JP6894120B2 - カムヒンジ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、2つの連結対象物を回動可能に連結するカムヒンジ装置に関する。
複写機、印刷機、ファクシミリ、スキャナ及びこれらの機能を一体に備えた複合機等の事務機器は、機器本体に対して、機器本体の上面に備えられる原稿圧着板が、カムヒンジ装置を介して開閉可能に連結されている。原稿圧着板は、機械本体の上面に密着した閉塞状態(開度が0°)から機械本体の上面に対して所定の角度をなして開いた全開状態の範囲で、カムヒンジ装置を介して一端が機械本体に回動可能に取り付けられる。
カムヒンジ装置には、機器本体に対する原稿圧着板の回動域に応じて、ユーザが原稿圧着板から手を放したときに、原稿圧着板を自動的に開放状態から閉塞状態まで緩やかに回動させる閉塞制動機能と、ユーザが手を放したときの位置に原稿圧着板を安定に保持させるフリーストップ機能と、を有していることが求められる。閉塞制動機能は、例えば0°〜15°の回動域に設定され、フリーストップ機能は、例えば15°〜60°の回動域に設定される。
従来、この種のカムヒンジ装置としては、ケース、ウイング部、スライダ、巻きバネ、ダンパ及びスライダの内部において上下方向に摺動可能に収容される摺動部材を備え、摺動部材は、ウイング部の方向に突出する突出部を備えると共に、突出部と反対側はダンパのピストンロッドと連結され、突出部は、孔部を介してスライダの外側に延出され、ウイング部がケースに近接する回動域において、突出部の先端部がスライダカムに当接するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2015−183840号公報
しかしながら、従来のカムヒンジ装置は、ウイング部に形成されたカム部とスライダに形成されたカム受け部材との間に作用する巻きバネの弾性力により原稿圧着板を開方向に回動させようとするトルクを、自重により原稿圧着板を閉方向に回動させようとするトルクとバランスさせることによって、フリーストップ機能を発揮させる構成になっているので、所定の回動域でフリーストップ機能を適切に発揮させるようにカム部を設計することが困難であった。
また、従来のカムヒンジ装置は、閉塞制動機能を得るためのダンパを備えているが、閉塞時の荷重を主としてダンパのみで受ける構成になっているので、原稿圧着板が自動給紙装置などを備えた大重量のものである場合には、大容量の高価なダンパを備えなければならず、カムヒンジ装置が高価になるという問題もある。
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、設計が容易で安価に製造できるカムヒンジ装置を提供することにある。
本発明は、このような従来技術の課題を解決するため、第1連結対象物と第2連結対象物とを、有限の角度範囲内においてのみ回動自在であるように連結し、前記第2連結対象物が、前記第1連結対象物を閉塞している閉塞状態から開方向に回動されたとき、前記有限の角度範囲内の第1の回動域においては、前記第2連結対象物に加えていた力を除くと、前記第2連結対象物に制動力が作用して、前記第2連結対象物が前記閉塞状態まで緩やかに自重落下し、前記第1の回動域を超える第2の回動域においては、前記第2連結対象物に加えていた力を除くと、前記第2連結対象物に作用する開方向のトルクと閉方向のトルクとがバランスして、前記第2連結対象物が力を除いたときの位置に保持されるカムヒンジ装置において、前記第1連結対象物に取り付けられる有底筒状のケースと、前記第2連結対象物が取り付けられ、前記ケースに連結されるカムレバーと、前記ケースと前記カムレバーとを回動自在に連結する連結軸と、前記ケース内に摺動自在に収納されたスライダと、前記ケース内に収納され、前記第1の回動域において前記スライダに制動力を付与するダンパと、前記ケース内に収納され、前記カムレバーと前記スライダとの間に常時弾性力を付与する付勢部材と、前記ケース内に摺動不能に収納され、前記スライダの側面に当接可能に構成された加圧部材と、を備え、前記加圧部材は、前記第1の回動域において選択的に前記スライダの側面に弾接される第1の弾接部と、前記第2の回動域において選択的に前記スライダの側面に弾接される第2の弾接部と、を備えていることを特徴とする。
本構成によると、第1連結対象物に対する第2連結対象物の回動角度が第1の回動域にあるときには、加圧部材に形成された第1の弾接部が選択的にスライダの側面に弾接されるので、第1の弾接部とスライダとの間に作用する摩擦力によって、第2連結対象物の自重落下に制動がかけられる。つまり、本構成によると、第1の回動域においては、スライダに作用するダンパの制動力が、第1の弾接部とスライダとの間に作用する摩擦力による制動力により補助されるので、小容量のダンパを用いて所定の閉塞制動機能を発揮することができる。よって、本構成によれば、ダンパの小容量化によるカムヒンジ装置の低コスト化を図ることができる。
また、本構成によると、第1連結対象物に対する第2連結対象物の回動角度が第2の回動域にあるときには、加圧部材に形成された第2の弾接部が選択的にスライダの側面に弾接されるので、スライダとカムレバーとの間に作用する摩擦力によって、第2連結対象物の回動に制動がかけられる。つまり、本構成によると、第2の回動域においては、スライダとカムレバーとの間に作用する摩擦力と、スライダと加圧部材との間に作用する摩擦力の合計で、第2連結対象物の回動を制動できるので、スライダとカムレバーとによって構成されるカム機構の設計を厳密に行わなくても、所定のフリーストップ機能を発揮することができる。よって、本構成によれば、スライダとカムレバーとによって構成されるカム機構の設計を容易化することができる。
また本発明は、前記構成のカムヒンジ装置において、前記加圧部材は、前記連結軸を介して前記ケース及び前記カムレバーに連結されていることを特徴とする。
本構成によると、加圧部材をケースの所定位置に摺動不能に保持できるので、第1の回動域及び第2の回動域において、スライダとの間に適切な摩擦力を発生させることができる。また、ケースに対する加圧部材の取り付けに特別な部材を必要としないので、カムヒンジ装置を構成する機構部の構成を簡略化できる。
また本発明は、前記構成のカムヒンジ装置において、前記スライダは、側面の一部に、前記第1の回動域において前記第1の弾接部が選択的に弾接される突起を有していることを特徴とする。
上記構成によると、第1連結対象物に対する第2連結対象物の回動角度が第1の回動域にあるとき、第1の弾接部を突起上に乗り上げさせることができるので、第1の弾接部の弾性変形量を増加できて、加圧部材とスライダとの間に作用する摩擦力を高めることができる。よって、第1の回動域におけるスライダの制動力を高めることができ、小容量のダンパを用いた場合にも、より確実に閉塞制動機能を発揮させることができる。
本発明によると、カムヒンジ装置の設計を容易化できると共に、カムヒンジ装置を安価に製造できる。
実施形態に係るカムヒンジ装置の分解斜視図である。 実施形態に係るカムヒンジ装置の閉状態の斜視図である。 実施形態に係るカムヒンジ装置の開状態の斜視図である。 実施形態に係るスライダの斜視図である。 実施形態に係る加圧部材の第2の弾接部側から見た斜視図である。 実施形態に係る加圧部材の第1の弾接部側から見た斜視図である。 実施形態に係る加圧部材の第2の弾接部側から見た正面図である。 実施形態に係る加圧部材の側面図である。 実施形態に係るカムヒンジ装置の動作説明図である。 実施形態に係るカムヒンジ装置の動作に応じた第1の弾接部とスライダとの弾接状態の変化を示す動作説明図である。 実施形態に係るカムヒンジ装置の動作に応じた第2の弾接部とスライダとの弾接状態の変化を示す動作説明図である。 カムヒンジ装置に作用する開方向のトルク及び閉方向のトルクの関係を示すグラフ図である。
以下、本発明に係るカムヒンジ装置の実施形態を、図に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施するものを含む。
図1に示すように、実施形態に係るカムヒンジ装置1は、有底筒状のケース2と、ケース2に回動自在に連結されるカムレバー3と、ケース2とカムレバー3とを回動自在に連結する連結軸4と、ケース2内に摺動自在に収納されるスライダ5と、ケース2内に収納され、スライダ5に制動力を付与するダンパ6と、ケース2内に収納され、カムレバー3とスライダ5との間に弾性力を付与する付勢部材7と、ケース2内に収納され、スライダ5の側面に当接される加圧部材8と、を備えて構成されている。
これらの各部材のうち、ケース2、カムレバー3及びスライダ5については、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の樹脂材料をもって、それぞれ一体に形成される。
ケース2は、スライダ5、ダンパ6、付勢部材7及び加圧部材8を収納可能な形状及び容積を有しており、上辺部の一端寄りには、連結軸4の貫通孔21が開設された2つの連結部22が対向に形成されている。また、連結部22の近傍には、ケース2に対するカムレバー3の可動範囲を規制するための規制溝23が形成されている。
カムレバー3は、図2及び図3に拡大して示すように、略箱形の外観形状を有し、外面には、ケース2に形成された2つの連結部22の間に挿入可能な連結突起31が形成されている。連結突起31には、連結軸4の貫通孔(図示省略)が開設されている。また、連結突起31の中央部分には、ケース2に対するカムレバー3の可動範囲を規制するための規制突起32が外向きに形成されている。さらに、カムレバー3の内部には、スライダ5の上面に当接されるカム面33が形成されている。
ケース2とカムレバー3とは、ケース2内にスライダ5、ダンパ6、付勢部材7及び加圧部材8を収納した状態で、ケース2に開設された貫通孔21及びカムレバー3に開設された図示しない貫通孔に連結軸4を一連に挿入することによって、予め設定された有限の角度範囲内においてのみ回動自在であるように組み立てられる。即ち、図2は、ケース2に対するカムレバー3の閉状態、図3は、ケース2に対するカムレバー3の開状態を示している。そして、図2に示す閉状態からカムレバー3を上向きに回動すると、カムレバー3の回動角度が予め設定された回動角度に達したとき、ケース2の規制溝23にカムレバー3の規制突起32が当接され、それ以上のカムレバー3の回動が規制される。
ケース2は、図示しない第1連結対象物(例えば、事務機器の機器本体)に取り付けられる。また、カムレバー3には、図示しない第2連結対象物(例えば、事務機器の原稿圧着板)が取り付けられる。第2連結対象物は、ケース2に対してカムレバー3が閉状態にあるときに、第1連結対象物の上面を閉塞する閉塞状態となる。また、第2連結対象物は、ケース2の規制溝23にカムレバー3の規制突起32が当接されたときに、第1連結対象物の上面が最大限に開放された開放状態となる。複合機等の事務機器においては、第2連結対象物の可動範囲が、0°(閉塞状態)〜90°(全開状態)の範囲に設定されることが多い。
また、複合機等の事務機器においては、第2連結対象物の可動範囲(0°〜90°)のうち、第1の回動域(例えば、0°〜15°)については、第2連結対象物に加えていた力を除くと、第2連結対象物が閉塞状態まで緩やかに自重落下して、閉塞制動機能が発揮され、第2の回動域(例えば、15°〜60°)については、第2連結対象物に加えていた力を除くと、第2連結対象物が、力を除いたときの位置に保持されて、フリーストップ機能が発揮されることが求められる。カムレバー3のカム面33、スライダ5、ダンパ6、付勢部材7及び加圧部材8は、カムヒンジ装置1がこれらの機能を発揮するように構成され、所定の配列で配置されている。
即ち、図9に示すように、ダンパ6は、ケース2の底面に形成された筒状のダンパ収納部24内にシリンダ6aが収納され、シリンダ6aから突出されたピストンロッド6bをスライダ5側に向けて、ケース2の中心部に安定に保持されている。また、付勢部材7は、ダンパ収納部24の外周に配置され、下端部がケース2の底面に当接される。ダンパ6としては、シリンダ6aの内部に非圧縮性のシリコンオイルが充填された流体ダンパが用いられるが、他種のダンパであっても構わない。また、図1及び図9においては、付勢部材7の一例としてコイルばねが例示されているが、他種の弾性体であっても構わない。
スライダ5は、ダンパ6の制動力及び付勢部材7の弾性力を受圧可能な形状に形成されており、その上面には、カムレバー3のカム面33が当接される山型のカム受け面51が形成されている。カム受け面51の形状は、カムレバー3が第1の回動域にあるときには、図9(a)(b)に示すように、ダンパ6の制動力がスライダ5に作用する位置までスライダ5を移動させ、カムレバー3が第2の回動域にあるときには、図9(b)(c)に示すように、ダンパ6の制動力がスライダ5に作用しない位置までスライダ5を移動させるように形成される。
また、スライダ5には、図4に示すように、相対向する2つの側面の上辺部に第1の傾斜面52が形成されると共に、他の1つの側面の上辺部に第2の傾斜面53が形成されている。さらに、第2の傾斜面53が形成される他の1つの側面の中ほどには、正面形状が横向き長方形で、側面形状が台形の突起54が形成されている。加えて、スライダ5の各側面には、カム受け面51を含む上面部から下面方向に延びる複数の凹溝55が、相平行に形成されている。凹溝55は、加圧部材8との間に発生する摩擦力の大きさを調整するためのもので、必要とする摩擦力の大きさに応じて、幅及びピッチが適宜調整される。
加圧部材8は、図5〜図8に示すように、カムレバー3が第1の回動域にあるときに、スライダ5に形成された突起54の表面に選択的に弾接される第1の弾接部81と、第1の弾接部81の左右に相対向に設けられ、カムレバー3が第2の回動域にあるときに、スライダ5の側面に選択的に弾接される第2の弾接部82と、を備えている。第1の弾接部81には、カムレバー3が第2の回動域にあるときに、突起54を入れ込むための開口部83と、加圧部材8をケース2に係合させるための係合部84が形成されている。一方、第2の弾接部82には、加圧部材8を連結軸4に取り付けるための透孔85と、ケース2に形成された図示しない係合突起に係合する回り止め86が形成されている。
第1の弾接部81は、図8に示すように、上半部に対して下半部が、下方に至るにしたがって上半部の垂直下方から離れる方向に傾斜されている。これにより、スライダ5に形成された突起54との間に所定の摩擦力を発生できる。また、第2の弾接部82は、図7に示すように、上半部に対して下半部が、下方に至るにしたがって互いに接近する方向に傾斜されている。これにより、スライダ5の側面との間に所定の摩擦力を発生できる。なお、加圧部材8は、金属板を用いて一体に形成されるが、スライダ5との間に所要の摩擦力を発生できるものであれば、材質に制限はない。
加圧部材8は、ケース2内に収納した状態で、ケース2とカムレバー3とを連結する連結軸4を透孔85内に貫通させることによって、ケース2及びカムレバー3と一体に取り付けられる。また、第2の弾接部82に形成された回り止め86を、ケース2に形成された図示しない係合突起に係合させるので、ケース2に対してカムレバー3を回動しても、ケース2内で加圧部材8が回動することはない。
次に、実施形態に係るカムヒンジ装置1の動作及び効果を、図9〜図12に基づいて説明する。
第1連結対象物に対して第2連結対象物が閉塞状態にあるとき、即ち、ケース2に対するカムレバー3の回動角度が0°であるとき、スライダ5は、図9(a)に示すように、カムレバー3のカム面33によってケース2の底面方向に押し込まれている。よって、ダンパ6は、シリンダ6a内にピストンロッド6bが最も押し込まれた状態にあり、付勢部材7は最も圧縮された状態にある。さらに、カムレバー3のカム面33は、山型に形成されたカム受け面51の右側(連結軸4に近い側)の斜面に当接されている。従って、この状態においては、第2連結対象物の自重に基づくトルクがカムレバー3の閉方向に作用しており、第2連結対象物は第1連結対象物の上面に安定に圧着されている。
また、この状態においては、図10(a)に示すように、加圧部材8に形成された第1の弾接部81がスライダ5の側面に形成された突起54の表面上に乗り上げており、第1の弾接部81の弾性変形に伴う摩擦力がスライダ5に作用している。なお、この状態においては、図11(a)に示すように、第2の弾接部82がスライダ5の側面から離れており、第2の弾接部82の弾性変形に伴う摩擦力はスライダ5に作用していない。
この状態から第2連結対象物を開方向に操作し、ケース2に対するカムレバー3の回動角度が第1の回動域の範囲内となる位置で停止すると、図9(b)に示すように、カムレバー3のカム面33が山型に形成されたカム受け面51の頂部に移動し、スライダ5が上昇する。この状態においても、第2連結対象物の回動角度が小さいために、第2連結対象物の自重に基づくトルクがカムレバー3の閉方向に作用している。
第2連結対象物を開方向に操作すると、ダンパ6のピストンロッド6bは、スライダ5の上昇に追従して伸長し、シリンダ6aからの突出量が大きくなる。また、この状態においては、図10(b)に示すように、スライダ5の突起54が加圧部材8の第1の弾接部81に開設された開口部83内に入り込み、第1の弾接部81の弾性変形に伴う摩擦力がスライダ5に作用しない状態となる。さらに、この状態においては、図11(b)に示すように、加圧部材8に形成された第2の弾接部82の先端がスライダ5に形成された第1の傾斜面52に当接されており、第2の弾接部82の弾性変形に伴う摩擦力がスライダ5に作用しない状態となる。
なお、図9(b)、図10(b)、図11(b)は、それぞれ、ケース2に対するカムレバー3の回動角度が第1の回動域と第2の回動域との境界となる位置で第2連結対象物を停止させた状態を示している。
第1の回動域の範囲内で第2連結対象物を回動した後、第2連結対象物に加えていた力を除くと、第2連結対象物は、自重で閉塞方向に回動する。このとき、ダンパ6のピストンロッド6bがシリンダ6a内に押し込まれるので、第2連結対象物の下降に制動がかけられ、第2連結対象物は緩やかに閉塞位置まで自重落下する。また、第2連結対象物の自重落下に伴って、カムレバー3が図9(b)の位置から図9(a)の位置まで回動されるので、スライダ5が図10(b)の位置から図10(a)の位置まで下降する。これにより、図10(a)に示すように、加圧部材8の第1の弾接部81がスライダ5の突起54の表面上に乗り上げ、第1の弾接部81の弾性変形に伴う摩擦力がスライダ5に作用して、スライダ5の下降に制動がかけられる。このように、第2連結対象物の自重落下時には、ダンパ6による制動が、第1の弾接部81の弾性変形に伴う摩擦力による制動によって補助されるので、ダンパ6の小容量化が可能となる。よって、カムヒンジ装置1の低コスト化を図ることができる。
一方、第2連結対象物を開方向に操作し、ケース2に対するカムレバー3の回動角度が第2の回動域の範囲内となる位置で停止すると、図9(c)に示すように、カムレバー3のカム面33が山型に形成されたカム受け面51の左側(連結軸4から遠い側)の斜面に移動し、スライダ5が上昇する。第2連結対象物を第2の回動域まで回動した場合には、第1の回動域まで回動した場合よりも第2連結対象物の回動角度が大きくなるので、第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力に基づくトルクとの差は、第2連結対象物を第1の回動域まで回動した場合よりも小さくなる。
この状態においては、図9(c)に示すように、ダンパ6のピストンロッド6bとスライダ5との係合が解除され、スライダにはダンパ6の制動力が作用しない状態になっている。また、この状態においては、図11(c)に示すように、加圧部材8の第2の弾接部82の先端がスライダ5の側面に当接される。したがって、スライダ5には、第2の弾接部82の弾性変形の伴う摩擦力が作用する。一方、この状態においては、図10(c)に示すように、スライダ5の突起54が加圧部材8の第1の弾接部81に開設された開口部83内に入り込んでいるので、加圧部材8の第1の弾接部81の弾性変形に伴う摩擦力がスライダ5に作用しない状態となっている。
なお、図9(c)、図10(c)、図11(c)は、それぞれ第2連結対象物を第2の回動域の上限(60°)まで回動させた状態を示している。
第2の回動域の範囲内で第2連結対象物を回動した後、第2連結対象物に加えていた力を除くと、第2連結対象物は、第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力に基づくトルクとのバランスによって、力を除いた位置で停止しようとする。しかしながら、第2の回動域の全範囲で第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力に基づくトルクとを完全にバランスさせることは実際上困難であるので、第2連結対象物は、両トルクの差分によって、開方向又は閉方向に移動しようとする。
実施形態のカムヒンジ装置1は、前記したように、第2連結対象物を第2の回動域まで回動したとき、加圧部材8の第2の弾接部82の先端がスライダ5の側面に当接され、スライダ5に第2の弾接部82の弾性変形の伴う摩擦力が作用する。従って、実施形態のカムヒンジ装置1によれば、仮に第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力に基づくトルクとが完全にバランスしていない場合にも、スライダ5及びこれに連接されたカムレバー3の動作に制動をかけることができ、第2連結対象物を停止位置で安定に保持できる。よって、実施形態のカムヒンジ装置1によれば、カム面33及びカム受け面51を含む機構部の設計を容易化することができる。
図12は、第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力に基づくトルクとの関係を示している。図の横軸は第2連結対象物の回動角度であり、縦軸はトルク値である。図12は、第2連結対象物の回動角度が0°〜15°を第2連結対象物の自重で第2連結対象物が閉方向に回動する自重落下範囲(第1の回動域)、15°〜60°を第2連結対象物が第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力に基づくトルクとのバランスで停止するフリーストップ範囲(第2の回動域)としている。
図12において、●印の曲線は、第2連結対象物の自重に基づくトルクを示しており、▲印の曲線は、付勢部材7の弾性力とカム形状に基づくトルクを示している。第1の回動域において第2連結対象物を緩やかに自重落下させるためには、第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力とカム形状に基づくトルクとの差を適切に調整する必要がある。また、第2の回動域において第2連結対象物を停止させるためには、第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力とカム形状に基づくトルクとの差を0にする必要がある。
しかしながら、第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力とカム形状に基づくトルクとの関係が、このような理想的な関係となるようにカムヒンジ装置1の機構部を設計することは事実上困難であり、実際には、図12に示すように、理想的な関係から乖離したものとなりやすい。本発明のカムヒンジ装置1は、機構部に加圧部材8を備え、加圧部材8とスライダ5との間に作用する摩擦力によって、第2連結対象物の自重に基づくトルクと付勢部材7の弾性力とカム形状に基づくトルクのトルク差を補完するようにしたので、第1回動域においては、小容量のダンパ6を用いて第2連結対象物を緩やかに自重落下させることができ、第2の回動域においては、第2連結対象物を回動位置において安定に保持することができる。
なお、本発明の要旨は、カムヒンジ装置1の機構部に加圧部材8を備えたことにある。従って、加圧部材8の形状や材質、それに加圧部材8以外の構成については、前記実施形態の記載に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、加圧部材8に、第1の弾接部81と、当該第1の弾接部81の左右両側辺部に形成された2つの第2の弾接部82とを備えたが、第2の弾接部82は、第1の弾接部81の一側辺部に1つのみ形成する構成とすることもできる。
1…カムヒンジ装置、2…ケース、3…カムレバー、4…連結軸、5…スライダ、6…ダンパ、6a…シリンダ、6b…ピストンピン、7…付勢部材、8…加圧部材、21…貫通孔、22…連結部、23…規制溝、24…ダンパ収納部、31…連結突起、32…規制突起、33…カム面、51…カム受け面、52…第1の傾斜面、53…第2の傾斜面、54…突起、55…凹溝、81…第1の弾接部、82…第2の弾接部、83…開口部、84…係合部、85…透孔、86…回り止め

Claims (3)

  1. 第1連結対象物と第2連結対象物とを、有限の角度範囲内においてのみ回動自在であるように連結し、前記第2連結対象物が、前記第1連結対象物を閉塞している閉塞状態から開方向に回動されたとき、前記有限の角度範囲内の第1の回動域においては、前記第2連結対象物に加えていた力を除くと、前記第2連結対象物に制動力が作用して、前記第2連結対象物が前記閉塞状態まで緩やかに自重落下し、前記第1の回動域を超える第2の回動域においては、前記第2連結対象物に加えていた力を除くと、前記第2連結対象物に作用する開方向のトルクと閉方向のトルクとがバランスして、前記第2連結対象物が力を除いたときの位置に保持されるカムヒンジ装置において、
    前記第1連結対象物に取り付けられる有底筒状のケースと、前記第2連結対象物が取り付けられ、前記ケースに連結されるカムレバーと、前記ケースと前記カムレバーとを回動自在に連結する連結軸と、前記ケース内に摺動自在に収納されたスライダと、前記ケース内に収納され、前記第1の回動域において前記スライダに制動力を付与するダンパと、前記ケース内に収納され、前記カムレバーと前記スライダとの間に常時弾性力を付与する付勢部材と、前記ケース内に摺動不能に収納され、前記スライダの側面に当接可能に構成された加圧部材と、を備え、
    前記加圧部材は、前記第1の回動域において選択的に前記スライダの側面に弾接される第1の弾接部と、前記第2の回動域において選択的に前記スライダの側面に弾接される第2の弾接部と、を備えていることを特徴とするカムヒンジ装置。
  2. 前記加圧部材は、前記連結軸を介して前記ケース及び前記カムレバーに連結されていることを特徴とする請求項1に記載のカムヒンジ装置。
  3. 前記スライダは、側面の一部に、前記第1の回動域において前記第1の弾接部が選択的に弾接される突起を有していることを特徴とする請求項1に記載のカムヒンジ装置。
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