化物、酸化物、又はこれらの複合物等のイオン伝導体が挙げられる。具体的には、窒化リチウム(Li3N)、Li4GeO4を主構造とする、例えばLi4−2xZnxGeO4等のリシコン型結晶構造を有する伝導体、Li3PO4型の骨格構造を有する例えばLi4−xGe1−xPxS4等のチオリシコン型結晶構造を有する伝導体、La2/3−xLi3xTiO3等のペロブスカイト型結晶構造を有する伝導体、LiTi2(PO4)3等のNASICON型結晶構造を有する伝導体等が挙げられる。
また、LiyTi3−yO4(0<y<3)、Li4Ti5O12(LTO)等のチタン酸リチウム、LiNbO3、LiTaO3等の周期表の第5族に属する金属の金属酸リチウム、またLi2O−B2O3−P2O5系、Li2O−B2O3−ZnO系、Li2O−Al2O3−SiO2−P2O5−TiO2系等の酸化物系の伝導体等が挙げられる。
ここで、各種元素を含む溶液としては、例えばリチウムエトキシド、チタンイソプロポキシド、ニオブイソプロポキシド、タンタルイソプロポキシド等の各種金属のアルコキシドを含む溶液を用いればよい。この場合、溶媒としては、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を用いればよい。
また、上記の付着は、浸漬、スプレーコーティング等により行えばよい。
被覆層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、被覆層の厚さを測定することができ、被覆率は、被覆層の厚さと、元素分析値、BET表面積と、から算出することができる。
1Lの撹拌翼付き反応槽に、窒素雰囲気下で硫化リチウム13.19g、五硫化二リン21.26g、臭化リチウム4.15g及びヨウ化リチウム6.40gを導入した。これに、錯化剤としてテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)100mL、溶媒としてメチルシクロヘキサン800mLを加えて、撹拌翼を作動させて、攪拌による混合を行った。循環運転可能なビーズミル(「スターミルLMZ015(型番)」、アシザワ・ファインテック株式会社製)に、ジルコニアボール(直径:0.5mmφ)を456g(粉砕室に対するビーズ充填率:80%)を仕込み、上記反応槽と粉砕室との間を、ポンプ流量:550mL/min、周速:8m/s、ミルジャケット温度:20℃の条件で循環させながら、60分の粉砕を行い、錯体スラリーを得た。
次いで、得られた錯体スラリーを、直ちに真空下で室温(23℃)で乾燥し、粉末の錯体を得た。次いで、錯体の粉末を真空下で120℃で加熱を2時間行い、非晶性固体電解質を得た。更に、非晶性固体電解質を真空下で200℃で加熱を2時間行い、結晶性固体電解質を得た。
参考例1で得られた結晶性硫化物固体電解質について、X線回折(XRD)装置(「D2 Phaser(商品名)」、ブルカージャパン株式会社製)を用いて粉末X線回折(XRD)測定を行った。そのX線回折スペクトルを図4に示す。また参考例1で得られた錯体、非晶性硫化物固体電解質についても同様の方法で粉末X線回折(XRD)測定を行い、そのX線回折スペクトルを上記結晶性硫化物固体電解質のX線回折スペクトルとともに図6に示す。図4及び6より、参考例1で得られた結晶性硫化物固体電解質は、後述する実施例1と同様に主に2θ=20.2°、23.6°に結晶化ピークが検出されて、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであった。また、得られた結晶性硫化物固体電解質について、イオン伝導度を測定したところ、4.1(mS/cm)であった。
得られた結晶性硫化物固体電解質から、直径10mm(断面積S:0.785cm2)、高さ(L)0.1〜0.3cmの円形ペレットを成形して試料とした。その試料の上下から電極端子を取り、25℃において交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:5MHz〜0.5Hz、振幅:10mV)、Cole−Coleプロットを得た。高周波側領域に観測される円弧の右端付近で、−Z’’(Ω)が最小となる点での実数部Z’(Ω)を電解質のバルク抵抗R(Ω)とし、以下式に従い、イオン伝導度σ(S/cm)を計算した。
R=ρ(L/S)
σ=1/ρ
1Lの撹拌翼付き反応槽に、窒素雰囲気下で硫化リチウム15.3g、五硫化二リン24.7gを添加した。撹拌翼を作動させた後、予め−20℃に冷却したテトラヒドロフラン400mLを容器に導入した。室温(23℃)まで自然昇温させた後、72時間撹拌を継続し、得られた反応液スラリーをガラスフィルター(ポアサイズ:40〜100μm)に投入して固形分を得た後、固形分を90℃で乾燥させることにより、白色粉末としてLi3PS4(純度:90質量%)を38g得た。得られた粉末について、X線回折(XRD)装置(SmartLab装置、(株)リガク製)を用いて粉末X線回折(XRD)測定を行ったところ、ハローパターンを示し、非晶性のLi3PS4であることが確認された。
参考例2で得られた白色粉末Li3PS4を、180℃で真空乾燥を2時間行うことで、β−Li3PS4(結晶性)を得た。
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、冷蔵庫(設定温度:−5℃)にて1日冷却保存した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質について、参考例1と同様にして粉末X線回折(XRD)測定を行った。そのX線回折スペクトルを図4に示す。また、得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、冷蔵庫(設定温度:−5℃)にて2日冷却保存した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、反応槽のジャケットに冷媒を循環させて、反応槽内の温度を10℃に保ちながら1日冷却保存した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、反応槽のジャケットに冷媒を循環させて、反応槽内の温度を10℃に保ちながら2日冷却保存した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、室温(23℃)下で1日保管した以外は、参考例と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質について、参考例1と同様にして粉末X線回折(XRD)測定を行った。そのX線回折スペクトルを図4に示す。また、得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
参考例1において、粉砕して得られた錯体スラリーを、室温(23℃)下で2日保管した以外は、参考例1と同様にして結晶性硫化物固体電解質を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定した。測定結果を第1表に示す。
図4より、参考例1、実施例1及び比較例1で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトルについて、いずれの例の硫化物固体電解質も、主に2θ=20.2°、23.6°に結晶化ピークが検出されて、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであることが確認された。
また、比較例1で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトルでは、2θ=28.1°に臭化リチウムに由来する結晶化ピークが検出されている。これは、冷却保存せずに錯体スラリーを長時間保持したことにより、臭化リチウムが錯体より分離し、硫化物固体電解質内に取り込まれなかったため、得られた硫化物固体電解質はチオリシコンリージョンII型結晶構造を有しているにもかかわらず、イオン伝導度が参考例1、実施例に比べて低下したと考えられる。
Claims (13)
- スラリーを乾燥及び加熱から選ばれる少なくとも一の処理をする工程を含む硫化物固体電解質の製造方法であって、リチウム元素、硫黄元素、リン元素及びハロゲン元素を含む固体電解質原料と、錯化剤とを反応槽内で混合し、前記固体電解質原料と錯化剤とにより形成される錯体を含む錯体スラリーを得ること、前記錯体スラリーを冷却装置を備える中間槽に移し冷却することを含む、硫化物固体電解質の製造方法。
- 更に前記錯体を粉砕することを含み、前記錯体スラリーが前記粉砕した錯体を含むものである請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記冷却することが、前記粉砕の後、前記錯体スラリーを乾燥、または加熱するまでに行われる請求項2に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記冷却することが、前記錯体スラリーを23℃未満に保持することにより行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記混合が、前記固体電解質原料と、前記錯化剤と、前記錯体を溶解しない溶媒と、を混合する請求項1〜4のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記溶媒が、溶解度パラメータ10以下である請求項5に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記錯化剤が、第三級アミノ基を有する化合物を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
- 前記錯化剤が、二つの第三級アミノ基を有する脂肪族三級ジアミンを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
- 前記脂肪族三級ジアミンが、テトラメチルエチレンジアミン及びテトラメチルジアミノプロパンから選ばれる少なくとも一種である請求項8に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記固体電解質原料が、硫化リチウム及び五硫化二リンを含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記固体電解質原料が、非晶性Li3PS4又は結晶性Li3PS4を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記固体電解質原料が、臭化リチウムを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
- 前記硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
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