JP2023152783A - 硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents

硫化物固体電解質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】イオン伝導度の低下を抑制しつつ、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生が抑制される硫化物固体電解質の製造方法及び当該硫化物固体電解質を提供すること、更に前記硫化物固体電解質を含む電極合材及びリチウムイオン電池を提供することである。【解決手段】2種以上の原料を含む原料含有物を混合することを含み、前記原料が、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含み、前記原料含有物が、改質P2S5を含む、硫化物固体電解質の製造方法、それにより製造できる硫化物固体電解質、電極合材、リチウムイオン電池及び硫化物固体電解質の製造用の改質P2S5を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、硫化物固体電解質の製造方法に関する。
リチウムイオン電池の固体電解質層として、五硫化二リン(P)などを出発原料として用いた硫化物固体電解質を用いることが検討されている。この硫化物固体電解質はリチウムイオン伝導度(以下、単にイオン伝導度とも記載する。)は高いものの、水(以下、水分も含む。)や酸素と反応しやすく、特に水と接触すると硫化水素(HS)ガスが発生するため、HSガスの発生量を低減することが求められている。また、これらリチウムイオン電池は、固体電解質等の固体粒子間の接着性が低いという問題もあり、これに対し、特許文献1では、無機固体電解質粒子等の表面に有機化合物基を、共有結合で担持することで、結着性を改善することが行われている。
国際公開第2017/111131号パンフレット
特許文献1に記載の固体電解質は、その表面に共有結合により有機化合物基を均質に担持するものであることが記載されている。しかし、特許文献1に記載の手法では、Li塩などの副生物が生成し、除去できないため、イオン伝導が阻害され、電池特性は低下することが想定される。さらに、有機化合物基を担持するために、事前に固体電解質に表面処理や水分曝露を行っており、イオン伝導度を維持することが難しいと考えられる。このように、固体電解質粒子の表面に有機化合物に由来する基を担持させる技術には、一長一短があり、得ようとする性能の全てをバランスよく得ることは困難であった。
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、イオン伝導度の低下を抑制しつつ、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生が抑制される硫化物固体電解質の製造方法及び当該硫化物固体電解質を提供すること、更に前記硫化物固体電解質を含む電極合材、リチウムイオン電池及び有機基を備える硫化物固体電解質の製造用の改質Pを提供することを目的とする。
本発明に係る硫化物固体電解質の製造方法は、2種以上の原料を含む原料含有物を混合することを含み、前記原料が、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含み、前記原料含有物が、改質Pを含む、硫化物固体電解質の製造方法であり、
本発明に係る硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子並びに有機基を含み、リチウム原子の含有量(mol)当たりの硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の含有量(mol)の比が、リチウム原子:硫黄原子:リン原子:ハロゲン原子=1:1.1000~1.2000:0.2000~0.3500:0.1400~0.1550である、硫化物固体電解質であり、
本発明に係る電極合材は、前記硫化物固体電解質と、電極活物質を含む電極合材であり、
本発明に係るリチウムイオン電池は、前記硫化物固体電解質及び前記電極合材の少なくとも一方を含むリチウムイオン電池である。
また、本発明に係る改質Pは、前記有機基を備える前記硫化物固体電解質の製造用の改質Pである。
本発明によれば、イオン伝導度の低下を抑制しつつ、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生が抑制される(以下耐水性とも記載する。)硫化物固体電解質の製造方法及び当該硫化物固体電解質を提供すること、前記硫化物固体電解質を含む電極合材及びリチウムイオン電池を提供すること、有機基を備える硫化物固体電解質の製造用の改質Pを提供することができる。
本実施形態の製造方法の好ましい形態の一例を説明するフロー図である。 耐水性評価において用いられる試験装置の概略構成図である。 実施例1で使用した改質Pを含む原料含有物、実施例1で製造した電解質前駆体(1)、非晶質硫化物固体電解質(1)及び結晶性硫化物固体電解質(1)のX線回折スペクトル(XRDパターン)である。 改質剤の使用量とHS発生量の関係を表したグラフである。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」、「~」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。
(本発明に至るために本発明者が得た知見)
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
前記の特許文献1には、共有結合により有機化合物基が表面に担持した無機固体電解質粒子が記載されている。しかし、特許文献1では、固体粒子間の結着性に着目しており、有機化合物基が表面に担持した無機固体電解質粒子のイオン伝導度を確認していない。また、無機固体電解質粒子はリチウム原子、リン原子及び硫黄原子を含むもので、ハロゲン原子を含むものではない。
更に、無機固体電解質粒子の表面改質は、無機固体電解質粒子の表面を空気中の水分に晒した後、酸クロリド等と反応させて、結合基としてエステル基を持つ構造としている。引用文献1の方法では、無機固体電解質粒子に対して有機化合物基を担持する処理を行うため、結果物として得られる無機固体電解質粒子は、この処理に伴う不純物、例えばカルボン酸のリチウム塩、ハロゲン化リチウム塩等を含むこととなる。また、無機固体電解質粒子の表面を処理することから、イオン伝導度は低下するものと考えられ、さらに無機固体電解質粒子の内部には有機基は存在しないものと考えられる。このため、表面改質した無機固体電解質粒子が何らかの力により粉砕されると、表面改質がされていない表面が生成されてしまう。
本発明者らは、Pを改質することに着目した。硫化物固体電解質を製造するにあたり、改質Pを用いると、製造される硫化物固体電解質は、その表面が均一なものとなり、また表面だけではなくその内部にまで改質した効果が得られることを見出した。さらに、本発明を採用することで、表面処理による劣化や副生物の生成も抑制でき、イオン伝導度を維持しつつ有機化合物基を担持させることに成功した。
(本実施形態の各種形態について)
以下に本実施形態の第一の形態から第十一の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法、第十二の形態に係る硫化物固体電解質、第十三の形態に係る電極合材、第十四の形態に係るリチウムイオン電池及び
第十五の形態に係る硫化物固体電解質の製造用の改質Pについて述べる。
本実施形態の第一の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
2種以上の原料を含む原料含有物を混合することを含み、前記原料が、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含み、前記原料含有物が、改質Pを含む、硫化物固体電解質の製造方法である。
図1に本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法の好ましい形態を説明するフロー図を示す。本実施形態の製造方法は、従来の製造方法において用いていたPに換えて、改質Pを用いるものである。製造工程は用いる材料を変更するだけで、従来の製造装置を変更する必要はなく、それでいて従来の製造方法において得られる硫化物固体電解質より優れた特性を有する硫化物固体電解質が得られる。
本願において「改質P」とは、改質したPであるが、何らかの修飾を受け、化学的性質が変化したPを意味する。詳細は後記する。
前記の特許文献1では、無機固体電解質粒子の表面にのみ、有機化合物基が担持されることになる。しかし、本実施形態のように改質Pを用いると、製造される硫化物固体電解質の表面が均一に改質の効果を得られるだけではなく、その内部にまで改質の効果が得られることになる。これにより、イオン伝導度の低下を抑制しつつ、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生が抑制される。
硫化水素ガスの発生量は、例えば実施例に記載の方法により測定することができる。HS発生量が少ないほど、耐水性が高いと評価できる。
本実施形態の第二の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第一の形態において、
前記改質Pが、有機基を備えるPである、硫化物固体電解質の製造方法である。
改質Pが有機基を備えることで、製造される硫化物固体電解質は、表面だけでなくその内部にまで有機基を備えることとなり、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生の発生が抑制されるため好ましい。特に改質Pが有機基を備えることで、製造される硫化物固体電解質の表面は均一に有機基を備えることとなるため、雰囲気中の水分は硫化物固体電解質に接触する機会が減少し、硫化水素ガスの発生が抑えられるというメカニズムが考えられる。
「有機基を備える」とは、粒子状のPの表面やその内部に有機基が存在することを意味し、Pの表面に有機基が付着すること及び結晶構造内に取り込まれていることを含む概念である。改質Pは、Pが有機基を備えることで改質されたものである。「備える」は、化学結合、物理吸着、配位結合が含まれる。
有機基を備えたPを用いることで、有機基は硫化物固体電解質の表面に均一に分布することができ、更に硫化物固体電解質の内部にまで分布するようになるため好ましい。
本実施形態の第三の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第二の形態において、
前記有機基が、ヘテロ原子を含む、硫化物固体電解質の製造方法である。
有機基が、ヘテロ原子を含むことで、有機基とPは、強固に結合することになり、硫化物固体電解質の製造工程で有機基が脱落し、減少することが抑えられ、また硫化物固体電解質とした後も、減少することが抑えられるため好ましい。
本実施形態の第四の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第三の形態において、
前記改質Pが、前記改質P中のPのリン原子と前記ヘテロ原子との共有結合を含む、硫化物固体電解質の製造方法である。
改質P中のリン原子と、有機基が、有機基のヘテロ原子により、共有結合していると、有機基は容易に改質Pから脱落することがなくなるため好ましい。これは、硫化物固体電解質とも強固に結合するため好ましい。
本実施形態の第五の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第三又は四の形態において、
前記ヘテロ原子が、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種である、硫化物固体電解質の製造方法である。
前記「備える」が、化学結合である場合、ヘテロ原子が前記の原子であると容易に化学結合を形成できるため好ましく、前記「備える」が、物理吸着又は配位結合である場合、前記原子は非共有電子対を有するため、分子間力が大きくなり、又はリチウム原子等に配位結合するため好ましい。
本実施形態の第六の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第二~五のいずれかの形態において、
前記有機基が、一般式(a-1)、(a-2)及び(b-1)で表される基から選ばれる少なくとも1種である、硫化物固体電解質の製造方法である。
(式中、*は、Pとの結合部位を表し、Ra1、Ra2、Rb1及びRb2は、それぞれ独立して、1価の有機基を表し、Xa1及びXa2は、それぞれ独立して、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
五硫化二リンは分子式P10で表され、下記のような立体構造をとることが知られている。
五硫化二リンは、例えば2分子のチオール誘導体と反応すると、下記のように1分子の硫化水素(HS)を発生しながらチオリン酸エステルを生成する。
同様に、カルボン酸誘導体、チオカルボン酸誘導体及びアミン誘導体とも反応する。
このようにして、一般式(a-1)、(a-2)又は(b-1)で表される基が、改質P中のリン原子と共有結合していると、有機基が強固に結合されるため好ましい。
、一般式(a-1)、(a-2)又は(b-1)で表される基である場合には、前記共有結合は、-P-S-、-P-O-、-P-C(=O)-、-P-O-C(=O)-、-P-C(=S)-、-P-S-C(=O)-、-P-S-C(=S)-、-P-N<となる。
有機基が、前記のような構造であることで、有機基とPは、強固に相互作用することになり、硫化物固体電解質の製造工程で有機基が脱落し、減少することが抑えられ、また硫化物固体電解質とした後も、減少することが抑えられるため好ましい。
本実施形態の第七の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第一~六のいずれかの形態において、
前記混合することにおいて、撹拌機、混合機又は粉砕機を用いる、硫化物固体電解質の製造方法である。
撹拌機、混合機又は粉砕機を用いることで、短時間に均質な硫化物固体電解質が製造できるため好ましい。
本実施形態の第八の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第一~七のいずれかの形態において、
前記混合することにおいて、前記原料含有物と錯化剤とを混合する、硫化物固体電解質の製造方法である。
錯化剤を用いることで、混合時に投入するエネルギー量を減少させることができるため好ましい。
本実施形態の第九の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第一~八のいずれかの形態において、
前記混合することを、溶媒中で行う、硫化物固体電解質の製造方法である。
溶媒中で混合することで、混合を容易にし、混合時間を短縮できるため好ましい。
本実施形態の第十の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第一~九のいずれかの形態において、
更に加熱すること、を含む、硫化物固体電解質の製造方法である。
加熱することで後記するように非晶質の硫化物固体電解質を結晶化することができ、結晶子径を大きくすることができ、また錯化剤を用いた場合には形成された錯体から錯化剤を除去することができるため、イオン伝導度が大きくなるため好ましい。
本実施形態の第十一の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第一~十のいずれかの形態において、
前記硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含む、硫化物固体電解質の製造方法である。
硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むとイオン伝導度が大きくなるため好ましい。
本実施形態の第十二の形態に係る硫化物固体電解質は、
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子並びに有機基を含み、リチウム原子の含有量(mol)当たりの硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の含有量(mol)の比が、リチウム原子:硫黄原子:リン原子:ハロゲン原子=1:1.1000~1.2000:0.2000~0.3500:0.1400~0.1550である、硫化物固体電解質である。
本実施形態の硫化物固体電解質は、前記の第一~十のいずれかの実施形態により得られるものであり、イオン伝導度が高く、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生の発生が抑制されるため好ましい。
本実施形態の第十三の形態に係る電極合材は、
第十二の形態に係る硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む、電極合材である。
第十二の形態に係る硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度を有し、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生の発生が抑制されるため、これを用いた電極合材は優れた特性を有するものとなる。
本実施形態の第十四の形態に係るリチウムイオン電池は、
第十二の形態に係る硫化物固体電解質及び第十三の形態に係る電極合材の少なくとも一方を含むリチウムイオン電池である。
前記硫化物固体電解質及び前記電極合材は、前記のように優れた特性を有するため、これを用いた電極合材は、電池特性が優れたものとなる。
本実施形態の第十五の形態に係る改質Pは、
有機基を備える、硫化物固体電解質の製造用の改質Pである。
前記改質Pは、有機基を備えるため、改質Pの中でも、特に有機基を有することで優れた効果を発現しやすい。前記改質Pが前記の第二~十一の形態に係る硫化物固体電解質の製造方法で用いられる原料含有物に含まれると、高いイオン伝導度を有し、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生が抑制される硫化物固体電解質を製造できるため好ましい。
以下、本実施形態の硫化物固体電解質、硫化物固体電解質の製造方法、電極合材、及びリチウムイオン電池について、前記の実施形態に即しながら、より詳細に説明する。
〔硫化物固体電解質の製造方法〕
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、2種以上の原料を含む原料含有物を混合することを含み、前記原料が、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含み、前記原料含有物が、改質Pを含む、製造方法である。
本明細書において、「硫化物固体電解質」とは、窒素雰囲気下25℃で固体を維持する電解質を意味する。本実施形態における硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子並びに有機基を含み、リチウム原子に起因するイオン伝導度を有する硫化物固体電解質である。
本明細書において、「含む」及び「構成要素として含む」には文言通りのそのまま「含む」ほか、他の原子や他の分子等と結合して「含む」場合、例えば、混合する際の化合物の構成を残しながら、当該化合物を構成する少なくとも一の原子が、他の化合物を構成する少なくとも一の原子と結合等をするようにして含むような場合も含まれる。
「硫化物固体電解質」には、本実施形態の製造方法により得られる結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質と、非晶質硫化物固体電解質と、の両方が含まれる。本明細書において、結晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンに、硫化物固体電解質由来のピークが観測される硫化物固体電解質であって、これらにおいての硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無は問わない材料である。すなわち、結晶性硫化物固体電解質は、硫化物固体電解質に由来する結晶構造を含み、その一部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であってもよい、ものである。そして、結晶性硫化物固体電解質は、前記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶質硫化物固体電解質が含まれていてもよいものである。したがって、結晶性硫化物固体電解質には、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。
また、本明細書において、非晶質硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンが実質的に材料由来のピーク以外のピークが観測されないハローパターンであるもののことであり、硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものであることを意味する。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、2種以上の原料を含む原料含有物を混合することを含むことを要するが、図1に記載したように後記する錯化剤を用い、電解質前駆体を経て、必要に応じて後記する加熱することを含んでいてもよい。
電解質前駆体の詳細については後記するが、錯化剤と硫化物固体電解質を混合することで得られる錯体である。
硫化物固体電解質は、空気中の湿気等の水分と接触することにより加水分解反応が進行する等の理由により、硫化水素を発生する場合がある。したがって、硫化物固体電解質や電池の製造工程は、水分の少ない低露点の環境下で行われることが理想であるが、全ての工程を低露点で行うことは、経済的、物理的に難しく、現実的にはドライルームレベルの高露点(例えば、露点-60~-20℃)で硫化物固体電解質を扱えることが要求される。
錯化剤を用いる製造方法によれば、高露点での製造が可能となり、製造工程のスケールアップに優れた効果を発揮する。
前記改質Pを用いることで、硫化物固体電解質に後記する有機基を導入することができる。原料含有物は、Pとして、改質Pを改質していないPとともに使用することで、硫化物固体電解質が含む有機基の量を調整することができるため好ましいが、製造方法を簡略化するため、Pとして改質Pのみを含有していることが好ましい。
後記するように、硫化物固体電解質が含む有機基の量は、改質Pが含む有機基の量により、調整することが好ましい。
<混合すること>
本実施形態の製造方法において、混合することは、2種以上の原料を含む原料含有物を混合するものであれば特に制限されることはなく、液相法と固相法による混合のいずれであってもよく、さらに液相法としては、原料含有物を溶媒に完全に溶解させて混合する均一法であっても、原料含有物を完全に溶解させず固液共存の懸濁液を経て混合する不均一法であってもよい。
混合することは、前記原料含有物と後記する錯化剤とを混合することであってもよい。錯化剤を用いることで、高温とすることなく、混合により硫化物固体電解質が製造できるため好ましい。
混合工程で粒径が大きくなる造粒が生じず、また低温で簡易な装置で製造可能であるとの観点からは、均一法及び不均一法のように溶媒中で行うことが好ましく、高いイオン伝導度を達成する観点及び溶媒の使用に伴う環境負荷を低減する観点からは固相法が好ましい。
原料含有物は固体であっても液体であってもよいが、通常これらは固体又は後記するスラリーである。
2種以上の原料を含む原料含有物の混合の方法には特に制限はなく、2種以上の原料を含む原料含有物を混合できる装置に、それぞれ調製した2種以上の原料を含む原料含有物を投入して混合すればよい。また、混合は、混合時間を短縮するために、後記する溶媒中で行うことが好ましい。
本実施形態の製造方法において、混合することは、混合に加え、撹拌及び粉砕を含むものであり、混合することにおいて、撹拌機、混合機又は粉砕機を用いることが好ましく、撹拌機及び混合機を用いることがより好ましい。
撹拌機及び混合機としては、例えば槽内に撹拌翼を備える機械撹拌式混合機が挙げられる。機械撹拌式混合機は、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられ、原料含有物と錯化剤との混合物中の原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、高速撹拌型混合機が好ましく用いられる。また、高速撹拌型混合機としては、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機等が挙げられ、どちらのタイプの混合機を用いてもよい。
機械撹拌式混合機において用いられる撹拌翼の形状としては、ブレード型、アーム型、アンカー型、パドル型、フルゾーン型、リボン型、多段ブレード型、二連アーム型、ショベル型、二軸羽型、フラット羽根型、C型羽根型、アンカー型、パドル型、フルゾーン型等が挙げられ、原料含有物中の原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、ショベル型、フラット羽根型、C型羽根型等が好ましい。
また、少量の製造であれば撹拌子を用いた撹拌であってもよい。
原料含有物、必要に応じて錯化剤及び必要に応じて溶媒とを混合する際の温度条件としては、特に制限はなく、例えば-30~100℃、好ましくは-10~50℃、より好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)である。また混合時間は、0.1~150時間程度、より均一に混合し、より高いイオン伝導度を得る観点から、好ましくは0.2~120時間、より好ましくは0.3~100時間、更に好ましくは0.5~80時間である。
また、粉砕機として、より具体的な装置としては、例えば媒体式粉砕機が挙げられる。媒体式粉砕機は、容器駆動式粉砕機、媒体撹拌式粉砕機に大別される。
容器駆動式粉砕機としては、撹拌槽、粉砕槽、あるいはこれらを組み合わせたボールミル、ビーズミル等が挙げられる。ボールミル、ビーズミルとしては、回転型、転動型、振動型、遊星型等の各種形式のいずれも採用することができる。
また、媒体撹拌式粉砕機としては、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機;タワーミルなどの塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の撹拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機;などの各種粉砕機が挙げられる。
ビーズミル、ボールミル等に用いられる媒体の粒径としては、使用する原料の種類及び粒径、使用する装置の種類、規模等を考慮して適宜決定すればよいが、通常好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.015mm以上、更に好ましくは0.02mm以上、より更に好ましくは0.04mm以上であり、上限として好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、更に好ましくは1mm以下、より更に好ましくは0.8mm以下である。
また媒体の材質としては、例えば、ステンレス、クローム鋼、タングステンカーバイド等の金属;ジルコニア、窒化ケイ素等のセラミックス;メノウ等の鉱物等が挙げられる。
また、ボールミル、ビーズミルを用いる場合、回転数としては、その処理する規模に応じてかわるため一概にはいえないが、通常10~1000rpm、好ましくは20~900rpmである。
また、この場合の粉砕時間としては、その処理する規模に応じてかわるため一概にはいえないが、通常0.5~100時間、好ましくは1~72時間、より好ましくは5~48時間である。
(乾燥すること)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、電解質前駆体及び/又は硫化物固体電解質を乾燥することを含んでもよい。これにより液体として存在する錯化剤及び溶剤等を除去し、電解質前駆体及び/又は硫化物固体電解質の粉末が得られる。事前に乾燥することにより、効率的に後記する加熱すること可能となる。なお、乾燥と、その後の加熱とを同一工程で行ってもよい。
乾燥は、電解質前駆体及び/又は硫化物固体電解質を、溶媒や残存する錯化剤(乾燥対象物に取り込まれていない錯化剤)の種類に応じた温度で行うことができる。例えば、溶媒や錯化剤の沸点以上の温度で行うことができる。また、通常5~100℃、好ましくは10~85℃、より好ましくは15~70℃、より更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)で真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、錯化剤を揮発させて行うことができる。
また、乾燥は、電解質前駆体及び/又は硫化物固体電解質をガラスフィルター等を用いたろ過、デカンテーションによる固液分離、また遠心分離機等を用いた固液分離により行ってもよい。本実施形態においては、固液分離を行った後、前記の温度条件による乾燥を行ってもよい。
固液分離は、具体的には、電解質前駆体及び/又は硫化物固体電解質が沈殿した後に、上澄みとなる錯化剤、溶媒を除去するデカンテーション、また例えばポアサイズが10~200μm程度、好ましくは20~150μmのガラスフィルターを用いたろ過が容易である。
<加熱すること>
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、電解質前駆体及び/又は硫化物固体電解質を混合することの後に、加熱することを更に含むことも好ましい。つまり、電解質前駆体を加熱して後記する非晶質硫化物固体電解質を得ること、また電解質前駆体又は非晶質硫化物固体電解質を加熱することで、後記する結晶性硫化物固体電解質を得ること、を含むことが好ましい。
電解質前駆体を加熱することを含むことで、電解質前駆体中の錯化剤及び溶媒等が除去され、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む非晶質硫化物固体電解質、結晶性硫化物固体電解質が得られる。また、本加熱により加熱される電解質前駆体は、後記する粉砕することにより粉砕された電解質前駆体の粉砕物であってもよい。
また、結晶性硫化物固体電解質を加熱することで、結晶子径を大きくすることも、イオン伝導度を高くできるため好ましい。
ここで、電解質前駆体中の錯化剤が除去されることについては、X線回折パターン、ガスクロマトグラフィー分析等の結果から錯化剤が前駆体の共結晶を構成していることが明らかであることに加え、電解質前駆体を加熱することで錯化剤を除去して得られた硫化物固体電解質が、錯化剤を用いずに従来の方法により得られた硫化物固体電解質とX線回折パターンが同じであることにより裏づけされる。
本実施形態の製造方法において、硫化物固体電解質は、電解質前駆体を加熱することにより、該電解質前駆体中の錯化剤を除去して得られ、硫化物固体電解質中の錯化剤は少ないほど好ましいものであるが、硫化物固体電解質の性能を害さない程度に錯化剤が含まれていてもよい。硫化物固体電解質中の錯化剤の含有量は、通常10質量%以下となっていればよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。含有量は少ないほど好ましいので、下限値は特に限定されない。
本実施形態の製造方法において、結晶性硫化物固体電解質を得るには、電解質前駆体を加熱して得てもよいし、また電解質前駆体を加熱して非晶質硫化物固体電解質を得た後、該非晶質硫化物固体電解質を加熱して得てもよい。すなわち、本実施形態の製造方法においては、非晶質硫化物固体電解質を製造することもできる。
従来、イオン伝導度が高い結晶性硫化物固体電解質、例えば後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する硫化物固体電解質を得るには、メカニカルミリング等の機械的粉砕処理、その他溶融急冷処理等により非晶質硫化物固体電解質を作製した後に該非晶質硫化物固体電解質を加熱して得ることを要していた。しかし、本実施形態の製造方法では、機械的粉砕処理、その他溶融急冷処理等を行わない方法によってもチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質が得られる点で、従来のメカニカルミリング処理等による製造方法に比べて優位であるといえる。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において、非晶質硫化物固体電解質を得るか、結晶性硫化物固体電解質を得るか、さらには非晶質硫化物固体電解質を得てから結晶性硫化物固体電解質を得るか、電解質前駆体から直接結晶性硫化物固体電解質を得るかは、所望に応じて適宜選択されるものであり、加熱温度、加熱時間等により調整することが可能である。
電解質前駆体の加熱温度は、例えば、非晶質硫化物固体電解質を得る場合、該非晶質硫化物固体電解質(又は電解質前駆体)を加熱して得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、具体的には、該非晶質硫化物固体電解質(又は電解質前駆体)を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは20℃以下の範囲とすればよく、下限としては特に制限はないが、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度-40℃以上程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に非晶質硫化物固体電解質が得られる。
非晶質硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、250℃以下が好ましく、220℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましく、下限としては特に制限はないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。
また、加熱は減圧下で行うことが好ましく、装置上の観点から0.1Pa以上であることが好ましく、1.0Pa以上であることがより好ましく、5.0Pa以上であることが更に好ましく、イオン伝導度が高い固体電解質を得る観点から
100.0Pa以下であることが好ましく、50.0Pa以下であることがより好ましく、20.0Pa以下であることが更に好ましい。
また、非晶質硫化物固体電解質を加熱して、又は電解質前駆体から直接結晶性硫化物固体電解質を得る場合、結晶性硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、非晶質硫化物固体電解質を得るための前記加熱温度よりも高いことが好ましく、具体的には、該非晶質硫化物固体電解質(又は前駆体)を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上の範囲とすればよく、上限としては特に制限はないが、40℃以下程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に結晶性硫化物固体電解質が得られる。結晶性硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、上限としては特に制限はないが、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
加熱時間は、所望の非晶質硫化物固体電解質、結晶性硫化物固体電解質が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
また、加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、または減圧雰囲気(特に真空中)で行なうことが好ましい。結晶性硫化物固体電解質の劣化(例えば、酸化)を防止できるからである。加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
(粉砕すること)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、更に電解質前駆体及び/又は硫化物固体電解質を粉砕することを含むことが好ましい。電解質前駆体及び/又は硫化物固体電解質を粉砕することで、イオン伝導度の低下を抑制しながら粒径の小さい硫化物固体電解質が得られる。
本実施形態における粉砕に用いる粉砕機としては、前記粉砕機を用いることができる。
粉砕機が有する回転体の周速を調整することにより、固体電解質の解砕(微粒化)及び造粒(粒成長)を調整することができる。すなわち混合に加えて、解砕により平均粒径を小さくしたり、造粒により平均粒径を大きくすることができるため、容易に硫化物固体電解質のモルフォロジーを自在に調整することができる。より具体的には、回転体を低周速で回転させることで解砕ができ、回転体を高周速で回転させることで造粒が可能となる。このように、回転体の周速を調整するだけで、容易に固体電解質のモルフォロジーを調整することができる。
回転体の周速について、低周速及び高周速は、例えば粉砕機で使用する媒体の粒径、材質、使用量等によって変わり得るため一概に規定することはできない。例えば、高速旋回薄膜型撹拌機のようにボールやビーズの粉砕媒体を用いない装置の場合には、比較的高周速であっても主として解砕が起こり、造粒は起きにくい。一方、ボールミルやビーズミルのような粉砕媒体を用いる装置の場合には、既述のとおり低周速で解砕でき、高周速で造立が可能となる。したがって、粉砕装置、粉砕媒体等の所定の条件が同じであれば、解砕が可能な周速は、造粒が可能な周速よりも小さい。したがって、例えば、周速6m/sを境に造粒が可能となる条件においては、低周速は6m/s未満であることを意味し、高周速は6m/s以上のことを意味する。
硫化物固体電解質の粉砕(機械的処理)において、より容易に所望のモルフォロジーを調整する観点から、上記粉砕機のうち容器駆動式粉砕機が好ましく、中でもビーズミル、ボールミルが好ましい。ビーズミル、ボールミルといった容器駆動式粉砕機では、機械的処理用前駆体を撹拌し得る回転体として、当該機械的処理用前駆体を収納する撹拌槽、粉砕槽といった容器を備えている。よって、既述のように、当該回転体の周速の調整により、容易に硫化物固体電解質のモルフォロジーを調整することができる。
ビーズミル、ボールミルは、使用するビーズ、ボール等の粒径、材質、使用量等を調整することによっても、モルフォロジーを調整することができるため、よりきめの細かいモルフォロジーの調整が可能となり、また従来にはないモルフォロジーを調整することも可能となる。例えば、ビーズミルとしては、遠心分離式のタイプで、極微粒(φ0.015~1mm程度)のいわゆるマイクロビーズを用いることができるようなタイプ(例えば、ウルトラアペックスミル(UAM)等)も使用できる。
モルフォロジーの調整について、固体電解質に付与するエネルギーを小さくする、すなわち回転体の周速を低くする、あるいはビーズ、ボール等の粒径を小さくするほど、平均粒径は小さくなり(解砕)、比表面積は大きくなる傾向となり、一方、エネルギーを大きくする、すなわち回転体の周速を高くする、あるいはビーズ、ボール等の粒径を大きくするほど、平均粒径は大きくなり(造粒)、比表面積は小さくなる傾向となる。
また、例えば機械的処理の時間を長くするほど平均粒径は大きくなる(造粒)傾向となる。
機械的処理の処理時間は、所望のモルフォロジーとともに、使用する装置の種類、規模等を考慮して適宜決定すればよいが、通常好ましくは5秒以上、より好ましくは30秒以上、更に好ましくは3分以上、より更に好ましくは15分以上であり、上限として好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは2時間以下、より更に好ましくは1.5時間以下である。
機械的処理における回転体の周速(ビーズミル、ボールミル等の装置における回転速度)は、所望のモルフォロジーとともに、使用する装置の種類、規模等を考慮して適宜決定すればよいが、通常好ましくは0.5m/s以上、より好ましくは1m/s以上、更に好ましくは2m/s以上、より更に好ましくは3m/s以上であり、上限として好ましくは55m/s以下、より好ましくは40m/s以下、更に好ましくは25m/s以下、より更に好ましくは15m/s以下である。また、周速は同じであってもよいし、途中でかえることもできる。
〔硫化物固体電解質〕
本実施形態の硫化物固体電解質は、上記の本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により容易に製造することができ、改質Pとして有機基を有するものを使用することで容易に製造することができるものである。別の形態として、硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子並びに有機基を含み、リチウム原子の含有量(mol)当たりの硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の含有量(mol)の比が、リチウム原子:硫黄原子:リン原子:ハロゲン原子=1:1.1000~1.2000:0.2000~0.3500:0.1400~0.1550である、硫化物固体電解質である。
前記含有量の比を満たさないと、所要のイオン伝導度が得られないこととなる。
本実施形態の硫化物固体電解質は、前記有機基を含むことを要するが、前記有機基の硫化物固体電解質中のリン原子の1molに対し、耐水性が改善できるため、有機基が、0.005mol以上であることが好ましく、0.01mol以上であることがより好ましく、0.03mol以上であることが更に好ましく、硫化物固体電解質のイオン伝導度の低下を抑制ためには、0.50mol以下であることが好ましく、0.30mol以下であることがより好ましく、0.20mol以下であることが更に好ましく、0.15mol以下であることがより更に好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質は、耐水性に優れ、雰囲気中の水分などに暴露しても硫化水素ガスの発生が抑制されるが、HS発生量は、1.70cc/g以下であることが好ましく、1.60cc/g以下であることがより好ましく、1.50cc/g以下であることが更に好ましく、1.00cc/g以下であることがより更に好ましい。HS発生量は少ないほど好ましく、下限値は特に制限されない。
S発生量は、例えば実施例に記載の方法で、測定することができる。
硫化物固体電解質中のリン原子(mol)と改質剤(mol)の比の値(改質剤/P)は、改質Pを製造する際に使用した改質剤の使用量及びPの使用量から推定することができる。
また、硫化物固体電解質中のリン原子の含有量は、実施例記載の誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置による測定から決定でき、有機基の含有量は、有機基が有する特徴的な官能基に着目し、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、固体核磁気共鳴(NMR)分光法、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-Mass)等を適宜組み合わせて決定することができる。
改質剤は、後記するようにPに有機基を導入するために用いる剤である。
本明細書において、「固体電解質」とは、窒素雰囲気下25℃で固体を維持する電解質であり、「硫化物固体電解質」とは、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含み、リチウム原子に起因するイオン伝導度を有する固体電解質である。
「硫化物固体電解質」には、結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質と、非晶質硫化物固体電解質と、の両方が含まれる。本明細書において、結晶性硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンに、硫化物固体電解質由来のピークが観測される硫化物固体電解質であって、後記する
原料含有物由来のピークの有無は問わない材料である。すなわち、結晶性硫化物固体電解質は、硫化物固体電解質に由来する結晶構造を含み、その一部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該硫化物固体電解質に由来する結晶構造であってもよいものである。そして、結晶性硫化物固体電解質は、前記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶質硫化物固体電解質が含まれていてもよいものであり、非晶質硫化物固体電解質が含まれていなくても良い。むしろ、非晶質成分が含まれている方が、電池への加工がしやすく好ましい。したがって、結晶性硫化物固体電解質には、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。イオン伝導度を高くするためにはガラスセラミックスであることが好ましい。
本明細書において、非晶質硫化物固体電解質とは、X線回折測定においてX線回折パターンが実質的にピークの観測されないハローパターンであるもののことであり、硫化物固体電解質の原料由来のピークの有無、又は、非晶質硫化物固体電解質を単離する際の操作で不可避的に生成してしまう僅かな結晶の有無は問わないものであることを意味する。
(非晶質硫化物固体電解質)
本実施形態の硫化物固体電解質において、非晶質硫化物固体電解質としては、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含んでおり、代表的なものとしては、例えば、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される硫化物固体電解質;更に酸素原子、珪素原子等の他の原子を含む、例えば、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS-P-LiI等の硫化物固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される硫化物固体電解質が好ましい。
非晶質硫化物固体電解質を構成する原子の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
本実施形態の硫化物固体電解質において、非晶質硫化物固体電解質としては、少なくともLiS-Pを有するものである場合、LiSとPとのモル比の値は、より高いイオン伝導度を得る観点から、65~85:15~35が好ましく、70~80:20~30がより好ましく、72~78:22~28が更に好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において得られる非晶質硫化物固体電解質が、例えば、LiS-P-LiI-LiBrである場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量の合計は、60~95モル%が好ましく、65~90モル%がより好ましく、70~85モル%が更に好ましい。また、臭化リチウムとヨウ化リチウムとの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99モル%が好ましく、20~90モル%がより好ましく、40~80モル%が更に好ましく、50~70モル%が特に好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質において、非晶質硫化物固体電解質としては、リチウム原子の含有量(mol)当たりの硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の含有量(mol)の比が、リチウム原子:硫黄原子:リン原子:ハロゲン原子=1:1.1000~1.2000:0.2000~0.3500:0.1400~0.1550であると、これを用いて製造される硫化物固体電解質のイオン伝導度を高くできるため好ましい、1:1.1200~1.1800:0.2400~0.3200:0.1410~0.1500であることがより好ましく、1:1.1300~1.1700:0.2700~0.3000:0.1440~0.1490であることが更に好ましい。
また、ハロゲン原子として、臭素及びヨウ素を併用する場合、リチウム原子の含有量(mol)当たりの硫黄原子、リン原子、臭素原子及びヨウ素原子の含有量(mol)の比が、リチウム原子:硫黄原子:リン原子:臭素原子:ヨウ素原子=1:1.1000~1.2000:0.2000~0.3500:0.0700~0.0760:0.0700~0.0760であることが好ましく、1:1.1200~1.1800:0.2400~0.3200:0.0710~0.0755:0.0700~0.0755であることがより好ましく、1:1.1300~1.1700:0.2700~0.3000:0.0720~0.0750:0.0700~0.0750であることが更に好ましい。
前記範囲内とすることにより、後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する、より高いイオン伝導度の硫化物固体電解質が得られやすくなる。
また、非晶質硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の非晶質硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm~500μm、0.1~200μmの範囲内を例示できる。
(結晶性硫化物固体電解質)
本実施形態の硫化物固体電解質において、結晶性硫化物固体電解質としては、非晶質硫化物固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスであってもよく、その結晶構造としては、LiPS結晶構造、Li結晶構造、LiPS結晶構造、Li11結晶構造、2θ=20.2°近傍及び23.6°近傍にピークを有する結晶構造(例えば、特開2013-16423号公報)等が挙げられる。
本実施形態の硫化物固体電解質において、結晶性硫化物固体電解質としては、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが好ましい。
また、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造(Kannoら、Journal of The Electrochemical Society,148(7)A742-746(2001)参照)、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造(Solid State Ionics,177(2006),2721-2725参照)等も挙げられる。本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質の結晶構造は、より高いイオン伝導度が得られる点で、前記の中でもチオリシコンリージョンII型結晶構造であることが好ましい。
ここで、「チオリシコンリージョンII型結晶構造」は、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造のいずれかであることを示す。また、本実施形態の製造方法で得られる結晶性硫化物固体電解質は、前記チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであってもよいし、主結晶として有するものであってもよいが、より高いイオン伝導度を得る観点から、主結晶として有するものであることが好ましい。本明細書において、「主結晶として有する」とは、結晶構造のうち対象となる結晶構造の割合が80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、より高いイオン伝導度を得る観点から、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。
CuKα線を用いたX線回折測定において、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.5°、18.3°、26.1°、27.3°、30.0°付近に現れ、Li結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=16.9°、27.1°、32.5°付近に現れ、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=15.3°、25.2°、29.6°、31.0°付近に現れ、Li11結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.8°、18.5°、19.7°、21.8°、23.7°、25.9°、29.6°、30.0°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.1°、23.9°、29.5°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.2、23.6°付近に現れる。なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
前記したとおり、本実施形態においてチオリシコンリージョンII型結晶構造が得られる場合には、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質は、結晶性LiPSに見られる2θ=17.5°、26.1°の回折ピークを有しないか、有している場合であってもチオリシコンリージョンII型結晶構造の回折ピークに比べて極めて小さいピークが検出される程度である。
前記のLiPSの構造骨格を有し、Pの一部をSiで置換してなる組成式Li7-x1-ySi及びLi7+x1-ySi(xは-0.6~0.6、yは0.1~0.6)で示される結晶構造は、立方晶又は斜方晶、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。前記の組成式Li7-x-2yPS6-x-yCl(0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。また、前記の組成式Li7-xPS6-xHa(HaはClもしくはBr、xが好ましくは0.2~1.8)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。
なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
本実施形態の硫化物固体電解質において、結晶性硫化物固体電解質としては、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の含有量は、前記非晶質硫化物固体電解質と同様である。
結晶性硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の結晶性硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm~500μm、0.1~200μmの範囲内を例示できる。
本実施形態の硫化物固体電解質の結晶子径は、30nm以上であることが好ましい。イオン伝導度及び耐水性を向上させる観点からは、33nm以上であることが好ましく、35nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることが更に好ましく、70nm以上であることがより更に好ましく、80nm以上であることがより優れて好ましく、後記するが、工程(A)の後に結晶化することで、硫化物固体電解質の結晶子径は更に大きくすることができ、このような場合は、90nm以上であることがより更に優れて好ましい。上限値は特に制限はないが、製造の容易性、調達の容易性及び電池等の製造の容易性から、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更に好ましく、150nm以下であることがより更に好ましく、130nm以下であることがより優れて好ましい。
本実施形態の製造方法により得られる本実施形態の硫化物固体電解質のイオン伝導度は、PS 3-リン比率が高いことから極めて高いものであり、通常0.01mS/cm以上のものとなり得る。
1.00mS/cm以上であることがより好ましく、2.00mS/cm以上であることが更に好ましく、2.50mS/cm以上であることがより更に好ましく、3.00mS/cm以上であることがより優れて好ましく、3.50mS/cm以上であることが特に好ましい。
<原料含有物>
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、2種以上の原料を含む原料含有物を混合することを要する。
原料含有物は、2種以上の原料を含むが、この原料は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含み、更に原料含有物は、後記する改質Pを含むことを要する。
原料含有物に含まれる原料として、例えばリチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の少なくとも一種を含む化合物を用いることができ、より具体的には、硫化リチウム;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン;各種フッ化リン(PF、PF)、各種塩化リン(PCl、PCl、PCl)、各種臭化リン(PBr、PBr)、各種ヨウ化リン(PI、P)等のハロゲン化リン;硫化リチウム及び硫化リンから得られ、分子構造としてPS構造を有する非晶性非晶性LiPS又は結晶性LiPS等の固体電解質;フッ化チオホスホリル(PSF)、塩化チオホスホリル(PSCl)、臭化チオホスホリル(PSBr)、ヨウ化チオホスホリル(PSI)、二塩化フッ化チオホスホリル(PSClF)、二臭化フッ化チオホスホリル(PSBrF)等のハロゲン化チオホスホリル;などの前記四種の原子から選ばれる少なくとも二種の原子からなる原料、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、好ましくは塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が挙げられ、更に好ましくは臭素(Br)、ヨウ素(I)が挙げられる。
前記の原料含有物として、硫化リチウム、ハロゲン化リチウム、硫化リン、ハロゲン化リン及びハロゲン分子から選ばれる少なくとも1種を含有することが更に好ましい。
本実施形態において硫化リチウム、ハロゲン化リチウム、硫化リン、ハロゲン化リン及びハロゲン分子から選ばれる少なくとも1種を用いることによって高いイオン伝導度を有する固体電解質が得られるため好ましく、固定電解質のハロゲン原子の導入にハロゲン化リチウムを錯化剤及び溶媒とともに用いると、後記する溶媒等を除去する工程においてハロゲン原子の分離が生じず高いイオン伝導度を有する固体電解質が得られるため好ましい。
前記以外の原料含有物として用い得るものとしては、例えば、前記四種の原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含み、かつ該四種の原子以外の原子を含む原料、より具体的には、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の硫化アルカリ金属;硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム、硫化ホウ素、硫化ガリウム、硫化スズ(SnS、SnS)、硫化アルミニウム、硫化亜鉛等の硫化金属;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のリン酸化合物;ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウム等のリチウム以外のアルカリ金属のハロゲン化物;ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ケイ素、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化セレン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化テルル、ハロゲン化ビスマス等のハロゲン化金属;オキシ塩化リン(POCl)、オキシ臭化リン(POBr)等のオキシハロゲン化リン;などが挙げられる。
本実施形態においては、より容易に高いイオン伝導度を有する固体電解質を得る観点から、原料含有物としては、前記の中でも、硫化リチウム、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体(ハロゲン分子)、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウムが好ましい。原料の組み合わせとしては、例えば、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムの組み合わせ、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン単体の組み合わせが好ましく挙げられ、ハロゲン化リチウムとしては臭化リチウム、ヨウ化リチウムが好ましく、ハロゲン単体としては臭素及びヨウ素が好ましい。
本実施形態の原料含有物は、前記のように改質Pを含むことを要し、改質P、硫化リチウム及びハロゲン化リチウムを含むことが好ましく、ハロゲン化リチウムとしては臭化リチウム及びヨウ化リチウムの一方又は両方を含むことが好ましい。すなわち、改質Pと、硫化リチウム及びハロゲン化リチウムとして臭化リチウム及びヨウ化リチウムの一方又は両方を含む含有物が好ましい。
本実施形態で用いられる硫化リチウムは、粒子であることが好ましい。
硫化リチウム粒子の平均粒径(D50)は、10μm以上2000μm以下であることが好ましく、30μm以上1500μm以下であることがより好ましく、50μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。また、前記の原料として例示したもののうち固体の原料については、前記硫化リチウム粒子と同じ程度の平均粒径を有するものが好ましい、すなわち前記硫化リチウム粒子の平均粒径と同じ範囲内にあるものが好ましい。
<改質P
改質Pが、有機基を備えるPであることが好ましい。
前記のように、改質Pが、有機基を備えることで、硫化物固体電解質が水分と接触しても、硫化水素ガスの発生が抑制されるため好ましい。
改質Pは、改質P中のリン原子の1molに対し、硫化物固体電解質とした際に、耐水性が改善できるため、有機基が、0.005mol以上であることが好ましく、0.01mol以上であることがより好ましく、0.03mol以上であることが更に好ましく、硫化物固体電解質のイオン伝導度の低下を抑制ためには、0.50mol以下であることが好ましく、0.30mol以下であることがより好ましく、0.20mol以下であることが更に好ましく、0.15mol以下であることがより更に好ましい。
改質P中のリン原子(mol)と改質剤(mol)の比の値(改質剤/P)は、改質Pを製造する際に使用した改質剤の使用量(mol)及びPの使用量から推定することができる。
改質剤は、後記するようにPに有機基を導入するために用いる剤である。
前記有機基は、ヘテロ原子を含むことで、前記のように、有機基とPは、強固に相互作用することになり、硫化物固体電解質の製造工程で有機基が脱落し、減少することが抑えられ、また硫化物固体電解質とした後も、減少することが抑えられるため好ましい。
前記改質Pは、前記改質P中のPのリン原子と前記ヘテロ原子の共有結合を含むことで、有機基は容易に改質Pから脱落することがなくなるため好ましい。これは、硫化物固体電解質とも強固に結合するため好ましい。
前記ヘテロ原子が、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種であると、前記「備える」が、化学結合である場合、ヘテロ原子が前記の原子であると容易に化学結合を形成できるため好ましく、前記「備える」が、物理吸着又は配位結合である場合、前記原子は非共有電子対を有するため、分子間力が大きくなり、又はリチウム原子等に配位結合するため好ましい。
前記有機基が、一般式(a-1)、(a-2)及び(b-1)で表される基から選ばれる少なくとも1種である有機基とPは、強固に相互作用することになり、硫化物固体電解質の製造工程で有機基が脱落し、減少することが抑えられ、また硫化物固体電解質とした後も、減少することが抑えられるため好ましい。
一般式(a-1)、(a-2)及び(b-1)で表される基から選ばれる少なくとも1種を含む硫化物固体電解質と、これらを含まない硫化物固体電解質と比較して、これらの基を含んでも、イオン伝導度の低下が抑制され、また水分と接触しても、硫化水素ガスの発生が抑制されるため好ましい。前記有機基は、一般式(a-1)又は(b-1)で表される基であることがより好ましく、イオン伝導度の低下が抑制されるため、一般式(a-1)で表される基であることが更に好ましく、硫化水素ガスの発生が抑制されるため、一般式(b-1)で表される基であることが更に好ましい。
一般式(a-1)及び(a-2)で表される基において、Ra1及びRa2は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基であることが好ましく、炭素数4~20のアルキル基又は炭素数4~20のアルケニル基であることがより好ましく、炭素数6~12のアルキル基又は炭素数6~12のアルケニル基であることが更に好ましく、炭素数6~10の直鎖のアルキル基又は炭素数6~10の直鎖のアルケニル基であることがより更に好ましい。
前記アルキル基及びアルケニル基中の水素原子は、1価の炭素数3~10の脂環式基及び又は1価の炭素数6~10の芳香族基によって置換していてもよく、前記アルキル基及びアルケニル基中の-CH-基は、2価の炭素数3~10の脂環式基及び又は2価の炭素数6~10の芳香族基によって置換していてもよい。
一般式(b-1)で表される基において、Rb1及びRb2は、それぞれ独立して、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数2~30のアルケニル基であることが好ましく、炭素数2~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基であることがより好ましく、炭素数2~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であることが更に好ましく、炭素数3~5の直鎖のアルキル基又は炭素数3~5の直鎖のアルケニル基であることがより更に好ましい。
前記アルキル基及びアルケニル基中の水素原子は、1価の炭素数3~10の脂環式基及び又は1価の炭素数6~10の芳香族基によって置換していてもよく、前記アルキル基及びアルケニル基中の-CH-基は、2価の炭素数3~10の脂環式基及び又は2価の炭素数6~10の芳香族基によって置換していてもよい。
a1及びXa2は、硫黄原子であることが好ましい。硫黄原子は硫化物固体電解質を構成する原子であり、組成の変化が少なく、硫化物固体電解質が、硫黄原子を含む有機基を含んでいても類似した結晶構造となるため好ましい。
(改質剤)
本実施形態の改質剤は、Pに有機基を導入するために用いる剤である。
改質Pは、有機基を備えるPであるが、Pと改質剤を前記の混合することと同様にして、製造することができる。更に必要に応じて乾燥すること、加熱すること及び粉砕することを行ってもよい。
改質剤は、Pとのみ混合するものであり、ハロゲン原子を含む化合物と混合する後記する錯化剤とは異なるものである。
改質剤は、Pに有機基を導入する際に用いる剤であり、Pのリン原子と有機基中のヘテロ原子が共有結合を形成するために用いることができるものであればよい。改質剤はその構造内に一般式(a-1)、(a-2)及び(b-1)で表される基から選ばれる少なくとも1種を持つことが好ましい。
改質剤は、より具体的には、一般式(A-1)、(A-2)又は(B-1)で表される化合物であることが好ましく、、一般式(A-1)又は(B-1)で表される化合物であることがより好ましい。
(式中、RA1は、Ra1と同じ意味を表し、RA2は、Ra2と同じ意味を表し、RB1は、Rb1と同じ意味を表し、RB1は、Rb2と同じ意味を表し、XA2は、Xa2と同じ意味を表し、YA1及びYA2は、それぞれ独立して、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-OH基又は-SH基を表す。)
A1、RA2、RB1、RB1及びXA2は、それぞれ対応するRa1、Ra2、Rb1、Rb2及びXa2と同じ基であることが好ましく、YA1は、-OH基又は-SH基であることが好ましく、-SH基であることがより好ましく、YA2は、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
より具体的に改質剤は、チオール系化合物、第二級アミン系化合物及びアルコール系化合物が好ましい。
硫化物固体電解質のイオン伝導度の低下の抑制を重視する場合には、チオール系化合物が好ましく、耐水性を重視する場合には、第二級アミン系化合物が好ましく、イオン伝導度の低下の抑制及び耐水性のバランスを重視するにはアルコール系化合物が好ましい。
チオール系化合物としては、前記一般式(A-1)におけるYA1が、-SH基であり、RA1が、炭素数1~18のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数6~10のアルキル基であることが更に好ましく、1-オクタンチオールであることがより更に好ましい。
第二級アミン系化合物としては、前記一般式(B-1)におけるRb1及びRb12がそれぞれ独立して、炭素数1~18のアルキル基であることが好ましく、炭素数2~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~6のアルキル基であることが更に好ましく、n-ジブチルアミンであることがより更に好ましい。
アルコール系化合物としては、前記一般式(A-1)におけるYA1が、-OH基であり、RA1が、炭素数1~18のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数6~10のアルキル基であることが更に好ましく、1-オクタノールであることがより更に好ましい。
(電解質前駆体)
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において、電解質前駆体を経由することで、高温とすることなく、混合により硫化物固体電解質が製造できるため好ましい。
電解質前駆体は、錯化した、硫化物固体電解質の前駆体を意味する。
前記電解質前駆体は、後記する錯化剤、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子及び有機基により構成される、X線回折測定においてX線回折パターンに、原料由来のピークとは異なるピークが観測される、という特徴を有するものであり、錯化剤、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子及び有機基により構成される錯体結晶を含む。
単に原料含有物のみを混合しただけでは、X線回折パターンにおいて、原料由来のピークが観測されるだけであり、原料含有物と錯化剤とを混合することにより、原料由来のピークとは異なるピークが観測されることから、電解質前駆体(錯体結晶)は、原料含有物に含まれる原料自体とは明らかに異なる構造を有するものであることが確認できた。
また、電解質前駆体(錯体結晶)は、結晶性固体電解質とも異なる構造を有するものであることを特徴とするものである。このこともX線回折パターンから確認している。
錯体結晶は、錯化剤、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子及び有機基により構成されており、典型的には、リチウム原子と、他の原子とが、錯化剤を介して及び/又は介さずに直接結合した錯体構造を形成しているものと推認される。
ここで、錯化剤が錯体結晶を構成していることは、例えば、ガスクロマトグラフィー分析によって確認することができる。具体的には、電解質前駆体の粉末をメタノールに溶解させ、得られたメタノール溶液のガスクロマトグラフィー分析を行うことで錯体結晶に含まれる錯化剤を定量することができる。
電解質前駆体中の錯化剤の含有量は、錯化剤の分子量により異なるが、通常10質量%以上70質量%以下程度、好ましくは15質量%以上65質量%以下である。
本実施形態において、ハロゲン原子を含む錯体結晶を形成することが、イオン伝導度の向上の点で、好ましい。錯化剤を用いることにより、PS構造等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とが、錯化剤を介して結合(配位)し、ハロゲン原子がより分散して定着した錯体結晶が得られやすくなり、イオン伝導度が向上する。
電解質前駆体中のハロゲン原子が錯体結晶を構成していることは、錯化剤等を含む電解質前駆体のスラリーの固液分離を行っても所定量のハロゲン原子が電解質前駆体に含まれていることによって確認できる。錯体結晶を構成しないハロゲン原子は、錯体結晶を構成するハロゲン原子に比べて容易に溶出し、固液分離の液体中に排出されるからである。また、電解質前駆体又は固体電解質のICP分析(誘導結合プラズマ発光分光分析)による組成分析により、該電解質前駆体又は固体電解質中のハロゲン原子の割合が原料により供給したハロゲン原子の割合と比べて顕著に低下していないこと、によって確認することもできる。
電解質前駆体に留まるハロゲン原子の量は、仕込み組成に対して30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。電解質前駆体に留まるハロゲン原子の量の上限は100質量%である。
<錯化剤>
前記錯化剤とは、リチウム原子と錯体形成することが可能な物質であり、前記原料含有物に含まれるリチウム原子を含む硫化物やハロゲン化物等と作用して錯体結晶を含む電解質前駆体の形成を促進させる性状を有するものであることを意味する。
前記改質剤と前記錯化剤は、同一の化合物であってもよいが、前記改質剤は好ましくは前記改質P中のPのリン原子と前記ヘテロ原子との共有結合により結合し、錯化剤はリチウム原子と錯体を形成する点で異なる。前記の改質剤は既にPと結合しているため、錯体の形成には寄与しない。
錯化剤を用いて、錯体結晶を含む電解質前駆体を形成することにより、従来技術で伝導度低下の原因ともなっていたハロゲン分子等の特定成分の溶出等を抑制し、イオン伝導度が高い固体電解質が得られる。
錯化剤としては、前記性状を有するものであれば特に制限なく用いることができ、特にリチウム原子との親和性が高い原子、例えば窒素原子、酸素原子、塩素原子等のヘテロ原子を有する化合物を含むことが好ましく、これらのヘテロ原子を含む基を有する化合物を含むことがより好ましく挙げられる。これらのヘテロ原子、該へテロ原子を含む基は、リチウムと配位(結合)し得るからである。
錯化剤は、その分子中のヘテロ原子がリチウム原子との親和性が高く、本実施形態の製造方法により得られる硫化物固体電解質に主構造として存在する代表的にはPS構造を含むLiPS等のリチウムを含む構造体、またハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料と結合し、集合体を形成しやすい性状を有するものと考えられる。そのため、前記原料含有物と、錯化剤とを混合することにより、PS構造等のリチウムを含む構造体あるいは錯化剤を介した集合体、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料あるいは錯化剤を介した集合体が満遍なく存在することとなり、ハロゲン原子等の特定成分がより分散して定着した電解質前駆体が得られるので、結果としてイオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られるものと考えられる。
また、前記の有機基が改質Pや硫化物固体電解質中の有機基が、溶出することを防ぎ、硫化物固体電解質中の有機基が満遍なく存在することとなるため好ましい。
したがって、分子中に少なくとも二つの配位(結合)可能なヘテロ原子を有することが好ましく、分子中に少なくともヘテロ原子を含む基を二つ有することがより好ましい。この点において改質剤と異なる。カルボニル基は二つ酸素原子をその構造内に有するが、カルボニル基は一つの基とする。
分子中に少なくとも二つのヘテロ原子を含む基を有することで、PS構造を含むLiPS等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とを、分子中の少なくとも二つのヘテロ原子を介して結合させることができるので、電解質前駆体中でハロゲン原子がより分散して定着するため、その結果、イオン伝導度が高く、硫化水素ガスの発生が抑制された固体電解質が得られることとなる。また、ヘテロ原子の中でも、窒素原子が好ましく、窒素原子を含む基としてはアミノ基が好ましい、すなわち錯化剤はアミノ基を有する化合物を含むことが好ましい。
分子中にアミノ基を有するアミン化合物は、電解質前駆体の形成を促進し得るので特に制限はないが、錯化剤は分子中に少なくとも二つの第三級アミノ基を有する化合物を含有することが好ましい。
このような構造を有することで、PS構造を含むLiPS等のリチウムを含む構造体と、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料とを、分子中の少なくとも二つの窒素原子で介して結合させることができるので、電解質前駆体中でハロゲン原子がより分散して定着するため、その結果、イオン伝導度の高い固体電解質が得られることとなる。
このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、芳香族アミン等のアミン化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン等の脂肪族一級ジアミン;N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルジアミノプロパン、N,N’-ジエチルジアミノプロパン等の脂肪族二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノヘキサン等の脂肪族三級ジアミン;などの脂肪族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。ここで、本明細書における例示において、例えばジアミノブタンであれば、特に断りがない限り、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン等のアミノ基の位置に関する異性体の他、ブタンについては直鎖状、分岐状の異性体等の、全ての異性体が含まれるものとする。
脂肪族アミンの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族アミン中の脂肪族炭化水素基の炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
脂環式アミンとしては、シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の脂環式一級ジアミン;ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチル-シクロヘキサンジアミン、ビス(エチルメチルアミノ)シクロヘキサン等の脂環式三級ジアミン;などの脂環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられ、また、複素環式アミンとしては、イソホロンジアミン等の複素環式一級ジアミン;ピペラジン、ジピペリジルプロパン等の複素環式二級ジアミン;N,N-ジメチルピペラジン、ビスメチルピペリジルプロパン等の複素環式三級ジアミン;などの複素環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
脂環式アミン、複素環式アミンの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
また、芳香族アミンとしては、フェニルジアミン、トリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族一級ジアミン;N-メチルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルフェニレンジアミン、N,N’-ビスメチルフェニルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルナフタレンジアミン、N-ナフチルエチレンジアミン等の芳香族二級ジアミン;N,N-ジメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルナフタレンジアミン等の芳香族三級ジアミン;などの芳香族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
芳香族アミンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
本実施形態で用いられるアミン化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
なお、具体例としてジアミンを例示したが、本実施形態で用いられ得るアミン化合物としては、ジアミンに限らないことは言うまでもなく、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、前記脂肪族ジアミン等の各種ジアミンに対応する脂肪族モノアミン;またピペリジン、メチルピペリジン、テトラメチルピペリジン等のピペリジン化合物;ピリジン、ピコリン等のピリジン化合物、モルホリン、メチルモルホリン、チオモルホリン等のモルホリン化合物;イミダゾール、メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;前記脂環式ジアミンに対応するモノアミン等の脂環式モノアミン;前記複素環式ジアミンに対応する複素環式モノアミン;前記芳香族ジアミンに対応する芳香族モノアミン等のモノアミンの他;例えば、ジエチレントリアミン、N,N’,N’’-トリメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス[(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアミノ基を3つ以上有するポリアミンも用いることができる。
前記の中でも、より高いイオン伝導度を得る観点から、アミノ基として第三級アミノ基を有する三級アミンであることが好ましく、二つの第三級アミノ基を有する三級ジアミンであることがより好ましく、二つの第三級アミノ基を両末端に有する三級ジアミンが更に好ましく、第三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンがより更に好ましい。前記のアミン化合物において、三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンとしては、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパン、テトラエチルジアミノプロパンが好ましく、入手の容易性等も考慮すると、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパンが好ましい。
アミン化合物以外の他の錯化剤としては、例えば、酸素原子、塩素原子等のハロゲン原子等のヘテロ原子を含む基を有する化合物は、リチウム原子との親和性が高く、前記のアミン化合物以外の他の錯化剤として挙げられる。また、ヘテロ原子として窒素原子を含む、アミノ基以外の基、例えばニトロ基、アミド基等の基を有する化合物も、これと同様の効果が得られる。
前記の他の錯化剤としては、例えばエタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ジメチルホルムアミド等のアルデヒド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;酢酸2-メトキシエチル、酢酸2-エトキシエチル(エチレングリコールアセテート)、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、酢酸2-エトキシ-メチルエチル、酢酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル、酢酸(2-アセトキシエトキシ)メチル、酢酸1-メチル-2-エトキシエチル(プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-(2-メトキシエトキシ)プロピオン酸2-メトキシエチル等のグリコールエステル系溶媒;トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン等のハロゲン原子含有芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等の炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等が挙げられる。これらの中でも、エーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒が好ましく、グリコールエステル系溶媒がより好ましい。また、エーテル系溶媒の中でもジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランがより好ましく、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルが更に好ましく、グリコールエステル系溶媒の中でも酢酸エステルがより好ましく、酢酸2-メトキシ-1-メチルエチル、酢酸2-エトキシ-メチルエチルが更に好ましい。
原料含有物の合計の質量1gに対する錯化剤の使用量はハロゲン原子がより分散して定着した電解質前駆体を形成し、高いイオン伝導度の固体電解質を得るという、錯化剤の使用効果を効率的に獲得する観点から0.1~30mLが好ましく、0.5~20mLがより好ましく、1.0~10mLが更に好ましい。
<溶媒>
本実施形態では、「混合すること」、「粉砕すること」に、溶媒を加えることが好ましい。溶媒を用いて原料含有物と錯化剤とを混合することで、前記の錯化剤を用いることによる効果、すなわちリチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子と作用した電解質前駆体の形成が促進され、PS構造等のリチウムを含む構造体あるいは錯化剤を介した集合体、ハロゲン化リチウム等のリチウムを含む原料あるいは錯化剤を介した集合体を満遍なく存在させやすくなり、ハロゲン原子がより分散して定着した電解質前駆体が得られるので、結果として高いイオン伝導度が得られるという効果が発揮されやすくなる。
本実施形態は、いわゆる不均一法であり、電解質前駆体は、溶媒や液体である錯化剤に対して完全に溶解せず析出することが好ましい。本実施形態では、溶媒を加えることによって電解質前駆体の溶解性を調整することができる。特にハロゲン原子は電解質前駆体から溶出しやすいため、溶媒を加えることによってハロゲン原子の溶出を抑えて所望の電解質前駆体が得られる。その結果、ハロゲン等の特定成分が分散した電解質前駆体を経て、高いイオン伝導度を有する結晶性固体電解質を得ることができる。
また、溶媒は混合後の電解質前駆体のスラリーに更に投入することもできる。
このような性状を有する溶媒としては、溶解度パラメータが10以下の溶媒が好ましく挙げられる。本明細書において、溶解度パラメータは、各種文献、例えば「化学便覧」(平成16年発行、改定5版、丸善株式会社)等に記載されており、以下の数式(1)により算出される値δ((cal/cm1/2)であり、ヒルデブランドパラメータ、SP値とも称される。

(数式(1)中、ΔHはモル発熱であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Vはモル体積である。)
溶解度パラメータが10以下の溶媒を用いることにより、前記の改質剤及び前記の錯化剤に比べて相対的にハロゲン原子、ハロゲン化リチウム等のハロゲン原子を含む原料含有物、更には電解質前駆体に含まれる錯体結晶を構成するハロゲン原子を含む成分(例えば、ハロゲン化リチウムと錯化剤とが結合した集合体)等を溶解しにくい性状を有することとなり、電解質前駆体内に前記有機基やハロゲン原子を定着させやすくなり、得られる改質P及び電解質前駆体、更には硫化物固体電解質中に良好な分散状態で有機基及びハロゲン原子が存在することとなり、高いイオン伝導度を有し、優れた耐水性を有する硫化物固体電解質が得られやすくなる。すなわち、本実施形態で用いられる溶媒は、改質剤又は電解質前駆体を溶解しない性状又は溶解しにくい性状を有することが好ましく、原料含有物、改質剤、錯化剤及び電解質前駆体を溶解しない溶媒を含む溶媒であることがより好ましい。
これと同様の観点から、溶媒の溶解度パラメータは、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。
本実施形態で用いられる溶媒としては、より具体的には、固体電解質の製造において従来より用いられてきた溶媒を広く採用することが可能であり、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の炭化水素溶媒;アルコール系溶媒、エステル系溶媒、アルデヒド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等の炭素原子を含む溶媒;等が挙げられ、これらの中から、好ましくは溶解度パラメータが前記範囲であるものから、適宜選択して用いればよい。
より具体的には、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ジメチルホルムアミド等のアルデヒド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等の炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等が挙げられる。
これらの溶媒の中でも、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、より安定して高いイオン伝導度を得る観点から、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒が好ましく、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼンがより好ましく、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンがより更に好ましい。本実施形態で用いられる溶媒は、好ましくは前記例示した有機溶媒であり、前記の錯化剤と異なる有機溶媒である。本実施形態においては、これらの溶媒を単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
原料含有物の合計の質量1gに対する溶媒の使用量は高いイオン伝導度及び耐水性の硫化物固体電解質を得るため、5~50mLが好ましく、5~30mLがより好ましく、5~20mLが更に好ましい。
[有機基を備える、硫化物固体電解質の製造用の改質P
本実施形態の硫化物固体電解質の製造用の改質Pは、有機基を備える、硫化物固体電解質の製造用の改質Pであることを要する。
前記硫化物固体電解質の製造方法において、有機基を備える、硫化物固体電解質の製造用の改質Pを用いると、イオン伝導度が高く、優れた耐水性を有する硫化物固体電解質の製造ができる。
これにより、改質Pについては前記したとおりである。
(硫化物固体電解質の用途)
本実施形態の硫化物固体電解質は、イオン伝導度が高く、優れた耐水性を有しており、リチウムイオン電池用の電極合材及びリチウムイオン電池に好適に用いられる。
伝導種としてリチウム元素を採用した場合、特に好適である。本実施形態の硫化物固体電解質は、正極層に用いてもよく、負極層に用いてもよく、電解質層に用いてもよい。
また、前記電池は、正極層、電解質層及び負極層の他に集電体を使用することが好ましく、集電体は公知のものを用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、前記の硫化物固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
〔電極合材〕
本実施形態の電極合材は、前記硫化物固体電解質と、後記する電極活物質を含むことを要する。
(電極活物質)
電極活物質としては、電極合材が正極、負極のいずれに用いられるかに応じて、各々正極活物質、負極活物質が採用される。
正極活物質としては、負極活物質との関係で、イオン伝導度を発現させる原子として採用される原子、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な正極活物質としては、酸化物系正極活物質、硫化物系正極活物質等が挙げられる。
酸化物系正極活物質としてはLMO(マンガン酸リチウム)、LCO(コバルト酸リチウム)、NMC(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、NCA(ニッケルコバルトアルミ酸リチウム)、LNCO(ニッケルコバルト酸リチウム)、オリビン型化合物(LiMeNPO、Me=Fe、Co、Ni、Mn)等のリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましく挙げられる。
硫化物系正極活物質としては、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni)等が挙げられる。
また、前記正極活物質の他、セレン化ニオブ(NbSe)等も使用可能である。
正極活物質は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
負極活物質としては、イオン伝導度を発現させる原子として採用される原子、好ましくはリチウム原子と合金を形成し得る金属、その酸化物、当該金属とリチウム原子との合金等の、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な負極活物質としては、電池分野において負極活物質として公知のものを制限なく採用することができる。
このような負極活物質としては、例えば、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属リチウム又は金属リチウムと合金を形成し得る金属、これら金属の酸化物、またこれら金属と金属リチウムとの合金等が挙げられる。
本実施形態で用いられる電極活物質は、その表面がコーティングされた、被覆層を有するものであってもよい。
被覆層を形成する材料としては、硫化物固体電解質においてイオン伝導度を発現する原子、好ましくはリチウム原子の窒化物、酸化物、又はこれらの複合物等のイオン伝導体が挙げられる。具体的には、窒化リチウム(LiN)、LiGeOを主構造とする、例えばLi4-2xZnGeO等のリシコン型結晶構造を有する伝導体、LiPO型の骨格構造を有する例えばLi4-xGe1-x等のチオリシコン型結晶構造を有する伝導体、La2/3-xLi3xTiO等のペロブスカイト型結晶構造を有する伝導体、LiTi(PO等のNASICON型結晶構造を有する伝導体等が挙げられる。
また、LiTi3-y(0<y<3)、LiTi12(LTO)等のチタン酸リチウム、LiNbO、LiTaO等の周期表の第5族に属する金属の金属酸リチウム、またLiO-B-P系、LiO-B-ZnO系、LiO-Al-SiO-P-TiO系等の酸化物系の伝導体等が挙げられる。
被覆層を有する電極活物質は、例えば電極活物質の表面に、被覆層を形成する材料を構成する各種原子を含む溶液を付着させ、付着後の電極活物質を好ましくは200℃以上400℃以下で焼成することにより得られる。
ここで、各種原子を含む溶液としては、例えばリチウムエトキシド、チタンイソプロポキシド、ニオブイソプロポキシド、タンタルイソプロポキシド等の各種金属のアルコキシドを含む溶液を用いればよい。この場合、溶媒としては、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を用いればよい。
また、前記の付着は、浸漬、スプレーコーティング等により行えばよい。
焼成温度としては、製造効率及び電池性能の向上の観点から、前記200℃以上400℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以上390℃以下であり、焼成時間としては、通常1分~10時間程度であり、好ましくは10分~4時間である。
被覆層の被覆率としては、電極活物質の表面積を基準として好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは100%、すなわち全面が被覆されていることが好ましい。また、被覆層の厚さは、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、上限として好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下である。
被覆層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、被覆層の厚さを測定することができ、被覆率は、被覆層の厚さと、元素分析値、BET比表面積と、から算出することができる。
(その他の成分)
本実施形態の電極合材は、前記の硫化物固体電解質、電極活物質の他、例えば導電材、結着剤等のその他成分を含んでもよい。すなわち、本実施形態の電極合材の製造方法は、前記の硫化物固体電解質、電極活物質の他、例えば導電材、結着剤等のその他成分を用いてもよい。導電剤、結着剤等のその他成分は、前記の硫化物固体電解質と、電極活物質と、を混合することにおいて、これらの硫化物固体電解質及び電極活物質に、さらに加えて混合して用いればよい。
導電材としては、電子伝導性の向上により電池性能を向上させる観点から、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛、難黒鉛化性炭素等の炭素系材料が挙げられる。
結着剤を用いることで、正極、負極を作製した場合の強度が向上する。
結着剤としては、結着性、柔軟性等の機能を付与し得るものであれば特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ブチレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマー、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポロビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン樹脂等の各種樹脂が例示される。
電極合材における、電極活物質と硫化物固体電解質との配合比(質量比)としては、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは99.5:0.5~40:60、より好ましくは99:1~50:50、更に好ましくは98:2~60:40である。
導電材を含有する場合、電極合材中の導電材の含有量は特に制限はないが、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、上限として好ましくは10質量%以下、好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
また、結着剤を含有する場合、電極合材中の結着剤の含有量は特に制限はないが、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、上限として好ましくは20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
〔リチウムイオン電池〕
本実施形態のリチウムイオン電池は、前記の本実施形態の硫化物固体電解質及び前記の電極合材から選ばれる少なくとも一方を含むことを要する。
本実施形態のリチウムイオン電池は、前記の本実施形態の硫化物固体電解質、これを含む電極合材のいずれかを含むものであれば、その構成については特に制限はなく、汎用されるリチウムイオン電池の構成を有するものであればよい。
本実施形態のリチウムイオン電池としては、例えば正極層、負極層、電解質層、また集電体を備えたものであることが好ましい。正極層及び負極層としては本実施形態の電極合材が用いられるものであることが好ましく、また電解質層としては本実施形態の硫化物固体電解質が用いられるものであることが好ましい。
また、集電体は公知のものを用いればよい。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、前記の固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
(1) 測定方法
(1-1) イオン伝導度測定
本実施例において、イオン伝導度の測定は、以下のようにして行った。
硫化物固体電解質から、直径10mm(断面積S:0.785cm)、高さ(L)0.1~0.3cmの円形ペレットを成形して試料とした。その試料の上下から電極端子を取り、25℃において交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:1MHz~100Hz、振幅:10mV)、Cole-Coleプロットを得た。高周波側領域に観測される円弧の右端付近で、-Z’’(Ω)が最小となる点での実数部Z’(Ω)を電解質のバルク抵抗R(Ω)とし、以下式に従い、イオン伝導度σ(S/cm)を計算した。
R=ρ(L/S)
σ=1/ρ
(1-2)耐水性評価(HS発生量)
暴露試験装置(図2)は、窒素を加湿するフラスコ10と、加湿した窒素と加湿しない窒素とを混合するスタティックミキサー20と、混合した窒素の水分を測定する露点計30(VAISALA社製M170/DMT152)と、測定試料を設置する二重反応管40と、二重反応管40から排出される窒素の水分を測定する露点計50と、排出された窒素中に含まれる硫化水素濃度を測定する硫化水素計測器60(AMI社製 Model3000RS)とを、主な構成要素とし、これらを管(図示せず)にて接続した構成としてある。フラスコ10の温度は冷却槽11により10℃に設定されている。
なお、各構成要素を接続する菅には直径6mmのテフロン(登録商標)チューブを使用した。本図2では管の表記を省略し、代わりに窒素の流れを矢印で示してある。
評価の手順は以下のとおりとした。
露点を-80℃とした窒素グローボックス内で、粉末試料41を約0.15g秤量し、石英ウール42で挟むように反応管40内部に設置し密封した。
窒素源(図示せず)から0.02MPaで窒素を装置1内に供給した。供給された窒素は、二又分岐管BPを通過して、一部はフラスコ10に供給され加湿される。その他は加湿しない窒素としてスタティックミキサー20に直接供給される。なお、窒素のフラスコ10への供給量はニードルバルブVで調整される。
加湿しない窒素及び加湿した窒素の流量を、スフローコントローラー/マスフローメーター(KOFLOC社製:MODEL8500)FMで調整することにより露点を制御する。具体的に、加湿しない窒素の流量を750~800mL/min、加湿した窒素の流量を30~90mL/minで、スタティックミキサー20に供給し、混合して、露点計30にて混合ガス(加湿しない窒素及び加湿した窒素の混合物)の露点を確認した。
露点を-20℃に調整した後、三方コック43を回転して、混合ガスを反応管40内部に2時間流通させた。試料41を通過した混合ガスに含まれる硫化水素量を、硫化水素計測器60で測定した。この間に発生した硫化水素量をサンプル1g当りに換算して求めた(単位:cc/g)。なお、測定後のガスは硫化水素を除去するため、アルカリトラップ70を通過させた。
所定時間試料を暴露させた後、加湿した窒素の供給を止め、加湿しない窒素で反応管40を密閉した。
(1-3) 平均粒径(D50
体積基準平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(「Partica LA-950V2モデルLA-950W2」、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。脱水処理された、トルエン(和光純薬製、特級)とターシャリーブチルアルコール(和光純薬製、特級)を93.8:6.2の重量比で混合したものを分散媒として用いた。装置のフローセル内に分散倍を50ml注入し、循環させた後、測定対象を投入して超音波処理をしたのち、粒子径分布を測定した。なお、測定対象の投入量は装置で規定されている測定画面で、粒子濃度に対応する赤色光透過率(R)が90~90%、青色光透過率(B)が70~90%に収まるように調整した。また、演算条件には、測定対象の屈折率の値として2.16を、分散媒の屈折率の値として1.49をそれぞれ用いた。分布形態の設定において、反復回数を15回に固定して粒径演算を行った。
(1-4) 誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(組成の決定)
硫化物固体電解質の粉末を秤量し、アルゴン雰囲気中で、バイアル瓶に採取した。バイアル瓶にKOHアルカリ水溶液を入れ、硫黄分の捕集に注意しながらサンプルを溶解し、適宜希釈、測定溶液とした。得られた測定溶液を、パッシェンルンゲ型ICP-OES装置(SPECTRO社製SPECTRO ARCOS)にて測定し、組成を決定した。
検量線溶液は、Li、P、SはICP測定用1000mg/L標準溶液を、Brはイオンクロマトグラフ用1000mg/L標準溶液を、Iはよう化カリウム(試薬特級)を用いて調製した。
各硫化物固体電解質とも2つの測定溶液を調整し、各測定溶液で4回の測定を行い、平均値を算出した。その2つの測定溶液の測定値の平均から組成を決定した。
得られた元素比から、リチウム原子の含有量に対する、リン原子、硫黄原子及びハロゲン原子の含有量を計算した。
(2) 改質Pの作製例
グローブボックスの不活性ガス雰囲気下で、Pを5.0g(22.5mmol)、撹拌子の入ったシュレンク瓶に秤量し、溶媒としてトルエン50mLを投入した。改質剤として1-オクタンチオールを67.2mg(P中のリン原子の1molに対し、0.0100mol、表1の改質剤/Pに対応)を更に投入した後、120℃で2時間、撹拌した。撹拌を停止し、真空ポンプで2時間減圧し、液体のトルエンを乾燥して、改質P(1)を得た。
表1に記載の改質剤を、表1に記載の改質剤/Pを使用する以外は同様にして、改質P(2)~(6)を得た。
(実施例1)
グローブボックスの不活性ガス雰囲気下で、原料含有物として、前記の改質P(1)を1.91g、LiSを1.17g、LiBrを0.369g、LiIを0.569g、撹拌子の入ったシュレンク瓶に秤量し、錯化剤としてN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン (TMEDA)を8.9mL及び溶媒としてシクロヘキサンを40mLを投入した。外部から加熱することなく、室温で3日間攪拌した。撹拌を停止し、真空ポンプで2時間減圧し、液体のTMEDA及びシクロヘキサンを乾燥して、粉体の電解質前駆体(1)を得た。
得られた電解質前駆体(1)を110℃で2時間加熱して、非晶質硫化物固体電解質(1)を得た。
更に得られた非晶質硫化物固体電解質(1)を180℃で2時間加熱し、結晶性硫化物固体電解質(1)を得た。
使用した改質Pを含む原料含有物、電解質前駆体(1)、非晶質硫化物固体電解質(1)及び結晶性硫化物固体電解質(1)のXRDパターンを図3に示す。電解質前駆体(1)は、原料含有物とは異なるパターンとなり、前記撹拌により、原料含有物が消費されていることが確認できた。また、電解質前駆体(1)は加熱により、非晶質硫化物固体電解質(1)となり、更に加熱して結晶化させることで、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含む結晶性硫化物固体電解質(1)となることが確認できた。
(実施例2)~(実施例6)
グローブボックスの不活性ガス雰囲気下で、改質Pとして表2に記載の改質Pを、表2に記載の使用量で用い、LiSを表2に記載の使用量で用いる以外は実施例1と同様にして、非晶質硫化物固体電解質(2)~(6)及び結晶性硫化物固体電解質(2)~(6)を得た。結晶性硫化物固体電解質(2)~(6)のXRDパターンから、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認できた。
(比較例1)
グローブボックスの不活性ガス雰囲気下で、改質されていないPを1.89g、LiSを1.17g、LiBrを0.369g、LiIを0.569g、撹拌子の入ったシュレンク瓶に秤量し、錯化剤としてN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を8.9mL及び溶媒としてシクロヘキサンを40mLを投入した。外部から加熱することなく、室温で3日間攪拌した。撹拌を停止し、真空ポンプで2時間減圧し、液体のTMEDA及びシクロヘキサンを乾燥して、粉体の電解質前駆体を得た。
得られた電解質前駆体を110℃で2時間加熱して、非晶質硫化物固体電解質を得た。
更に得られた非晶質硫化物固体電解質(C1)を180℃で2時間加熱し、結晶性硫化物固体電解質(C1)を得た。結晶性硫化物固体電解質(C1)のXRDパターンから、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認できた。
(比較例2)
グローブボックスの不活性ガス雰囲気下で、比較例1で得られた結晶性硫化物固体電解質(C1)を4.0g、撹拌子の入ったシュレンク瓶に秤量し、溶媒としてトルエン50mLを投入した。オクタンチオールを250mgを更に投入した後室温で12時間撹拌した。撹拌を停止し、真空ポンプで2時間減圧し、液体のトルエン及びオクタンチオールを乾燥して、結晶性硫化物固体電解質(C2)を得た。結晶性硫化物固体電解質(C2)のXRDパターンから、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認できた。
(比較例3)
比較例1において、オクタンチオールに換えて、ジブチルアミンを110mg用いる以外は同様にして、結晶性硫化物固体電解質(C3)を得た。結晶性硫化物固体電解質(C3)のXRDパターンから、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むことが確認できた。
得られた各硫化物固体電解質のリチウム原子の含有量(mol)当たりの硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の含有量(mol)の比を表3に、実施例4~6については、窒素原子又は酸素原子のリチウム原子の含有量当たりの含有量(表3中の、窒素原子/酸素原子の項目)も表3に記載した。
イオン伝導度及びHS発生量を表4に記載した。
実施例1~6の結果から、本願実施形態の硫化物固体電解質は、比較例1の硫化物固体電解質と比較して、イオン伝導度は同等であることが分かった。
図4から、本実施形態の硫化物固体電解質(実施例1~6)は、有機化合物基を導入していない比較例1の硫化物固体電解質と比較してHS発生量の抑制効果が大きいことが確認された。
また、前記の特許文献1のように硫化物固体電解質に対して有機化合物基を導入した硫化物固体電解質(比較例2及び3に対応)と比較して、HS発生量の抑制効果が大きいことが確認された。
改質剤としてチオール系化合物を用いた実施例1~3の硫化物固体電解質は、イオン伝導度の低下の抑制に優れ、改質剤としてアルコール系化合物を用いた実施例4の硫化物固体電解質は、イオン伝導度の低下の抑制及び耐水性のバランスが取れており、改質剤として第二級アミン系化合物を用いた実施例5及び6の硫化物固体電解質は、耐水性に優れる傾向が確認できた。
更に、結晶性硫化物固体電解質(1)を用いて、電極合材及びリチウムイオン電池を製造したところ、優れた電池特性を有することが確認できた。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法によれば、イオン伝導度が高く、硫化水素ガスの発生を抑制する結晶性硫化物固体電解質を容易に製造することができる。
本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、リチウムイオン電池電池に、とりわけ、パソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等に用いられるリチウムイオン電池に好適に用いられる。

Claims (15)

  1. 2種以上の原料を含む原料含有物を混合することを含み、
    前記原料が、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子から選ばれる少なくとも1種を含み、
    前記原料含有物が、改質Pを含む、硫化物固体電解質の製造方法。
  2. 前記改質Pが、有機基を備えるPである、請求項1に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  3. 前記有機基が、ヘテロ原子を含む、請求項2に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  4. 前記改質Pが、前記改質P中のPのリン原子と前記ヘテロ原子のと共有結合を含む、請求項3に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  5. 前記ヘテロ原子が、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1種である、請求項3又は4に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  6. 前記有機基が、一般式(a-1)、(a-2)及び(b-1)で表される基から選ばれる少なくとも1種である、請求項2~5のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。

    (式中、*は、Pとの結合部位を表し、Ra1、Ra2、Rb1及びRb2は、それぞれ独立して、1価の有機基を表し、Xa1及びXa2は、それぞれ独立して、酸素原子又は硫黄原子を表す。)
  7. 前記混合することにおいて、撹拌機、混合機又は粉砕機を用いる、請求項1~6のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  8. 前記混合することにおいて、前記原料含有物と錯化剤とを混合する、請求項1~7のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  9. 前記混合することを、溶媒中で行う、請求項1~8のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  10. 更に加熱すること、を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  11. 前記硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  12. リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子並びに有機基を含み、
    リチウム原子の含有量(mol)当たりの硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の含有量(mol)の比が、リチウム原子:硫黄原子:リン原子:ハロゲン原子=1:1.1000~1.2000:0.2000~0.3500:0.1400~0.1550である、硫化物固体電解質。
  13. 請求項12に記載の硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む、電極合材。
  14. 請求項12に記載の硫化物固体電解質及び請求項13に記載の電極合材の少なくとも一方を含む、リチウムイオン電池。
  15. 有機基を備える、硫化物固体電解質の製造用の改質P
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