以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.実施形態>
<<1.1.実施形態の概要>>
はじめに、本発明の一実施形態に係る消火器箱の概要について説明する。上述したとおり、本実施形態に係る消火器箱は、監視員通路を設けた道路に設置される従来の消火器箱と比較して優れた安全性、利便性、および保守性を有する。本実施形態に係る消火器箱が有する上記の有意性を説明するために、まず、本実施形態に係る消火器箱と従来の消火器箱との比較について述べる。
図19は、監視員通路を設けた道路に設置される従来の消火器箱について説明するための図である。なお、上記の監視員通路を設けた道路には、例えば、道路トンネルなどが含まれてよい。図19には、道路トンネル内に設置される従来の消火器箱90、従来の消火器箱に格納される消火器30、および防護柵70が示されている。
ここで、監視員通路pwは、監視員による保守作業や災害時における避難経路として用いられる通路である。また、従来の消火器箱90は、奥行に厚みを有する四角形型の形状を有し、手前に扉を開き消火器30を取り出す構造のため、保管時に監視員通路pwにおける避難行動や保守作業の妨げとならないように、トンネル内壁iwに形成される箱抜き内に設置されることが一般的であった。
しかし、監視員通路pwは、一般的に道路rwから900〜1000mmほどの高さを以って設けられる通路である。このため、ユーザは、道路rw上から消火器箱90を操作することができず、通報や消火活動を行うためには、道路rwから監視員通路pwに登る必要があり、煩雑であると同時に消火活動が遅れる可能性も懸念される。
また、上述した特許文献1に開示されるように、消火器箱が監視員通路pwの下部に配置される場合には、ユーザは基本的に道路rw上で操作を行うことを求められる。このため、ユーザが自身の安全を確保したうえでの消火活動を行うことが困難である。また、仮に、監視員通路pw上から消火器を取り出そうとする場合、上方から覗きこんで操作を行うこととなるため、落下の可能性なども懸念される。さらには、開扉した扉が走行車両の妨げとなるなどの可能性も想定される。
本実施形態に係る消火器箱は上記の点に着目して発想されたものであり、道路側および監視員通路側の両方から消火器を取り出すこと、また、扉の開放時においても道路および監視員通路の両面の安全性を確保することを可能とする。このために、本実施形態に係る消火器箱は、監視員通路の路面の高さ以下において、監視員通路と道路との境に、車両の移動方向と略平行方向に設置されることを特徴の一つとする。また、本実施形態に係る消火器箱は、監視員通路面上に、内側に消火器を固定する固定金具が設けた扉を有し、扉と固定された前記消火器とを一体に回動させて、当該消火器を立位状態で固定すると共に、取り出し可能とすること、を特徴の一つとする。
さらには、本実施形態に係る消火器箱は、消火器を立位状態で固定させた際に当該消火器を取り出すための切り欠きを側面の上部に有することを特徴の一つとする。また、本実施形態に係る消火器箱は、扉の回動と共に回転し、当該扉の閉鎖時に上記の切り欠きを閉鎖する塞ぎ板を有すること特徴の一つとする。
本実施形態に係る消火器箱が有する上記の特徴によれば、本実施形態に係る消火器箱が有する上記の特徴によれば、消火器の取り出し時における安全性や利便性を大きく向上させることが可能となる。
<<1.2.消火器箱10に係る設置上の特徴>>
次に、本実施形態の消火器箱10に係る設置上の特徴について説明する。図1は、道路トンネルに設置される消火器箱10を側面から示した図である。図1に示すように、本実施形態に係る消火器箱10は、監視員通路pwと道路rwとの境において、監視員通路pwの下部に埋設されてよい。本実施形態に係る消火器箱10が上記のように設置されることにより、トンネル内壁iwに箱抜きを形成するコストを削減することができ、また、監視員通路pw上の空間を十分に確保し、消火活動や避難活動を妨害する恐れを解消することができる。
また、図1には、本実施形態に係る消火器箱10と併設される道路用消火栓50と防護柵70とが併せて示されている。ここで、本実施形態に係る道路用消火栓50は、別途に設置される消火栓弁機構と接続され、ユーザによる操作に基づいて、消火用水や泡消火薬剤を放出するノズルやホースを備える構成である。この際、本実施形態に係る道路用消火栓50は、消火器箱10と同様に監視員通路pwと道路rwとの境に設置され、また上記のホースを収納するホース収納部550が監視員通路pwの下部に配置されることで、監視員通路pw上の空間を確保することができる。また、本実施形態に係る道路用消火栓50は、図1に示すように、道路rw上で発生した火災を検知するための火災検知器510や赤色表示灯505を道路rw側に備えてもよい。
また、本実施形態に係る防護柵70は、監視員通路pw上における避難活動、消火活動、および保守作業時の安全性を向上させるための構成である。すなわち、防護柵70は、避難者や作業者が監視員通路pwから道路rwに落下することを防ぐ役割を担う。この際、本実施形態に係る消火器箱10は、図1に示すように、規定により設置される防護柵70の下方に設置されることで、監視員通路pw上の限られたスペースを有効に活用することができる。
続いて、道路rw側からみた消火器箱10の設置例について説明する。図2は、本実施形態に係る消火器箱10の設置例を道路rw側から示した図である。図2に示すように、本実施形態に係る消火器箱10は、防護柵70の下方に複数並列して設置されてもよい。図2の一例では、2つの消火器箱10aおよび10bが長手方向に併設される場合が示されている。
また、本実施形態に係る消火器箱10は、監視員通路pwと道路rwとの境に、車両(図示しない)の移動方向と略平行方向に設置されることを特徴の一つとする。本実施形態に係る消火器箱10が上記のように設置されることで、監視員通路pw上の空間を十分に確保することが可能となる。
また、本実施形態に係る消火器箱10は、図2に示すように、監視員通路pw面上に扉110を有してよい。本実施形態に係る消火器箱10は、扉110と固定された消火器30とを一体に回動させることで、消火器30を立位状態で固定すると共に、取り出し可能とする。本実施形態に係る消火器箱10が有する上記の特徴によれば、消火器30を道路rwおよび監視員通路pwの両方から取り出すことが可能となり、道路rw側からの迅速な消火活動や、監視員通路pwに避難し安全性を確保したうえでの消火活動を実現することができる。また、消火器箱10の保守作業時においても、監視員通路pw上から点検などを行うことが可能となり、道路rwの一部を閉鎖することなく、保守作業を完遂することができる。
また、本実施形態に係る消火器箱10は、道路rw側の側板の上部に切り欠き170を有することを特徴とする。本実施形態に係る切り欠き170は、ユーザによる消火器30の取り出しを補助するための構成である。ユーザは、消火器30を取り出す際、切り欠き170を介して消火器30の底部に容易にアクセスすることができ、消火器30をスムーズに取り出すことが可能となる。なお、本実施形態に係る切り欠き170は、例えば、高さ100mm程度、幅110mm程度に、ユーザが手を挿入するのに十分な大きさで形成されてよい。上記形状によれば、消火器30を取り出す際、ユーザが消火器箱10の上部から消火器30の底部に手を回しこむ必要がなくなるため、消火器箱10の短手方向の長さを抑えることができる。
また、扉110の閉鎖時においては、切り欠き170は、塞ぎ板172により閉鎖される。本実施形態に係る塞ぎ板172によれば、消火器30の利用が行われない間に、埃や生き物などが切り欠き170から消火器箱10の内部に侵入することを防ぐことができる。なお、塞ぎ板172は、例えば、ガラスやアクリル樹脂などの透明部材を用いて形成されてもよい。この場合、扉110の閉鎖時においても、消火器箱10の内部に保管される消火器30を視認することが可能となる。
なお、本実施形態に係る道路用消火栓50も消火器箱10と同様に、道路rwおよび監視員通路pwの両方から操作可能に構成されてよい。このために、本実施形態に係る道路用消火栓50は、装置筐体の内部にアクセスするための扉501や、赤色表示灯505、押しボタン式通報機506、応答ランプ507などを、道路rw側のみではなく監視員通路pw側にも備えてよい。
以上、本実施形態の消火器箱10に係る設置上の特徴について述べた。上述したように、本実施形態に係る消火器箱10は、監視員通路pwと道路rwとの境に、車両の移動方向と略平行方向に設置される。また、本実施形態に係る消火器箱10は、監視員通路rw面上に扉110を有し、扉110を開扉することにより、扉110の内側に固定された消火器30を立位状態で固定することができる。本実施形態に係る消火器箱10が有する上記の特徴によれば、消火器30を監視員通路pwおよび道路rwの両方から容易に取り出し可能とすると共に、監視員通路pw上の空間を十分に確保することが可能となり、安全性、利便性、および保守性を著しく向上させることができる。
<<1.3.消火器箱10の外部構造>>
次に、本実施形態に係る消火器箱10の外部構造について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る消火器箱10の外部構造について説明するための図である。図3の右側には、本実施形態に係る消火器箱10の側面を、収納される消火器30のハンドル側から見た外部構造が示されている。また、図3の左側上段には、本実施形態に係る消火器箱10を上面から見た外部構造が示されている。また、図3の左側中段には、本実施形態に係る消火器箱10の側面を道路rw側からみた外部構造が示されている。また、図3の左側下段には、本実施形態に係る消火器箱10を底面から見た外部構造が示されている。
図3を参照すると、本実施形態に係る消火器箱10は、上部に扉110を備える。また、扉110には、ユーザが扉110を開扉するための取っ手112や、回動時の支点となる扉軸114が設けられる。なお、本実施形態に係る扉軸114は、外観からは視認できないように形成されてもよい。
また、上述したように、本実施形態に係る消火器箱10は、道路rw側の側板の上部に切り欠き170を有する。切り欠き170は、扉110の閉鎖時においては、塞ぎ板172により閉鎖される。
また、本実施形態に係る消火器箱10は、下部に架台120を備える。図3に示すように、本実施形態に係る架台120は、複数の水抜き穴122a〜122eを有してよい。水抜き穴122は、消火器箱10の内部に雨水などが溜まらないよう、液体を外部に排出する機構である。なお、図3には、架台120に5つの水抜き穴122a〜122eが形成される場合を例に示しているが、本実施形態に係る水抜き穴122の数は係る例に限定されず、適宜設計されてよい。
続いて、図4を参照して、扉110の開扉時における消火器箱10の外観について説明する。図4は、扉110の開扉時における消火器箱10の外部構造を示す図である。上述したとおり、本実施形態に係る扉110は、内側に固定される消火器30と一体に回動することを特徴の一つとする。この際、本実施形態に係る扉110は、図4に示すように、扉軸114を支点に回動し、90°程度開扉することで、消火器30を立位状態で固定することができる。
ここで、本実施形態に係る扉軸114は、扉110の長手方向において、取っ手112と消火器30の底面との間に位置するように設けられることを特徴の一つとする。このように、扉軸114が消火器30の底面よりも取っ手112側に配置されることで、消火器30による荷重を分散させ、扉110の開扉に求められる力を効果的に低減することができる。
また、扉軸114が有する上記の配置特徴によれば、扉110の全開時に立位状態となる消火器30の道路rw面からの高さを調整することが可能となり、道路rw側および監視員通路pw側の両方から取り出しが容易い構成を実現することができる。なお、本実施形態に係る扉軸114の配置位置は、監視員通路pwの高さや、消火器30の重量や寸法などに応じて適宜調整されてよい。
また、扉110の開扉に伴い、閉鎖時に消火器箱10内に押し込まれていたローラー176が解放されることで、ローラー176と接合部材を介して接続される塞ぎ板172が回転し、切り欠き170が開放される。上記の動作によれば、扉110の閉鎖時に埃や生き物が切り欠き170から消火器箱10の内部に侵入することを防ぐと共に、扉110の完全開扉時においてユーザが消火器30の底部に容易にアクセスすることが可能となる。
さらに、本実施形態に係る消火器箱10は、扉110の完全開扉時に、切り欠き170の形成位置に合致するよう消火器30の底部側に配置される誘導カバー190を備える。本実施形態に係る誘導カバー190は、ユーザの手を消火器30の底部に容易かつ安全に誘導するための構成である。本実施形態に係る誘導カバー190は、例えば、切り欠き170側の面および消火器30側の面のみが開放された立体構造を有する。本実施形態に係る誘導カバー190によれば、ユーザが切り欠き170を介して消火器箱10の内部に手を入れる際、迷うことなく消火器30の底部にアクセスすることができ、また、ユーザが消火器箱10の内部に配置される種々の構成に誤って触れることを防ぎ、ユーザの怪我や構成の破損を防止することができる。
<<1.4.消火器箱10の内部構造>>
次に、本実施形態に係る消火器箱10の内部構造について詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る消火器箱10の内部構造を道路rw側の側面から示した図である。また、図6は、本実施形態に係る消火器箱10の内部構造を底面から示した図である。また、図7は、本実施形態に係る消火器箱10の内部構造を、収納される消火器30のハンドル側の側面から示した図である。
図5に示すように、本実施形態に係る消火器箱10の扉110の内側には、消火器30の底面を支持する切り欠き形状板130、消火器30の側面を支持する支持板132、および消火器30を扉110に固定する複数の固定金具134a〜dが設けられる。
ここで、本実施形態に係る切り欠き形状板130は、消火器30の底部側に配置され、扉110の全開時に、直立した消火器30の底面を固定金具134a〜dと共に支持する。本実施形態に係る切り欠き形状板130は、道路pw側から消火器30の底部中央付近にかかる切り欠きを有し、当該切り欠き部分を囲うように誘導カバー190が配置される。本実施形態に係る切り欠き形状板130および誘導カバー190によれば、ユーザが消火器30の底部に手を差し込み、消火器30を底部から支えた状態で安定的に取り出すことが可能となり、特に道路rw側から消火器30を取り出す際のユーザの負担を軽減することができる。
また、図5に示すように、本実施形態に係る切り欠き形状板130の底部側には、扉開固定具140およびキャッチ部144が配置される。ここで、本実施形態に係る扉開固定具140は、消火器箱10の内部に設けられた複数の凹部152を有する扉開固定レール150上を扉110の回動に伴い移動し、凹部152に係止されることで、扉110が閉扉しないように支持する構成である。なお、本実施形態に係る扉開固定レール150は、図5に示すように、消火器箱10の内部において、消火器30の底部側の内部側面から内部底面にかけて連続的に配置される。
また、図5に示すように、本実施形態に係る扉開固定具140は、切り欠き形状板130側に折畳み用凸部142を有する。本実施形態に係る折畳み用凸部142は、切り欠き形状板130に設けられるキャッチ部144と嵌合することで、扉開固定レール150と接触しないように扉開固定具140を固定する構成である。本実施形態に係る折畳み用凸部142およびキャッチ部144によれば、扉開固定具140を切り欠き形状板130側に折り畳むことで、扉開固定具140による扉110の支持を解除することができる。なお、本実施形態に係る折畳み用凸部142およびキャッチ部144は、図5に示す形状に限定されず、また、例えば、マグネットなどの別の固定機構により代替されてもよい。
また、本実施形態に係る消火器箱10の内側には、扉110の閉扉に伴い扉開固定具140と接触することで、折畳み用凸部142とキャッチ部144との嵌合を解除する折畳み解除部154が備えられる。本実施形態に係る折畳み解除部154は、図5に示すように、収納される消火器30の底部側の内部側面に配置される。なお、本実施形態に係る扉開固定具140、扉開固定レール150、折畳み解除部154などが有する機能の詳細については別途後述する。
また、本実施形態に係る消火器箱10の内部底面には、図5〜図8に示すように、扉110の閉鎖時に消火器30を支持するための支持台160が設けられる。図8は、本実施形態に係る支持台160の構成を説明するための拡大図である。図8に示すように、支持台160には、扉110の閉鎖時に消火器30における本体容器の首部を下方から固定するズレ止め金具162が固定具164により固定される。固定具164は、例えば、ボルトとナットなどにより構成される。なお、本実施形態では、消火器30の本体容器において胴径がハンドル側に近づくにつれ徐々に小さくなる形状を有する部位を首部と称する。また、本実施形態に係るズレ止め金具162は、図7に示すように、消火器30の首部と接触する曲線状の接触部を有することを特徴の一つとする。
消火器箱10に収納される消火器30は、例えば、道路rwを走行する車両が発する振動などにより、消火器箱10内においてハンドル側の方向への位置ずれが生じることも想定される。上記のような位置ずれは、消火器30の誤作動を招くことも懸念される。このため、本実施形態に係る消火器箱10は、消火器30の首部を固定するズレ止め金具162を設けることで、消火器30がハンドル側の方向へずれることを防止することができる。
また、本実施形態に係るズレ止め金具162は、消火器30の形状に合わせて消火器30の長手方向に位置調整が可能なように設けられることを特徴の一つとする。このために、本実施形態に係る支持台160には、図6に示すように金具移動溝166が形成され、ズレ止め金具162は、金具移動溝166を貫通する固定具164により位置調整が可能な状態で固定される。上記の構成によれば、首部の形状の異なる種々の消火器30に広く対応することが可能となり、消火器30が交換された場合であっても、別途の部品等を用意することなく、消火器箱10を利用し続けることができる。
なお、図5〜図8には図示していないが、支持台160の底部側の面には、金具移動溝166に沿って、固定具164のナットの落下を防止するレール等が備えられてもよい。当該構成によれば、ズレ止め金具162の位置調整時において、固定具164のナットが消火器箱10の内部底面に落下することを防ぎ、部品の紛失を防止することができる。
次に、本実施形態に係る塞ぎ板172の構成について詳細に説明する。図5〜図7に示すように、本実施形態に係る消火器箱10は、道路rw側の内部側面に形成される切り欠き170を塞ぐための塞ぎ板172を備える。また、図9および図10は、本実施形態に係る塞ぎ板172に関連する構成を説明するための拡大図である。図9には、道路rw側の側面から見た塞ぎ板172に関連する構成が示されており、図10には、消火器箱の上面側から見た塞ぎ板172に関連する構成が示されている。
図9および図10に示すように、本実施形態に係る塞ぎ板172は、接合部材178の先端に接続される。また、本実施形態に係る接合部材178は、塞ぎ板172とは反対方向の先端にローラー176と、塞ぎ板172とローラー176との間にボールベアリング174を備える。塞ぎ板172は、扉110の閉塞時においては、接合部材178の反対方向の先端に設けられるローラー176が扉110により押さえ込まれることにより、切り欠き170を塞ぐ位置に固定される。すなわち、本実施形態に係るローラー176は力点として機能し、ボールベアリグを支点として作用点である塞ぎ板172が回転を行う。当該機構によれば、扉110の閉塞時に切り欠き170から埃や生き物が消火器箱10の内部に侵入することを防止することができる。なお、切り欠き170の密閉性を確保するため、本実施形態に係る塞ぎ板172は、切り欠き170よりも面積が広くなるよう形成されてよい。
一方、扉110が開扉時においては、扉110が下方に押し込んでいたローラー176が解放されることで、ボールベアリング174を支点に、塞ぎ板172が自重により回転することで、切り欠き170が開放される。当該機構によれば、扉110の完全開扉時に、ユーザが切り欠き170を介して消火器30の底部にアクセスすることが可能となり、消火器30の取り出しを容易に行うことが可能となる。
次に、図11を参照して、本実施形態に係る塞ぎ板172に関連する構成の消火器箱10における配置について詳細に説明する。図11には、図9および図10に示すA〜Eで消火器箱10を切断した場合の断面図がそれぞれ示されている。
ここで、切り欠き170の両脇に位置するA断面およびC断面に着目すると、塞ぎ板172が消火器箱10の車道側側面101に密着していることがわかる。上記の密着を実現するために、本実施形態に係る消火器箱10は、塞ぎ板172を車道側側面101側に誘導する誘導部材179aおよび179bを備えてよい。
また、切り欠き170の中央付近におけるB断面に着目すると、塞ぎ板172が車道側側面101および扉110に密着することで、切り欠き170を完全に塞いでいることがわかる。このように、本実施形態に係る誘導部材179によれば、車道側側面101に対する塞ぎ板172の密着性を効果的に高めることができ、埃や生き物が消火器箱10の内部に侵入する可能性を大きく低減することができる。
また、D断面およびE断面に着目すると、支点として機能するボールベアリング174は、車道側側面101に固定されていることがわかる。また、力点として機能するローラー176は、扉110により下方へ押し込まれていることがわかる。上記の構成によれば、扉110の閉塞時に塞ぎ板172を切り欠き170の形成位置に固定することが可能となる。
次に、本実施形態に係る誘導カバー190の構成について詳細に説明する。図12は、扉110の完全開扉時において立位状態となった消火器30の底部側から見た誘導カバー190を示す図である。また、図13は、扉110の完全開扉時において道路rw側から見た誘導カバー190を示す図である。また、図14は、扉110の完全開扉時において道路rwと平行する視点から見た誘導カバー190を示す図である。
図12〜図14に示すように、本実施形態に係る誘導カバー190は、扉110の完全開扉時に切り欠き170の形成位置と合致するよう、消火器30の底部側に配置される。また、図12や図13に示すように、誘導カバー190の切り欠き170側の開口は、切り欠き170よりも大きく形成されてよい。当該形状によれば、切り欠き170から手を差し込んだユーザが迷うことなく消火器30の底部にアクセスすることができる。
また、本実施形態に係る誘導カバー190は、図14に示すように、切り欠き170側の面および消火器30側の面のみが開放された立体構造を有する。上記構造によれば、ユーザが、例えば、キャッチ部144など、消火器箱10の内部に配置される種々の構成に誤って触れることを防ぎ、ユーザの怪我や構成の破損を防止することができる。
以上、本実施形態に係る消火器箱10が備える内部構造について説明した。続いて、図15〜図18を参照して、本実施形態に係る扉110の開扉時における消火器箱10の内部構造の動作について説明する。図15〜図18は、扉110の開扉時における消火器箱10の内部構造の動作について説明するための図である。
上述したように、本実施形態に係る扉開固定具140は、扉開固定レール150上を扉110の開扉に伴い移動し、凹部152により係止されることで、扉110が閉扉しないように支持する構成である。ここで、図15を参照すると、扉開固定具140は、扉110の開扉に伴い、図5に示した状態と比較して、より下部に配置される凹部152に移動していることがわかる。
また、扉開固定具140の移動と併行して、扉110からローラー176が開放されることにより、ボールベアリング174を支点として塞ぎ板172が自重により回転することで、切り欠き170が開放される。
また、扉110の開扉がさらに進んだ状態を示す図16では、扉開固定具140および塞ぎ板172が、図15に示す状態と比較してさら下方へ移動する。この際、塞ぎ板172の移動は、ストッパー180に係止されることにより終了する。また、扉110の開扉がさらに進んだ状態を示す図17では、扉開固定具140が底部側に配置される凹部152まで移動している。
また、扉110の完全開扉状態を示す図18では、扉開固定具140は、支持台160に隣接する凹部152に移動し、扉110と共に立位状態にある消火器30を支持している。
このように、本実施形態に係る扉開固定具140は、ユーザが誤って取っ手112から手を放すなど、扉110が自重により閉扉しようとする場合においても、扉開固定レール150の凹部152に係止されることで、扉110が閉扉しないよう、扉110を支持することができる。
本実施形態に係る扉開固定具140および扉開固定レール150が有する上記の特徴によれば、突発的に扉110が閉扉することを防止することができ、消火器30の取り出し時や保守作業時における安全性や利便性を大きく向上させることができる。
また、扉110が完全開扉状態となると、消火器30の底部側に配置される誘導カバー190が切り欠き170の形成位置と合致する位置に固定される。当該機構によれば、ユーザが切り欠き170および誘導カバー190を介して、消火器30の底部に容易かつ安全にアクセスすることが可能となり、ユーザによる消火器30の取り出しを効果的に補助することができる。
以上、本実施形態に係る扉110の開扉時における消火器箱10の内部構造の動作について説明した。続いて、扉110の閉扉時における消火器箱10の内部構造の動作について説明する。
扉110の閉扉時においては、まず、扉開固定レール150の凹部152による扉開固定具140の係止状態を解除することが求められる。このため、扉110を閉扉する際には、扉開固定具140を切り欠き形状板130側に折り畳む動作を行う。この際、ユーザは、取っ手112を若干開方向に持ち上げながら上記の動作を行うことで、扉開固定具140を凹部152による係止から開放することができる。
ユーザは、扉開固定具140に設けられる折畳み用凸部142が、切り欠き形状板130の底部に設けられるキャッチ部144に嵌合されるまで、扉開固定具140の折畳みを続行する。
折畳み用凸部142がキャッチ部144と嵌合すると、扉開固定具140が切り欠き形状板130に固定され、扉開固定具140が扉開固定レール150と接触しない状態で扉110を閉扉することが可能となる。
上記の動作の後、扉110の閉扉が進行すると、切り欠き形状板130に固定される扉開固定具140は、消火器箱10の内部に設けられる折畳み解除部154と接触する。
ここで、さらに扉110の閉扉が続行される場合、折畳み解除部154が、扉開固定具140の進行方向を妨げることで、扉開固定具140の折畳み用凸部142とキャッチ部144との嵌合が解除され、消火器箱10は、図5に示す閉塞状態に復帰する。
本実施形態に係る折畳み用凸部142、キャッチ部144、および折畳み解除部154が有する上記の特徴によれば、扉110の閉扉により、扉開固定具140の折畳み状態を解除することが可能となり、再度、扉110の開扉される場合であっても、扉開固定具140が扉110の突発的な閉扉を防止することができる。また、本実施形態に係る扉110は、扉開固定具140の折畳み状態が解除されない場合には、完全に閉扉できないため、保守員などは、扉110が完全に閉扉できるか否かを以って、折畳み用凸部142、キャッチ部144、および折畳み解除部154などの構造に係る良否確認(点検)を行うことができる。
また、扉110の閉扉が進行すると、扉110がローラー176を下方に押し込むことにより、塞ぎ板172がボールベアリング174を支点に回転し、切り欠き170を閉鎖する。上記の機構によれば、扉110の閉鎖時には切り欠き170を塞ぐことで、埃や生き物の侵入を防止することが可能となる。
<<1.5.消火器箱10の使用手順>>
次に、本実施形態に係る消火器箱10の使用手順について説明する。
(道路rw側から消火器を取り出す場合)
まず、道路rw側から消火器30を取り出す場合における消火器箱10の使用手順について述べる。道路rw側から消火器30を取り出す場合、まず、ユーザは、取っ手112を掴み、扉110が90°程度開扉するまで、扉110を引き上げる動作を行う。この際、扉110が、内側に固定される消火器30と一体に回動することで、消火器30が立位状態で固定される。
また、上述したように、上記の開扉動作中においては、扉開固定具140が、扉開固定レール150上を滑りながら移動する。このため、誤操作などにより扉110が閉扉動作に移行しようとする場合であっても、扉開固定具140が扉開固定レール150の凹部152に係止されることで、扉110の開扉状態を維持することができる。また、扉110の開扉に伴い、塞ぎ板172が回転し、切り欠き170が開放される。
扉110が90°程度開扉し、消火器30が立位状態で固定されると、続いて、ユーザは、片手で消火器30のハンドルを持ち、もう一方の手で消火器30の底部を支えながら消火器30を消火器箱から取り出す。この際、本実施形態に係る消火器箱10には、切り欠き170および誘導カバー190が設けられることで、ユーザが消火器30の底部に手を差し込み、消火器30を底部から支えた状態で安定的に取り出すことを可能とする。
(監視員通路pw側から消火器を取り出す場合)
次に、監視員通路pw側から消火器30を取り出す場合における消火器箱10の使用手順について述べる。監視員通路pw側から消火器30を取り出す場合、ユーザは、上述の場合と同様に、取っ手112を掴み、扉110が90°程度開扉するまで、扉110を引き上げる動作を行う。この際、本実施形態に係る扉110は、監視員通路pwの上方に向けて開扉するように設けられるため、ユーザは、道路pw側を覗き込んで操作を行う必要がなく、落下などの二次災害を防ぐことができる。
また、監視員通路pw側から消火器を取り出す場合においても、本実施形態に係る扉開固定具140および扉開固定レール150が扉110の突発的な閉扉を防ぐ機構が働くため、ユーザは、監視員通路pw上で安全に作業を行うことができる。
扉110が90°程度開扉し、消火器30が立位状態で固定されると、続いて、ユーザは、両手で消火器30のハンドルを持ち、消火器30を消火器箱10から取り出すことができる。
(扉110の閉扉を行う場合)
次に、道路rw側または監視員通路pw側から扉110の閉扉を行う場合の手順について述べる。扉110の閉扉を行う場合、ユーザは、まず、取っ手112を若干開方向に持ち上げながら、扉開固定具140を切り欠き形状板130側に折り畳む動作を行う。
ユーザが上記の動作を行うことで、扉開固定具140に設けられる折畳み用凸部142が、切り欠き形状板130の底部に設けられるキャッチ部144と嵌合し、扉開固定具140が切り欠き形状板130に固定される。
続いて、ユーザは、扉開固定具140が切り欠き形状板130に固定されたことを確認したうえで、扉110の閉扉動作を続行する。この際、扉開固定具140は、扉開固定レール150と接触しない状態で扉110と共に回動する。
また、扉110が完全な閉塞状態となる前には、折畳み解除部154が扉開固定具140と接触することで、折畳み用凸部142とキャッチ部144との嵌合を解除され、扉開固定具140による扉110の閉扉防止機能が待機状態に復帰する。また、扉110がローラー176を下方に押し込むことで、塞ぎ板172が回転し、切り欠き170を閉鎖する。
<2.まとめ>
以上説明したように、本発明に係る消火器箱10は、道路rw側および監視員通路pw側の両方から消火器30を取り出すこと、また、扉の開放時においても道路rwおよび監視員通路pwの両面の安全性を確保することを可能とする。このために、本実施形態に係る消火器箱10は、監視員通路pwと道路rwとの境に、車両の移動方向と略平行方向に設置される。また、本実施形態に係る消火器箱10は、監視員通路pw面上に、消火器30と一体に回動する扉110を有する。
また、本発明に係る消火器箱10は、道路rw側の側面上部に切り欠き170を有する。また、消火器箱10は、扉110の回動ともに回転する塞ぎ板172を有することで、切り欠き170の閉鎖と開放を制御する。係る構成によれば、安全性、利便性、および保守性をより向上させた消火器箱を提供することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、切り欠き170および塞ぎ板172が道路rw側にのみ配置される場合を例に述べたが、消火器箱10は、道路rw側および監視員通路pw側の両方に切り欠き170および塞ぎ板172を有してもよい。上記構成によれば、消火器箱10の設置条件が変更となった場合などにおいて、両側面から消火器30の底部に容易にアクセスすることが可能となる。