JP2023152966A - 硫化物固体電解質、その製造方法、電極合材及びリチウムイオン電池 - Google Patents

硫化物固体電解質、その製造方法、電極合材及びリチウムイオン電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有する硫化物固体電解質、前記硫化物固体電解質を用いた電極合材及び前記硫化物固体電解質を用いた電池並びに前記硫化物固体電解質の製造方法を提供する。
【解決手段】複合アニオン、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含むアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質であって、所定のCuKα線を用いたX線回折測定方法により測定される回折ピーク2θSEの低角側にシフトする角が0.001°以上である、硫化物固体電解質、それを用いた電極合材及び電池並びにその製造方法である。
【選択図】図2

Description

本発明は、硫化物固体電解質、その製造方法、電極合材及びリチウムイオン電池に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。従来、このような用途に用いられるリチウムイオン電池において可燃性の有機溶媒を含む電解液が用いられていた。電解液を用いたリチウムイオン電池では、その内部で短絡が起こると、それによるジュール熱により、リチウムイオン電池の発熱が起こることがある。この発熱により、リチウムイオン電池が熱暴走すると、電解液の発火等の危険性がある。このため、電解液を用いたリチウムイオン電池では、熱暴走が起こるとセパレータが溶解し、それ以上の放電反応を停止するシャットダウン性能を備えている。
リチウムイオン電池を全固体化することで、リチウムイオン電池内に可燃性の有機溶媒が不要となり、安全装置の簡素化が図れ、生産性に優れることから、電解液を固体電解質層に換えた電池の開発が行われている。しかしこのようなリチウムイオン電池でも熱暴走は起こり得るが、リチウムイオン電池はセパレータを必要としないため、熱暴走に対しては、電解液を用いたリチウムイオン電池とは異なる、別の対策が必要となる。
固体電解質層としては、リチウムイオン伝導度(以下、単にイオン伝導度とも記載する。)が高い硫化物固体電解質を用いることが検討されている。特にイオン伝導度の点で優れるアルジロダイト結晶構造を含む硫化物固体電解質が望まれている。
シャットダウン性能を有する固体電解質材料として、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含み、それら各原子の含有量を特定の範囲とした固体電解質材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、2以上の原子からなるアニオン(以下、複合アニオン)を含む硫化物固体電解質が知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。
特開2020-87525号公報 特開2016-27554号公報 US2021/0296690号公報
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有する硫化物固体電解質、前記硫化物固体電解質を用いた電極合材及び前記硫化物固体電解質を用いた電池並びに前記硫化物固体電解質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る硫化物固体電解質は、
複合アニオン、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含むアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質であって、下記のCuKα線を用いたX線回折測定方法により測定される回折ピーク2θSEの低角側にシフトする角が0.001°以上である、硫化物固体電解質である。
(X線回折測定方法)
標準物質であるLiPSと、前記硫化物固体電解質と、の混合物(混合比は、前記LiPS:前記硫化物固体電解質=10質量部:90質量部である。)を測定試料とし、前記測定試料についてCuKα線を用いたX線回折測定を行い、前記硫化物固体電解質が有するLiPS結晶構造に起因する2θ=30.0°に現れる回折ピークに対応する回折ピークを2θSEとする。前記標準物質であるLiPSの2θ=30.0°と前記2θSEとの差を前記低角側にシフトする角とする。
本発明に係る硫化物固体電解質の製造方法は、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む原料含有物と、複合アニオンの塩と、溶媒とを、混合すること、溶媒を除去すること、加熱すること、を含む、アルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質の製造方法である。
本発明に係る電極合材は、前記硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む電極合材である。
本発明に係るリチウムイオン電池は、前記硫化物固体電解質及び前記電極合材の少なくとも一方を含む、リチウムイオン電池である。
本発明によれば、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有する硫化物固体電解質、前記硫化物固体電解質を用いた電極合材及び前記硫化物固体電解質を用いた電池並びに前記硫化物固体電解質の製造方法を提供することができる。
シフト角の算定方法を説明する概念図。 本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法の好ましい形態を説明するフロー図である。 実施例1~7及び比較例1で製造された硫化物固体電解質のXRDパターンである。 実施例1~7及び比較例1で製造された硫化物固体電解質の2θ=30.0°付近のXRDパターンの拡大図である。 実施例14で製造されたリチウムイオン電池の不可逆容量の評価に用いたCV曲線である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」、「~」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組合せできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。
(本発明に至るために本発明者が得た知見)
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
特許文献1に記載の固体電解質は、固体電解質が含有するリチウムイオン、硫黄イオン、リンイオン及びハロゲンイオンの含有量比を検討したものであるが、イオン伝導度が高いものではなく、シャットダウン性能も十分なものとはいえなかった。
特許文献2及び3は、複合アニオンを固体電解質中に導入することを検討するものではあるが、複合アニオンを用いてシャットダウン性能を発現することを目的とするものではないため、シャットダウン性能に関する評価は行っていない。
また、特許文献2に記載の固体電解質は、チオリシコン類似結晶相を含むものであるため、アルジロダイト型結晶構造を含む本実施形態の硫化物固体電解質とは異なる。
特許文献3には、固体電解質のCuKα線を用いたX線回折測定の結果が、Figure 3aから3cに示されている。しかし、これらではアルジロダイト型結晶構造に特有の、2θ=18.0°、30.0°、31.4°に対応するピークが観測されていないため、特許文献3記載の固体電解質は本発明のアルジロダイト型結晶構造と異なる構造と考えられる。また特許文献3の実施例に記載された方法では用いる原料から想定される、固体電解質中のリチウムイオン、硫黄イオン、リンイオン及びハロゲンイオンの含有量比から、アルジロダイト型結晶構造を含む固体電解質が得られないと考えられる。以上のことから、特許文献3に記載の固体電解質は、アルジロダイト型結晶構造を含む硫化物固体電解質ではないことが想定される。
LiPS結晶構造を含む硫化物固体電解質は、アルジロダイト型結晶構造に起因する回折ピークが、2θ=30.0°に現れる。本発明者らは、硫化物固体電解質が、複合アニオンを含むことで、アルジロダイト型結晶構造を維持しつつ、LiPS結晶構造を含む硫化物固体電解質が有する2θ=30.0°に現れる回折ピークに対応するピークが、低角側にシフトすることを見出した。このように低角側にシフトした硫化物固体電解質は、イオン伝導度の低下が抑えられ、優れたシャットダウン性能を有することを見出した。
LiPS結晶構造は、後記するように2θ=30.0°以外にも回折ピークを持つことが知られているが、2θ=30.0°に現れるピークに着目し、これが低角側にシフトする硫化物固体電解質であると、高いイオン伝導度と優れたシャットダウン性能が両立できることは、これまで全く認知されていなかった事象である。
本明細書において、「シャットダウン性能」とは、何らかの要因により、リチウムイオン電池が熱暴走を起こしたとしても、その発生した熱により、硫化物固体電解質が変質し、リチウムイオン電池の異常な反応の連鎖が断ち切られ、更なる熱の発生が抑制されることで熱暴走が停止する性能を意味する。リチウムイオン電池がシャットダウン性能を有すると、それを搭載した電子機器等を安全に使用することができるため好ましい。
複合アニオンを含むことによりシャットダウン性能が発現する理由は、定かではないが、複合アニオンが熱により分解して、発生した複合アニオンの分解物により、イオン伝導性が発生する結晶構造が崩れることにより、硫化物固体電解質中のリチウムイオンの移動が制限されるため、熱暴走が抑制されることが考えられる。シャットダウン性能を発現するための複合アニオンの分解する温度は、後記する分解開始温度として評価できる。
以下に本実施形態の第一の態様から第五の態様に係る硫化物固体電解質、第六の態様から第十の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法、第十一の態様から第十二の態様に係る電極合材及び第十三の態様に係るリチウムイオン電池について述べる。
本実施形態の第一の態様に係る硫化物固体電解質は、
複合アニオン、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含むアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質であって、下記のCuKα線を用いたX線回折測定方法により測定される回折ピーク2θSEの低角側にシフトする角が0.001°以上である、硫化物固体電解質である。
(X線回折測定方法)
標準物質であるLiPSと、前記硫化物固体電解質と、の混合物(混合比は、前記LiPS:前記硫化物固体電解質=10質量部:90質量部である。)を測定試料とし、前記測定試料についてCuKα線を用いたX線回折測定を行い、前記硫化物固体電解質が有するLiPS結晶構造に起因する2θ=30.0°に現れる回折ピークに対応する回折ピークを2θSEとする。前記標準物質であるLiPSの2θ=30.0°と前記2θSEとの差を前記低角側にシフトする角とする。
複合アニオンを含まない、LiPS結晶構造は、アルジロダイト型結晶構造となるが、本実施形態の硫化物固体電解質は、アルジロダイト型結晶構造を含むものの、複合アニオンを有することで、LiPS結晶構造が有する2θ=30.0°に現れるアルジロダイト型結晶構造に起因する回折ピークが、低角側にシフトする。前記のように低角側にシフトしたピークを有する硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有する。
硫化物固体電解質については後記する。
本明細書において「低角側にシフト」とは、複合アニオンを含まないLiPS結晶構造が持つ2θ=30.0°に現れる回折ピーク(前記標準物質であるLiPSが有する2θ=30.0°に現れる回折ピーク)が、硫化物固体電解質が後記する複合アニオンを含むことにより、前記硫化物固体電解質が有するLiPS結晶構造に起因する2θ=30.0°に現れる回折ピークに対応する回折ピークが低角側に移動し、その低角側にシフトする角(30.0-2θSE)が0.001°以上であることを意味する。回折角度2θは、物質の格子面間隔dに依存し、ブラッグの式から、2θが小さくなるとdが大きくなる。2θが低角側にシフトするとは、アルジロダイト型結晶構造を維持するものの、アルジロダイト型結晶構造の結晶構造が変化し、結晶構造を構成する複合アニオンにより、dが大きくなっていることを意味する。
つまり、本実施形態の硫化物固体電解質は、複合アニオンを含むことにより、前記標準物質であるLiPSの2θ=30.0°に現れる回折ピークに対応した回折ピークが、低角側にシフトした、特定の原子を含む硫化物固体電解質であるといえる。
硫化物固体電解質が、ハロゲン原子をその結晶構造中に含む場合、LiPS結晶構造が持つ2θ=30.0°に現れる回折ピークが、高角側に移動する。このため、複合アニオンを含まない硫化物固体電解質がハロゲン原子を含む場合の「低角側にシフト」とは、ハロゲン原子を含み複合アニオンを含まない硫化物固体電解質のLiPS結晶構造が持つ2θ=30.0°に対応する回折ピークに対して、複合アニオンを含むことで、回折ピークが低角側へシフトすることを意味する。
図3に本実施形態のXRDパターンを示したが、この2θ=30.0°付近を拡大した、シフト角の算定方法を説明する概念図を図1に示す。複合アニオンを含まない硫化物固体電解質(LiPS結晶構造)のXRDパターン1及び複合アニオンを含む本実施形態の硫化物固体電解質のXRDパターン2を示す。LiPS結晶構造の2θ=30.0°に現れるアルジロダイト型結晶構造に起因する回折ピーク4と複合アニオンを含む本実施形態の硫化物固体電解質の前記回折ピークに対応する回折ピーク5との差の絶対値が、シフトしている角度6(上記「低角側にシフトした角」であり、以下「シフト角」とも記載する。単位は「°」である。)である。回折ピーク5は回折ピーク4に比べて低角度側に現れている。複合アニオンを含むことで、回折ピーク5は回折ピーク4に比べて低角側にシフトしている。つまり、複合アニオンを含まない硫化物固体電解質の2θ=30.0°に現れるLiPS結晶構造のアルジロダイト型結晶構造に起因する回折ピークに対応する複合アニオンを含む硫化物固体電解質の回折ピークが、低角側にシフトしていることを表している。XRDパターンは、誤差を含み得る測定であるため、内部標準としてLiPSを含む、複合アニオンを含む硫化物固体電解質のXRDパターン3により、シフト角を算出することで、誤差の影響を抑えることができる。XRDパターン3のピークの同定は、XRDパターン1及び2を参照して行えばよい。これにより、2θ=30.0°に現れるLiPS結晶構造に起因する回折ピークに対応する回折ピークのピーク位置を確定することができる。
硫化物固体電解質が、ハロゲン原子をその結晶構造中に含む場合には、2θ=30.0°に現れるLiPS結晶構造に起因する回折ピークに対応する回折ピークを基準に、シフト角を定義する。
CuKα線を用いたXRDパターンは、例えば実施例に記載の方法により得ることができる。
本明細書において、「複合アニオンを含み」とは、後記する複合アニオンを硫化物固体電解質が含むことを意味する。「含む」とは、アルジロダイト型結晶構造中に、その結晶構造を構成する成分として取り込まれていることを意味する。本明細書において、「複合アニオン」とは、複数の種類の原子を含むアニオンを意味する。
硫化物固体電解質が、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含むことで、硫化物固体電解質はリチウム原子に起因するイオン伝導度を有し、更にそのイオン伝導度は高いものとなるため好ましい。
本実施形態の第二の態様に係る硫化物固体電解質は、前記の第一の態様において、
更にハロゲン原子を含む、硫化物固体電解質である。
ハロゲン原子を含むことで、硫化物固体電解質は、安定したアルジロダイト型結晶構造を含むこととなり好ましい。
本実施形態の第三の態様に係る硫化物固体電解質は、前記の第一又は第二の態様において、
前記低角側にシフトする角が、0.001°以上1.0°以下である硫化物固体電解質である。
この低角側にシフトする角、すなわちシフト角は、硫化物固体電解質中の複合アニオンの種類及び含有量に依存したものである。既述のようにシフト角は0.001°以上であり、上限が1.0°以下でシフトしている(シフト角が0.001°以上1.0°以下である)と、優れたシャットダウン性能を発現するため好ましい。
本実施形態の第四の態様に係る硫化物固体電解質は、前記の第一~三のいずれかの形態において、
前記複合アニオンの含有量が、前記硫化物固体電解質に含まれるリチウム原子1.0molに対して、0.20mol以下である硫化物固体電解質である。
この範囲であると、硫化物固体電解質が高いイオン伝導度を示すため好ましい。
本実施形態の第五の態様に係る硫化物固体電解質は、前記の第一~四のいずれかの形態において、
前記複合アニオンが、NO 、SO 2-、CO 2-、CO2-及びBF から選ばれる少なくとも1種である硫化物固体電解質である。
前記複合アニオンが、前記構造のアニオン又はそれらの組み合わせであると、リチウムイオン電池の成分として用いた際に、リチウムイオン電池が熱暴走しても、その発生した熱により複合アニオンが分解し、熱暴走を停止させ、優れたシャットダウン性能を発現するため好ましい。また、これらの構造の複合アニオンは、後記する硫化物固体電解質の製造での加熱による分解が抑えられるため好ましい。
本実施形態の第六の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、
リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む原料含有物と、複合アニオンの塩と、溶媒とを、混合すること、溶媒を除去すること、加熱すること、を含む、アルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質の製造方法。硫化物固体電解質の製造方法である。
本実施形態の第六の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法により、第一の態様から第五の態様に係る硫化物固体電解質を製造することができる。
前記製造方法によれば、従来の硫化物固体電解質の製法工程において、原料含有物とともに複合アニオンの塩を用いることで、複合アニオンをその結晶構造中に含む、硫化物固体電解質を製造することができる。
本実施形態の第七の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第六の態様において、
前記複合アニオンが、NO 、SO 2-、CO 2-、CO2-及びBF から選ばれる少なくとも1種である硫化物固体電解質の製造方法である。
複合アニオンが、前記構造の複合アニオンであると、第五の態様に係る硫化物固体電解質が簡便に得られるため好ましい。
本実施形態の第八の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第六又は第七の態様において、
前記溶媒が、前記原料含有物と錯化物を形成する錯化剤を含む硫化物固体電解質の製造方法である。
後記する錯化剤を含むことで、錯化剤を含む錯化物が形成され、錯化物を経由することで、PS 3-ユニットが選択的に合成することができ、その製造時に投下するエネルギー量を削減できるため好ましい。
前記溶媒には、前記原料含有物と錯化物を形成する錯化剤とともに、更に必要に応じて使用するハロゲン化リチウム等の原料含有物をすべて溶解又はその一部を溶解する溶媒が含まれていると好ましい。これにより、前記原料含有物及び前記複合アニオンの塩が全て又はその一部が溶解し、反応速度が速くなるため好ましい。また、錯化物を経由する場合には、製造工程において、高温とする必要がなく、PS 3-が形成され、その後必要に応じて、後記する溶媒を留去、後記する錯化剤の除去することで、アルジロダイト相を有する硫化物固体電解質が製造できるため好ましい。このように錯化剤を用いることで、製造工程に複合アニオンが分解される高温の加熱が不要となるため、複合アニオンの分解が抑制でき、硫化物固体電解質が優れたシャットダウン性能を発現するため好ましい。
本実施形態の第九の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第六~八のいずれかの形態において、
前記溶媒に対する前記複合アニオンの塩の溶解度が、10g/L以上である硫化物固体電解質の製造方法である。
前記溶媒に対する前記複合アニオンの塩の溶解度が前記の範囲であると、原料含有物、複合アニオンの塩及び溶媒を混合する際に、複合アニオンの塩が溶媒に溶解し、硫化物固体電解質中に取り込まれやすくなるため好ましい。複合アニオンの塩が溶媒に溶解することで、十分な量の複合アニオンが、短時間で硫化物固体電解質に含まれることになるため好ましい。
本実施形態の第十の態様に係る硫化物固体電解質の製造方法は、前記の第六~九のいずれかの形態において、
前記溶媒を除去すること、及び前記加熱すること、を250℃以下で行う硫化物固体電解質の製造方法である。
前記溶媒を除去すること、及び前記加熱すること、を250℃以下で行うと、複合アニオンの分解を抑制でき、硫化物固体電解質が優れたシャットダウン性能を発現するため好ましい。
本実施形態の第十一の態様に係る電極合材は、
第一の態様から第五の態様に係る硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む、電極合材である。
第一の態様から第五の態様に係る硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有する硫化物固体電解質であり、これを用いた電極合材は優れたシャットダウン性能を有し、電池特性が優れたものとなるため好ましい。
本実施形態の第十二の態様に係る電極合材は、上記第十一の態様において、
第一の態様から第五の態様に係る硫化物固体電解質と、前記硫化物固体電解質とは異なる硫化物固体電解質を少なくとも1種と、電極活物質と、を含む電極合材である。
第一の態様から第五の態様に係る硫化物固体電解質に加えて、前記硫化物固体電解質とは異なる硫化物固体電解質を少なくとも1種を含むことで、更にイオン伝導度が向上するため、これを用いたリチウムイオン電池は電池特性が優れたものとなるため好ましい。
本実施形態の第十三の態様に係るリチウムイオン電池は、
第一の態様から第五の態様に係る硫化物固体電解質及び第十一の態様又は第十二の態様に係る電極合材の少なくとも一方を含むリチウムイオン電池である。
前記硫化物固体電解質及び前記電極合材は、前記のように優れた特性を有するため、これを用いた電極合材は優れたシャットダウン性能を有し、電池特性が優れたものとなるため好ましい。
以下、本実施形態の硫化物固体電解質、硫化物固体電解質の製造方法、電極合材、及びリチウムイオン電池について、前記の実施態様に即しながら、より詳細に説明する。
〔アルジロダイト型結晶構造を含む硫化物固体電解質〕
本実施形態におけるアルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質は、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=30.0°に現れるLiPS結晶構造に起因する回折ピークに対応する回折ピークが低角側にシフトした、回折ピークを有し、複合アニオン、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子から構成される、アルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質であることを要する。
低角側にシフトは、前記したとおりである。
前記アルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質は、結晶性の硫化物固体電解質であり、X線回折測定においてX線回折パターンに、固体電解質由来のピークが観測される固体電解質であって、これらの硫化物固体電解質の原料由来(原料含有物)のピークの有無は問わない材料である。すなわち、アルジロダイト型結晶構造に由来する結晶構造を含み、その一部が該固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該固体電解質に由来する結晶構造であってもよい、ものである。そして、アルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質は、上記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶性硫化物固体電解質(「ガラス成分」とも称される。)が含まれていてもよいものである。したがって、アルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質には、非晶性固体電解質(ガラス成分)を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。
また、本明細書において、非晶性硫化物固体電解質(ガラス成分)とは、X線回折測定においてX線回折パターンが実質的に材料由来のピーク以外のピークが観測されないハローパターンであるもののことであり、固体電解質の原料(原料含有物)由来のピークの有無は問わないものであることを意味する。
本明細書において、「固体電解質」とは、窒素雰囲気下25℃で固体を維持する電解質を意味する。本実施形態の「硫化物固体電解質」は、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含むことことを要し、更にハロゲン原子を含むことが好ましい。硫化物固体電解質は、リチウム原子を含むことで、リチウムイオンに起因するイオン伝導度を有する固体電解質となる。
<複合アニオン>
本実施形態におけるアルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質は、複合アニオンを含むことを要する。複合アニオンは、前記のように複数の種類の原子を含むアニオンである。複合アニオンに含まれる原子としては、硫黄原子、酸素原子、窒素原子、炭素原子、ホウ素原子、水素原子、ハロゲン原子及びリン原子から選ばれる2以上の原子が好ましい。ただし、リン原子及び硫黄原子のみを含む複合アニオンは除く。
複合アニオンは、NO 、SO 2-、CO 2-、CO2-及びBF から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を両立させるために、NO 、SO 2-及びBF から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、NO 及びBF から選ばれる少なくとも1種がより更に好ましく、NO が特に好ましい。
複合アニオンが前記のような構造であると、熱暴走時の発熱により分解し、優れたシャットダウン性能を有し、またこれを含む硫化物固体電解質は高いイオン伝導度を示すため好ましい。また、これら構造であると、硫化物固体電解質を製造する際に必要に応じて行う加熱による分解が抑えられるため、製造された硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有するため好ましい。
前記複合アニオンの含有量が、前記硫化物固体電解質に含まれるリチウム原子1.0molに対して、0.20mol以下であると、硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度を示すため好ましい。
複合アニオンの含有量の上限値としては、高いイオン伝導度が得られるため、0.18mol以下であることがより好ましく、0.16mol以下であることが更に好ましく、0.14mol以下であることがより更に好ましく、0.13mol以下であることが特に好ましい。
複合アニオンの含有量の下限値としては、優れたシャットダウン性能が得られるため、0.0010mol以上であることが好ましく、0.0040mol以上であることがより好ましく、0.0080mol以上であることが更に好ましく、0.0120mol以上であることがより更に好ましく、0.0140mol以上であることが特に好ましい。
複合アニオンの含有量は、例えば実施例記載の方法で決定することができる。
<硫化物固体電解質>
本実施形態の硫化物固体電解質は、複合アニオン、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子から構成される、アルジロダイト型結晶構造を含むことを要する。
より高いイオン伝導度を得る観点から、アルジロダイト型結晶構造を主結晶として含むものであることが好ましい。本明細書において、「主結晶として含む」とは、結晶構造のうち対象となる結晶構造の割合が80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質は、より具体的には、Li7-xiPS6-xiXIxi(式中、XIは、1価の複合アニオンを表し、xiは、0より大きく、1.8以下を表す。)又はLiPS6-xiiXIIxii(式中、XIIは、2価の複合アニオンを表し、xiiは、0より大きく、1.8以下を表す。)であることが好ましい。これらの組成式において、XI、XIIは一種の複合アニオンでもよいし、二種以上の複合アニオンでもよい。また、XI及びXIIの両方を含むものであってもよく、この場合はxi及びxiiの合計が1.8以下となるようにXI及びXIIが含まれる。
前記式中、XIは、1価の複合アニオンを表すが、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を両立させるために、NO 又はBF がより好ましく、NO がより更に好ましい。
XIIは、2価の複合アニオンを表すが、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を両立させるために、SO 2-、CO 2-又はCO2-が好ましく、SO 2-又はCO 2-がより好ましく、SO 2-が更に好ましい。
前記式中、xiは、硫化物固体電解質中の、1価の複合アニオンの含有量に対応し、、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を両立させるため、これらはそれぞれ独立して、0.01以上1.40以下であることが好ましく、0.05以上1.20以下であることがより好ましく、0.10以上1.00以下であることが更に好ましい。
xiiは、硫化物固体電解質中の、2価の複合アニオンの含有量に対応するが、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を両立させるため、これらはそれぞれ独立して、0.01以上1.40以下であることが好ましく、0.05以上1.20以下であることがより好ましく、0.10以上1.00以下であることが更に好ましい。
<アルジロダイト型結晶構造及びその回折ピーク>
LiPS結晶構造のアルジロダイト系結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=15.3°、17.7°、30.0°、31.1°、44.9°、47.7°付近に現れる。本実施形態の硫化物固体電解質もアルジロダイト型結晶構造を含むため、これらに対応する回折ピークを有するが、2θ=30.0°に対応する回折ピークは低角側にシフトしている。
なお、本明細書においてピーク位置については、0.5°の範囲内で前後していてもよい。このように回折ピークのピーク位置は前後する場合はあるが、上記の(X線回折測定方法)により標準物質及び硫化物固体電解質を含む混合物を測定することで、標準物質であるLiPSの2θ=30.0°に現れる回折ピーク及び硫化物固体電解質が有するLiPS結晶構造のピークは同じように前後する。そのため、ピーク位置が上記範囲内で前後したとしても、シフト角としては0.5°の範囲内で前後することはない。
前記低角側にシフトした回折ピークが、低角側に0.001°以上シフトしているものであることで、本実施形態の硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有する硫化物固体電解質となる。より優れたシャットダウン性能を発現する観点から、、シフト角の下限値としては、0.002°以上であることがより好ましく、0.005°以上であることがより好ましく、0.010°以上であることがより好ましい。
シフト角の上限値は、イオン伝導度を高くするため、1.0°以下であることが好ましく、0.5°以下であることがより好ましく、0.2°以下であることがより好ましく、0.15°以下であることがより好ましい。
前記シフト角の具体的な測定方法は、上記の(X線回折測定方法)により測定することができる。より詳細な方法については、実施例に詳述するが、測定試料に内部標準(LiPS)を加えることでXRD測定することで決定することができる。内部標準(LiPS)の2θ=30.0°に現れるアルジロダイト型結晶構造に起因する回折ピークと、それに対応する複合アニオンを含む硫化物固体電解質の回折ピークの2θを読み取り、その差から前記シフト角を求めることができる。
本実施形態の硫化物固体電解質は、より高いイオン伝導度を得る観点から、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであるか否かは、結晶性LiPSに見られる2θ=17.5°、26.1°の回折ピークの有無により確認でき、本明細書では、当該回折ピークを有しないか、有している場合であってもアルジロダイト型結晶構造の回折ピークに比べて極めて小さいピークが検出される程度であれば、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであるとする。
本実施形態の硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の固体電解質の平均粒径(D50)は、製造される固体電解質の粒径が要求される粒径となるため、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましく、0.05μm以上であることがより更に好ましく、0.1μm以上であることがより更に好ましく、イオン伝導度の低下が抑制できることから100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることよりが好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、3μm以下であることがより更に好ましい。
(硫化物固体電解質のその他性状)
本実施形態の硫化物固体電解質のイオン伝導度は、通常1.00×10-5S/cm以上のものとなり、更に、0.80×10-4S/cm以上、1.00×10-4S/cm以上、1.05×10-4S/cm以上、1.08×10-4S/cm以上となり得る。上限値は高いほど好ましく、特に限定されない。
本実施形態の硫化物固体電解質が含む複合アニオンの分解開始温度としては、熱暴走時にシャットダウン性能が発揮されるため、上限値は230℃以下であることが好ましく、210℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが更に好ましく、190℃以下であることがより更に好ましい。通常使用時の分解が抑え、リチウムイオン電池の電池特性を高くするために、下限値は160℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、175℃以上であることが更に好ましく、180℃以上であることがより更に好ましい。
(非晶性硫化物固体電解質)
前記の非晶性硫化物固体電解質としては、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子、好ましくは更にハロゲン原子を含み、代表的なものとしては、例えば、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウムと硫化リン、更に好ましくはハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質;酸素原子、珪素原子等の他の原子を含む、例えば、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS-P-LiI等の固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、硫化リチウムと硫化リンとから構成されるLiS-P、またLiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質が好ましく挙げられる。
非晶性硫化物固体電解質を構成する原子の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
非晶性硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の非晶性硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm~500μm、0.1~200μmの範囲内を例示できる。
〔硫化物固体電解質の製造方法〕
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、
リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む原料含有物と、複合アニオンの塩と、溶媒とを、混合すること、溶媒を除去すること、加熱すること、を含む、アルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質の製造方法であることを要する。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法により、前記のアルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質を製造することができる。
<原料含有物>
本実施形態の原料含有物は、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含むことを要するが、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子から選ばれる少なくとも1種を含む化合物を、1種又は2種以上用いてもよい。
すなわち、本実施形態においては、前記のLiPSを原料含有物として用いることもでき、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子、必要に応じてハロゲン原子の少なくとも一つ以上の原子を含む化合物の二種以上を原料含有物として用いることもできる。既述のように、本実施形態における硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及び複合アニオンを含むものであることから、二種以上の化合物が採用される原料として、アルカリ金属原子、硫黄原子及びリン原子、必要に応じてハロゲン原子が含まれる。
原料として用い得る化合物は、アルカリ金属原子、硫黄原子及びリン原子、必要に応じてハロゲン原子の少なくとも一つの原子を含むものであり、より具体的には、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の硫化アルカリ金属;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウムなどのハロゲン化アルカリ金属;三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン;各種フッ化リン(PF、PF)、各種塩化リン(PCl、PCl、PCl)、各種臭化リン(PBr、PBr)、各種ヨウ化リン(PI、P)等のハロゲン化リン;フッ化チオホスホリル(PSF)、塩化チオホスホリル(PSCl)、臭化チオホスホリル(PSBr)、ヨウ化チオホスホリル(PSI)、二塩化フッ化チオホスホリル(PSClF)、二臭化フッ化チオホスホリル(PSBrF)等のハロゲン化チオホスホリル;などの上記四種の原子から選ばれる少なくとも二種の原子からなる原料、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、好ましくは臭素(Br)、ヨウ素(I)が代表的に挙げられる。
上記以外の原料として用い得る化合物としては、例えば、上記四種の原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含み、かつ該四種の原子以外の原子を含む化合物、より具体的には、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物;硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム、硫化ホウ素、硫化ガリウム、硫化スズ(SnS、SnS)、硫化アルミニウム、硫化亜鉛等の硫化金属;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のリン酸化合物;ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ケイ素、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化セレン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化テルル、ハロゲン化ビスマス等のハロゲン化金属;オキシ塩化リン(POCl)、オキシ臭化リン(POBr)等のオキシハロゲン化リン;などが挙げられる。
本実施形態においては、より容易に高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る観点から、リチウム原子がより好ましく、またハロゲン原子の中でも塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子、ヨウ素原子がより好ましい。また、これらの原子は単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
また、同様の観点から、原料に用い得る化合物としては、上記の中でも、硫化リチウム、硫化ナトリウム等の硫化アルカリ金属、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウムが好ましく、硫化アルカリ金属の中でも硫化リチウムが好ましく、硫化リンの中でも五硫化二リンが好ましく、ハロゲン単体の中でも塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が好ましく、臭素(Br)、ヨウ素(I)がより好ましく、ハロゲン化リチウムの中でも塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムが好ましく、臭化リチウム、ヨウ化リチウムがより好ましい。
原料に用い得る化合物の組合せとしては、例えば、硫化リチウムと五硫化二リンとの組合せ、ハロゲン原子を含む化合物を用いる場合は、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムの組合せ、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン単体の組合せが好ましく挙げられ、ハロゲン化リチウムとしては臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化リチウムが好ましく、ハロゲン単体としては臭素及びヨウ素が好ましい。
本実施形態においては、硫化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン単体、その他の化合物は、上記の例示したものを単独で、又は複数種を組合せて用いることが可能である。
本実施形態でアルカリ金属を含む化合物として硫化リチウムが用いられる場合、硫化リチウムは粒子であることが好ましい。
硫化リチウム粒子の平均粒径(D50)は、10μm以上2000μm以下であることが好ましく、30μm以上1500μm以下であることがより好ましく、50μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。また、上記の原料として例示したもののうち固体の原料については、上記硫化リチウム粒子と同じ程度の平均粒径を有するものが好ましい、すなわち上記硫化リチウム粒子の平均粒径と同じ範囲内にあるものが好ましい。
原料含有物として、硫化リチウムと、五硫化二リンと、を用いる場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの合計に対する硫化リチウムの割合は、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を得るため、更により高い化学的安定性を得るために、好ましくは60mol%以上、より好ましくは65mol%以上、更に好ましくは68mol%以上であり、上限として好ましくは80mol%以下、より好ましくは78mol%以下、更に好ましくは76mol%以下である。
<複合アニオンの塩>
本実施形態の複合アニオンの塩は、前記複合アニオンと後記するカチオンとの塩であることが好ましい。複合アニオンは前記したとおりである。
カチオンとしては、アンモニウムイオン又はピリミジニウムイオン等の有機系カチオンでも良いが、製造された硫化物固体電解質に残存していても、イオン伝導度及びシャットダウン性能の低下を抑えられるため金属イオンであることが好ましく、原料含有物に含まれる金属原子に対応する金属イオンであることが好ましく、特にリチウムイオンであることが好ましい。
より具体的には、複合アニオンの塩は、LiNO、LiSO、LiCO、LiBF、NaNO、NaSO、NaCO、NaBF、KNO、KSO、KCO、KBF、AgNO、AgSO、AgCO、AgBF、Pb(NO、PbSO、PbCO、Pb(BF、Sr(NO、SrSO、SrCO、Sr(BF、Ba(NO、BaSO、BaCO、Ba(BF、、NHNO、(NHSO、(NHCO又はNHBFが好ましく、LiNO、LiSO、LiCO、LiBF、NaNO、NaSO、NaCO、NaBF、KNO、KSO、KCO又はKBFがより好ましく、LiNO、LiSO、LiCO又はLiBFが更に好ましく、LiNO、LiSO又はLiBFがより更に好ましく、LiNOが特に好ましい。
これらは単独又は複数を組み合わせて使用することが好ましく、製造工程の簡便さから単独で使用することが好ましい。
<溶媒>
本実施形態の溶媒は、前記原料含有物と錯化物を形成する錯化剤、前記複合アニオンの塩を溶解する溶媒、必要に応じて使用するハロゲン化リチウムを溶解する溶媒及びその他の溶媒から選ばれる1種又は2種以上の混合物が好ましい。
本実施形態の溶媒は、広く有機溶媒と称される各種溶媒等を用いることができる。
これら溶媒は、明確に区別されるものではなく、前記錯化剤が、前記複合アニオンの塩を溶解する溶媒及び/又は必要に応じて使用するハロゲン化リチウムを溶解する溶媒としての機能を有していてもよく、前記複合アニオンの塩を溶解する溶媒が、必要に応じて使用するハロゲン化リチウムを溶解する溶媒としての機能を有していてもよい。
これら溶媒を2種以上用いてもよいが、前記ハロゲン化リチウム及び/又は前記複合アニオンの塩を溶解する溶媒並びに前記錯化剤は、1種でそれら効果を同時に発現してもよい。また、前記溶媒として2種以上の溶媒を組み合わせて使用する場合には、それら溶媒の中で相対的に錯化剤としての機能をより発現する溶媒、相対的に複合アニオンの塩を溶解する溶媒としての機能をより発現する溶媒、相対的にハロゲン化リチウムを溶解する溶媒としての機能をより発現する溶媒というような態様であってもよい。
前記原料含有物が、ハロゲン化リチウムを含む場合には、前記錯化剤がハロゲン化リチウムを溶解する溶媒としての機能を発現しても、複合アニオンの塩を溶解する溶媒がハロゲン化リチウムを溶解する溶媒としての機能を発現してもよい。
その他の溶媒としては、前記原料含有物及び前記複合アニオンの塩の溶解度が低い溶媒が好ましい。
本実施形態の溶媒として、前記原料含有物と錯化物を形成する錯化剤を含むことが好ましいが、この錯化剤も、前記複合アニオンの塩を溶解する溶媒としての機能を発現してもよい。
溶媒を用いる場合、溶媒の使用量は、原料含有物の合計量1kgに対して、好ましくは100mL以上、より好ましくは200mL以上、更に好ましくは250mL以上、より更に好ましくは300mL以上であり、上限として好ましくは3000mL以下、より好ましくは2500mL以下、更に好ましくは2000mL以下、より更に好ましくは1550mL以下である。溶媒の使用量が上記範囲内であると、効率よく原料を反応させることができる。
溶媒は、溶質である原料含有物及び複合アニオンの種類により異なるが、25℃において、前記溶媒に対する前記複合アニオンの塩の溶解度が、10g/L以上であることが好ましい。複合アニオンが完全に溶解していると均一に、且つ短時間で原料含有物に取り込まれるため好ましい。使用する溶媒の量により複合アニオンが完全に溶解していない、スラリーの状態となることもあるが、溶解している複合アニオンが、硫化物固体電解質に取り込まれると更に固体として存在する複合アニオンが、順次溶解して硫化物固体電解質に取り込まれるため、複合アニオンは完全に溶解していなくてもよい。
溶媒の前記複合アニオンの塩の溶解度は、13g/L以上であることがより好ましく、15g/L以上であることがより好ましい。上限値は特に制限はないが、通常使用される溶媒では、30g/L以下となることが多い。
本明細書において溶解度は、溶媒1Lに対する複合アニオンの塩の飽和量(g)で定義される。
(錯化剤)
前記溶媒が、前記原料含有物と錯化物を形成する錯化剤を含むと、低温で硫化物固体電解質を製造することができ、製造中に複合アニオンが分解することを抑えられるため好ましい。
また、原料化合物を錯化物とすることで、複合アニオンの塩と混合して、混合アニオンが硫化物固体電解質中に均一に取り込まれるため好ましい。混合アニオンが硫化物固体電解質中に均一に存在することで、硫化物固体電解質全体でシャットダウン性能を発現するため、熱暴走等が生じても、素早くその連鎖を断ち切ることができるため好ましい。
錯化剤としては、炭素原子、水素原子以外の原子、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む溶媒が好ましい。ヘテロ原子として酸素原子を含む、例えばエーテル溶媒、エステル溶媒の他、アルコール系溶媒、アルデヒド系溶媒、ケトン系溶媒も好ましく挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレンオキサイドグリコールジメチルエーテル(トリグリム)、またジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族エーテル;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等の脂環式エーテル;フラン、ベンゾフラン、ベンゾピラン等の複素環式エーテル;メチルフェニルエーテル(アニソール)、エチルフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテルが好ましく挙げられる。
エステル溶媒としては、例えば蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル等の脂肪族エステル;シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル等の脂環式エステル;ピリジンカルボン酸メチル、ピリミジンカルボン酸メチル、アセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等の複素環式エステル;安息香酸メチル、安息香酸エチル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、トリメチルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等の芳香族エステルが好ましく挙げられる。
また、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ジメチルホルムアミド等のアルデヒド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒等が好ましく挙げられる。
これらアルコール系溶媒、アルデヒド系溶媒及びケトン系溶媒は、錯化剤としての機能も有するが、必要に応じて使用するハロゲン化リチウムを溶解する溶媒としても、好ましい。このため、特に錯化剤としてのエステル溶媒と組み合わせて使用すると、エステル溶媒により錯化したPS 3-が、アルコール系溶媒等により溶解したハロゲン化リチウムと円滑にアルジロダイト相を形成するため好ましい。アルコール系溶媒は複合アニオンの塩を溶解する溶媒としても好ましく、詳細は後記する。
また、アルコール系溶媒は、後記する複合アニオンの塩を溶解する溶媒としても有用であり、ハロゲン化リチウムを溶解する溶媒としての役目、複合アニオンの塩を溶解する溶媒としての役目も果たすものである。
ヘテロ原子として窒素原子を含む溶媒としては、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ニトリル基等の窒素原子を含む基を有する溶媒が挙げられる。
例えば、アミノ基を有する溶媒としては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジメチルエチレンジアミン、ジエチルエチレンジアミン、ジメチルジアミノプロパン、テトラメチルジアミノメタン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、テトラメチルジアミノプロパン(TMPDA)等の脂肪族アミン;シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式アミン;イソホロンジアミン、ピペラジン、ジピペリジルプロパン、ジメチルピペラジン等の複素環式アミン;フェニルジアミン、トリレンジアミン、ナフタレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、ジメチルナフタレンジアミン、ジメチルフェニレンジアミン、テトラメチルフェニレンジアミン、テトラメチルナフタレンジアミン等の芳香族アミンが好ましく挙げられる。
ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アクリロニトリル、ニトロベンゼン等の窒素原子を含む溶媒も好ましく挙げられる。
ヘテロ原子としてハロゲン原子を含む溶媒として、ジクロロメタン、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン等が好ましく挙げられる。
また、硫黄原子を含む溶媒としては、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等が好ましく挙げられる。
錯化剤を用いる場合、錯化剤の使用量は、原料含有物の合計量1kgに対して、好ましくは100mL以上、より好ましくは200mL以上、更に好ましくは250mL以上、より更に好ましくは300mL以上であり、上限として好ましくは3000mL以下、より好ましくは2500mL以下、更に好ましくは2000mL以下、より更に好ましくは1550mL以下である。溶媒の使用量が上記範囲内であると、効率よく原料を反応させることができる。
(複合アニオンの塩を溶解する溶媒)
前記溶媒が、前記複合アニオンの塩を溶解する溶媒を含むと、原料含有物と、複合アニオンの塩とを混合する際に、溶解した複合アニオンが、原料混合物に取り込まれやすくなり、混合の処理時間を短くすることができるため好ましい。また複合アニオンが溶解することで、硫化物固体電解質中に均一に取り込まれ、優れたシャットダウン性能を有する硫化物固体電解質が得られるため好ましい。
複合アニオンの塩を溶解する溶媒としては、錯化剤として列挙したものを好ましく使用することができるが、アルコール系溶媒等のプロトン性極性溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルフィニル系溶媒がより好ましく、アルコール系溶媒が更に好ましい。
複合アニオンの塩を溶解する溶媒は、溶質である複合アニオンの種類により異なるが、25℃において、前記複合アニオンの塩を溶解する溶媒に対する前記複合アニオンの塩の溶解度が、10g/L以上であることが好ましい。複合アニオンが完全に溶解していると均一に、且つ短時間で原料含有物に取り込まれるため好ましい。使用する複合アニオンの塩を溶解する溶媒の量により複合アニオンが完全に溶解していない、スラリーの状態となることもあるが、溶解している複合アニオンが、硫化物固体電解質に取り込まれると更に固体として存在する複合アニオンが、順次溶解して硫化物固体電解質に取り込まれるため、複合アニオンは完全に溶解していなくてもよい。
複合アニオンの塩を溶解する溶媒の前記複合アニオンの塩の溶解度は、13g/L以上であることがより好ましく、15g/L以上であることがより好ましい。上限値は特に制限はないが、通常使用される溶媒では、30g/L以下となることが多い。
アルコール系溶媒としては、第一級アルコール、第二級アルコール又は第三級アルコールであってもよく、一価アルコール、二価アルコール又は三価アルコールであってもよい。複合アニオンの溶解性を向上させるためには、一価の第一級アルコールであることが好ましい。
アルコール系溶媒は、炭素原子数が少なく、アルキル鎖が直鎖である方が、複合アニオンの塩を溶解する能力が高いため、炭素数5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましく、2以下であることがより更に好ましい。より具体的には、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、1-ペンタノール又は2-ペンタノールが好ましく、メタノール、エタノール、1-プロピルアルコール又はn-ブチルアルコールがより好ましく、メタノール、エタノール又は1-プロピルアルコールが更に好ましく、エタノールがより更に好ましい。
複合アニオンの塩を溶解する溶媒を用いる場合、複合アニオンの塩を溶解する溶媒の使用量は、原料含有物の合計量1kgに対して、好ましくは100mL以上、より好ましくは200mL以上、更に好ましくは250mL以上、より更に好ましくは300mL以上であり、上限として好ましくは3000mL以下、より好ましくは2500mL以下、更に好ましくは2000mL以下、より更に好ましくは1550mL以下である。溶媒の使用量が上記範囲内であると、効率よく原料を反応させることができる。
(その他の溶媒)
その他の溶媒を用いることで、前記のハロゲン化リチウム等の原料含有物、錯化剤及び複合アニオンの塩を溶解する溶媒の使用量を減少させることができるため好ましい。原料含有物、複合アニオンの塩及び錯化剤を混合する際、その他の溶媒を更に用いることで、その他の溶媒に錯化剤が溶解すると、原料含有物と均一に混合されることになるため好ましい。
その他の溶媒を用いる場合、その他の溶媒の使用量は、原料含有物の合計量1kgに対して、好ましくは100mL以上、より好ましくは200mL以上、更に好ましくは250mL以上、より更に好ましくは300mL以上である。ハロゲン化リチウム等の原料含有物及び複合アニオンの塩の溶解度を保つため、上限として好ましくは3000mL以下、より好ましくは2500mL以下、更に好ましくは2000mL以下、より更に好ましくは1550mL以下である。
その他の溶媒は、溶質であるハロゲン化リチウム等の原料含有物及び複合アニオンの種類により異なるが、25℃において、前記その他の溶媒に対するハロゲン化リチウム等の原料含有物及び前記複合アニオンの塩の溶解度が、2g/L以下であることが好ましい。下限値には特に制限はない。
その他の溶媒としては、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の炭化水素溶媒が好ましい。
脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン等が挙げられる。
<混合すること>
本実施形態において、前記原料含有物と、前記複合アニオンの塩と、前記溶媒とを、混合することを要する。
混合は、撹拌機、混合機、粉砕機等を用いて行うことができる。撹拌機を用いても原料の混合は起こり得るし、また粉砕機により原料の粉砕が生じることとなるが、同時に混合も生じるからである。すなわち、前記原料含有物と、前記複合アニオンの塩と、前記溶媒とを、撹拌、混合、粉砕、又はこれらのいずれかを組合せた処理により行うことができる、ともいえる。
撹拌機、混合機としては、例えば反応槽内に撹拌翼を備えて撹拌(撹拌による混合、撹拌混合とも称し得る。)ができる機械撹拌式混合機が挙げられる。機械撹拌式混合機としては、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられる。また、高速撹拌型混合機としては、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機等が挙げられ、どちらのタイプの混合機を用いてもよい。
機械撹拌式混合機において用いられる撹拌翼の形状としては、ブレード型、アーム型、アンカー型、パドル型、フルゾーン型、リボン型、多段ブレード型、二連アーム型、ショベル型、二軸羽型、フラット羽根型、C型羽根型等が挙げられ、より効率的に原料の反応を促進させる観点から、ショベル型、フラット羽根型、C型羽根型、アンカー型、パドル型、フルゾーン型等が好ましく、アンカー型、パドル型、フルゾーン型がより好ましい。
機械撹拌式混合機を用いる場合、撹拌翼の回転数は、反応槽内の流体の容量、温度、撹拌翼の形状等に応じて適宜調整すればよく特に制限はないが、通常5rpm以上400rpm以下程度とすればよく、より効率的に原料の反応を促進させる観点から、10rpm以上300rpm以下が好ましく、15rpm以上250rpm以下がより好ましく、20rpm以上200rpm以下が更に好ましい。
混合機を用いて混合する際の温度条件としては、特に制限はなく、複合アニオンが分解が生じない又は抑制される温度であればよく、例えば通常-30~120℃、好ましくは-10~100℃、より好ましくは0~80℃、更に好ましくは10~60℃である。また混合時間は、通常0.1~500時間、原料の分散状態をより均一とし、反応を促進させる観点から、好ましくは1~450時間、より好ましくは10~425時間、更に好ましくは20~400時間、より更に好ましくは40~375時間である。
粉砕機を用いて、粉砕を伴う混合を行う方法は、従来より固相法(メカニカルミリング法)として採用されてきた方法である。粉砕機としては、例えば、粉砕媒体を用いた媒体式粉砕機を用いることができる。
媒体式粉砕機は、容器駆動式粉砕機、媒体撹拌式粉砕機に大別される。容器駆動式粉砕機としては、撹拌槽、粉砕槽、あるいはこれらを組合せたボールミル、ビーズミル等が挙げられる。また、媒体撹拌式粉砕機としては、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機;タワーミルなどの塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の撹拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機;一軸又は多軸混練機などの各種粉砕機が挙げられる。中でも、得られる硫化物の粒径の調整のしやすさ等を考慮すると、容器駆動式粉砕機として例示したボールミル、ビーズミルが好ましく、中でも遊星型のものが好ましい。
これらの粉砕機は、所望の規模等に応じて適宜選択することができ、比較的小規模であれば、ボールミル、ビーズミル等の容器駆動式粉砕機を用いることができ、また大規模、又は量産化の場合には、他の形式の粉砕機を用いてもよい。
また、後述するように、混合の際に溶媒等の液体を伴う液状態、又はスラリー状態である場合は、湿式粉砕に対応できる湿式粉砕機であることが好ましい。
湿式粉砕機としては、湿式ビーズミル、湿式ボールミル、湿式振動ミル等が代表的に挙げられ、粉砕操作の条件を自由に調整でき、より小さい粒径のものに対応しやすい点で、ビーズを粉砕メディアとして用いる湿式ビーズミルが好ましい。また、乾式ビーズミル、乾式ボールミル、乾式振動ミル等の乾式媒体式粉砕機、ジェットミル等の乾式非媒体粉砕機等の乾式粉砕機を用いることもできる。
また、混合の対象物が液状態、スラリー状態である場合、必要に応じて循環させる循環運転が可能である、流通式の粉砕機を用いることもできる。具体的には、スラリーを粉砕する粉砕機(粉砕混合機)と、温度保持槽(反応容器)との間で循環させるような形態の粉砕機が挙げられる。
上記ボールミル、ビーズミルで用いられるビーズ、ボールのサイズは、所望の粒径、処理量等に応じて適宜選択すればよく、例えばビーズの直径として、通常0.05mmφ以上、好ましくは0.1mmφ以上、より好ましくは0.3mmφ以上、上限として通常5.0mmφ以下、好ましくは3.0mmφ以下、より好ましくは2.0mmφ以下である。またボールの直径として、通常2.0mmφ以上、好ましくは2.5mmφ以上、より好ましくは3.0mmφ以上、上限として通常20.0mmφ以下、好ましくは15.0mmφ以下、より好ましくは10.0mmφ以下である。
また、材質としては、例えば、ステンレス、クローム鋼、タングステンカーバイド等の金属;ジルコニア、窒化ケイ素等のセラミックス;メノウ等の鉱物が挙げられる。
また、ボールミル、ビーズミルを用いる場合、回転数としては、その処理する規模に応じてかわるため一概にはいえないが、通常10rpm以上、好ましくは20rpm以上、より好ましくは50rpm以上であり、上限としては通常1,000rpm以下、好ましくは900rpm以下、より好ましくは800rpm以下、更に好ましくは700rpm以下である。
また、この場合の粉砕時間としては、その処理する規模に応じてかわるため一概にはいえないが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、上限としては通常100時間以下、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下、更に好ましくは36時間以下である。
使用する媒体(ビーズ、ボール)のサイズ、材質、またロータの回転数、及び時間等を選定することにより、混合、撹拌、粉砕、これらのいずれかを組合せた処理を行うことができ、得られる硫化物の粒径等の調整を行うことができる。
粉砕機としては、超音波を用いて対象物を粉砕し得る機械、例えば超音波粉砕機、超音波ホモジナイザー、プローブ超音波粉砕機等と称される機械を用いることができる。
この場合、超音波の周波数等の諸条件は、所望の硫化物固体電解質の平均粒径等に応じて適宜選択すればよく、周波数は、例えば1kHz以上100kHz以下程度とすればよく、より効率的に硫化物固体電解質を粉砕する観点から、好ましくは3kHz以上50kHz以下、より好ましくは5kHz以上40kHz以下、更に好ましくは10kHz以上30kHz以下である。
また、超音波粉砕機が有する出力としては、通常500~16,000W程度であればよく、好ましくは600~10,000W、より好ましくは750~5,000W、更に好ましくは900~1,500Wである。
<溶媒を除去すること>
溶媒を用いて混合を行った後、混合により得られた流体(通常、スラリー)から溶媒を除去することを要する。溶媒を除去することにより、粉体の硫化物固体電解質の錯化物が得られる。粉体とすることで作業性が向上するため好ましい。
溶媒を除去することにより除去する溶媒は、液体として存在する溶媒を除去することを目的としており、錯化物を形成する錯化剤を除去することを含んでいてもよい。
溶媒を除去することは、混合により得られた流体を、溶媒の種類に応じた温度で行うことができる。
また、通常5~100℃、好ましくは10~85℃、より好ましくは15~70℃、より更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)で真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、溶媒を揮発させて行うことができる。
溶媒を除去することは、流体をガラスフィルター等を用いたろ過、デカンテーションによる固液分離、また遠心分離機等を用いた固液分離により行ってもよい。
固液分離は、具体的には、流体を容器に移し、硫化物が沈殿した後に、上澄みとなる溶媒を除去するデカンテーション、また例えばポアサイズが10~200μm程度、好ましくは20~150μmのガラスフィルターを用いたろ過が容易である。
溶媒を除去することは、前記の方法を組み合わせて行ってもよい。
<加熱すること>
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、加熱することを要する。
加熱には、錯化物から錯化剤を除去するための加熱(錯化剤の除去)及び結晶性の硫化物固体電解質を得るための加熱(結晶化)の少なくとも一方が含まれる。錯化剤の除去及び結晶化はそれぞれ独立に行ってもよいし、一度の加熱で同時に行ってもよい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法は、前記溶媒を除去すること、及び加熱すること、を250℃以下で行うことが好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法において、その製造方法中で、最も温度が高くなるのが、前記溶媒を除去すること、及び加熱すること、である。このため、溶媒を除去すること、及び加熱することの温度の上限値を規定することで、製造中の硫化物固体電解質中の複合アニオンが、硫化物固体電解質の製造中に分解することを抑えることができるためが好ましい。
上限値としては、210℃以下がより好ましく、180℃以下が更に好ましく、160℃以下がより更に好ましい。下限値は特に限定されないが、20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
(錯化剤の除去)
溶媒として、錯化剤を用いる場合には、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む原料含有物と、複合アニオンの塩と、溶媒とを、混合することにより、錯化物が製造される。得られた錯化剤を加熱して(非晶質又は結晶性の)硫化物固体電解質を得ることで、イオン伝導度が高い硫化物固体電解質が得られるため好ましい。
加熱することを、錯化剤の除去を目的として行う場合には、前記混合することの後に行うことが好ましく、溶媒を除去することの後に行うことが好ましい。錯化剤を除去するための加熱と、結晶化のための加熱をともに行う場合には
錯化物を加熱する工程を含むことで、錯化物中の錯化剤が除去され、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、複合アニオン及び必要に応じてハロゲン原子を含む錯分解物が得られる。ここで、錯化物中の錯化剤が除去されることについては、X線回折パターン、ガスクロマトグラフィー分析等の結果から錯化剤が錯化物の共結晶を構成していることが明らかであることに加え、錯化物を加熱することで錯化剤を除去して得られた固体電解質が、錯化剤を用いずに従来の方法により得られた固体電解質とX線回折パターンが同じであることにより裏づけされる。
本実施形態において、硫化物固体電解質は、錯化物を加熱することにより、該錯化物中の錯化剤を除去して得られ、硫化物固体電解質中の錯化剤は少ないほど好ましいものであるが、硫化物固体電解質の性能を害さない程度に錯化剤が含まれていてもよい。硫化物固体電解質中の錯化剤の含有量は、通常10質量%以下となっていればよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。下限値は特に限定されない。
錯化物の加熱温度は、例えば、硫化物固体電解質を得る場合、錯化物を加熱して得られる硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、具体的には、該錯化物を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは20℃以下の範囲とすればよく、下限としては特に制限はないが、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度-40℃以上程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に硫化物固体電解質が得られる。硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、250℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、160℃以下が更に好ましく、下限としては特に制限はないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上である。
加熱時間は、所望の硫化物固体電解質が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
また、加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、または減圧雰囲気(特に真空中)で行なうことが好ましい。硫化物固体電解質の劣化(例えば、酸化)を防止できるからである。加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
(結晶化)
本実施形態において、必要に応じて非晶質硫化物固体電解質は結晶化して、結晶性硫化物固体電解質としてもよい。結晶化によりイオン伝導度が上昇するため好ましい。また、結晶性硫化物固体電解質の結晶をより成長させるため、結晶化することも好ましい。
結晶化は、前記の混合の後、溶媒の除去の後又は錯化剤の除去の後のいずれかで行うことが好ましい。
非晶質硫化物固体電解質を加熱(結晶化)して、結晶性硫化物固体電解質を得る場合、結晶性硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、錯化剤の除去による硫化物固体電解質を得るための前記加熱温度よりも高いことが好ましく、具体的には、非晶質硫化物固体電解質又は非晶質硫化物固体電解質を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上の範囲とすればよく、上限としては、40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは20℃以下の範囲とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に結晶性硫化物固体電解質が得られる。結晶性硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、上限としては複合アニオンの分解を抑えるため、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
加熱時間は、所望の硫化物固体電解質が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
(粉砕すること)
本実施形態は、必要に応じ前記錯化物、硫化物固体電解質を粉砕することを含むことが好ましい。錯化物又は硫化物固体電解質を粉砕することで、粒径の小さい硫化物固体電解質が得られ、均一で薄いセパレータ―層を形成でき、また正極活物質との接触性を向上するため好ましい。
粉砕は、混合することで記載した粉砕機を用いて行うことが好ましい。
粉砕後に、前記結晶化を再度行うことも、イオン伝導度を高くすることができるため好ましい。
粉砕することにより得られる硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、所望に応じて適宜決定されるものであるが、通常0.01μm以上50μm以下であり、好ましくは0.03μm以上5μm以下、より好ましくは0.05μm以上3μm以下である。このような平均粒径とすることで、平均粒径3μm以下という小さい粒径の硫化物固体電解質の要望に対応することが可能となる。
粉砕する時間としては、硫化物固体電解質が所望の平均粒径となる時間であれば特に制限はなく、通常0.1時間以上100時間以内であり、効率的に粒径を所望のサイズとする観点から、好ましくは0.3時間以上72時間以下、より好ましくは0.5時間以上48時間以下、更に好ましくは1時間以上24時間以下である。
本明細書において平均粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定方法により測定した値であり、例えば実施例に記載の方法で測定することができる。
(硫化物固体電解質の用途)
本実施形態の硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有しており、リチウムイオン電池用の電極合材及びリチウムイオン電池に好適に用いられる。
本実施形態の硫化物固体電解質は、正極層に用いてもよく、負極層に用いてもよく、電解質層に用いてもよい。
また、上記リチウムイオン電池は、正極層、電解質層及び負極層の他に集電体を使用することが好ましく、集電体は公知のものを用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、上記の硫化物固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
[電極合材]
本実施形態の電極合材は、前記硫化物固体電解質と、後記する電極活物質を含むことを要する。また、本実施形態の硫化物固体電解質とは異なる硫化物固体電解質を少なくとも1種含むことで、イオン伝導度がより改善し、また本実施形態の硫化物固体電解質の有する優れたシャットダウン性能を発現するため好ましい。
本実施形態の硫化物固体電解質とともに本実施形態の硫化物固体電解質とは異なる硫化物固体電解質を用いる場合には、本実施形態の硫化物固体電解質の硫化物固体電解質全量基準における含有量は、優れたシャットダウン性能を発現するためには、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。上限値は特に限定されず、実質的に100質量%であることが好ましい。
(電極活物質)
電極活物質としては、電極合材が正極、負極のいずれに用いられるかに応じて、各々正極活物質、負極活物質が採用される。
正極活物質としては、負極活物質との関係で、イオン伝導度を発現させる原子として採用される原子、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な正極活物質としては、酸化物系正極活物質、硫化物系正極活物質等が挙げられる。
酸化物系正極活物質としてはLMO(マンガン酸リチウム)、LCO(コバルト酸リチウム)、NMC(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、NCA(ニッケルコバルトアルミ酸リチウム)、LNCO(ニッケルコバルト酸リチウム)、オリビン型化合物(LiMeNPO、Me=Fe、Co、Ni、Mn)等のリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましく挙げられる。
硫化物系正極活物質としては、硫黄(S)、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni)等が挙げられる。
また、上記正極活物質の他、セレン化ニオブ(NbSe)等も使用可能である。
正極活物質は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
負極活物質としては、イオン伝導度を発現させる原子として採用される原子、好ましくはリチウム原子と合金を形成し得る金属、その酸化物、当該金属とリチウム原子との合金等の、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な負極活物質としては、電池分野において負極活物質として公知のものを制限なく採用することができる。
このような負極活物質としては、例えば、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属リチウム又は金属リチウムと合金を形成し得る金属、これら金属の酸化物、またこれら金属と金属リチウムとの合金等が挙げられる。
本実施形態で用いられる電極活物質は、その表面がコーティングされた、被覆層を有するものであってもよい。
被覆層を形成する材料としては、硫化物固体電解質においてイオン伝導度を発現する原子、好ましくはリチウム原子の窒化物、酸化物、又はこれらの複合物等のイオン伝導体が挙げられる。具体的には、窒化リチウム(LiN)、LiGeOを主構造とする、例えばLi4-2xZnGeO等のリシコン型結晶構造を有する伝導体、LiPO型の骨格構造を有する例えばLi4-xGe1-x等のチオリシコン型結晶構造を有する伝導体、La2/3-xLi3xTiO等のペロブスカイト型結晶構造を有する伝導体、LiTi(PO等のNASICON型結晶構造を有する伝導体等が挙げられる。
また、LiTi3-y(0<y<3)、LiTi12(LTO)等のチタン酸リチウム、LiNbO、LiTaO等の周期表の第5族に属する金属の金属酸リチウム、またLiO-B-P系、LiO-B-ZnO系、LiO-Al-SiO-P-TiO系等の酸化物系の伝導体等が挙げられる。
被覆層を有する電極活物質は、例えば電極活物質の表面に、被覆層を形成する材料を構成する各種原子を含む溶液を付着させ、付着後の電極活物質を好ましくは200℃以上400℃以下で焼成することにより得られる。
ここで、各種原子を含む溶液としては、例えばリチウムエトキシド、チタンイソプロポキシド、ニオブイソプロポキシド、タンタルイソプロポキシド等の各種金属のアルコキシドを含む溶液を用いればよい。この場合、溶媒としては、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を用いればよい。
また、上記の付着は、浸漬、スプレーコーティング等により行えばよい。
焼成温度としては、製造効率及び電池性能の向上の観点から、上記200℃以上400℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以上390℃以下であり、焼成時間としては、通常1分~10時間程度であり、好ましくは10分~4時間である。
被覆層の被覆率としては、電極活物質の表面積を基準として好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは100%、すなわち全面が被覆されていることが好ましい。また、被覆層の厚さは、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、上限として好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下である。
被覆層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、被覆層の厚さを測定することができ、被覆率は、被覆層の厚さと、元素分析値、BET比表面積と、から算出することができる。
(その他の成分)
本実施形態の電極合材は、前記の硫化物固体電解質、電極活物質の他、例えば導電材、結着剤等のその他成分を含んでもよい。すなわち、本実施形態の電極合材の製造方法は、前記の硫化物固体電解質、電極活物質の他、例えば導電材、結着剤等のその他成分を用いてもよい。導電剤、結着剤等のその他成分は、前記の硫化物固体電解質と、電極活物質と、を混合することにおいて、これらの硫化物固体電解質及び電極活物質に、さらに加えて混合して用いればよい。
導電材としては、電子伝導性の向上により電池性能を向上させる観点から、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛、難黒鉛化性炭素等の炭素系材料が挙げられる。
結着剤を用いることで、正極、負極を作製した場合の強度が向上する。
結着剤としては、結着性、柔軟性等の機能を付与し得るものであれば特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ブチレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマー、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポロビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン樹脂等の各種樹脂が例示される。
電極合材における、電極活物質と硫化物固体電解質との配合比(質量比)としては、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは99.5:0.5~40:60、より好ましくは99:1~50:50、更に好ましくは98:2~60:40である。
導電材を含有する場合、電極合材中の導電材の含有量は特に制限はないが、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、上限として好ましくは10質量%以下、好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
また、結着剤を含有する場合、電極合材中の結着剤の含有量は特に制限はないが、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、上限として好ましくは20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
〔リチウムイオン電池〕
本実施形態のリチウムイオン電池は、前記の本実施形態の硫化物固体電解質及び前記の電極合材から選ばれる少なくとも一方を含む、ことを要する。
本実施形態のリチウムイオン電池は、上記の本実施形態の硫化物固体電解質、これを含む電極合材、また別形態の硫化物固体電解質、これを含む電極合材のいずれかを含むものであれば、その構成については特に制限はなく、汎用されるリチウムイオン電池の構成を有するものであればよい。
本実施形態のリチウムイオン電池としては、例えば正極層、負極層、電解質層、また集電体を備えたものであることが好ましい。正極層及び負極層としては本実施形態の電極合材が用いられるものであることが好ましく、また電解質層としては本実施形態の硫化物固体電解質が用いられるものであることが好ましい。
また、集電体は公知のものを用いればよい。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、上記の固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
(1) 測定方法
(1-1) X線回折(XRD)測定 (XRDパターン)
XRD測定により、得られた結晶性の硫化物固体電解質を測定した。
下記の測定サンプルを、直径20mm、深さ0.2mmの溝に充填し、ガラスで均して試料とした。この試料を、XRD用カプトンフィルムでシールして空気に触れさせずに測定した。
株式会社MACサイエンスの粉末X線回折測定装置M03xrfを用いて以下の条件にて実施した。
管電圧:40kV
管電流:40mA
X線波長:Cu-Kα線(1.5418Å)
光学系:集中法
スリット構成:ソーラースリット0.5°(入射側・受光側共に)、発散スリット0.3mm、モノクロメータを使用)
検出器:半導体検出器
測定範囲:2θ=10-60deg
ステップ幅、積算時間:0.05deg、10秒/deg
測定サンプル:各例で製造した硫化物固体電解質
シフト角の測定は、測定サンプルとして後記のものを使用し、内部標準として使用したLiPSの2θ=30.0°の回折ピークのピーク位置とそれに対応する各例の回折ピークのピーク位置から算出した。各例で製造した硫化物固体電解質単独のXRDパターンから、2θ=30.0°に現れるLiPS結晶構造に起因する回折ピークのピーク位置及びこれに対応する回折ピークのピーク位置は確認できるので、この値を参考にXRDパターンのピークを帰属することができる。この方法によれば、シフト角に含まれる誤差を抑えることができる。
測定サンプル:各例で製造した硫化物固体電解質の粉末90質量部に内部標準として後記するLiPSの製造に記載した方法により製造したLiPSを10質量部添加し、均一に撹拌したものを使用した。
(1-2) 複合アニオンの分解観測(TG-DTA測定、分解開始温度)
示差熱・熱重量同時測定装置(TG-DTA、メトラー・トレド社、機種名:TGA/DSC1)により、各例で製造した硫化物固体電解質を測定した。室温から10℃/分の速度で昇温し、TG曲線により減量が確認され、DTA曲線から発熱が観測された場合に、複合アニオンの分解が生じたと判定した。分解の開始温度は、DTA曲線において、ベースラインから5%の発熱が見られた温度(℃)とした。
表1に、各硫化物固体電解質の分解の開始温度(分解開始温度(℃))を示す。
(1-3) イオン伝導度の測定
各例で製造した硫化物固体電解質のイオン伝導度の測定は、以下のようにして行った。
硫化物固体電解質から、直径10mm(断面積S:0.785cm)、高さ(L)0.1~0.3cmの円形ペレットを成形して試料とした。その試料の上下から電極端子を取り、25℃において交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:1MHz~100Hz、振幅:10mV)、Cole-Coleプロットを得た。高周波側領域に観測される円弧の右端付近で、-Z’’(Ω)が最小となる点での実数部Z’(Ω)を電解質のバルク抵抗R(Ω)とし、以下式に従い、イオン伝導度σ(S/cm)を計算した。
R=ρ(L/S)
σ=1/ρ
(1-4) 電池特性(CV測定(不可逆容量の評価)
不可逆容量を評価するため、下記のCV測定用セルを用いた。
実施例で得られた硫化物固体電解質及びデンカブラック粒状品(粒径:35nm、デンカ株式会社製)を合計100mg(硫化物固体電解質:デンカブラック(質量比)=85:15)を乳鉢を用いて10分間混合し、測定用粉体(1)を得た。
直径10mmの電池セルに、セパレーター層用の電解質100mgを加え、SUS製金型で10MPa/cmで120°ずつ回転させながら3回プレスした後、測定用粉体(1)を50mg加え、20MPa/cmで120°ずつ回転させながら3回プレスした。次いで、上記測定用粉体(1)の逆側から、20MPa/cmで120°ずつ回転させながら3回プレスした。
上記のセパレーター用の電解質は以下の条件で合成した。
1L撹拌翼付き反応容器に、窒素雰囲気下でLSを20.5g、Pを33.1g、LiIを10.0g、LiBrを6.5g添加した。撹拌翼を回転させた後、トルエン630gを導入し、このスラリーを10分間撹拌した。循環運転可能なビーズミル(「スターミルLMZ015(商品名)」、アシザワファインテック株式会社製、ジルコニア製ビーズ材質:ジルコニア、ビーズ直径:0.5mmφ、ビーズ使用量:456g)に反応容器を接続し、45時間の粉砕処理(ポンプ流量:650mL/min、ビーズミル周速:12m/s、ミルジャケット温度:45℃)を行った。
得られたスラリーを真空下で室温乾燥(25℃)した後、加熱(80℃)を行い非晶性の硫化物固体電解質の白色粉末を得た。さらに、得られた白色粉末を真空下で195℃の加熱を2時間行うことにより、結晶性硫化物固体電解質の白色粉末を得た。結晶性硫化物固体電解質のXRDスペクトルでは2θ=20.2°、23.6°に結晶化ピークが検出され、チオリシコンリージョンII型結晶構造を有していることを確認した。また、得られた結晶性固体電解質の平均粒径(D50)は4.5μm、イオン伝導度は5.0mS/cmであった。
セパレーター層用の電解質の測定用粉体(1)とは逆側にInLi箔(層構造をなし、「/」は各層間を意味する。In:10mmφ×0.1mm/Li:9mmφ×0.08mm/SUS:10mmφ×0.1mm)を設け、6MPa/cmで1回プレスした。セルは測定用粉体(1)とInLi箔間で短絡しないよう、絶縁体を挟んだ4本のねじにより固定され、ねじは8N・mのトルクで固定することで測定用セルを得た。
得られた測定用セルを、測定器(「VSP-3(型番)」、Biologic社製)と接続し、下記の条件のもと、CV曲線を得た。
測定温度:25℃
掃引速度:0.1mV/s
電位測定範囲:開回路電圧(+2.7V)→+5.0V→+2.7V
サイクル数:5回
(2)LiPSの製造
硫化リチウム(LiS)及び2.70gの五硫化二リン(P)を、露点を-80℃とした窒素グローブボックス内で、乳鉢と乳棒を使って5分間混合した。
得られた混合物の全量を錯化剤である76gのプロピオン酸エチル及び撹拌子とともに300mLの反応容器に加え、10分間混合した。その後超音波を1時間照射(31kHz、1000W)した。
更に76gのエタノールを追加して、撹拌しながら90℃まで加熱し、液体として存在するプロピオン酸エチル及びエタノールを留去した。
液体の留去後に、120℃に昇温した後、120℃で1時間加熱して、錯化物からプロピオン酸エチルを除去した。
得られた粉末の全量を更に120℃で3時間加熱して、結晶化したLiPSを得た。
(実施例1~7及び比較例1)
前記(2)LiPSの製造において、LiS及びPとともにLi7-xPS6-x(NOのxが、表1に表す値となるようLiNOを更に加える以外は(2)LiPSの製造と同様にして実施例1~7の硫化物固体電解質を製造した。前記(2)LiPSの製造において製造したLiPSを比較例1とした。
得られた各例の硫化物固体電解質のXRD測定結果を図3に示し、更に2θ=30.0°付近の拡大図を図4に示す。これらにより、実施例1~7及び比較例1はいずれもアルジロダイト型結晶構造を含むことが確認できた。
得られた実施例1~7及び比較例1の硫化物固体電解質のシフト角及びイオン伝導度を表1に記載した。実施例1~7で得られた硫化物固体電解質は、有機基を含むことで、回折ピークが、低角側にシフトしていることが確認できた。実施例1~7の硫化物固体電解質は、xが増加するとともに、シフト角が大きくなることが確認でき、それに伴いイオン伝導度も大きくなる傾向が確認できた。
これら硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度を示すことが分かり、リチウムイオン電池材料として使用することができることが確認できた。また実施例1~7の硫化物固体電解質は、複合アニオンの分解が観測でき、優れたシャットダウン性能を有することが確認できた。
(実施例8~14)
実施例1~7で得られた硫化物固体電解質を用いて、前記(1-4) 電池特性に記載した方法でリチウムイオン電池を製造した(実施例8~14)。代表例として、実施例7得られた硫化物固体電解質を用いて製造したリチウムイオン電池(実施例14)の5サイクル目のCV曲線を図5に示す。実施例8~13のリチウムイオン電池も同様なCV曲線が得られ、これら本実施形態のリチウムイオン電池は不可逆容量の点で、実用に耐え得るものであることが確認できた。
本実施形態の硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度及び優れたシャットダウン性能を有しており、電池に、とりわけ、パソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等に用いられる電池に好適に用いられる。また、本実施形態の硫化物固体電解質の製造方法によれば、前記硫化物固体電解質を容易に製造することができる。

Claims (13)

  1. 複合アニオン、リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含むアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物固体電解質であって、下記のCuKα線を用いたX線回折測定方法により測定される回折ピーク2θSEの低角側にシフトする角が0.001°以上である、硫化物固体電解質。
    (X線回折測定方法)
    標準物質であるLiPSと、前記硫化物固体電解質と、の混合物(混合比は、前記LiPS:前記硫化物固体電解質=10質量部:90質量部である。)を測定試料とし、前記測定試料についてCuKα線を用いたX線回折測定を行い、前記硫化物固体電解質が有するLiPS結晶構造に起因する2θ=30.0°に現れる回折ピークに対応する回折ピークを2θSEとする。前記標準物質であるLiPSの2θ=30.0°と前記2θSEとの差を前記低角側にシフトする角とする。
  2. 前記硫化物固体電解質が、更にハロゲン原子を含む、請求項1に記載の硫化物固体電解質。
  3. 前記低角側にシフトする角が、0.001°以上1.0°以下である、請求項1又は2に記載の硫化物固体電解質。
  4. 前記複合アニオンの含有量が、前記硫化物固体電解質に含まれるリチウム原子1.0molに対して、0.20mol以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質。
  5. 前記複合アニオンが、NO 、SO 2-、CO 2-、CO2-及びBF から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質。
  6. リチウム原子、硫黄原子及びリン原子を含む原料含有物と、複合アニオンの塩と、溶媒とを、混合すること、
    溶媒を除去すること、
    加熱すること、
    を含む、アルジロダイト型結晶構造を含む、硫化物固体電解質の製造方法。
  7. 前記複合アニオンが、NO 、SO 2-、CO 2-、CO2-及びBF から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  8. 前記溶媒が、前記原料含有物と錯化物を形成する錯化剤を含む、請求項6又は7に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  9. 前記溶媒に対する前記複合アニオンの塩の溶解度が、10g/L以上である、請求項6~8のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  10. 前記溶媒を除去すること、及び前記加熱すること、を250℃以下で行う、請求項6~9のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質の製造方法。
  11. 請求項1~5のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む、電極合材。
  12. 更に前記硫化物固体電解質とは異なる硫化物固体電解質を少なくとも1種含む、請求項11に記載の電極合材。
  13. 請求項1~5のいずれか1項に記載の硫化物固体電解質及び請求項11又は12に記載の電極合材の少なくとも一方を含む、リチウムイオン電池。
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