JP2023168276A - 結晶性硫化物固体電解質の製造方法、結晶性硫化物固体電解質、これを含む電極合材及びリチウムイオン電池 - Google Patents

結晶性硫化物固体電解質の製造方法、結晶性硫化物固体電解質、これを含む電極合材及びリチウムイオン電池 Download PDF

Info

Publication number
JP2023168276A
JP2023168276A JP2023077634A JP2023077634A JP2023168276A JP 2023168276 A JP2023168276 A JP 2023168276A JP 2023077634 A JP2023077634 A JP 2023077634A JP 2023077634 A JP2023077634 A JP 2023077634A JP 2023168276 A JP2023168276 A JP 2023168276A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solid electrolyte
sulfide solid
crystalline
lithium
crystalline sulfide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2023077634A
Other languages
English (en)
Inventor
智幸 奥山
Tomoyuki Okuyama
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Idemitsu Kosan Co Ltd
Original Assignee
Idemitsu Kosan Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Idemitsu Kosan Co Ltd filed Critical Idemitsu Kosan Co Ltd
Publication of JP2023168276A publication Critical patent/JP2023168276A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M10/00Secondary cells; Manufacture thereof
    • H01M10/05Accumulators with non-aqueous electrolyte
    • H01M10/056Accumulators with non-aqueous electrolyte characterised by the materials used as electrolytes, e.g. mixed inorganic/organic electrolytes
    • H01M10/0561Accumulators with non-aqueous electrolyte characterised by the materials used as electrolytes, e.g. mixed inorganic/organic electrolytes the electrolyte being constituted of inorganic materials only
    • H01M10/0562Solid materials
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01BNON-METALLIC ELEMENTS; COMPOUNDS THEREOF; METALLOIDS OR COMPOUNDS THEREOF NOT COVERED BY SUBCLASS C01C
    • C01B25/00Phosphorus; Compounds thereof
    • C01B25/14Sulfur, selenium, or tellurium compounds of phosphorus
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M10/00Secondary cells; Manufacture thereof
    • H01M10/05Accumulators with non-aqueous electrolyte
    • H01M10/052Li-accumulators
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M10/00Secondary cells; Manufacture thereof
    • H01M10/05Accumulators with non-aqueous electrolyte
    • H01M10/052Li-accumulators
    • H01M10/0525Rocking-chair batteries, i.e. batteries with lithium insertion or intercalation in both electrodes; Lithium-ion batteries
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/02Electrodes composed of, or comprising, active material
    • H01M4/62Selection of inactive substances as ingredients for active masses, e.g. binders, fillers
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01PINDEXING SCHEME RELATING TO STRUCTURAL AND PHYSICAL ASPECTS OF SOLID INORGANIC COMPOUNDS
    • C01P2006/00Physical properties of inorganic compounds
    • C01P2006/40Electric properties
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M2300/00Electrolytes
    • H01M2300/0017Non-aqueous electrolytes
    • H01M2300/0065Solid electrolytes
    • H01M2300/0068Solid electrolytes inorganic
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M2300/00Electrolytes
    • H01M2300/0017Non-aqueous electrolytes
    • H01M2300/0065Solid electrolytes
    • H01M2300/0068Solid electrolytes inorganic
    • H01M2300/008Halides

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Condensed Matter Physics & Semiconductors (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

【課題】造粒と比表面積の増大、及びイオン伝導度の著しい低下を抑制しつつ、優れた耐酸化性を有する結晶性硫化物固体電解質、並びにこれを用いた電極合材及びリチウムイオン電池を提供することである。【解決手段】リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物を混合して反応物を得ること、前記反応物を加熱して結晶性生成物を得ること、及び前記結晶性生成物を粉砕処理することで、前記結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化すること、を含み、前記粉砕処理することにおける積算動力が、1(Wh/kg)以上500(Wh/kg)以下である、結晶性硫化物固体電解質の製造方法、結晶性硫化物固体電解質、さらにこれを用いた電極合材及びリチウムイオン電池である。【選択図】なし

Description

本発明は、結晶性硫化物固体電解質の製造方法、結晶性硫化物固体電解質、これを含む電極合材及びリチウムイオン電池に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。従来、このような用途に用いられる電池において可燃性の有機溶媒を含む電解液が用いられていたが、電解液が液体であり、かつ可燃性であることから、電池として用いた場合に、漏洩、発火等に関する安全性が懸念されている。特に、車載用途においては、高容量化、高出力化が求められており、従来の電解液を用いた電池における安全性への懸念は大きくなる一方である。そこで、電池を全固体化することで、電池内に可燃性の有機溶媒を用いず、安全装置の簡素化が図れ、製造コスト、生産性に優れることから、電解液を固体電解質層に換えた全固体電池の開発が行われている。
全固体電池の固体電解質層に用いられる固体電解質としては、様々な種類のものが開発されており、特に高いイオン伝導度を有する固体電解質の開発に力が入れられている。このような固体電解質としては、伝導種としてリチウムを含む固体電解質、例えば特許文献1にはLiS-P系の固体電解質、更にハロゲン原子を含む固体電解質として、特許文献2にはLiS-P-LiI系の硫化物固体電解質、特許文献3及び4にはLiS-P-LiI-LiBr系の硫化物固体電解質が挙げられる。
固体電解質は、全固体電池の正極、負極及び固体電解質層に用いることができ、電極(正極、負極)においては、固体電解質と電極活物質(正極活物質、負極活物質)と組み合わせて用いられる。固体電解質、電極活物質はいずれも固体電解質であることから、電極活物質と固体電解質との接触界面を形成しやすくなり、イオン伝導と電子伝導のパスが良好になり、結果として優れた電池性能が得られることを考慮すると、固体電解質の粒径が小さいことが望ましい。そのため、固体電解質の粒径を小さくする(以下、「微粒化」とも称する。)技術にも着目されている。固体電解質の微粒化技術としては、例えば特許文献5には、粉砕装置により微粒化する技術が開示され、また例えば特許文献6には硫化物固体電解質材料の粗粒材料にエーテル化合物を添加し、粉砕処理により微粒化する工程を有する製造方法が開示されている。
特開2005-228570号公報 特開2013-201110号公報 国際公開第2014/208180号パンフレット 国際公開第2014/208239号パンフレット 特開2016-203087号公報 特開2013-020894号公報
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、造粒と比表面積の増大、及び伝導度の著しい低下を抑制しつつ、優れた耐酸化性を有する結晶性硫化物固体電解質、並びにこれを用いた電極合材及びリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明に係る結晶性硫化物固体電解質の製造方法は、
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物を混合して反応物を得ること、
前記反応物を加熱して結晶性生成物を得ること、及び
前記結晶性生成物を粉砕処理することで、前記結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化すること、
を含み、
前記粉砕処理することにおける積算動力が、1(Wh/kg)以上500(Wh/kg)以下である、
結晶性硫化物固体電解質の製造方法、
である。
本発明に係る結晶性硫化物固体電解質は、
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む結晶性硫化物固体電解質であって、
前記結晶性硫化物固体電解質の表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する、
結晶性硫化物固体電解質、
である。
本発明に係る電極合材は、
上記結晶性硫化物固体電解質及び電極活物質を含む電極合材、
である。
また、本発明に係るリチウムイオン電池は、
上記結晶性硫化物固体電解質及び上記電極合材の少なくとも一方を含む、リチウムイオン電池、
である。
本発明によれば、造粒と比表面積の増大、及びイオン伝導度の著しい低下を抑制しつつ、優れた耐酸化性を有する結晶性硫化物固体電解質、並びにこれを用いた電極合材及びリチウムイオン電池を提供することができる。
実施例1で得られた粉末のX線回折スペクトルである。 実施例1及び比較例1で得られた粉末のCV曲線である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」、「~」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。また、好ましいとされている規定は任意に採用することができる。即ち、好ましいとされている一の規定を、好ましいとされている他の一又は複数の規定と組み合わせて採用することができる。好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいといえる。
(本発明に至るために本発明者が得た知見)
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
全固体電池に用いられる固体電解質としては、より高い電池性能を得る観点から、既述のように伝導種としてリチウムを含む固体電解質が好ましい、すなわち全固体電池としては全固体リチウム二次電池が好ましい。全固体電池の電極(正極、負極)には、固体電解質と電極活物質(正極活物質、負極活物質)と組み合わせて用いられ、より具体的には、少なくとも固体電解質、電極活物質及び導電剤を含む電極合材が用いられる。そして、優れた電池特性を得るには、イオン伝導及び導電のパスが良好であることが不可欠である。
例えば正極について、導電パスとしては、正極集電体から電極合材中の導電剤を介して電子が流れ、導電剤と正極活物質との間で電子の授受がなされ、正極活物質と固体電解質との間でリチウムイオンの授受がなされることが望ましい。導電剤と固体電解質との間においては、電位差が発生する場合があり、導電剤と固体電解質との界面において電気化学反応が生じることがある。負極側を参照極とした場合、正極合材には正の電位がかかるため、このときの正極側の電気化学反応は酸化反応となるが、当該酸化反応は固体電解質の劣化につながり、結果として全固体電池における内部抵抗の増大の要因の一つとなっている。
そこで本発明者は、導電剤と固体電解質との界面において生じる酸化反応に着目し、この酸化反応が生じにくい固体電解質を用いることで内部抵抗の増大を抑制し、優れた電池特性が得られるのではないかと考えた。すなわち、固体電解質として、酸化反応を生じにくいという性質である耐酸化性を有するものとすることで、内部抵抗の増大を抑制し、優れた電池特性が得られるのではないかと考えた。
本発明者は、サイクリックボルタンメトリー測定(CV測定)により、非晶性及び結晶性の固体電解質の耐酸化性を確認したところ、非晶性の固体電解質の方が酸化の程度が低いという知見を得た。そして、当該知見に基づき、結晶性の固体電解質において、その一部を非晶性とすることで、高いイオン伝導度を有しつつ、耐酸化性に優れる固体電解質が得られるのではないかと考えた。結晶性の固体電解質の一部を非晶性とするには、粉砕処理を行うことが考えられる。しかし、粉砕処理の程度によっては、粒子全体が非晶化し、イオン伝導度が著しく低下する。また、造粒することで、粒度分布が変化し、比表面積が大きくなる、といった事象も生じ得る。
また、固体電解質の製造方法にあたり、微粒化を目的として粉砕処理を行う技術は、例えば上記特許文献5及び6に開示されている。特許文献5には、より具体的には、粉砕メディアを用いた粉砕装置により微粒化することで、扁平形状を有する硫化物固体電解質材料を形成する微粒化工程を含む、扁平形状を有し、かつ平均粒径が1.9μm以下という硫化物固体電解質材料の製造方法が開示されている。また、特許文献6では、より具体的には、硫化物固体電解質材料の粗粒材料にエーテル化合物を添加し、粉砕処理により微粒化する工程を有する製造方法が開示されている。しかし、いずれの特許文献も、結晶性硫化物固体電解質を得ようとするものではなく、また本実施形態の製造方法のように、一度結晶性硫化物固体電解質を得た後に、これを粉砕処理すること、表面の少なくとも一部を非晶化することも開示されていない。
このように、従来の硫化物固体電解質の製造方法において、一度結晶性硫化物固体電解質を得た後に、これを特定の積算動力にて粉砕処理すること、これにより表面の少なくとも一部を非晶化して、高いイオン伝導度を確保しながら、優れた耐酸化性を得て、さらに造粒と比表面積の増大を抑制することは、行われていない。
以上の知見に基づき、結晶性硫化物固体電解質の製造方法において、一度結晶化して得られた結晶性硫化物固体電解質を特定の積算動力で粉砕処理を行うことにより、造粒と比表面積の増大、及びイオン伝導度の著しい低下を抑制できるだけでなく、優れた耐酸化性を有する結晶性硫化物固体電解質が得られることを見出すに至った。
(硫化物固体電解質)
まず、本明細書で用いる用語について説明する。
本明細書において、「固体電解質」とは、窒素雰囲気下25℃で固体を維持する電解質を意味する。本実施形態における硫化物固体電解質は、少なくともリチウム原子及び硫黄原子を含み、リチウム原子に起因するイオン伝導度を有する固体電解質であり、またリン原子及びハロゲン原子も含むものである。
「固体電解質」には、非晶性固体電解質と、結晶性固体電解質と、の両方が含まれる。
本明細書において、結晶性固体電解質とは、X線回折測定におけるX線回折パターンにおいて、固体電解質由来のピークが観測される固体電解質であって、これらにおいての固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものである。すなわち、結晶性固体電解質は、固体電解質に由来する結晶構造を含み、その一部が該固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該固体電解質に由来する結晶構造であってもよい。そして、結晶性固体電解質は、上記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶性固体電解質が含まれていてもよい。したがって、結晶性固体電解質には、非晶質固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。
また、本明細書において、非晶性固体電解質とは、X線回折測定におけるX線回折パターンにおいて、材料由来のピーク以外のピークが実質的に観測されないハローパターンであるもののことであり、固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものである。
(本実施形態の各種形態について)
本実施形態の第一の形態に係る結晶性硫化物固体電解質の製造方法は、
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物を混合して反応物を得ること、
前記反応物を加熱して結晶性生成物を得ること、及び
前記結晶性生成物を粉砕処理することで、前記結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化すること
を含み、
前記粉砕処理することにおける積算動力が、1(Wh/kg)以上500(Wh/kg)以下である、
結晶性硫化物固体電解質の製造方法、
である。
本実施形態の結晶性硫化物固体電解質の製造方法において、反応物を得ることで得られる反応物は、原料含有物に含まれる固体電解質原料が反応したものであり、少なくとも硫黄原子及びリチウム原子を含み、かつリチウム原子に起因するイオン伝導度を有するものである。そして、X線回折測定におけるX線回折パターンにおいて、材料由来のピーク以外のピークが実質的に観測されないハローパターンを有するものであるため、その性状からみて非晶性硫化物固体電解質と称し得るものである。
上記混合により得られた反応物を加熱して得られる結晶性生成物は、その性状からみて非晶性硫化物固体電解質を加熱して得られるものといえるため、固体電解質に由来する結晶構造を有するものである。よって、結晶性生成物は、その性状からみて結晶性硫化物固体電解質と称し得るものである。
本実施形態の製造方法では、このようにして得られた結晶性生成物を、特定の積算動力により粉砕処理することで、その表面の少なくとも一部を非晶化する。
本実施形態の製造方法で得られる硫化物固体電解質は、X線回折測定におけるX線回折パターンにおいて、固体電解質由来のピークが観測されるため、結晶性硫化物固体電解質であるといえるが、上記結晶性生成物に比べてピーク強度が弱くなる。また、実施例におけるCV測定(酸化電流測定)によれば、反応物を結晶性生成物とすることで酸化電流は増加するが、結晶性生成物を特定の積算動力により粉砕処理を行ったものは、反応物と同程度の酸化電流まで低下する。これらの結果から、本実施形態の製造方法で得られる硫化物固体電解質は、結晶性硫化物固体電解質の構成は残しつつ、その一部は非晶化して非晶性硫化物固体電解質となったものであるといえる。さらに、結晶性生成物を粉砕処理すると、結晶性生成物表面同士が接触することになることを考慮すれば、結晶性生成物の表面の少なくとも一部が非晶化したものといえる。よって、結晶性生成物を特定の積算動力により粉砕することで、その表面の少なくとも一部を非晶化することができる、といえる。
本実施形態の製造方法においては、一度結晶性硫化物固体電解質を得た後に、これを粉砕処理することが重要である。このような構成とすることで、結晶性硫化物固体電解質の構造を確保しながら、その表面の少なくとも一部を非晶化することができる。そのため、結晶性硫化物固体電解質の特性、すなわち高いイオン伝導度を確保しつつ、非晶性硫化物固体電解質の特性、すなわち優れた耐酸化性を付加することができることとなる。
また、非晶化は、その表面の少なくとも一部であること、とりわけ表面であることも重要である。全てが非晶化されてしまうと、結晶性硫化物固体電解質ではなくなるため、高いイオン伝導度は得られなくなるからである。非晶化を、表面の少なくとも一部に留めることは、結晶性生成物の粉砕処理において積算動力を特定の範囲内とすることで達成できる。本実施形態の製造方法では、積算動力を特定の範囲内としながら粉砕処理を行うことで、造粒による粒度分布の変化に伴う比表面積の増加を抑制できる、という効果も得られる。
かくして、本実施形態の製造方法は、一度結晶性硫化物固体電解質を得た後に、これを特定の積算動力にて粉砕処理することで、表面の少なくとも一部を非晶化して、高いイオン伝導度を確保しながら、優れた耐酸化性を得て、さらに造粒と比表面積の増大を抑制することをも可能とする、というものとなる。
本実施形態の第二の形態に係る結晶性硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一の形態において、
前記反応物を得ることにおいて、前記混合を、粉砕機を用いて行う、
というものである。
本実施形態の製造方法において、上記の反応物を得ることの方法としては、原料含有物に含まれる固体電解質原料を混合し、反応物(すなわち、非晶性硫化物固体電解質)が得られれば特に制限はなく、様々な方法をとり得る。第二の形態による、粉砕機を用いて混合を行う方法は、いわゆるメカニカルミリング法と称される方法である。
本実施形態の第三の形態に係る結晶性硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一の形態において、
前記反応物を得ることが、
錯化剤の存在下で前記原料含有物を混合して錯体を得ること、及び
前記錯体を加熱して錯分解物を得ること、
を含む、
というものである。
既述のように、上記の反応物を得ることの方法としては、様々な方法をとり得るが、第三の形態による方法は、液相法(中でも不均一法)によるものであり、錯化剤を用いて固体電解質原料を含む錯体を形成し、加熱することで錯体に含まれる錯化剤を除去し、反応物(すなわち、非晶性硫化物固体電解質)が得られる。
錯化剤の詳細については後述するが、錯化剤を用いることで、固体電解質原料と錯化剤とによる錯体を形成することができる。ハロゲン原子は硫化物固体電解質に含まれることで、高いイオン伝導度を発現するという特性を有している一方、硫化物固体電解質に取り込まれにくいという性質も併せ持つ。錯化剤を用いてハロゲン原子を含む固体電解質原料も錯体に取り込まれることとなるため、固体電解質原料の分散状態、特にハロゲン原子の分散状態を均一に保ちやすくなり、結果としてイオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られやすくなる。
本実施形態の第四の形態に係る結晶性硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一~第三の形態において、
前記結晶性硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有する硫化物固体電解質である、
というものである。
本実施形態の製造方法において、原料含有物に含まれる固体電解質原料の種類及び配合比をかえることで、所望の硫化物固体電解質を製造することが可能である。チオリシコンリージョンII型結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質は、イオン伝導度が極めて高い硫化物固体電解質として知られており、本実施形態の製造方法により得ようとする結晶性硫化物固体電解質として好ましいものである。
本実施形態の第五の形態に係る結晶性硫化物固体電解質は、
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む結晶性硫化物固体電解質であって、
前記結晶性硫化物固体電解質の表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する、
結晶性硫化物固体電解質、
というものである。
本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、上記本実施形態の製造方法により容易に製造することができるものであり、一度結晶性硫化物固体電解質を得た後に、これを特定の積算動力にて粉砕処理することで、表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有するものとなる。また、本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度を確保しながら、優れた耐酸化性を有し、さらに造粒と比表面積の増大が抑制される、という特性を有するものである。
本実施形態の第六の形態に係る結晶性硫化物固体電解質は、上記第五の形態において、
サイクリックボルタンメトリー測定(CV測定)により測定される酸化電流の、下記数式により算出される低下率が、10%以上である、
というものである。
酸化電流の低下率(%)=(酸化電流2-酸化電流1)/酸化電流2×100
酸化電流1:表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する結晶性硫化物固体電解質の酸化電流(mA)
酸化電流2:表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する前の結晶性硫化物固体電解質の酸化電流(mA)
本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、基本的には結晶性硫化物固体電解質でありながら、表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有するものであることから、結晶性硫化物固体電解質の特性である高いイオン伝導度を確保しつつ、非晶性硫化物固体電解質の特性である優れた耐酸化性、すなわちCV測定により測定される酸化電流を用いて、上記数式により算出される酸化電流の低下率が10%以上と高くなる、という特性が付加されたものとなる。
本実施形態の第七の形態に係る結晶性硫化物固体電解質は、上記第五~第六の形態において、
チオリシコンリージョンII型結晶構造を有する硫化物固体電解質である、
というものである。
チオリシコンリージョンII型結晶構造を有する硫化物固体電解質は、イオン伝導度が極めて高い硫化物固体電解質として知られており、本実施形態の製造方法により得ようとする結晶性硫化物固体電解質として好ましいものである。
本実施形態の第八の形態に係る電極合材は、
上記第五~第七のいずれか一の形態の結晶性硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む、
というものである。
また、本実施形態の第九の形態に係るリチウムイオン電池は、
前記第五~第七のいずれか一の形態の結晶性硫化物固体電解質及び前記第八の形態の電極活物質の少なくとも一方を含む、
というものである。
既述のように、本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、造粒と比表面積の増大、及びイオン伝導度の著しい低下を抑制しつつ、優れた耐酸化性を有する、というものである。そのため、本実施形態の結晶性硫化物固体電解質を含む電極合材、これを用いたリチウムイオン電池は、優れた電池性能を有するものとなる。
[硫化物固体電解質の製造方法]
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物を混合して反応物を得ること、
前記反応物を加熱して結晶性生成物を得ること、及び
前記結晶性生成物を粉砕処理することで、前記結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化すること、
を含み、
前記粉砕処理することにおける積算動力が、1(Wh/kg)以上500(Wh/kg)以下である、
結晶性硫化物固体電解質の製造方法、
である。
〔反応物を得ること〕
本実施形態の製造方法は、リチウム原子、リン原子、硫黄原子及びハロゲン原子を含む原料含有物を混合して反応物を得ること、を含む。
本実施形態の製造方法において、反応物を得ることの方法としては、原料含有物に含まれる固体電解質原料を混合し、反応物が得られれば特に制限はなく、様々な方法をとり得る。反応物を得ることの方法として、好ましくは以下の2つの方法が挙げられる。
(i)粉砕機を用いて混合を行う方法
(ii)錯化剤の存在下で原料含有物を混合して錯体を得ること、及び前記錯体を加熱して錯分解物を得ることによる方法
(反応物を得る方法(i))
まず、反応物を得る方法(i)、いわゆるメカニカルミリング法について、原料含有物から説明する。
(原料含有物)
本実施形態で用いられる原料含有物は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含むものであり、より具体的にはこれらの原子からなる群より選ばれる1種以上を含む化合物(以下、「固体電解質原料」とも称する。)を含む含有物である。本実施形態で用いられる原料含有物は、固体電解質原料を2種以上含有するものであることが好ましい。
原料含有物に含まれる固体電解質原料としては、例えば硫化リチウム;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン;各種フッ化リン(PF、PF)、各種塩化リン(PCl、PCl、PCl)、各種臭化リン(PBr、PBr)、各種ヨウ化リン(PI、P)等のハロゲン化リン;フッ化チオホスホリル(PSF)、塩化チオホスホリル(PSCl)、臭化チオホスホリル(PSBr)、ヨウ化チオホスホリル(PSI)、二塩化フッ化チオホスホリル(PSClF)、二臭化フッ化チオホスホリル(PSBrF)等のハロゲン化チオホスホリル;などの上記四種の原子から選ばれる少なくとも二種の原子からなる原料、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、好ましくは臭素(Br)、ヨウ素(I)が代表的に挙げられる。
上記以外の固体電解質原料として用い得るものとしては、例えば、上記四種の原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含み、かつ該四種の原子以外の原子を含む固体電解質原料、より具体的には、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の硫化アルカリ金属;硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム、硫化ホウ素、硫化ガリウム、硫化スズ(SnS、SnS)、硫化アルミニウム、硫化亜鉛等の硫化金属;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のリン酸化合物;ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウム等のリチウム以外のアルカリ金属のハロゲン化物;ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ケイ素、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化セレン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化テルル、ハロゲン化ビスマス等のハロゲン化金属;オキシ塩化リン(POCl)、オキシ臭化リン(POBr)等のオキシハロゲン化リン;などが挙げられる。
上記の中でも、硫化リチウム、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウムが好ましい。また、酸素原子を固体電解質に導入する場合、酸化リチウム、水酸化リチウム及びリン酸リチウム等のリン酸化合物が好ましい。固体電解質原料の組み合わせとしては、例えば、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムの組み合わせ、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン単体の組み合わせが好ましく挙げられ、ハロゲン化リチウムとしては臭化リチウム、ヨウ化リチウムが好ましく、ハロゲン単体としては臭素及びヨウ素が好ましい。
本実施形態においては、PS構造を含むLiPSを原料の一部として用いることもできる。具体的には、先にLiPSを製造する等して用意し、これを原料として使用する。
原料の合計に対するLiPSの含有量は、60~100mol%が好ましく、65~90mol%がより好ましく、70~80mol%が更に好ましい
また、LiPSとハロゲン単体とを用いる場合、LiPSに対するハロゲン単体の含有量は、1~50mol%が好ましく、10~40mol%がより好ましく、20~30mol%が更に好ましく、22~28mol%が更により好ましい。
本実施形態で用いられる硫化リチウムは、粒子であることが好ましい。
硫化リチウム粒子の平均粒径(D50)は、0.1μm以上1000μm以下であることが好ましく、0.5μm以上100μm以下であることがより好ましく、1μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%(体積基準)に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。また、上記の原料として例示したもののうち固体の原料については、上記硫化リチウム粒子と同じ程度の平均粒径を有するものが好ましい、すなわち上記硫化リチウム粒子の平均粒径と同じ範囲内にあるものが好ましい。
固体電解質原料として、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムを用いる場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの合計に対する硫化リチウムの割合は、より高い化学的安定性及びより高いイオン伝導度を得る観点から、70~80mol%が好ましく、72~78mol%がより好ましく、74~78mol%が更に好ましい。
硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウム及び必要に応じて用いられる他の固体電解質原料を用いる場合、これらの合計に対する硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量は、50~100mol%が好ましく、55~90mol%がより好ましく、60~85mol%が更に好ましい。
また、ハロゲン化リチウムとして、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを組み合わせて用いる場合、イオン伝導度を向上させる観点から、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99mol%が好ましく、20~80mol%がより好ましく、30~70mol%が更に好ましく、40~60mol%が特に好ましい。
固体電解質原料としてハロゲン単体を用いる場合であって、硫化リチウム、五硫化二リンを用いる場合、ハロゲン単体のモル数と同モル数の硫化リチウムを除いた硫化リチウム及び五硫化二リンの合計モル数に対する、ハロゲン単体のモル数と同モル数の硫化リチウムとを除いた硫化リチウムのモル数の割合は、60~90%の範囲内であることが好ましく、65~85%の範囲内であることがより好ましく、68~82%の範囲内であることが更に好ましく、72~78%の範囲内であることが更により好ましく、73~77%の範囲内であることが特に好ましい。これらの割合であれば、より高いイオン伝導度が得られるからである。
また、これと同様の観点から、硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とを用いる場合、硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体との合計量に対するハロゲン単体の含有量は、1~50mol%が好ましく、2~40mol%がより好ましく、3~25mol%が更に好ましく、3~15mol%が更により好ましい。
硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とハロゲン化リチウムとを用いる場合には、これらの合計量に対するハロゲン単体の含有量(αmol%)、及びハロゲン化リチウムの含有量(βmol%)は、下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましく、下記式(4)を満たすことが更に好ましく、下記式(5)を満たすことが更により好ましい。
2≦2α+β≦100…(2)
4≦2α+β≦80 …(3)
6≦2α+β≦50 …(4)
6≦2α+β≦30 …(5)
二種のハロゲンを単体として用いる場合には、一方のハロゲン原子の物質中のモル数をA1とし、もう一方のハロゲン原子の物質中のモル数をA2とすると、A1:A2が1~99:99~1が好ましく、10:90~90:10であることがより好ましく、20:80~80:20が更に好ましく、30:70~70:30が更により好ましい。
また、二種のハロゲン単体が、臭素とヨウ素である場合、臭素のモル数をB1とし、ヨウ素のモル数をB2とすると、B1:B2が1~99:99~1が好ましく、15:85~90:10であることがより好ましく、20:80~80:20が更に好ましく、30:70~75:25が更により好ましく、35:65~75:25が特に好ましい。
(粉砕機)
反応物を得る方法(i)では、上記原料含有物に含まれる固体電解質原料の混合を、粉砕機を用いて行う。
粉砕機は、文字通り粉砕を行う際に用いられる機器であるが、粉砕と同時に、撹拌、混合も生じ得る。よって、固体電解質の混合は、粉砕機を用いて行うことができる。
本実施形態の製造方法において用いられ得る粉砕機としては、固体電解質原料を混合できるものであれば特に制限なく用いることが可能であり、例えば、例えば、粉砕媒体を用いた媒体式粉砕機を用いることができる。
媒体式粉砕機は、容器駆動式粉砕機、媒体撹拌式粉砕機に大別される。容器駆動式粉砕機としては、撹拌槽、粉砕槽、あるいはこれらを組合せたボールミル、ビーズミル等が挙げられる。また、媒体撹拌式粉砕機としては、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機;タワーミルなどの塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の撹拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機;一軸又は多軸混練機などの各種粉砕機が挙げられる。
得られる反応物の粒径の調整のしやすさ等を考慮すると、容器駆動式粉砕機として例示したボールミル、ビーズミルが好ましく、中でも遊星型のものが好ましい。
これらの粉砕機は、所望の規模等に応じて適宜選択することができ、比較的小規模であれば、ボールミル、ビーズミル等の容器駆動式粉砕機を用いることができ、また大規模、又は量産化の場合には、他の形式の粉砕機を用いてもよい。
また、混合の際に溶媒等の液体を伴う場合、すなわち混合の対象物が液状態、又はスラリー状態である場合は、湿式粉砕に対応できる湿式粉砕機であることが好ましい。
湿式粉砕機としては、湿式ビーズミル、湿式ボールミル、湿式振動ミル等が代表的に挙げられ、粉砕操作の条件を自由に調整でき、より小さい粒径のものに対応しやすい点で、ビーズを粉砕メディアとして用いる湿式ビーズミルが好ましい。また、乾式ビーズミル、乾式ボールミル、乾式振動ミル等の乾式媒体式粉砕機、ジェットミル等の乾式非媒体粉砕機等の乾式粉砕機を用いることもできる。
混合の対象物が液状態、スラリー状態である場合、必要に応じて循環させる循環運転が可能である、流通式の粉砕機を用いることもできる。具体的には、スラリーを粉砕する粉砕機(粉砕混合機)と、温度保持槽(反応容器)との間で循環させるような形態の粉砕機が挙げられる。また、上記の循環運転が可能である流通式の粉砕機ではない粉砕機(ワンパス式)を用いることも可能である。
上記ボールミル、ビーズミルで用いられるビーズ、ボールのサイズは、所望の粒径、処理量等に応じて適宜選択すればよく、例えばビーズの直径として、通常0.03mmφ以上、好ましくは0.1mmφ以上、より好ましくは0.3mmφ以上、上限として通常5.0mmφ以下、好ましくは3.0mmφ以下、より好ましくは2.0mmφ以下である。またボールの直径として、通常2.0mmφ以上、好ましくは2.5mmφ以上、より好ましくは3.0mmφ以上、上限として通常20.0mmφ以下、好ましくは15.0mmφ以下、より好ましくは10.0mmφ以下である。
また、材質としては、例えば、ステンレス、クローム鋼、タングステンカーバイド等の金属;ジルコニア、窒化ケイ素等のセラミックス;メノウ等の鉱物が挙げられる。
ボールミル、ビーズミルを用いる場合、回転数としては、その処理する規模に応じてかわるため一概にはいえないが、通常10rpm以上、好ましくは20rpm以上、より好ましくは50rpm以上であり、上限としては通常1,000rpm以下、好ましくは900rpm以下、より好ましくは800rpm以下、更に好ましくは700rpm以下である。
また、この場合の粉砕時間としては、その処理する規模に応じてかわるため一概にはいえないが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、上限としては通常100時間以下、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下、更に好ましくは24時間以下、より更に好ましくは10時間以下である。
(溶媒)
反応物を得る方法(i)では、既述のように溶媒を用いてもよい。溶媒としては、固体電解質の製造において従来法において用いられてきた溶媒を広く採用することが可能である。
このような溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の炭化水素溶媒;アルコール系溶媒、エステル系溶媒、アルデヒド系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒、片側の炭素数が4以上のエーテル系溶媒、炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等の炭素原子含む溶媒;等が挙げられる。
より具体的には、例えば後述する反応物を得る方法(ii)において用いられ得る溶媒として挙げた溶媒等が挙げられる。
(反応物を得る方法(ii))
反応物を得る方法(ii)は、錯化剤の存在下で原料含有物を混合して錯体を得ること、及び前記錯体を加熱して錯分解物を得ることによる方法である。
方法(ii)において用いられる原料含有物としては、上記方法(i)において用いられ得る原料含有物として説明したものが用いられる。
(錯化剤)
錯化剤は、既述のように、原料含有物に含まれる固体電解質原料と錯体を形成しやすい化合物であり、例えば固体電解質原料として好ましく用いられる硫化リチウム、五硫化二リン、またこれらを用いた場合に得られるLiPS、更にハロゲン原子を含む固体電解質原料(以下、これらをまとめて「固体電解質原料等」とも称する。)と錯体を形成可能な化合物である。
錯化剤としては、上記の性状を有するものであれば特に制限なく用いることができ、特にリチウム原子との親和性が高い原子、例えば窒素原子、酸素原子、塩素原子等のヘテロ原子を含む化合物が好ましく、これらのヘテロ原子を含む基を有する化合物がより好ましく挙げられる。これらのヘテロ原子、該へテロ原子を含む基は、リチウムと配位(結合)し得るからである。
錯化剤の分子中に存在するヘテロ原子はリチウム原子との親和性が高く、固体電解質原料等と結合して錯体(以下、単に「錯体」とも称する。)を形成しやすい性状を有するものになると考えられる。そのため、上記固体電解質原料と、錯化剤とを混合することにより錯体が形成し、固体電解質原料の分散状態、とりわけハロゲン原子の分散状態が均一に保たれやすくなるので、結果としてイオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られるものと考えられる。
錯化剤が、固体電解質原料等と錯体を形成可能であることについては、例えばFT-IR分析(拡散反射法)により測定される赤外線吸収スペクトルよって、直接的に確認することができる。
錯化剤として、好ましい錯化剤の一つであるテトラメチルエチレンジアミン(以下、単に「TMEDA」とも称する。)とヨウ化リチウム(LiI)とを撹拌して得られた粉末、及び錯化剤自体についてFT-IR分析(拡散反射法)により分析すると、TMEDA自体のスペクトルと、特に1000~1250cm-1におけるC-N伸縮振動に由来するピークにおいて異なるものとなる。また、TMEDAとヨウ化リチウムとを撹拌、混合することでLiI-TMEDA錯体を形成することが知られていること(例えば、Aust.J.Chem.,1988,41,1925-34の特にFig.2等)等を考慮しても、LiI-TMEDA錯体が形成しているものと考えることは妥当である。
また、例えば錯化剤(TMEDA)と、LiPSとを撹拌して得られた粉末についても、上記と同様にFT-IR分析(拡散反射法)により分析すると、TMEDA自体のスペクトルとは、1000~1250cm-1におけるC-N伸縮振動に由来するピークにおいて異なるものであることが確認できる一方で、LiI-TMEDA錯体のスペクトルとは類似していることも確認できる。このことから、LiPS-TMEDA錯体が形成しているものと考えてもよい。
錯化剤は、分子中に少なくとも二つの配位(結合)可能なヘテロ原子を有することが好ましく、分子中に少なくとも二つヘテロ原子を含む基を有することがより好ましい。分子中に少なくとも二つのヘテロ原子を含む基を有することで、固体電解質原料等を、分子中の少なくとも二つのヘテロ原子を介して結合させることができる。また、ヘテロ原子の中でも、窒素原子が好ましく、窒素原子を含む基としてはアミノ基が好ましい。すなわち錯化剤としてはアミン化合物が好ましい。
アミン化合物としては、分子中にアミノ基を有するものであれば、錯体の形成を促進し得るので特に制限はないが、分子中に少なくとも二つのアミノ基を有する化合物が好ましい。このような構造を有することで、固体電解質原料等を、分子中の少なくとも二つの窒素原子を介して結合させて、錯体を形成することができる。
このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、複素環式アミン、芳香族アミン等のアミン化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、脂肪族アミンとしては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン等の脂肪族一級ジアミン;N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルジアミノプロパン、N,N’-ジエチルジアミノプロパン等の脂肪族二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノヘキサン等の脂肪族三級ジアミン;などの脂肪族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。ここで、本明細書における例示において、例えばジアミノブタンであれば、特に断りがない限り、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン等のアミノ基の位置に関する異性体の他、ブタンについては直鎖状、分岐状の異性体等の、全ての異性体が含まれるものとする。
脂肪族アミンの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族アミン中の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
脂環式アミンとしては、シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン等の脂環式一級ジアミン;ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式二級ジアミン;N,N,N’,N’-テトラメチル-シクロヘキサンジアミン、ビス(エチルメチルアミノ)シクロヘキサン等の脂環式三級ジアミン;などの脂環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられ、また、複素環式アミンとしては、イソホロンジアミン等の複素環式一級ジアミン;ピペラジン、ジピペリジルプロパン等の複素環式二級ジアミン;N,N-ジメチルピペラジン、ビスメチルピペリジルプロパン等の複素環式三級ジアミン;などの複素環式ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
脂環式アミン、複素環式アミンの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
また、芳香族アミンとしては、フェニルジアミン、トリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族一級ジアミン;N-メチルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルフェニレンジアミン、N,N’-ビスメチルフェニルフェニレンジアミン、N,N’-ジメチルナフタレンジアミン、N-ナフチルエチレンジアミン等の芳香族二級ジアミン;N,N-ジメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルフェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルナフタレンジアミン等の芳香族三級ジアミン;などの芳香族ジアミンが代表的に好ましく挙げられる。
芳香族アミンの炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
本実施形態で用いられるアミン化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
なお、具体例としてジアミンを例示したが、本実施形態で用いられ得るアミン化合物としては、ジアミンに限らないことは言うまでもなく、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジメチルアミン、上記脂肪族ジアミン等の各種ジアミンに対応する脂肪族モノアミン、またピペリジン、メチルピペリジン、テトラメチルピペリジン等のピペリジン化合物、ピリジン、ピコリン等のピリジン化合物、モルホリン、メチルモルホリン、チオモルホリン等のモルホリン化合物、イミダゾール、メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、上記脂環式ジアミンに対応するモノアミン等の脂環式モノアミン、上記複素環式ジアミンに対応する複素環式モノアミン、上記芳香族ジアミンに対応する芳香族モノアミン等のモノアミンの他、例えば、ジエチレントリアミン、N,N’,N’’-トリメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス[(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のアミノ基を3つ以上有するポリアミンも用いることができる。
上記の中でも、より高いイオン伝導度を得る観点から、アミノ基として第三級アミノ基を有する三級アミンであることが好ましく、二つの第三級アミノ基を有する三級ジアミンであることがより好ましく、二つの第三級アミノ基を両末端に有する三級ジアミンが更に好ましく、第三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンがより更に好ましい。上記のアミン化合物において、三級アミノ基を両末端に有する脂肪族三級ジアミンとしては、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパン、テトラエチルジアミノプロパンが好ましく、入手の容易性等も考慮すると、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノプロパンが好ましい。
また、ヘテロ原子として窒素原子を含む、アミノ基以外の基、例えばニトロ基、アミド基等の基を有する化合物も、これと同様の効果が得られる。
本実施形態の製造方法において、錯化剤としてはヘテロ原子として上記の窒素原子を含む化合物の他、酸素原子を含む化合物も好ましい。
酸素原子を含む化合物としては、酸素原子を含む基としてエーテル基及びエステル基から選ばれる1種以上の官能基を有する化合物が好ましく、その中でも特にエーテル基を有する化合物が好ましい。すなわち、酸素原子を含む錯化剤としては、エーテル化合物が特に好ましい。
エーテル化合物としては、例えば、脂肪族エーテル、脂環式エーテル、複素環式エーテル、芳香族エーテル等のエーテル化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、脂肪族エーテルとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル等のモノエーテル;ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、ジエトキシエタン等のジエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレンオキサイドグリコールジメチルエーテル(トリグリム)等のエーテル基を3つ以上有するポリエーテル;またジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の水酸基を含有するエーテル等も挙げられる。
脂肪族エーテルの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
また、脂肪族エーテル中の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
脂環式エーテルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン、ジオキソラン等が挙げられ、また、複素環式エーテルとしては、フラン、ベンゾフラン、ベンゾピラン、ジオキセン、ジオキシン、モルホリン、メトキシインドール、ヒドロキシメチルジメトキシピリジン等が挙げられる。
脂環式エーテル、複素環式エーテルの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
また、芳香族エーテルとしては、メチルフェニルエーテル(アニソール)、エチルフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、ベンジルフェニルエーテル、ナフチルエーテル等が挙げられる。
芳香族エーテルの炭素数は、好ましくは7以上、より好ましくは8以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
本実施形態で用いられるエーテル化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
上記のエーテル化合物の中でも、より高いイオン伝導度を得る観点から、脂肪族エーテルが好ましく、ジメトキシエタン、テトラヒドロフランがより好ましい。
エステル化合物としては、例えば、脂肪族エステル、脂環式エステル、複素環式エステル、芳香族エステル等のエステル化合物が挙げられ、単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
より具体的には、脂肪族エステルとしては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸トリエチル等の蟻酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル等のプロピオン酸エステル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル等のシュウ酸エステル;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等のマロン酸エステル;コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル等のコハク酸エステルが挙げられる。
脂肪族エステルの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、上限として好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。また、脂肪族エステル中の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、上限として好ましくは6以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
脂環式エステルとしては、シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルシクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、シクロヘキセンジカルボン酸ジブチル等が挙げられ、また、複素環式エステルとしては、ピリジンカルボン酸メチル、ピリジンカルボン酸エチル、ピリジンカルボン酸プロピル、ピリミジンカルボン酸メチル、ピリミジンカルボン酸エチル、またアセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。
脂環式エステル、複素環式エステルの炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
芳香族エステルとしては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル等の安息香酸エステル;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のフタル酸エステル;トリメチルトリメリテート、トリエチルトリメリテート、トリプロピルトリメリテート、トリブチルトリメリテート、トリオクチルトリメリテート等のトリメリット酸エステル等が挙げられる。
芳香族エステルの炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは9以上であり、上限として好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
本実施形態で用いられるエステル化合物は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、水酸基、シアノ基等の置換基、ハロゲン原子により置換されたものであってもよい。
上記のエステル化合物の中でも、より高いイオン伝導度を得る観点から、脂肪族エステルが好ましく、酢酸エステルがより好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。
錯化剤の添加量は、錯体を効率的に形成させる観点から、原料含有物に含まれるリチウム原子の合計モル量に対する、錯化剤の添加量のモル比(モル-添加剤/モル-リチウム原子の合計量)が、好ましくは0.1以上10.0以下であり、より好ましくは0.5以上8.0以下であり、さらに好ましくは0.8以上5.0以下である。
(混合)
反応物を得る方法(ii)において、上記の固体電解質原料と、錯化剤とを混合する。これらを混合することで、固体電解質原料と錯化剤とにより構成される錯体が得られる。
本実施形態において、固体電解質原料及び錯化剤を混合する形態は固体状、液状のいずれであってもよいが、固体電解質原料は固体を含んでおり、錯化剤は液状であるため、通常液状の錯化剤中に固体の固体電解質原料が存在する形態で混合する。また、原料と錯化剤を混合する際、必要に応じてさらに溶媒を混合してもよい。以下、原料及び錯化剤の混合について説明する箇所においては、特に断りが無い場合、錯化剤には、必要に応じて添加する溶媒も含まれるものとする。
固体電解質原料と錯化剤とを混合する方法に特段の制限はなく、固体電解質原料及び錯化剤を混合できる装置に、固体電解質原料及び錯化剤を投入して混合すればよい。例えば、錯化剤を槽内に供給し、撹拌翼を作動させた後に、固体電解質原料を徐々に加えていくと、固体電解質原料の良好な混合状態が得られ、原料の分散性が向上するため、好ましい。
ただし、固体電解質原料としてハロゲン単体を用いる場合、固体電解質原料が固体ではない場合があり、具体的には常温常圧下において、フッ素及び塩素は気体、臭素は液体となる。このような場合、例えば固体電解質原料が液体の場合は、他の固体の固体電解質原料とは別に錯化剤とともに槽内に供給すればよく、また固体電解質原料が気体の場合は、錯化剤に固体の固体電解質原料を加えたものに吹き込むように供給すればよい。
反応物を得る方法(ii)においては、固体電解質原料と錯化剤とは混合すれば足り、粉砕までは要しない。よって、上記方法(i)とは異なり、ボールミル、ビーズミル等の媒体式粉砕機等の、一般に粉砕機と称される固体電解質原料の粉砕を目的として用いられる機器を用いなくてもよい。本実施形態の製造方法では、固体電解質原料と錯化剤とを単に混合するだけで、原料含有物に含まれる固体電解質原料と錯化剤とが混合され、錯体が形成し得る。なお、錯体を得るための混合時間を短縮したり、微粉化したりするために、原料と錯化剤との混合物を粉砕機によって粉砕してもよいが、既述のように粉砕機は用いないことが好ましい。
固体電解質原料と錯化剤とを混合する装置としては、例えば槽内に撹拌翼を備える機械撹拌式混合機が挙げられる。機械撹拌式混合機は、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられ、固体電解質原料と錯化剤との混合物中の固体電解質原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、高速撹拌型混合機が好ましく用いられる。また、高速撹拌型混合機としては、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機等が挙げられ、どちらのタイプの混合機を用いてもよい。
機械撹拌式混合機において用いられる撹拌翼の形状としては、アンカー型、ブレード型、アーム型、リボン型、多段ブレード型、二連アーム型、ショベル型、二軸羽型、フラット羽根型、C型羽根型等が挙げられ、固体電解質原料の均一性を高め、より高いイオン伝導度を得る観点から、ショベル型、フラット羽根型、C型羽根型等が好ましい。また、機械撹拌式混合機においては攪拌対象を混合機外部に排出してから再び混合機内部に戻す循環ラインを設置することが好ましい。これにより、ハロゲン化リチウム等の比重が重い原料が沈降、また滞留することなく撹拌され、より均一な混合が可能となる。
循環ラインの設置個所は特に限定されないが、混合機の底から排出して混合機の上部に戻すような箇所に設置されることが好ましい。こうすることで、沈降しやすい固体電解質原料を循環による対流に乗せて均一に撹拌しやすくなる。さらに、戻り口が撹拌対象の液面下に位置していることが好ましい。こうすることで、撹拌対象が液跳ねして混合機内部の壁面に付着することを抑制することができる。
固体電解質原料と錯化剤とを混合する際の温度条件としては、特に制限はなく、例えば-30~100℃、好ましくは-10~50℃、より好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)である。また混合時間は、0.1~150時間程度、より均一に混合し、より高いイオン伝導度を得る観点から、好ましくは1~120時間、より好ましくは4~100時間、更に好ましくは8~80時間である。
固体電解質原料と錯化剤とを混合することで、上記の固体電解質原料と錯化剤とにより錯体が形成する。錯体は、より具体的には、固体電解質原料に含まれるリチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子と錯化剤との作用により、これらの原子が錯化剤を介して及び/又は介さずに直接互いに結合したものと考えられる。すなわち、反応物を得る方法(ii)において、固体電解質原料と錯化剤とを混合して得られる錯体は、錯化剤、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子により構成されるものともいえる。
反応物を得る方法(ii)において得られる錯体は、液体である錯化剤に対して完全に溶解するものではなく、通常、固体であるため、錯体及び必要に応じて添加される溶媒中に錯体が懸濁した懸濁液が得られる。したがって、反応物を得る方法(ii)は、いわゆる液相法における不均一系に相当する。
(溶媒)
反応物を得る方法(ii)において、固体電解質原料及び錯化剤を混合する際、さらに溶媒を加えてもよい。
液体である錯化剤中において固体である錯体が形成される際、錯体が錯化剤に溶解しやすいものであると、成分の分離が生じる場合がある。そこで、錯体が溶解しない溶媒を使用することで、錯体中の成分の溶出を抑えることができる。また、溶媒を用いて固体電解質原料及び錯化剤を混合することで、錯体形成が促進され、各主成分をより満遍なく存在させることができ、固体電解質原料の分散状態、とりわけハロゲン原子の分散状態が均一に保たれた錯体が得られるので、結果として高いイオン伝導度が得られるという効果が発揮されやすくなる。
反応物を得る方法(ii)は、いわゆる不均一法であり、錯体は、液体である錯化剤に対して完全に溶解せず析出することが好ましい。溶媒を加えることによって錯体の溶解性を調整することができる。特にハロゲン原子は錯体から溶出しやすいため、溶媒を加えることによってハロゲン原子の溶出を抑えて所望の錯体が得られる。その結果、固体電解質原料、とりわけハロゲン原子を含む固体電解質原料の成分が均一に分散した錯体を経て、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られやすくなる。
このような性状を有する溶媒としては、溶解度パラメータが10以下の溶媒が好ましく挙げられる。本明細書において、溶解度パラメータは、各種文献、例えば「化学便覧」(平成16年発行、改定5版、丸善株式会社)等に記載されており、以下の数式(1)により算出される値δ((cal/cm1/2)であり、ヒルデブランドパラメータ、SP値とも称される。

(数式(1)中、ΔHはモル発熱であり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Vはモル体積である。)
溶解度パラメータが10以下の溶媒を用いることにより、上記の錯化剤に比べて相対的に固体電解質原料、中でもハロゲン原子、ハロゲン化リチウム等のハロゲン原子を含む原料、更には錯体を構成するハロゲン原子を含む成分(例えば、ハロゲン化リチウムと錯化剤とが結合した集合体)等が溶解しにくい状態とすることができる。そのため、錯体中において特にハロゲン原子を定着させやすくなり、得られる硫化物固体電解質中に良好な分散状態でハロゲン原子が存在することとなり、高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質が得られやすくなる。すなわち、反応物を得る方法(ii)において用いられる溶媒は、錯体が溶解しない性質を有することが好ましい。これと同様の観点から、溶媒の溶解度パラメータは、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、更に好ましくは8.5以下である。
本実施形態で用いられる溶媒としては、より具体的には、固体電解質の製造において従来用いられてきた溶媒を広く採用することが可能であり、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の炭化水素溶媒;アルコール系溶媒、エステル系溶媒、アルデヒド系溶媒、ケトン系溶媒、片側の炭素数が4以上のエーテル系溶媒、炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等の炭素原子含む溶媒;等が挙げられ、これらの中から、好ましくは溶解度パラメータが上記範囲であるものから、適宜選択して用いればよい。
より具体的には、ヘキサン(7.3)、ペンタン(7.0)、2-エチルヘキサン、ヘプタン(7.4)、オクタン(7.5)、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン(8.2)、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン(8.8)、キシレン(8.8)、メシチレン、エチルベンゼン(8.8)、tert-ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン(9.5)、クロロトルエン(8.8)、ブロモベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;エタノール(12.7)、ブタノール(11.4)等のアルコール系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド(10.3)、ジメチルホルムアミド(12.1)等のアルデヒド系溶媒、アセトン(9.9)、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(8.4)、tert-ブチルメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒;アセトニトリル(11.9)、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等の炭素原子とヘテロ原子を含む溶媒等が挙げられる。なお、上記例示における括弧内の数値はSP値である。
また、上記例示はあくまで一例であり、例えば異性体を有するものは全ての異性体も含み得る。また、ハロゲン原子で置換されたもの、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒であれば、例えばアルキル基等の脂肪族基等で置換されたもの等も含み得る。
これらの溶媒の中でも、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、より安定して高いイオン伝導度を得る観点から、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、アニソールがより好ましく、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルが更に好ましく、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルがより更に好ましく、特にシクロヘキサンが好ましい。
反応物を得る方法(ii)で用いられる溶媒は、好ましくは上記例示した有機溶媒であり、上記の錯化剤と異なる有機溶媒である。反応物を得る方法(ii)においては、これらの溶媒を単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
(加熱して錯分解物を得ること)
反応物を得る方法(ii)は、上記混合により得られた錯体を、加熱して錯分解物を得ることを含む。錯分解物は、上記混合により得られた錯体から、加熱により錯化剤を除去することで得られるものであり、既述のように非晶性硫化物固体電解質と称し得るものとなる。
錯体は、固体電解質原料と錯化剤とにより形成するものであるが、錯体を形成することで、固体電解質原料は分子レベルで密接しながら存在することとなる。そのため、加熱することで錯化剤が除去されると、密接していた固体電解質原料が互いに結合し、硫化物固体電解質を形成するものと考えられる。
反応物を得る方法(ii)における錯体の加熱温度としては、反応物となり得る温度、すなわち非晶性硫化物固体電解質が得られる温度であれば特に制限なく、例えば反応物(非晶性硫化物固体電解質)を加熱して得られる結晶性硫化物固体電解質の構造において、加熱温度を決定することができる。
より具体的には、反応物(非晶性硫化物固体電解質)を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは20℃以下の範囲とすればよく、下限としては特に制限はないが、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度-40℃以上程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に反応物(非晶性硫化物固体電解質)が得られる。
反応物(非晶性硫化物固体電解質)を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、135℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、125℃以下が更に好ましく、下限としては特に制限はないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。
反応物を得る方法(ii)における加熱時間は、所望の反応物(非晶性硫化物固体電解質)が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
また、反応物を得る方法(ii)における加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、または減圧雰囲気(特に真空中)で行なうことが好ましい。結晶性硫化物固体電解質の劣化(例えば、酸化)を防止できるからである。
加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
(乾燥)
反応物を得る方法(ii)において、上記固体電解質原料と、錯化剤との混合により錯体が得られるが、錯体の形成に寄与せず残存する錯化剤、また溶媒を用いる場合は溶媒も存在する。すなわち、方法(ii)において、固体電解質原料と、錯化剤との混合により得られる混合物は、錯体、残存する錯化剤、また必要に応じて用いられる溶媒等を含む含有物(以下、「錯体含有物」と称する場合がある。)である。よって、上記混合により得られた錯体含有物を、加熱する前に、乾燥することにより、残存する錯化剤、溶媒を除去するため、乾燥することを含んでもよい。これにより、錯体の粉末が得られる。
事前に乾燥することにより、効率的に加熱することを行うことが可能となる。なお、乾燥と、その後の加熱とを同一工程で行ってもよい。
乾燥は、錯体含有物を、残存する錯化剤(錯体内に取り込まれない錯化剤)、必要に応じて用いられる溶媒の種類に応じた温度で行うことができる。すなわち、錯化剤、溶媒の沸点以上の温度で行うことができる。
具体的な乾燥条件は、錯化剤、溶媒の種類に応じてかわり得るため、一概にはいえないが、通常5~100℃、好ましくは10~85℃、より好ましくは15~70℃、より更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)で真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、錯化剤、溶媒を揮発させて行うことができる。
乾燥は、錯体含有物をガラスフィルター等を用いたろ過、デカンテーションによる固液分離、また遠心分離機等を用いた固液分離により行ってもよい。また、例えば固液分離を行った後、上記の温度条件による乾燥を行ってもよい。
固液分離は、具体的には、錯体含有物を容器に移し、錯体が沈殿した後に、上澄みとなる錯化剤、溶媒を除去するデカンテーション、また例えばポアサイズが10~200μm程度、好ましくは20~150μmのガラスフィルターを用いたろ過が容易である。
なお、乾燥について、反応物を得る方法(ii)における処理として説明したが、例えば反応物を得る方法(i)において溶媒を用いて粉砕機で混合する場合、溶媒を除去するために乾燥を行ってもよい。
(反応物)
上記反応物を得ることにより得られる反応物は、非晶性の硫化物固体電解質である。
非晶性固体電解質である反応物としては、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含んでおり、代表的なものとしては、例えば、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質;更に酸素原子、珪素原子等の他の原子を含む、例えば、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS-P-LiI等の固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質が好ましく挙げられる。
非晶性固体電解質を構成する原子の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
非晶性固体電解質である反応物が、少なくともLiS-Pを有するものである場合、LiSとPとのモル比は、より高いイオン伝導度を得る観点から、65~85:15~35が好ましく、70~80:20~30がより好ましく、72~78:22~28が更に好ましい。
非晶性固体電解質である反応物が、例えば、LiS-P-LiI-LiBrである場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量の合計は、60~95モル%が好ましく、65~90モル%がより好ましく、70~85モル%が更に好ましい。また、臭化リチウムとヨウ化リチウムとの合計に対する臭化リチウムの割合は、1~99モル%が好ましく、20~90モル%がより好ましく、40~80モル%が更に好ましく、50~70モル%が特に好ましい。
非晶性固体電解質である反応物において、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の配合比(モル比)は、1.0~1.8:1.0~2.0:0.1~0.8:0.01~0.6が好ましく、1.1~1.7:1.2~1.8:0.2~0.6:0.05~0.5がより好ましく、1.2~1.6:1.3~1.7:0.25~0.5:0.08~0.4が更に好ましい。また、ハロゲン原子として、臭素及びヨウ素を併用する場合、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、臭素、及びヨウ素の配合比(モル比)は、1.0~1.8:1.0~2.0:0.1~0.8:0.01~0.3:0.01~0.3が好ましく、1.1~1.7:1.2~1.8:0.2~0.6:0.02~0.25:0.02~0.25がより好ましく、1.2~1.6:1.3~1.7:0.25~0.5:0.03~0.2:0.03~0.2がより好ましく、1.35~1.45:1.4~1.7:0.3~0.45:0.04~0.18:0.04~0.18が更に好ましい。リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の配合比(モル比)を上記範囲内とすることにより、後述するチオリシコンリージョンII型結晶構造を有する、より高いイオン伝導度を有する結晶性固体電解質が得られやすくなる。また、後述する結晶性生成物(結晶性固体電解質)における配合比(モル比)は、上記非晶性固体電解質である反応物の上記配合比(モル比)の範囲内であり、上記反応物を加熱して結晶性生成物を得る場合、当該反応物及び当該結晶性生成物の配合比(モル比)は同じである。
〔加熱して結晶性生成物を得ること〕
本実施形態の製造方法は、上記反応物を得ることに次いで、得られた反応物を加熱して結晶性生成物を得ること、を含む。反応物を加熱することにより、反応物の結晶化が進行し、結晶性生成物が得られる。
加熱温度は、反応物の結晶化を進行させて結晶性生成物が得られれば特に制限はなく、例えば、反応物を加熱して得られる結晶性生成物の構造に応じて加熱温度を決定すればよい。具体的には、反応物を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上の範囲とすればよく、上限としては特に制限はないが、40℃以下程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に反応物の結晶化を進行させて結晶性生成物が得られるだけでなく、結晶性生成物に残存する錯化剤、必要に応じて用いられる溶媒の含有量を低減することができ、かつ反応物の含有量を低減することで、結晶性生成物の純度を向上させることもできる。その結果、本実施形態の製造方法で得られる結晶性硫化物固体電解質の純度を向上させることができる。
加熱温度としては、得られる結晶性生成物の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上が更に好ましく、上限としては特に制限はないが、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは250℃以下である。
加熱時間は、所望の結晶性生成物が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
加熱して結晶性生成物を得ることにおいて、加熱は、常圧で行うこともできるが、加熱温度を低減するため、減圧雰囲気下、さらには真空雰囲気下で行うこともできる。
圧力条件としては、減圧雰囲気下で加熱する場合は、好ましくは85kPa以下、より好ましくは80kPa以下、更に好ましくは70kPa以下であり、下限としては真空(0Kpa)でもよく、圧力の調整の容易さを考慮すると、好ましくは1kPa以上、より好ましくは2kPa以上、更に好ましくは3kPa以上である。圧力条件が上記範囲内であると、加熱条件をマイルドにすることができ、装置の大型化を抑制することができる。
また、加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、で行なうことが好ましい。結晶性生成物の劣化(例えば、酸化)を防止できるからである。
加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
上記反応物を得る方法(ii)を採用する場合、錯体を加熱して錯分解物を得るが、錯分解物を得るための加熱に続けて、更に加熱を行うことで、錯分解物(すなわち、反応物)を結晶性生成物としてもよい。この場合も、結晶性生成物は、錯体から錯分解物(反応物)を経て生成するものであることから、上記の反応物を得ること、及び加熱して結晶性生成物を得ることを経て得られるものであるといえる。
(結晶性生成物)
上記反応物を加熱して得られる結晶性生成物は、結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質といえるものである。本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、結晶性生成物を特定の積算動力により粉砕処理して得られるものであり、結晶性生成物が有する結晶構造を有するものとなる。よって、以下結晶性生成物が有するものとして説明する結晶構造は、本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質が有する結晶構造でもある。
結晶性生成物が有する結晶構造としては、LiPS結晶構造、Li結晶構造、LiPS結晶構造、Li11結晶構造、2θ=20.2°近傍及び23.6°近傍にピークを有する結晶構造(例えば、特開2013-16423号公報)等が挙げられる。
結晶性生成物が有する結晶構造としては、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造(Kannoら、Journal of The Electrochemical Society,148(7)A742-746(2001)参照)、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造(Solid State Ionics,177(2006),2721-2725参照)等も挙げられる。
結晶性生成物が有する結晶構造は、より高いイオン伝導度が得られる点で、チオリシコンリージョンII型結晶構造であることが好ましい。ここで、「チオリシコンリージョンII型結晶構造」は、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造のいずれかであることを示す。
結晶性生成物は、上記チオリシコンリージョンII型結晶構造を含むものであってもよいし、主結晶として含むものであってもよいが、より高いイオン伝導度を得る観点から、主結晶として含むものであることが好ましい。本明細書において、「主結晶として含む」とは、結晶構造のうち対象となる結晶構造の割合が80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、結晶性生成物は、より高いイオン伝導度を得る観点から、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。
CuKα線を用いたX線回折測定において、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.5°、18.3°、26.1°、27.3°、30.0°付近に現れ、Li結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=16.9°、27.1°、32.5°付近に現れ、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=15.3°、25.2°、29.6°、31.0°付近に現れ、Li11結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.8°、18.5°、19.7°、21.8°、23.7°、25.9°、29.6°、30.0°付近に現れる。また、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.1°、23.9°、29.5°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.2°、23.6°付近に現れる。なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
結晶性生成物が有する結晶構造としては、上記のLiPSの構造骨格を有し、Pの一部をSiで置換してなるアルジロダイト型結晶構造も好ましく挙げられる。
アルジロダイト型結晶構造の組成式としては、例えば組成式Li7-x1-ySi及びLi7+x1-ySi(xは-0.6~0.6、yは0.1~0.6)で示される結晶構造が挙げられる。この組成式で示されるアルジロダイト型結晶構造は、立方晶又は斜方晶、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。
アルジロダイト型結晶構造の組成式としては、組成式Li7-x-2yPS6-x-yCl(0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5)も挙げられる。この組成式で示されるアルジロダイト型結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。
また、アルジロダイト型結晶構造の組成式としては、組成式Li7-xPS6-xHa(HaはClもしくはBr、xが好ましくは0.2~1.8)も挙げられる。この組成式で示されるアルジロダイト型結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。
なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
〔結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化すること〕
本実施形態の製造方法は、上記加熱により得られる結晶性生成物を粉砕処理することで、結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化することを含む。また、粉砕処理は、積算動力が1(Wh/kg)以上500(Wh/kg)以下であることを要する。既述のように、結晶性生成物を、特定の積算動力で粉砕することにより、その表面の少なくとも一部を非晶化することができる。
(積算動力)
本実施形態の製造方法においては、粉砕処理の積算動力を1(Wh/kg)以上500(Wh/kg)以下とすることが重要である。積算動力が1(Wh/kg)未満であると、非晶化が十分でなく、非晶性硫化物固体電解質が有する特性、すなわち優れた耐酸化性が得られなくなる。他方、積算動力が500(Wh/kg)よりも大きいと、非晶化が表面の少なくとも一部にとどまらず、結晶性生成物が全体的に非晶化されてしまうため、高いイオン伝導度が得られなくなる。
本実施形態の製造方法における積算動力は、以下のようにして求めることができる。
(積算動力の求め方)
積算エネルギーE(単位:Wh/kg)は、結晶性生成物(粉砕処理の対象物)を含まない際の各機械の空動力平均をP(単位:W)、各機械にて結晶性生成物を処理する際に要した瞬時動力平均をP(単位:W)、総処理時間をt(単位:h)、処理する結晶性生成物の総重量をM(単位:kg)とすると、下式にて求められる。
E=(P-P)×t/M
耐酸化性を向上させ、かつ高いイオン伝導度を得る観点から、粉砕処理の積算動力は、好ましくは5(Wh/kg)以上、より好ましくは10(Wh/kg)以上、更に好ましくは25(Wh/kg)以上であり、上限として好ましくは450(Wh/kg)以下、より好ましくは400(Wh/kg)以下、更に好ましくは350(Wh/kg)以下である。また、積算動力が上記範囲内であると、造粒と比表面積の増大、及びイオン伝導度の著しい低下を抑制することも可能となる。
(粉砕処理)
結晶性生成物の粉砕処理は、粉砕を行い得る機器を用いて行えばよく、粉砕機を用いて行うことが好ましい。
粉砕機としては、上記反応物を得る方法(i)で、固体電解質原料の混合を行い得る機器として説明した粉砕機が好ましく挙げられる。上記粉砕機の中でも、積算動力の調整がしやすく、非晶化を進行させやすいことから、容器駆動式粉砕機として例示したボールミル、ビーズミルが好ましく、中でも遊星型のものが好ましい。
ボールミル、ビーズミルを用いる場合、ビーズ及びボーズのサイズ、材質は、上記固体電解質原料の混合を行う際に用い得る粉砕機で説明したことと同じである。
また、ボールミル、ビーズミルを用いる場合の運転条件、すなわち回転数、粉砕時間については、上記積算動力の範囲内であれば特に制限はなく、上記固体電解質原料の混合を行う際に用い得る粉砕機で説明した回転数、粉砕時間から適宜選択すればよい。
(結晶性硫化物固体電解質)
本実施形態の製造方法で得られる結晶性硫化物固体電解質は、その表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有するものである。
本実施形態の製造方法においては、原料含有物に含まれる固体電解質原料の種類及び使用量を調整することにより、所望の結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質を得ることができる。本実施形態の製造方法で得られる結晶性硫化物固体電解質が有する結晶構造としては、既述のように結晶性生成物が有する結晶構造と同じであり、上記結晶性生成物が有し得る結晶構造として説明した結晶構造が好ましく挙げられる。中でも、高いイオン伝導度を有することから、チオリシコンリージョンII型結晶構造が好ましい。
本実施形態の製造方法で得られる結晶性固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。
粒子状の結晶性固体電解質の平均粒径(D50)としては、例えば、0.01μm以上、さらには0.03μm以上、0.05μm以上、0.1μm以上であり、上限としては5μm以下、さらには3.0μm以下、1.5μm以下、1.0μm以下である。
本実施形態の製造方法によれば、造粒と比表面積の増大を抑制することができるため、結晶性硫化物固体電解質の平均粒径は、その後の用途(例えば、電極合材、リチウムイオン電池)においても十分使用できる程度に小さいものである。
本実施形態の製造方法で得られる結晶性固体電解質のイオン伝導度は、1.5×10-3S/cm以上、さらには1.7×10-3S/cm以上、1.9×10-3S/cm以上である。
本実施形態の製造方法によれば、イオン伝導度の著しい低下を抑制することができるため、結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度は高いものといえる。ここで、本明細書において、イオン伝導度は実施例に記載される方法により測定されるものである。
本実施形態の製造方法で得られる結晶性固体電解質の酸化電流は、非晶性硫化物固体電解質と同程度の酸化電流となる、すなわち結晶性硫化物固体電解質の酸化電流よりも小さくなることから、優れた耐酸化性が得られる。
本実施形態の製造方法で得られる結晶性固体電解質の酸化電流について、その低下率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上、より更に好ましくは25%以上である。ここで、酸化電流の低下率は、以下の数式により算出されるものである。すなわち、酸化電流の低下率は、結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化する前のものの酸化電流から、非晶化した後のものの酸化電流への低下率ともいえる。
酸化電流の低下率(%)=(酸化電流2-酸化電流1)/酸化電流2×100
酸化電流1:表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する結晶性硫化物固体電解質の酸化電流(結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化することにより得られる結晶性硫化物固体電解質の酸化電流)(mA)
酸化電流2:表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する前の結晶性硫化物固体電解質の酸化電流(結晶性生成物の酸化電流)(mA)
また、本実施形態の製造方法で得られる結晶性固体電解質の酸化電流は、絶対値としては測定条件等によりかわり得るため一概にはいえないが、後述する実施例における酸化電流の測定方法により測定した場合、好ましくは0.45mA以下、より好ましくは0.40mA以下、更に好ましくは0.38mA以下である。
[結晶性硫化物固体電解質]
本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む結晶性硫化物固体電解質であって、
前記結晶性硫化物固体電解質の表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する、
結晶性硫化物固体電解質、
というものである。
本実施形態の硫化物固体電解質は、上記の本実施形態の製造方法により製造し得るものであり、より効率的に製造する観点から、上記の本実施形態の製造方法により製造することが好ましい。すなわち、本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、優れた耐酸化性を有し、高いイオン伝導度を有し、造粒と比表面積の増大が抑制された結晶性硫化物固体電解質となる。
本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、リチウム原子、リン原子、硫黄原子及びハロゲン原子を含むものである。これらの原子は、上記の本実施形態の製造方法で用いられる原料含有物に含まれる固体電解質原料に由来するものである。
本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有するものである。非晶化した部分を有すること、また非晶化した部分の態様は、上記本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質に対して説明した内容と同じである。
また、その他の性状、例えば有し得る結晶構造、イオン伝導度、平均粒径、サイクリックボルタンメトリー測定(CV測定)により測定される酸化電流及びその低下率等も、上記本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質に対して説明した内容と同じである。
(用途)
本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、造粒と比表面積の増大、及びイオン伝導度の著しい低下を抑制しつつ、優れた耐酸化性を有するものであるため、電極合材、リチウムイオン電池等に好適に用いられる。
リチウムイオン電池に用いられる場合、リチウムイオン電池の正極層に用いてもよく、負極層に用いてもよく、電解質層に用いてもよい。なお、各層は、公知の方法により製造することができる。
また、上記リチウムイオン電池は、正極層、電解質層及び負極層の他に集電体を使用することが好ましく、集電体は公知のものを用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、上記の固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
[電極合材]
本実施形態の電極合材は、上記の本実施形態の結晶性硫化物固体電解質を用いるものであり、上記の本実施形態の結晶性硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む電極合材である。
(電極活物質)
電極活物質としては、電極合材が正極、負極のいずれに用いられるかに応じて、各々正極活物質、負極活物質が採用される。
正極活物質としては、負極活物質との関係で、イオン伝導度を発現させる原子として採用される原子、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な正極活物質としては、酸化物系正極活物質、硫化物系正極活物質等が挙げられる。
酸化物系正極活物質としてはLMO(マンガン酸リチウム)、LCO(コバルト酸リチウム)、NMC(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、NCA(ニッケルコバルトアルミ酸リチウム)、LNCO(ニッケルコバルト酸リチウム)、オリビン型化合物(LiMeNPO、Me=Fe、Co、Ni、Mn)等のリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましく挙げられる。
硫化物系正極活物質としては、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni)等が挙げられる。
また、上記正極活物質の他、セレン化ニオブ(NbSe)等も使用可能である。
正極活物質は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
負極活物質としては、イオン伝導度を発現させる原子として採用される原子、好ましくはリチウム原子と合金を形成し得る金属、その酸化物、当該金属とリチウム原子との合金等の、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な負極活物質としては、電池分野において負極活物質として公知のものを制限なく採用することができる。
このような負極活物質としては、例えば、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属リチウム又は金属リチウムと合金を形成し得る金属、これら金属の酸化物、またこれら金属と金属リチウムとの合金等が挙げられる。
電極活物質は、その表面がコーティングされた、被覆層を有するものであってもよい。
被覆層を形成する材料としては、結晶性硫化物固体電解質においてイオン伝導度を発現する原子、好ましくはリチウム原子の窒化物、酸化物、又はこれらの複合物等のイオン伝導体が挙げられる。具体的には、窒化リチウム(LiN)、LiGeOを主構造とする、例えばLi4-2xZnGeO等のリシコン型結晶構造を有する伝導体、LiPO型の骨格構造を有する例えばLi4-xGe1-x等のチオリシコン型結晶構造を有する伝導体、La2/3-xLi3xTiO等のペロブスカイト型結晶構造を有する伝導体、LiTi(PO等のNASICON型結晶構造を有する伝導体等が挙げられる。
また、LiTi3-y(0<y<3)、LiTi12(LTO)等のチタン酸リチウム、LiNbO、LiTaO等の周期表の第5族に属する金属の金属酸リチウム、またLiO-B-P系、LiO-B-ZnO系、LiO-Al-SiO-P-TiO系等の酸化物系の伝導体等が挙げられる。
被覆層を有する電極活物質は、例えば電極活物質の表面に、被覆層を形成する材料を構成する各種原子を含む溶液を付着させ、付着後の電極活物質を好ましくは200℃以上400℃以下で焼成することにより得られる。
ここで、各種原子を含む溶液としては、例えばリチウムエトキシド、チタンイソプロポキシド、ニオブイソプロポキシド、タンタルイソプロポキシド等の各種金属のアルコキシドを含む溶液を用いればよい。この場合、溶媒としては、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を用いればよい。
また、上記の付着は、浸漬、スプレーコーティング等により行えばよい。
焼成温度としては、製造効率及び電池性能の向上の観点から、上記200℃以上400℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以上390℃以下であり、焼成時間としては、通常1分~10時間程度であり、好ましくは10分~4時間である。
被覆層の被覆率としては、電極活物質の表面積を基準として好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは100%、すなわち全面が被覆されていることが好ましい。また、被覆層の厚さは、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、上限として好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下である。
被覆層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、被覆層の厚さを測定することができ、被覆率は、被覆層の厚さと、元素分析値、BET比表面積と、から算出することができる。
(その他の成分)
本実施形態の電極合材は、上記の結晶性硫化物固体電解質、電極活物質の他、例えば導電材、結着剤等のその他成分を含んでもよい。すなわち、本実施形態の電極合材は、上記の硫化物固体電解質、電極活物質の他、例えば導電材、結着剤等のその他成分を用いてもよい。導電剤、結着剤等のその他成分は、上記の硫化物固体電解質と、電極活物質と、を混合することにおいて、これらの硫化物固体電解質及び電極活物質に、さらに加えて混合して用いればよい。
導電材としては、電子伝導性の向上により電池性能を向上させる観点から、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛、難黒鉛化性炭素等の炭素系材料が挙げられる。
結着剤を用いることで、正極、負極を作製した場合の強度が向上する。
結着剤としては、結着性、柔軟性等の機能を付与し得るものであれば特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ブチレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマー、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポロビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン樹脂等の各種樹脂が例示される。
電極合材における、電極活物質と硫化物固体電解質との配合比(質量比)としては、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは99.5:0.5~40:60、より好ましくは99:1~50:50、更に好ましくは98:2~60:40である。
導電材を含有する場合、電極合材中の導電材の含有量は特に制限はないが、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、上限として好ましくは10質量%以下、好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
また、結着剤を含有する場合、電極合材中の結着剤の含有量は特に制限はないが、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、上限として好ましくは20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
〔リチウムイオン電池〕
本実施形態のリチウムイオン電池は、上記の本実施形態の結晶性硫化物固体電解質及び上記の電極合材から選ばれる少なくとも一方を含む、リチウムイオン電池である。
本実施形態のリチウムイオン電池は、上記の本実施形態の硫化物固体電解質、これを含む電極合材を含むものであれば、その構成については特に制限はなく、汎用されるリチウムイオン電池の構成を有するものであればよい。
本実施形態のリチウムイオン電池としては、例えば正極層、負極層、電解質層、また集電体を備えたものであることが好ましい。正極層及び負極層としては本実施形態の結晶性硫化物固体電解質を用いた電極合材が用いられるものであることが好ましく、また電解質層としては本実施形態の結晶性硫化物固体電解質が用いられるものであることが好ましい。
また、集電体は公知のものを用いればよい。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、上記の固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
(粉末XRD回折の測定)
粉末X線回折(XRD)測定は以下のようにして実施した。
実施例及び比較例で得られた硫化物固体電解質の粉末を、直径20mm、深さ0.2mmの溝に充填し、ガラスで均して試料とした。この試料を、XRD用カプトンフィルムで密閉し、空気に触れさせずに、以下の条件で測定した。
測定装置:D2 PHASER、ブルカー(株)製
管電圧:30kV
管電流:10mA
X線波長:Cu-Kα線(1.5418Å)
光学系:集中法
スリット構成:ソーラースリット4°、発散スリット1mm、Kβフィルター(Ni板)使用
検出器:半導体検出器
測定範囲:2θ=10-60deg
ステップ幅、スキャンスピード:0.05deg、0.05deg/秒
(イオン伝導度の測定)
本実施例において、イオン伝導度の測定は、以下のようにして行った。
実施例及び比較例で得られた結晶性固体電解質から、直径10mm(断面積S:0.785cm)、高さ(L)0.1~0.3cmの円形ペレットを成形して試料とした。その試料の上下から電極端子を取り、25℃において交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:5MHz~0.5Hz、振幅:10mV)、Cole-Coleプロットを得た。高周波側領域に観測される円弧の右端付近で、-Z’’(Ω)が最小となる点での実数部Z’(Ω)を電解質のバルク抵抗R(Ω)とし、以下式に従い、イオン伝導度σ(S/cm)を計算した。
R=ρ(L/S)
σ=1/ρ
(平均粒径の測定)
レーザー回折/散乱式粒径分布測定装置(「Partica LA-950(型番)」、株式会社堀場製作所製)を用いて測定して粒径分布を得た。得られた粒径分布の積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%(体積基準)に達するところの粒径を平均粒径(D50)とした。
(CV測定(酸化電流))
酸化電流を評価するため、下記のCV測定用セルを用いた。
実施例で得られた粉末及びデンカブラック粒状品(粒径:35nm、デンカ株式会社製)を合計100mg(粉末:デンカブラック(質量比)=85:15)を、乳鉢を用いて10分間混合し、測定用粉体(1)を得た。
直径10mmの電池セルに、セパレーター層用の電解質100mgを加え、SUS製金型で10MPa/cmで120°ずつ回転させながら3回プレスした後、測定用粉体(1)を10mg加え、20MPa/cmで120°ずつ回転させながら3回プレスした。次いで、上記測定用粉体(1)の逆側から、20MPa/cmで120°ずつ回転させながら3回プレスした。
上記のセパレーター用の電解質は以下の条件で合成した。
1L撹拌翼付き反応容器に、窒素雰囲気下でLiSを20.5g、Pを33.1g、LiIを10.0g、LiBrを6.5g添加した。撹拌翼を回転させた後、トルエン630gを導入し、このスラリーを10分間撹拌した。循環運転可能なビーズミル(「スターミルLMZ015(商品名)」、アシザワファインテック株式会社製、ビーズ材質:ジルコニア、ビーズ直径:0.5mmφ、ビーズ使用量:456g)に反応容器を接続し、45時間の粉砕処理(ポンプ流量:650mL/min、ビーズミル周速:12m/s、ミルジャケット温度:45℃)を行った。
得られたスラリーを真空下で室温乾燥(25℃)した後、加熱(80℃)を行い非晶性の固体電解質の白色粉末を得た。さらに、得られた白色粉末を真空下で195℃の加熱を2時間行うことにより、結晶性固体電解質の白色粉末を得た。結晶性固体電解質のXRDスペクトルでは2θ=20.2°、23.6°に結晶化ピークが検出され、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有していることを確認した。また、得られた結晶性固体電解質の平均粒径(D50)は4.5μm、イオン伝導度は5.0mS/cmであった。
セパレーター層用の電解質の測定用粉体(1)とは逆側にInLi箔(層構造をなし、「/」は各層間を意味する。In:10mmφ×0.1mm/Li:9mmφ×0.08mm/SUS:10mmφ×0.1mm)を設け、6MPa/cmで1回プレスした。セルは測定用粉体(1)とInLi箔間で短絡しないよう、絶縁体を挟んだ4本のねじにより固定され、ねじは8N・mのトルクで固定することで測定用セルを得た。
得られた測定用セルを、測定器(「VMP-300(型番)」、Biologic社製)と接続し、下記の条件のもと、CV曲線を得た。
測定温度:25℃
掃引速度:0.1mV/s
電位測定範囲:開回路電圧(+2.1V)→+5.0V→+2.1V
サイクル数:2回
(実施例1)
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下、固体電解質原料として硫化リチウム0.59質量部、五硫化二リン0.95質量部、臭化リチウム0.19質量部、ヨウ化リチウム0.28質量部を含む原料含有物を導入した。撹拌子を回転させた後、錯化剤のテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を上記原料に含まれるリチウム原子のモル部(0.133モル部)に対して4.45モル部の割合(すなわち、4.45モル部-TMEDA/モル部-リチウム原子)となるように(固体電解質原料の合計量2.0gに対して20mLとなるように)を加え、12時間撹拌を継続し、錯体含有物を得た。これを真空下で乾燥(室温:23℃)して粉末の錯体を得た。次いで、錯体の粉末を真空下で120℃で2時間の加熱を行い、錯体から錯化剤を除去して錯分解物を得た。錯分解物は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物を混合して得られる反応物に該当する。
得られた反応物を、真空下で200℃で2時間の加熱を行い、結晶性生成物を得た(結晶性の硫化物固体電解質を得るための加熱温度(本例では200℃)が「結晶化温度」となる。)。
次いで、撹拌翼付き容器に、得られた結晶性生成物80gを導入し、ヘプタン740mLとジイソプロピルエーテル(DiPE)110mLを加え10分撹拌し、スラリーを得た。得られたスラリーを、循環運転可能なビーズミル(「ラボスターミニLMZ015(商品名)」、アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて所定条件(ビーズ直径:0.3mmφ、ビーズ使用量:456g(粉砕室に対するビーズ充填量:80%)、ポンプ流量:400mL/min、周速6m/s)で循環させながら5分の粉砕処理を行った。
さらに、粉砕処理したスラリーを真空下で室温(23℃)にて乾燥して、結晶性硫化物固体電解質を得た。粉砕処理における積算動力は、140(Wh/kg)であった。
得られた反応物、結晶性生成物及び結晶性硫化物固体電解質の粉末について、平均粒径(D50)を測定したところ、各々4.30μm、4.65μm、0.13μm、となった。また、結晶性生成物及び結晶性硫化物固体電解質のイオン伝導度を測定したところ、イオン伝導度は、各々4.3(mS/cm)、3.7μm(mS/cm)となった。
得られた反応物、結晶性生成物及び結晶性硫化物固体電解質の粉末について、XRD測定を行った。その結果を図1に示す。
また、得られた反応物、結晶性生成物及び結晶性硫化物固体電解質の粉末について、上記の方法に基づきCV測定(酸化電流測定)を行った。その結果を図2に示す。
(比較例1)
実施例1で得られた結晶性硫化物固体電解質を、再度、真空下で200℃で2時間の加熱を行った。得られた粉末について、上記の方法に基づきCV測定(酸化電流測定)を行った。その結果を図2に示す。
図1の結果から、実施例で得られた反応物は、ハローパターンを示しており、非晶性の硫化物固体電解質であることが確認された。
また、実施例で得られた結晶性生成物、及び結晶性生成物を粉砕処理して得られた硫化物固体電解質は、いずれも主に2θ=20.2°、23.6°、29.5°に結晶化ピークが検出され、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質であることが確認された。しかし、結晶性生成物を粉砕処理して得られた硫化物固体電解質のピーク強度は、結晶性生成物のピーク強度よりも小さいことから、結晶構造が減少し、その表面の少なくとも一部が非晶化したことが確認された。
図2の結果から、本実施形態の製造方法で得られた結晶性硫化物固体電解質は、酸化電流が0.36mAと、反応物(非晶性硫化物固体電解質)の0.34mA程度に小さいものであり、結晶性硫化物固体電解質でありながら、優れた耐酸化性を有することが確認された。
他方、実施例1における結晶性生成物の酸化電流は0.51mAと、反応物及び結晶性生成物を粉砕処理した硫化物固体電解質に比べて極めて大きく、耐酸化性を有するものではないことが確認された。また、比較例1の、実施例1で得られた結晶性硫化物固体電解質を加熱し、表面の少なくとも一部に存在する非晶化した部分を結晶化させた粉末は、酸化電流が0.46mAであり、実施例1で得られた結晶性硫化物固体電解質に比べて大きいものの、実施例1における結晶性生成物の酸化電流よりも若干小さくなった。これは、非晶化した部分が一部残ったことによる効果と考えられる。
本実施形態の結晶性硫化物固体電解質の製造方法によれば、造粒と比表面積の増大、及びイオン伝導度の著しい低下を抑制しつつ、優れた耐酸化性を有する結晶性硫化物固体電解質を提供することができる。
本実施形態の製造方法により得られる、本実施形態の結晶性硫化物固体電解質は、電極合材、またリチウムイオン電池に、とりわけ、パソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等に用いられるリチウムイオン電池に好適に用いられる。

Claims (9)

  1. リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む原料含有物を混合して反応物を得ること、
    前記反応物を加熱して結晶性生成物を得ること、及び
    前記結晶性生成物を粉砕処理することで、前記結晶性生成物の表面の少なくとも一部を非晶化すること、
    を含み、
    前記粉砕処理することにおける積算動力が、1(Wh/kg)以上500(Wh/kg)以下である、
    結晶性硫化物固体電解質の製造方法。
  2. 前記反応物を得ることにおいて、前記混合を、粉砕機を用いて行う、請求項1に記載の結晶性硫化物固体電解質の製造方法。
  3. 前記反応物を得ることが、
    錯化剤の存在下で前記原料含有物を混合して錯体を得ること、及び
    前記錯体を加熱して錯分解物を得ること、
    を含む、請求項1に記載の結晶性硫化物固体電解質の製造方法。
  4. 前記結晶性硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有する硫化物固体電解質である請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶性硫化物固体電解質の製造方法。
  5. リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む結晶性硫化物固体電解質であって、
    前記結晶性硫化物固体電解質の表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する、
    結晶性硫化物固体電解質。
  6. サイクリックボルタンメトリー測定(CV測定)により測定される酸化電流の、下記数式により算出される低下率が、10%以上である請求項5に記載の結晶性硫化物固体電解質。
    酸化電流の低下率(%)=(酸化電流2-酸化電流1)/酸化電流2×100
    酸化電流1:表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する結晶性硫化物固体電解質の酸化電流(mA)
    酸化電流2:表面の少なくとも一部に非晶化した部分を有する前の結晶性硫化物固体電解質の酸化電流(mA)
  7. 前記結晶性硫化物固体電解質が、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有する硫化物固体電解質である、請求項5又は6に記載の結晶性硫化物固体電解質。
  8. 請求項5~7のいずれか1項に記載の結晶性硫化物固体電解質及び電極活物質を含む電極合材。
  9. 請求項5~7のいずれか1項に記載の結晶性硫化物固体電解質及び請求項8に記載の電極合材の少なくとも一方を含む、リチウムイオン電池。
JP2023077634A 2022-05-13 2023-05-10 結晶性硫化物固体電解質の製造方法、結晶性硫化物固体電解質、これを含む電極合材及びリチウムイオン電池 Pending JP2023168276A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022079591 2022-05-13
JP2022079591 2022-05-13

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023168276A true JP2023168276A (ja) 2023-11-24

Family

ID=88838178

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2023077634A Pending JP2023168276A (ja) 2022-05-13 2023-05-10 結晶性硫化物固体電解質の製造方法、結晶性硫化物固体電解質、これを含む電極合材及びリチウムイオン電池

Country Status (2)

Country Link
US (1) US20240063425A1 (ja)
JP (1) JP2023168276A (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
US20240063425A1 (en) 2024-02-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6719037B1 (ja) 固体電解質の製造方法及び電解質前駆体
JP6719038B1 (ja) 硫化物固体電解質及びその処理方法
JP7324849B2 (ja) 電極合材及びその製造方法
JP6896202B1 (ja) 硫化物固体電解質の製造方法
US11978848B2 (en) Method for producing solid electrolyte
WO2022158458A1 (ja) 改質硫化物固体電解質及びその製造方法
US11973185B2 (en) Method for producing sulfide solid electrolyte
JP2023168276A (ja) 結晶性硫化物固体電解質の製造方法、結晶性硫化物固体電解質、これを含む電極合材及びリチウムイオン電池
WO2023190624A1 (ja) 硫化物固体電解質の製造方法
WO2022163648A1 (ja) 改質硫化物固体電解質及びその製造方法
WO2022163541A1 (ja) 固体電解質の製造方法
WO2021240913A1 (ja) 電極合材及びその製造方法
WO2022102696A2 (ja) 固体電解質の製造方法
WO2023276860A1 (ja) 改質硫化物固体電解質粉体の製造方法
JP2023152966A (ja) 硫化物固体電解質、その製造方法、電極合材及びリチウムイオン電池
WO2023013778A1 (ja) 硫化物固体電解質の製造方法及び硫化物固体電解質
JP2023152783A (ja) 硫化物固体電解質の製造方法
WO2023286842A1 (ja) 硫化物固体電解質
WO2023140178A1 (ja) 硫化物固体電解質の製造方法
WO2023132280A1 (ja) 硫化物固体電解質の製造方法
EP4339970A1 (en) Sulfide solid electrolyte composition, electrode mixture containing same, and method for producing sulfide solid electrolyte composition
JP2023168318A (ja) 硫化物固体電解質の製造方法及び硫化物固体電解質
JP2023097070A (ja) 硫化物固体電解質の製造方法及び電極合材の製造方法
JP2024007720A (ja) 改質硫化物固体電解質の製造方法
JP2021190427A (ja) 固体電解質の製造方法