以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、孔版印刷機の構成概略図である。図1に示すように、印刷機本体1には、後端部に給紙部2が設けられ、前端部に排紙部3が設けられ、上側に画像読取部4が設けられている。印刷機本体1内には、前後方向の概ね中間部に印刷部5が設けられ、該印刷部5の上部後側には製版部6が設けられ、印刷部5の上部前側には排版部7が設けられている。
給紙部2の前端部には、給紙ローラ31及び捌き板32が配置されており、給紙台33上に積載された印刷用の用紙Pを、上から一枚ずつ供給するようになっている。
排紙部3は、排紙ベルト21と、ファン22と、排紙台23とを備えており、ファン22により排紙ベルト21上の用紙Pを排紙ベルト21に吸着し、排紙台23上へ排出するようになっている。
画像読取部4は、ガラスの原稿台(図示せず)に載置された原稿の画像を読み取り、画像データを生成する。画像データは、外部のコンピュータから受信するようにしてもよい。
印刷部5は、印刷ユニット25、押圧ローラ12、タイミングローラ18を備える。印刷ユニット25は、印刷ドラム11を備える。印刷ドラム11は、製版部6から送られた製版済みの原紙Nを外周面に巻回する。印刷ドラム11の外周面に巻回される原紙Nのサイズは、A3用、B4用、リーガル用等複数種類あり、各種原紙Nの大きさに応じた範囲にインク供給用の孔(図示省略)が周面に形成された印刷ドラム11が印刷機本体1に対し装着され、使用される。インク通過用の孔の形成範囲の外側にスクリーン38が巻回され固定されている。
印刷ドラム11は、各種サイズの原紙Nのうち最大となる例えばA3用の原紙Nが巻回可能な周長に設定され、該周長に応じた長さに印刷ドラム11の径寸法が設定される。また、印刷ドラム11の軸方向長さも、最大サイズの原紙Nの幅寸法に応じた長さに設定される。これより、印刷ドラム11に巻回される原紙Nのサイズが異なり、印刷ドラム11の周面に形成されるインク通過用の孔の形成領域及びスクリーン38の巻回範囲が異なっても、印刷ドラム11の直径は、原紙Nのサイズに関わらず同一のものが用いられることとなる。そして、下方の押圧ローラ12に対する当接は同じ状態に維持される。
このように、印刷ドラム11の直径が共通するので、各種印刷ドラム11は、一台の孔版印刷機Iに対して原紙サイズの異なる印刷ドラム11を互換性をもって装着できる。印刷しようとする印刷物の原稿サイズが、A3とA4である場合のように、使用されるマスターロール13の幅方向長さが同一の原紙Nを用いて製版することが可能である場合には、インク通過用の孔の形成領域及びスクリーン38の巻回範囲が異なるA3用の印刷ドラムとA4用の印刷ドラムとを印刷機本体1に対し着脱し、交換することで、一台の孔版印刷機Iを用いて2種類の大きさの印刷が行える。
印刷ドラム11の内側には、インクローラ10、スキージローラ19及びインク供給装置55が設置されている。インクローラ10は印刷ドラム11に内接し、スキージローラ19はインクローラ10に転接する。インクローラ10とスキージローラ19の転接部にインク溜まり部40が形成される。インク供給装置55は、インク溜り部40に上方からインクを供給する。
また、印刷ドラム11の周壁の所定箇所に左右方向に延びるクランプ54が設けられる。クランプ54は、製版後の原紙Nの端部を挟持する。製版後の原紙Nは、端部をクランプ54により固定され、印刷ドラム11の回転に伴ってスクリーン38の外側に巻回される。
押圧ローラ12は、印刷ドラム11に下方から圧接可能に対向し、上下方向移動可能となっている。タイミングローラ18は、印刷部5の後部近傍に上下一対配置されている。該タイミングローラ18は印刷ドラム11の駆動と同期して適宜タイミングで回転し、印刷用の用紙Pを印刷部5へ送り込むようになっている。
製版部6は、製版装置を構成する。製版部6は、サーマルヘッド14、マスターロール装着部15及び通信ユニット53を備えている。サーマルヘッド14は、画像読取部4で生成した画像データに基づいて、マスターロール13から繰り出された原紙Nを穿孔して製版する。サーマルヘッド14には対向してプラテンローラ27が配置される。製版部6には更に、プラテンローラ27の下流側に、切断具28、原紙搬送ローラ30が配置されている。切断具28は回転刃であり、製版用紙搬送経路を横断する方向に、回転刃モータによって往復駆動されるようになっている。
図2は、マスターロール装着部15、板状部材57及び通信ユニット53の斜視図を示す。図3は、マスターロール装着部15にマスターロール13が装着された状態を示す。筐体41は、図2に示すように前板42、後板43、底板44および側板45を備えてほぼ直方体の無蓋の箱状に形成されている。また図3に示すように、マスターロール13は、この筐体41内に上から差し込まれ、原紙Nが後板43側から上方へ引き出されて前板42の上端を越えて図3における右側となる前方へ送られる。前板42は製版部6の筐体設置部59に固定されており、原紙Nが前方へ引っ張られてもマスターロール13はこの前板42に突き当たって止められる。
後板43、底板44および側板45は一体に形成されており、底板44の幅方向両端の後部には、下方に突出した突出部47が形成される。突出部47は、底板44の下方で該底板44に対向する板状部材57に形成された前後方向に延びる溝58に挿通されコイルばねよりなる弾性体48の後端部を係止する。弾性体48の前端部は、前板42の幅方向両端下部に係止され、後板43、底板44及び一対の側板45は、前方へ付勢されている。
これは、筐体41内のマスターロール13の原紙N残量が少なくなってロール径が小さくなっても後板43がマスターロール13を前板42へ押し付けて筐体41内でのマスターロール13の姿勢を安定させるための構成である。したがって、弾性体48をコイルばねに替えて後板43を前方へ適度な押圧力で付勢する手段を用いることは勿論可能である。例えば、板ばねやゴム等の弾性体で後板43を前方へ引っ張っても押してもよく、或いは弾性体を用いずとも、固定された前板42に対して一体的に移動可能な後板43、底板44及び側板45からなる後部構成全体を十分な重さにして前方へ重力でスライドさせるような傾斜を利用することも可能である。その傾斜は、底板44の下に用いてもよいし、或いは後板43の背面に傾斜を設けてその傾斜に沿って落下する十分な重さのコロで後板43を前方へ押すなど、種々の構成が採用可能である。
また、後板43だけを別体に構成して後板43だけを単一に移動させてもよい。これらの移動体の動作は、できるだけ滑らかであるのがよく、また筐体41内でのマスターロール13の回転も滑らかになり、摩擦が小さくなるように、後板43の押圧力は適度な大きさにされるべきである。また、マスターロール13の浮き上がりを防止するために、マスターロール13と前板42との接触における摩擦よりも後板43との接触における摩擦のほうが大きくなるようにするのがよい。例えば後板43内面に摩擦係数を高める材質をコーティングしたりゴムシートを貼り付けたり、あるいは前板42内面に、摩擦を小さくするようにフッ素樹脂コーティングを施すことができる。
側板45は、前方上方端が切り欠かれており、マスターロール13を取り出す際に側方から芯体61内に指を差し入れることができる。
上述した一体の後部構成の前後方向への移動は、前板42の下端から後方へ延びるガイドシャフト50に対して、底板44の下方へ突出させたスライダー51が嵌合することによって案内される。ガイドシャフト50及びスライダー51の幅方向における設置位置は、筐体41の幅方向中央部からずれた位置である。図2ではガイドシャフト50及びスライダー51が、筐体41及び筐体設置部59の幅方向中央部Cより距離Lgだけ後方から見て右側にずれた位置にある場合を示す。
また、底板44の幅方向両端縁近傍には、一対の支持凸部60が設けられている。支持凸部60は、半球状に形成される。支持凸部60は、下方の板状部材57の溝58bと溝58cの間の部分に球面の頂部が点接触し、これより、筐体41を点で支持するようになっている。支持凸部60が筐体41を点で支持することで、板状部材41に対し筐体41が前後に摺動した際の摩擦抵抗を低減することができ、異音の発生を抑制可能である。そして、ガイドシャフト50及びスライダー51の設置位置を幅方向中央部Cからずらせることで、筐体41の支点を幅方向中央部Cから若干ずらせつつ、支持凸部60により点で支持することで、筐体設置部59における筐体41を安定させている。
また、筐体41の幅方向中央部Cより、ガイドシャフト50及びスライダー51設置位置とは反対となる図2において後方から見た場合に左側に所定距離Lt離間した箇所には、底板45に矩形状の開口部52が形成されている。開口部52の下方には、マスターロール13に設けられた無線タグ64との間で通信を行う通信ユニット53が設置されている。通信ユニット53は、マスターロール装着部15にマスターロール13が装着された際、無線タグ64と無線通信を行って必要な情報を送受信する。
通信ユニット53は、図示省略するが、CPU、メモリ、変調部、フィルタ、復調部、アンテナ等を備えた公知のものが用いられる。CPUは、制御装置8との通信制御や通信ユニット53の動作を制御する演算装置である。メモリには、CPUが制御を行う上で必要となるプログラムやデータが記憶されている。 変調部は、無線タグ64に送信する指示や情報を搬送波にのせる。フィルタは、変調後の波形のうち、通信に不要な周波数成分を取り除く。変調部の出力は、通信対象となる無線タグ64と対向するアンテナに入力され、通信対象となる無線グタ64に受信され、指示や情報が伝達される。復調部は、無線タグ64が記憶する情報等がのせられた無線タグ64からの反射波の復調を行う。
マスターロール装着部15に装着されるマスターロール13は、筒状の芯体61の周りに所定長さの孔版印刷用の原紙Nが巻回されている。マスターロール13の筒心方向Gの長さは各種原紙サイズ毎に異なっている。芯体61の外周面且つ原紙Nの内方には、無線タグ64が設けられている。無線タグ64は、IC、メモリおよびアンテナを備えている。ICは、制御演算回路、通信ユニット53との間で通信を行うための変復調回路、通信ユニット53から送られた搬送波等から電力を得る整流回路等を備えている。メモリには、マスターロール13の種類、メーカー名、サイズ、版数、原紙Nの長さ、原紙Nのフィルム強度やフィルム厚さ、製造年月日、原紙Nに適する製版後1枚目の印刷時の印刷ドラム11に対する押圧ローラ12のプレス圧の大きさ等各種の情報が記憶されている。
通信ユニット53及び無線タグ64のアンテナは、いずれもコイル状に形成されたアンテナコイルにより構成される。この通信ユニット53及び無線タグ64双方のアンテナコイルは、同程度の大きさとされる。通信ユニット53によるアンテナコイルへの電圧印加によって、コイル周辺に生じた磁界が、電磁誘導によって無線タグ64のアンテナに電圧を発生させ、通信が行われる。
通信ユニット53のCPUは、制御装置8からの指示を受け、無線タグ64と通信を行って、無線タグ64のメモリの情報を読み取り、読み取った情報を制御装置8に送信するとともに、制御装置8から受け取った情報を無線タグ64に書き込む。
通信ユニット53及び無線タグ64の大きさ、形状は特に限定されないが、設置スペース及び価格の点で小さいタイプのものを選択するのが好ましい。また、無線タグ64は、芯体61に容易に貼り付けられる点でラベル型を用いることが好ましい。無線タグ64のアンテナコイルの導電体の配列パターンは扁平形状に形成されたものを用いる。
図4はこのようなアンテナコイルの導電体の配列パターンが扁平形状となっている無線タグ64の3つの例を示す平面図である。図4(a)に示す無線タグ64aは、アンテナコイル65aの導電体の配列パターンが略楕円形に形成されている。また、図4(b)に示す無線タグ64bのアンテナコイル65bの導電体の配列パターンは、略矩形の螺旋形状に形成されている。2つの無線タグ64a,64bは、いずれも導電体の配列パターンの長径Ta、Tbの方向Qを同図における上下方向として示し、短径Uaの方向Vは水平方向として示している。
無線タグ64a,64bは、扁平形状の配列パターンの長径Ta,Tbの方向Qが、芯体61の筒心方向Gに交差するよう設置される。交差角度は0度でなければ、即ち長径Ta,Tbの方向Qが芯体61の筒心方向Gと平行でなければよく、交差角度は0度より大きく180度より小さい範囲で自由に設定可能である。図5(a)は、一例として、無線タグ64aの長径Taの方向Qが芯体61の筒心方向Gに対し角度αで交差する場合を示す。そして、図5(a)では、角度αが45度である場合を示している。
一方、図4(c)に示す無線タグ64cは、アンテナコイル65cの導電体の配列パターンが略正方形の螺旋形状に形成されている。この無線タグ64cのようにアンテナコイル65cの導電体の配列パターンが略正方形の螺旋形状に形成される場合、無線タグ64cはこの略正方形の対向する二辺aとc,またはbとdが、芯体61の筒心方向Gに交差する向きに設置される。略正方形の対向する二辺aとc,またはbとdと筒心方向Gの交差角度は0度でなければ、即ち対向する二辺aとc,またはbとdの方向K1またはK2が芯体61の筒心方向Gと平行でなければよく、交差角度は0度より大きく180度より小さい範囲で自由に設定可能である。図5(b)は、一例として、略正方形の無線タグ64cが、アンテナコイル65cの対向する二辺bとdに沿う方向K2が、芯体61の筒心方向Gに角度βで交差するよう設置される場合を示す。そして、図5(b)では、角度βが60度である場合を示している。
アンテナコイルの導電体の配列パターンは、図4(b)に示す略矩形の螺旋形状に形成されたものを用いることが好ましい。アンテナコイルの配列パターンが略矩形の螺旋形状に形成される場合、アンテナコイル65bの配列パターンの短径Ubの方向Vが筒心方向Gとなる向きであって、長径Tbが筒心方向Gに直交する向きに設置されることが好ましい。
図6は、アンテナコイル65bの配列パターンの短径Ubの方向Vが、筒心方向Gとなる向きに設置された3本のマスターロール13の芯体61a,61b,61cを示す。同図に示すマスターロール13の芯体61a、61b、61cは筒心方向Gのサイズが異なる。芯体61a,61b,61cの筒心方向Gの長さLa,Lb,Lcは、例えば、A3用、B4用、リーガル用等原紙Nの大きさに応じてそれぞれ異なっている。
芯体61には、筒心方向中央部Eから所定距離Lt離間した位置に無線タグ64a、64b、64cが設けられている。このように、無線タグ61を設ける位置は、芯体61の筒心方向Gでいずれかの端部を基準とするのではなく、筒心方向中央部Eを基準としている。これより、無線タグ64と通信を行う通信ユニット53の設置位置を、筐体設置部59の幅方向中央部Cから所定距離Lt離間した位置とすることができる。よって、全てのサイズのマスターロール13について同じ通信ユニット53を用いて無線タグ64と通信することができる。このため、マスターロール13のサイズに合わせて通信ユニット53の設置位置を変更する場合と比較して、無線タグ64との通信に要する筐体設置部59に設置する部品の点数を抑えることができる。
図6において、芯体61a,61b,61cの筒心方向中央部Eと、扁平形状の無線タグ64a,64b,64cの右端Jとの間の距離Ltは、複数種類あるマスターロール13のうち最も小さいサイズのマスターロール13の芯体61の筒心方向中央部Eから一方の端部までの距離Ldより短い長さとなる。そして、芯体61cの筒心方向中央部Eから一方の端部までの距離Ldの5分の1乃至5分の4程度とすることが好ましい。これより、筐体41の下方のガイドシャフト50設置位置の側方を、通信ユニット53の設置空間として用いることができる。
筐体41は、装着されるマスターロール13の原紙サイズに対応した大きさのものが設置される。よって、筐体41の幅方向長さは、原紙サイズに応じて複数種類存在する。各種サイズの筐体41が、設置される際、筐体41の幅方向いずれか一方の端部を、筐体設置部59の端部に合わせて設置するのではなく、製版部6の筐体設置部59の幅方向中央部Cを基準とし、これに筐体41の幅方向中央部を位置合わせして設置している。
筐体41の下方に設置された板状部材57は、筐体41の幅方向長さが原紙サイズに応じて異なる場合、幅方向における突出部47の位置も異なるため、該突出部47が挿通される溝58の形成位置が異なったものとなる。しかし、本実施形態では、複数のサイズの筐体41の幅方向長さに応じた複数の箇所に溝58a、58b、58cが形成された板状部材58を用いている。図2は、原紙サイズが一番大きいA3用の原紙Nが巻回されたマスターロール13が装着される筐体41を示している。そして、図2では、板状部材57の複数の溝58a、58b、58cのうち、一番外側の溝58aに突出部47が挿通されている。
このように、板状部材57に複数の溝58を形成することで、筐体41の大きさが異なっても板状部材57を共通で用いることができ、複数種類の孔版印刷機Iについて共通部品を用いることで、全体として部品点数を抑えることができる。
排版部7は、引込みローラ16及び巻取りローラ17等を備えており、前記印刷ドラム11に装着された使用済みの原紙Nを取り外し、引込みローラ16で排版部7内部に引き込み、排版ロールとして巻き取るようになっている。
給紙部2の給紙台33から排紙部3の排紙台23に至る用紙搬送路Sには、複数箇所に用紙センサ66が設置され、用紙Pの搬送状態が随時検出され,監視される。
孔版印刷機Iは制御装置8を備える。制御装置8は、それぞれ図示しない、CPU(中央演算処理装置)、I/O(入出力)ポート、ROM(読み出し専用記憶装置)、RAM(読み書き可能な記憶装置)およびタイマ等を備え、それらが信号バスによって接続された構成を有するマイクロコンピュータを具備している。制御装置8は、印刷機本体1内の制御基板配置部に設けられている。
制御装置8は、図示しない操作パネルからの各種信号、各種センサからの検知信号ならびに前記ROMから呼び出された動作プログラムおよび関係データ等に基づいて、各種モータ等の制御対象駆動手段を制御する機能を有する。また、制御装置8は、原稿の画像読取動作、製版動作、排版動作、給紙動作、排紙動作、印刷動作、計数動作並びに操作パネルの液晶表示部を制御する機能を有する。
前記ROMには、孔版印刷機I全体の動作プログラムや必要な関係データ等が予め記憶されており、この動作プログラムは前記CPUによって適宜呼び出される。前記RAMは、前記CPUの計算結果を一時的に記憶する機能、操作パネル上の各種キーおよび各種センサから設定および入力されたデータ信号およびオン/オフ信号を随時記憶する機能等を有している。
制御装置8には、通信ユニット53が電気的に接続されている。通信ユニット53は、マスターロール13に取り付けられた無線タグ64と無線通信を行い、無線タグ64に対して情報の読取または書込を行う機能を有している。すなわち、制御装置8が通信ユニット53に対して、無線タグ64に記憶されている情報の読取や、無線タグ64への情報の書込を指示すると、通信ユニット53は、制御装置8の指示を受けて、無線タグ64に対する情報の読取や書込を行う。
孔版印刷機Iの動作を以下に説明する。画像読取部4に原稿がセットされ、製版キー83が押下されると、先ず画像読み取り工程が実行される。画像読取部4はCCD等の画像センサによって原稿を光学的に読み取って電気信号に変換する。この画像読み取り工程と同時に排版工程が実行され、印刷ドラム11の外周に巻かれた使用済みの原紙Nが引込みローラ16によって印刷ドラム11から剥離され、巻取りローラ17に巻き取られ回収される。
画像読取部4により読み取られ電気信号に変換された情報に従って、製版動作が行われる。製版動作は、マスターロール装着部15に装着されたマスターロール13から原紙Nが引き出され、サーマルヘッド14の多数の発熱素子が位置選択的に発熱され、原紙Nに画像が穿孔され製版される。
このように、製版動作が行われている間、制御装置8は、通信ユニット53を動作させて、マスターロール13の芯体61に取り付けられた無線タグ64との間で無線通信を行うよう制御する。まず、制御装置8は、通信ユニット53のアンテナにより所定周波数の電磁波を発生させる。マスターロール装着部15に装着されたマスターロール13の無線タグ64が、通信ユニット53と通信可能な状態となっている場合、通信ユニット53から発せられた電磁波が無線タグ64によって反射され、反射電磁波が逆に通信ユニット53に向けて発せられる。
通信ユニット53は発せられた反射電磁波を受け取り、反射電磁波に乗せて送られた無線タグ64のメモリに記憶された原紙Nに関する情報を読み取り、制御装置8に送信する。
制御装置8は、通信ユニット53から送られたマスターロール13に関する情報のうち、メーカー名、種類、サイズ、版数等の情報を基にこのマスターロール装着部15に装着されているマスターロール13が、孔版印刷機Iに対して適合する製品であるかどうかを判断する。制御装置8が、装着されたマスターロール13が適合品であると判断すると、マスターロール13の原紙Nに関するその他の情報、例えば、原紙Nのフィルム強度やフィルム厚さ、製造年月日、製版後1枚目の印刷時の印刷ドラム11に対する押圧ローラ12のプレス圧の大きさ等の情報に基づき、最適な条件で印刷するよう制御する。
また、制御装置8が、反射電磁波に乗せて送られた無線タグ13のメモリに記憶された情報によれば、装着されたマスターロール13は孔版印刷機Iに対し適合した製品ではないと判断した場合には、操作パネルにマスターロール13が孔版印刷機Iに対し適合品ではない旨および交換を促す表示を行う。
更に、通信ユニット53から発せられた電磁波が反射されず、反射電磁波が送られない場合、制御装置8は、マスターロール装着部15にマスターロール13が装着されていないと判断し、操作パネルにその旨の表示を行う。
通信ユニット53とマスターロール13の無線タグ64との間で、無線による通信が行われるのは、製版動作の間中であり、この間マスターロール13は、原紙Nが引き出されるのに伴って筐体41内で回転する。マスターロール13の回転量は、引き出され、印刷ドラム11に巻回される原紙Nの搬送方向長さ及びマスターロール13の外径の大きさに応じたものとなる。
マスターロール13を新品のものに交換した直後は、残量が寡少となった時点に比較してマスターロール13の外径が大きい。このようにマスターロール13の外径が大きいときは、外径が小さいときに比較して、筐体41から引き出される原紙Nの長さが同じであっても、マスターロール13の回転量は小さくなる。従って無線タグ64の設けられた芯体61の回転量も小さくなる。マスターロール13を新品のものに交換した直後で、且つ原紙Nの搬送方向長さが最も短いサイズの製版が行われるとき、マスターロール13の回転量は最小となる。本実施形態では、このようなマスターロール13の回転量が最小となるときであっても、マスターロール13は筐体41内で少なくとも略1回転、360度程度は回転するよう設定されている。このとき、無線タグ64も筒心方向Gを中心として360度程度回転する。
無線タグ64と通信ユニット53とは、距離及び角度によって通信可能範囲に制限がある。図7に示すように、無線タグ64が通信ユニット53に対して所定距離Hの範囲内且つ両者が向かい合う姿勢となる角度θの範囲内に、無線タグ64の周方向長さrの少なくとも3分の1以上、好ましくは2分の1以上入っていれば適正に通信を行うことができる。
しかし、製版に伴って原紙Nが引き出され、芯体61がマスターロール装着部15内で回転すると、芯体61の外側に貼り付けられている無線タグ64は、芯体61の回転角度によっては、図8に示すように、無線タグ64のある姿勢における上下方向中央部Mと通信ユニット53との距離Htが所定距離Hを越えて離間してしまう。
このように無線タグ64と通信ユニット53の距離Htが通信可能な距離Hを超える場合には、通信ユニット53から所定周波数の電磁波を発しても無線タグ64から反射電磁波が返されなくなる。すると、孔版印刷機Iに適合するマスターロール13がマスターロール装着部15に装着されていても、制御装置8は、通信ユニット53から無線タグ64に関する情報が送信されないためにマスターロール13が装着されていないと判断してしまう。
また、芯体61の回転により、無線タグ64と通信ユニット53とのお互いの姿勢が、対向しなくなり、例えば、図9に示すように、無線タグ64と通信ユニット53とが略直交し、無線タグ64の周方向に延びる長径Tb側中央部の接線Q1と通信ユニット53が形成する平面Uとのなす角度γが90度前後となることがある。このとき、無線タグ64は、通信ユニット53と通信可能な所定角度θを超える位置に存在し、通信ユニット53から発した電磁波に対して、無線タグ64から反射電磁波が返されにくくなる。このような場合においても、制御装置8はマスターロール13がマスターロール装着部15に装着されていないと判断し、その旨操作パネルにより報知されてしまう。
そこで、無線タグ64のアンテナコイル65a、65b、65cの導電体の配列パターンが、扁平形状に形成されたものを用い、この扁平形状の配列パターンの長径Ta,Tbの方向が、芯体61の筒心方向Gに交差するよう設置することにより、通信ユニット53との通信可能な範囲を広くすることができる。これより、仮に、安価な小さいタイプの無線タグ64を用いる場合でも、適正に電磁波を送受信して通信することができる。また、通信ユニット53との通信速度が遅い低価格の種類の無線タグ64を用いる場合にも、通信可能な範囲が広いので、製版時マスターロール13から原紙Nが引き出され、芯体61が回転し、通信ユニット53と無線タグ64が向かい合わせとなって通信可能となる僅かな時間を利用して情報を送受信することができる。
また、図4に示すように、無線タグ64は、扁平形状のアンテナコイル65a、65b、65cの配列パターンの短径Ua,Ubの方向Vが筒心方向Gとなり、長径Ta,Tbの方向Qが芯体61の周方向となる向きに設置することにより、通信可能な範囲を広くすることができるとともに、無線タグ64が筒心方向Gに対し所定角度傾斜して取り付けられる場合に比較して、無線タグ64を芯体61に取り付ける工程を簡略化できる。そして、無線タグ64をラベル型とすることで、芯体61にさらに容易に取り付けることができる。更に、無線タグ64は、芯体61の外周面に設けられるので、無線タグ64を芯体61の筒内に設ける場合に比較して製造工程を簡略化できる。
また、無線タグ64は、芯体61の筒心方向Gにおいて、芯体61の中央部Eより所定距離Lt離間した位置に設けられているので、マスターロール装着部15にマスターロール13が装着された際、原紙Nのサイズが異なっても無線タグ53の位置は同じ筐体41の幅方向中央部Cから所定距離Lt離間した位置となる。よって、無線タグ64と通信を行う通信ユニット53の設置位置を、製版部6の筐体設置部59の幅方向中央部Cから所定距離Lt離間した位置とすることで、大きさの異なる全てのサイズのマスターロール13の無線タグ64と通信することができる。よって、マスターロールの筒心方向端部に無線タグを設け、該無線タグと通信を行う通信ユニットを製版部に設置する場合のように、マスターロールの筒心方向の長さが異なるときには、通信ユニットの設置位置をマスターロールのサイズにあわせ変更する必要がない。これより、製版部6において共通部品を用いた設計、製造が可能となり、生産効率が向上する。
通信ユニット53と無線タグ64との間で、適正に通信が行われ、サーマルヘッド14によって穿孔がなされることで得られた製版後の原紙Nは、プラテンローラ27、原紙搬送ローラ30の回転によって順次下流側に搬送される。プラテンローラ27、原紙搬送ローラ30を回転駆動する駆動源としてのステッピングモータのステップ数などを基に、製版済みの原紙Nの先端部が、拡開している給版待機状態にあるクランプ54に届いたと制御装置8が判断すると、図示しない開閉装置によってクランプ54が閉じられ、これによって製版済みの原紙Nの先端部がクランプ54に挟持される。
そして、駆動装置の駆動により、印刷ドラム11が図1において反時計回りに回転され、製版済みの原紙Nが先端部から順次印刷ドラム11の外周に巻き付けられる。ステッピングモータのステップ数などにより、1版分の原紙Nへの穿孔製版が終了したと制御装置8が判断すると、プラテンローラ27、原紙搬送ローラ30の回転が停止され、製版済みの原紙Nの後端が切断具28によって切断される。これにより、製版済み原紙Nがマスターロール13から切り離され、原紙Nの後端は、印刷ドラム11の更なる回転に伴って印刷ドラムに装着される。
その後、給紙部2より印刷部5に1枚の用紙Pが搬送され、印刷ドラム11の外周面上の製版済みの原紙Nに印刷ドラム11の内周面からインクを供給し、印刷ドラム11の外周面に原紙Nを密着させる版付印刷工程が実行される。
版付印刷工程が終了した後、ユーザは版付印刷物の画質や印刷画像位置の確認を行い、その結果によってテストプリントキー94を必要量押下し、適宜の試し刷り印刷を行う。そして、ユーザが求める正規の印刷枚数をテンキーによって置数・入力してスタートキーを押せば、給紙ローラ31、タイミングローラ18、印刷ドラム11、押圧ローラ12、インクローラ10、インクポンプ、排紙ベルト21、ファン22が適宜駆動され、印刷工程が行われる。設定枚数の用紙2への印刷が終了すると印刷動作の全工程が終了する。
尚、上記第1の実施形態では、アンテナコイル65a、65b、65cの導電体の配列パターンは楕円形、略矩形状及び略正方形の螺旋形状に形成された場合を示したが、本発明のマスターロールはこれに限定されず、アンテナコイルの配列パターンが扁平形状に形成され、各形状の長径となる方向が芯体の筒心方向Gに交差するよう設置されていれば、他の形状、例えば半月形、半円形、長円、台形、菱形、未定型の円形、未定型の三角形、未定型の四角形または未定型の多角形などいずれであってもよい。
また、無線タグ64は芯体61の外周面に設けられたが、芯体の筒内等他の箇所に設けてもよい。また、無線タグ64は、芯体61の筒心方向Gにおいて、該筒心方向中央部Eから所定距離離間した位置に設けられたが、アンテナコイルの導電体の配列パターンは扁平形状に形成され、無線タグは、前記扁平形状の配列パターンの長径の方向が、芯体の筒心方向Gに交差するよう設置される場合には、他の箇所であってもよい。
また、通信ユニット53と無線タグ64の双方のアンテナコイルの大きさを同程度としたが、異なってもよい。また、筐体設置部59の幅方向中央部Cからの通信ユニット53までの距離Ltを、通信ユニット53の図2における右端までの距離とするとともに、芯体61の筒心方向中央部Eからの無線タグ64までの距離Ltを、無線タグ64の図6における右端までの距離として示したが、筐体設置部の幅方向中央部からの距離を通信ユニットの幅方向中央部までとするとともに、芯体の筒心方向中央部からの距離を無線タグの幅方向中央部までとしてもよい。
また、アンテナコイルの導電体の配列パターンは扁平形状に形成されたが、無線タグは、芯体の筒心方向において、該筒心方向中央部から所定距離離間した位置に設けられる場合は、他の形状であってもよい。