以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。まず、図1を参照して、画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置は、モノクロ画像形成装置である。その装置本体(画像形成装置本体)100には、作像ユニットとしてのプロセスユニット1が着脱可能に装着されている。プロセスユニット1は、表面に画像を担持する像担持体としての感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ3と、感光体2上の潜像を可視画像化する現像手段としての現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード5等を備える。また、感光体2に対向する位置に、感光体2の表面を露光する露光手段としてのLEDヘッドアレイ6が配置されている。
プロセスユニット1には、画像形成用の粉体であるトナーを収容する粉体収容器としてのトナーカートリッジ7が着脱可能に装着されている。トナーカートリッジ7は、未使用のトナーを収容する未使用トナー収容部8と、使用された廃トナーを収容する廃トナー収容部9とを有する。
また、画像形成装置は、記録媒体としての用紙に画像を転写する転写装置10と、用紙を供給する給紙装置11と、用紙に転写された画像を定着させる定着装置12と、用紙を装置外へ排出する排紙装置13と、タイミングローラとしての一対のレジストローラ17とを備える。
転写装置10は、転写部材としての転写ローラ14を備える。転写ローラ14は、プロセスユニット1を装置本体100に装着した状態で感光体2と接触するように配置されている。また、転写ローラ14は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が印加されるようになっている。
給紙装置11は、用紙Pが収容される給紙カセット15と、給紙カセット15に収容されている用紙Pを給送する給紙ローラ16とを備える。
定着装置12は、用紙に画像を定着させる相手部材(回転体)としての定着ローラ18と、定着ローラ18に対向して配置される接離部材(回転体)としての加圧ローラ19とを備える。定着ローラ18は、ヒータ等の加熱手段によって加熱される。加圧ローラ19は、定着ローラ18側へ加圧され、定着ローラ18に接触して定着ニップを形成している。
排紙装置13は、用紙を装置外に排出する一対の排紙ローラ20を備える。また、装置本体100の外装上面部には、排紙ローラ20によって排出された用紙を載置するための排紙トレイ21が形成されている。
また、装置本体100内には、給紙カセット15から、レジストローラ17、転写ローラ14と感光体2との間の画像転写部(転写ニップ)、定着装置12を経由して、排紙ローラ20まで用紙Pを搬送するための搬送路R1が設けられている。さらに、画像形成装置100内には、両面印刷する際に定着装置12を通過した用紙Pを画像転写部に再度搬送するための両面搬送路R2が設けられている。
続けて、図1を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置の作像動作について説明する。
作像動作が開始されると、感光体2が回転駆動され、帯電ローラ3によって感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。次いで、読取装置又はコンピュータ等からの画像情報に基づいてLEDヘッドアレイ6が感光体2の帯電面を露光し、静電潜像が形成される。そして、現像装置4によって感光体2上の静電潜像にトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ16が回転駆動を開始し、給紙カセット15から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、レジストローラ17によって搬送を一旦停止される。その後、所定のタイミングでレジストローラ17の回転駆動を開始し、感光体2上のトナー画像が画像転写部に達するタイミングに合わせて、用紙Pを画像転写部へ搬送する。
そして、用紙Pが画像転写部に搬送されると、転写ローラ14に所定の電圧が印加されることにより生じた転写電界によって感光体2上のトナー画像が用紙P上に転写される。また、このとき用紙Pに転写されなかった感光体2上のトナーは、クリーニングブレード5によって除去され、トナーカートリッジ7の廃トナー収容部9へ回収される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置12へと搬送され、定着ローラ18と加圧ローラ19とによって形成される定着ニップを通過することにより加熱及び加圧されて、用紙P上のトナー画像が定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ20によって装置外に排出され、排紙トレイ21上に載置される。
また、両面印刷を行う場合は、定着装置12を通過した用紙Pを装置外に排出せずにスイッチバックさせて両面搬送路R2に送る。用紙Pは両面搬送路R2を通ってレジストローラ17の手前側で搬送路R1に送り込まれ、レジストローラ17によって画像転写部へ再度搬送される。そして、用紙Pの裏面に画像が転写され、定着装置12によって裏面側の画像が定着された後、用紙Pは装置外へ排出される。
図2は、定着装置12の概略断面図である。
図2に示すように、定着装置12は、内部に定着ローラ18や加圧ローラ19が収容される外装部を構成する樹脂製のフレーム部材23を有する。フレーム部材23の正面には、定着装置12内に用紙を進入させるための入口部23aが形成され、フレーム部材23の背面には、定着装置12から用紙を排出するための出口部23bが形成されている。なお、ここでいう定着装置12の「正面」とは、定着装置12が画像形成装置に装着された状態で画像形成装置の正面、すなわち作業者が画像形成装置に設けられた操作部(操作パネル等)で印刷指示をする際に立つ側の面を意味する。また、定着ローラ18内には発熱体としてのハロゲンヒータ22が設けられている。加圧ローラ19は、後述の加圧部材によって定着ローラ18に対して加圧されており、定着ローラ18と加圧ローラ19とが圧接する箇所には定着ニップNが形成されている。
装置本体100側の駆動源から定着ローラ18に駆動力が伝達されると、定着ローラ18は図2中の矢印Aで示す方向に回転駆動する。また、加圧ローラ19は、回転駆動する定着ローラ18に対して図2中の矢印Bで示す方向に従動回転するように構成されている。なお、本実施形態とは反対に、加圧ローラ19を駆動ローラとし、定着ローラ18を従動ローラとしてもよい。
図2を参照しつつ、定着装置12の動作について簡単に説明する。
ハロゲンヒータ22から発せられる輻射熱によって定着ローラ18が所定の温度に加熱され、定着ローラ18と加圧ローラ19とが回転している状態で、用紙が図2中の矢印C1で示す方向から定着ニップNへ進入すると、用紙は定着ローラ18と加圧ローラ19とによって挟持されながら搬送される。このとき、用紙上の未定着画像が、定着ローラ18の熱によって加熱されると共に、定着ローラ18と加圧ローラ19とによって加圧されることで、用紙に画像が定着される。そして、画像が定着された用紙は定着ニップNから図2中の矢印C2方向へ排出される。
図3に示すように、フレーム部材23には、定着装置12を装置本体100に対して着脱する際に作業者が把持する取っ手部71が設けられている。取っ手部71は、フレーム部材23の背面の左右端部にそれぞれ設けられる。
一対の取っ手部71は、互いに左右対称の形状に構成されている。具体的に、各取っ手部71は、上下方向に延びる把持部71aと、把持部71aの上端部及び下端部から前方(正面側)に延びる一対のアーム部71bとを有し、把持部71aが一対のアーム部71bを介してフレーム部材23の背面に固定されている。そして、各把持部71aとフレーム部材23の背面との間には、作業者が手又は指を挿入可能な空間部S1が形成されている。
さらに、フレーム部材23には、装置本体100に対して定着装置12を位置決めするための複数の位置決め部77~79が設けられている。複数の位置決め部77~79は、フレーム部材23の正面右端部に設けられた第1位置決め突起77と、フレーム部材23の左側面及び右側面の正面側にそれぞれ設けられた一対の第2位置決め突起78と、フレーム部材23の左側面及び右側面の背面側にそれぞれ設けられた一対の第3位置決め突起79とで構成される。
また、フレーム部材23の左側面及び右側面には、それぞれ定着装置12を装置本体100に着脱する際に後述の本体側ガイド部に沿って案内される凸状のガイド部としてのガイド突起80が設けられている。各ガイド突起80は、矩形(略長方形又は略正方形)に形成されており、それぞれの上平面及び下平面が本体側ガイド部に対して摺動する摺動面80a,80bとして機能する。特に、本実施形態では、定着装置12の着脱時に、定着装置12におけるガイド突起80以外の部分は装置本体100に対して摺動しない(ガイド機能を発揮しない)ようにすることで、摺動抵抗を少なくし、操作性を向上させている。
図4は、定着装置12を左側から見た側面図である。
図4に示すように、定着装置12には、定着装置12を装置本体100に装着した状態で離脱しないように固定するロック部83が設けられている。ロック部83は、取っ手部71に回動可能に設けられた回動部材81の一部に設けられている。回動部材81は、略L字型に形成されており、その回動中心(支点82)から前方(正面側)に延びる部分の先端部にロック部83が設けられている。一方、回動部材81の回動中心(支点82)から上方に延びる部分は、作業者が回動部材81を回動操作するための操作部84である。
また、ロック部83は、その上面とフレーム部材23の下面との間に配置されている付勢部材としてのコイルバネ85によって常時下方へ付勢されている。このため、回動部材81が作業者によって回動操作されない状態では、回動部材81の下部が下側のアーム部71bの底部71cに当接し、ロック部83の先端部(下端部)が下側のアーム部71bの底部71cよりも下方へ大きく突出した状態(図4中の実線で示す状態)で保持される。この状態では、ロック部83が、装置本体100側に設けられた後述の係合部に対して係合可能なロック可能状態となる。
これに対して、作業者がコイルバネ85の付勢力に抗して回動部材81を図4における反時計回りに回動させた場合は、ロック部83の先端部が上方へ退避し、装置本体100側の係合部に対して係合しないロック不可状態(図4中の二点鎖線で示す状態)となる。このように、作業者が操作部84を操作して回動部材81を回動させることで、ロック部83をロック可能状態とロック不可状態とに切り替えることが可能である。なお、回動部材81は右側の取っ手部71にも同様に設けられている。
図5は、定着装置12が装着された状態の装置本体100の概略断面図である。
図5に示すように、装置本体100の背面(図における左側の面)には開閉カバー101が設けられている。開閉カバー101は、図5中の矢印H方向に回動することで開閉する。図5に示す状態は、開閉カバー101が開いて装置本体100の背面に開口部102が形成された状態である。この状態で、定着装置12を開口部102から後方へ取り外すことが可能である。なお、定着装置12の着脱方法については後で詳しく説明する。
また、開閉カバー101には、両面搬送路R2の一部を構成する両面搬送ユニット104が一体的に設けられている。このため、図5に示すように、開閉カバー101を開いた状態にすると、両面搬送ユニット104は開閉カバー101と一緒に回動し、定着装置12の背面近傍から退避した状態となる。
装置本体100の左側壁及び右側壁の各内面には、それぞれ定着装置12を装置本体100に着脱する際に定着装置12を案内する本体側ガイド部としての一対のガイドレール103が設けられている。各ガイドレール103は、上側のガイド面103a及び下側のガイド面103bを有している。定着装置12の着脱時に、これらのガイド面103a,103bに対して上記ガイド突起80の上側の摺動面80aと下側の摺動面80bとが摺動することで定着装置12が案内される。
また、図6に示すように、各ガイドレール103の上側のガイド面103a及び下側のガイド面103bは、開口部102から遠い奥側で略水平方向に延びる奥側水平面105a,105bと、奥側水平面105a,105bから開口部102側(手前側)に向かって上方へ傾斜しながら延びる手前側傾斜面106a,106bとを有している。さらに、下側のガイド面103bは、手前側傾斜面106bよりも開口部102に近い手前側に略水平方向に配置された手前側水平面107bを有している。
また、図5に示すように、装置本体100には、装置本体100に対する定着装置12の位置決めを行う複数の本体側位置決め部108~110が設けられている。複数の本体側位置決め部108~110は、定着装置12に設けられた第1位置決め突起77と係合して主に定着装置12の左右方向の位置決めを行う第1本体側位置決め部108と、定着装置12に設けられた第2位置決め突起78と係合して主に定着装置12の前方向と上下方向の位置決めを行う第2本体側位置決め部109と、定着装置12に設けられた第3位置決め突起79と係合して主に定着装置12の第2位置決め突起78を中心とする回転方向の位置決めを行う第3本体側位置決め部110とで構成される。
また、装置本体100には、定着装置12のロック部83が係合する係合部111が設けられている。図7に示すように、定着装置12を装置本体100に装着した状態では、係合部111とロック部83の間に僅かな隙間が設けられる。定着装置12に引き出す方向(矢印K方向)の力が発生した場合には、係合部111がロック部83に係合することにより、定着装置12の引き出し方向の移動が規制される。
以下、定着装置12の着脱方法について説明する。
定着装置12を装置本体100から取り外す場合は、まず、図5に示すように、開閉カバー101を開いた状態にする。そして、装置本体100の開口部102を通して取っ手部71を両手で把持する。例えば、作業者は、図7に示す例のように、親指を取っ手部71の上側のアーム部71b上に載せ、その他の指で把持部71aと操作部84とを一緒に握る。この状態で、操作部84を図7中の矢印J方向に引いて回動させることで、装置本体100側の係合部111に対するロック部83の係合が解除される。そして、ロック部83をロック解除状態(ロック不可状態)としたまま、定着装置12を離脱方向(図7中の矢印K方向)に引き動かす。
これにより、図8に示すように、定着装置12は装置本体100側のガイドレール103に沿って図の左方向(離脱方向)に移動し、定着装置12に設けられた各位置決め突起77~79が装置本体100側の各装置本体側位置決め部108~110に対して離脱する。また、定着装置12を引き動かし始めると、初めのうちは定着装置12のガイド突起80がガイドレール103の奥側水平面105a,105bに対して摺動し、定着装置12は略水平方向に移動する。次いで、図9に示すように、ガイド突起80はガイドレール103の手前側傾斜面106a,106bに対して摺動するため、定着装置12は斜め上方に移動する。その後、図10に示すように、定着装置12は装置本体100から完全に引き出されて取り外された状態となる。
このように、本実施形態では、定着装置12を両面搬送ユニット104に対して当接させないように斜め上方向に案内して取り外すことができる。ここで仮に、定着装置12を水平方向のみに案内するように構成すると、両面搬送ユニット104に対する定着装置12の当接を回避するために、定着装置12の装着位置や開口部102の上端位置を高くしなければならず、装置本体100の高さが高くなってしまう。これに対して、本実施形態の場合は、定着装置12の装着位置や開口部102の上端位置を高くしなくても両面搬送ユニット104に対する定着装置12の当接を回避することができるので、装置本体100の高さを低くすることができ、小型化を図れるようになる。
次に、定着装置12を装置本体100に装着する場合は、上記取り外し時の手順とは逆の手順で行えばよい。すなわち、取っ手部71と操作部84とを把持しながら、定着装置12をガイドレール103に沿って装置本体100内に挿入し、各位置決め突起77~79が各本体側位置決め部108~110に係合した時点で、取っ手部71及び操作部84を握る力を緩める。これにより、ロック部83がコイルバネ85の付勢力によって装置本体100側の係合部111に係合し、ロック状態となる。なお、本実施形態では、その後、定着装置12に駆動力が伝達される際に、装置本体100側に設けられた駆動ギアと定着ローラ18の端部に設けられた定着ギアとの間で装着方向の力が作用するため、定着装置12の位置決めがより確実になされる。
また、図11に示すように、本実施形態では、開閉カバー101を閉じると、左右の取っ手部71の間に両面搬送ユニット104が配置される。このように、取っ手部71の間に両面搬送ユニット104が配置されることで、取っ手部71間の空間を両面搬送路R2の一部として有効活用することができ、一層の小型化が図れる。
以下、定着装置12に設けられた、加圧ローラを定着ローラに切離させるための接離機構およびその周辺構成について説明する。
図12は、定着装置12の外装部の上部分を取り除いた状態の斜視図、図13は、定着装置の側面図である。
図12に示すように、フレーム部材23の長手方向の一端部側と他端部側とには、それぞれ金属製の支持部材25が取り付けられている。図13に示すように、各支持部材25に設けられた軸受26,27によって定着ローラ18と加圧ローラ19は回転可能に支持されている。
加圧ローラ19は、支持部材25によって定着ローラ18に対して図13中の矢印D方向に接近離間可能に支持されている。具体的には、加圧ローラ19を支持する軸受27が、支持部材25に設けられた長方形状の孔である軸受ガイド部25bに嵌め込まれており、この軸受ガイド部25bに沿って軸受27が案内されることで、加圧ローラ19は定着ローラ18に対して接近離間する。一方、定着ローラ18を支持する軸受26は、各支持部材25に設けられた円形の孔である軸受嵌合部25aに嵌め込まれており、定着ローラ18はその軸位置が軸方向と直交する方向に移動しないように固定されている。
また、本実施形態に係る定着装置12は、定着ローラ18に対して加圧ローラ19を加圧する加圧部材としての加圧レバー31と、加圧レバー31を加圧方向に付勢する付勢部材としての加圧バネ32とを備えている。加圧レバー31及び加圧バネ32は、加圧ローラ19の両端部側にそれぞれ1つずつ設けられている。加圧レバー31は、その一端部31aが支持部材25の下部に設けられた支軸33に取り付けられ、支軸33を中心に図13の矢印E方向に回動可能に構成されている。各加圧バネ32は、加圧レバー31の他端部31b側と支持部材25の上部とに設けられた引っ掛け部31c,25cに引っ掛けて取り付けられている。これにより、加圧レバー31の他端部31bは、加圧バネ32によって常時図13における上方へ引っ張られた状態で保持されている。そして、加圧レバー31は、支持部材25の軸受ガイド部25bに嵌め込まれたパッド34を介して加圧ローラ19を支持する軸受27を押圧し、加圧ローラ19を定着ローラ18に向かって加圧している。
また、本実施形態に係る定着装置12は、定着ローラ18に対して加圧ローラ19を接近離間させる接離機構90を備えている。接離機構90は、カム部材41と、カム部材41の回転位置(回転角度)を検知する回転位置検知手段として、光学センサ51と、遮光部材52等を主に備えている。
カム部材41は、一対の支持部材25によって回転可能に支持される回転軸42の両端部側にそれぞれ設けられている。回転軸42が回転すると、一対のカム部材41は回転軸42と一体的に回転する。また、カム部材41は、回転中心からの距離が回転方向に向かって変化するカム面41aを有する。加圧レバー31が加圧バネ32によって引っ張られることで、加圧レバー31に設けられたカム受け部(当接部材)31dがカム面41aに対して接触した状態で保持されている。この状態で、カム部材41が一方向に回転すると、加圧レバー31がカム面41aによって図13における下方へ押し動かされることで、加圧ローラ19が定着ローラ18に対して離間し、カム部材41が逆回転すると、加圧レバー31が図13における上方へ戻されることで、加圧ローラ19が定着ローラ18に対して接近するように構成されている。なお、カム部材41による詳しい接離動作については後述する。
光学センサ51は、透過型の光学センサであり、光を照射する投光部と、投光部から照射された光を受ける受光部とを有する。遮光部材52は、カム部材41と一体的に回転することで、光学センサ51の照射光を遮蔽又は透過し、受光の有無を切り換えることにより光学センサ51によって回転位置が検知される被検知部材である。光学センサ51及び遮光部材52は、2つあるカム部材41のうちの片方のカム部材41側にのみ設けられている。
図14は、カム部材と遮光部材と光学センサとを抜き出して示す図である。
図14に示すように、カム部材41に設けられたカム面41aは、回転中心からの距離が図における時計回りに漸増するように形成されている。そして、カム面41aは、回転方向の半周(180°)よりも多い領域に渡って設けられている。具体的に、本実施形態では、カム面41aの回転中心からの距離が最も小さい最下点e1から、カム面41aの回転中心からの距離が最も大きい最上点e2まで、約270°の範囲に渡って設けられている。また、カム面41aには、最上点e2を境として、回転中心からの距離が急激に変化する段差部41bを有する。
遮光部材52は、回転方向に長い(回転方向の長さがX1である)被検知領域としての長遮光部52aと、長遮光部52aよりも回転方向に短い(回転方向の長さがX2である)被検知領域としての短遮光部52bとを有する。長遮光部52aと短遮光部52bは、いずれも回転に伴って光学センサ51の光照射部Lを通過することで照射光を遮蔽する。また、長遮光部52aと短遮光部52bとの間には、光学センサ51の照射光を透過させる孔部(透光部)52jが形成されている。また、遮光部材52は、周方向の一部に、孔部(透光部)52jとは別の透光部である、非遮光部(透光部)52kを有する。
図15は、本実施形態に係る接離機構の駆動系の概略構成図である。
図15に示すように、駆動系は、駆動機構としてのモータ43と、モータ43からの駆動力をカム部材41や遮光部材52に伝達するギア列44とを備える。本実施形態では、モータ43として、小型で安価なDCブラシモータを用いている。ギア列44は、モータ43の出力軸に取り付けられた第1のウォームギア45と、第1のウォームギア45と噛み合う第2のウォームギア46と、第2のウォームギア46と一体に設けられた駆動伝達部材としての第1の平歯車47と、第1の平歯車47と噛み合う(係合する)と共に遮光部材52と一体に設けられた駆動伝達部材としての第2の平歯車48とで構成される。モータ43の出力軸が一方向又はこれと逆方向に回転すると、各ウォームギア45,46と各平歯車47,48が回転し、第2平歯車48と遮光部材52が一体的に回転することで、回転軸42を介して各カム部材41が一方向(図14中の矢印Fで示す方向)とこれとは逆方向(図14中の矢印Gで示す方向)とに回転する。
図16は、本実施形態に係る接離機構の制御系のブロック図である。
図16に示すように、制御系は、カム部材41の回転を制御する制御部60と、カム部材41の回転位置を検知するための上記光学センサ51、及び、カム部材41の回転時間を計測するタイマー70を備える。制御部60は、例えば、画像形成装置本体に設けられたCPU(Central Processing Unit )、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。制御部60は、光学センサ51によって検知された信号やタイマー70によって計測された時間に基づいてモータ43の駆動を制御してカム部材41の回転を制御する。また、制御部60は、光学センサ51によって検知された信号に基づいてタイマー70による時間計測開始のタイミングや時間計測停止のタイミングを制御するようにも設定されている。
ところで、定着ニップに封筒等の2枚重ねの用紙を通紙する場合、普通紙を通紙する場合と同様の加圧力で定着ローラと加圧ローラとを加圧すると、用紙にシワが発生する可能性がある。そのため、封筒等の用紙を通紙する場合は、普通紙を通紙する際の通常の加圧力に比べて小さい加圧力で定着ニップを形成するのがよい。
そこで、本実施形態に係る定着装置では、上記のように、加圧ローラを定着ローラに対して接近離間可能にすることで、紙種に応じて定着ニップにおける加圧力を変更できるようにしている。以下、通常の加圧力から脱圧する場合の脱圧動作と、通常の加圧力に戻す場合の加圧動作について説明する。
まず、カム部材41による加圧ローラ19の接離動作について説明する。
図17において、(a)は、加圧レバーのカム受け部31dがカム面41aに対して最下点e1側で接触している状態を示す。この状態では、加圧ローラが定着ローラに対して接近し、通常の加圧力で加圧されている。
図17の(a)に示す状態から、図17の(b)に示すように、カム部材41を図における反時計回りに回転させると、カム面41aがカム受け部31dに対して摺動し、カム面41aに対するカム受け部31dの接触位置が最下点e1側から最上点e2側へ相対的に移動する。これに伴って、カム受け部31dがカム面41aによって図における下方へ押し動かされ、加圧レバーが加圧ローラの軸受から退避することで、加圧ローラが定着ローラに対して離間する方向に移動する。
そして、図17の(c)に示すように、カム面41aに対するカム受け部31dの接触位置が最上点e2側へ至ると、定着ローラに対する加圧ローラの離間動作が完了し、定着ニップにおける加圧力が通常の加圧よりも小さくなった脱圧状態となる。この時点で、カム部材41の回転を停止させる。
反対に、図18の(a)に示す脱圧状態から、図18の(b)に示すように、カム部材41を図における時計回り(上記脱圧移行時の回転方向とは逆方向)に回転させると、カム面41aがカム受け部31dに対して摺動し、カム面41aに対するカム受け部31dの接触位置が最上点e2側から最下点e1側へ相対的に移動する。これに伴って、カム受け部31dが加圧バネの付勢力によって図における上方へ引き上げられ、加圧レバーが加圧ローラの軸受を押圧することで、加圧ローラが定着ローラに対して接近する方向に移動する。
そして、図18の(c)に示すように、カム面41aに対するカム受け部31dの接触位置が最下点e1側へ至ると、定着ローラに対する加圧ローラの接近動作が完了し、定着ニップにおける加圧力が増加した通常の加圧状態に戻される。この時点で、カム部材41の回転を停止させる。
このように、本実施形態に係る定着装置においては、加圧ローラを離間させるときはカム部材41を一方向に回転させ、加圧ローラを接近させるときはカム部材41を逆方向に回転させることで、加圧レバーを押し動かすのと戻すのとを同じカム面41aを用いて行っている。このため、本実施形態に係るカム部材41においては、カム面41aを回転方向の半周よりも多い領域に渡って設けることができる。これにより、カム面41aの勾配を緩やかにしても、勾配の最大高低差が小さくなるのを回避することができるので、定着ローラに対する加圧ローラの接近離間距離を十分に確保しつつ、カム面41aの勾配を緩やかにして回転トルクの増大や作動音(異音)の発生を抑制することができる。
次に、カム部材の回転制御方法について説明する。まず、カム部材の回転制御方法のうち、脱圧動作時の回転制御方法について説明する。図19は、脱圧動作時の回転制御方法を説明するための図であり、図の上段は遮光部材の回転位置を示す図、図の中段はカム部材の回転位置を示す図、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)、(d)は互いに対応している。図20は、脱圧動作時の回転制御のフローチャートである。
図19において、(a)は、加圧レバーのカム受け部31dがカム面41aに対して最下点e1側で接触し、加圧ローラが定着ローラに対して接近した状態で加圧される通常の加圧状態である。また、この状態で光学センサ51は透光状態となっている。
通常の加圧状態から脱圧状態となるように、上記制御部からカム部材41を回転させる指示が発せられると、モータが駆動を開始し、図19の(b)に示すように、カム部材41は図における反時計回り(一方向としての正方向)に回転し始める(図20のS1)。これにより、カム受け部31dがカム部材41によって図における下方へ押し動かされる。
また、カム部材41の回転に伴って、遮光部材52も同方向(正方向)へ回転し始める。そして、通常であればその後、図19の(b)に示すように、長遮光部52aの回転方向の前端部が光照射部Lに到達することで、光学センサ51が遮光状態に切り換えられる。
しかしながら、ここで遮光部材52が正常に回転しないなどの異常が生じた場合、通常通りに図19の(b)に示す遮光状態に切り換わらない可能性がある。そのため、図19の(b)に示す透光状態に切り換わるのが、上記カム部材41の回転が開始されてから予め設定された時間h1以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図20のS2)。なお、本実施形態では、この時間h1は、後述のタイマーの設定時間Tに猶予時間αを加えた時間としている。
その結果、予め設定された時間h1以内に透光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続される(図20のS3)。一方、予め設定された時間h1を超えても遮光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断してカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図20のS4)。そして、カム部材41の回転が継続された場合は、その後しばらくの間、遮光状態が継続し、カム部材41によってカム受け部31dがさらに下方へ押し動かされる。
そして、図19の(c)に示すように、遮光部材52の回転に伴って、孔部52jが光照射部Lに対向する位置まで移動すると、光学センサ51が透光状態に切り換えられる(図20のS5)。このとき、制御部によって、上記図19の(b)に示す遮光状態に切り換わってから図19の(c)に示す透光状態に切り換わるのに要する時間t1が算出され、この時間t1が予め設定された時間h2以上か否か判断される(図20のS6)。ここで、予め設定された時間h2は、図19の(b)に示す遮光状態に切り換わってから図19の(c)に示す透光状態に切り換わるのに要すると想定される通常時間である。要するに、図21に示す長遮光部52aが光照射部Lを通過するのに要すると想定される時間である。
上記判断の結果、時間t1が予め設定された時間h2以上である場合は、そのままカム部材41の回転が継続される(図20のS7)。一方、時間t1が予め設定された時間h2よりも短い場合は、遮光部材52の回転位置に異常があると判断して、カム部材41の回転が停止される(図20のS8)。
上記図19の(c)に示す状態からカム部材41の回転が継続された場合は、通常であればその後すぐに、図19の(d)に示すように、短遮光部52bの前端部が光照射部Lに到達し、光学センサ51が遮光状態に戻される。
また、ここでも、遮光部材52の回転などに異常がないか否か制御部によって判断される。具体的には、図19の(d)に示す遮光状態に切り換わるのが、上記図19の(c)に示す透光状態に切り換わってから予め設定された時間h3以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図20のS9)。
その結果、予め設定された時間h3以内に遮光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、この透光状態への切換を光学センサ51が検知したタイミングで、制御部からカム部材41の回転を停止させる指示が発せられる(図20のS10)。そして、この停止指示を受けてモータが駆動を停止し、カム部材41の回転が完全に停止されて、脱圧動作が完了する。一方、予め設定された時間h3を超えても遮光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断してカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図20のS11)。
続いて、通常の加圧力に戻す加圧動作時のカム部材の回転制御方法について説明する。 図21は、加圧動作時のカム部材の回転制御方法を説明するための図であり、図の上段は遮光部材の回転位置を示す図、図の中段はカム部材の回転位置を示す図、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段、中段、下段のそれぞれの(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は互いに対応している。図22は、加圧動作時の回転制御のフローチャートである。
図21において、(a)は、加圧ローラが定着ローラに対して離間した状態の脱圧状態を示す。この状態で、カム部材41及び遮光部材52は上記脱圧動作時の制御によって正常に回転動作が停止された位置にある。すなわち、加圧レバーのカム受け部31dはカム面41aに対して最上点e2側で接触した状態にあり、光学センサ51は、短遮光部52bが光照射部Lに重なるように配置された遮光状態となっている。
この脱圧状態から通常の加圧状態となるように、上記制御部からカム部材41を回転させる指示が発せられると、モータが駆動を開始し、図21の(b)に示すように、カム部材41は図における時計回り(逆方向)に回転し始める(図22のS1)。これにより、脱圧移行時とは反対に、カム受け部31dが上記加圧バネの付勢力で図における上方へ引き上げられる。
また、カム部材41の回転に伴って、遮光部材52も同方向(逆方向)へ回転し始める。そして、通常であればその後すぐに、図21の(b)に示すように、短遮光部52bが光照射部Lを通過することで、光学センサ51は透光状態に切り換えられる。
また、ここでも、遮光部材52の回転などに異常が生じていないか確認するため、図21の(b)に示す透光状態に切り換わるのが、上記カム部材41の回転が開始されてから予め設定された時間h4以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図22のS2)。
その結果、予め設定された時間h4以内に透光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続されると共に、当該透光状態への切換が検知されたタイミングで、上記タイマーによる時間計測が開始される(図22のS3)。一方、予め設定された時間h4を超えても透光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断してカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図22のS4)。
ここで、タイマーが計測する時間は予め設定されており、タイマーが予め設定された時間を計測し終えた時点で制御部からカム部材を停止させる信号が発せられる。ただし、タイマーによる時間計測は、光学センサの透光状態が継続している間は継続するが、タイマーが時間計測を完了する前に透光状態から遮光状態に切り換わると、タイマーによる時間計測は途中でキャンセルされるように設定されている。
このように設定されたタイマーに対して、孔部52jは、回転時に光照射部Lを通過する通過時間がタイマーの設定時間Tよりも短くなるように形成されている。従って、上記図21の(b)に示す透光状態に切り換わったタイミングでタイマーによる時間計測が開始されるが、図21の(c)に示すように、孔部52jはすぐに光照射部Lを通過するので、通常、ここでの透光継続時間t2はタイマーの設定時間Tより短い。このため、タイマーが設定時間Tを計測し終えるよりも早い段階で遮光状態に切り換えられる。
また、このとき、制御部によって、上記透光継続時間t2がタイマーの設定時間Tよりも短いか否かが判断される(図22のS5)。その結果、透光継続時間t2がタイマーの設定時間Tよりも短い場合は、タイマーが設定時間Tを計測し終える前に遮光状態に切り換えられたことになるので、タイマーによる時間計測が途中でキャンセルされる(図22のS6)。また、この場合、カム部材41の回転は継続される。
一方、遮光継続時間t2がタイマーの設定時間Tの間継続する場合は、タイマーが設定時間Tを計測し終えた時点で、制御部からカム部材41を停止させる信号が発せられ、カム部材41の回転が停止される(図22のS7)。なお、この場合は、結果的にカム部材41が正規の停止位置(加圧状態)で停止されることになる。
上記のように、孔部52jの通過によってタイマーによる時間計測がキャンセルされた場合は、しばらくの間、遮光状態が継続し、カム部材41の回転に伴ってカム受け部31dがさらに上方へ引き上げられる。その後、通常であれば図21(d)に示すように、長遮光部52aが光照射部Lを通過することで、再び透光状態に切り換えられる。
また、ここでも、遮光部材52の回転などに異常が生じていないか確認するため、図21の(d)に示す遮光状態に切り換わるのが、上記図21の(c)に示す遮光状態に切り換わってから予め設定された時間h5以内に行われるか否かが制御部によって判断される(図22のS8)。
その結果、予め設定された時間h5以内に透光状態に切り換わった場合は、異常がないと判断され、そのままカム部材41の回転が継続されると共に、当該透光状態への切換が検知されたタイミングで、タイマーによる時間計測が再び最初から開始される(図22のS9)。一方、予め設定された時間h5を超えても透光状態に切り換わらない場合は、異常があると判断してカム部材41の回転をこれ以上継続しないように停止させる(図22のS10)。
そして、カム部材41の回転が継続され、タイマーによる時間計測が再び最初から開始された場合は、長遮光部52aによる透光状態が継続されるので、透光状態はタイマーによる時間計測の間継続する。その結果、図21の(e)に示すように、タイマーが設定時間Tを計測し終えた時点で、制御部からカム部材41を停止させる信号が発せられる(図22のS11)。そして、この停止指示を受けてモータが駆動を停止し、カム部材41の回転が完全に停止される。これにより、加圧ローラが定着ローラに対して接近した通常の加圧状態で保持され、加圧動作が完了する。
以上のように、本実施形態では、脱圧動作時のカム部材の回転停止は、光学センサによる検知タイミングに基づいて行い(図20のS10参照)、これに対して、加圧動作時のカム部材の回転停止は、タイマーによる時間計測のタイミングに基づいて行っている(図22のS11参照)。すなわち、本実施形態では、脱圧動作時と加圧動作時のそれぞれのカム部材の停止位置を制御するためのタイミング判定手段を、光学センサとタイマーとに分けている。さらに、カム部材の回転トルクが大きくなる脱圧方向への移動時に光学センサを用いてカム部材を停止させることにより、脱圧位置を停止目標位置とした場合のカム部材の回転停止位置の精度が向上する。
以上のようにしてカム部材を制御することにより、加圧状態と脱圧状態との切り換えが可能になる。このように、加圧状態と脱圧状態との切り換えは、それぞれカム部材の初期回転位置が加圧状態の位置(図19のaの位置)、あるいは脱圧状態の位置(図21aの位置)からの回転であり、カム部材の初期回転位置が定まっているため、上記のように一定のタイミングで遮光状態あるいは透光状態に切り換わらない場合に、異常であると判断することができる。なお、上記の異常状態が生じる場合としては、初期のカム部材の回転位置が上記の加圧状態の位置や脱圧状態の位置から位置ズレしている場合がある。
一方で、例えば画像形成装置の電源投入時や上記の加圧状態と脱圧状態との切り換え時に異常状態であると判断された場合のように、カム部材の現在の回転位置(回転位相)がいずれの位置であるかを制御部が正確に認識できない場合がある。この場合、以下で説明するイニシャライズ動作(制御部がカム部材の回転位置を認識するための回転位置認識動作)を実施することにより、まず、カム部材の初期位置に関わらずカム部材を所定位置まで回転させる制御を行い、カム部材の回転位置を制御部に認識させる動作を行う。なお、上記のカム部材の所定位置とは、加圧状態の位置のことである。
カム部材のイニシャライズ動作では、まず、光学センサ51により検知動作を行い、透光状態(検知状態)か遮光状態(非検知状態)かの判別を行う。そして、それぞれの状態に応じて、異なるフローでイニシャライズ動作を実施する。以下、最初の検知動作で透光状態であった場合に行われるイニシャライズ動作を第一のイニシャライズ動作、そして、遮光状態であった場合のイニシャライズ動作を第二のイニシャライズ動作と呼ぶ。また、以下の説明では、まず第一のイニシャライズ動作について図23~図25を用いて説明する。なお、図23、図24の上段は遮光部材の回転位置を示す図、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段下段の(a)、(b)は互いに対応している。図25は、第一のイニシャライズ動作時の回転制御のフローチャートである。
図25に示すように、光学センサ51により検知動作を行い(図25のステップS1)、透光状態であることが確認される(図25のステップS2)。
透光状態が検知されると、カム部材41は正回転を開始する(図25のステップS3)。
そして、カム部材41が正回転を継続することにより、光学センサ51は遮光状態に切り換わる(図25のステップS4)。つまり、ステップS1の検知動作において、光学センサ51が透光状態になるのは、光照射部Lが孔部52jに対向する場合(図23のaの場合)か、あるいは、非遮光部52kに対向する場合(図24のaの場合)である。このため、いずれの場合でも正回転動作を継続することにより、短遮光部52bが光照射部Lに到達する(図23のb参照)か、長遮光部52aが光照射部Lに到達し(図24b参照)、ステップS4のように遮光状態に切り換わる。
そして、遮光状態に切り換わると、t3秒間正回転を継続した後(図25のステップS5)、カム部材41に回転停止指令を出し、それからt4秒後にカム部材41の回転を停止させる(図25のステップS6)。つまり、カム部材41は、遮光状態に切り換わった後、t3+t4秒間正回転を行って停止する。図23に示すように、t3+t4秒は、カム部材41が図23(b)の位置から脱圧位置まで移動する時間以下の時間に設定される。これにより、初期位置が図23、図24のいずれの場合でも、遮光状態でカム部材41が回転を停止する(図23、図24の黒丸参照)。以上で第一のイニシャライズ動作を終了する。そして、第一のイニシャライズ動作を実施した後には、以下で説明する第二のイニシャライズ動作を実施する。
次に、第二のイニシャライズ動作について図26~図28を用いて説明する。第二のイニシャライズ動作は、第一のイニシャライズ動作終了後、あるいは、最初の検知動作で遮光状態であった場合に実施される。なお、図26、図27の上段は遮光部材の回転位置を示す図、図の下段は光学センサの照射光が遮断又は透過されるタイミングチャートを示す。また、上段下段の(a)、(b)は互いに対応している。図28は、第二のイニシャライズ動作時の回転制御のフローチャートである。
図28に示すように、光学センサ51により検知動作を行い(図28のステップS1)、遮光状態であることが確認される(図28のステップS2)。
遮光状態が検知されると、カム部材41は逆回転を開始する(図28のステップS3)。ステップS1の検知動作において、光学センサ51が遮光状態になるのは、光照射部Lが長遮光部52aに対向する場合(図26のaの場合)か、あるいは、短遮光部52bに対向する場合(図27のaの場合)、そして、光学センサ51の不具合により、正常な検知動作が行われない場合である。
まず、予め設定した設定時間h6以内に透光状態に切り換わるか否かの判断が行われる(図28のステップS4)。図26の(a)の位置からカム部材41を逆方向へ回転させると、図26の(b)に示すように、長遮光部52aが光照射部Lを通過して孔部52jが光照射部Lに到達し、透光状態に切り換わる。あるいは、図27の(a)の位置からカム部材41を逆方向へ回転させると、図27の(b)に示すように、短遮光部52bが光照射部Lを通過して、非遮光部52kが光照射部Lに到達し、透光状態に切り換わる。
これに対して、光学センサ51に不具合が生じた場合、例えば、投光部の故障やコネクタの接続不良等により光が受光部に向けて照射されなかった場合、カム部材41の回転位置に関わらず、常に遮光状態となる。このため、ステップS4で透光状態が確認されなかった場合には、光学センサ51に不具合が生じたものと判断し、カム部材41の回転を停止する。また、サービスコールを行って、光学センサ51の交換や接続不良の解消等の対策を施すことができる(図28のステップS6)
透光状態に切り換わった場合には、カム部材41の逆回転を継続する(ステップS5)。そして、予め設定した設定時間h7秒以内に、遮光状態に切り換わった否かの判断を行う(図28のステップS7)。
図26の(b)のように、光照射部Lが長遮光部52aを通過すると、その後、カム部材41を逆転させても、遮光状態に切り換わることはない。この場合、図28のステップS4で透光状態に切り換わってから、h7+t5秒後にカム部材41の回転を停止する(図28のステップS9)。h7+t5秒は、カム部材41が図26の(b)の位置から加圧状態の位置まで移動するために必要と想定される時間に設定される。これにより、カム部材41が回転を停止した状態で、加圧ローラが加圧状態に配置されることになる。
一方、図27の(b)のように、短遮光部52bが光照射部Lを通過して孔部52jが到達し、透光状態になった場合には、孔部52jが光照射部Lを通過して長遮光部52aが光照射部Lに到達することで、図27の(c)に示すように、再び遮光状態に切り換わる。設定時間h7は、この図27(b)から図27(c)への再度の遮光状態への切り換わりを判断するために設けられた時間であり、具体的には、カム部材41の逆転動作により、孔部52jが光照射部Lを通過するために必要な時間よりも大きな時間に設定される。
図28のステップS7で遮光状態への切り換わりが検知されると、カム部材41の逆転動作を継続する(図28のステップS8)。そして、逆転動作を所定時間実施することにより、図27の(d)に示すように、長遮光部52aが光照射部Lを通過して再度透光状態に切り換わる(図28のステップS10)。その後、h7+t5秒後にカム部材41の回転を停止させ(図28のステップS11,12)、加圧ローラが加圧状態に配置されることになる。
以上のように、本実施形態の構成では、最初の検知動作時に透光状態であるか遮光状態であるかにより、それぞれ第一のイニシャライズ動作、あるいは第二のイニシャライズ動作を実施する。そして最終的には、カム部材の初期位置がいずれの位置であっても、加圧状態の位置まで移動させることができる。従って、イニシャライズ動作完了後には、制御部がカム部材41の回転位置を正確に認識することができ、加圧ローラを定着ローラに接近した加圧状態に配することができる。
ところで、上記のイニシャライズ動作において、光学センサに不具合が生じて正常な検知動作をしなくなった場合には、カム部材を回転停止させる制御としているが(図28のステップS6参照)、制御部が光学センサの不具合を認識してカム部材に回転停止の指令を出し、カム部材が実施に回転停止をするまでの間には時間差があることもあり、カム部材41が正方向あるいは逆方向へ過剰に回転することでカム部材41とカム受け部31dの衝突が発生してしまうことがある。以下、このカム部材41とカム受け部31dの衝突について説明する。
図29に示すように、カム部材41が脱圧状態の位置を超えてさらに正方向へ回転された場合、カム面とカム受け部が大きな速度で衝突する。つまり、図29の(a)のように、脱圧状態では、カム面41aの最上点e2とカム受け部31dとが当接している(以下、このカム面41aのカム受け部31dに対する当接位置を、単に当接位置とも呼ぶ)。
そして、この脱圧状態よりもさらにカム部材41が正方向(反時計回りの方向)へ回転すると、当接位置が、段差部41bを乗り越えて、最下点e1側へ移動する。これにより、図29の(b)に示すように、当接位置の回転中心からの距離が急激に小さくなり、カム受け部31dは、加圧バネ32(図2参照)の付勢力によって急激にカム部材41の回転中心の側へ移動する。
そして、カム受け部31dがカム面41aに衝突することになる。この際の衝撃により、カム部材41やカム受け部31d、その他の定着装置12内の部材が破損してしまう虞がある。
一方、図30に示すように、カム部材41が加圧状態の位置を超えてさらに逆方向へ回転された場合、図21の(a)から図21の(b)のように、カム受け部31dと最上点e2を形成する壁部41cとが衝突する。ただしこの場合、当接位置において、カム面41aの回転中からの距離は変化しないため、カム受け部31dがカム部材41の側へ移動する力は作用せず、上記衝突は、カム部材41の逆方向への回転力によって生じるものである。従って、この際の衝撃は相対的に小さく、部材の破損を生じない。
本実施形態では、光学センサ51に不具合が生じた場合でも、脱圧状態の側の衝突(図21のaの衝突)ではなく、加圧状態の側の衝突(図21のbの衝突)が発生する構成とすることにより、定着装置の破損を防止している。
具体的には、前述したように、光学センサ51に不具合が生じた場合には、正常な検知動作ができなくなり、最初の検知動作では遮光状態と判断される。このため、イニシャライズ動作では第二のイニシャライズ動作が実施されることになり、図28のステップS1~S4を経て、ステップS6でカム部材41の回転停止およびサービスコールをして、その動作を停止することになる。この際、第二のイニシャライズ動作ではカム部材41が逆方向へ回転するため、仮にカム部材41が必要以上に回転してカム面41aとカム受け部31dの衝突が発生した場合でも、その衝突は、より衝撃の小さな加圧状態の側の衝突になる。
このように本実施形態では、イニシャライズ動作時において、光学センサ51に不具合が生じた場合には、カム部材41が逆方向へ回転する構成とすることで、大きな衝撃の衝突(脱圧状態の側の衝突)を避けることができる。従って、衝突時の定着装置12内の各部材の破損を防止することができる。なお、カム部材41の逆方向への回転とは、段差部41bの回転中心からの距離が大きい側である最上点e2の側を回転方向の上流側とし、段差部41bの回転中心からの距離が小さい側を回転方向の下流側とする方向の回転である。
また、本実施形態のイニシャライズ動作は、その終了までに必ず透光状態を経る構成のため、光学センサ51の不具合を確実に検出することができる。つまり、最初の検知動作において遮光状態になった場合、図26あるいは図27で示す第二のイニシャライズ動作を実施することになる。そして、この第二のイニシャライズ動作では、その初期位置が図26の(a)の位置、あるいは、図27(a)の位置のいずれの場合であっても、その後のカム部材41の逆回転により、加圧状態の位置に至るまでに透光状態に切り換わることになる。従って、この段階(図28のステップS4)で透光状態の切り換わりの有無を判断することにより、光学センサ51の不具合を確実に検出することができる。つまり、前述した脱圧状態と加圧状態の切り換え動作時には、すでに実施されたイニシャライズ動作によって光学センサ51の不具合が生じていない(つまり、光学センサ51が透光状態になる)状態となっている。
次に、カム部材41を駆動させる駆動伝達機構について説明する。
図15に示すように、カム部材41は、モータ43の駆動力がギア列44を介して伝達されることで、正方向および逆方向へ回転することができる。図15および図31に示すように、第1の平歯車47が画像形成装置本体側に、そして、第2の平歯車48が定着装置の側にそれぞれ設けられており、定着装置の画像形成装置本体への装着によって第1の平歯車47と第2の平歯車48が噛み合う。これにより、カム部材41がモータ43の駆動力によって回転可能な状態になる。
加圧状態から脱圧状態にする場合には、図32に示すように、モータによって第1の平歯車47を時計回りに回転させることにより、第1の平歯車47と噛み合う第2の平歯車48に矢印Y1方向の力を加え、第2の平歯車48を反時計回りに回転させる。これにより、カム部材41を正方向へ回転させて脱圧状態へ移行させることができる(図19a→eのように、カム受け部31dを移動させることができる)。
この際、定着装置12は、定着装置に設けられた第2の平歯車48が矢印Y1方向の力を受けることにより、画像形成装置本体への挿入方向の力(図8の右方向の力)を受けることになる。しかし、定着装置は、三つの位置決め突起77~79により本体側位置決め部108~110に位置決めされており(図5参照)、挿入方向の力を受けても定着装置が画像形成装置に対して移動することはない。上記のようにして生じた挿入方向の力は、第1の平歯車47と第2の平歯車48との噛合部で、その回転力として逃がすことができる。
一方、脱圧状態から加圧状態にする場合には、図33(a)に示すように、モータによって第1の平歯車47を反時計回りに回転させる。これにより、図33(b)に示すように、第1の平歯車47と噛み合う第2の平歯車48に矢印Y2方向の力を加え、第2の平歯車48を時計回りに回転させる。
第2の平歯車48が時計回りに回転すると、カム部材41が逆方向へ回転する(図21a→eのように、カム受け部31dを移動させる)。この際、図13に示すように、加圧バネ32の付勢力により、カム受け部31dが回転軸42の側へ移動する。この加圧バネ32の付勢力によってカム部材41の逆方向への回転が加速され、図33(b)に示すように、第1の平歯車47の反時計回りへの回転よりも速い速度で、第2の平歯車48が時計回りに回転する。これにより、図33(c)に示すように、第2の平歯車48が第1の平歯車47を矢印Y2方向へ押し出す形になり、その反力として、第2の平歯車48が矢印Y1方向の力を受ける。そして、図33(d)のように各歯車が回転する。
以上のように、脱圧状態から加圧状態への移行時には、その初期には第1の平歯車47が矢印Y2方向の力を受けて、定着装置に引き出し方向の力(図8の左方向の力)が発生する。しかし、その後、加圧バネ32の付勢力によって第1の平歯車47が回転することで、定着装置に挿入方向の力が発生する。従って、脱圧状態と加圧状態の切り換え時には、いずれの場合も定着装置に画像形成装置本体への挿入方向の力が作用し、定着装置を画像形成装置本体に確実に位置決めすることができる。
また、脱圧状態から加圧状態への移行時において、前述の光学センサ51の不具合によりカム部材41とカム受け部31dの衝突が発生した場合には、図30の(b)のように、カム受け部31dが壁部41cに押し当てられる位置でカム部材41の回転が停止し、第2の平歯車48の回転も停止する。しかし、カム部材の回転が実際に停止(図28のステップS6)するまでの間に、モータがさらに駆動し続けて第1の平歯車47に回転力が伝達され、図33(b)のように、第1の平歯車47が第2の平歯車48を矢印Y2方向へ押圧することがある。これにより、定着装置12は、引き出し方向の力(図8の左方向の力)を受けることになる。
ところで、前述したように、定着装置12は、装置本体100に装着された状態で、ロック部83と係合部111との間に僅かな隙間が設けられており(図7参照)、定着装置12は、この隙間分だけ引き出し方向へ移動することができる。従って、上記のように定着装置12に引き出し方向の力が発生した場合でも、このわずかな隙間分だけ定着装置12が引き出し方向へ移動し、カム部材の過剰な回転によって生じた回転力を逃がすことができる。従って、定着装置12や装置本体100の係合部分の破損を防止することができる。なお、制御部が光学センサ51の不具合が生じたと判断した場合には、カム部材41に回転停止の指令が出される(図28のステップS6参照)ため、カム部材41が脱圧状態の位置を超えて正方向へ回転する量はわずかである。従って、上記のように定着装置12にわずかに引き出し方向へ移動する余分なスペースがあるだけで、モータの駆動力を逃がすことができ、定着装置の破損を防止できる。
また、本発明を適用する定着装置は、上記実施形態のような一対のローラ(定着ローラ及び加圧ローラ)を備える定着装置に限らない。例えば、図34に示すような、定着ローラに代えて、無端状の定着ベルト183を備える定着装置180であってもよい。この例では、定着ベルト183の内周側に加熱源182とニップ形成部材181が配置されており、定着ベルト183に対して加圧ローラ184がニップ形成部材181の位置で加圧されることで定着ニップNが形成されている。
さらに、本発明を適用する定着装置は、上記実施形態のような加圧ローラが定着ローラに対して接近離間する定着装置に限らず、図35に示す例のように、定着ローラ191がこれと対向する対向ローラ192に対して接近離間する定着装置190であってもよい。
また、本発明に係る接離機構は、定着装置だけでなく、用紙等の記録媒体に画像を転写する転写装置にも適用可能である。例えば、中間転写ベルトを備える転写装置においては、厚紙が二次転写ニップに進入すると、そのときの衝撃によって中間転写ベルトやローラに急激な負荷がかかって中間転写ベルトの回転速度が瞬間的に低下することがある。この中間転写ベルトの回転速度の低下により、感光体と中間転写ベルトとの間に回転速度差が生じた場合は、中間転写ベルトに転写される画像のドットが感光体の回転方向に引き伸ばされるため、画質が低下する。
そこで、本実施形態に係る転写装置においては、図36に示すように、二次転写ニップに厚紙が進入することによる急激な負荷を抑制するために、二次転写ローラを中間転写ベルト(又は二次転写バックアップローラ)に対して接近離間させる接離機構を設けている。
図36に示すように、転写装置206は、中間転写体としての中間転写ベルト216と、二次転写部材としての二次転写ローラ222と、二次転写対向部材としての二次転写バックアップローラ219と、保持部材250等を主に備える。中間転写ベルト216は、二次転写バックアップローラ219をはじめとした複数のローラによって張架されている。また、二次転写ローラ222と中間転写ベルト216との間には二次転写ニップが形成されている。
二次転写ローラ222は、支軸250を中心に図における矢印M方向に回動する保持部材251に保持されている。保持部材251が支軸250を中心に回動すると、二次転写ローラ222は中間転写ベルト216に対して接近離間する。また、保持部材251は、付勢部材としての加圧バネ252によって図における上方へ付勢されている。このため、二次転写ローラ222は中間転写ベルト216に対して加圧された状態で保持されている。また、二次転写ローラ222の回転軸222aには、空転コロ253が相対的に回転可能に設けられている。
二次転写バックアップローラ219には、上記実施形態に係る定着装置が備えるのと同様のカム部材41が設けられている。また、本実施形態に係る転写装置には、カム部材41の回転位置を検知する回転位置検知手段として、上記と同様の光学センサ51と、遮光部材52とが設けられている。
図36に示す状態では、加圧バネ252の付勢力によって空転コロ253がカム面41aに対して最下点e1側で接触している。この状態では、二次転写ローラ222が中間転写ベルト216に対して接近した位置で保持されており、二次転写ニップにおける加圧力は普通紙を通紙する際の通常の加圧力となっている。
この状態から厚紙を通紙する際の脱圧状態(減圧状態)にする場合は、カム部材41を図36における反時計回りに回転させる。これにより、カム面41aに対する空転コロ253の接触位置が最下点e1側から最上点e2側へ相対的に移動し、空転コロ253がカム部材41によって図における下方へ押し動かされる。また、これに伴って二次転写ローラ222も下方へ押し動かされる。その結果、二次転写ローラ222が中間転写ベルト216に対して離間した位置に移動し、二次転写ニップにおける加圧力が低減された脱圧状態となる。
また、通常の加圧状態に戻す場合は、上記脱圧状態からカム部材41を上記とは逆方向に回転させればよい。これにより、カム面41aに対する空転コロ253の接触位置が最上点e2側から最下点e1側へ相対的に移動し、空転コロ253がカム部材41に対して接近する。これに伴って、二次転写ローラ222が中間転写ベルト216に対して接近し、二次転写ニップおける加圧力が増加した通常の加圧状態に戻される。なお、ここでの加圧動作時と脱圧動作時におけるカム部材の回転制御には、上記定着装置におけるカム部材の制御方法と同様の制御方法を適用可能である。
このように、中間転写ベルトに対して二次転写ローラを接近離間させる接離機構においても、本発明に係る接離機構を適用することが可能である。また、本発明に係るカム部材を転写装置の接離機構に適用することで、上記定着装置と同様の作用効果が得られる。すなわち、図36に示すように、回転方向の半周よりも多い領域に渡ってカム面41aを設けることができるので、カム面41aの勾配を緩やかにしても、勾配の最大高低差が小さくなるのを回避することができる。これにより、中間転写ベルトに対する二次転写ローラの接近離間距離を十分に確保しつつ、回転トルクの増大や作動音(異音)の発生を抑制することが可能となる。
上記転写装置では、厚紙を二次転写ニップに通紙させる場合に二次転写ローラを離間させる構成であるが、本発明は、これ以外に、二次転写ローラが中間転写ベルトに対して常時加圧されることによる塑性変形やトナー固着を抑制するために、転写時以外のタイミングで二次転写ローラを離間させておく構成にも適用可能である。
図37に示す例のように、二次転写ニップに対して用紙が縦方向(垂直方向)に搬送される転写装置306においても本発明に係る接離機構を適用可能である。この場合、図36に示す接離機構を例えば横向きに(90°回転させて)配置することで、図37に示す二次転写ローラ322を中間転写ベルト316に対して接近離間させる接離機構を構成できる。なお、図37において、300は画像形成装置、301は複数の感光体311を備える画像形成部、321は一次転写ローラ、302は給紙部、308は定着装置、330は排紙部である。
転写装置306は、中間転写体としての中間転写ベルト316、駆動ローラ318、二次転写対向部材としての二次転写バックアップローラ319、一次転写部材としての4つの一次転写ローラ321、二次転写部材としての二次転写ローラ322などを有する。中間転写ベルト316は、張架ローラ317を含む複数のローラによってテンションがかけられた状態で張架されている。
4つの一次転写ローラ321は、それぞれ、中間転写ベルト316を介して感光体211に接触している。これにより、中間転写ベルト316と各感光体311とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。
二次転写ローラ322は、中間転写ベルト316を介して二次転写バックアップローラ319に接触している。これにより、二次転写ローラ322と中間転写ベルト316との間には二次転写ニップが形成されている。
また、本発明に係る接離機構は、図38に示すような感光体に対して一次転写ローラを接近離間させる転写装置406にも適用可能である。ここでは、モノクロ画像形成時に、画像形成に寄与しないカラー画像用の感光体411Y,411M,411Cに対して対応する一次転写ローラ421Y,421M,421Cを離間させることで(図38において点線で示す状態を参照)、これらの感光体411Y,411M,411Cや中間転写ベルト416の不要な摩耗や電力消費を抑えるようにしている。なお、図38において、422は二次転写ローラである。
図39は、一次転写ローラを接近離間させる接離機構の概略構成図である。
図39では、接近離間する3つの一次転写ローラのうち、1つ一次転写ローラのみ示しているが、いずれの一次転写ローラに関する接離機構も同様に構成されているので、1つの一次転写ローラに関する接離機構を例に説明する。
図39の(a)に示すように、一次転写ローラ421Yは、支軸450を中心に図における矢印Q方向に回動する保持部材451に保持されている。保持部材451は、図における矢印W方向に直線移動するリンク部材452に係合し、リンク部材452と連動可能に構成されている。また、リンク部材452の一端部(図における左端部)は、付勢部材としての加圧バネ453によって他端部側(図における右方向)へ加圧されている。これにより、リンク部材452の他端部は、カム部材41のカム面41aに対して接触した状態で保持されている。このカム部材41は、上記実施形態に係る定着装置が備えるのと同様に構成されたものである。また、転写装置には、カム部材41の回転位置を検知する回転位置検知手段として、上記定着装置と同様に、光学センサ51と、遮光部材52とが設けられている。
図39の(a)に示す状態から、カム部材41が図における時計回りに回転すると、カム面41aに対するリンク部材452の接触位置が最上点e2側から最下点e1側へ相対的に移動する。これに伴って、図39の(b)に示すように、リンク部材452が加圧バネ453に押されて図における右側へ移動する。そして、このリンク部材452の移動に伴って、保持部材451が図における反時計回りに回動し、一次転写ローラ421Yが感光体411Yから離間する。これにより、中間転写ベルト416がカラー画像用の感光体411Yから離れた状態で保持される。
また、一次転写ローラ421Yを感光体411Yに対して接近させるには、図39の(b)に示す状態からカム部材41を上記とは逆方向に回転させればよい。これにより、カム面41aに対するリンク部材452の接触位置が最下点e1側から最上点e2側へ相対的に移動し、リンク部材452がカム部材41によって図における左側へ押し動かされるので、これに伴って保持部材451が図における時計回りに回動する。その結果、図39の(a)に示すように、二次転写ローラ222が中間転写ベルト416に対して接近した状態に戻される。
このように、感光体に対して一次転写ローラを接近離間させる接離機構においても、本発明に係る接離機構を適用することが可能である。また、本発明に係るカム部材を、一次転写ローラを接近離間させる接離機構に適用することで、上記定着装置や上記転写装置と同様に、カム面の勾配を緩やかにしても、勾配の最大高低差が小さくなるのを回避することができる。従って、感光体に対する一次転写ローラの接近離間距離を十分に確保しつつ、回転トルクの増大や作動音(異音)の発生を抑制することが可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すモノクロ画像形成装置に限らず、カラー画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。