以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
まず、図1を参照して、画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。なお、本発明が適用される画像形成装置は、プリンタのほか、複写機、ファクシミリ単体、あるいは、複写機、プリンタ、ファクシミリ、スキャナのうちの少なくとも2つの機能を備えた複合機などが含まれる。
図1に示す画像形成装置は、モノクロ画像形成装置である。その装置本体(画像形成装置本体)100には、作像ユニットとしてのプロセスユニット1が着脱可能に装着されている。プロセスユニット1は、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ3と、感光体2上の潜像を可視画像化する現像手段としての現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード5等を備える。また、感光体2に対向する位置に、感光体2の表面を露光する露光手段としてのLEDヘッドアレイ6が配置されている。
プロセスユニット1には、画像形成用の粉体であるトナーを収容する粉体収容器としてのトナーカートリッジ7が着脱可能に装着されている。トナーカートリッジ7は、未使用のトナーを収容する未使用トナー収容部8と、使用された廃トナーを収容する廃トナー収容部9とを有する。
また、画像形成装置は、記録媒体としての用紙に画像を転写する転写装置10と、用紙を供給する給紙装置11と、用紙に転写された画像を定着させる定着装置12と、用紙を装置外へ排出する排紙装置13と、タイミングローラとしての一対のレジストローラ17とを備える。
転写装置10は、転写部材としての転写ローラ14を備える。転写ローラ14は、プロセスユニット1を装置本体100に装着した状態で感光体2と接触するように配置されている。また、転写ローラ14は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加されるようになっている。
給紙装置11は、用紙Pが収容される給紙カセット15と、給紙カセット15に収容されている用紙Pを給送する給紙ローラ16とを備える。なお、用紙Pには、普通紙のほか、厚紙、薄紙、はがき、封筒、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。さらに、用紙以外に、OHPシートやOHPフィルム等を記録媒体として用いることも可能である。
定着装置12は、互いに対向する一対の回転体を備える。一方の回転体は、用紙に画像を定着させる定着回転体としての定着ローラ18であり、他方の回転体は、定着ローラ18に対して加圧される加圧回転体としての加圧ローラ19である。定着ローラ18は、内部に加熱手段としてのハロゲンヒータ22が設けられている。定着ローラ18と加圧ローラ19とは互いに接触し、両ローラ18,19間に定着ニップが形成されている。
排紙装置13は、用紙を装置外に排出する一対の排紙ローラ20を備える。また、装置本体100の外装上面部には、排紙ローラ20によって排出された用紙を載置するための排紙トレイ21が形成されている。
また、装置本体100内には、給紙カセット15から、レジストローラ17、転写ローラ14と感光体2との間の画像転写部(転写ニップ)、定着装置12を経由して、排紙ローラ20まで用紙Pを搬送するための搬送路R1が設けられている。さらに、画像形成装置100内には、両面印刷する際に定着装置12を通過した用紙Pを再度画像転写部に搬送するための両面搬送路R2が設けられている。
続いて、図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置の作像動作について説明する。
作像動作が開始されると、感光体2が回転駆動され、帯電ローラ3によって感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。次いで、読取装置又はコンピュータ等からの画像情報に基づいてLEDヘッドアレイ6が感光体2の帯電面を露光し、静電潜像が形成される。そして、現像装置4によって感光体2上の静電潜像にトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ16が回転駆動を開始し、給紙カセット15から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、レジストローラ17によって搬送を一旦停止される。その後、所定のタイミングでレジストローラ17の回転駆動を開始し、感光体2上のトナー画像が画像転写部に達するタイミングに合わせて、用紙Pを画像転写部へ搬送する。
そして、用紙Pが画像転写部に搬送されると、転写ローラ14に所定の電圧が印加されることにより生じた転写電界によって感光体2上のトナー画像が用紙P上に転写される。また、このとき用紙Pに転写されなかった感光体2上のトナーは、クリーニングブレード5によって除去され、トナーカートリッジ7の廃トナー収容部9へ回収される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置12へと搬送され、定着ローラ18と加圧ローラ19とによって形成される定着ニップを通過することにより加熱及び加圧されて、用紙P上のトナー画像が定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ20によって装置外に排出され、排紙トレイ21上に載置される。
また、両面印刷を行う場合は、定着装置12を通過した用紙Pを装置外に排出せずにスイッチバックさせて両面搬送路R2に送る。用紙Pは両面搬送路R2を通ってレジストローラ17の手前側で搬送路R1に送り込まれ、レジストローラ17によって再度画像転写部へ搬送される。そして、用紙Pの裏面に画像が転写され、定着装置12によって裏面側の画像が定着された後、用紙Pは装置外へ排出される。
図2は、本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
以下、図2を参照しつつ、本実施形態に係る定着装置12について詳しく説明する。
定着ローラ18と加圧ローラ19のそれぞれの両端部は、軸受23,24を介して一対の支持部材25によって回転可能に支持されている。装置本体に設けられた駆動源から定着ローラ18に駆動力が伝達されると、定着ローラ18は図2中の矢印Aで示す方向に回転駆動し、これに伴って、加圧ローラ19は図2中の矢印Bで示す方向に従動回転する。なお、本実施形態とは反対に、加圧ローラ19を駆動ローラとし、定着ローラ18を従動ローラとしてもよい。
ハロゲンヒータ22から発せられる輻射熱によって定着ローラ18が所定の温度にまで加熱された状態で、用紙が図2中の矢印C1で示す方向から定着ニップNへ進入すると、回転する定着ローラ18と加圧ローラ19によって用紙は挟持されながら搬送される。このとき、用紙上の未定着画像が、定着ローラ18の熱によって加熱されると共に、定着ローラ18と加圧ローラ19とによって加圧されることで、用紙に画像が定着される。そして、画像が定着された用紙は定着ニップNから図2中の矢印C2方向へ排出される。
また、加圧ローラ19は、支持部材25によって定着ローラ18に対して図2中の矢印D方向に接近離間可能に支持されている。具体的には、加圧ローラ19を支持する軸受24が、支持部材25に設けられた長方形状の孔である軸受ガイド部25bに嵌め込まれており、この軸受ガイド部25bに沿って軸受24が案内されることで、加圧ローラ19は定着ローラ18に対して接近離間する。一方、定着ローラ18を支持する軸受23は、各支持部材25に設けられた円形の孔である軸受嵌合部25aに嵌め込まれており、定着ローラ18はその軸位置が軸方向と直交する方向に移動しないように固定されている。
また、本実施形態に係る定着装置12は、定着ローラ18に対して加圧ローラ19を加圧する加圧部材としての加圧レバー31と、加圧レバー31を加圧方向に付勢する付勢部材としての加圧バネ32とを備えている。加圧レバー31及び加圧バネ32は、加圧ローラ19の両端部側にそれぞれ1つずつ設けられている。加圧レバー31は、その一端部31aが支持部材25の下部に設けられた支軸33に取り付けられ、支軸33を中心に図2の矢印E方向に回動可能に構成されている。各加圧バネ32は、加圧レバー31の他端部31b側と支持部材25の上部とに設けられた引っ掛け部31c,25cに引っ掛けて取り付けられている。これにより、加圧レバー31の他端部31bは、加圧バネ32によって常時図2における上方へ引っ張られた状態で保持されている。そして、加圧レバー31は、支持部材25の軸受ガイド部25bに嵌め込まれたパッド34を介して加圧ローラ19を支持する軸受24を押圧し、加圧ローラ19を定着ローラ18に向かって加圧している。
また、本実施形態に係る定着装置12は、定着ローラ18に対して加圧ローラ19を接近離間させる接離機構として、カム部材41を備えている。カム部材41は、一対の支持部材25によって回転可能に支持される回転軸42の両端部側にそれぞれ設けられている。回転軸42が回転すると、一対のカム部材41は回転軸42と一体的に回転する。また、カム部材41は、回転中心からの距離が回転方向に向かって変化するカム面41aを有する。加圧レバー31が加圧バネ32によって引っ張られることで、加圧レバー31に設けられたカム受け部31dがカム面41aに対して接触した状態で保持されている。この状態で、カム部材41が一方向に回転すると、加圧レバー31がカム面41aによって図2における下方へ押し動かされることで、加圧ローラ19が定着ローラ18に対して離間し、カム部材41が逆回転すると、加圧レバー31が図2における上方へ戻されることで、加圧ローラ19が定着ローラ18に対して接近するように構成されている。なお、カム部材41による詳しい接離動作については後述する。
また、本実施形態に係る定着装置12は、カム部材41の回転位置(回転角度)を検知する回転位置検知手段として、光学センサ51と、遮光部材52とを備えている。光学センサ51は、透過型の光学センサであり、光を照射する投光部と、投光部から照射された光を受ける受光部とを有する。遮光部材52は、カム部材41と一体的に回転することで、光学センサ51の照射光を遮蔽又は透過し、受光の有無を切り換えることにより光学センサ51によって回転位置が検知される被検知部材である。光学センサ51及び遮光部材52は、2つあるカム部材41のうちの片方のカム部材41側にのみ設けられている。
図3は、カム部材と遮光部材と光学センサとを抜き出して示す図である。
図3に示すように、カム部材41に設けられたカム面41aは、回転中心からの距離が図における時計回りに漸増するように形成されている。そして、カム面41aは、回転方向の半周(180°)よりも多い領域に渡って設けられている。具体的に、本実施形態では、カム面41aの回転中心からの距離が最も小さい最下点e1から、カム面41aの回転中心からの距離が最も大きい最上点e2まで、約270°の範囲に渡って設けられている。
遮光部材52は、回転方向に長い(回転方向の長さがX1である)被検知領域としての長遮光部52aと、長遮光部52aよりも回転方向に短い(回転方向の長さがX2である)被検知領域としての短遮光部52bとを有する。長遮光部52aと短遮光部52bは、いずれも回転に伴って光学センサ51の光照射部Lを通過することで照射光を遮蔽する。また、長遮光部52aと短遮光部52bとの間には、光学センサ51の照射光を透過させる孔部(透光部)52jが形成されている。
図4は、本実施形態に係る接離機構の駆動系の概略構成図である。
図4に示すように、駆動系は、駆動源としてのモータ43と、モータ43からの駆動力をカム部材41や遮光部材52に伝達するギア列44とを備える。本実施形態では、モータ43として、小型で安価なDCブラシモータを用いている。ギア列44は、モータ43の出力軸に取り付けられた第1のウォームギア45と、第1のウォームギア45と噛み合う第2のウォームギア46と、第2のウォームギア46と一体に設けられた第1の平歯車47と、第1の平歯車47と噛み合うと共に遮光部材52と一体に設けられた第2の平歯車48とで構成される。モータ43の出力軸が一方向又はこれと逆方向に回転すると、各ウォームギア45,46と各平歯車47,48が回転し、第2の平歯車48と遮光部材52が一体的に回転することで、回転軸42を介して各カム部材41が一方向(図3中の矢印Fで示す方向)又はこれとは逆方向(図3中の矢印Gで示す方向)に回転する。
図5は、本実施形態に係る接離機構の制御系のブロック図である。
図5に示すように、制御系は、カム部材41の回転を制御する制御部60と、カム部材41の回転位置を検知するための上記光学センサ51、及び、カム部材41の回転時間を計測するタイマー70を備える。制御部60は、例えば、画像形成装置本体に設けられたCPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。制御部60は、光学センサ51によって検知された信号やタイマー70によって計測された時間に基づいてモータ43の駆動を制御してカム部材41の回転を制御する。また、制御部60は、光学センサ51によって検知された信号に基づいてタイマー70による時間計測開始のタイミングや時間計測停止のタイミングを制御するようにも設定されている。
ところで、定着ニップに封筒等の2枚重ねの用紙を通紙する場合、普通紙を通紙する場合と同様の加圧力で定着ローラと加圧ローラとを加圧すると、用紙にシワが発生する可能性がある。そのため、封筒等の用紙を通紙する場合は、普通紙を通紙する際の通常の加圧力に比べて小さい加圧力で定着ニップを形成するのがよい。
そこで、本実施形態に係る定着装置では、上記のように、加圧ローラを定着ローラに対して接近離間可能にすることで、紙種に応じて定着ニップにおける加圧力を変更できるようにしている。以下、通常の加圧力から脱圧する場合の脱圧動作と、通常の加圧力に戻す場合の加圧動作について説明する。
まず、カム部材41による加圧ローラ19の接離動作について説明する。
図6において、(a)は、加圧レバーのカム受け部31dがカム面41aに対して最下点e1側で接触している状態を示す。この状態では、加圧ローラが定着ローラに対して接近し、通常の加圧力で加圧されている。
図6の(a)に示す状態から、図6の(b)に示すように、カム部材41を図における反時計回りに回転させると、カム面41aがカム受け部31dに対して摺動し、カム面41aに対するカム受け部31dの接触位置が最下点e1側から最上点e2側へ相対的に移動する。これに伴って、カム受け部31dがカム面41aによって図における下方へ押し動かされ、加圧レバーが加圧ローラの軸受から退避することで、加圧ローラが定着ローラに対して離間する方向に移動する。
そして、図6の(c)に示すように、カム面41aに対するカム受け部31dの接触位置が最上点e2側へ至ると、定着ローラに対する加圧ローラの離間動作が完了し、定着ニップにおける加圧力が通常の加圧よりも小さくなった脱圧状態となる。この時点で、カム部材41の回転を停止させる。
反対に、図7の(a)に示す脱圧状態から、図7の(b)に示すように、カム部材41を図における時計回り(上記脱圧移行時の回転方向とは逆方向)に回転させると、カム面41aがカム受け部31dに対して摺動し、カム面41aに対するカム受け部31dの接触位置が最上点e2側から最下点e1側へ相対的に移動する。これに伴って、カム受け部31dが加圧バネの付勢力によって図における上方へ引き上げられ、加圧レバーが加圧ローラの軸受を押圧することで、加圧ローラが定着ローラに対して接近する方向に移動する。
そして、図7の(c)に示すように、カム面41aに対するカム受け部31dの接触位置が最下点e1側へ至ると、定着ローラに対する加圧ローラの接近動作が完了し、定着ニップにおける加圧力が増加した通常の加圧状態に戻される。この時点で、カム部材41の回転を停止させる。
このように、本実施形態に係る定着装置においては、加圧ローラを離間させるときはカム部材41を一方向に回転させ、加圧ローラを接近させるときはカム部材41を逆方向に回転させることで、加圧レバーを押し動かすのと戻すのとを同じカム面41aを用いて行っている。すなわち、本実施形態では、カム部材を一方向のみに回転させる従来の構成とは異なり、回転方向に向かって回転中心からの距離が漸増するカム面と、回転方向に向かって回転中心からの距離が漸減するカム面とを分けていないので、それぞれのカム面を確保できる範囲が最大でも回転方向の半周分になるという制約を受けない。このため、本実施形態に係るカム部材41においては、カム面41aを回転方向の半周よりも多い領域に渡って設けることができる。これにより、カム面41aの勾配を緩やかにしても、勾配の最大高低差が小さくなるのを回避することができるので、定着ローラに対する加圧ローラの接近離間距離を十分に確保しつつ、カム面41aの勾配を緩やかにして回転トルクの増大や作動音(異音)の発生を抑制することができる。
次に、カム部材の回転制御方法について説明する。
まず、脱圧動作時の回転制御方法について説明する。
図8は、脱圧動作時の回転制御方法を説明するための図であり、図の上段は遮光部材の回転位置を示し、図の中段はカム部材の回転位置を示し、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)、(d)は互いに対応している。図9は、脱圧動作時の回転制御のフローチャートである。
図8において、(a)は、加圧レバーのカム受け部31dがカム面41aに対して最下点e1側で接触し、加圧ローラが定着ローラに対して接近した状態で加圧される通常の加圧状態である。また、この状態で、光学センサ51は、長遮光部52aが光照射部Lに重なるように配置されていることで遮光状態となっている。
この状態から脱圧状態となるように、上記制御部からカム部材41を回転させる指示が発せられると、モータが駆動を開始し、図8の(b)に示すように、カム部材41は図における反時計回り(正方向)に回転し始める(図9のS1)。これにより、カム受け部31dがカム部材41によって図における下方へ押し動かされる。
また、カム部材41の回転に伴って、遮光部材52も同方向(正方向)へ回転し始める。そして、通常であればその後、図8の(b)に示すように、長遮光部52aの回転方向の後端部が光照射部Lを通過することで、光学センサ51が透光状態に切り換えられる。
しかしながら、ここで、遮光部材52が正常に回転しないなどの異常が生じた場合、通常通りに図8の(b)に示す透光状態に切り換わらない可能性がある。そのため、図8の(b)に示す透光状態に切り換わるのが、上記カム部材41の回転が開始されてから予め設定された時間h1以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図9のS2)。なお、本実施形態では、この時間h1は、後述のタイマーの設定時間Tに猶予時間αを加えた時間としている。
その結果、予め設定された時間h1以内に透光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続される(図9のS3)。一方、予め設定された時間h1を超えても透光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図9のS4)。そして、カム部材41の回転が継続された場合は、その後しばらくの間、透光状態が継続し、カム部材41によってカム受け部31dがさらに下方へ押し動かされる。
そして、図8の(c)に示すように、遮光部材52の回転に伴って、短遮光部52bの回転方向の前端部が光照射部Lに到達すると、光学センサ51が遮光状態に切り換えられる(図9のS5)。このとき、制御部によって、上記図8の(b)に示す透光状態に切り換わってから図8の(c)に示す遮光状態に切り換わるのに要する時間t1が算出され、この時間t1が予め設定された時間h2以上か否か判断される(図9のS6)。ここで、予め設定された時間h2は、図8の(b)に示す透光状態に切り換わってから図8の(c)に示す遮光状態に切り換わるのに要すると想定される通常時間である。要するに、図10に示す長遮光部52aの回転方向の後端部Jから回転方向とは反対方向に向かって短遮光部52bの回転方向の前端部Kに至るまでの部分が光照射部Lを通過するのに要すると想定される時間である。
上記判断の結果、時間t1が予め設定された時間h2以上である場合は、そのままカム部材41の回転が継続される(図9のS7)。一方、時間t1が予め設定された時間h2よりも短い場合は、遮光部材52の回転位置に異常があると判断されて、カム部材41の回転が停止される(図9のS8)。
具体的に、ここでの異常は、脱圧動作が、図11の(a)に示すような長遮光部52aが光照射部Lに重なった正規の初期位置からではなく、図11の(b)に示すような短遮光部52bが光照射部Lに重なった位置から開始される場合が想定される。この場合は、透光状態に切り換わってから遮光状態に切り換わるまでの時間t1が孔部(透光部)52jの通過時間に相当するため、上記予め設定された時間h2よりも短くなる。なお、このような遮光部材52の初期位置ずれによる異常の場合は、画像形成装置の電源を一旦切って再投入することにより、遮光部材52は図11の(a)に示す正規の初期位置(ホームポジション)に戻されるので、その状態から再度脱圧動作を行うことができる。
上記図8の(c)に示す状態からカム部材41の回転が継続された場合は、通常であればその後すぐに、図8の(d)に示すように、短遮光部52bの回転方向の後端部が光照射部Lを通過するため、光学センサ51が透光状態に戻される。
また、ここでも、遮光部材52の回転などに異常がないか否か制御部によって判断される。具体的には、図8の(d)に示す透光状態に切り換わるのが、上記図8の(c)に示す遮光状態に切り換わってから予め設定された時間h3以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図9のS9)。なお、本実施形態では、この時間h3は、上記時間h1と同じ時間(T+α)に設定している。
その結果、予め設定された時間h3以内に透光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、この透光状態への切換を光学センサ51が検知したタイミングで、制御部からカム部材41の回転を停止させる指示が発せられる(図9のS10)。これにより、モータが駆動を停止し、カム部材41の回転が停止される。一方、予め設定された時間h3を超えても透光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図9のS11)。
ここで、カム部材の回転を停止させる指示があってから実際にカム部材の回転が停止するまでは、多少の時間差がある。そのときに、万が一、モータの電流値の変化やカム部材の負荷トルクの変化、あるいはその他の外乱によってモータの回転速度が速くなると、カム部材が図8の(d)に示す正規の脱圧状態の停止位置を越えてさらに回転し、加圧状態に移行してしまうことが考えられる。そのため、本実施形態では、このような異常がないか否かを制御部によって判断するため、カム部材の回転停止指示を行った後、所定時間h6の間、透光状態が継続するか否かを確認するようにしている(図9のS12)。
そして、透光状態が所定時間h6継続した場合は、異常がないとして脱圧動作を完了する(図9のS13)。一方、透光状態が所定時間h6継続しなかった場合は、制御部がカム部材の停止位置異常と判断する(図9のS14)。すなわち、この場合は、モータの回転速度が速くなることにより、遮光部材52が図8の(d)に示す透光状態からさらに図における反時計回りに回転して、所定時間h6内に長遮光部52aが光照射部Lに重なった遮光状態となった場合である。この状態では、カム部材が正規の脱圧状態の停止位置を越えて加圧状態に移行していると想定される。そのため、透光状態が所定時間h6継続しなかった場合は、異常を報知したり、再度脱圧動作を繰り返したりするなどの対応を行う。
続いて、通常の加圧力に戻す加圧動作時のカム部材の回転制御方法について説明する。
図12は、加圧動作時のカム部材の回転制御方法を説明するための図であり、図の上段は遮光部材の回転位置を示し、図の中段はカム部材の回転位置を示し、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は互いに対応している。図13は、加圧動作時の回転制御のフローチャートである。
図12において、(a)は、加圧ローラが定着ローラに対して離間した状態の脱圧状態を示す。この状態で、カム部材41及び遮光部材52は上記脱圧動作時の制御によって正常に回転動作が停止された位置にある。すなわち、加圧レバーのカム受け部31dはカム面41aに対して最上点e2側で接触した状態にあり、光学センサ51は、孔部(透光部)52jが光照射部Lに重なるように配置された透光状態となっている。
この脱圧状態から通常の加圧状態となるように、上記制御部からカム部材41を回転させる指示が発せられると、モータが駆動を開始し、図12の(b)に示すように、カム部材41は図における時計回り(逆方向)に回転し始める(図13のS1)。これにより、脱圧移行時とは反対に、カム受け部31dが上記加圧バネの付勢力で図における上方へ引き上げられる。
また、カム部材41の回転に伴って、遮光部材52も同方向(逆方向)へ回転し始める。そして、通常であればその後すぐに、図12の(b)に示すように、短遮光部52bの回転方向の前端部が光照射部Lに重なることで、光学センサ51は遮光状態に切り換えられる。
また、ここでも、遮光部材52の回転などに異常が生じていないか確認するため、図12の(b)に示す遮光状態に切り換わるのが、上記カム部材41の回転が開始されてから予め設定された時間h4以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図13のS2)。なお、本実施形態では、この時間h4は、カム部材41が一回転するのに要する時間に設定している。
その結果、予め設定された時間h4以内に遮光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続されると共に、当該遮光状態への切換が検知されたタイミングで、上記タイマーによる時間計測が開始される(図13のS3)。一方、予め設定された時間h4を超えても遮光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図13のS4)。
ここで、タイマーが計測する時間は予め設定されており、タイマーが予め設定された時間を計測し終えた時点で制御部からカム部材を停止させる信号が発せられる。ただし、タイマーによる時間計測は、光学センサの遮光状態が継続している間は継続するが、タイマーが時間計測を完了する前に遮光状態から透光状態に切り換わると、タイマーによる時間計測は途中でキャンセルされるように設定されている。
このように設定されたタイマーに対して、短遮光部52bは、回転時に光照射部Lを通過する通過時間がタイマーの設定時間Tよりも短くなるように形成されている。従って、通常は、上記図12の(b)に示す遮光状態に切り換わってから、図12の(c)に示すように、短遮光部52bはすぐに光照射部Lを通過するので、ここでの遮光継続時間t2はタイマーの設定時間Tより短くなる。しかしながら、何らかの異常によってここでの遮光継続時間t2が長くなることも考えられる。
そこで、本実施形態では、制御部によって、上記遮光継続時間t2がタイマーの設定時間Tよりも短いか否かが判断される(図13のS5)。その結果、遮光継続時間t2がタイマーの設定時間Tよりも短い場合は、異常がないと判断され、カム部材41の回転が継続される(図13のS6)。また、この場合、タイマーが設定時間Tを計測し終える前に透光状態に切り換えられたことになるので、上述の設定通りタイマーによる時間計測が途中でキャンセルされる(図13のS6)。
一方、遮光継続時間t2がタイマーの設定時間Tの間継続する場合は、加圧動作が、図14の(a)に示すような正規の脱圧位置からではなく、図14の(b)に示すような非正規の位置から開始される場合が想定される。この場合は、短遮光部52bではなく、長遮光部52aが光照射部Lを通過する。
長遮光部52aは、回転時に光照射部Lを通過する通過時間がタイマーの設定時間Tよりも長くなるように形成されている。従って、長遮光部52aによる遮光状態は、タイマーによる時間計測の間継続する。このため、タイマーが設定時間Tを計測し終えた時点で、制御部からカム部材41を停止させる信号が発せられ、カム部材41の回転が停止される(図13のS7)。なお、この場合は、結果的にカム部材41が正規の停止位置(加圧状態)で停止されることになる。
上記のように、短遮光部52bの通過によってタイマーによる時間計測がキャンセルされた場合は、しばらくの間、透光状態が継続し、カム部材41の回転に伴ってカム受け部31dがさらに上方へ引き上げられる。その後、通常であれば図12(d)に示すように、長遮光部52aの回転方向の前端部が光照射部Lに到達することで、再び遮光状態に切り換えられる。
また、ここでも、遮光部材52の回転などに異常が生じていないか確認するため、図12の(d)に示す遮光状態に切り換わるのが、上記図12の(c)に示す透光状態に切り換わってから予め設定された時間h5以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図13のS8)。なお、本実施形態では、この時間h5は、上記時間h4と同様に、カム部材41が一回転するのに要する時間に設定している。
その結果、予め設定された時間h5以内に遮光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続されると共に、当該遮光状態への切換が検知されたタイミングで、タイマーによる時間計測が再び最初から開始される(図13のS9)。一方、予め設定された時間h5を超えても遮光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図13のS10)。
そして、カム部材41の回転が継続され、タイマーによる時間計測が再び最初から開始された場合は、長遮光部52aによる遮光状態が継続されるので、遮光状態はタイマーによる時間計測の間継続する。その結果、図12の(e)に示すように、タイマーが設定時間Tを計測し終えた時点で、制御部からカム部材41を停止させる信号が発せられる(図13のS11)。そして、この停止指示を受けてモータが駆動を停止し、カム部材41の回転が完全に停止される。これにより、加圧ローラが定着ローラに対して接近した通常の加圧状態で保持され、加圧動作が完了する。
以上のように、本実施形態では、脱圧動作時のカム部材の回転停止は、光学センサによる検知タイミングに基づいて行い(図9のS10参照)、これに対して、加圧動作時のカム部材の回転停止は、タイマーによる時間計測のタイミングに基づいて行っている(図13のS11参照)。すなわち、本実施形態では、脱圧動作時と加圧動作時のそれぞれのカム部材の停止位置を制御するためのタイミング判定手段を、光学センサとタイマーとに分けている。これに対し、光学センサによる位置検知だけで脱圧動作時と加圧動作時の回転制御を行う場合は、脱圧動作時のカム部材の回転位置を検知するための光学センサと、加圧動作時のカム部材の回転位置を検知するための光学センサを、別途設ける必要がある。従って、本実施形態のように、加圧動作時と脱圧動作時の一方の制御をタイマーによる時間計測によって行うことで、光学センサの片方を省略することができ、光学センサを2つ設ける構成に比べて低コスト化や小型化を図れる利点がある。
また、本実施形態では、カム部材を回転駆動させるモータとして、小型で安価なDCブラシモータを用いているため、低コスト化や小型化に有利である。しかしながら、DCブラシモータを用いる場合、カム部材によって加圧レバーを押し動かす脱圧動作時は、加圧ローラが脱圧位置に近づくにつれて回転トルクが大きくなることによりモータの回転数のばらつきが大きくなるといった課題がある。そのため、本実施形態では、カム部材の回転停止位置がモータの回転数のばらつきの影響を受けないように、脱圧動作時のカム部材の回転停止制御を、光学センサによる検知タイミングに基づいて行うようにしている。光学センサによって遮光部材の回転位置を検知することで、モータの回転数のばらつきに関係なく、カム部材を確実に所定の回転位置で停止させることができるので、カム部材の回転停止位置の精度が向上する。
一方、加圧動作時は、カム部材によって加圧レバーを押し動かさないので、回転トルクの増大に伴うモータ回転数のばらつきの影響は少ない。このため、加圧動作時は、光学センサではなく、タイマーによってカム部材の回転位置制御を行っている。しかしながら、加圧動作時は、カム部材による押圧力が解放される際に、反対に加圧レバーからカム部材に対して回転を加速させる方向の力が付与される。これにより、カム部材の回転速度が変化すると、タイマーによる時間計測でカム部材の回転を制御する加圧動作時においては、カム部材の回転停止位置にばらつきが生じる可能性がある。そのため、本実施形態では、カム部材に対して回転駆動力を伝達する駆動力伝達手段にウォームギアを用いている(図4参照)。ウォームギアは、回転力が出力側のギアから入力されても入力側のギアを回転させない所謂セルフロック機能を有している。このため、カム部材に対して回転を速めようとする力が働いても、ウォームギアのセルフロック機能によってカム部材の加速を防止することができる。これにより、カム部材の回転速度の変化に伴う回転停止位置のばらつきを抑制することができ、カム部材の回転停止位置の精度が向上する。また、カム部材が加速することに伴う作動音(異音)の発生も抑制することができる。
また、タイマーによる時間計測にも多少のばらつきがある。このばらつきは計測時間が長く続くほど大きくなるので、計測時間はできるだけ短い方が望ましい。そこで、本実施形態においては、加圧動作時のタイマーによる計測時間を短くするために、短遮光部52bを設け、短遮光部52bの遮光タイミングで開始される時間計測はキャンセルされるようにしている。すなわち、短遮光部52bによる遮光タイミングで開始される時間計測を途中でキャンセルし、その後の長遮光部52aによる遮光タイミングから回転停止タイミングまで時間計測を行うことで、短遮光部52bから長遮光部52aまで継続して時間計測を行わないようにすることができる。これにより、最初の遮光タイミングから回転停止タイミングまで続けて時間計測を行う場合に比べて、計測時間を短くすることができるので、タイマーによる時間計測のばらつきが少なくなり、カム部材の回転位置制御の精度を向上させることができる。
図15は、遮光部材の他の実施形態を示す図である。
図15に示す遮光部材52は、回転方向に渡って複数の短遮光部52b〜52iを有している。各短遮光部52b〜52iの回転方向の長さX2〜X9は、上記実施形態と同様に、回転時における光照射部Lに対する通過時間がタイマーの設定時間Tよりも短くなるように設定されている。一方、長遮光部52aの回転方向の長さX1は、回転時における光照射部Lに対する通過時間がタイマーの設定時間Tよりも長くなるように設定されている。
以下、他の実施形態に係る遮光部材を用いた場合のカム部材の回転制御方法について説明する。
まず、脱圧動作時の回転制御方法について説明する。
図16は、脱圧動作時の回転制御方法を説明するための図であり、図の上段は遮光部材の回転位置を示し、図の中段はカム部材の回転位置を示し、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)、(d)、(l)、(m)は互いに対応している。
図16の(a)に示す通常の加圧状態から、カム部材41が図における反時計回り(正方向)に回転を開始すると、図16の(b)に示すように、カム受け部31dがカム部材41によって図における下方へ押し動かされる。また、カム部材41の回転開始と同時に、遮光部材52も同方向(正方向)へ回転し、図16の(b)に示すように、長遮光部52aの回転方向の後端部が光照射部Lを通過して遮光状態から透光状態に切り換えられる。
そして、図16の(c)(d)に示すように、最初の短遮光部52bが光照射部Lに到達することで遮光状態に切り換えられ、続いて当該短遮光部52bが光照射部Lを通過することで透光状態に切り換えられる。その後、2番目以降の短遮光部52c〜52iが光照射部Lを通過するたびに同様に遮光状態と透光状態を繰り返す。
そして、図16の(l)(m)に示すように、最後の短遮光部52iが光照射部Lに到達して通過することで遮光状態から透光状態に切り換えられると、このタイミングでカム部材41の回転を停止させる指示が発せられる。これにより、カム部材41の回転が停止され、加圧ローラが定着ローラに対して離間した脱圧状態となる。なお、この脱圧動作においても、上記図9を参照して説明したフローと同様に、制御部による異常有無の判断が行われるが、ここではその説明を省略する。
上記他の実施形態に係る遮光部材を用いた場合の制御では、カム部材41の回転停止指示を、最後の短遮光部52iによる透光切換タイミングに基づいて行っているが、その他の短遮光部52b〜52hによる透光切換タイミングに基づいてカム部材41を停止させることも可能である。すなわち、図16の(m)に示すタイミングのほかに、(d)〜(k)のいずれかのタイミングに基づいてカム部材41を停止させることもできる。
このように、本発明の他の実施形態においては、複数の短遮光部を設けることで、これらの中から1つを選択し、選択された短遮光部によって遮光状態から透光状態に切り換えられたタイミングでカム部材を停止させることができる。これにより、カム部材の回転停止位置を細かく調整することができ、定着ニップにおける加圧力を多段階に変更することができるようになる。
続いて、他の実施形態に係る遮光部材を用いた場合の加圧動作時の回転制御方法について説明する。
図17は、加圧動作時の回転制御方法を説明するための図であり、図の上段は遮光部材の回転位置を示し、図の中段はカム部材の回転位置を示し、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)、(k)、(l)は互いに対応している。
図17の(a)に示す脱圧状態から、カム部材41が図における時計回り(逆方向)に回転を開始すると、図17の(b)に示すように、脱圧移行時とは反対に、カム受け部31dが上記加圧バネの付勢力で図における上方へ引き上げられる。また、カム部材41の回転開始と同時に、遮光部材52も同方向(逆方向)へ回転し、図17の(b)(c)に示すように、最初の短遮光部52iが光照射部Lに到達することで遮光状態に切り換えられ、その後すぐに当該短遮光部52iが光照射部Lを通過することで透光状態に切り換えられる。
また、このとき、図17の(b)に示す遮光状態に切り換えられたタイミングで上記タイマーによる時間計測が開始されるが、短遮光部52iによる遮光継続時間は予め設定されたタイマー設定時間Tより短いので、上記実施形態と同様にタイマーによる時間計測は途中でキャンセルされる。その後、2番目以降の短遮光部52h〜52bが光照射部Lを通過するたびに遮光状態と透光状態を繰り返し、これらの短遮光部52h〜52bによる遮光タイミングで開始された時間計測も同様にキャンセルされる。
そして、図17の(k)に示すように、長遮光部52aが光照射部Lに到達することで遮光状態に切り換えられ、この遮光状態に切り換えられたタイミングでタイマーによる時間計測が再び最初から開始される。このとき、長遮光部52aによる遮光継続時間は予め設定されたタイマー設定時間Tより長いので、遮光状態はタイマーによる時間計測の間継続する。そして、図17の(l)に示すように、タイマーが設定時間Tを計測し終えた時点で、カム部材41の回転を停止させる指示が発せられる。これにより、カム部材41の回転が停止され、加圧ローラが定着ローラに対して接近した加圧状態となる。なお、この加圧動作における制御部による異常有無の判断フローについては、上記図13を参照して説明したフローと基本的に同様であるので説明を省略する。
このように、他の実施形態においても、各短遮光部52b〜52iによる遮光タイミングで開始される時間計測を途中でキャンセルすることで、上記実施形態と同様にタイマーによる計測時間を短くすることができる。これにより、タイマーによる時間計測のばらつきが少なくなり、カム部材の回転位置制御の精度を向上させることが可能である。
また、上記のように、定着ニップにおける加圧力を多段階に変更可能に構成する場合は、図18に示す例のように、カム面41aの最下点e1から最上点e2までの間に、径方向に対して直交する平坦面41bを1つ又は複数設けてもよい。各平坦面41bは、カム部材41の回転を停止させた際に加圧レバー(カム受け部)がカム面41aに対して接触する位置に配置されている。このような平坦面41bを設けることで、加圧レバーから受ける加圧力が回転方向に対して垂直の方向(径方向)に作用しやすくなるので、カム部材41に付与される回転方向の力を低減でき、カム部材41の回転方向の位置保持をより確実に行うことができるようになる。
上記実施形態では、遮光部材に長遮光部と短遮光部を設けて、これらによる遮光と透光の切換を光学センサが検知することでカム部材の回転制御を行うようにしているが、遮光部材の遮光部分と透光部分とを逆にすることでも同様にカム部材の回転制御を行うことが可能である。
図19に示す例は、図3に示す遮光部材52の遮光部と透光部とを入れ換えたものである。すなわち、図19に示す遮光部材52は、図3に示す長遮光部52aと短遮光部52bの代わりに、回転方向に長い長透光部52mと回転方向に短い短透光部52nとを有している。その他の部分は、光照射部Lに介在した際に照射光を遮光する遮光部となっている。この遮光部材52を用いる場合は、遮光のタイミングと透光のタイミングが上記実施形態の場合とは逆になる。従って、「遮光」と「透光」を入れ換えて制御すれば同様の制御方法を用いてカム部材の回転制御を行うことが可能である。また、このような遮光部と透光部を入れ換えた遮光部材において、図15に示す遮光部材52に倣って、複数の短透光部を有するように構成してもよい。
また、カム部材の回転位置を検知する回転位置検知手段として、透過型の光学センサのほか、反射型の光学センサを用いることもできる。この場合、光学センサの照射光を反射する反射部材として、図3に示す遮光部材52と同じ形状で光を反射する反射部材を用いることで、上記実施形態と同様の制御方法を用いてカム部材の回転制御を行うことが可能である。すなわち、図20に示すような回転方向に長い長反射部53aと回転方向に短い短反射部53bとを有する反射部材53を用いれば、上記制御フローにおける「遮光」を「反射」に代えるだけで、同様にカム部材の回転制御を行うことが可能である。また、反射部材を、図15に示す遮光部材52に倣って、複数の短反射部を有するように構成してもよい。
上記実施形態では、光学センサを省略するために、タイマーを用いてカム部材の回転制御を行うようにしているが、光学センサを2つ用いてカム部材の回転制御を行ってもよい。
図21は、2つの光学センサを用いた接離機構の概略構成図である。
図21に示す接離機構は、脱圧動作時のカム部材41の回転位置を検知するための脱圧位置センサ(第1の光学センサ)49と、加圧動作時のカム部材41の回転位置を検知するための加圧位置センサ(第2の光学センサ)50とを備えている。ここで用いられる遮光部材52は、上記実施形態に係る遮光部材のような長遮光部や短遮光部を有するものではなく、扇形や長方形等の一般的な形状のものであればよい。また、駆動系は、上記実施形態に係る駆動系(図4参照)と同様である。
図22及び図23を参照して、2つの光学センサを用いた場合の脱圧動作時のカム部材の回転制御方法について説明する。なお、図22において、図の上段は遮光部材の回転位置を示し、図の中段はカム部材の回転位置を示し、図の下段は加圧位置センサと脱圧位置センサの各照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)は互いに対応している。
図22の(a)に示す通常の加圧状態では、加圧位置センサ50が遮光部材52によって遮光状態に切り換えられている。この状態から、図22の(b)に示すように、カム部材41が図における反時計回り(正方向)に回転すると(図23のS1)、遮光部材52も同方向へ回転し、遮光部材52の回転方向の後端部が加圧位置センサ50の光照射部Lを通過することで透光状態に切り換えられる。また、このとき、透光状態に切り換わるのが、上記カム部材41の回転が開始されてから予め設定された時間h7以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図23のS2)。
その結果、加圧位置センサ50が予め設定された時間h7以内に透光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続される(図23のS3)。一方、加圧位置センサ50が予め設定された時間h7を超えても透光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図23のS4)。
その後、カム部材41の回転が継続され、図22の(c)に示すように、遮光部材52の回転方向の前端部が脱圧位置センサ49の光照射部Lに重なると、脱圧位置センサ49が透光状態から遮光状態に切り換えられる。また、このとき、遮光状態に切り換わるのが、上記図22の(b)に示す加圧位置センサ50が透光状態に切り換わってから予め設定された時間h8以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図23のS5)。
そして、脱圧位置センサ49が予め設定された時間h8以内に遮光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、この遮光状態への切換が検知されたタイミングで、制御部からカム部材41の回転を停止させる指示が発せられる(図23のS6)。これにより、カム部材41の回転が停止されて、脱圧動作が完了する。一方、脱圧位置センサ49が予め設定された時間h8を超えても遮光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図23のS7)。
続いて、図24及び図25を参照して、2つの光学センサを用いた場合の加圧動作時のカム部材の回転制御方法について説明する。なお、図24において、図の上段は遮光部材の回転位置を示し、図の中段はカム部材の回転位置を示し、図の下段は加圧位置センサと脱圧位置センサの各照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)は互いに対応している。
図24の(a)に示す脱圧状態から、同図の(b)に示すように、カム部材41が図における時計回り(逆方向)に回転すると(図25のS1)、遮光部材52も同方向へ回転し、遮光部材52の回転方向の後端部が脱圧位置センサ49の光照射部Lを通過することで透光状態に切り換えられる。また、このとき、透光状態に切り換わるのが、上記カム部材41の回転が開始されてから予め設定された時間h9以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図25のS2)。
その結果、脱圧位置センサ49が予め設定された時間h9以内に透光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続される(図25のS3)。一方、脱圧位置センサ49が予め設定された時間h9を超えても透光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図25のS4)。
その後、カム部材41の回転が継続され、図24の(c)に示すように、遮光部材52の回転方向の前端部が加圧位置センサ50の光照射部Lに重なると、加圧位置センサ50が透光状態から遮光状態に切り換えられる。また、このとき、遮光状態に切り換わるのが、上記図24の(b)に示す脱圧位置センサ49が透光状態に切り換わってから予め設定された時間h10以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図25のS5)。
そして、加圧位置センサ50が予め設定された時間h10以内に遮光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、この遮光状態への切換が検知されたタイミングで、制御部からカム部材41の回転を停止させる指示が発せられる(図25のS6)。これにより、カム部材41の回転が停止されて、加圧動作が完了する。一方、加圧位置センサ50が予め設定された時間h10を超えても遮光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図25のS7)。
以上のように、2つの光学センサを用いる場合は、タイマーを用いなくてもカム部材の回転制御を行うことが可能である。従って、2つの光学センサを用いる構成の場合、タイマーと1つの光学センサを用いる構成に比べて、低コスト化や小型化の点で不利ではあるが、タイマーによる時間計測のばらつきの影響がないため、カム部材の回転停止位置精度が向上し、制御も簡単に行える利点がある。
また、上記実施形態では、接離機構の駆動源として小型で安価なDCブラシモータを用いているが、DCブラシモータに代えてDCブラシレスモータを用いた構成とすることも可能である。
図26に、DCブラシレスモータを用いた接離機構の概略構成を示す。
図26に示す構成では、駆動伝達切換手段としての電磁クラッチを2つ設け(電磁クラッチ62,63)、DCブラシレスモータ61の駆動力を接離機構と他の装置のそれぞれへ切り換えて伝達できるようにしている。接離機構へ駆動力を伝達するには、接離機構用の電磁クラッチ62を駆動力伝達可能な伝達可能状態に切り換えると共に、他装置用の電磁クラッチ63を駆動力伝達しない遮断状態に切り換える。この場合、DCブラシレスモータ61の駆動力は、互いに噛み合う一対のハス歯ギア又は一対の傘歯車等から成る運動変換機構64によって伝達方向が90°変更されて接離機構用の電磁クラッチ62に伝達される。そして、駆動力は、接離機構用の電磁クラッチ62からウォームギア65を介して遮光部材52及びカム部材41に伝達される。一方、他の装置へ駆動力を伝達するには、上記とは反対に、接離機構用の電磁クラッチ62を駆動力伝達しない遮断状態に切り換えると共に、他装置用の電磁クラッチ63を駆動力伝達可能な伝達可能状態に切り換える。
このように、接離機構の駆動源としてDCブラシレスモータを用いた場合は、接離機構用の駆動源を接離機構とは別の装置の駆動源と共用することができ、省電力化を図れる。また、DCブラシレスモータは回転数を制御できるため、DCブラシモータを用いる場合に比べてカム部材の回転停止位置精度が向上する。
図27及び図28に、DCブラシレスモータを用いた場合の制御のフローチャートを示す。図27は、脱圧動作時のフローチャートであり、図28は、加圧動作時のフローチャートである。
図27に示す脱圧動作と図28に示す加圧動作は、上記DCブラシモータを用いた場合の制御(図9及び図13に示す制御)と基本的に同様である。ただし、DCブラシレスモータを用いた構成では電磁クラッチの切換を行うため、図27と図28のそれぞれにおける点線枠で示す部分が追加されている。すなわち、脱圧動作又は加圧動作を開始する前に、DCブラシレスモータを停止し、他装置用の電磁クラッチを遮断状態に切り換えると共に、接離機構用の電磁クラッチを伝達可能状態に切り換えてから脱圧動作又は加圧動作を開始する。その後、脱圧動作又は加圧動作を完了した場合は、接離機構用の電磁クラッチを遮断状態へ戻す。
また、DCブラシレスモータを用いた構成において、さらに2つの光学センサを用いてカム部材の回転制御を行ってもよい。
図29に、駆動源としてDCブラシレスモータを用い、さらに2つの光学センサを用いた接離機構の概略構成を示す。
図29において、符号49は脱圧動作時のカム部材41の回転位置を検知するための脱圧位置センサ(第1の光学センサ)、符号50は加圧動作時のカム部材41の回転位置を検知するための加圧位置センサ(第2の光学センサ)である。なお、ここで用いられる遮光部材52は、一般的な形状のものであればよい。また、駆動系は、上記図26に示す駆動系と同様である。
図30及び図31に、DCブラシレスモータを用い、さらに2つの光学センサを用いた場合の制御のフローチャートを示す。図30は、脱圧動作時のフローチャートであり、図31は、加圧動作時のフローチャートである。
図30に示す脱圧動作と図31に示す加圧動作は、上記2つの光学センサを用いた場合の制御(図23及び図25に示す制御)と基本的に同様である。ただし、DCブラシレスモータを用いた構成では電磁クラッチの切換を行うため、図30と図31のそれぞれにおける点線枠で示す部分が追加されている。すなわち、脱圧動作又は加圧動作を開始する前に、DCブラシレスモータを停止し、他装置用の電磁クラッチを遮断状態に切り換えると共に、接離機構用の電磁クラッチを伝達可能状態に切り換えてから脱圧動作又は加圧動作を開始する。その後、脱圧動作又は加圧動作を完了した場合は、接離機構用の電磁クラッチを遮断状態へ戻す。
DCブラシレスモータを用いた場合も、2つの光学センサを用いることで、タイマーを用いなくてもカム部材の回転制御を行うことが可能となる。従って、タイマーと1つの光学センサを用いる構成に比べて、低コスト化や小型化の点で不利ではあるが、タイマーによる時間計測のばらつきの影響がないため、カム部材の回転停止位置精度が向上し、制御も簡単に行えるようになる。
また、上記実施形態では、カム部材の速度変化を防止するためにウォームギアを用いているが、ウォームギアを用いない構成とすることも可能である。具体的には、DCブラシモータに代えてステッピングモータを用いることで、ウォームギアを用いない構成を実現することが可能である。
図32は、ステッピングモータを用いた接離機構の駆動系の概略構成図である。
ステッピングモータは、通電されている状態では、励磁力によって回転位置を保持することが可能である。このため、ステッピングモータを用いれば、カム部材に対して回転を速めようとする力が働いても、ウォームギアを用いずにカム部材の加速を防止することができる。このため、図32に示すように、ステッピングモータ55を用いた構成においては、ステッピングモータ55とカム部材41及び遮光部材52を連動連結するギア列56を、複数の平歯車57〜59のみで構成することができる。このように、ステッピングモータを用いる構成においては、カム部材の速度変化を防止するためにウォームギアを用いなくてもよいので、設計が容易となる。
一方、ウォームギアを用いる構成は、ステッピングモータのように通電していなくてもセルフロック機能によってカム部材の加速を防止することができるので、電気エネルギーの省エネ化を図れる利点がある。また、ウォームギアを用いることで、減速比を確保するギアの数を少なくすることができるので、低コスト化及び小型化に有利である。
ステッピングモータは、上記のような回転位置を保持できる特性のほか、パルス信号が周期的に与えられることで決められたステップ単位で回転するので、カム部材の回転角度と回転速度を高精度に制御することができる。従って、脱圧動作時と加圧動作時にカム部材の回転停止位置を制御するためのセンサはなくすことが可能である。ただし、図32に示す例では、カム部材の動作中に画像形成装置の電源が切られるなどしてカム部材が通常とは異なる位置で回転停止した場合に、その後の電源投入時にカム部材41を初期位置に戻すための光学センサ54は設けてある。
図33及び図34を参照して、ステッピングモータを用いた場合の脱圧動作時のカム部材の回転制御方法について説明する。なお、図33において、図の上段は遮光部材の回転位置を示し、図の中段はカム部材の回転位置を示し、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)は互いに対応している。
図33の(a)に示す通常の加圧状態では、光学センサ54は遮光部材52によって遮光されておらず透光状態となっている。この状態から、図33の(b)に示すように、カム部材41が図における反時計回り(正方向)に回転すると(図34のS1)、遮光部材52も同方向へ回転し、遮光部材52の回転方向の前端部が光学センサ54の光照射部Lと重なることで遮光状態に切り換えられる。また、このとき、遮光状態に切り換わるのが、上記カム部材41の回転が開始されてから予め設定された時間h11以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図34のS2)。
その結果、予め設定された時間h11以内に遮光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、遮光状態に切り換わったタイミングで、制御部からカム部材41の回転を停止させる指示が発せられる(図34のS3)。これにより、カム部材41の回転が停止されて、脱圧動作が完了する。一方、予め設定された時間h11を超えても遮光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図34のS4)。
続いて、図35及び図36を参照して、ステッピングモータを用いた場合の加圧動作時のカム部材の回転制御方法について説明する。なお、図35において、図の上段は遮光部材の回転位置を示し、図の中段はカム部材の回転位置を示し、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)は互いに対応している。
図35の(a)に示す脱圧状態から、同図の(b)に示すように、カム部材41が図における時計回り(逆方向)に回転すると(図36のS1)、遮光部材52も同方向へ回転し、遮光部材52の回転方向の後端部が光学センサ54の光照射部Lを通過することで透光状態に切り換えられる。また、このとき、透光状態に切り換わるのが、上記カム部材41の回転が開始されてから予め設定された時間h12以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図36のS2)。
その結果、予め設定された時間h12以内に透光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続される(図36のS3)。一方、予め設定された時間h12を超えても透光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断されてカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図36のS4)。
カム部材41の回転が継続される場合は、上記透光状態になってからモータを所定のステップ数だけ駆動させる。そして、モータが所定のステップ数駆動したタイミングで、制御部からカム部材41の回転を停止させる指示が発せられる(図36のS5)。これにより、カム部材41の回転が停止されて、加圧動作が完了する。
このように、ステッピングモータを用いた場合は、ステッピングモータを所定のステップ数駆動させることで、光学センサを用いなくてもカム部材を所望の回転位置で停止させることができる。また、タイマーを用いなくてもカム部材の回転制御を行うことができるため、カム部材の回転停止位置精度が向上する。なお、上述のフローでは、脱圧位置を検知するために光学センサを利用しているが、光学センサを用いずにステッピングモータのステップ数を管理することでカム部材を所定の脱圧位置に停止させることも可能である。
上記実施形態では、紙種に応じて加圧力を変更する定着装置に本発明を適用した場合を例に挙げているが、本発明は斯かる目的で加圧力を変更する場合に限らない。例えば、本発明は、定着ニップから詰まった紙を取り除きやすくするために加圧力を低減する場合や、加圧による加圧ローラと定着ローラの塑性変形を抑制するために通紙後に加圧力を低減する場合などにおいても適用可能である。また、本発明は、脱圧状態としたときに定着ローラに対して加圧ローラが完全に離間した状態(非接触状態)となる定着装置においても適用可能である。
また、本発明を適用する定着装置は、上記実施形態のような一対のローラ(定着ローラ及び加圧ローラ)を備える定着装置に限らない。例えば、図37に示すような、定着ローラに代えて、無端状の定着ベルト83を備える定着装置80であってもよい。この例では、定着ベルト83の内周側に加熱源82とニップ形成部材81が配置されており、定着ベルト83に対して加圧ローラ84がニップ形成部材81の位置で加圧されることで定着ニップNが形成されている。
さらに、本発明を適用する定着装置は、上記実施形態のような加圧ローラが定着ローラに対して接近離間する定着装置に限らず、図38に示す例のように、定着ローラ91がこれと対向する対向ローラ92に対して接近離間する定着装置90であってもよい。
また、本発明に係る接離機構は、定着装置だけでなく、用紙等の記録媒体に画像を転写する転写装置にも適用可能である。
図39は、接離機構を備える転写装置が搭載されたカラー画像形成装置の概略構成図である。
まず、図39を参照して、画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図39に示す画像形成装置200は、画像形成部201、給紙部202、スキャナ部203、転写装置206、搬送ベルト207、定着装置208、排紙部230、原稿自動搬送装置204などを備える。
画像形成部201は、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための4つのプロセスユニット210Y,210M,210C,210Kを備える。各プロセスユニット210Y,210M,210C,210Kは、異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各プロセスユニット210Y,210M,210C,210Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体211と、感光体211の表面を帯電させる帯電装置212と、感光体211上の潜像に現像剤を供給する現像装置213と、感光体211の表面をクリーニングするためのクリーニング装置214などを有する。なお、図1では、イエローのプロセスユニット210Yが備える感光体211、帯電装置212、現像装置213、クリーニング装置214のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット210M,210C,210Kにおいては符号を省略している。
また、画像形成部201は、光書込ユニット205を備える。光書込ユニット205は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて各感光体211の表面へレーザー光を照射するように構成されている。
転写装置206は、中間転写体としての中間転写ベルト216、ベルトクリーニング装置220、張架ローラ217、駆動ローラ218、二次転写対向部材としての二次転写バックアップローラ219、一次転写部材としての4つの一次転写ローラ221、二次転写部材としての二次転写ローラ222などを有する。中間転写ベルト216は、張架ローラ217を含む複数のローラによってテンションがかけられた状態で張架されている。
4つの一次転写ローラ221は、それぞれ、中間転写ベルト216を介して感光体211に接触している。これにより、中間転写ベルト216と各感光体211とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。
二次転写ローラ222は、中間転写ベルト216を介して二次転写バックアップローラ219に接触している。これにより、二次転写ローラ222と中間転写ベルト216との間には二次転写ニップが形成されている。
給紙部202には、シート状の記録媒体としての用紙を複数枚重ねて収容可能な給紙カセット224が複数設けられている。各給紙カセット224には、紙束の一番上の用紙を給紙路226に送り出す給紙ローラ225と、送り出された用紙を1枚ずつ分離する分離ローラ228とが設けられている。
給紙路226には、複数の搬送ローラ対227と、搬送ローラ対227によって搬送された用紙を上記二次転写ニップへと搬送するレジストローラ対215が設けられている。
定着装置208は、2つのローラによって張架された定着ベルト234と、この定着ベルト234を張架する一方のローラに向けて加圧される加圧ローラ235とを備えている。定着ベルト234と加圧ローラ235は互いに接触して定着ニップを形成している。また、定着ベルト234を張架する2つのローラのうち、加圧ローラ235から押圧される方のローラは内部に熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト234が加熱される。
排紙部230には、用紙を機外に排出する排紙ローラ対236と、機外に排出された用紙をストックする排紙トレイ237とが設けられている。
スキャナ部203は、内部にミラーが設けられた第1走行体238及び第2走行体239、コンタクトガラス240、結像レンズ241、読取センサ242などを備える。スキャナ部203の上方に設けられた原稿自動搬送装置204には、原稿をセットする原稿台243が設けられている。
次に、図39に示す画像形成装置の動作について説明する。
原稿のコピーをとるときは、原稿を原稿自動搬送装置204の原稿台243上にセットするか、あるいは、原稿自動搬送装置204を開いて、スキャナ部203のコンタクトガラス240上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置204を閉じて原稿を押さえる。
このようにして原稿がセットされた後、コピースタートスイッチが押されると、スキャナ部203による原稿読取動作がスタートする。原稿読取動作では、まず、第1走行体238と第2走行体239とが共に走行を開始し、第1走行体238に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体239内に設けられたミラーによって反射せしめられ、結像レンズ241を通過した後、読取センサ242に入射される。読取センサ242は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
上記のような原稿読取動作と並行して、各プロセスユニット210Y,210M,210C,210K内の各機器や、転写装置206、搬送ベルト207、定着装置208などがそれぞれ駆動を開始する。
各プロセスユニット210Y,210M,210C,210Kでは、各感光体211が図における反時計回りに回転駆動され、帯電装置212によって各感光体211の表面が所定の極性に一様に帯電される。そして、上記読取センサ242によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット205から各感光体211の帯電面にレーザー光が照射される。すると、照射部(露光部)の電位が減衰し、これにより、各感光体211の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体211に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。そして、各感光体211上の静電潜像に各現像装置213から現像剤としてのトナーが供給されることにより、静電潜像がトナー画像として顕像化(可視像化)される。
転写装置206では、中間転写ベルト216を張架する駆動ローラ218が回転駆動することにより、中間転写ベルト216が図における矢印の方向に回転する。また、各一次転写ローラ221に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ221と各感光体211との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体211上の各色のトナー画像が、一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト216上に順次重ね合わせて一次転写される。かくして、中間転写ベルト216上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、中間転写ベルト216に転写しきれなかった各感光体211上の残留トナーは、クリーニング装置214によって除去される。
上記原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙部202内では給紙動作が開始される。この給紙動作では、給紙ローラ225の1つが選択回転せしめられ、給紙カセット224の1つから用紙が送り出される。送り出された用紙は、分離ローラ228によって1枚ずつ分離されて給紙路226に進入した後、搬送ローラ対227によって二次転写ニップに向けて搬送される。
給紙カセット224から搬送された用紙は、レジストローラ対215によって中間転写ベルト216上の4色トナー画像に同期するように二次転写ニップに送り込まれる。このとき、二次転写ローラ222には、トナー画像のトナー帯電極性とは逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト216上のトナー画像が用紙上に一括して二次転写される。また、二次転写後の中間転写ベルト216上に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置220によって除去される。
上記のようにトナー画像が二次転写された用紙は、搬送ベルト207によって定着装置208に送られる。そして、用紙は、定着ベルト234と加圧ローラ235との間の定着ニップに送り込まれ、そこで用紙が加熱及び加圧されることにより、トナー画像が用紙に定着される。その後、用紙は、回転する定着ベルト234と加圧ローラ235によって送り出された後、排紙ローラ対236によって機外に排出され、排紙トレイ237上にストックされる。
以上の説明は、フルカラー画像を形成するときの画像形成動作についてであるが、4つのプロセスユニット210Y,210M,210C,210Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
ところで、上記のような中間転写ベルトを備える転写装置においては、厚紙が二次転写ニップに進入すると、そのときの衝撃によって中間転写ベルトやローラに急激な負荷がかかって中間転写ベルトの回転速度が瞬間的に低下することがある。この中間転写ベルトの回転速度の低下により、感光体と中間転写ベルトとの間に回転速度差が生じた場合は、中間転写ベルトに転写される画像のドットが感光体の回転方向に引き伸ばされるため、画質が低下する。そこで、本実施形態に係る転写装置においては、二次転写ニップに厚紙が進入することによる急激な負荷を抑制するために、二次転写ローラを中間転写ベルト(又は二次転写バックアップローラ)に対して接近離間させる接離機構を設けている。
図40は、二次転写ローラを接近離間させる接離機構の概略構成図である。
図40に示すように、二次転写ローラ222は、支軸250を中心に図における矢印M方向に回動する保持部材251に保持されている。保持部材251が支軸250を中心に回動すると、二次転写ローラ222は中間転写ベルト216に対して接近離間する。また、保持部材251は、付勢部材としての加圧バネ252によって図における上方へ付勢されている。このため、二次転写ローラ222は中間転写ベルト216に対して加圧された状態で保持されている。また、二次転写ローラ222の回転軸222aには、空転コロ253が相対的に回転可能に設けられている。
二次転写バックアップローラ219には、上記実施形態に係る定着装置が備えるのと同様のカム部材41が設けられている。また、本実施形態に係る転写装置には、カム部材41の回転位置を検知する回転位置検知手段として、上記と同様の光学センサ51と、遮光部材52とが設けられている。
図40に示す状態では、加圧バネ252の付勢力によって空転コロ253がカム面41aに対して最下点e1側で接触している。この状態では、二次転写ローラ222が中間転写ベルト216に対して接近した位置で保持されており、二次転写ニップにおける加圧力は普通紙を通紙する際の通常の加圧力となっている。
この状態から厚紙を通紙する際の脱圧状態(減圧状態)にする場合は、カム部材41を図40における反時計回りに回転させる。これにより、カム面41aに対する空転コロ253の接触位置が最下点e1側から最上点e2側へ相対的に移動し、空転コロ253がカム部材41によって図における下方へ押し動かされる。また、これに伴って二次転写ローラ222も下方へ押し動かされる。その結果、二次転写ローラ222が中間転写ベルト216に対して離間した位置に移動し、二次転写ニップにおける加圧力が低減された脱圧状態となる。
また、通常の加圧状態に戻す場合は、上記脱圧状態からカム部材41を上記とは逆方向に回転させればよい。これにより、カム面41aに対する空転コロ253の接触位置が最上点e2側から最下点e1側へ相対的に移動し、空転コロ253がカム部材41に対して接近する。これに伴って、二次転写ローラ222が中間転写ベルト216に対して接近し、二次転写ニップおける加圧力が増加した通常の加圧状態に戻される。なお、ここでの加圧動作時と脱圧動作時におけるカム部材の回転制御には、上記定着装置におけるカム部材の制御方法と同様の制御方法を適用可能である。
このように、中間転写ベルトに対して二次転写ローラを接近離間させる接離機構においても、本発明に係る接離機構を適用することが可能である。また、本発明に係るカム部材を転写装置の接離機構に適用することで、上記定着装置と同様の作用効果が得られる。すなわち、図40に示すように、回転方向の半周よりも多い領域に渡ってカム面41aを設けることができるので、カム面41aの勾配を緩やかにしても、勾配の最大高低差が小さくなるのを回避することができる。これにより、中間転写ベルトに対する二次転写ローラの接近離間距離を十分に確保しつつ、回転トルクの増大や作動音(異音)の発生を抑制することが可能となる。
なお、図40に示す例では、図2や図3に示す実施形態の接離機構を転写装置に適用しているが、これ以外の上記実施形態に係る各構成も同様に適用可能である。また、上記転写装置では、厚紙を二次転写ニップに通紙させる場合に二次転写ローラを離間させる構成であるが、本発明は、これ以外に、二次転写ローラが中間転写ベルトに対して常時加圧されることによる塑性変形やトナー固着を抑制するために、転写時以外のタイミングで二次転写ローラを離間させておく構成にも適用可能である。
また、図39に示す例は、二次転写ニップに対して用紙が横方向(水平方向)に搬送される転写装置であるが、図41に示す例のように、二次転写ニップに対して用紙が縦方向(垂直方向)に搬送される転写装置306においても本発明に係る接離機構を適用可能である。この場合、図40に示す接離機構を例えば横向きに(90°回転させて)配置することで、図41に示す二次転写ローラ322を中間転写ベルト316に対して接近離間させる接離機構を構成できる。なお、図41において、300は画像形成装置、301は複数の感光体311を備える画像形成部、321は一次転写ローラ、302は給紙部、308は定着装置、330は排紙部であり、これらの基本的な構成及び動作は図39に示す画像形成装置200と同様であるので説明を省略する。
また、本発明に係る接離機構は、図42に示すような感光体に対して一次転写ローラを接近離間させる転写装置406にも適用可能である。ここでは、モノクロ画像形成時に、画像形成に寄与しないカラー画像用の感光体411Y,411M,411Cに対して対応する一次転写ローラ421Y,421M,421Cを離間させることで(図42において点線で示す状態を参照)、これらの感光体411Y,411M,411Cや中間転写ベルト416の不要な摩耗や電力消費を抑えるようにしている。なお、図42において、422は二次転写ローラである。
図43は、一次転写ローラを接近離間させる接離機構の概略構成図である。
図43では、接近離間する3つの一次転写ローラのうち、1つ一次転写ローラのみ示しているが、いずれの一次転写ローラに関する接離機構も同様に構成されているので、1つの一次転写ローラに関する接離機構を例に説明する。
図43の(a)に示すように、一次転写ローラ421Yは、支軸450を中心に図における矢印Q方向に回動する保持部材451に保持されている。保持部材451は、図における矢印W方向に直線移動するリンク部材452に係合し、リンク部材452と連動可能に構成されている。また、リンク部材452の一端部(図における左端部)は、付勢部材としての加圧バネ453によって他端部側(図における右方向)へ加圧されている。これにより、リンク部材452の他端部は、カム部材41のカム面41aに対して接触した状態で保持されている。このカム部材41は、上記実施形態に係る定着装置が備えるのと同様に構成されたものである。また、転写装置には、カム部材41の回転位置を検知する回転位置検知手段として、上記定着装置と同様に、光学センサ51と、遮光部材52とが設けられている。
図43の(a)に示す状態から、カム部材41が図における時計回りに回転すると、カム面41aに対するリンク部材452の接触位置が最上点e2側から最下点e1側へ相対的に移動する。これに伴って、図43の(b)に示すように、リンク部材452が加圧バネ453に押されて図における右側へ移動する。そして、このリンク部材452の移動に伴って、保持部材451が図における反時計回りに回動し、一次転写ローラ421Yが感光体411Yから離間する。これにより、中間転写ベルト416がカラー画像用の感光体411Yから離れた状態で保持される。
また、一次転写ローラ421Yを感光体411Yに対して接近させるには、図43の(b)に示す状態からカム部材41を上記とは逆方向に回転させればよい。これにより、カム面41aに対するリンク部材452の接触位置が最下点e1側から最上点e2側へ相対的に移動し、リンク部材452がカム部材41によって図における左側へ押し動かされるので、これに伴って保持部材451が図における時計回りに回動する。その結果、図43の(a)に示すように、二次転写ローラ222が中間転写ベルト416に対して接近した状態に戻される。
このように、感光体に対して一次転写ローラを接近離間させる接離機構においても、本発明に係る接離機構を適用することが可能である。また、本発明に係るカム部材を一次転写ローラを接近離間させる接離機構に適用することで、上記定着装置や上記転写装置と同様に、カム面の勾配を緩やかにしても、勾配の最大高低差が小さくなるのを回避することができる。従って、感光体に対する一次転写ローラの接近離間距離を十分に確保しつつ、回転トルクの増大や作動音(異音)の発生を抑制することが可能である。また、図43に示す例では、図2や図3に示す実施形態の接離機構を転写装置に適用しているが、これ以外の上記実施形態に係る各構成も同様に適用可能である。
以上説明した本発明の実施形態の構成と作用・効果をまとめると、以下の通りである。
上記実施形態に係る接離機構は、カム部材を備え、前記カム部材を回転させることで、相手部材に対して接離部材を接近離間させる接離機構であって、前記カム部材は、回転方向の半周よりも多い領域に渡って回転中心からの距離が漸増するカム面を有し、一方向及びこれとは逆方向に回転可能に構成されている。
カム部材を一方向及びこれとは逆方向に回転可能に構成することで、相手部材に対して接離部材を接近させるときと離間させるときとで同じカム面を利用することができる。このため、カム部材は、従来(カム部材を一方向のみに回転させる構成)のような、カム面を確保できる範囲が最大でも回転方向の半周分になるという制約を受けないので、カム面を回転方向の半周よりも多い領域に渡って設けることができるようになる。そして、カム面を回転方向の半周よりも多い領域に渡って設けることで、カム面の勾配を緩やかにしても、勾配の最大高低差が小さくなるのを回避することができるようになるので、相手部材に対する接離部材の接近離間距離を十分に確保しつつ、カム面の勾配を緩やかにして回転トルクの増大や作動音(異音)の発生を抑制することが可能となる。
なお、上記回転中心からの距離が漸増するカム面とは、図3に示す例のように、カム面41aが最下点e1から最上点e2まで(平坦面41bを介することなく)連続して漸増する場合のほか、図18に示す例のように、最下点e1から最上点e2までの途中で平坦面41bを介して漸増する場合も含まれる。
また、上記実施形態に係る接離機構は、前記カム部材の回転位置を検知する回転位置検知手段と、前記カム部材の回転時間を計測するタイマーとを備える。そして、前記カム部材が一方向に回転するときは、前記回転位置検知手段によって所定の回転位置が検知されたタイミングで前記カム部材の回転を停止させ、前記カム部材が逆方向に回転するときは、前記タイマーによって所定の時間が計測されたタイミングで前記カム部材の回転を停止させるように制御される。
このように、カム部材が一方向に回転するときと逆方向に回転するときとで、カム部材の停止位置を制御するためのタイミング判定手段を、回転位置検知手段とタイマーとに分けることで、回転位置検知手段を2つ設けなくてもよくなるので、低コスト化や小型化を図れるようになる。
また、上記実施形態に係る接離機構は、前記カム部材が前記接離部材又はこれと連動する部材を押し動かすように回転するときは、前記回転位置検知手段によって所定の回転位置が検知されたタイミングで前記カム部材の回転を停止させ、前記カム部材が前記接離部材又はこれと連動する部材を押し動かす回転方向とは逆方向に回転するときは、前記タイマーによって所定の時間が計測されたタイミングで前記カム部材の回転を停止させるように制御される。また、この場合、前記カム部材に対して回転駆動力を伝達する駆動力伝達手段にウォームギアを用いる。
カム部材が接離部材又はこれと連動する部材を押し動かすように回転するときは、回転トルクの増大によってカム部材の回転数にばらつきが生じる可能性がある。しかしながら、このような回転数のばらつきが生じても、上記のように、回転位置検知手段によってカム部材の回転位置を検知することで、回転数のばらつきに関係なく、カム部材を確実に所定の回転位置で停止させることができる。これにより、カム部材の回転停止位置の精度が向上する。
一方、カム部材が接離部材又はこれと連動する部材を押し動かす回転方向とは逆方向に回転するときは、回転トルクの増大に伴うカム部材の回転数のばらつきの影響は少ない。従って、この場合は、回転位置検知手段ではなく、タイマーによってカム部材の回転位置制御を行うことができる。しかしながら、この場合は、カム部材による押圧力が解放される際に、カム部材の回転を加速させる方向の力が付与され、カム部材の回転停止位置にばらつきが生じる可能性がある。そのため、上記のように、駆動力伝達手段にウォームギアを用いることで、ウォームギアのセルフロック機能によってカム部材の加速を防止することができる。これにより、カム部材の回転速度の変化に伴う回転停止位置のばらつきを抑制することができ、カム部材の回転停止位置の精度が向上する。また、カム部材が加速することに伴う作動音(異音)の発生も抑制することが可能である。
また、上記実施形態では、前記回転位置検知手段が、光を照射して照射光を受光する光学センサと、前記カム部材と一体的に回転することで前記光学センサの照射光を遮蔽又は透過あるいは反射して受光の有無を切り換えることにより前記光学センサによって回転位置が検知される被検知部材とを有する。また、前記被検知部材は、回転時に前記光学センサの光照射部を通過する通過時間が前記タイマーの予め設定された計測時間よりも長くなるように形成された長い被検知領域と、回転時に前記光学センサの光照射部を通過する通過時間が前記タイマーの予め設定された計測時間よりも短くなるように形成された短い被検知領域とを有する。また、前記タイマーは、前記光学センサによる受光の有無が切り換えられたタイミングで時間計測を開始すると共に、その受光の有無の状態が継続したまま前記予め設定された時間の計測を完了した場合は前記カム部材の回転を停止させ、前記予め設定された時間の計測を完了する前に前記光学センサによる受光の有無が切り換わった場合は時間計測を途中でキャンセルするように制御される。
この場合、短い被検知領域による受光切換タイミングで開始されたタイマーによる時間計測は、このときの受光の有無の状態がタイマーによる時間の計測が完了するまで継続しないため、途中でキャンセルされる。一方、長い被検知領域による受光切換タイミングで時間計測が開始された場合は、時間計測が完了するまでその受光の有無の状態が継続するので、時間計測の完了によってカム部材の回転が停止される。このように、短い被検知領域による受光切換タイミングで開始された時間計測は途中でキャンセルされ、長い被検知領域による受光切換タイミングで開始された時間計測でもってカム部材の回転停止位置を制御することで、タイマーによる計測時間を短くすることができる。これにより、タイマーによる時間計測のばらつきが少なくなり、カム部材の回転位置制御の精度を向上させることができる。
また、上記実施形態では、前記カム部材が一方向に回転するときは、前記短い被検知領域が前記光学センサの光照射部を通過して受光の有無が切り換えられたタイミングで前記カム部材の回転を停止させ、前記カム部材が逆方向に回転するときは、前記長い被検知領域が前記光学センサの光照射部に到達して受光の有無が切り換えられたタイミングで前記タイマーが時間計測を開始し、その受光の有無の状態が継続したまま前記タイマーが予め設定された計測時間を計測したタイミングで前記カム部材の回転を停止させる。
このような制御を行うことで、短い被検知領域と長い被検知領域とを有する被検知部材を用いた構成において、光学センサとタイマーを用いてカム部材を所定の位置に停止させることができる。
また、上記実施形態に係る接離機構のように、前記遮光部材が、前記短い被検知領域を回転方向に渡って複数有し、前記カム部材が一方向に回転するときは、複数の前記短い被検知領域の中から1つを選択して、選択された前記短い被検知領域が前記光学センサの光照射部を通過して受光の有無が切り換えられたタイミングで前記カム部材の回転を停止させるように制御してもよい。
このように、複数の短い被検知領域の中から1つを選択して、選択された短い被検知領域による受光の切換タイミングでカム部材の回転を停止させることで、カム部材の回転停止位置を細かく調整することができるようになる。
また、上記実施形態に係る接離機構は、互いに対向する一対の回転体を備え、前記回転体同士の間に未定着画像を担持する記録媒体を通過させて前記未定着画像を前記記録媒体に定着する定着装置であって、相手部材である一方の前記回転体に対して接離部材である他方の前記回転体を接近離間させる接離機構を備える定着装置に適用することができる。
また、上記実施形態に係る接離機構は、中間転写体と、複数の感光体に形成された画像を前記中間転写体に転写する複数の一次転写部材と、前記中間転写体に転写された画像を記録媒体に転写する二次転写部材とを備える転写装置であって、相手部材である前記感光体に対して接離部材である前記一次転写部材を接近離間させる接離機構を備える転写装置に適用することもできる。
また、上記実施形態に係る接離機構は、中間転写体と、複数の感光体に形成された画像を前記中間転写体に転写する複数の一次転写部材と、前記中間転写体に転写された画像を記録媒体に転写する二次転写部材とを備える転写装置であって、相手部材である前記中間転写体に対して接離部材である前記二次転写部材を接近離間させる接離機構を備える転写装置に適用することもできる。
また、上記実施形態に係る接離機構は、画像形成装置に用いることができる。