JP6888260B2 - 炭素繊維束およびその製造方法 - Google Patents
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σ≧−22.5d+38.3 ・・・(1)。
炭素繊維束のストランド強度とストランド弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求める。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いる。炭素繊維束の樹脂含浸ストランド10本を測定し、その平均値をストランド強度とする。歪みは伸び計を用いて評価する。歪み範囲は0.1〜0.6%である。
1.0〜3.0gの耐炎化繊維束を採取し、120℃で2時間絶乾する。次に絶乾質量A(g)を測定した後、エタノールに含浸させ十分脱泡してから、エタノール溶媒浴中の繊維質量B(g)を測定し、繊維比重=(A×ρ)/(A−B)により繊維比重を求める。ρは測定温度でのエタノール比重である。
測定を行う炭素繊維束を樹脂中に包埋し、繊維軸方向と垂直な横断面を研磨し、該断面を光学顕微鏡の100倍の対物レンズを用い合計1000倍で観察する。研磨面の断面顕微鏡画像から二重構造の黒化厚みを測定する。解析は画像解析ソフトウェアImage Jを用いて行う。まず、単繊維断面像において、黒と白の領域分割を二値化によって行う。単繊維断面内の輝度分布に対し、分布の平均値を閾値として設定し、二値化を行う。得られた二値化像を、繊維直径の方向に対し、表層の一点から、黒から白への線入り領域までの最短距離として測定する。これを同一単繊維の周内5点に対して測定し、平均値をその水準における黒化厚みとして算出する。また、炭素繊維単繊維の繊維軸方向に垂直な断面全体に対する黒化厚み部分の面積比率(%)から二重構造性を算出する。
測定する多数本の炭素フィラメントからなる炭素繊維束について、単位長さ当たりの質量Af(g/m)および密度Bf(g/cm3)を求める。測定する炭素繊維束のフィラメント数をCfとし、炭素繊維の平均単繊維径(μm)を、下記式で算出を行う。
炭素繊維の平均単繊維径(μm)
=((Af/Bf/Cf)/π)(1/2)×2×103。
測定装置および、測定条件は以下のとおりで行う。
対物レンズ:100倍
ビーム径:1μm
レーザーパワー:2.5−3.2mW
波長:532nm
測定時間:120秒
測定範囲:1200−1900cm−1
本発明の製造方法において、構造規則性度R0は、R0=I1600cm−1/(I1600cm−1+I1350cm−1)である。ここで、I1600cm−1は、ラマン分光1600cm−1におけるピーク積分強度であり、I1350cm−1は、ラマン分光1350cm−1におけるピーク積分強度である。測定範囲両端を直線で結びバックグラウンドを差し引いたのち、各ピークの基準波数±50cm−1以内に波数がくるように、2つのピークによりフィッティングし、各ピーク強度を決定した。ピークフィッティング関数はフォークト関数を用いた。測定は繊維束内の別々の単繊維5本に対し、各一回行い、構造規則性度R0はその単純平均を用いる。
長さ150mmの炭素繊維束の両端に長さ25mmの把持部を取り付けて試験体とする。試験体作製の際、0.1×10−3N/デニールの荷重をかけて炭素繊維束の引き揃えを行う。試験体の中点部分に結び目を1カ所作製し、引張時のクロスヘッド速度を100mm/分として束引張試験を行う。測定は計12本の繊維束に対して行い、最大値、最小値の2つの値を除した10本の平均値を測定値として用い、10本の標準偏差を結節強度の標準偏差として用いる。結節強度には、束引張試験で得られた最大荷重値を、炭素繊維束の平均断面積値で除した値を用いる。結節強度の変動係数は上記した炭素繊維の結節強度と、結節強度の標準偏差との比をとり、百分率で示される値を用いる。
炭素繊維前駆体繊維束、および炭素繊維束における平均引裂可能距離は、いずれも以下のようにして求められる。すなわち、図1に示すとおり、測定に供する繊維束1を1160mmの長さにカットし、その一端2を水平な台上に粘着テープで固定する(この点を固定点Aと呼ぶ)。該繊維束の固定していない方の一端3を指で2分割し、その一方を緊張させた状態で台上に粘着テープで動かないように固定する(この点を固定点Bと呼ぶ)。2分割した繊維束の一端の他方を、固定点Aを支点として弛みが出ないよう台上に沿って動かし、固定点Bからの直線距離が500mmの位置4で静止させ、台上に粘着テープで動かないように固定する(この点を固定点Cと呼ぶ)。固定点A、B、Cで囲まれた領域を目視で観察し、固定点Aから最も遠い交絡点5を見つけ、固定点Aと固定点Bで結ばれる直線上に投影した距離を最低目盛が1mmの定規で読み取り、引裂可能距離6とする。この測定を30回繰り返し、測定値の算術平均値を平均引裂可能距離とする。本測定方法において、固定点Aから最も遠い交絡点とは、固定点Aからの直線距離が最も遠く、かつ弛みのない3本以上の単繊維が交絡している点のことである。
評価すべき炭素繊維単繊維を10本試料台にのせ、エポキシ樹脂で固定したものをサンプルとし、原子間力顕微鏡(本発明の実施例においては、ブルカーAXS製、NanoScopeV Dimension Icon)を用いた。また、本発明の実施例においては、下記条件にて3次元表面形状像を得た。
探針:シリコンカンチレバー(オリンパス製、OMCL−AC160TS−W2)
測定モード:タッピングモード
走査速度:1.0Hz
走査範囲:600nm×600nm
分解能:512ピクセル×512ピクセル
測定環境:室温、大気中
単繊維1本に対して、上記条件で3次元表面形状像を測定し、得られた測定画像は、繊維断面の曲率を考慮し、付属のソフトウェア(NanoScope Analysis)により、装置起因のデータのうねりを除去する「フラット処理」、3×3のマトリックスにおいてZデータの中央値から、マトリックス中央の値を置き換えるフィルタ処理である「メディアン8処理」、全画像データから最小二乗法により3次曲面を求めてフィッティングし、面内の傾きを補正する「三次元傾き補正」により画像処理を行ったのち、付属のソフトウェアにより表面粗さ解析を行い、平均面粗さを算出した。ここで、平均面粗さ(Ra)とは、JIS B601(2001年)で定義されている中心線粗さRaを測定面に対し適用できるよう三次元に拡張したもので基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値と定義される。測定は、異なる単繊維10本をランダムにサンプリングし、単繊維1本につき、各1回ずつ、計10回行い、その平均値を値とした。
アクリロニトリル99質量%とイタコン酸1質量%からなる共重合体を、ジメチルスルホキシドを溶媒として溶液重合法により重合させ、ポリアクリロニトリル系共重合体を製造し紡糸溶液を得た。得られた紡糸溶液を、紡糸口金から一旦空気中に吐出し、3℃にコントロールした35%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。この凝固糸条を、常法により30〜98℃で水洗し、その際3.5倍の延伸を行った。続いて、この水浴延伸後の繊維束に対して、アミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与し、160℃の加熱ローラーを用いて、乾燥緻密化処理を行い、単繊維本数12000本としてから、加圧スチーム中で3.7倍延伸することにより、製糸全延伸倍率を13倍とし、その後、繊維束に2mN/dtexの張力をかけながら、流体吐出圧力を0.35MPaとした空気により交絡処理を行って、単繊維本数12000本の炭素繊維前駆体繊維束を得た。炭素繊維前駆体繊維束の単繊維繊度は表1に記載のとおりになるように口金から紡糸溶液の吐出量を調節した。次に、実施例1〜6、および比較例1〜13については表1に示す耐炎化温度・耐炎化時間の条件を用いて、延伸比1で空気雰囲気のオーブン中で炭素繊維前駆体繊維束を熱処理し耐炎化繊維束を得た。また、表1に得られた耐炎化繊維束の構造規則性度R0を示す。
Claims (11)
- ポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を酸化性雰囲気下で密度1.32〜1.35g/cm3になるまで熱処理した後、密度1.46〜1.50g/cm3になるまで酸化性雰囲気下275℃以上295℃以下で熱処理をして耐炎化繊維束を得た後、該耐炎化繊維束を不活性雰囲気中で1200〜3000℃で熱処理をして炭素繊維束を得る、炭素繊維束の製造方法。
- 密度1.46〜1.50g/cm3になるまで酸化性雰囲気下275℃以上295℃以下で熱処理する際の耐炎化繊維束の張力が1.6〜4.0mN/dtexである、請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
- 前記耐炎化繊維束の構造規則性度R0がR0=35〜41%を満たす、請求項1または2に記載の炭素繊維束の製造方法。
- 酸化性雰囲気下で密度1.22〜1.24g/cm3になるまで210℃以上245℃未満で熱処理した後、前記密度1.32〜1.35g/cm3になるまで行われる熱処理を245℃以上275℃未満で行う、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維束の製造方法。
- 前記炭素繊維束のストランド強度σ[GPa]が−22.5d+38.3≦σ( d:最終耐炎化繊維束の密度[g/cm3])を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維束の製造方法。
- ストランド弾性率が240〜280GPa、ストランド強度が5.5GPa以上であり、結節強度A[MPa]が−88B+1360≦A(B:平均単繊維径[μm])、かつ730≦A≦920、5.9≦B≦7.5である炭素繊維束。
- 平均単繊維径が6.5〜8.0μmである、請求項6に記載の炭素繊維束。
- 前記炭素繊維束の結節強度の標準偏差との平均値の比で表される変動係数が7%以下である、請求項6または7に記載の炭素繊維束。
- 平均引裂可能距離が600〜900mmである、請求項6〜8のいずれかに記載の炭素繊維束。
- 平均面粗さRaが1.0〜1.8nmである、請求項6〜9のいずれかに記載の炭素繊維束。
- 前記炭素繊維束の二重構造性が90面積%以上である、請求項6〜10のいずれかに記載の炭素繊維束。
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