以下、図面を参照しながら、本発明に係る排水ますおよび排水システムの各実施形態について説明する。ここで説明される各実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る排水システム1Aについて説明する。図1は、第1実施形態に係る排水システム1Aの平面図である。図2は、排水システム1Aの正面図である。図1に示すように、排水システム1Aは、排水が流れるシステムである。ここで、「排水」には、汚水および雨水が含まれる。「汚水」とは、トイレ、風呂、および台所の流し台等から排出される水であり、そのままでは河川に放流させることができないものである。本実施形態では、トイレ、風呂、および台所の流し台等のように、汚水が排出される設備を排水設備5とする。「雨水」とは、降雨などの自然現象に起因する水であり、そのまま河川に放流させることができるものである。本実施形態では、排水システム1Aは、排水のうち排水設備5から流出する汚水が流れるシステムである。しかし、排水システム1Aは、雨水が流れるシステムであってもよい。この場合、排水設備5は、雨水が集約される側溝等に置換される。本実施形態では、図2に示すように、排水システム1Aは、地中に埋設されている。排水システム1Aは、排水管路10と、排水の流路が切り替えることが可能な排水ます20と、貯留槽70とを備えている。
排水管路10は、特に図示はしていないが、下流に向かって下方に傾斜している。図1に示すように、排水管路10は、流入管路11と、第1流出管路12と、第2流出管路13とを備えている。流入管路11には、排水設備5から排出される汚水が流入する。流入管路11の上流端は、排水設備5に接続されている。流入管路11の下流端は、排水ます20の流入口32に接続されている。第1流出管路12の上流端は、排水ます20の第1流出口33に接続されている。第1流出管路12の下流端は、汚水を汚水処理場等に導く下水本管15に接続されている。なお、第1流出管路12内には、公共ます16が設けられている。
第2流出管路13の上流端は、排水ます20の第2流出口34に接続されている。第2流出管路13の下流端は、汚水を貯留する貯留槽70に接続されている。なお、「管路」とは、水を流通させる通路を意味する。「管路」は、一本の配管によって構成されていてもよいし、本実施形態のように、複数本の配管とそれら配管を接続する継手によって構成されていてもよい。
次に、本実施形態に係る排水ます20について説明する。排水ます20は、排水(本実施形態では汚水)の流路の切り替えが可能なますである。排水ます20は、排水管路10の途中箇所に設けられている。図3は、排水ます20の平面図である。図4は、排水ます20の正面図である。図5は、図3のV−V断面における排水ます20の正面断面図である。図3に示すように、排水ます20は、ます本体21と、インバート体26とを備えている。
図5に示すように、ます本体21は、有底筒状であり、内部に空間を有する形状である。本実施形態では、ます本体21は、第1底面部21aと、第1底面部21aから更に下方に落ち込んだ第2底面部21bとを有している。ここでは、図5において、ます本体21の左側(流入口32が設けられている側)を上流側、右側(第1流出口33が設けられている側)を下流側としたとき、第1底面部21aは、上流側に設けられている。第2底面部21bは、下流側に設けられている。ます本体21の上部には、上方に開口する点検口31が形成されている。図4に示すように、ます本体21の側部には、側方に開口する流入口32、第1流出口33および第2流出口34が形成されている。
点検口31は、作業者がます本体21の内部に破損または詰まり等がないかのメンテナンスを行う部位である。図3に示すように、点検口31は、流入口32、第1流出口33および第2流出口34よりも大きく開口している。点検口31の内径は、第1流出口33の内径、および、第2流出口34の内径よりも大きい。そのため、作業者は、点検口31を通じて、ます本体21の内部の上記メンテナンスを容易に行うことができる。図2に示すように、点検口31には、点検筒17が接続されている。ここでは、点検筒17の上端が地面と略同じ高さに配置されるように、排水ます20は地中に埋設されている。作業者は、点検筒17を通じて、ます本体21の内部の上記メンテナンスを行う。なお、点検筒17の上端には、蓋18が配置されている。通常時、点検筒17は、蓋18によって閉じられている。
図5に示すように、流入口32は、ます本体21の側部に設けられている。ここでは、流入口32には、汚水が流入する。本実施形態では流入口32は、配管が挿入される受口であるが、配管に挿入される差口であってもよい。図1に示すように、前述の通り、流入口32には流入管路11が接続される。なお、本実施形態では流入口32には、流入管路11の一部をなす配管が直接接続されるが、流入口32に上記配管が他の部材などを介して間接的に接続されていてもよい。
図5に示すように、第1流出口33は、ます本体21の側部に設けられている。本実施形態では、第1流出口33は、流入口32の反対側に配置されており、流入口32と対向している。ただし、第1流出口33の配置位置は特に限定されない。第1流出口33から汚水が流出する。本実施形態では、第1流出口33は受口であるが、第1流出口33は差口であってもよい。図1に示すように、前述の通り、第1流出口33には、第1流出管路12が接続される。第1流出口33には、第1流出管路12の一部をなす配管が直接接続されていてもよく、上記配管が他の部材を介して間接的に接続されていてもよい。
図4に示すように、第2流出口34は、ます本体21の側部に設けられている。ここでは、第2流出口34は、ます本体21の側部の下流側であって、第2底面部21b(図5参照)の上方におけるます本体21の側部に設けられている。第2流出口34から汚水が流出する。本実施形態では、第2流出口34は受口であるが、第2流出口34は差口であってもよい。図1に示すように、前述の通り、第2流出口34には、第2流出管路13が接続される。第2流出口34には、第2流出管路13の一部をなす配管が直接接続されていてもよく、上記配管が他の部材を介して間接的に接続されていてもよい。
次に、流入口32と第1流出口33と第2流出口34との高さ位置の関係、および、大きさの関係について説明する。図4に示すように、流入口32と第1流出口33とは、同じ高さの位置に設けられている。ただし、流入口32と第1流出口33との高さは異なっていてもよい。例えば、流入口32は、第1流出口33よりも高い位置に配置されてもよい。第2流出口34は、流入口32および第1流出口33よりも低い位置に配置されている。ここでは、第2流出口34の上端は、流入口32の上端よりも下方の位置であって、流入口32の下端よりも上方の位置に配置されている。また、第2流出口34の上端は、第1流出口33の上端よりも下方の位置であって、第1流出口33の下端よりも上方の位置に配置されている。ここでは、流入口32と第1流出口33と第2流出口34とは、同じ大きさで開口している。流入口32、第1流出口33および第2流出口34のそれぞれの内径は同じ大きさである。ただし、流入口32と第1流出口33と第2流出口34とは、それぞれ異なる大きさで開口していてもよい。
図6は、ます本体21の平面図であり、インバート26をます本体21から取り外した図である。図6に示すように、ます本体21の内部には、流入溝部41および流出溝部42が設けられている。流入溝部41および流出溝部42は、それぞれ汚水を導くものである。流入溝部41と流出溝部42によって、流入口32と第2流出口34とが繋がる。図5に示すように、流入溝部41は、ます本体21の第1底面部21aに形成されている。流入溝部41の上流端は、流入口32と繋がっており、流入口32と連続している。図6に示すように、流入溝部41は、平面視において、流入口32から第1底面部21aと第2底面部21bとの境目に向かって延びている。流入溝部41は、半管状の形状を有している。ここでは、流入溝部41は、直線状に形成されている。ただし、流入溝部41の形状は特に限定されない。
図5に示すように、流出溝部42は、ます本体21内の第1底面部21aから更に下方に落ち込んだ第2底面部21bに形成されている。流出溝部42は、流入溝部41よりも下方に配置されている。流出溝部42の上流端は、第1底面部21aと第2底面部21bとの境目に配置されている。図6に示すように、平面視において、流出溝部42の上流端は、流入溝部41の下流端と連続している。流出溝部42の下流端は、第2流出口34と繋がっており、第2流出口34と連続している。流出溝部42は、半管状の形状を有している。ここでは、流出溝部42は、第1底面部21aと第2底面部21bとの境目から第2流出口34に向かって湾曲している。ただし、流出溝部42の形状は特に限定されない。流出溝部42は、屈曲していてもよいし、直線状であってもよい。なお、本実施形態では、流入溝部41と流出溝部42が、「本体溝部」に対応する。
ます本体21の内部には、第1ガイド溝43および第2ガイド溝44が設けられている。第1ガイド溝43および第2ガイド溝44は、インバート体26を保持する部材であると共に、インバート体26の移動方向を規制する部材である。ここでは、第1ガイド溝43は、インバート体26の後述する保持板53がスライド可能に係合する。第1ガイド溝43は、インバート体26が第2の切替位置(図9参照)に配置されたときに、インバート体26が第2の切替位置に保持されるように保持板53を狭持するように構成されている。
第1ガイド溝43は、平面視において、流出溝部42の上流端側に設けられている。第1ガイド溝43は、流出溝部42の上端近傍から上方に向かって延びている。第1ガイド溝43は、直線状の溝を有している。図5に示すように、第1ガイド溝43の上端は、ます本体21内において、流入口32および第1流出口33の上端よりも上方に位置している。図6に示すように、第1ガイド溝43は、平面視において、点検口31内に設けられている。図7は、インバート体26の保持板53を第1ガイド溝43に配置した状態を示す図である。図7に示すように、第1ガイド溝43には、後述するインバート体26の保持板53が嵌る。第1ガイド溝43は、保持板53を狭持している。第1ガイド溝43は、可撓性を有する部材によって形成されている。ここでは、第1ガイド溝43は、ゴム製である。なお、本実施形態では、第1ガイド溝43が、「ガイド溝」に対応する。
第2ガイド溝44は、インバート体26の後述する閉鎖板54がスライド可能に係合する。図6に示すように、第2ガイド溝44は、ます本体21内の第1流出口33側に設けられている。第2ガイド溝44は、ます本体21の第2底面部21bに形成され、かつ、第2底面部21bから上方に向かって延びている。また、第2ガイド溝44は、第1流出口33側から見て第1流出口33の左右両側近傍を通っている。第2ガイド溝44の上端は、ます本体21内において、流入口32および第1流出口33の上端よりも上方に位置している。第2ガイド溝44は、平面視において、点検口31内に設けられている。図8は、インバート体26の閉鎖板54を第2ガイド溝44に配置した状態を示す図である。図8に示すように、第2ガイド溝44には、後述するインバート体26の閉鎖板54が嵌る。第2ガイド溝44は、閉鎖板54を狭持している。第2ガイド溝44は、可撓性を有する部材によって形成されている。ここでは、第2ガイド溝44は、ゴム製である。
次に、インバート体26について説明する。インバート体26は、ます本体21内の排水(本実施形態では汚水)の流路を切り替える部材である。インバート体26は、排水を導くものである。図5に示すように、インバート体26は、ます本体21内に設けられている。
図9は、排水ます20の正面断面図であり、インバート体26を第2の切替位置に配置した状態を示す図である。インバート体26は、ます本体21内に設けられた状態で流入口32と第1流出口33とを繋ぐ第1の切替位置(図5参照)と、ます本体21内に設けられた状態で流入口32と第2流出口34とを繋ぐ第2の切替位置(図9参照)との間で位置変更が可能である。本実施形態では、インバート体26は、第1ガイド溝43および第2ガイド溝44に沿って、上下方向に移動可能である。図5に示すように、第1ガイド溝43および第2ガイド溝44の下部にインバート体26が配置され、かつ、流入溝部41と第1流出口33との間に配置されるときの位置が、第1の切替位置となり、図9に示すように、第1ガイド溝43および第2ガイド溝44の上部にインバート体26が配置されるときの位置が、第2の切替位置となる。図10は、インバート体26の正面図である。図11は、インバート体26の平面図である。図12は、インバート体26の側面図であり、閉鎖板54側から見た図である。図10に示すように、インバート体26は、溝部51と、上面部52と、保持板53と、閉鎖板54と、取っ手55とを備えている。
溝部51は、汚水を導くものである。図5に示すように、溝部51は、流出溝部42の上方において、第1の切替位置にインバート体26を配置したときに、流入口32と第1流出口33とを繋ぐ。ここでは、インバート体26が第1の切替位置に配置されたとき、溝部51の上流端は、ます本体21内の流入溝部41と繋がり、流入溝部41を介して流入口32と繋がる。溝部51の下流端は、第1流出口33と繋がる。なお、図9に示すように、第2の切替位置とは、第1の切替位置の上方、かつ、溝部51が流入溝部41および流出溝部42から上方に離間した位置である。本実施形態では、図12に示すように、溝部51は、半管状の形状を有している。図11に示すように、溝部51は、平面視において、直線状に形成されている。しかし、溝部51は、湾曲していてもよいし、屈曲していてもよい。なお、本実施形態では、溝部51が「インバート溝部」に対応する。
図5に示すように、流入口32と第1流出口33とが繋がる第1の切替位置にインバート体26が配置されたとき、上面部52は、第2流出口34(図4参照)の上端より上方に配置される。図12に示すように、溝部51は、上面部52よりも下方に凹んでいる。上面部52は、溝部51の上端と連続している。なお、本実施形態では、上面部52は溝部51の上端から水平方向に延びているが、溝部51から離れるに連れて上方に延びていてもよい。上面部44は傾斜していてもよい。このことによって、溝部51を流れる汚水が上面部52に乗り上げてしまった場合、汚水は、上面部52の傾斜によって溝部51へ導かれ易くなる。
図10に示すように、保持板53は、インバート体26の溝部51をます本体21に対して上下移動可能に支持するものである。ここでは、保持板53は、溝部51の上流端に設けられている。ここでは、保持板53は、溝部51の上流端から下方に向かって延びた板状の部材である。図7に示すように、保持板53は、ます本体21内に設けられた第1ガイド溝43に嵌る。保持板53は、第1ガイド溝43によって狭持されている。図13は、保持板53を示す図である。図13に示すように、保持板53の左右両端であって、第1ガイド溝43に嵌る箇所には、可撓部材61が設けられている。可撓部材61は、可撓性を有する部材であり、本実施形態では、ゴム製である。このことによって、保持板53が第1ガイド溝43に対して保持され易くなる。なお、本実施形態では、保持板53が「支持部」に対応する。
本実施形態では、保持板53の下部には、開口部62が形成されている。開口部62は、保持板53の下部中央から上方に向かって切り欠けられた部位である。ます本体21内に設けられた状態で流入口32と第2流出口34とが繋がる第2の切替位置(図9参照)にインバート体26が配置されたとき、開口部62には、汚水が流れる。なお、開口部62は、省略することが可能である。この場合、保持板53の下端は、溝部51の最下端と同じ高さに配置されているとよい。
図10に示すように、閉鎖板54は、溝部51の下流端に設けられている。ここでは、閉鎖板54は、溝部51の下流端から下方に向かって延びた板状の部材である。図9に示すように、閉鎖板54は、インバート体26が第2の切替位置に配置されたとき、第1流出口34を閉鎖する。閉鎖板54は、第1流出口34を塞ぐことが可能な大きさである。閉鎖板54の第1流出口34と対向する面における縦方向および横方向のそれぞれの長さは、第1流出口34の内径の長さよりも長い。ここでは、閉鎖板54の下部の端部は湾曲しているが、屈曲していてもよい。
図8に示すように、閉鎖板54は、ます本体21内に設けられた第2ガイド溝44に嵌る。閉鎖板54は、第2ガイド溝44によって狭持されている。閉鎖板54の下端および左右両端であって、第2ガイド溝44に嵌る箇所には、可撓部材66が設けられている。可撓部材66は、可撓性を有する部材であり、本実施形態では、ゴム製である。このことによって、閉鎖板54が第2ガイド溝44に対して保持され易くなる。なお、本実施形態では、閉鎖板54が「閉鎖部」に対応する。
図11に示すように、取っ手55は、溝部51の上端の中央部分に設けられている。取っ手55の形状は特に限定されないが、ここでは、取っ手55は、溝部51の2つの上端を架け渡すような形状を有している。取っ手55は、溝部51と一体であってもよいし、別体であってもよい。
次に、貯留槽70について説明する。図2に示すように、貯留槽70は、排水設備5から排出された汚水を貯留する槽である。貯留槽70は、タンクによって構成されており、内部に密封された空間を有している。貯留槽70の側面上部には、排水口71が形成されている。排水口71には、第2流出管路13の下流端が接続されており、第2流出管路13を介して排水ます20の第2流出口34が接続されている。
貯留槽70の上面には、鉛直方向に円筒78が突設されている。円筒78は、上端が地面と略同一の高さとなるようにして、貯留槽70の上面に設けられている。作業者は、円筒78を通じて、浄化槽70の内部を保守および点検することができる。なお、通常時において、円筒78の上部は蓋79によって閉塞されている。
次に、本実施形態に係る排水システム1Aおよび排水ます20の利用方法について説明する。図1に示すように、排水システム1Aは、通常時は排水設備5から流出する汚水を下水本管15に排出し、地震または津波等の災害が発生して下水本管15が破損したときには、排水ます20の流路を切り替えて、排水設備5から流出する汚水を貯留槽70へ排出するように用いられる。以下の説明では、通常時の利用態様を通常時モードといい、災害時の利用態様を災害時モードということとする。
通常時モードでは、図5に示すように、流入口32と第1流出口33とが繋がる第1の切替位置に、インバート体26をます本体21内に配置する。具体的には、インバート体26の保持板53を第1ガイド溝43に嵌めると共に、インバート体26の閉鎖板54を第2ガイド溝44に嵌める。そして、インバート体26の溝部51の上流端がます本体21内の流入溝部41に繋がり、かつ、溝部51の下流端が第1流出口34に繋がるように、インバート体26を第1ガイド溝43および第2ガイド溝44に沿って上下方向に移動させる。
通常時モードでは、図1に示すように、排水設備5から流出した汚水は、流入管路11を流れた後、排水ます20の流入口32からます本体21内に流入する。図5に示すように、ます本体21内に流入した汚水は、流入溝部41を通った後、インバート体26の溝部51を通り、第1流出口33からます本体21の外へ流出する。なお、このとき、第2流出口34は、インバート体26よりも下方に位置しており、インバート体26の上面部52は、ます本体21の第1底面部21aと連続する。そのため、第2流出口34は、インバート体26によって閉鎖されている。よって、汚水は、第2流出口34には流れない。図1に示すように、第1流出口33から流出した汚水は、第1流出管路12を流れ、下水本管15に排出される。下水本管15に排出された汚水は、汚水処理場等に導かれ、浄化処理される。
災害時モードでは、インバート体26を第1の切替位置(図5参照)から、流入口32と第2流出口34とが繋がる第2の切替位置(図9参照)へ位置を変更する。例えば、以下のようにしてインバート体26の位置を変更することができる。まず、作業者は、点検筒17に被せられた蓋18を取り外す。次に、作業者は、インバート体26の取っ手55を持って、インバート体26を上方に引き上げる。そして、作業者は、インバート体26の溝部51の下端が第2流出口34の上端よりも上方に位置するまで、インバート体26を引き上げる。このとき、第1流出口33は、インバート体26の閉鎖板54によって閉鎖されている。
災害時モードでは、図1に示すように、排水設備5から流出した汚水は、第1流出管路11を流れた後、排水ます20の流入口32からます本体21内に流入する。図9に示すように、ます本体21内に流入した汚水は、流入溝部41を通った後、自然落下し、流出溝部42に落ちる。その後、汚水は、流出溝部42を通り、第2流出口34からます本体21の外へ流出する。なお、このとき、第1流出口33は、閉鎖板54によって閉鎖されているため、汚水は第1流出口33には流れない。図1に示すように、第2流出口34から流出した汚水は、第2流出管路13を通じて貯留槽70へ排出され、貯留される。貯留槽70に貯留された汚水は、例えば、吸引ポンプによって吸い上げられる。この場合、作業者は、貯留槽70の上面に設けられた円筒78の上部を閉塞する蓋79を取り外し、円筒78を介して貯留槽70に上記吸引ポンプを挿入する。そして、上記吸引ポンプによって、貯留槽70に貯留された汚水を外部へ吸い上げる。
以上、本実施形態では、第1流出管路11または下水本管15が破損した場合であっても、排水ます20によって排水の流路を切り替えることで、排水設備5から流入管路11に流入する汚水を、排水ます20を通じて、第2流出管路13から貯留槽70に排出することができる。
また、本実施形態では、図5に示すように、インバート体26を第1の切替位置に配置した場合、流入口32からます本体21内に流入する汚水を第1流出口33に流すことができる。一方、図9に示すように、インバート体26を第2の切替位置に配置した場合、流入口32からます本体21内に流入する汚水を第2流出口34に流すことができる。本実施形態では、インバート体26を第1の切替位置および第2の切替位置の何れの切替位置に配置した場合であっても、インバート体26はます本体21内に配置されている。排水ます20内の流路の切り替えに際して、インバート体26をます本体21から取り外す必要がない。したがって、ます本体21の外において、インバート体26の保管場所を確保する必要がない。よって、インバート体26が紛失することを防止することができる。
本実施形態では、インバート体26を上下方向に移動させることによって、インバート体26を、通常時の切替位置(第1の切替位置)と災害時の切替位置(第2の切替位)とに位置変更することができる。図5に示すように、インバート体26が第1の切替位置に配置される場合、流出溝部42の上方において、インバート体26の溝部51によって流入口32と第1流出口33とが繋がる。よって、通常時において、流入口32からます本体21内に流入する汚水を、溝部51を通じて、第1流出口33へ円滑に流すことができる。一方、図9に示すように、インバート体26を上方向に移動させて、インバート体26が第1の切替位置から第2の切替位置に配置される場合、インバート体26の溝部51による流入口32と第1流出口33との接続が解除され、流入溝部41と流出溝部42とによって、流入口32と第2流出口34とが接続された状態となる。よって、災害時において、流入口32からます本体21内に流入する汚水を、流入溝部41および流出溝部42を通じて、第2流出口34へ円滑に流すことができる。
また、本実施形態では、図5に示すように、インバート体26は、第1の切替位置に配置されたとき、第2流出口34の上端より上方に配置される上面部52を備えている。図12に示すように、インバート体26の溝部51は、上面部52よりも下方に凹んでいる。このことによって、仮に溝部51を流れる汚水が溝部51を超えてしまっても、上面部52によって、その汚水がます本体21内の底面に溜まることを防止することができる。
本実施形態では、図3に示すように、第1流出口33は、流入口32と対向する位置に設けられている。インバート体26の溝部51は、直線状の溝を有している。このことによって、通常時において、流入口32からます本体21内に流入する汚水を、第1流出口33へより円滑に流すことができる。
また、本実施形態では、図9に示すように、インバート体26には、災害時において、インバート体26が第2の切替位置に配置されたとき、第1流出口33を閉鎖する閉鎖板54が設けられている。このことによって、災害時、第1流出口33からます本体21内に汚水が逆流することを防止することができる。
本実施形態では、図3に示すように、ます本体21は、インバート体26の保持板53がスライド可能に係合した第1ガイド溝43と、インバート体26の閉鎖板54がスライド可能に係合した第2ガイド溝44とを備えている。図9に示すように、第1ガイド溝43は、インバート体26が第2の切替位置に配置されたときに、インバート体26が第2の切替位置に保持されるようにインバート体26の保持板53を狭持するように構成されている。第2ガイド溝44は、インバート体26が第2の切替位置に配置されたときに、インバート体26が第2の切替位置に保持されるようにインバート体26の閉鎖板54を狭持するように構成されている。このことによって、第1ガイド溝43および第2ガイド溝44によって、インバート体26の切替位置を容易に変更することができる。
また、本実施形態では、第1ガイド溝43および第2ガイド溝44は、可撓性を有する部材によって形成されている。このことによって、インバート体26をます本体21内で容易に保持することができる。
本実施形態では、図10に示すように、インバート体26には、取っ手55が設けられている。このことによって、作業者が取っ手55を持って、インバート体26の切替位置を変更し易くすることができる。
本実施形態では、図2に示すように、貯留槽70が接続された第2流出口34は、ます本体21の側部に形成されている。よって、貯留槽70を出来るだけ浅い位置に埋設することができる。そのため、貯留槽70を埋設するための作業時間を短縮することができると共に、貯留槽70を埋設するための作業コストを削減することができる。
<第1実施形態の変形例>
次に第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態では、図3に示すように、インバート体26は、平面視において、点検口31内の下流側に配置されていた。しかし、インバート体26は、点検口31内の中央に配置されていてもよい。また、点検口31を通じて、インバート体26の切替位置を変更できる程度の大きさとなるように、点検口31の内径を短くしてもよい。
第1実施形態において、図4に示すように、第1流出口33は、流入口32と対向する位置に設けられていた。しかし、第1流出口33は、流入口32側から見て、ます本体21の右側に設けられてもよいし、左側に設けられてもよい。第1流出口33の位置と第2流出口34の位置とを入れ替えてもよい。
第1実施形態において、排水ます20のます本体21の側部には、2つの流出口(第1流出口33および第2流出口34)が設けられていた。しかし、本発明の排水ますは、ます本体の側部に3つ以上の複数の流出口が設けられてもよい。
以上、第1実施形態に係る排水システム1Aについて説明した。しかし、本発明に係る排水システムは、第1実施形態に係る排水システム1Aに限らず、他の種々の形態で実施することができる。次に、他の実施形態について簡単に説明する。なお、以下の説明では、既に説明した構成と同様の構成は同じ符号を付し、その説明は省略することとする。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る排水システム1Bについて説明する。図14は、第2実施形態に係る排水システム1Bの平面図である。排水システム1Bは、排水ます120を備えている。本発明の排水ますは、排水ます120であってもよい。
排水ます120は、汚水の流路の切り替えが可能なますである。図15は、第2実施形態に係る排水ます120の平面図である。図16は、図15のXVI−XVI断面における排水ます120の断面図である。図15に示すように、排水ます120は、ます本体121と、回動体126とを備えている。
図16に示すように、ます本体121は、有底筒状であり、内部に空間を有する形状である。ます本体121は、下部が下方に凹んだ略お椀形状を有している。ます本体121の上部には、上方に開口する点検口131が形成されている。図15に示すように、ます本体121の側部には、側方に開口する流入口132、第1流出口133および第2流出口134が形成されている。図14に示すように、流入口132には流入管路11の下流端が接続される。第1流出口133には、第1流出管路12の上流端が接続される。第2流出口134には、第2流出管路13が接続される。
回動体126は、ます本体21内の汚水の流路を切り替える部材である。本実施形態では、回動体126が「インバート体」に対応する。図16に示すように、回動体126は、ます本体121内の下部に設けられている。回動体126は、中心軸C5を中心に回動自在である。図17は、図15において、回動体126をます本体121に対して回動させた図である。回動体126は、ます本体121に対して回動することによって、ます本体121内に設けられた状態で流入口132と第1流出口133とが繋がる位置(第1の切替位置、図17参照)と、ます本体121内に設けられた状態で流入口132と第2流出口134とが繋がる位置(第2の切替位置、図15参照)との間で位置変更が可能である。
図18は、回動体126の平面図である。図19は、回動体126の左側面図である。図18に示すように、回動体126は、本体141と、溝部142と、上面部144と、閉鎖部143(図19参照)とを備えている。
本体141は、ます本体121の下部に対応した略お椀形状を有している。本体141は、平面視において、略円形状である。図17に示すように、溝部142は、本体141の上面に形成されている。溝部142には、汚水が流れる。溝部142は、第1の切替位置に回動体126を配置したときに、流入口132と第1流出口133とを繋ぐ。回動体126が第1の切替位置に配置されたとき、溝部142の一端142bは流入口132と繋がり、溝部142の他端142aは第1流出口133と繋がる。一方、図15に示すように、溝部142は、第2の切替位置に回動体126を配置したときに、流入口132と第2流出口134とを繋ぐ。回動体126が第2の切替位置に配置されたとき、溝部142の一端142bは第2流出口134と繋がり、溝部142の他端142aは流入口132と繋がる。
図16に示すように、上面部144は、ます本体121内において、ます本体121の下端から上方に離れた位置に設けられている。図19に示すように、上面部144は、溝部142の上端と連続している。上面部144は、溝部142から離れるに連れて上方に延びている。上面部144は傾斜している。このことによって、溝部142を流れる汚水が上面部144に乗り上げてしまった場合、汚水は、上面部144の傾斜によって溝部142へ導かれ易くなる。
図18に示すように、回動体126の本体141の上部表面には、挿入孔145が形成されている。挿入孔145は、ます本体121に対して回動体126を回動させる際に、補助器具(図示せず)を挿入するための孔である。本実施形態では、挿入孔145は、本体141の上面に3つ形成されている。上記補助器具は、例えば、先端が3つの挿入孔145のそれぞれに挿入可能な複数の棒状部と、上記複数の棒状部のそれぞれの末端に設けられ、作業者が把持可能な把持部とを備えたものである。挿入孔145の位置は特に限定されないが、平面視において、本体141の上面の中央から離れた位置であるとよい。このことによって、作業者が上記補助器具を挿入孔145に挿入して、回動体126を回動させ易くなる。
図19に示すように、閉鎖部143は、ます本体121の第1流出口133および第2流出口134を閉鎖可能なものである。本実施形態では、閉鎖部143は、本体141の側面上部のうち溝部142を除いた部分である。第2流出口134は、流入口132と第1流出口133とが繋がる第1の切替位置に回動体126を配置したとき、閉鎖部143によって閉鎖される。一方、第1流出口133は、流入口132と第2流出口134とが繋がる第2の切替位置に回動体126を配置したとき、閉鎖部143によって閉鎖される。
次に、本実施形態に係る排水システム1Bおよび排水ます120の利用方法について説明する。排水システム1Bは、通常時モードでは、排水設備5から流出する汚水を下水本管15に排出し、災害時モードでは、排水ます120の流路を切り替えて、排水設備5から流出する汚水を貯留槽70へ排出するように用いられる。
通常時モードでは、図17に示すように、流入口132と第1流出口133とが繋がる第1の切替位置に、回動体126をます本体121内に配置する。具体的には、回動体126の溝部142の一端42bがます本体121の流入口132と繋がり、溝部142の他端142aがます本体121の第1流出口133に繋がるように、回動体126をます本体121内に配置する。このとき、第2流出口134は、回動体126の閉鎖部143によって閉鎖されている。
図14に示すように、排水設備5から流出した汚水は、流入管路11を流れた後、排水ます120の流入口132からます本体121内に流入する。ます本体121内に流入した汚水は、図17に示すように、回動体126の本体141の上面に設けられた溝部142を通り、第1流出口133からます本体121の外へ流出する。なお、このとき、第2流出口134は、閉鎖部143によって閉鎖されているため、汚水は第2流出口134には流れない。図14に示すように、第1流出口133から流出した汚水は、第1流出管路12を流れ、下水本管15に排出される。下水本管15に排出された汚水は、汚水処理場等に導かれ、浄化処理される。
災害時モードでは、回動体126を第1の切替位置(図17参照)から、流入口132と第2流出口134とが繋がる第2の切替位置(図15参照)へ位置を変更する。例えば、図17に示すように、回動体126の挿入孔145に、回動体126を回動するための補助器具を挿入する。そして、作業者は、上記補助器具を利用して、図15に示すように、回動体126の溝部142の一端142bがます本体121の第2流出口134に繋がり、溝部142の他端142aがます本体121の流入口132に繋がる位置まで、回動体126をます本体121に対して回動させる。このとき、第1流出口133は、回動体126の閉鎖部143によって閉鎖されている。
災害時モードでは、図14に示すように、排水設備5から流出した汚水は、第1流出管路11を流れた後、排水ます120の流入口132からます本体121内に流入する。ます本体121内に流入した汚水は、図15に示すように、本体141の上面に設けられた溝部142を通り、第2流出口134からます本体121の外へ流出する。なお、このとき、第1流出口133は、閉鎖部143によって閉鎖されているため、汚水は第1流出口133には流れない。図14に示すように、第2流出口134から流出した汚水は、第2流出管路13を通じて貯留槽70へ排出され、貯留される。
以上のように、本実施形態であっても、回動体126を第1の切替位置から第2の切替位置に位置変更して、汚水の流路を切り替えた場合、回動体126は、ます本体121内に設けられている。よって、汚水の流路を切り替えた後であっても、回動体126を保管する場所をます本体121の外で確保する必要がない。よって、回動体126が紛失することを防止することができる。