以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る排水ますについて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
図1は、本実施形態に係る排水ます10の斜視図である。図面中の符号Uは上を示し、符号Dは下を示す。また、符号Xは水平方向を示し、符号Yは鉛直方向を示す。ただし、これら方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、排水ます10の設置態様を何ら限定するものではない。
図1に示すように、排水ます10は、排水の流路を切り替えることが可能なますである。図示は省略するが、排水ます10は地中に埋設されている。排水ます10は、排水が流れる管路であって、地中に埋設された管路の途中部分に接続されている。ここで、「排水」には、汚水および雨水が含まれる。「汚水」とは、トイレ、風呂、および、台所の流し台などから排出される水であり、そのままでは河川に放流させることができないものである。「雨水」とは、降雨などの自然現象に起因する水であり、そのまま河川に放流させることができるものである。
排水ます10は、ます本体11と、切替部材12と、閉鎖部材13とを備えている。図2は、排水ます10の平面図である。図3は、図2のII−II断面における排水ます10の断面図である。図4は、図2のIII−III断面における排水ます10の断面図である。なお、図4では、切替部材12および閉鎖部材13は省略されている。ます本体11は、内部に空間を有する有底のものである。ます本体11の上部は開口している。本実施形態では、ます本体11は、本体側底壁16と、本体側側壁17とを有している。図示は省略するが、本体側底壁16の形状は略正三角形状である。しかしながら、本体側底壁16の形状は特に限定されない。
図3に示すように、本体側側壁17は、本体側底壁16の縁から立ち上がっている。本体側底壁16と本体側側壁17とによって、空間23が形成されている。本体側側壁17には、図2に示すように、排水が流入する流入口30、排水が流出する第1流出口31、および、排水が流出する第2流出口32が形成されている。図3に示すように、本体側側壁17の内周面は、本体側底壁16に向かうに従って本体側底壁16の中心側に傾斜している。すなわち、本体側側壁17の内周面は、テーパー状に形成されている。言い換えると、本体側側壁17の内周面に囲まれた領域の面積は、本体側底壁16に向かうに従って相対的に小さい。本体側側壁17の内周面と本体側底壁16の上面とが成す角度R21(図3参照)は、90度よりも大きい。本体側側壁17の内周面の形状は、平面視において略正多角形状である。ここでは、本体側側壁17の内周面の形状は、平面視において略正三角形状である。そのため、本実施形態では、「本体側底壁16の中心」とは、例えば本体側側壁16の重心であり、3本の中線(各頂点と、その頂点との対辺の中点とを結ぶ線分)の交点のことである。なお、本体側側壁17の内周面の形状は特に限定されない。
本実施形態では、流入口30の開口面積と、第1流出口31の開口面積と、第2流出口32の開口面積とは、同じである。流入口30の径と、第1流出口31の径と、第2流出口32の径とは、同じである。また、図3および図4に示すように、流入口30の中心の高さは、第1流出口31の中心の高さと同じであり、第2流出口32の中心の高さと同じである。図2に示すように、平面視において、流入口30の中心軸C1と第1流出口31の中心軸C2とが成す角度R1と、第1流出口31の中心軸C2と第2流出口32の中心軸C3とが成す角度R2と、第2流出口32の中心軸C3と流入口30の中心軸C1とが成す角度R3とは同じである。なお、本明細書において、「同じ」には、完全に同一以外に、若干の誤差も含まれるものとする。
本実施形態では、本体側側壁17は、流入壁20と、第1流出壁21と、第2流出壁22とを有している。以下の説明において、流入壁20、第1流出壁21および第2流出壁22のそれぞれの内面とは、本体側底壁16側の面のことをいい、外面とは、本体側底壁16とは反対側の面のことをいう。図4に示すように、流入壁20には、流入口30が形成されている。流入壁20の内面は、本体側底壁16に向かうに従って本体側底壁16の中心側に傾斜している。ここでは、流入壁20の外面には、円筒状の流入筒状部40が設けられている。流入筒状部40は、流入口30と連通している。図2に示すように、流入筒状部40には、トイレ、風呂、台所の流し台、および、側溝などの排水設備(図示せず)に接続された流入管路5が接続されている。
図3に示すように、第1流出壁21には、第1流出口31が形成されており、第1流出壁21の内面は、本体側底壁16に向かうに従って本体側底壁16の中心側に傾斜している。ここでは、第1流出壁21の外面には、円筒状の第1流出筒状部41が設けられている。第1流出筒状部41は、第1流出口31と連通している。図2に示すように、第1流出筒状部41には、下水本管(図示せず)が接続された第1流出管路6が接続されている。図4に示すように、第2流出壁22には、第2流出口32が形成されており、第2流出壁22の内面は、本体側底壁16に向かうに従って本体側底壁16の中心側に傾斜している。ここでは、第2流出壁22の外面には、円筒状の第2流出筒状部42が設けられている。第2流出筒状部42は、第2流出口32と連通している。図2に示すように、第2流出筒状部42には、貯留槽(図示せず)が接続された第2流出管路7が接続されている。
流入壁20、第1流出壁21および第2流出壁22のそれぞれの内面および外面は、平らな面である。流入壁20、第1流出壁21および第2流出壁22のそれぞれの内面には、突起および凹みなどが形成されていない。なお、流入壁20、第1流出壁21および第2流出壁22のそれぞれの内面および外面の少なくとも一部は、湾曲していてもよい。本実施形態では、流入壁20と第1流出壁21との間には、第1接続壁25aが設けられている。第1流出壁21と第2流出壁22との間には、第2接続壁25bが設けられている。第2流出壁22と流入壁20との間には、第3接続壁25cが接続されている。図1に示すように、第3接続壁25cにおける両側端は、本体側底壁16(図3参照)に向かうに従って、第3接続壁25cの中心側に傾斜している。図示は省略するが、第1、第2接続壁25a、25bにおける両側端は、本体側底壁16に向かうに従って、それぞれ第1、第2接続壁25a、25bの中心側に向かって傾斜している。
本実施形態では、図2に示すように、流入壁20の上端、第1流出壁21の上端、および、第2流出壁22の上端には、それぞれ傾斜壁27が設けられている。図3に示すように、傾斜壁27は、本体側底壁16側に向かうに従って下方に傾斜している。図1に示すように、傾斜壁27は下方に凹むように湾曲している。このことによって、例えば、傾斜壁27の上面に排水が乗り上げた場合、乗り上げた排水を傾斜壁27に沿ってます本体11内に流すことができる。よって、傾斜壁27に排水が溜まることを抑制することができる。
本実施形態では、3つの傾斜壁27のそれぞれの上方には、上方に延びた点検筒28が設けられている。点検筒28の形状は円筒状であるが、特に限定されない。点検筒28の上端には、点検口38が形成されている。図示は省略するが、点検口38には上方に延びた立管が接続され、立管の上端部には蓋が嵌め込まれている。
次に、切替部材12について説明する。図3に示すように、切替部材12は、ます本体11内の空間23に着脱可能に設けられるものであり、ます本体11内に流れる排水の流路を切り替えるものである。図5は、切替部材12および閉鎖部材13の斜視図である。図6は、切替部材12および閉鎖部材13の平面図である。図5に示すように、切替部材12は、内部に空間を有する有底のものである。切替部材12の上部は開口している。ここでは、切替部材12の形状は略正三角柱形状である。しかしながら、切替部材12の形状は特に限定されない。切替部材12は、切替側底壁46と、切替側側壁47とを備えている。
図3に示すように、切替側底壁46は、ます本体11の本体側底壁16の上方に配置される。図6に示すように、切替側底壁46は略正三角形状である。しかしながら、切替側底壁46の形状は特に限定されない。図5に示すように、切替側側壁47は、切替側底壁46の縁から立ち上がっている。本実施形態では、切替側底壁46と切替側側壁47とによって、空間48が形成されている。切替側側壁47の外周面は、切替側底壁46に向かうに従って切替側底壁46の中心側に傾斜している。すなわち、切替側側壁47の外周面は、テーパー状に形成されている。切替部材12の切替側側壁47の外周面と切替側底壁46の下面とが成す角度R22(図3参照)は、90度よりも大きい。なお、本実施形態では、切替側側壁47の内周面は、外周面と同様に、切替側底壁46に向かうに従って切替側底壁46の中心側に向かって傾斜している。しかしながら、切替側側壁47の内周面は、傾斜していなくてもよく、例えば、鉛直方向Yに延びた面であってもよい。図2に示すように、切替側側壁47の外周面の形状は、平面視において略正多角形状である。本実施形態では、切替側側壁47の外周面の形状は、ます本体11の本体側側壁17の内周面に沿った形状であり、平面視において略正三角形状である。
図5に示すように、切替側側壁47には、第1連通口61および第2連通口62が形成されている。図2に示すように、切替部材12がます本体11の空間23に配置された際、第1連通口61および第2連通口62は、ます本体11の流入口30、第1流出口31および第2流出口32の何れかと連通する。図示は省略するが、本実施形態では、第1連通口61の開口面積と、第2連通口62の開口面積とは同じである。第1、第2連通口61、62の開口面積は、流入口30、第1流出口31および第2流出口32のそれぞれの開口面積と同じである。第1連通口61の径と、第2連通口62の径とは同じであり、第1、第2連通口61、62の径は、流入口30、第1流出口31および第2流出口32のそれぞれの径と同じである。また、第1連通口61の中心の高さと、第2連通口62の中心の高さとは同じである。切替部材12がます本体11の空間23に配置された状態において、第1、第2連通口61、62の中心の高さは、流入口30、第1流出口31および第2流出口32のそれぞれの中心の高さと同じである。図2に示すように、第1連通口61の中心軸C4と第2連通口62の中心軸C5とが成す角度R4は、流入口30の中心軸C1と第1流出口31の中心軸C2とが成す角度R1と同じであり、第1流出口31の中心軸C2と第2流出口32の中心軸C3とが成す角度R2と同じであり、第2流出口32の中心軸C3と流入口30の中心軸C1とが成す角度R3と同じである。
本実施形態では、図5に示すように、切替側側壁47は、第1連通壁51と、第2連通壁52と、閉鎖壁53とを有している。以下の説明において、第1連通壁51、第2連通壁52および閉鎖壁53の内面とは、切替側底壁46側の面のことをいい、外面とは、切替側底壁46とは反対側の面のことをいう。第1連通壁51には、第1連通口61が形成されている。第1連通壁51の内面および外面は、切替側底壁46に向かうに従って切替側底壁46の中心側に傾斜している。第2連通壁52には、第2連通口62が形成されている。第2連通壁52の内面および外面は、切替側底壁46に向かうに従って切替側底壁46の中心側に傾斜している。閉鎖壁53には、第1連通口61および第2連通口62のような口は形成されていない。閉鎖壁53の内面および外面は、切替側底壁46に向かうに従って切替側底壁46の中心側に傾斜している。
第1連通壁51の内面および外面、第2連通壁52の内面および外面、ならびに、閉鎖壁53の外面は、平らな面である。第1連通壁51の内面および外面、第2連通壁52の内面および外面、ならびに、閉鎖壁53の外面には、突起および凹みは形成されていない。なお、第1連通壁51の内面および外面、第2連通壁52の内面および外面、ならびに、閉鎖壁53の外面のそれぞれの少なくとも一部は、湾曲していてもよい。図6に示すように、閉鎖壁53の内面は、平面視において、閉鎖壁53の中心に向かうに従って切替側底壁46とは反対側へ湾曲している。
本実施形態では、図5に示すように、第1連通壁51の外面と第2連通壁52の外面との間には、第1接続外面55aが形成されている。第2連通壁52の外面と閉鎖壁53の外面との間には、第2接続外面55bが形成されている。閉鎖壁53の外面と第1連通壁51の外面との間には、第3接続外面55cが形成されている。第1〜第3接続外面55a、55b、55cは、第1〜第3接続壁25a、25b、25cの内面に対応した形状を有している。ここでは、第1〜第3接続壁25a、25b、25cの内面は、平面視において、本体側底壁16の中心とは反対側に凸となるように湾曲した湾曲面である。そのため、第1〜第3接続外面55a、55b、55cは、平面視において、切替側底壁46の中心とは反対側に凸となるように湾曲した湾曲面である。しかしながら、第1〜第3接続壁25a、25b、25cの内面、および、第1〜第3接続外面55a、55b、55cは平らな面であってもよい。第1〜第3接続外面55a、55b、55cの両側端は、切替側底壁46に向かうに従って、それぞれ第1〜第3接続外面55a、55b、55cの中心側に向かって傾斜している。本実施形態では、図6に示すように、第1連通壁51の内面と、第2連通壁52の内面との間には、接続内面56が形成されている。接続内面56は、平面視において、接続内面56の中心に向かうに従って切替側底壁46側へ湾曲している。
本実施形態では、切替側底壁46には、インバート57が形成されている。インバート57は、第1連通口61と第2連通口62とを繋ぐものである。インバート57は、半管形状であり、第1連通口61および第2連通口62と連続している。インバート57には、第1連通口61から第2連通口62へ向かう排水、または、第2連通口62から第1連通口61へ向かう排水が流れる。
本実施形態では、図3に示すように、ます本体11の本体側側壁17の内周面と本体側底壁16の上面とが成す角度R21は、切替部材12の切替側側壁47の外周面と切替側底壁46の下面とが成す角度R22と同じである。角度R21とは、言い換えると、流入壁20の内面と本体側底壁16の上面とが成す角度であり、第1流出壁21の内面と本体側底壁16の上面とが成す角度であり、第2流出壁22の内面と本体側底壁16の上面とが成す角度である。角度R22とは、言い換えると、第1連通壁51の外面と切替側底壁46の下面とが成す角度であり、第2連通壁52の外面と切替側底壁46の下面とがなす角度であり、閉鎖壁53の外面と切替側底壁46の下面とがなす角度である。
図7は、排水ます10の平面図であり、切替部材12が第2切替位置P2に配置されている状態を示す図である。本実施形態では、切替部材12は、第1切替位置P1(図2参照)と、第2切替位置P2(図7参照)との間で位置変更が可能である。ここで、第1切替位置P1とは、図2に示すように、流入口30から第1流出口31へ排水が流れるような切替部材12の位置である。切替部材12が第1切替位置P1に配置されているとき、切替部材12内の空間48(図5参照)を通じて流入口30と第1流出口31とは繋がっている。第1切替位置P1とは、例えば、第1連通口61が流入口30と連通し、第2連通口62が第1流出口31と連通し、閉鎖壁53が第2流出口32を閉鎖するような切替部材12の位置である。第2切替位置P2とは、図7に示すように、流入口30から第2流出口32へ排水が流れるような切替部材12の位置である。切替部材12が第2切替位置P2に配置されているとき、切替部材12内の空間48(図5参照)を通じて流入口30と第2流出口32とは繋がっている。ここでは、第2切替位置P2とは、例えば、第1連通口61が第2流出口32と連通し、第2連通口62が流入口30と連通し、閉鎖壁53が第1流出口31を閉鎖するような切替部材12の位置である。本実施形態では、第2切替位置P2は、第1切替位置P1に配置されている切替部材12を反時計回りに角度R1(または、角度R2もしくは角度R3。図2参照)回転させた位置である。
次に、閉鎖部材13について説明する。閉鎖部材13は、ます本体11の流入口30、第1流出口31および第2流出口32のうち、開放されていない口を閉鎖するものである。言い換えると、閉鎖部材13は、流入口30、第1流出口31および第2流出口32のうち、第1連通口61および第2連通口62と連通していない口を閉鎖するものである。例えば、図2に示すように、切替部材12が第1切替位置P1に配置されているとき、閉鎖部材13は、第2流出口32を閉鎖する。図7に示すように、切替部材12が第2切替位置P2に配置されているとき、閉鎖部材13は、第1流出口31を閉鎖する。閉鎖部材13は、ます本体11と、切替部材12の閉鎖壁53との間に配置されている。詳しくは、図2に示すように、切替部材12が第1切替位置P1に配置されているとき、閉鎖部材13は、閉鎖壁53と第2流出口32との間に配置されている。図7に示すように、切替部材12が第2切替位置P2に配置されているとき、閉鎖部材13は、閉鎖壁53と第1流出口31との間に配置されている。
図8は、ます本体11側から見たときの閉鎖部材13を示す図である。図9は、切替部材12側から見たときの閉鎖部材13を示す図である。本実施形態では、図8に示すように、閉鎖部材13は、板状の部材であり、上部が矩形状であり、下部が円弧状である。しかしながら、閉鎖部材13の形状は特に限定されない。例えば、閉鎖部材13の下部は矩形状であってもよい。ここでは、閉鎖部材13の鉛直方向Yの最大の長さL1は、本体側底壁16の上面から第1流出口31(または第2流出口32)の最上端における鉛直方向Yの最大の長さ(図示せず)よりも長い。
以下の説明では、ます本体11と閉鎖壁53との間に閉鎖部材13が配置されている状態において、閉鎖部材13のます本体11側の面を外面といい、閉鎖壁53側の面を内面という。図8に示すように、閉鎖部材13の外面には、環状の溝71が形成されている。溝71には、環状のシール部材80が嵌め込まれている。ここでは、シール部材80は、閉鎖部材13の外面から突出している。切替部材12が第1切替位置P1(図2参照)に配置されているとき、シール部材80は、第2流出口32の周囲における第2流出壁22の部位に接触する。切替部材12が第2切替位置P2(図7参照)に配置されているとき、シール部材80は、第1流出口31の周囲における第1流出壁21の部位に接触する。なお、シール部材80の材質は特に限定されないが、例えば弾性体である。弾性体とは例えばゴムである。
本実施形態では、図9に示すように、閉鎖部材13の内面には、複数の突起72が設けられている。突起72は、鉛直方向Yに延びた棒状の突起である。複数の突起72は、水平方向Xに所定の間隔を空けて、閉鎖部材13の内面に設けられている。図6に示すように、複数の突起72は、切替部材12の閉鎖壁53の外面と接触可能である。本実施形態では、突起72の数は3つであるが、特に限定されない。突起72の数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、複数の突起72の一部は、鉛直方向Yに並んで配置されてもよい。ここでは、複数の突起72は、閉鎖部材13の強度を高めるためのリブとしての役割を担う。
本実施形態では、図5に示すように、閉鎖部材13は、切替部材12の閉鎖壁53にスライド自在に設けられている。図5では、閉鎖部材13が切替部材12に対してスライドしている状態が示されている。ここでは、排水ます10は、閉鎖壁53に閉鎖部材13をスライドさせるスライド機構90を有している。スライド機構90の構成は特に限定されない。図10は、図6のX−X断面における切替部材12および閉鎖部材13の断面図である。ここでは、図6に示すように、スライド機構90は、一対のレール91と、一対の係合突起92と、一対の規制突起93(図10参照)とを有している。一対のレール91は、閉鎖壁53の外面に設けられている。図5に示すように、一対のレール91は鉛直方向Yに延びている。ここでは、図6に示すように、レール91は、閉鎖壁53の外面から突出し、鉛直方向Yに延びた第1レール91aと、第1レール91aの先端から閉鎖壁53の中心側に向かって延びた第2レール91bとを有している。すなわち、レール91は、L字状に形成されている。
図8に示すように、一対の係合突起92は、閉鎖部材13の両側の側端の上部から突出している。図10に示すように、一対の係合突起92は、一対のレール91に係合する。詳しくは、係合突起92は、閉鎖壁53とレール91の第1レール91aと第2レール91bとによって形成された空間にスライド自在に配置されている。一対の規制突起93は、閉鎖壁53の外面、かつ、一対のレール91の下部に設けられている。規制突起93は、閉鎖壁53と第1レール91aの下部と第2レール91aの下部とによって形成された空間を閉鎖するものである。このことによって、係合突起92は、規制突起93に接触することで、下方への移動が規制される。なお、図10では、閉鎖部材13に設けられた係合突起92が規制突起93に接触している状態が示されている。
以上、本実施形態に係る排水ます10の構成について説明した。次に、切替部材12をます本体11内の空間23に配置する際の手順について説明する。図11A〜図11Cは、切替部材12をます本体11内に挿入する状態を示す説明図である。なお、図11A〜図11Cでは、ます本体11のうち本体側底壁16、本体側側壁17および第2流出口32が示されており、ます本体11を構成する他の部位の図示は省略されている。ここでは、切替部材12を第1切替位置P1に配置する手順について、図11A〜図11Cを参照しながら説明する。まず、ます本体11の点検口38(図3参照)から切替部材12をます本体11内の空間23に挿入する。切替部材12を空間23に挿入する際、切替部材12の閉鎖壁53に対してスライド自在に設けられた閉鎖部材13は、スライド機構90の規制突起93(図10参照)に引っ掛かった状態で、一部が切替部材12の下方に配置されている(図11A参照)。このとき、閉鎖部材13の下端は、ます本体11の本体側底壁16に接触している。このような状態で、ます本体11内の空間23に切替部材12を挿入していく。
そして、図11Bに示すように、切替部材12を空間23に更に挿入し、切替部材12の切替側底壁46をます本体11の本体側底壁16に近づけていくに従って、閉鎖部材13に対して切替部材12が下方にスライドする、言い換えると、切替部材12に対して閉鎖部材13が上方にスライドすると共に、切替部材12の閉鎖壁53とます本体11の第2流出壁22との間の距離が短くなる。この距離が短くなるに従って、閉鎖部材13が閉鎖壁53によって第2流出壁22側に押し付けられることで、シール部材80を介して、閉鎖部材13と第2流出壁22との密着度合いが大きくなる。そして、図11Cに示すように、切替部材12が第1切替位置P1に配置されたとき、閉鎖部材13およびシール部材80は、閉鎖壁53と第2流出壁22とによって挟まれた状態となる。そのため、シール部材80が第2流出口32の周囲の第2流出壁22の部位に接触した状態で、シール部材80を介して、閉鎖部材13と第2流出壁22とが強固に密着される。このとき、図2に示すように、切替部材12の第1連通壁51の外面は、ます本体11の流入壁20の内面と接触すると共に、第1連通口61と流入口30とが連通する。また、切替部材12の第2連通壁52の外面は、ます本体11の第1流出壁21の内面と接触すると共に、第2連通口62と第1流出口31とが連通する。また、図11Cに示すように、ます本体11内に切替部材12および閉鎖部材13が配置されている状態において、閉鎖部材13の内面および外面は、本体側底壁16に向かうに従って、本体側底壁16の中心側に傾斜している。以上のようにして、切替部材12を第1切替位置P1に配置することができる。
なお、図2に示すように、切替部材12を第1切替位置P1に配置した状態において、流入管路5から流入した排水は、流入筒状部40、流入口30および第1連通口61を通じて、切替部材12のインバート57に流入する。インバート57に流入した排水は、第2連通口62の方へ導かれ、第2連通口62、第1流出口31および第1流出筒状部41を通じて第1流出管路6に排出される。
切替部材12の位置を第1切替位置P1から第2切替位置P2に変更する場合には、点検口38を通じて、切替部材12をます本体11から引き抜けばよい。切替部材12をます本体11から引き抜くとき、切替部材12が上方に移動するに従って、図11Bに示すように、閉鎖壁53と第2流出壁22との間の距離が徐々に長くなる。このことで、閉鎖部材13と第2流出壁22との密着度合いが徐々に小さくなる。そして、切替部材12をます本体11から完全に引き抜いたとき、図10に示すように、閉鎖部材13は、スライド機構90の規制突起93に引っ掛けられた状態となる。
次に、切替部材12を第2切替位置P2(図7参照)に配置する。このとき、まず、スライド機構90の規制突起93に引っ掛かり、かつ、一部が切替部材12の下方に配置されている状態で、閉鎖部材13の下端を、ます本体11の本体側底壁16に接触させる。このような状態で、切替部材12の第1連通壁51の外面と、ます本体11の第2流出壁22の内面とを接触させ、かつ、切替部材12の第2連通壁52の外面と、ます本体11の流入壁20の内面とを接触させながら、空間23に切替部材12を挿入していく。
そして、切替側底壁46を本体側底壁16に近づけていくに従って、切替部材12に対して閉鎖部材13が上方にスライドすると共に、第1流出壁21と閉鎖壁53との距離が短くなる。この距離が短くなるに従って、閉鎖部材13が閉鎖壁53によって第1流出壁21側に押し付けられる。このことで、シール部材80を介して、閉鎖部材13と第1流出壁21との密着度合いが大きくなる。そして、図7に示すように、切替部材12が第2切替位置P2に配置されたとき、閉鎖部材13およびシール部材80は、閉鎖壁53と第1流出壁21とによって挟まれた状態となる。そのため、シール部材80が第1流出口31の周囲の第1流出壁21の部位に接触した状態で、シール部材80を介して、閉鎖部材13と第1流出壁21とが強固に密着される。このとき、第1連通壁51の外面は、第2流出壁22の内面と接触すると共に、第1連通口61と第2流出口32とが連通する。また、第2連通壁52の外面は、流入壁20の内面と接触すると共に、第2連通口62と流入口30とが連通する。以上のようにして、切替部材12を第2切替位置P2に配置することができる。
切替部材12を第2切替位置P2に配置した状態において、流入管路5から流入した排水は、流入筒状部40、流入口30および第2連通口62を通じて、切替部材12のインバート57に流入する。インバート57に流入した排水は、第1連通口61の方へ導かれ、第1連通口61、第2流出口32および第2流出筒状部42を通じて第2流出管路7に排出される。
以上、本実施形態では、シール部材80は、切替部材12に設けられておらず、切替部材12と別部材である。そのため、例えば、図11Aに示すように、シール部材80および閉鎖部材13をます本体11内に配置した状態で、切替部材12をます本体11に対してスライドさせながらます本体11内に挿入することができる。そして、図11Bに示すように、切替部材12がます本体11内に挿入されているとき、切替部材12が閉鎖部材13を本体側側壁17に押し付けることで、シール部材80が本体側側壁17に密着し、本体側側壁17に対するシール部材80の位置が固定される。このように、シール部材80および閉鎖部材13は、ます本体11に対してスライドしないため、シール部材80がます本体11の本体側側壁17に擦られない。したがって、シール部材80がます本体11内において捲れあがることを抑制することができる。よって、切替部材12を第1切替位置P1(図2参照)に配置した場合であっても、第2切替位置P2(図7参照)に配置した場合であっても、ます本体11と切替部材12との間にシール部材80を適切に配置することができる。
例えば、従来のように、切替部材の外周面にシール部材を設けた場合において、作業者が切替部材をます本体内に挿入する際、シール部材がます本体に擦れるため、切替部材とます本体との間の抵抗力が大きくなり、切替部材をます本体に挿入し難いことがあった。しかしながら、本実施形態では、切替部材12をます本体11内に挿入するとき、シール部材80はます本体11内に配置されている状態である。そのため、切替部材12をます本体11内に挿入するとき、従来と比較して、切替部材12とます本体11との間の抵抗力が小さくなる。よって、作業者は、切替部材12をます本体11内に挿入し易い。
本実施形態では、図5に示すように、閉鎖壁53には、閉鎖部材13がスライド自在に設けられている。このことによって、図11A〜図11Cに示すように、閉鎖部材13をます本体11内に配置した状態で、切替部材12に対して閉鎖部材13をスライドさせながら、切替部材12をます本体11内に挿入することができる。よって、切替部材12に対する閉鎖部材13の水平方向の位置が固定されるため、切替部材12に対する閉鎖部材13の位置合わせを容易に行うことができる。
本実施形態では、流入壁20、第1流出壁21および第2流出壁22のそれぞれの内面は、平らな面である。第1連通壁51、第2連通壁52および閉鎖壁53のそれぞれの外面は、平らな面である。切替部材12をます本体11内に挿入する際、切替部材12の第1連通壁51、第2連通壁52および閉鎖壁53は、ます本体11の流入壁20、第1流出壁21および第2流出壁22の何れかに沿って移動する。そのため、切替部材12をます本体11内に挿入し易い。本実施形態では、図2に示すように、平面視において、本体側側壁17の内周面の形状、および、切替側側壁47の外周面の形状は、略多角形状である。そのため、ます本体11内に切替部材12を配置したとき、ます本体11に対して切替部材12が回動し難くすることができる。よって、ます本体11に対する切替部材12の位置合わせがし易い。
切替部材12内において、排水は第1連通口61と第2連通口62との間を流れる。例えば、切替部材12内において、第1連通口61から第2連通口62に向かって排水が流れるとき、閉鎖壁53の内面に排水がぶつかることがあり得る。本実施形態では、図6に示すように、閉鎖壁53の内面は、平面視において、閉鎖壁53の中心に向かうに従って切替側底壁46とは反対側へ凹むように湾曲している。そのため、閉鎖壁53の内面にぶつかった排水を第2連通口62に導き易い。
本実施形態では、図9に示すように、閉鎖部材13の閉鎖壁53側の面には、上下方向に延びた突起72が複数形成されている。このことによって、図6に示すように、切替部材12の閉鎖壁53は、閉鎖部材13に形成された突起72と接触する。そのため、閉鎖壁53と閉鎖部材13との間には、複数の突起72の間に設けられた空間が形成されている。よって、閉鎖壁53が閉鎖部材13と全面に亘って接触している場合と比較して、閉鎖壁53に対して閉鎖部材13がスライド移動し易い。
以上、本実施形態に係る排水ます10について説明した。上記実施形態では、図5に示すように、閉鎖部材13は、切替部材12の閉鎖壁53に対してスライド自在に設けられていたが、閉鎖壁53に対してスライド自在に設けられていなくてもよい。切替部材12と閉鎖部材13とは独立した部材であってもよい。この場合、閉鎖部材13をます本体11内の空間23に配置した後に、切替部材12をます本体11内に挿入するとよい。
ます本体11の本体側側壁17の内周面と切替部材12の第1連通壁51および第2連通壁52のそれぞれの外面との間には、閉鎖部材13のような部材が設けられていてもよい。図12は、他の実施形態に係る切替部材12、閉鎖部材13および連通部材113a、113bの平面図である。図13は、連通部材113a、113bをます本体11側から見た図であり、連通部材113a、113bの外面を示す図である。図14は、連通部材113a、113bを切替部材12側から見た図であり、連通部材113a、113bの内面を示す図である。例えば、図12に示すように、本体側側壁17(図2参照)の内周面と第1連通壁51の外面との間、および、本体側側壁17の内周面と第2連通壁52の外面との間には、それぞれ他の連通口114(図13参照)が形成された連通部材113a、113bが設けられていてもよい。
例えば、連通部材113aの他の連通口114は、ます本体11の流入口30、第1流出口31および第2流出口32のうちの何れかと、切替部材12の第1連通口61とを連通させる。連通部材113bの他の連通口114は、流入口30、第1流出口31および第2流出口32のうちの何れかと、第2連通口62とを連通させる。例えば、切替部材12が第1切替位置P1(図2参照)に配置されているとき、連通部材113aは、流入壁20と第1連通壁51との間に配置され、連通部材113bは、第1流出壁21と第2連通壁52との間に配置される。切替部材12が第2切替位置P2(図7参照)に配置されているとき、連通部材113aは、第2流出壁22と第1連通壁51との間に配置され、連通部材113bは、流入壁20と第2連通壁52との間に配置される。
図13に示すように、連通部材113a、113bの形状は、閉鎖部材13と同様に、板状の部材であり、上部が矩形状であり、下部が円弧状であるが、特に限定されない。他の連通口114の周囲における連通部材113a、113bの外面の部位には、上記実施形態の溝71と同様の環状の溝171が形成されている。溝171には、上記実施形態のシール部材80と同様の環状のシール部材180が嵌め込まれている。また、図14に示すように、連通部材113a、113bの内面には、上記実施形態の突起72と同様に、鉛直方向Yに延びた複数の突起172が設けられていてもよい。
ここでは、連通部材113a、113bは、それぞれ第1連通壁51、第2連通壁52にスライド自在に設けられている。第1連通壁51、第2連通壁52に対して連通部材113a、113bをスライドさせるスライド機構の構成は、上記実施形態のスライド機構90(図5参照)と同様の構成であるため、説明は省略する。
例えば、切替部材12をます本体11内に挿入するとき、本体側側壁17と切替側側壁47との間の距離が徐々に短くなる。このことで、連通部材113a、113bが切替側側壁47によって本体側側壁17に押し付けられるため、シール部材180を介して、連通部材113a、113bと本体側側壁17との密着度合いが大きくなる。そして、切替部材12がます本体11内に配置されたとき、連通部材113a、113bは、本体側側壁17と切替側側壁47とによって挟まれた状態となる。そのため、連通部材113a、113bに設けられたシール部材180と本体側側壁17とが強固に密着される。
なお、連通部材113a、113bは、切替部材12にスライド自在に設けられていなくてもよい。すなわち、連通部材113a、113bと切替部材12とは、独立した部材であってもよい。連通部材113a、113bの何れかは省略されてもよい。
上記実施形態では、図11Cに示すように、切替部材12および閉鎖部材13がます本体11内に配置されている状態において、本体側側壁17の内周面、切替側側壁47の外周面、閉鎖部材13の内面、および、閉鎖部材13の外面は、それぞれ本体側底壁16の中心側に向かって傾斜していた。
しかしながら、本体側側壁17の内周面は、鉛直方向Yに延び、切替側側壁47の外周面は、本体側底壁16の中心側に向かって傾斜していてもよい。この場合、閉鎖部材13の外面は鉛直方向Yに延び、閉鎖部材13の内面は本体側底壁16の中心側に向かって傾斜していてもよい。すなわち、この場合、閉鎖部材13の厚みは、下方に向かうに従って薄くなっていてもよい。また、本体側側壁17の内周面は、本体側底壁16の中心側に向かって傾斜し、切替側側壁47の外周面は鉛直方向Yに延びていてもよい。この場合、閉鎖部材13の外面は、本体側底壁16の中心側に向かって傾斜し、閉鎖部材13の内面は鉛直方向Yに延びていてもよい。すなわち、この場合、閉鎖部材13の厚みは、下方に向かうに従って厚くなっていてもよい。
上記実施形態では、シール部材80は、閉鎖部材13に設けられていた。しかしながら、シール部材80は、本体側側壁17に設けられていてもよい。また、シール部材80は、閉鎖部材13および本体側側壁17に設けられておらず、閉鎖部材13および本体側側壁17とは独立した部材であってもよい。
切替部材12の第1連通壁51の外面であって、第1連通口61の周囲には、第1連通口61を囲むように環状のシール部材が設けられていてもよい。同様に、切替部材12の第2連通壁52の外面であって、第2連通口62の周囲には、第2連通口62を囲むように環状のシール部材が設けられていてもよい。
上記実施形態では、ます本体11の本体側側壁17の内周面、および、切替部材12の切替側側壁47の外周面のそれぞれの形状は、略三角柱形状であった。しかしながら、本体側側壁17の内周面および切替側側壁47の外周面のそれぞれの形状は特に限定されず、例えば、円筒形状であってもよいし、頂点の数が4つ以上の多角柱形状であってもよい。
上記実施形態では、ます本体11に形成された流出口の数は、第1流出口31および第2流出口32の2つであった。しかしながら、流出口の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。流出口の数が1つの場合、流入口の数は、複数であってもよい。例えば、上記実施形態において、流入口30が流出口に変更され、第1流出口31が第1流入口に変更され、かつ、第2流出口32が第2流入口に変更されてもよい。