JP4344459B2 - 開閉体のヒンジ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機の原稿圧着板などの開閉体を任意の開き角度で停止保持させることのできるフリーストップ機能を備えたヒンジの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の開閉体のヒンジとして、例えば、実開平3−2628号公報や特公平3−74372号公報などに開示されているようなものがある。そこでは、複写機本体などのベースに取り付けられる固定側ヒンジ体と、この固定側ヒンジ体にヒンジピン回りに上下方向に回動自在に枢支連結され、前記ベースに対し上下方向に開閉回動自在に設置される開閉体の回動基端側に取り付けられる可動側ヒンジ体とを備えている。そして、固定側ヒンジ体と可動側ヒンジ体との間にカム機構と圧縮コイルばねを設け、これらカム機構と圧縮コイルばねとの協同作用により開閉体の重量による閉方向のモーメントとのバランスを保って開閉体を任意の開き角度で停止保持させることができるものとしてある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記開閉体のヒンジでは圧縮コイルばね以外に、カム機構を必要とするが、カム機構を併用することにより組付けの部材点数及び工数を多く要し、構造の複雑化、大型化を招き、コスト高にもなっていた。
また上記開閉体のヒンジでは、原稿圧着板等の開閉体が水平状態に閉じる全閉時に該開閉体の回動先端側が少し浮くことがあり、これにより外光が複写機本体内の光学系へ入って複写ミスを起こしたり、自動原稿送り装置(ADF)を内蔵した原稿圧着板の場合は原稿を真っ直ぐに送られず、紙詰まりを起こす原因になることがあった。
【0004】
本発明の目的は、このような問題を解消するためになされたものであり、上記カム機構の省略化を図ることにより組み付けの部材点数及び工数を減少でき、構造の簡素化、小形化を図れる開閉体のヒンジを提供することにある。
また本発明の目的は、開閉体の全閉時における開閉体の回動先端側の浮き防止、外光の侵入防止を図れる開閉体のヒンジを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、図1及び図2に例示するように、複写機本体などのベース1に取り付けられる固定側ヒンジ体4と、この固定側ヒンジ体4にヒンジピン8回りに上下方向に回動自在に枢支連結され、前記ベース1に対し上下方向に開閉回動自在に設置される開閉体2の回動基端側に取り付けられる可動側ヒンジ体5と、を備える。そして、前記固定側ヒンジ体4の、前記ヒンジピン8よりも下方でかつ開閉体2の回動半径方向外方に偏した位置には、ストッパーピン9が前記ヒンジピン8と平行に固定され、また前記可動側ヒンジ体5にヒンジスライダー10が開閉体2の回動半径方向に移動自在に備えられる。そのヒンジスライダー10は開閉体2の回動半径方向と平行に横長に形成された横長溝11と、この横長溝11に対し直交するよう縦長に形成された縦長溝12とを有し、前記横長溝11に前記ヒンジピン8が、前記縦長溝12に前記ストッパーピン9がそれぞれ摺動自在に挿通され、前記可動側ヒンジ体5と前記ヒンジスライダー10との間には、常に該ヒンジスライダー10を開閉体2の回動半径方向内方に向けて押圧付勢して可動側ヒンジ体5に開方向のモーメントを与える圧縮コイルばね14が装着される。
さらに、本発明では前記縦長溝12の上端において、該縦長溝12の上端から開閉体2の回動半径方向外方へ延出する凹欠部16を設けていることに特徴を有するものである。この場合において、凹欠部16は、前記横長溝11内の開閉体回動半径方向の内方側端部11aの中心点O1 を中心として描く円弧線に沿う円弧形状に形成することができる。
【0006】
【作用】
可動側ヒンジ体に作用する閉方向のモーメントはこの可動側ヒンジ体に取り付けられる開閉体の重量によって生じ、可動側ヒンジ体の開き角度が大きくなるとそのモーメントが小さくなり、逆に前記開き角度が小さくなるとそのモーメントが大きくなる。
いま、開閉体がこれの重量による閉方向のモーメントによってほぼ水平姿勢に閉じる全閉状態においては、圧縮コイルばねは最も短く圧縮した状態にあって、ヒンジピンはヒンジスライダーの横長溝内の開閉体回動半径方向の内方側端部に位置し、ストッパーピンは縦長溝内の上端の凹欠部に位置する。これはヒンジスライダーに作用している圧縮コイルばねの押圧付勢力でヒンジスライダーが開閉体の回動半径方向内方に移動するためであり、この移動により縦長溝内の凹欠部がストッパーピンに嵌まり込んで該凹欠部の下縁がストッパーピンの円周下部側に係合し、この係合作用により開閉体の回動先端側が上向きに浮くのを阻止する。
【0007】
この全閉状態から開閉体の重量による閉方向のモーメント、及びヒンジスライダーの凹欠部とストッパーピンとの係合力に抗して開閉体を持ち上げて開いてゆくと、圧縮コイルばねが次第に伸びてゆき、ヒンジスライダーは横長溝内の開閉体回動半径方向の内方側端部をヒンジピンから、また縦長溝内の上端部をストッパーピンからそれぞれ次第に離して可動側ヒンジ体から開閉体回動半径方向内方へ移動して行く。このとき、圧縮コイルばねの付勢力による開方向のモーメントと、開閉体の重量による閉方向のモーメント及びヒンジスライダーの縦長溝とストッパーピンとの摺動による摩擦力とが釣り合うことによって開閉体を任意開き角度に停止保持させるフリーストップ機能が発揮される。
【0008】
また、開閉体が大きく開くに従いストッパーピンに対し摺動する縦長溝を介してモーメントの回転半径が大きくなるので、圧縮コイルばねは小さいばね力で足りることになる。
ヒンジスライダーの縦長溝がストッパーピンに対し摺動することによりこの摺動面間での摩擦力を大きくとることができるので、フリーストップ効果、および開閉体の重量により生じる閉方向のモーメントによる急激な落下現象を防止するダンパー効果を高めることできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る開閉体の全閉時におけるヒンジの縦断側面図、図2は開閉体の半開き時におけるヒンジの縦断側面図、図3はヒンジの分解斜視図である。
【0010】
図1において、1は複写機本体等のベース、2は原稿圧着板等の開閉体、3は本発明に係るヒンジで、ベース1に対して開閉体2を上下方向に開閉回動自在に取り付けている。ヒンジ3はベース1に図外のビスなどで取り付けられる固定側ヒンジ体4と、開閉体2の回動基端側に図外のビスなどで取り付けられる可動側ヒンジ体5とを備えている。
【0011】
図3に示すように、固定側ヒンジ体4は、ベース1に図外のビスなどで取り付けられる底板4aと、この底板4aの両端から立ち上げた側板4b,4bとを有する形に形成され、側板4b,4bの上端側に枢支孔6,6を設けている。さらに、側板4b,4bの、枢支孔6,6よりも下方でかつ開閉体2の回動半径方向外方に偏した位置には、ストッパーピン支持孔15,15を設けている。
【0012】
一方、可動側ヒンジ体5は、底板5aと、この底板5aの両側端から立ち上げた側板5b,5b、及びこの側板5b,5bから内向きに底板5aと平行に折曲したリップ5c,5cとを有するリップ付き溝形断面に形成され、側板5b,5bの回動基端側の一端に枢支孔7を設け、底板5aの回動先端側端にばね受け板部5dを立ち上げている。この可動側ヒンジ体5は、側板5b,5bの枢支孔7,7を固定側ヒンジ体4の枢支孔6,6に合わせてこれら枢支孔7,6にヒンジピン8を挿通することによって固定側ヒンジ体4に対しヒンジピン8回りに上下方向に回動自在に枢支連結される。固定側ヒンジ体4の側板4b,4bのストッパーピン支持孔15,15には、ストッパーピン9がヒンジピン8と平行に挿通固定される。
【0013】
可動側ヒンジ体5にはヒンジスライダー10が備え付けられる。このヒンジスライダー10は耐摩耗性に優れるポリアセタール系樹脂やポリアミド系樹脂などで成形され、開閉体2の回動半径方向と平行に横長に形成された横長溝11と、この横長溝11の下方でかつ開閉体2の回動半径方向外方に偏した位置に横長溝11に対し直交するよう縦長に形成された縦長溝12とを有するとともに、ばね受け筒部13を開閉体2の回動半径方向外方に向けて形成している。縦長溝12の上端には該縦長溝12の上端より開閉体2の回動半径方向外方へ延出する凹欠部16を設けている。この凹欠部16は、図1に示すように、横長溝11内の開閉体回動半径方向の内方側端部11aの中心点O1 を中心として描く円弧線A上に沿うよう円弧形状に形成している。
【0014】
ヒンジスライダー10は可動側ヒンジ体5の底板5aとリップ5cとの間に開閉体2の回動半径方向に摺動自在に嵌合するとともに、横長溝11に前記ヒンジピン8が、縦長溝12に前記ストッパーピン9がそれぞれ摺動自在に挿通される。可動側ヒンジ体5に対しヒンジスライダー10を開閉体2の回動半径方向に真直ぐに摺動案内させる手段としては、ヒンジスライダー10の上面に凸部10aを設け、この凸部10aを可動側ヒンジ体5のリップ5c,5cの対向端縁同士間の間隙に摺動自在に嵌合させる。
【0015】
ヒンジスライダー10のばね受け筒部13と可動側ヒンジ体5のばね受け板部5dとの間に圧縮コイルばね14を介在させる。この圧縮コイルばね14は、常時、ヒンジスライダー10を開閉体2の回動半径方向内方に向けて押圧付勢することによって可動側ヒンジ体5に開方向のモーメントを付与する。
【0016】
次に、固定側ヒンジ体4をベース1に、可動側ヒンジ体5を開閉体2の回動基端側にそれぞれ取り付けた上記構成のヒンジ3の作動について説明する。
図1では開閉体2がほぼ水平姿勢(水平なベース1と開閉体2の成す角度が0〜−5゜)に全閉した状態図を示している。この状態では、圧縮コイルばね14は最も短く圧縮した状態にあって、ヒンジピン8はヒンジスライダー10の横長溝11内の開閉体回動半径方向の内方側端部11aに、ストッパーピン9は縦長溝12内の上端の凹欠部16内にそれぞれ位置している。この開閉体2の全閉状態は、開閉体2の重量によって生じる閉方向のモーメントの大きさと、圧縮コイルばね14の付勢力によって生じる開方向のモーメントの大きさとが均衡を保つことにより保持される。これと同時に、ヒンジスライダー10の凹欠部16がストッパーピン9に嵌まり込んで該凹欠部16の下縁16aがストッパーピン9の円周下部側に係合し、この係合作用により開閉体2の回動先端側が上向きに浮くのを阻止し、外光が複写機本体内の光学系に入るようなことが無くなる。
【0017】
この全閉状態から開閉体2の重量による閉方向のモーメント、及びヒンジスライダー10の凹欠部16とストッパーピン9との係合力に抗して開閉体2をヒンジピン8回りに上方へ持ち上げて開いてゆくと、図2に示すように、圧縮コイルばね14が次第に伸びてゆき、ヒンジスライダー10は横長溝11内の開閉体回動半径方向の内方側端部11aをヒンジピン8から、縦長溝12内の凹欠部16をストッパーピン9からそれぞれ次第に離して可動側ヒンジ体5から開閉体回動半径方向内方へ移動して行く。このとき、圧縮コイルばね14の付勢力による開方向のモーメントと、開閉体2の重量による閉方向のモーメント及びヒンジスライダー10の縦長溝12の縁12aとストッパーピン9との摺動面間で生じる摩擦力とが釣り合うことによって開閉体2を或る開き角度の範囲、例えば20゜〜60゜の開き角度の範囲内で任意に停止保持させることができ、つまりフリーストップ機能を発揮することができる。
【0018】
このように開閉体2が大きく開くに従いストッパーピン9に対し摺動する縦長溝12を介してモーメントの回転半径r2 が大きくなる(図2参照)。したがって、圧縮コイルばね14は小さいばね力で足り、それだけヒンジ3全体の小形化に寄与できる。
【0019】
ヒンジスライダー10の縦長溝12の縁12aがストッパーピン9に対し摺動することによりこの摺動面間で摩擦力を大きくとることができる。したがって、この摩擦力により前記フリーストップ効果を高めるとともに、開閉体2を閉じるときはその開閉体2が重い場合も落下速度を落してゆっくり閉じて行き、開閉体2の重量により生じる閉方向のモーメントによる急激な落下は防止され、その開閉体2とベース1との間で手をはさむなどの事故を防ぐことができる。
【0020】
ヒンジスライダー10の縦長溝12の上端に該縦長溝12に連続して形成される上記凹欠部16は円弧形状に形成することに限定されず、図4に示すごとく凹欠部16の下縁16aが縦長溝12の縁12aに連続して開閉体2の回動半径方向外方へ向けて真っ直ぐな直線状をなす形に形成するものであってもよく、これにおいても円弧形状の凹欠部16の場合と同様にストッパーピン9に対しスムーズに係合させたり、解除させることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、開閉体の開閉に伴い固定側ヒンジ体のストッパーピンに対し可動側ヒンジ体側のヒンジスライダーの縦長溝を摺動させる機構を採用することにより、従来のヒンジのごときカム機構を省略することができ、それだけフリーストップ機能を有するヒンジの組み付け部材点数及び組み付け工数の減少、およびヒンジ全体の小形化を図ることができる。また、ヒンジスライダーの縦長溝とストッパーピンとの組み合わせによれば、カム機構のような加工精度がさほど要求されず、簡単に組み立て加工することができるという効果を奏する。
とくに、本発明ではヒンジスライダーの縦長溝の上端に凹欠部を設け、開閉体の全閉により該凹欠部がストッパーピンに係合するようにしてあるので、開閉体の全閉時に開閉体の回動先端側が不用意に浮くのを阻止することができ、複写機能などを阻害するのを防止できて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】開閉体の全閉時におけるヒンジの縦断側面図である。
【図2】開閉体の半開き時におけるヒンジの縦断側面図である。
【図3】ヒンジの分解斜視図である。
【図4】ヒンジのヒンジスライダーの他例を示す側面図である。
【符号の説明】
1 ベース
2 開閉体
3 ヒンジ
4 固定側ヒンジ体
5 可動側ヒンジ体
8 ヒンジピン
9 ストッパーピン
10 ヒンジスライダー
11 横長溝
12 縦長溝
14 圧縮コイルばね
16 凹欠部

Claims (2)

  1. 複写機本体などのベースに取り付けられる固定側ヒンジ体と
    、この固定側ヒンジ体にヒンジピン回りに上下方向に回動自在に枢支連結され、前記ベースに対し上下方向に開閉回動自在に設置される開閉体の回動基端側に取り付けられる可動側ヒンジ体と、を備えており、
    前記固定側ヒンジ体の、前記ヒンジピンよりも下方でかつ開閉体の回動半径方向外方に偏した位置には、ストッパーピンが前記ヒンジピンと平行に固定されており、
    前記可動側ヒンジ体にヒンジスライダーが開閉体の回動半径方向に移動自在に備えられ、このヒンジスライダーは開閉体の回動半径方向と平行に横長に形成された横長溝と、この横長溝に対し直交するよう縦長に形成された縦長溝とを有し、前記横長溝に前記ヒンジピンが、前記縦長溝に前記ストッパーピンがそれぞれ摺動自在に挿通されており、
    前記可動側ヒンジ体と前記ヒンジスライダーとの間に、該ヒンジスライダーを常に開閉体の回動半径方向内方に向けて押圧付勢して可動側ヒンジ体に開方向のモーメントを与える圧縮コイルばねが装着されており、
    前記縦長溝の上端において、該縦長溝の上端から開閉体の回動半径方向外方へ延出する凹欠部を設けていることを特徴とする開閉体のヒンジ。
  2. 前記凹欠部が、前記横長溝内の開閉体回動半径方向の内方側端部を中心点を中心として描く円弧線に沿う円弧形状に形成されている請求項1記載の開閉体のヒンジ。
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